発明の技術分野
本発明は、概して、選択接触還元の分野および窒素酸化物の選択還元の方法に関する。特に、本発明の実施形態は、NOx含有エンジン排ガス流の処理のための排ガスシステムに関する。
発明の背景
長きにわたって、窒素酸化物(NOx)の有害成分は、大気汚染の原因となっている。NOxは、例えば内燃エンジン(例えば自動車およびトラック)から、燃焼設備(例えば天然ガス、天然油、または天然石炭により加熱される発電所)から、ならびに硝酸製造工場からの排ガス中に含まれている。
種々の方法がNOx含有混合ガスの処理に使用されている。処理の1つの種類は、窒素酸化物の接触還元を含む。(1)還元剤として一酸化炭素、水素、または低級炭化水素が用いられる非選択還元法と、(2)還元剤としてアンモニアまたはアンモニア前駆体が用いられる選択還元法の2つの方法がある。選択還元法では、少量の還元剤を用いて窒素酸化物を高度に除去することができる。
選択還元法は、SCR法(Selective Catalytic Reduction)と呼ばれる。SCR法では、大気中酸素の存在下でのアンモニアによる窒素酸化物の接触還元が用いられ、これにより主に窒素および水蒸気が形成される:
4NO+4NH3+O2→4N2+6H2O(標準SCR反応)
2NO2+4NH3→3N2+6H2O(低速SCR反応)
NO+NO2+NH3→2N2+3H2O(高速SCR反応)。
SCR法で使用される触媒は、理想的には、熱水条件下で、例えば200℃から600℃までまたはそれを上回る広範な使用温度条件にわたって良好な触媒活性を保持しうることが望ましい。実際にはしばしば、例えば粒子の除去に使用される排ガス処理システムの構成要素であるスートフィルターの再生の間に、熱水条件に直面する。
現在のヘビーデューティディーゼル(HDD)エンジンは、窒素酸化物(NOx)および粒子状物質(PM)に関してその主な排出低減要件が定められている。微粒子は、ディーゼル微粒子捕集フィルター(DPF)を使用して、触媒(CSF)の使用の有無にかかわらず制御することができる。HDD用途でNOxを還元する主な手段は、バナジウム系触媒またはゼオライト系触媒の使用による選択接触還元(SCR)である。
最新の政府規制は、SCR触媒のより高い性能を要求している。現行の2013年の米国オンロード規制NOx排出基準は、ヘビーデューティ過渡サイクル(heavy duty transient cycle)(HDDTまたはHD FTP)にわたって0.2g/ブレーキ馬力時(bhph)である。欧州および世界的なオフロードNOx基準および試験サイクル(例えばWHTC&NRTC)は、米国におけるそれらとは異なる。HDDオンロード用途の一般的なエンジンアウトのNOx排出量レベルは、2g/bhphから3g/bhphまでの範囲にある。NOx排出基準を正確に満たすためには、90%から93%までのNOx還元率が求められる。しかしながら、HDDエンジンでの排ガス再循環(EGR)の使用を低減/排除することも切望されており、これによって、温室効果ガス排出量(例えばCO2)の低減および燃料経済性の向上がもたらされる。しかしながら、EGRの低減は、エンジンアウトのNOx排出量を、2g/bhphから3g/bhphまでの現在のレベルから、例えば4g/bhphから7g/bhphまでに増加させる。これらの比較的高いエンジンアウトのNOx排出量レベルは、単に現行のNOx基準を満たすために、さらに高いNOx転化率(95%から98%まで)を必要とする。したがって、低温(例えば200℃から300℃まで)のNOx転化およびEGRの低減という相反する目標を達成することができるSCR触媒の需要があり、NOxを還元し、かつ政府規制限度を守るSCR触媒の能力が極度に要求される。
発明の概要
本発明の第一の態様は、排ガス流を生成するエンジンと、選択接触還元物品を含む触媒システムとを有する排ガス処理システムを対象としている。この選択接触還元物品には、鉄で促進された(iron−promoted)第一モレキュラーシーブ材料を備える上流帯域と、銅で促進された(copper−promoted)第二モレキュラーシーブ材料を備える下流帯域の2つの帯域がある。いくつかの実施形態では、第一モレキュラーシーブ材料および第二モレキュラーシーブ材料は、二重6員環単位を有するものである。いくつかの実施形態では、鉄で促進されたモレキュラーシーブ材料および銅で促進されたモレキュラーシーブ材料は、軸長さ、および上流端部および下流端部を有する基材上に被覆され、ここで、鉄で促進された第一モレキュラーシーブ材料を備える上流帯域は、単一基材の上流端部上に被覆され、銅で促進された第二モレキュラーシーブ材料を備える下流帯域は、単一基材の下流端部上に被覆される。
他の実施形態では、基材は、フロースルー型モノリスを含む。他の実施形態では、基材は、ウォールフロー型フィルターである。
他の実施形態では、上流帯域および下流帯域は、少なくとも部分的に重なっている。他の実施形態では、上流帯域は、上流帯域が下流帯域と少なくとも部分的に重なっているように被覆される。他の実施形態では、下流帯域は、下流帯域が上流帯域と少なくとも部分的に重なっているように被覆される。他の実施形態では、上流帯域は、下流帯域に隣接している。他の実施形態では、上流帯域と下流帯域との間に間隙がある。
他の実施形態では、鉄で促進された第一モレキュラーシーブ材料は、酸化鉄として計算して約0.01質量%から約10.0質量%までの量の鉄として存在している。他の実施形態では、銅で促進された第二モレキュラーシーブ材料は、銅酸化物として計算して約2質量%から約5質量%の量の銅として存在している。
他の実施形態では、排ガス処理システムは、上流帯域を第一基材上に有し、ここで、第一基材は、第一帯域および第二帯域を有し、ここで、第一帯域は、鉄で促進された第一モレキュラーシーブ材料を備え、第二帯域は、銅で促進された第三モレキュラーシーブ材料を備え、ここで、第一帯域は、第二帯域の前に排ガス流に曝され、かつここで、下流帯域は、第二基材上にある。
いくつかの実施形態では、排ガス処理システムは、上流帯域を第二基材上に有し、下流帯域は、第一基材上にあり、ここで、第一基材は、第一帯域および第二帯域を有し、ここで、第一帯域は、鉄で促進された第四モレキュラーシーブ材料を備え、第二帯域は、銅で促進された第二モレキュラーシーブ材料を備え、ここで、第一帯域は、第二帯域の前に排ガス流に曝される。他の実施形態では、第一帯域は、第一基材上で第二帯域に隣接している。他の実施形態では、第一帯域は、第一基材の全軸長さの少なくとも50%に延在している。他の実施形態では、第一帯域は、第一基材の全軸長さの50%未満に延在している。他の実施形態では、第一帯域は、第一基材の全軸長さの35%未満に延在している。他の実施形態では、上流帯域および下流帯域は、同一の基材上に被覆される。いくつかの実施形態では、上流帯域は、第一基材上に被覆され、下流帯域は、第二基材上に被覆される。他の実施形態では、第一基材は、ウォールフロー型フィルターを含み、第二基材は、フロースルー型モノリスを含む。
他の実施形態では、触媒システム内の選択接触還元物品は、トップウォッシュコート層およびボトムウォッシュコート層をさらに含み、ここで、ボトムウォッシュコート層は、基材上に直接被覆される銅で促進された第五モレキュラーシーブ材料を含み、トップウォッシュコート層は、直接ボトムウォッシュコート層の最上部に被覆される上流帯域および下流帯域を有する。他の実施形態では、排ガス処理システムは、選択接触還元物品の下流に位置するアンモニア酸化触媒をさらに含む。他の実施形態では、アンモニア酸化触媒は、白金族金属と、銅、鉄、またはその組み合わせで促進されたモレキュラーシーブとを含む。
他の実施形態では、第一モレキュラーシーブ材料および第二モレキュラーシーブ材料は、AEI、CHA、およびAFXから選択される骨格型を有している。他の実施形態では、第一モレキュラーシーブ材料および第二モレキュラーシーブ材料は、CHA骨格型を含む。
他の実施形態では、排ガス処理システムは、選択接触還元物品の上流に位置する触媒化スートフィルター(CSF)をさらに含む。
本発明の別の態様は、エンジン排ガス流の処理のための方法であって、NOx含有エンジン排ガス流を、(1)銅で促進されたゼオライトを含まない、N2Oの形成を最小限に抑える働きをする上流のSCR帯域と、(2)二重6員環単位を有する銅で促進されたモレキュラーシーブを備える下流の活性SCR帯域とを含む2つの帯域を有する選択接触還元物品を含む触媒システムで処理することを含む方法を説明している。いくつかの実施形態では、排ガス処理システムは、NOxレベルを低減するのに効果的である。いくつかの実施形態では、排ガス処理システムは、排ガス流中で4g/bhphを上回るNOxレベルを低減するのに効果的である。
いくつかの実施形態では、排ガス流は、上流の触媒化スートフィルターを流れ、上流のSCR帯域に到達する前に約0.1〜約0.85のNO2/NOxの流出量比がもたらされる。他の実施形態では、上流のSCR帯域は、二重6員環単位を有する鉄で促進されたモレキュラーシーブ材料を備える。他の実施形態では、上流のSCR帯域および下流の活性SCR帯域は、CHA骨格型を含む。
他の実施形態では、本方法は、排ガス流が1つ以上のSCR帯域に接触する前に、還元剤を排ガス流に添加することをさらに含み、ここで、添加される還元剤の量は、過剰量である。いくつかの実施形態では、添加される還元剤の量は、少なくとも約1.05の還元剤のNOxに対するモル比率である。他の実施形態では、ガス状の還元剤は、尿素である。他の実施形態では、N2Oの形成は、上流のSCR帯域が鉄で促進されたモレキュラーシーブを備えていない触媒システムと比べて少なくとも約65%少ない。他の実施形態では、排ガス流は、触媒物品を通過し、その結果、NOx転化率は少なくとも約75%である。
本発明の詳細な説明
本発明のいくつかの例示的な実施形態を説明する前に、本発明は、以下の説明に記述される構造または方法工程の詳細に限定されないことが理解されるべきである。本発明は、その他の実施形態が可能であり、かつ種々の方法で実行または実施することができる。
本発明は、ガス状のNOx排出物の少なくとも部分的な転化およびN2O発生量の低減に好適な選択接触還元(SCR)物品を含む排ガス処理システムを提供する。SCR物品は、上流帯域および下流帯域の2つの帯域を有する。上流帯域は、鉄で促進された第一モレキュラーシーブ材料を含み、下流帯域は、銅で促進された第二モレキュラーシーブ材料を備える。どちらのモレキュラーシーブ材料も、二重6員環単位を有する。例えば、銅で促進されたモレキュラーシーブ材料、例えばチャバザイト(CHA)は、ガス状の還元剤、例えばアンモニアの存在下でのNOxの転化においてきわめて活性であり、それによって排ガス流中のNOx排出量レベルが著しく低減する。しかしながら、NO2が不所望の副生成物として生成される。その一方、鉄で促進されたモレキュラーシーブ材料、例えばチャバザイトは、NOxの転化に対してあまり活性を示さず、NOxの還元にさらに使用することができるNH3を副生成物として生成し、著しく低いレベルのN2Oを生成する。したがって、鉄で促進されたチャバザイトの上流帯域を有する選択接触還元(SCR)物品は、比較的遅い速度でNOxを変換して少量のN2Oを生成し、NH3を発生させ、NH3は、続いて、還元剤として、触媒物品の下流帯域の銅で促進されたチャバザイトとともに使用され、ここで、すでに処理された排ガス流中のNOxの残留量は、より活性の高い触媒組成物(すなわち銅で促進されたチャバザイト)によって転化される。
政府規制は、ライトデューティ車およびヘビーデューティ車に対してNOx還元技術の使用を義務づけている。尿素を使用するNOxの選択接触還元(SCR)は、効果的かつNOx制御のための有力な排出制御技術である。例えば米国の、現在のオンロードNOx排出基準は、ヘビーデューティ過渡サイクルにわたって約0.2g/bhph(または約0.27g/KWh)である。この基準を満たすことが、エンジンの全ライフサイクルに必要であり、この全ライフサイクルは、触媒が新しくなった時点、または「未使用」条件にある時点から、規制上の「全耐用年数」(エンジン上で435,000マイル)の終わりの時点までである。さらに、相手先商標製品製造業者(OEM)の顧客は、しばしば、この基準が、エンジンが100万マイル走行するために達成されることを所望する。一般的なエンジンアウトのNOx排出量は、1.7g/bhphから2.5g/bhphまでの範囲であり、したがって、現在の規制基準を満たすためには、現在のSCR触媒によって90%から93%までのNOx還元率が求められる。しかしながら、OEMは、エンジンアウトのNOx排出量レベルを、排ガス再循環(EGR)の使用を低減/排除することによって4g/bhphから7g/bhphまでに増加させている。このことは、比較的高いNOx還元率(95%から98%まで)の必要性とともに、SCR触媒に比較的大きい負荷をかけている。
EGRを低減することは、新たな一連の排出要件として現れているOEMのエンジンアウトのCO2(温室効果ガス)排出量を低減し、かつEGRを低減することは、燃料関連費用が増え続けるのに伴って顧客にとって望ましい、より優れたエンジンの燃料経済性ももたらす。ヘビーデューティディーゼルOEMのその他の最新動向は、排気後処理システムの寸法を小さくすることであり、このことは、使用可能なSCR触媒の容積がより小さくなることを意味する。これは、SCR触媒は、より小さい触媒容積で比較的高いNOx転化率を達成しなければならないというさらなる課題である。より少ないEGR、およびOEMが変更を加えているその他のエンジンがもたらすさらに別の動向には、比較的低い動作排気温度が含まれる。比較的低い動作排気温度は、SCR触媒が比較的低い温度で改善された性能を有することを求める。銅チャバザイト(Cu−CHA)ゼオライト系SCR触媒は、最良の低温性能を示すが、より低いエンジンアウト温度には、いっそう優れた低温活性が要求される可能性がある。
前述の通り、SCR反応の副生成物は、特に高性能のCu−CHA SCR触媒の場合、N2Oである。N2Oは毒性ではないが、強力な温室効果ガスであり(CO2の最大300倍)、したがって、規制機関は、N2O排出量を0.1g/bhphに制限している。そのレベルを越えた場合、OEMは罰金を支払わなければならない、および/またはそれらの実際のエンジンアウトのCO2排出量レベルに加算しなければならない。したがって、排気管(SCR−アウト)N2Oの適切な制御は、主要な関心事である。全体的な課題は、排気管N2O排出量を制限すると同時に、比較的小さい触媒容積で、かつ比較的低い排気温度で、比較的高いエンジンアウトのNOxレベルの場合にきわめて高い耐用命数終わり(End−of−Life)のNOx転化率(約97%から98%まで)を達成することである。
驚くべきことに、鉄で促進されたモレキュラーシーブ材料も銅で促進されたモレキュラーシーブ材料も含むSCR触媒システムの独自かつ選択された構成を使用することによって、良好なNOx転化率を、SCR反応の副生成物として生成されるN2Oをはるかに少なく提供することができる。1つまたは複数の実施形態では、本開示は、2つのSCR帯域を有する触媒システムを提供する。前述の通り、2つの帯域のうちの第一帯域は、理論にとらわれるものではないが、「N2O−最適化された」帯域と考えられ、鉄で促進された第一モレキュラーシーブ材料を備える。第二帯域は、触媒的に「活性の」帯域と考えられ、銅で促進された第二モレキュラーシーブ材料を備える。いくつかの実施形態では、「N2O−最適化された」帯域は、鉄で促進されたモレキュラーシーブ材料と銅で促進されたモレキュラーシーブ材料とを備えるために、それ自体区分されていてよい。いくつかの実施形態では、触媒的に「活性の」帯域は、鉄で促進されたモレキュラーシーブ材料および銅で促進されたモレキュラーシーブを含むために区分されていてよい。1つまたは複数の実施形態の触媒システムは、低温(約200℃から約300℃まで)で、限定されたN2O発生量および優れたNOx転化率の二重利点をもたらす。
本発明の複数の実施形態は、エンジン排ガス流の処理のための排ガスシステムを対象としており、例えば、これに限定されないが、例えば2g/bhphを上回るNOxレベルのような多量のNOxを含有する排ガス流の処理のための排ガスシステムがこれに含まれる。1つまたは複数の実施形態では、排ガス処理システムは、ヘビーデューティ過渡サイクルにわたって排ガス流を生成するエンジン(例えば2g/bhphを上回るNOxレベルを含む排ガス流を生成するエンジンであってよい)と、(1)第一基材上に被覆された鉄で促進された第一モレキュラーシーブ材料を備える上流帯域、および(2)第二基材上に被覆された銅で促進された第二モレキュラーシーブ材料を備える下流帯域の2つの帯域を有し、ここで、第一モレキュラーシーブおよび第二モレキュラーシーブは、二重6員環単位を有する、選択接触還元物品を含む触媒システムとを含むものである。1つまたは複数の実施形態では、触媒システムは、排ガス流中で2g/bhphを上回るNOxレベルを0.2g/bhph未満に下げるのに効果的である。
上流帯域および下流帯域の金属で促進されたモレキュラーシーブ触媒組成物は、インシピエントウエットネス含浸技術よりも金属イオン交換法を使用して調製されて、個々の触媒組成物を作り出すことができ、この組成物は、続いて、以下にさらに詳述されるウォッシュコート技術を使用して基材上に被覆することができる。
イオン交換は、多孔性支持体中に存在しているイオンを、対象の外部金属イオンと交換するために一般的に使用される方法である。例えば、細孔内に存在するナトリウムイオンで調製されたゼオライトを異なる金属イオンと交換して、イオン交換された多孔性支持体を形成することができる。これは、交換される対象の外部金属イオンを含む溶液中の多孔性支持体、すなわちゼオライトのスラリーを調製することによって行われる。熱は、この方法の間に任意に加えられてよい。外部金属イオンは、支持体の細孔に拡散して、内在するイオン、すなわちナトリウムイオンと交換して、イオン交換された多孔性支持体を形成することができる。
例えば、チャバザイトゼオライトのNa型は、促進剤金属、すなわちイオン交換法で使用される金属イオンを含む前駆体金属と接触させることができる。水溶性成分または金属前駆体の錯体の水溶液が一般的に用いられ、例えば硝酸(II)銅、酢酸(II)銅、酢酸(II)鉄、硝酸(III)鉄、および酢酸(III)鉄を含む具体例の金属前駆体の硝酸塩または酢酸塩である。支持粒子、例えばモレキュラーシーブは金属前駆体の溶液で処理された後、例えば粒子を高められた温度(例えば約100℃から150℃まで)で一定期間(例えば約1時間から3時間まで)熱処理することによって粒子は乾燥され、次に焼成されて、金属成分がさらに触媒活性の酸化物形態に転換される。例示的な焼成法は、大気中で約500℃から800℃までの温度で約1時間から3時間までの熱処理を含む。上述の方法は、金属前駆体含浸の所望レベルに達するまで必要に応じて繰り返されてよい。結果として生じた材料は、乾燥粉末としてか、またはスラリー形態で貯蔵することができる。本開示で使用される用語に関しては、以下の定義が与えられる。
本願で使用される場合、「触媒」または「触媒組成物」または「触媒材料」という用語は、反応を促進する材料を指す。
本願で使用される場合、「触媒物品」という用語は、所望の反応を促進するために使用される構成要素を指す。例えば、触媒物品は、触媒種、例えば触媒組成物を含むウォッシュコートを基材、例えばハニカム基材上に有するものであってよい。
本願で使用される場合、「ヘビーデューティ過渡サイクル」という用語は、ヘビーデューティオンロードエンジン(heavy duty on−road engines)を試験するために使用される排出試験サイクルを指す。ヘビーデューティ過渡サイクルには、連邦試験手順によるヘビーデューティ(Federal Test Procedure Heavy Duty)(FTP HD)過渡サイクル、米国ヘビーデューティディーゼル過渡サイクル(U.S.heavy duty diesel transient cycle)(HDDT)、世界統一過渡サイクル(World Harmonized transient cycle)(WHTC)、欧州過渡サイクル(European Transient Cycle)(ETC)、ノンロード過渡サイクル(non−road transient cycle)(NRTC)、および日本JE05過渡サイクルが含まれる。図1は、ヘビーデューティ過渡サイクルエンジン試験でしばしば使用される触媒システム構成を示している。具体的には、図1は、排気入口2からの下流のディーゼル酸化触媒(DOC)3、触媒スートフィルター(CSF)4、2つの選択接触還元(SCR)触媒5および6、ならびに排気出口8の上流にアンモニア酸化(AMOx)触媒7を含む触媒システム構成1を示している。第二のSCR6触媒およびAMOx7触媒は、いくつかの実施形態では、同一の基材上に区分して被覆されてよいことに留意されたい。
本願で使用される場合、「ブレーキ馬力時」および「bhph」という用語は、モーターの実速度を減速しうる任意の種々の補助構成要素は考慮されずに、モーターによって発生する仕事量を指す。1ブレーキ馬力時は、0.746キロワット時に等しい(1bhph=0.746KWh)。一般的に、ヘビーデューティ排出量は、g/bhph(g/KWh)で測定される。
1つまたは複数の実施形態では、本願に開示される排ガス処理システムは、ヘビーデューティ過渡サイクルにわたって約2g/bhph(約2.7g/KWh)を上回るNOxレベルを含む排ガス流を生成するエンジンを有し、これには、約2.5g/bhph(約3.4g/KWh)を上回る、約3g/bhph(約4.1g/KWh)を上回る、約3.5g/bhph(約4.7g/KWh)を上回る、約4g/bhph(約5.4g/KWh)を上回る、約4.5g/bhph(約6.1g/KWh)を上回る、約5g/bhph(約6.7g/KWh)を上回る、約6g/bhph(約8.0g/KWh)を上回る、約7g/bhph(約9.4g/KWh)を上回る、約8g/bhph(約10.7g/KWh)を上回る、約9g/bhph(約12.1g/KWh)を上回る、約10g/bhph(約13.4g/KWh)を上回る、約11g/bhph(約14.8g/KWh)を上回る、約12g/bhph(約16.1g/KWh)を上回る、約13g/bhph(約17.4g/KWh)を上回る、約14g/bhph(約18.8g/KWh)を上回る、約15g/bhph(約20.1g/KWh)を上回るNOxレベルを含む排ガス流を生成するエンジンが含まれる。
他の実施形態では、排ガス流は、約2g/bhphから約15g/bhphまで(約2.7g/KWhから約20.1g/KWhまで)の範囲のNOxレベルを含み、これには、約3g/bhphから約15g/bhphまで(約4g/KWhから約20.1g/KWhまで)の範囲、約4g/bhphから約15g/bhphまで(約5.4g/KWhから約20.1g/KWhまで)の範囲、約3g/bhphから約10g/bhphまで(約4g/KWhから約13.4g/KWhまで)、約5g/bhphから約15g/bhphまで(約6.7g/KWhから約20.1KWhまで)、約5g/bhphから約10g/bhphまで(約6.7g/KWhから約13.4g/KWhまで)、約6g/bhphから約15g/bhphまで(約8.0g/KWhから約20.1g/KWhまで)、約6g/bhphから約10g/bhphまで(約8.0g/KWhから約13.4g/KWhまで)の範囲のNOxレベルが含まれる。
本願で使用される場合、「Normalized Stoichiometric Ratio(正規化化学量論比)」または「NSR」という用語は、目標のNOx還元を達成するのに必要な還元試薬(例えばアンモニア)の量を指す。言い換えれば、NSRは、例えばアンモニアの窒素酸化物NOx(NO2として)に対するモル比率(例えばNH3/NO2)である。NSR値は、NOx 1モルあたり約0.5モルから約3モルまで、好ましくは約0.75モルから約2モルまでの範囲、より好ましくは約1.0モルから約1.5モルまでの範囲の還元剤、例えばアンモニアであってよい。1つまたは複数の実施形態では、本発明のエンジン排ガスシステムは、約1から約1.2の間のNSR値を使用し、これには、約1.0、約1.05、約1.1、および約1.2が含まれる。NSRが1.0であるとは、システムが化学量論的水準で作動していることを意味する。NSRが1.1であるとは、システムに噴射される尿素が10%過剰供給されることを意味し、NSRが1.2であるとは、システムに噴射される尿素が20%過剰供給されることを意味する。
本願で使用される場合、「選択接触還元」(SCR)という用語は、還元剤を使用して窒素の酸化物を還元して二窒素(N2)にする触媒法を指す。本願で使用される場合、「窒素酸化物」または「NOx」は、窒素の酸化物、特に一酸化二窒素(N2O)、一酸化窒素(NO)、三酸化二窒素(N2O3)、二酸化窒素(NO2)、四酸化二窒素(N2O4)、五酸化二窒素(N2O5)、および過酸化窒素(NO3)を指す。
1つまたは複数の実施形態では、触媒システムは、鉄で促進された第一モレキュラーシーブ材料を備える上流帯域と、銅で促進された第二モレキュラーシーブ材料を備える下流帯域の2つの帯域で構成され、ここで、第一モレキュラーシーブ材料および第二モレキュラーシーブ材料は、二重6員環単位を有する、選択接触触媒還元(SCR)物品を含むものである。
本願で使用される場合、「モレキュラーシーブ」という表現は、微粒子形態で、1つまたは複数の促進剤金属と組み合わされて触媒として使用することができる骨格材料、例えばゼオライトおよびその他の骨格材料(例えば同形置換された材料)を指す。モレキュラーシーブは、酸素イオンの広範囲の三次元網目構造をベースにする材料であり、一般的に四面体型位置を有し、かつ平均細孔径が20Å以下の、実質的に均一の細孔分布を有するものである。細孔径は、環の大きさによって定義される。本願で使用される場合、「ゼオライト」という用語は、ケイ素原子およびアルミニウム原子を含むモレキュラーシーブの具体例を指す。1つまたは複数の実施形態によれば、モレキュラーシーブをその骨格型によって定義することにより、ゼオライト材料と同一の骨格型を有する骨格型ならびに任意の、およびあらゆる同位体骨格材料、例えばSAPO、ALPOおよびMeAPO材料を含むことが意図されることを理解されたい。いくつかの実施形態では、本発明のモレキュラーシーブ(例えば第一モレキュラーシーブ、第二モレキュラーシーブ、第三モレキュラーシーブ、第四モレキュラーシーブ、および第五モレキュラーシーブ)は、すべて同じである。いくつかの実施形態では、本発明のモレキュラーシーブ(例えば第一モレキュラーシーブ、第二モレキュラーシーブ、第三モレキュラーシーブ、第四モレキュラーシーブ、および第五モレキュラーシーブ)は、すべて同じではない。いくつかの実施形態では、本発明のモレキュラーシーブ(例えば第一モレキュラーシーブ、第二モレキュラーシーブ、第三モレキュラーシーブ、第四モレキュラーシーブ、および第五モレキュラーシーブ)の少なくとも2つは、同じである。
より具体的な実施形態では、アルミノシリケートゼオライトに関して、骨格型は、材料を、骨格内で置換されたリンまたはその他の金属を含まないモレキュラーシーブに限定する。しかしながら、明確にするために、本願で使用される場合、「アルミノシリケートゼオライト」は、アルミノリン酸塩材料、例えばSAPO、ALPO、およびMeAPO材料を除くものであり、「ゼオライト」という上位語は、アルミノケイ酸塩およびアルミノリン酸塩を含むことが意図される。ゼオライトは、ゼオライトの種類およびゼオライト格子内に含まれるカチオンの種類および量に応じて、直径が約3オングストロームから10オングストロームまでの範囲である、どちらかと言えば均一な細孔径を有する結晶性材料である。一般的に、ゼオライトは、2以上のシリカのアルミナ(SAR)に対するモル比率を有する。
「アルミノリン酸塩」という用語は、アルミニウム原子およびリン原子を含む、モレキュラーシーブの別の具体例を指す。アルミノリン酸塩は、どちらかと言えば均一な細孔径を有する結晶性材料である。
一般的に、モレキュラーシーブ、例えばゼオライトは、頂点を共有するTO4四面体からなる連続した三次元骨格構造を有するアルミノシリケートとして定義されるものであり、ここで、Tは、AlまたはSi、または任意にPである。陰イオン骨格の荷電を平衡にする陽イオンは、骨格の酸素と緩く結合しており、残りの細孔容積は、水分子で充填されている。一般的に、骨格外の陽イオンは、交換可能であり、水分子は、除去可能である。
1つまたは複数の実施形態では、第一モレキュラーシーブ材料および第二モレキュラーシーブ材料は、独立してSiO4/AlO4四面体を含み、共有の酸素原子により結合して三次元網目構造を形成する。他の実施形態では、第一モレキュラーシーブ材料および第二モレキュラーシーブ材料は、SiO4/AlO4/PO4四面体を含む。1つまたは複数の実施形態の第一モレキュラーシーブ材料および第二モレキュラーシーブ材料は、主に(SiO4)/AlO4四面体、またはSiO4/AlO4/PO4四面体の剛性の網目構造により形成される間隙の形状にしたがって区別することができる。間隙への入口は、入口開口部を形成する原子に関して、6員環原子、8員環原子、10員環原子、または12員環原子から形成される。1つまたは複数の実施形態では、第一モレキュラーシーブ材料および第二モレキュラーシーブ材料は、12員環以下の環の大きさを有し、これには、6員環、8員環、10員環、および12員環が含まれる。
1つまたは複数の実施形態によれば、第一モレキュラーシーブ材料および第二モレキュラーシーブ材料は、骨格位相に基づくことができ、それによって構造が識別される。一般的に、ゼオライトの任意の骨格型、例えばABW、ACO、AEI、AEL、AEN、AET、AFG、AFI、AFN、AFO、AFR、AFS、AFT、AFX、AFY、AHT、ANA、APC、APD、AST、ASV、ATN、ATO、ATS、ATT、ATV、AWO、AWW、BCT、BEA、BEC、BIK、BOG、BPH、BRE、CAN、CAS、SCO、CFI、SGF、CGS、CHA、CHI、CLO、CON、CZP、DAC、DDR、DFO、DFT、DOH、DON、EAB、EDI、EMT、EON、EPI、ERI、ESV、ETR、EUO、FAU、FER、FRA、GIS、GIU、GME、GON、GOO、HEU、IFR、IHW、ISV、ITE、ITH、ITW、IWR、IWW、JBW、KFI、LAU、LEV、LIO、LIT、LOS、LOV、LTA、LTL、LTN、MAR、MAZ、MEI、MEL、MEP、MER、MFI、MFS、MON、MOR、MOZ、MSO、MTF、MTN、MTT、MTW、MWW、NAB、NAT、NES、NON、NPO、NSI、OBW、OFF、OSI、OSO、OWE、PAR、PAU、PHI、PON、RHO、RON、RRO、RSN、RTE、RTH、RUT、RWR、RWY、SAO、SAS、SAT、SAV、SBE、SBS、SBT、SFE、SFF、SFG、SFH、SFN、SFO、SGT、SOD、SOS、SSY、STF、STI、STT、TER、THO、TON、TSC、UEI、UFI、UOZ、USI、UTL、VET、VFI、VNI、VSV、WIE、WEN、YUG、ZON、またはその組み合わせの骨格型が使用されてよい。
1つまたは複数の実施形態では、第一モレキュラーシーブ材料および第二モレキュラーシーブ材料は、8員環の小細孔のアルミノシリケートゼオライトを含む。本願で使用される場合、「小細孔」という用語は、約5オングストロームより小さい、例えばおよそ3.8オングストロームオーダーの細孔開口部を指す。「8員環」ゼオライトという表現は、8員環の細孔開口部および二重6員環の第二次構造単位(secondary building units)を有するゼオライトと、4員環による二重6員環構造単位の結合から生じるケージのような構造を有するゼオライトを指す。ゼオライトは、第二次構造単位(SBU)および複合構造単位(CBU)で構成されており、多くの異なる骨格構造で生じる。第二次構造単位は、16個までの四面体原子を含み、非キラル性である。複合構造単位は、アキラルである必要はなく、全体の骨格を構造するために必ずしも使用されなくてよい。例えば、ゼオライトの1つの群は、その骨格構造において単4員環(s4r)複合構造単位を有している。4員環では、「4」は、四面体のケイ素原子およびアルミニウム原子の位置を意味しており、酸素原子は、四面体原子の間に配置されている。その他の複合構造単位としては、例えば、単6員環(s6r)単位、二重4員環(d4r)単位、および二重6員環(d6r)単位が挙げられる。d4r単位は、2つのs4r単位の結合によって作られる。d6r単位は、2つのs6r単位の結合によって作られる。d6rでは、12個の四面体原子がある。d6rの第二次構造単位を有するゼオライト骨格型としては、AEI、AFT、AFX、CHA、EAB、EMT、ERI、FAU、GME、JSR、KFI、LEV、LTL、LTN、MOZ、MSO、MWW、OFF、SAS、SAT、SAV、SBS、SBT、SFW、SSF、SZR、TSC、およびWENが挙げられる。
1つまたは複数の実施形態では、第一モレキュラーシーブ材料および第二モレキュラーシーブ材料は、d6r単位を有する。したがって、1つまたは複数の実施形態では、第一モレキュラーシーブ材料および第二モレキュラーシーブ材料は、AEI、AFT、AFX、CHA、EAB、EMT、ERI、FAU、GME、JSR、KFI、LEV、LTL、LTN、MOZ、MSO、MWW、OFF、SAS、SAT、SAV、SBS、SBT、SFW、SSF、SZR、TSC、WEN、およびその組み合わせから選択される骨格型を有する。別の具体的な実施形態では、第一モレキュラーシーブ材料および第二モレキュラーシーブ材料は、CHA、AEI、AFX、ERI、KFI、LEV、およびその組み合わせからなる群から選択される骨格型を有する。さらに別の具体的な実施形態では、第一モレキュラーシーブ材料および第二モレキュラーシーブ材料は、CHA、AEI、およびAFXから選択される骨格型を有する。1つまたは複数のきわめて具体的な実施形態では、第一モレキュラーシーブ材料および第二モレキュラーシーブ材料は、骨格型CHAを有する。
ゼオライトCHA骨格型モレキュラーシーブとしては、近似式:(Ca,Na2,K2,Mg)Al2Si4O12・6H2Oを有するゼオライト群の天然に存在するテクトケイ酸塩鉱物(例えば水和ケイ酸カルシウムアルミニウム)が挙げられる。ゼオライトCHA骨格型モレキュラーシーブの3つの合成形態は、D.W.Breckによる「Zeolite Molecular Sieves」(1973年John Wiley&Sonsにより出版)に記載されており、参照によって本願に援用される。Breckにより報告された3つの合成形態は、ゼオライト K−G(J. Chem. Soc., p.2822(1956), Barrer et alに記載)、ゼオライト D(英国特許第868,846号明細書(GB868,846)(1961)に記載)、およびゼオライト R(米国特許第3,030,181号明細書(US3,030,181)に記載)であり、参照によって本願に援用される。ゼオライトCHA骨格型の別の合成形態、SSZ−13の合成は、米国特許第4,544,538号明細書(US4,544,538)に記載されており、参照によって本願に援用される。CHA骨格型を有するモレキュラーシーブ、シリコアルミノリン酸塩34(SAPO−34)の合成形態の合成は、米国特許第4,440,871号明細書(US4,440,871)および米国特許第7,264,789号明細書(US7,264,789)に記載されており、参照により本願に援用される。CHA骨格型を有するさらに別の合成モレキュラーシーブ、SAPO−44の製造方法は、米国特許第6,162,415号明細書(US6,162,415)に記載されており、参照によって本願に援用される。
一般的に、ゼオライトは、高度結晶性材料の形態で存在しており、その材料は、少なくとも約75%が結晶性であるか、少なくとも約80%が結晶性であるか、少なくとも約85%が結晶性であるか、少なくとも約90%が結晶性であるか、少なくとも約95%が結晶性であるか、少なくとも約98%が結晶性であるか、少なくとも約99%が結晶性であるか、または少なくとも約99.5%が結晶性である。
一般的に、ゼオライト支持材料は、60m2/gを上回る、しばしば最大約200m2/gまたはそれ以上のBET表面積を示す。「BET表面積」は、N2吸着による表面積の測定のためのBrunauer、Emmett、Teller法を指す、通常の意味を有する。1つまたは複数の実施形態では、本願に開示される触媒中で使用されるゼオライト支持材料のBET表面積は、少なくとも約200m2/g、少なくとも約400m2/g、または少なくとも約600m2/gである。
1つまたは複数の実施形態では、第一モレキュラーシーブ材料および第二モレキュラーシーブ材料としては、あらゆるアルミノシリケート、ボロシリケート、ガロシリケート、MeAPSO、およびMeAPO組成物を挙げることができる。これらには、これに限定されないが、SSZ−13、SSZ−62、天然チャバザイト、ゼオライト K−G、リンデ D、リンデ R、LZ−218、LZ−235、LZ−236、ZK−14、SAPO−34、SAPO−44、SAPO−47、ZYT−6、CuSAPO−34、CuSAPO−44、およびCuSAPO−47が含まれる。
アルミノシリケートモレキュラーシーブ成分のシリカ対アルミナの比は、広範囲にわたって変化してよい。1つまたは複数の実施形態では、第一モレキュラーシーブ材料および第二モレキュラーシーブ材料は、独立して、約2〜約300の範囲のシリカ対アルミナのモル比(SAR)を有し、これには、約5〜約250、約5〜約200、約5〜約100、および約5〜約50が含まれる。1つまたは複数の具体的な実施例では、第一モレキュラーシーブ材料および第二モレキュラーシーブ材料は、独立して、約10〜約200、約10〜約100、約10〜約75、約10〜約60、および約10〜約50、約15〜約100、約15〜約75、約15〜約60、および約15〜約50、約20〜約100、約20〜約75、約20〜約60、および約20〜約50の範囲のシリカ対アルミナのモル比(SAR)を有する。
ゼオライトの粒径は、異なっていてよい。一般的に、CHAゼオライトの粒径は、約1マイクロメートルから約40マイクロメートルまで、好ましくは約10マイクロメートルから約30マイクロメートルまで、より好ましくは10マイクロメートルから約20マイクロメートルまでのD90粒径により特徴づけることができる。D90は、粒子の90%が、比較的微細な粒径を有する粒径として定義される。
本願で使用される場合、「促進された(promoted)」という用語は、モレキュラーシーブ内に固有の不純物ではなく、モレキュラーシーブ材料に意図的に加えられた成分を指す。したがって、促進剤(promoter)は、意図的に加えられた促進剤を有していない触媒と比べて、触媒の活性を高めるために意図的に加えられるものである。窒素の酸化物のSCRを促進するために、1つまたは複数の実施形態では、1つまたは複数の好適な金属は、独立して交換されて第一モレキュラーシーブおよび第二モレキュラーシーブに入れられる。1つまたは複数の実施形態によれば、第一モレキュラーシーブは、鉄、または鉄と銅の組み合わせで促進され、第二モレキュラーシーブは、銅、または銅と鉄の組み合わせで促進される。モレキュラーシーブ材料を金属で促進するために、金属は、モレキュラーシーブとイオン交換される。したがって、「金属で促進された」および「金属でイオン交換された」という用語は、同一の意味を有し、かつ区別なく用いることができる。
酸化物として計算される触媒の促進剤金属含有率は、1つまたは複数の実施形態では、揮発性物質を含まない主成分について報告される、焼成された金属でイオン交換されたモレキュラーシーブの全質量を基準として少なくとも約0.1質量%である。具体的な実施形態では、第一モレキュラーシーブ材料の促進剤金属はFeを含み、かつFe2O3として計算されるFe含有率は、揮発性物質を含まない主成分について報告される、それぞれ、焼成された金属でイオン交換されたモレキュラーシーブの全質量を基準として約0.1質量%から最大約10質量%までの範囲であり、これには、約9質量%、約8質量%、約7質量%、約6質量%、約5質量%、約4質量%、約3質量%、約2質量%、約1質量%、約0.5質量%、約0.25質量%、および約0.1質量%が含まれる。具体的な実施形態では、Fe2O3として計算される第一モレキュラーシーブ材料のFe含有率は、焼成された金属でイオン交換されたモレキュラーシーブ材料の全質量を基準として約1質量%から約10質量%までの範囲であり、これには、焼成された金属でイオン交換されたモレキュラーシーブ材料の全質量を基準として約1質量%から約5質量%までが含まれる。
具体的な実施形態では、第二モレキュラーシーブ材料の促進剤金属は、Cuを含み、かつCuOとして計算されるCu含有率は、揮発性物質を含まない主成分について報告される、焼成された金属イオン交換されたモレキュラーシーブ材料の全質量を基準として約0.1質量%から約5質量%までの範囲であり、これには、それぞれ焼成された金属イオン交換されたモレキュラーシーブ材料の全質量を基準として約5質量%、約4質量%、約3質量%、約2質量%、約1質量%、約0.5質量%、約0.25質量%、および約0.1質量%が含まれる。具体的な実施形態では、CuOとして計算される第二モレキュラーシーブ材料のCu含有率は、焼成された金属でイオン交換されたモレキュラーシーブ材料の全質量を基準として約2質量%から約5質量%までの範囲である。
1つまたは複数の実施形態では、種々の触媒システムは、鉄により促進された第一モレキュラーシーブ材料および銅により促進された第二モレキュラーシーブ材料を有する選択接触物品を使用して準備される。本願で開示されるSCR物品の重要な設計としては、区分された、かつ層状にされた選択接触還元物品が挙げられる。
いくつかの実施形態では、上流帯域は、それ自体、鉄で促進されたモレキュラーシーブを備える上流帯域と、銅で促進されたモレキュラーシーブを備える下流帯域とに区分されており、ここで、上流帯域および下流帯域は、第一基材上に被覆される。いくつかの実施形態では、鉄で促進されたモレキュラーシーブを備える上流帯域は、第一基材の軸長さの約1%から約99%まで、好ましくは約25%から約75%まで、より好ましくは約30%から約70%までの範囲で基材上に被覆される。
同様に、いくつかの実施形態では、下流帯域は、それ自体、鉄で促進されたモレキュラーシーブを備える上流帯域と、銅で促進されたモレキュラーシーブを備える下流帯域とに区分されており、ここで、上流帯域および下流帯域は、第二基材上に被覆される。いくつかの実施形態では、銅で促進されたモレキュラーシーブを備える下流帯域は、第二基材の軸長さの約1%から約99%まで、好ましくは約25%から約75%まで、より好ましくは約30%から約70%までの範囲で基材上に被覆される。
1つまたは複数の実施形態では、鉄で促進された第一モレキュラーシーブ材料および銅で促進された第二モレキュラーシーブ材料は、2つの別個の帯域として軸方向に区分された構成で配列されている。本願で使用される場合、「軸方向に区分された」という用語は、上流帯域および下流帯域の互いに関連した位置を指す。軸方向は、上流帯域および下流帯域が隣り合って位置するように並んでいることを意味する。本願で使用される場合、「上流」および「下流」という用語は、エンジン排ガス流のエンジンから排気管への流れにしたがう方向に対して、エンジンが上流の位置にあり、排気管および任意の汚染対策物品、例えばフィルターおよび触媒がエンジンから下流にあることを指す。
1つまたは複数の実施形態では、選択接触還元物品は、軸方向に区分された構成にあり、ここで、鉄で促進された第一モレキュラーシーブ材料は、銅で促進されたモレキュラーシーブ材料(同一の基材または別個の基材上にあってよい)の上流の基材に被覆される。1つまたは複数の実施形態によれば、軸方向に区分された鉄で促進された第一モレキュラーシーブ材料および銅で促進された第二モレキュラーシーブ材料は、同一の基材上に配列されるか、または共通の基材上に配列されるか、または互いに分離された異なる基材の上に配列されてよい。共通の基材が使用される場合、そのような基材上に被覆された鉄で促進された第一モレキュラーシーブ材料の量は、基材の軸長さの約1%から約95%まで、より好ましくは約25%から約75%まで、さらにより好ましくは約30%から約65%までの範囲であってよい。図2Aを参照すると、軸方向に区分されたシステムの例示的な実施形態が示されている。触媒物品10は、軸方向に区分された配列で示されており、ここで、上流帯域18の鉄で促進された第一モレキュラーシーブ材料は、基材12上で、下流帯域20の銅で促進された第二モレキュラーシーブ材料の上流に位置している。基材12は、軸長さLを定義する入口端部22および出口端部24を有している。1つまたは複数の実施形態では、一般的に、基材12は、ハニカム基材の複数のチャネル14を有し、明確にするために、そのうちの1つのチャネルが断面で示されているにすぎない。上流帯域18の鉄で促進された第一モレキュラーシーブ材料は、基材12の入口端部22から基材12の全軸長さL未満までに延在している。上流帯域18の長さは、図2Aでは第一帯域長さ18aと示される。下流帯域20の銅で促進された第二モレキュラーシーブ材料は、基材12の出口端部24から基材12の全軸長さL未満までに延在している。下流帯域20の長さは、図2Aでは第二帯域長さ20aと示される。
1つまたは複数の実施形態では、図2Aに図示される通り、鉄で促進された第一モレキュラーシーブ材料を備える上流帯域18は、銅で促進された第二モレキュラーシーブ材料を備える下流帯域20に直接隣接している。
図2Bを参照すると、他の実施形態では、鉄で促進された第一モレキュラーシーブ材料を備える上流帯域18は、間隙26によって銅で促進された第二モレキュラーシーブ材料を備える下流帯域20から分離されている。
上流帯域18および下流帯域20の長さは異なっていてよいことが理解されるであろう。1つまたは複数の実施形態では、上流帯域18および下流帯域20は、長さが同じであってよい。他の実施形態では、上流帯域18は、図2Aに示される基材の長さLの残りをそれぞれ占める下流帯域20を含めて、基材12の長さLの約10%から90%まで、または約20%から約80%までの範囲であってよい。他の実施形態では、上流帯域18は、図2Bに示される基材の長さLの残りをそれぞれ占める下流帯域20を含めて、間隙26を含め、基材12の長さLの約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、または約90%であってよい。
当業者には、上流帯域および下流帯域が少なくとも部分的に重なっていてよいことも理解されるであろう。本願で使用される場合、「少なくとも部分的に重なっている」という用語は、上流帯域および下流帯域が、少なくとも約0.1%から少なくとも約99%までの範囲の量で重なってよいことを意味する。1つまたは複数の実施形態では、上流帯域および下流帯域が、完全に重なっていてよい(例えば約100%)。1つまたは複数の実施形態では、鉄で促進された第一モレキュラーシーブ材料を備える上流帯域は、銅で促進された第二モレキュラーシーブ材料を備える下流帯域に部分的に重なっている。図3を参照すると、軸方向に区分されたシステムの例示的な実施形態が示されている。触媒物品40は、軸方向に区分された配列で示されており、ここで、上流帯域48の鉄で促進された第一モレキュラーシーブ材料は、基材42上で、下流帯域50の銅で促進された第二モレキュラーシーブ材料の上流に位置している。基材42は、軸長さL1を定義する入口端部51および出口端部55を有している。1つまたは複数の実施形態では、一般的に、基材42は、ハニカム基材の複数のチャネル44を有し、明確にするために、そのうちの1つのチャネルが断面で示されているにすぎない。上流帯域48の鉄で促進された第一モレキュラーシーブ材料は、基材42の入口端部51から基材42の全軸長さL1未満までに延在しており、銅で促進された第二モレキュラーシーブ材料を備える下流帯域50に部分的に重なっている。上流帯域48の鉄で促進された第一モレキュラーシーブ材料の長さは、図3では第一帯域長さ48aと示される。下流帯域50の銅で促進された第二モレキュラーシーブ材料は、基材42の出口端部55から基材42の全軸長さL1未満までに延在している。下流帯域50の銅で促進された第二のモレキュラーシーブ材料の長さは、図3では第二帯域長さ50aと示される。少なくとも部分的な重なりの長さは、図3ではL2と示される。他の実施形態では、銅で促進された第二モレキュラーシーブ材料を備える下流帯域は、鉄で促進された第一モレキュラーシーブ材料を備える上流帯域に少なくとも部分的に重なっている。1つまたは複数の実施形態では、銅で促進された第二モレキュラーシーブ材料を備える下流帯域は、少なくとも約0.1%から少なくとも約99%までの範囲で、鉄で促進された第一モレキュラーシーブ材料を備える上流帯域に部分的に重なっている。1つまたは複数の実施形態では、銅で促進されたモレキュラーシーブ材料を備える下流帯域は、鉄で促進された第一モレキュラーシーブ材料を備える上流帯域に完全に重なっている。図4を参照すると、軸方向に区分されたシステムの例示的な実施形態が示されている。触媒物品70は、軸方向に区分された配列で示されており、ここで、上流帯域78の鉄で促進された第一モレキュラーシーブ材料は、基材72上で、下流帯域80の銅で促進された第二モレキュラーシーブ材料の上流に位置している。基材72は、軸長さL3を定義する入口端部82および出口端部84を有している。1つまたは複数の実施形態では、一般的に、基材72は、ハニカム基材の複数のチャネル74を有し、明確にするために、そのうちの1つのチャネルが断面で示されているにすぎない。上流帯域78の鉄で促進された第一モレキュラーシーブ材料は、基材72の入口端部82から基材72の全軸長さL3未満までに延在している。上流帯域78の鉄で促進された第一モレキュラーシーブ材料の長さは、図4では第一帯域長さ78aと示される。下流帯域80の銅で促進された第二モレキュラーシーブ材料は、基材72の出口端部84から基材72の全軸長さL3未満までに延在しており、鉄で促進された第一モレキュラーシーブ材料を備える下流帯域78に部分的に重なっている。下流帯域80の銅で促進された第二モレキュラーシーブ材料の長さは、図4では第二帯域長さ80aと示される。少なくとも部分的な重なりの長さは、図4ではL4と示される。前述の通り、L4と示される部分的な重なりの量は、軸長さL3の少なくとも約0.1%から少なくとも約99%までの範囲であってよい。
図5を参照すると、軸方向に区分された触媒物品110の他の実施形態が示されている。示された触媒物品110は、軸方向に区分された配列であり、ここで、上流帯域118の鉄で促進された第一モレキュラーシーブ材料は、第一基材112および第二基材113の別個の基材上で、下流帯域120の銅で促進された第二モレキュラーシーブ材料の上流に位置している。上流帯域118の鉄で促進された第一モレキュラーシーブ材料は、第一基材112上に被覆され、下流帯域120の銅で促進された第二モレキュラーシーブ材料は、別個の第二基材113上に被覆される。第一基材112および第二基材113は、同一の材料または異なる材料からなってよい。第一基材112は、軸長さL5を定義する入口端部122aおよび出口端部124aを有している。第二基材113は、軸長さL6を定義する入口端部122bおよび出口端部124bを有している。1つまたは複数の実施形態では、一般的に、第一基材112および第二基材113は、ハニカム基材の複数のチャネル114を有し、明確にするために、そのうちの1つのチャネルが断面で示されているにすぎない。上流帯域118の鉄で促進された第一モレキュラーシーブ材料は、第一基材112の入口端部122aから出口端部124aに至るまでの第一基材112の全軸長さL5に延在している。上流帯域118の鉄で促進された第一モレキュラーシーブの長さは、図5では第一帯域長さ118aと示される。下流帯域120の銅で促進された第二モレキュラーシーブ材料は、第二基材113の出口端部124bから入口端部122bに至るまでの第二基材113の全軸長さL6に延在している。下流帯域120の銅で促進された第二モレキュラーシーブ材料は、図5では第二帯域長さ120aを定義している。帯域長さ118aおよび120aは、図5に関して記載の通り異なっていてよい。
図23を参照すると、軸方向に区分された触媒物品310の他の実施形態が示されている。示された触媒物品310は、軸方向に区分された配列であり、ここで、上流帯域は、鉄で促進された第一モレキュラーシーブ材料を備える上流帯域318と、銅で促進された第二モレキュラーシーブ材料を備える下流帯域319とに区分される。触媒物品310の下流帯域320は、銅で促進された第二モレキュラーシーブ材料を備える。下流帯域320の銅で促進された第二モレキュラーシーブ材料は、別個の基材上にあるため、触媒物品310は、第一基材312および第二基材313を有するものである。上流帯域318に区分された鉄で促進されたモレキュラーシーブおよび下流帯域319に区分された銅で促進されたモレキュラーシーブは、両方とも第一基材312上に被覆され、下流帯域320の銅で促進された第二モレキュラーシーブ材料は、別個の第二基材313上に被覆される。上流帯域318は、基材312の軸長さL35の約1%から約95%までが、鉄で促進された第一モレキュラーシーブ材料を備えるように区分されてよい。第一基材312および第二基材313は、同一の材料または異なる材料からなってよい。第一基材312は、軸長さL35を定義する入口端部322aおよび出口端部324aを有している。第二基材313は、軸長さL36を定義する入口端部322bおよび出口端部324bを有している。1つまたは複数の実施形態では、一般的に、第一基材312および第二基材313は、ハニカム基材の複数のチャネル314を有し、明確にするために、そのうちの1つのチャネルが断面で示されているにすぎない。下流帯域318の鉄で促進された第一モレキュラーシーブ材料は、前述の通り、第一基材312の入口端部322aから出口端部324aに至るまでの第一基材312の軸長さL35の一部に延在している。区分された上流帯域318/319の鉄/銅で促進されたモレキュラーシーブの長さは、図23では第一帯域長さ318aと示される。下流帯域320の銅で促進された第二モレキュラーシーブ材料は、第二基材313の出口端部324bから入口端部322bに至るまでの第二基材313の全軸長さL36に延在している。下流帯域320の銅で促進された第二モレキュラーシーブ材料は、図23では第二帯域長さ320aを定義している。帯域長さ318aおよび320aは、前述の通り異なっていてよい。
同様に、図24を参照すると、軸方向に区分された触媒物品410の他の実施形態が示されている。示された触媒物品410は、軸方向に区分された配列であり、ここで、下流帯域は、鉄で促進された第一モレキュラーシーブ材料を備える上流帯域420と、銅で促進された第二モレキュラーシーブ材料を備える下流帯域419とに区分されている。触媒物品410の上流帯域418は、鉄で促進された第一モレキュラーシーブ材料を備える。上流帯域418は、別個の基材上にあるため、触媒物品410は、第一基材412および第二基材413を有するものである。上流帯域420の鉄で促進されたモレキュラーシーブおよび下流帯域419の銅で促進されたモレキュラーシーブは、第二基材413上に被覆され、上流帯域418の鉄で促進された第一モレキュラーシーブ材料は、別個の第一基材412上に被覆される。下流帯域420は、基材413の軸長さL46の約1%から約95%までが鉄で促進された第一モレキュラーシーブ材料を備えるように区分されてよい。第一基材412および第二基材413は、同一の材料または異なる材料からなってよい。第一基材412は、軸長さL45を定義する入口端部422aおよび出口端部424aを有している。第二基材413は、軸長さL46を定義する入口端部422bおよび出口端部424bを有している。1つまたは複数の実施形態では、第一基材412および第二基材413は、一般的に、ハニカム基材の多数のチャネル414を有するものであり、明確にするために、そのうちの1つのチャネルが断面で示されているにすぎない。上流帯域418の鉄で促進された第一モレキュラーシーブ材料は、第一基材412の入口端部422aから出口端部424aに至るまでの第一基材412の全軸長さL45に延在している。上流帯域418の鉄で促進されたモレキュラーシーブの長さは、図24では第一帯域長さ418aと示される。区分された帯域419/420の鉄/銅で促進された第二モレキュラーシーブ材料は、第二基材413の出口端部424bから入口端部422bに至るまでの第二基材413の全軸長さL46に延在している。区分された下流帯域420の鉄/銅で促進された第二モレキュラーシーブ材料は、図24では第二帯域長さ420aを定義している。帯域長さ418aおよび420aは、図24に関して前述の通り異なっていてよい。
さらなる実施形態では、触媒システムは、層状物品である。図6を参照すると、1つまたは複数の実施形態では、触媒システムは、層状物品90を含むものであり、ここで、基材92は、銅で促進された第二モレキュラーシーブ材料でウォッシュコートされて第一層(またはボトムウォッシュコート層)94が形成され、鉄で促進された第一モレキュラーシーブ材料が第一層上にウォッシュコートされて、第二層(またはトップウォッシュコート層)96が形成される。当業者には、トップウォッシュコート層/第二層がボトムウォッシュコート層/第一層の上流にあるため、トップウォッシュコート層/第二層は上流帯域であり、ボトムウォッシュコート層/第一層は下流帯域であることが理解されるであろう。
1つまたは複数の実施形態では、触媒材料(すなわち、金属で促進されたモレキュラーシーブ材料)は、ウォッシュコートとして基材(例えばフロースルー型ハニカムモノリス)に施与されてよい。ウォッシュコートは、液体溶媒(例えば水)中に特定の固形成分含有率(例えば30質量%から90質量%まで)の触媒材料を含むスラリーを調製することによって形成されるものであり、次に、基材上に被覆され、乾燥されてウォッシュコート層をもたらす。本願で使用される場合、「ウォッシュコート」という用語は、処理される気体流を通過させることができる実質的に多孔性の基材材料、例えばハニカム型担体部材(carrier member)に施与される触媒材料または他の材料の薄い粘着性の被膜の技術分野でのその通常の意味を有する。前述の通り、スラリーは、触媒材料を水と混ぜることによって形成されるものであり、特定の固形成分含有率(例えば約30質量%から90質量%まで)の触媒材料を含むスラリーが形成される。触媒材料の他に、スラリーは、任意に、アルミナを結合剤として、水溶性または水分散性安定剤(例えば酢酸バリウム)、促進剤(例えば硝酸ランタン)、会合性増粘剤、および/または界面活性剤(アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤または両性界面活性剤を含む)を含んでよい。触媒材料内で合金化をもたらしうる、分離した金属成分または関連する金属種の形成を避けるために、酸のスラリーへの添加を避けることが利点である。それに応じて、特定の実施形態では、触媒基材の被覆に使用されるスラリーは、実質的に酸を含まないか、または完全に酸を含まないものであってよい。
アルミナ結合剤は、存在している場合、一般的に約0.05g/in3から約1g/in3までの量で使用される。アルミナ結合剤は、例えば、ベーマイト、ガンマ−アルミナ、またはデルタ/シータアルミナであってよい。
スラリーは、粒子の混合および均一な材料の形成を高めるために粉砕されてよい。粉砕は、ボールミル、連続ミル、またはその他の類似の装置で行われてよく、スラリーの固体成分含有率は、例えば約20質量%から約60質量%まで、より好ましくは約30質量%から約40質量%までであってよい。1つの実施形態では、粉砕後スラリーは、約20マイクロメートルから約30マイクロメートルまでのD90粒径であることによって特徴づけられる。D90は、粒子の90%が比較的微細な粒径を有する粒径と定義される。
スラリーは、次に、当該技術分野で公知の、かつさらに下に記載のウォッシュコート技術を使用して触媒基材上に被覆される。
本願で使用される場合、「基材」または「基材担体」という用語は、触媒材料が一般的に前述のウォッシュコートの形態で設けられるモノリス型材料(monolithic material)を指す。1つまたは複数の実施形態では、基材は、ハニカム構造を有するセラミックまたは金属である。任意の好適な基材が用いられてよく、例えば、流体が通路を通過できるように、基材の入口面または出口面から延在している微細な平行の気体流路を有する種類のモノリス型基材が用いられてよい。流体入口から流体出口まで実質的に直線の経路である通路は、壁によって定義され、この壁上では、触媒材料がウォッシュコートとして被覆されるため、通路を通って流れる気体が触媒材料と接する。モノリス型基材の流路は、薄壁のチャネルであり、例えば台形、長方形、正方形、正弦曲線、六角形、楕円形、円形などの任意の好適な断面形状および寸法であってよい。そのような構造は、断面積1平方インチあたり約60から約900まで、またはそれより多い、より一般的には約300cpsiから約600cpsiまでの気体入口開口部(すなわちセル)を含んでいてよい。フロースルー型基材の壁厚は、異なっていてよく、一般的な範囲は、0.002インチと0.1インチの間である。代表的な市販のフロースルー型基材は、400cpsiおよび壁厚6ミル、または600cpsiおよび壁厚4ミルを有するコーディエライト基材である。しかしながら、本発明は、特定の基材の種類、材料、または形状に限定されないことが理解されるであろう。
代替的な実施形態では、基材は、ウォールフロー型基材であってよく、ここで、それぞれの通路は、基材本体の片端部で無孔性の栓(non−porous plug)によって塞がれ、向かい合った端部面で、塞がれた通路が互い違いになっている。これによって、気体は、出口に到達するまでウォールフロー型基材の多孔質の壁を流れることが求められる。そのようなモノリス型基材は、最大約700cpsiまたはそれ以上、例えば約100cpsiから400cpsiまで、より一般的に約200cpsiから約300cpsiまで含んでよい。セルの断面形状は、上述の通り異なっていてよい。一般的に、ウォールフロー型基材は、0.002インチから0.1インチの間の壁厚を有する。代表的な市販のウォールフロー型基材は、多孔質のコーディエライトで構成されており、その一例は、200cpsiおよび壁厚10ミル、または壁厚8ミルで300cpsi、および45%から65%の間の壁多孔率を有するものである。他のセラミック材料、例えばチタン酸アルミニウム、炭化ケイ素および窒化ケイ素も、ウォールフロー型フィルター基材として使用される。しかしながら、本発明は、特定の基材の種類、材料、または形状に限定されないことが理解されるであろう。基材がウォールフロー型基材である場合、触媒物品(すなわちSCR触媒)組成物は、壁の表面上で被覆されることに加えて、多孔質の壁の細孔構造に浸透できるものである(すなわち細孔開口部を部分的または完全に閉塞する)。金属基材としては、任意の金属基材、例えばチャネル壁に開口部または「穿孔」を有するものを挙げることができる。
セラミック基材は、任意の好適な難燃性物質、例えばコーディエライト、コーディエライト−α−アルミナ、窒化ケイ素、ジルコンムライト、リシア輝石、アルミナ−シリカ−マグネシア、ケイ酸ジルコン、シリマナイト、ケイ酸マグネシウム、ジルコン、ペタライト、α−アルミナ、アルミノケイ酸塩などから作られたものであってよい。
本発明の実施形態の触媒材料に有用な基材は、実質的に金属であり、かつ1つまたは複数の金属または金属合金から構成されるものであってもよい。金属基材は、種々の形状、例えばペレット、波形板またはモノリス型形態で使用されてよい。金属基材の具体例としては、耐熱性の卑金属合金、特に鉄が実質的な成分または主成分であるものが挙げられる。そのような合金は、ニッケル、クロム、およびアルミニウムの1つまたは複数を含んでよく、かつこれらの金属の合計は、有利には、合金の少なくとも約15質量%を占めてよく、例えばクロムが約10質量%から約25質量%まで、アルミニウムが約1質量%から約8質量%まで、およびニッケルが約0質量%から約20質量%まで占めてよい。
1つまたは複数の実施形態では、上流帯域および/または下流帯域は、高多孔率のセラミックハニカムフロースルー型支持体上に被覆される。高多孔率のセラミックハニカムフロースルー型支持体は、以下の特性を有するものであってよい:大きい割合の連通細孔;壁材料の多孔率は約50%超であり、多孔率は最大約70%;約20マイクロメートル超、例えば約25マイクロメートル超、さらに具体的に約30マイクロメートル超、特に約40マイクロメートル超であるが、約100マイクロメートル未満の平均細孔径;および広範囲の細孔径分布。
1つまたは複数の実施形態では、選択接触還元物品は、上流の鉄で促進された第一モレキュラーシーブ材料を備える、および/または下流の銅で促進された第二モレキュラーシーブ材料は、ウォールフロー型フィルター上に被覆される。当業者に認識される通り、選択接触還元物品がウォールフロー型フィルター上に被覆される場合、SCR on Filterがもたらされる。1つまたはより具体的な実施形態では、鉄で促進された第一モレキュラーシーブ材料を備える上流帯域は、ウォールフロー型フィルター上に被覆され(例えばSCR on Filter(SCRoF)を製造するため)、銅で促進された第二モレキュラーシーブ材料を備える下流帯域は、フロースルー型モノリス上に被覆される。他の実施形態では、上流帯域も下流帯域もウォールフロー型フィルター上に被覆される。そのような実施形態では、上流帯域も下流帯域もウォールフロー型フィルター上に被覆される場合、上流帯域および下流帯域は、ただ1つのウォールフロー型フィルター上に被覆されてよいか、または上流帯域および下流帯域は、別個のウォールフロー型フィルター上に被覆されてよいため、2つの改良された基材(すなわちブリック)は、排ガス処理システム内に存在している。
図7Aおよび図7Bは、複数の通路52を有するウォールフロー型フィルター基材130を示している。通路は、フィルター基材のチャネル壁53によって管状に囲まれている。基材は、入口端部54および出口端部56を有している。互い違いになっている通路は、入口端部では入口栓58で目封じされ、出口端部では出口栓60で目封じされて、入口端部54および出口端部56で相対する市松模様を形成している。気体流62は、目封じされていないチャネル入口64を通って入り、出口栓60に止められ、(多孔質の)チャネル壁53を通って出口側66に拡散する。気体は、入口栓58があるため、壁の入口側に戻ることはできない。
鉄で促進された第一モレキュラーシーブ材料も銅で促進された第二モレキュラーシーブ材料もウォールフロー型フィルター基材上に被覆するためには、鉄で促進された第一モレキュラーシーブ材料は、銅で促進された第二モレキュラーシーブ材料に向かう排ガス流の上流に被覆される。これは、以下を含むいくつかの方法で行うことができるが、これらに限定されない:(1)鉄で促進された第一モレキュラーシーブ材料を、入口壁表面付近または入口壁表面で、鉄で促進された第一モレキュラーシーブ材料の濃度勾配を維持するように入口チャネル上に被覆し、銅で促進された第二モレキュラーシーブを、出口壁表面付近または出口壁表面で、銅で促進された第二モレキュラーシーブ材料の濃度勾配を維持するように出口チャネル上に被覆する。これによって、鉄で促進された第一モレキュラーシーブ材料と銅で促進された第二モレキュラーシーブ材料とを、壁厚の中央を越えていくらか混合させることができる;(2)鉄で促進された第一モレキュラーシーブ材料を入口チャネル上に被覆し、ウォッシュコーティングが壁を通って浸透できるようにし(そこには常に多少勾配がある)、次に、銅で促進された第二モレキュラーシーブ材料を、フィルター壁に過度に浸透しないように出口チャネル表面上に被覆する。当然、これには、排気流中に浸食または噴出させないように、銅で促進された第二モレキュラーシーブ材料の出口壁への良好な付着性が必要とされる;(3)銅で促進された第二モレキュラーシーブ材料を、フィルター壁を通して浸透するように出口チャネル上に被覆する。これは、入口チャネル上からも行えるが、銅で促進された第二モレキュラーシーブ材料のフィルター壁への良好な浸透を達成する必要があり、次に、1つの層を入口チャネル壁上に形成して、フィルターの壁孔に(あまり)浸透しないように、鉄で促進された第一モレキュラーシーブを入口チャネルに施与する;(4)鉄で促進された第一モレキュラーシーブ材料を、フィルター基材の全長に満たない深さまで入口チャネル上に被覆する。銅で促進された第二モレキュラーシーブ材料を、フィルター基材の全長に満たない深さまで出口チャネル上に被覆する。入口の鉄で促進された第一モレキュラーシーブ材料および出口の銅で促進された第二モレキュラーシーブ帯域は、長さが異なっていてよく、(a)互いに隣接しているか、(b)互いに重なっているか、または(c)帯域間に間隙を有していてよい。(5)2つのフィルター基材は、平行に配列されてよく、第一のフィルター基材は、鉄で促進された第一モレキュラーシーブ材料で被覆され、第二の下流フィルター基材は、銅で促進された第二モレキュラーシーブ材料で被覆される;(6)鉄で促進された第一モレキュラーシーブ材料を出口チャネル上に被覆し、その材料が壁に浸透できるようにして、次に、銅で促進された第二モレキュラーシーブ材料を出口上に被覆して、壁への浸透を最小限に抑える。
1つまたは複数の実施形態では、ウォールフロー型フィルター基材は、セラミック様の材料、例えばコーディエライト、α−アルミナ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコニア、ムライト、リシア輝石、アルミナ−シリカ−マグネシアまたはケイ酸ジルコニウム、または多孔性の耐熱性金属から構成されるものである。他の実施形態では、ウォールフロー型基材は、セラミック繊維複合材料から形成されるものである。具体的な実施形態では、ウォールフロー型基材は、コーディエライトおよび炭化ケイ素から形成されるものである。そのような物質は、環境、特に排気流の処理で直面する高温に耐えることができる。
1つまたは複数の実施形態では、ウォールフロー型基材としては、薄い多孔質壁のハニカムモノリスが挙げられ、このモノリスを通って、流体流は、背圧または物品にわたる圧力の上昇を過度に起こすことなく通過する。通常、清浄なウォールフロー型物品の存在は、水柱約1インチから約10psigまでの背圧を作り出すことになる。システムで使用されるセラミックウォールフロー型基材は、少なくとも約50%(例えば約50%から約75%まで)の多孔率を有し、少なくとも約5マイクロメートル(例えば約5マイクロメートルから約30マイクロメートルまで)の平均細孔径を有する材料で形成されるものである。1つまたは複数の実施形態では、基材は、少なくとも約55%の多孔率を有し、かつ少なくとも約10マイクロメートルの平均細孔径を有するものである。これらの多孔率およびこれらの平均細孔径を有する基材が、以下に記載の技術によって被覆される場合、充分なレベルの触媒組成物が基材上に充填されて、優れたNOx転化効率を達成することができる。これらの基材は、SCR触媒の充填にもかかわらず、適切な排気流特性、すなわち許容範囲の背圧をなおも維持することができる。米国特許第4,329,162号明細書(US4,329,162)は、好適なウォールフロー型基材の開示に関して、参照によって本願に援用される。
商業的用途の一般的なウォールフロー型フィルターは、本発明で利用されるウォールフロー型フィルターより低い多孔率、例えば約35%から約50%までで形成されるものである。一般に、市販のウォールフロー型フィルターの細孔径分布は、一般的に、約17マイクロメートルより小さい平均細孔径できわめて広範囲である。
1つまたは複数の実施形態で使用される多孔質のウォールフロー型フィルターは、前述の構成部材である壁が、1つまたは複数の触媒材料をその上に有するか、またはその中に含むように触媒作用を受ける。触媒材料は、構成部材の壁の入口側にのみ存在してよいか、出口側にのみ存在してよいか、入口側にも出口側にも存在してよいか、または壁それ自体がすべて触媒材料からなってよいか、または部分的に触媒材料からなってよい。本発明は、構成部材の入口壁および/または出口壁上での、触媒材料の1つまたは複数の層、ならびに触媒材料の1つまたは複数の層の組み合わせを使用することを含む。
ウォールフロー型基材を1つまたは複数の実施形態の触媒材料で被覆するために、基材の頂部がスラリーのちょうど表面上に位置するように、基材を、触媒材料を含むスラリーの一部に垂直に浸漬する。この方法では、スラリーは、それぞれのハニカム壁の入口面に接触するが、それぞれの壁の出口面と接触しないようにされる。試料基材を、約30秒の間、スラリー中に置いておく。次に、基材をスラリーから取り出し、余分のスラリーを、まず、重力を使用してチャネルから排出させることによって、次に、圧縮空気で(スラリー浸透の方向とは反対に)吹き飛ばすことによって、次に、スラリー浸透の方向から真空引きすることによって、ウォールフロー型基材から取り除く。この技術を使用することによって、スラリーは基材の壁に浸透することができるが、それにもかかわらず細孔は、完成した基材において必要以上の背圧が高まる程度まで閉塞されない。本願で使用される場合、「浸透」という用語は、触媒材料を含むスラリーの基材上での分散を説明するために使用される場合、触媒材料が、基材の壁を通して分散されることを意味する。
被覆された基材は、一般的に約100℃で乾燥され、比較的高い温度(例えば約300℃から約450℃まで)で焼成される。ウォッシュコートまたは触媒金属成分または組成物の他の成分の量を説明する際、触媒基材の単位容積あたりの成分の重量単位を使用するのが都合がよい。したがって、立方インチあたりのグラム(「g/in3」)および立方フィートあたりのグラム(「g/ft3」)の単位は、本願では、基材の空隙の容積を含めた、基材の容積あたりの成分の重量を意味するために使用される。他の容積あたりの重量の単位、例えばg/Lも、時折、使用される。基材、例えばモノリスフロースルー型基材上の触媒材料の(すなわち、モレキュラーシーブ材料上のイオン交換された金属)合計充填量(total loading)は、一般的に約0.5g/in3から約6g/in3まで、より一般的に約1g/in3から約5g/in3までである。焼成後、触媒充填量は、基材の被覆重量および未被覆重量の計算によって測定することができる。当業者に明らかであるように、触媒充填量は、コーティングスラリーの固形成分含有率を変更することによって改善することができる。代替的に、基材のコーティングスラリーへの浸漬が繰り返され、それに続いて、前述の過剰のスラリーを除去することができる。
1つまたは複数の実施形態では、排ガス処理システムは、SCR触媒システムの上流およびエンジンの下流にスートフィルターをさらに含む。触媒システムは、スートフィルターの下流に配置され、スートフィルターは、触媒作用を受けるか、または触媒作用を受けなくてよい。
1つまたは複数の実施形態では、システムは、エンジンの下流に位置しているディーゼル酸化触媒をさらに含んでよい。具体的な実施形態では、ディーゼル酸化触媒は、1つまたは複数の実施形態の触媒システムの上流に位置している。他の具体的な実施形態では、ディーゼル酸化触媒も触媒化スートフィルターも、1つまたは複数の実施形態のSCR触媒システムの上流に位置している。
1つまたは複数の実施形態では、アンモニア酸化触媒は、1つまたは複数の実施形態のSCR触媒システムの下流に設けられて、任意の排出されたアンモニアを排ガス処理システムから除去することができる。具体的な実施形態では、AMOx触媒は、白金族金属(PGM)、例えば白金、パラジウム、ロジウム、またはその組み合わせを含んでよい。1つまたは複数の実施形態では、AMOx触媒は、PGMを含むボトムコートと、SCR機能を有するトップコートとを含んでよい。
そのようなAMOx触媒は、すでにSCR触媒を含む、排ガス処理システムにおいて有用である。同一出願人による米国特許第5,516,497号明細書(US5,516,497)で議論される通り(その全内容は参照によって本願に援用される)、酸素、窒素酸化物、およびアンモニアを含む気体流は、実質的に、第一触媒および第二触媒を通過することができ、第一触媒は、窒素酸化物の還元に都合が良く、第二触媒は、過剰のアンモニアの酸化または分解に都合が良い。したがって、第一触媒は、鉄で促進された第一モレキュラーシーブ材料を備える上流帯域および、銅で促進された第二モレキュラーシーブ材料を備える下流帯域を有する本発明の1つまたは複数の実施形態によるSCR触媒物品であってよく、第二触媒は、AMOx触媒および/またはSCRとAMOxが統合された、任意にゼオライトを含む触媒の組み合わせであってよい。
1つ以上のAMOx触媒組成物は、フロースルー型フィルターまたはウォールフロー型フィルター上に被覆されてよい。ウォールフロー型基材が利用される場合、結果として生じるシステムは、粒子状物質をガス状汚染物質とともに除去することができる。ウォールフロー型フィルター基材は、当該技術分野で周知の材料、例えばコーディエライト、チタン酸アルミニウムまたは炭化ケイ素で作られるものであってよい。触媒組成物のウォールフロー型基材への充填量は、基材特性、例えば多孔率および壁厚に左右され、一般的にフロースルー型基材上の充填量より少ない。
触媒の調製:
CHA型モレキュラーシーブの合成
CHA構造を有するモレキュラーシーブは、当該技術分野で公知の種々の手法、例えば米国特許第4,544,538号明細書(US4,544,538)(Zones)および米国特許第6,709,644号明細書(US6,709,644)(Zones)にしたがって調製することができ、そのすべては、参照によって本願に援用される。これらのモレキュラーシーブは、0.5マイクロメートル未満の粒径を有することが公知であることが留意される。
任意にNH4交換してNH4−CHAを形成する:
任意に、得られたアルカリ金属ゼオライトを、NH4交換して、NH4−CHAを形成する。NH4−イオン交換は、当該技術分野に公知の種々の手法、例えばBleken,F.;Bjorgen,M.;Palumbo,L.;Bordiga,S.;Svelle,S.;Lillerud,K.−P.;and Olsbye,U.Topics in Catalysis 52,(2009),218〜228にしたがって行うことができる。
アルカリ金属またはNH4−CHAに銅交換または鉄交換して金属CHAを形成する:
銅イオンまたは鉄イオンは、アルカリ金属またはNH4モレキュラーシーブにイオン交換される。具体的な実施形態では、銅イオンまたは鉄イオンはアルカリ金属またはNH4−CHAにイオン交換されて、Cu−CHAまたはFe−CHAが形成される。酢酸銅が使用される場合、銅イオン交換で使用される液体銅溶液の銅濃度は、具体的な実施形態では、約0.01モルから約0.4モルまでの範囲、より具体的には約0.05モルから約0.3モルまでの範囲、さらにより具体的には約0.1モルから約0.25モルまでの範囲、さらにより具体的には約0.125モルから約0.25モルの範囲、さらにより具体的には約0.15モルから約0.225モルまでの範囲にある。
本発明の実施形態によれば、本発明のモレキュラーシーブ材料は、触媒法で使用される。一般に、本発明の触媒システムおよび触媒物品は、任意の考えられる触媒法で使用されてよく、ここで、方法は、少なくとも1つの有機化合物、より具体的には少なくとも1つの炭素−炭素結合および/または炭素−酸素結合および/または炭素−窒素結合を含む有機化合物、より具体的には少なくとも1つの炭素−炭素結合および/または炭素−酸素結合を含む有機化合物、さらにより具体的には少なくとも1つの炭素−炭素結合を含む有機化合物の変換を含む。本発明の特に具体的な実施形態では、触媒システムおよび触媒物品は、メタノールからオレフィンへの(methanol−to−olefin)(MTO)反応、エチレンからプロピレンへの(ethylene−to−propylene)(ETP)反応だけでなく、メタノールおよびエチレンの共反応(the co−reaction of methanol and ethylene)(CME)の任意の1つまたは複数を触媒作用するために使用することができる。本方法は、化合物と本発明の実施形態による組成物または触媒物品との接触を含む。
金属のイオン交換
鉄により促進された第一モレキュラーシーブ材料および銅により促進された第二モレキュラーシーブ材料は、他の金属により促進されてもよい。好適な金属としては、これに限定されないが、銅、鉄、コバルト、ニッケル、セリウム、マンガン、亜鉛、チタン、ジルコニウム、およびその組み合わせが挙げられる。金属は、ゼオライトの製造後に交換されてよい。1つまたは複数の実施形態によれば、金属の少なくとも一部は、適合したコロイド(tailored colloid)に含まれていてよく、その結果、適合したコロイドは、構造指向剤、シリカ源、およびアルミナ源および金属イオン(例えば銅)源を含む。
窒素の酸化物のSCRの追加的な促進のために、好適なアルカリ土類金属またはアルカリ金属が、鉄で促進されたモレキュラーシーブ材料または銅で促進されたモレキュラーシーブ材料に交換される。好適なアルカリ土類金属またはアルカリ金属としては、これに限定されないが、バリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、およびその組み合わせが挙げられる。具体的な実施形態では、アルカリ土類金属成分またはアルカリ金属成分は、バリウム、マグネシウム、カルシウムおよびその組み合わせから選択されるものである。金属は、モレキュラーシーブ材料の製造後に交換されてよい。
NOxの還元方法:
一般に、上述の鉄で促進された第一モレキュラーシーブ材料および銅で促進された第二モレキュラーシーブ材料は、モレキュラーシーブ、吸収剤、触媒、触媒支持体、または結合剤として使用することができる。1つまたは複数の実施形態では、鉄で促進された第一モレキュラーシーブ材料および銅で促進された第二モレキュラーシーブ材料は、組み合わされて触媒システムにおける触媒物品として使用される。
本発明の触媒システムまたは触媒物品は、少なくとも1つの窒素−酸素結合を含む少なくとも1つの化合物の変換を含む触媒法で使用することができる。本発明の実施形態は、窒素酸化物NOx含有流を本発明による触媒システムまたは触媒物品と好適な還元条件下に接触させることによって、窒素酸化物NOxを選択的に還元するための方法;NH3の酸化、特にディーゼルシステムにおけるNH3スリップをNH3を含む流を触媒システムと好適な酸化条件下に接触させることによって酸化させる方法;N2Oを含む流を触媒システムまたは触媒物品と好適な分解条件下に接触させることによってN2Oを分解する方法;改良型排出システム(Advanced Emission Systems)、例えば予混合圧縮着火(Homogeneous Charge Compression Ignition)(HCCI)エンジンにおける排出量を、排出流を触媒システムまたは触媒物品と好適な条件下に接触させることによって制御する方法;組成物が添加剤として使用される流動接触分解FCC法;有機化合物を、前述の化合物を触媒システムまたは触媒物品と好適な変換条件下に接触させることによって変換する方法;触媒システムまたは触媒物品が使用される「固定発生源」法にも関する。
本発明の実施形態は、窒素酸化物NOxを選択的に還元するための方法にも関し、ここで、高水準(4g/bhph超)の窒素酸化物NOx、具体的にはアンモニアおよび尿素も含む気体流を、1つまたは複数の実施形態による触媒システムまたは触媒物品、例えば成形された触媒物品の形態の、具体的には成形された触媒物品である触媒システムまたは触媒物品と接触させ、ここで、ウォッシュコートが、好適な耐熱性担体上に、さらにより具体的には「ハニカム」担体またはウォールフロー型フィルター上に付着される。
本発明の実施形態による触媒システムまたは触媒物品を使用して還元される窒素酸化物は、任意の方法によって、例えば廃ガス流として得ることができる。とりわけ、アジピン酸、硝酸、ヒドロキシルアミン誘導体、カプロラクタム、グリオキサル、メチル−グリオキサル、グリオキサル酸を生成するための方法において、または窒素含有物を燃焼するための方法で得られる廃ガス流に言及することができる。
アンモニアは、定置発電所に選択される還元剤である一方、尿素は、移動式SCRシステムに選択される還元剤である。一般的に、SCRシステムは、車両の排ガス処理システムに統合されており、また一般的に、以下の主要な構成要素も含む:鉄により促進された上流第一モレキュラーシーブおよび銅により促進された下流第二モレキュラーシーブを有する選択接触還元触媒物品、本発明の実施形態によるd6r単位を有する第一モレキュラーシーブおよび第二モレキュラーシーブ;尿素吸蔵槽;尿素ポンプ;尿素供給システム;尿素噴射装置/ノズル;ならびに各制御装置。
本願で使用される場合、「流」という用語は、固体または液体の粒子状物質を含みうる流動気体の任意の組み合わせを広範囲に指す。「気体流」または「排ガス流」という用語は、気体状構成成分の流、例えば同伴される非気体状成分、例えば液滴、固体粒子などを含みうるリーンバーンエンジンの排出を意味する。一般的に、リーンバーンエンジンの排ガス流は、燃焼生成物、不完全燃焼による生成物、窒素の酸化物、可燃性および/または炭素質の粒子状物質(スート)、および未反応の酸素および窒素をさらに含む。
より具体的な実施形態は、化学量論的燃焼に必要な量を超過した量の空気を使用する燃焼条件、すなわち希薄条件で作動する内燃機関、特にディーゼルエンジンの排ガスから窒素酸化物NOxを除去するための触媒システムの使用に関する。
エンジン排気の処理方法:
本発明の他の態様は、エンジンの排ガス流を処理する方法を対象としている。1つまたは複数の実施形態では、エンジン排ガス流の処理の方法は、NOx(例えばヘビーデューティ過渡サイクルにわたって4g/bhph超のNOxレベル)含有エンジン排ガス流の、(1)銅ゼオライトを含まない、N2Oの形成を最小限に抑える働きをする上流のSCR帯域と、(2)銅および二重6員環単位を有するモレキュラーシーブを備える下流の活性SCR帯域とを有する選択接触還元物品を含む触媒システムによる処理を含む。触媒システムは、排ガス流において4g/bhph超の高いNOxレベルを低減させるのに効果的であることもある。1つまたは複数の具体的な実施形態では、第一モレキュラーシーブ材料および第二モレキュラーシーブ材料は、CHA骨格型を有するものである。
1つまたは複数の実施形態では、エンジン排ガス流の処理のための方法は、排ガス流を上流のディーゼル酸化触媒(DOC)および/または触媒化スートフィルター(CSF)に流して、上流のSCR帯域に到達する前に約0.1〜約0.85のNO2/NOx流出量比をもたらすことをさらに含み、これには、約0.3〜約0.65が含まれる。1つまたは複数の実施形態では、NOxを含む排ガス流が、上流の(触媒化)スートフィルターを通過する場合、約0.1〜約0.85のNO2/NOx比を有する流出物が、排ガス流が鉄で促進された第一モレキュラーシーブ材料を備える上流のSCR帯域に到達する前に製造され、これには、約0.3〜約0.65が含まれ、これには、約0.1、約0.15、約0.2、約0.25、約0.3、約0.35、約0.4、約0.45、約0.5、約0.55、約0.6、および約0.65が含まれる。理論にとらわれるものではないが、銅で促進された第二モレキュラーシーブの上流に鉄で促進された第一モレキュラーシーブを有するシステムの場合、0.4から0.5までの範囲のNO2/NOxを有する入口排気が必要とされ、これは、「高速SCR反応」の場合に近い。鉄で促進された第一モレキュラーシーブ活性は、排気中の比較的低いNO2/NOxで、例えば約0.3で低下する(63%まで)。銅で促進された第二モレキュラーシーブは、約0.3では依然として良好に作動できる。
いくつかの実施形態では、本発明の実施形態に記載の触媒物品によるNOx含有エンジン排ガス流の処理の方法は、NOx排出量レベルを、本発明の触媒物品と接触する前の排ガス流中で測定したNOx排出量レベルと比べて少なくとも5倍、好ましくは10倍、より好ましくは15倍低減する。例えば、いくつかの実施形態では、NOx排出量レベルの量は、少なくとも約1.5g/bhph、または少なくとも約1.0g/bhph、または少なくとも約0.5g/bhph、または少なくとも約0.25g/bhph、または少なくとも約0.1g/bhph、または少なくとも約0.05g/bhphに低減される。いくつかの実施形態では、NOx排出量レベルは、記載の触媒物品のNOx変換活性のために低減する。触媒物品は、排ガス流中に存在しているNOxのモル量と比べてモル過剰である還元剤の存在下にNOxを還元させる(すなわち、還元剤:NOxの比は、少なくとも約1.05:1である)。触媒物品は、少なくとも約80%、または少なくとも約90%、または少なくとも約95%、または少なくとも約96%、または少なくとも約96%、または少なくとも約97%、または少なくとも約98%、または少なくとも約99%、または少なくとも約99.5%のNOx転化率を示す。
いくつかの実施形態では、本発明の実施形態に記載の触媒物品によるNOx含有エンジン排ガス流の処理の方法は、N2O排出量を、第一帯域が第一モレキュラーシーブ材料上にイオン交換された鉄を含まない触媒物品と比べて少なくとも約50%、より好ましくは65%、さらにより好ましくは75%少なく生じさせる。例えば、いくつかの実施形態では、N2O発生量は、本願の実施形態の触媒物品の場合、約0.25g/bhph未満、好ましくは約0.1g/bhph未満、より好ましくは約0.05g/bhph未満である。
ここで、本発明を以下の例をもとに説明する。本発明のいくつかの例示的な実施形態を説明する前に、本発明が、以下に記述される構造の詳細または方法工程に限定されないことが理解されるべきである。本発明は、他の実施形態が可能であり、かつ種々の方法で実行または実施することができる。
ヘビーデューティ過渡サイクルエンジンで使用される触媒システム構成を示す図
1つまたは複数の実施形態による触媒物品の部分断面図
1つまたは複数の実施形態による触媒物品の部分断面図
1つまたは複数の実施形態による触媒物品の部分断面図
1つまたは複数の実施形態による触媒物品の部分断面図
1つまたは複数の実施形態による触媒物品の部分断面図
1つまたは複数の実施形態による触媒物品の部分断面図
ウォールフロー型フィルター基材の斜視図
ウォールフロー型フィルター基材の部分の断面図
エンジン試験および参照と本発明の1つの例との比較に使用される後処理システム構成の図
エンジン評価のためのFTP過渡試験にわたるSCR1−inおよびSCR2−inでの排気温度を示すグラフ
エンジン評価のためのFTP過渡試験にわたるSCR1およびSCR2のガス空間速度を示すグラフ
8つのFTPサイクル試験プロトコルにわたるサイクル毎のデータ(NOx転化率(%)およびNOx排出量レベル(g/bhph))の1つの例を示すグラフ
参照および本発明による例の試験の、尿素噴射レベル(NSR)に応じた平均NOx排出量レベル(g/bhph)のグラフ
参照および本発明による例の試験の、尿素噴射レベル(NSR)に応じた平均N2O排出量レベル(g/bhph)のグラフ
参照および本発明による例の構成のエンジン試験の、NOx還元量(g/bhph)に応じたN2O発生量(g/bhph)のグラフ
エンジン試験プロトコルの最後3つのFTPサイクルにわたる参照の試験構成のSCR1−outおよびSCR2−outでのNH3スリップ(ppm)のグラフ
エンジン試験プロトコルの最後3つのFTPサイクルにわたる本発明による例の試験構成のSCR1−outおよびSCR2−outでのNH3スリップ(ppm)のグラフ
Fe−SSZ13/Cu−SSZ13の長さが異なるSCR−1およびSCR−2の評価のためのHDD(Heavy Diesel Duty)におけるエンジン試験に使用される後処理システムの構成図
システムの構成要素の位置(FTP6〜8サイクル)による排気温度のグラフ
エージングしたTEX−1708+TEX−1596を使用し、NSR=1.1であるHDDシステム試験の8つのFTPサイクル試験プロトコルにわたるサイクル毎のデータ(NOx転化率(%)およびNOx排出量レベル(g/bhph))の1つの例のグラフ
Fe−SSZ13/Cu−SSZ13の長さが異なるSCR1およびSCR2の4つの異なる組み合わせの、CSF−out、SCR1−outおよびSCR2−outでのBSNOxおよびBSN2Oレベル(g/bhph)の棒グラフ
Fe−SSZ13/Cu−SSZ13の長さが異なるSCR1およびSCR2の4つの異なる組み合わせの、CSF−out、SCR1−outおよびSCR2−outでのBSNOxおよびBSN2Oレベル(g/bhph)を示す図20の棒グラフの拡大を示す棒グラフ
Fe−SSZ13/Cu−SSZ13の長さが異なるSCR1およびSCR2の4つの異なる組み合わせの、CSF−out、SCR1−outおよびSCR2−outでのBSNOxおよびBSN2Oレベル(g/bhph)を示す図20の棒グラフの拡大を示す棒グラフ
1つまたは複数の実施形態による、区分された触媒物品の部分断面図
1つまたは複数の実施形態による、区分された触媒物品の部分断面図
実施例
例1 Cu−CHAの調製
Cu−CHA粉末触媒は、TMAOH(トリメチルアンモニウムヒドロキシド)およびTMAA(トリメチル−1−アダマンチルアンモニウムヒドロキシド)を含む合成ゲルを使用してCHA骨格型ゼオライトを結晶化し、CHA骨格型生成物を分離し、有機構造規定剤(template)(TMAOHおよびTMAA)を除去するために乾燥および焼成することによって調製した。コロイドシリカおよびアルミニウムトリイソプロポキシドを使用した。2つの構造規定剤TMAOHおよびTMAAを添加後、合成ゲルをオートクレーブに移して熱水結晶化させた。熱水結晶化の後、懸濁液に水を混ぜて、ろ過した。次に、湿潤した生成物を乾燥して、さらに焼成した。その結果、焼成された生成物は、金属含有触媒を得るために、Cuでイオン交換される準備が整えられた。
Na型CHAと銅イオンとのイオン交換反応は、当該技術分野において公知の種々の技術、例えば米国特許第4,544,538号明細書(US4,544,538)(Zones)および米国特許第6,709,644号明細書(US6,709,644)(Zones)にしたがって実施し、それらの全内容は、本願に援用される。
例2 Fe−CHAの調製
Fe−CHA粉末触媒は、Na型CHAをイオン交換することによって調製した。スラリーを、Fe−CHAと結合剤から、当該技術分野において公知の種々の技術、例えば米国特許第4,544,538号明細書(US4,544,538)(Zones)および米国特許第6,709,644号明細書(US6,709,644)(Zones)にしたがって調製した。
例3 触媒物品Cu−CHA/Fe−CHAの調製
例3A:得られたCu−CHA触媒(例1)は、ICP分析によって測定して約3.25質量%の量のCuOを含んでいた。Cu−CHAスラリーを固形成分含有率30%から45%までに調製した。スラリーを粉砕し、希釈酢酸中の酢酸ジルコニウムの結合剤(30%のZrO2含有)を撹拌しながらスラリーに加えた。
スラリーを、400cpsiのセル密度(立方インチあたりのセル数)および6.5ミルの壁厚を有する、10.5’’D×6’’L(600/3)のセル状セラミックコア上に被覆した。被覆されたコアを110℃で3時間乾燥して、450℃で1時間焼成した。コーティングプロセスを繰り返して、所望のウォッシュコート充填量を得た。
例3B:得られたFe−CHA触媒(例2)は、ICP分析で測定して約2.3質量%の量のFe2O3を含んでいた。Fe−CHAスラリーを固形成分含有率30%から45%までに調製した。スラリーを粉砕して、希釈酢酸中の酢酸ジルコニウムの結合剤(30%のZrO2含有)を撹拌しながらスラリーに加えた。
スラリーを、400cpsiのセル密度(立方インチあたりのセル数)および6.5ミルの壁厚を有する10.5’’D×6’’L(600/3)のセル状セラミックコア上に被覆した。被覆されたコアを110℃で3時間乾燥して、400℃で1時間焼成した。コーティングプロセスを繰り返して、目標の約2.75g/in3のウォッシュコート充填量を得た。
例3Bブリックを例3Aブリックの上流に配置して、例3の触媒システムを準備した。
例4 Fe−CHA/Cu−CHAに区分された触媒物品の調製
得られたCu−CHA触媒(例1)は、ICP分析によって測定して約3.25質量%の量のCuOを含んでいた。Cu−CHAスラリーを固形成分含有率30%から45%までに調製した。スラリーを粉砕して、希釈酢酸中の酢酸ジルコニウムの結合剤(30%のZrO2含有)を撹拌しながらスラリーに加えた。得られたFe−CHA触媒(例2)は、ICP分析によって測定して約2.3質量%の量のFe2O3を含んでいた。Fe−CHAスラリーを固形成分含有率30%から45%までに調製した。スラリーを粉砕して、希釈酢酸中の酢酸ジルコニウムの結合剤(30%のZrO2含有)を撹拌しながらスラリーに加えた。
Fe−CHAスラリーを、Cu−CHAスラリーの上流で、400cpsiのセル密度(立方インチあたりのセル数)および6.5ミルの壁厚を有する、10.5’’D×6’’L(600/3)のセル状セラミックコア上に被覆した。被覆されたコアを110℃で3時間乾燥し、約400℃で1時間焼成した。コーティングプロセスを繰り返して、所望のウォッシュコート充填量を得た。
例5 比較の触媒物品Cu−CHA/Cu−CHA
得られたCu−CHA触媒(例1)は、ICP分析によって測定して約3.25質量%の量のCuOを含んでいた。Cu−CHAスラリーを固形成分含有率30%から45%までに調製した。スラリーを粉砕して、希釈酢酸中の酢酸ジルコニウムの結合剤(30%のZrO2含有)を撹拌しながらスラリーに加えた。
スラリーを、400cpsiのセル密度(立方インチあたりのセル数)および6.5ミルの壁厚を有する、10.5’’D×6’’L(600/3)のセル状セラミックコア上に被覆した。被覆されたコアを110℃で3時間乾燥し、約400℃で1時間焼成した。コーティングプロセスを繰り返して、所望のウォッシュコート充填量を得た。
例5B:得られたCu−CHA触媒(例1)は、ICP分析によって測定して約3.25質量%の量のCuOを含んでいた。Cu−CHAスラリーを固形成分含有率30%から45%までに調製した。スラリーを粉砕して、希釈酢酸中の酢酸ジルコニウムの結合剤(30%のZrO2含有)を撹拌しながらスラリーに加えた。
スラリーを、400cpsiのセル密度(立方インチあたりのセル数)および6.5ミルの壁厚を有する、10.5’’D×6’’L(600/3)のセル状セラミックコア上に被覆した。被覆されたコアを110℃で3時間乾燥し、約400℃で1時間焼成した。コーティングプロセスを繰り返して、所望のウォッシュコート充填量を得た。
例5Aブリックを例5Bブリックの上流に配置して、例5の触媒システムを準備した。
例6 比較のCu−CHA/Cu−CHAに区分された触媒物品
得られたCu−CHA触媒(例1)は、ICP分析によって測定して約3.25質量%の量のCuOを含んでいた。Cu−CHAスラリーを固形成分含有率30%から45%までに調製した。スラリーを粉砕して、希釈酢酸中の酢酸ジルコニウムの結合剤(30%のZrO2含有)を撹拌しながらスラリーに加えた。
Cu−CHAスラリーを、400cpsiのセル密度(立方インチあたりのセル数)および6.5ミルの壁厚を有する、10.5’’D×6’’L(600/3)のセル状セラミックコア上に被覆した。被覆されたコアを110℃で3時間乾燥し、約400℃で1時間焼成した。コーティングプロセスを繰り返して、所望のウォッシュコート充填量を得た。
例7 エンジン試験
エンジン試験は、上述の後処理システム構成のうちの1つ構成の有効性を示すために行った。これは、ディーゼル酸化触媒(DOC)と2つのフロースルー型選択接触還元ユニット(SCRs)の上流の触媒スートフィルター(CSF)とから直列してなるものである(図8):DOC:34g/ft3 白金族金属、Pt/Pd比=1.3/1.0、10.5’’×4’’/400/4、CSF:5g/ft3白金族金属、Pt/Pd比=10:1、10.5’’×12’’/200/12。下流のSCR触媒は、600cpsiのセル間隔を有する基材上に被覆され、それぞれ10.5’’×6’’の寸法である(容積8.5リットル)。エンジン試験のために、2つのSCR触媒構成を、例1から例6までで調製した触媒物品を使用して評価した。1つの構成は、第一(SCR1)位置にCu−チャバザイトを有し、かつ第二(SCR2)位置にもCu−チャバザイトを有する参照であった。もう1つの試験構成は、本発明の1つの例であり、SCR1位置のFe−チャバザイトおよびSCR2位置のCu−チャバザイトからなるものであった。両方の試験構成とも、SCR2位置のCu−チャバザイトは同じに維持して、SCR1位置の触媒のみを変更した。試験の前に、それぞれのSCR触媒を、システム内で連続的な「強制再生(active regeneration)」下に、SCR−inで100時間650℃にて適度な尿素噴射により(NSR=0.7)エージングした。
参照および本発明の構成の試験は、300HP、6.8リットル、6シリンダーエンジンで、過渡条件下に、8つの連続FTP(HDDT)サイクル(ソークなし)からなるプロトコルを使用して行った。このエンジンは、この試験において比較的高いサイクルの累積NOx排出量(5.6g/bhphから5.7g/bhphまで)を示す校正を使用した。試験プロトコルを実行する前に、システムを強制再生下に15分600℃(CSF−in)で清浄化した。それぞれのシステムの場合、試験プロトコルは、3回、尿素噴射レベルを変えて実行した。尿素噴射レベルは、単純なNOx追従ストラテジー(NOx−following strategy)を使用して、NSR=1.0、1.1および1.2であった。NSRという用語は、「正規化化学量論比」を表し、ANR(Ammonia NOx Ratio(アンモニアNOx比))と呼ばれることもあり、SCR反応の場合のアンモニア(噴射された尿素からの)のNOx(NO2として)に対するモル比率である。NSR=1.0は、理想的な条件化での反応を満たし、NSR=1.1および1.2は、それぞれ理想値を10%および20%上回って過剰供給されることを意味する。
エンジン試験プロトコルのFTP過渡にわたるSCR1−inおよびSCR2−inでの排気温度の1つの例が、図9に示されており、温度は約204℃から266℃までの範囲であることを読みとることができ、これは、SCR反応の比較的低い範囲にある。一般的に、尿素溶液は、緩慢な水分蒸発および尿素の遊離NH3への分解に関する問題のため、200℃未満で噴射されないが、しかしながら、試験プロトコルの場合、尿素を全サイクルにわたって噴射することが可能であった。
エンジン試験プロトコルのFTP過渡にわたるSCR1およびSCR2の場合のガス空間速度(GHSV)レベルの1つの例が、図10に示されている。それぞれの10.5’’×6’’(8.5リットル)のSCR触媒の場合、GHSVは、空転時約17Khr-1から約121Khr-1のピークまでの範囲であり、範囲を通して引かれた傾向線は、約48Khr-1の平均を示していることが分かる。このシステムでは、合計SCR容積(SCR1+SCR2)のGHSVレベルは、定められたレベルの半分である。
CSF−out(基準)およびSCR1−outおよびSCR2−outでのNOx排出量レベル(g/bhph)に関するSCR1−outおよびSCR2−outでの計算されたNOx転化率(%)レベルの1つの例は、8つのFTPサイクルプロトコルに対して図11に示されている。これは、NSR=1.2の尿素噴射による本発明の例示的な構成の試験の場合である。FTP 1サイクルでは、SCR1−outおよびSCR2−outでのNOx転化率は、比較的低く(それぞれ67%および74%)、相応するNOx排出量レベルは、比較的高い(それぞれ1.84g/bhphおよび1.48g/bhph)。このことは、システムが強制再生をあらかじめ受け、これによって吸蔵されたNH3がチャバザイトSCR触媒から除去されたことによる。しかしながら、システムは、FTP 2サイクルから8サイクルまででは速やかに平衡になっており、SCR1−outおよびSCR2−outでのNOx転化率レベルは、それぞれ約80%および98%に増加している。相応するNOx排出量レベルは、それぞれ1.0g/bhphから1.2g/bhphまで、および0.07g/bhphから0.1g/bhphまでに減少している。後者は、米国オンロードNOx要件を充分に下回っているとはいえ、試験プロトコルは、認証試験ではない。試験について平衡データは、最後の3つのFTPサイクルの平均とした(図示)。
参照のシステム(Cu−CHA SCR1+Cu−CHA SCR2)および本発明の1つの例(Fe−CHA SCR1+Cu−CHA SCR2)の場合の、尿素噴射レベル(NSR)に応じたCSF−out、SCR1−outおよびSCR2−outでの平衡平均NOx排出量レベルが図12で比較されている。すべての試験において、平均CSF−out(基準)NOx排出量レベルは、約5.7g/bhphであったことが分かる。図示されていないが、試験の場合の排気中のCSF−out FTPサイクル累積NO2/NOx比率は、平均すると約0.47(NO:NO2≒0.94)になり、これは、「高速SCR反応」に好ましい範囲であった。NOx排出量レベルは、SCR1−outおよびSCR2−outの両方のシステムで著しく減少したことも分かる。
参照のシステムの場合、Cu−CHA SCR1−outでのNOx排出量レベルは、0.55g/bhph(NSR=1.0)、0.37g/bhph(NSR=1.1)、0.28g/bhph(NSR=1.2)であり、これは、それぞれ90.3%、93.5%、95.1%のNOx転化率レベルであった。Cu−CHA SCR2−outでは、NOx排出量は、0.52g/bhph(NSR=1.0)、0.16g/bhph(NSR=1.1)、および0.06g/bhph(NSR=1.2)であり、これは、それぞれ90.8%、97.2%、および99.0%のNOx転化率レベルに相当する。明らかに、NOx還元は、尿素の過剰供給(NSR=1.1および1.2)によってSCR2−outで著しく増加した。これは、下流のSCR2触媒にわたる残留NOxとの反応のために、上流のSCR1からのより多くのNH3スリップによってもたらされた。
本発明の例示的な構成による反応は、若干異なっていた。Fe−CHA SCR1−outでのNOx排出量レベルは、わずかに低く、同程度であり(1.13g/bhphから1.15g/bhphまで)、これによって、尿素噴射(NSR)レベルにかかわらず、79.9%のNOx転化率がもたらされた。しかしながら、これにより、SCR1−outからCu−CHA SCR2−inへのNH3スリップがもたらされ、さらなる顕著なNOx還元のために利用される。本発明による例示的な構成の場合のCu−CHA SCR2−outでは、NOx排出量は、0.41g/bhph(NSR=1.0)、0.16g/bhph(NSR=1.1)、および0.10g/bhph(NSR=1.2)であり、これらは、それぞれ92.7%、97.2%、および98.2%のNOx転化率レベルに相当する。本発明による例示的な構成(Fe−CHA+Cu−CHA)の場合のSCR1−outでの比較的少ないNOx還元にもかかわらず、参照の構成(Cu−CHA+Cu−CHA)の場合に達成されたのと実質的に同じ、尿素噴射(NSR)レベルに応じたSCR2−outでのNOx還元を示した。
参照の構成および本発明による例示的な構成の試験の場合の、相応するN2O排出量レベルが、図13に示されている。
ここで、CSF−out(基準)での試験のN2O排出量レベルは、相当低い(0.024g/bhphから0.026g/bhphまで)ことが分かる。
参照の構成の場合、N2O排出量レベルは、CSF−outと比べて、SCR1−outにおいてもSCR2−outにおいても著しく増加したことが分かる。これによって、大量のN2Oが、Cu−CHA+Cu−CHA構成にわたってSCR反応の副生成物として生成されたことが明示された。試験によって、尿素噴射(NSR)レベルに応じて、N2O排出量も増加したが、それほどの程度ではないことも示された。SCR1−outでのN2O排出量レベルは、0.184g/bhph(NSR=1.0)、0.198g/bhph(NSR=1.1)、および0.208g/bhph(NSR=1.2)であった。N2O排出量のレベルは、SCR2にわたるNOx転化率の追加上昇のため、SCR2−outでわずかに増加し、それぞれ0.184g/bhph、0.206g/bhph、および0.218g/bhphであった。
本発明による例示的なシステム(Fe−CHA+Cu−CHA)の場合、SCR1−outおよびSCR2−outでのN2O排出量レベルは、参照の構成と比べて大幅に減少したことが分かる。Fe−CHA SCR1−outでのN2O排出量レベルは、0.062g/bhph(NSR=1.0)、0.065g/bhph(NSR=1.1)、および0.071g/bhph(NSR=1.2)であった。これらのレベルは、参照の構成の場合のCu−CHA SCR1−outでの相当するN2O排出量より66%から69%まで低い。本発明による例示的な構成の場合のSCR2−outでのN2O排出量レベルは、0.077g/bhph(NSR=1.0)、0.091g/bhph(NSR=1.1)、および0.104g/bhph(NSR=1.2)であった。本発明による例示的な構成のこれらのレベルは、参照の構成の場合のSCR2−outでの相当するN2O排出量より52%から59%まで低い。
図12および図13のデータは、本発明による例示的な構成および参照の構成の性能の別の比較を示すために使用することができる。N2O排出量の差(デルタ);(SCR1−out)−(CSF−out)、および(SCR2−out)−(CSF−out)は、NOx排出量レベルの差(デルタ);(CSF−out)−(SCR1−out)、および(CSF−out)−(SCR2−out)に応じてグラフ化できる。これによって、還元されたNOxに応じたN2O発生量の反応を示すことができる。これは、図14において参照の構成および本発明による例示的な構成の場合で比較される。これによって、本発明による例示的な構成のN2O発生の反応は、参照の構成の場合よりはるかに少ないことが明らかに示される。
NSR=1.1で試験した参照の構成の場合のSCR1−outおよびSCR2−outでのNH3スリップ(ppm)が、図15に示されている。ここで、SCR1−outでは、NH3スリップのピークは約136ppmであり、これは、SCR2にわたるさらなるNOx転化によってSCR2−outでは約26ppmに減少したことが分かる。SCR2−outでのNH3スリップはきわめて少ないが、図1に示された、下流のアンモニア酸化触媒(AMOx)によってさらに減少する可能性がある。
NSR=1.1で試験された本発明による例示的な構成の場合のSCR1−outおよびSCR2−outでのNH3スリップ(ppm)は、図16に示されている。ここで、SCR1−outでは、NH3スリップのピークは、参照のシステムの場合よりはるかに高い(約450ppm)。しかしながら、SCR1−out NH3スリップは、下流のSCR2触媒にわたって効果的に使用され、したがって、SCR2−outでのピークが約37ppmに減少した。この場合も先と同様に、SCR2−outでのNH3スリップのこの低いレベルは、図1に示された、下流のアンモニア酸化触媒(AMOx)によってさらに減少しうる。
ここで、第一触媒構成要素であるFe−チャバザイトSCRと排ガスNOxが相互作用し、それに続いてCu−チャバザイトSCR触媒構成要素と後続接触する本発明による例示的な構成によって表される重要な発展がある。本発明による例示的な構成(Fe−CHA+Cu−CHA)は、参照の構成(Cu−CHA+Cu−CHA)に相当するSCR2−outで高いNOx還元を示した。しかしながら、本発明による例示的な構成は、参照の構成によるものより52%から59%低いN2O排出量レベルを示し、それによって、この強力な温室効果ガス(GHG)の著しく良好な制御を示した。
例8 ヘビーデューティディーゼルシステムを使用するエンジン試験
前述のエンジン試験は、良好なNOx還元を維持しながらN2O発生量を低くするための1つの方策が、HDD後処理システムにおいて、より有効なNOx転化の触媒組成物Cu−SSZ13(すなわちSCR2)の上流で、Fe−SSZ13触媒組成物(すなわちSCR1)を使用することであったことを示している。さらなるHDDエンジン過渡試験は、システムにおけるCu−SSZ13触媒組成物と比べたFe−SSZ13触媒組成物の相対的長さの効果を調査するために、UEL D4で6.8L/300HPエンジンにて行った。
この試験では、システムは、DOC構成要素およびCSF構成要素からなり、すべての試験で同じであった。SCR1およびSCR2触媒組成物は、両方とも、600cpsiを有する10.5’’×6’’(8.5リットル)の同じ寸法に保った。実行可能な試験構成は、図17に示されている。第一の事例は、参照事例であり、これは、TEX−1708(DG=3g/in3)SCR1およびTEX−1596(DG=2.75g/in3)SCR2を有する全Cu−SSZ13触媒システムであった。第二の事例は、SCR1がそれぞれ50:50のFe−SSZ13およびCu−SSZ13(DG=2.75g/in3)の帯域長さで区分されたTEX−1384、それに続いてSCR2位置には同じTEX−1596 Cu−SSZ13を有するものであった。第三の事例は、TEX−1383 Fe−SSZ13(DG=2.75g/in3)SCR1に続いて、SCR2位置にTEX−1596 Cu−SSZ13を有するものであった。第四の事例は、SCR1位置にTEX−1383 Fe−SSZ13を有し、それに続いてSCR2位置に(50:50)のFe−SSZ13/Cu−SSZ13に区分されたTEX−1384を有するものであった。
示されたそれぞれのSCR触媒を、試験の前に、NSR=0.7で、50時間/650degC SCR−inの連続強制再生下にエージングした。
それぞれの触媒システム試験の場合、DOCは、10.5’’×6’’/400/4上のTEX−0681/34g(1.33:1)であり、CSFは、10.5’’×12’’/200/12上のTEX−0499/5g(10:1)であった。このDOC+CSFを用いるCSF−out(SCR1−in)FTPサイクル累積NO2/NOx比率は、0.42から0.43までの範囲にあり、これは、「高速SCR機構」にとって好適であった。
試験は、エンジン上で、そのHi NOx校正(5.5g/bhph超のNOx)で実施した。それぞれのシステムの構成では、試験は、システムを清浄化するために、600degC/20minでの強制再生の実施と、それに続く、単純なNOx追従によるNSR=1.1の尿素噴射での8つのFTP(ソークなし)とからなる。システムの位置による排気温度は、図18に示されている。これらの試験では、SCR1−inの排気温度の範囲は、198℃から262℃であった。第一のシステム構成(TEX−1708+TEX−1596)のNOx転化率およびBSNOxレベルは、以下の図19に示されている。ここで、基準のBSNOxレベル(CSF−out)は、Hi NOx校正では5.59g/bhphから5.68g/bhphまでの範囲で実施されたことが分かる。一般的なNOx転化率およびBSNOxのパターンが分かる。システムの事前の強制再生後の開始では(FTP 1サイクル)、NOx転化率は、1.4g/bhphの範囲のBSNOxで比較的低く約74%であった。このことは、ゼオライトSCR触媒に吸蔵されたNH3を有していないことによるものである。しかしながら、FTP 2サイクルから8サイクルまででは、システムは、SCR1−outで93%から94%まで、SCR2−outで97%超のNOx転化率レベルを示して即座に平衡になった。このことは、SCR1で0.36g/bhphから0.39g/bhphまでの、およびSCR2−outで0.14g/bhphから0.15g/bhphまでの平衡BSNOxレベルをもたらし、これは、0.2g/bhphの目標を充分に下回っていた。試験では、平衡FTP 6サイクルから8サイクルまでの平均を出し、これは、95%信頼限界の統計も示した。4つの異なる触媒システムの試験のこの分析に基づいて、BSNOxレベルおよびBSN2Oレベルが図20にまとめられている。図20では、4つの触媒システムの構成の平均基準(CSF−out)サイクル累積NOx(紺青色)は、5.6g/bhphから5.9g/bhphまでの範囲である。著しいNOx還元は、4つのシステムすべてのNSR=1.1において見られた。図20のY軸の拡大が図21に示されており、これは、SCR1−outおよびSCR2−outでのBSNOxレベルおよびBSN2Oレベルをよりよく示すものである。ここで、SCR1−outでのBSNOxレベルは、TEX−1708 Cu−SSZ13の場合に最も低く、0.373g/bhphであったことが分かる。SCR1−outでのBSNOxレベルは、Fe/Cu−SSZ13(50:50)に区分されたTEX−1384の場合にわずかに高く、0.595g/bhphであった。TEX−1383 Fe−SSZ13 SCR1は、最後の2つのシステムの試験では、1.29g/bhphから1.33g/bhphまでの最も高いBSNOxレベルを示した。Y軸のさらなる拡大が図22に示されており、これは、SCR2−outのBSNOxおよびBSN2Oレベルをよりいっそう明確に示している。この図は、BSNOx目標限度(0.2g/bhph)および現在の目標BSN2O限度(0.1g/bhph)も示している。
BSNO x 結果:図22では、全Cu−SSZ13システム(TEX−1708+TEX−1596)の場合、SCR2−outでのBSNOxは、NOx限界を充分に下回っていた(0.143g/bhph)。これは、基準(CSF−out)と比べて97.45%のNOx還元率に相当する。
Fe/Cu−SSZ13に区分されたTEX−1384+TEX−1596を用いるシステムの場合、SCR2−outでのBSNOxレベルは、さらに低いか(0.082g/bhph)、または98.59%のNOx還元率であった。これは、前述の全Cu−SSZ13システムの場合よりも著しく優れており、少なくとも部分的に、Fe/Cu−SSZ13に区分された最前列のTEX−1384からのNH3スリップが、TEX−1708M Cu−SSZ13の場合(NSR=0.71)よりもわずかに高い(NSR=1.08)ことに帰することができ、それによって、下流のTEX−1596 Cu−SSZ13の容積が、さらに全体のNOx還元に寄与することができる。
TEX−1383 Fe−SSZ13+TEX−1596 Cu−SSZ13を用いるシステムの場合、SCR2−outのBSNOxはわずかに高く(0.164g/bhph)、97.12%のNOx還元率であった。平均して0.2g/bhphの目標値をなおも下回っているが、95%信頼限度ではわずかに上回っている。このシステムは、先の試験の目標値を充分に下回るBSNOxのより狭い信頼限度を示している。
TEX−1383 Fe−SSZ13+Fe/Cu−SSZ13に区分されたTEX−1384を有するシステムの場合、SCR2−outのBSNOxは、なおも比較的高く(0.48g/bhph)、目標値(0.2g/bhph)の2倍超であった。
これらの試験では、Fe/Cu−SSZ13に区分されたTEX−1384+TEX−1596 Cu−SSZ13を有するシステムは、SCR2−outで最も低いBSNOxを示した。
BSN 2 Oの結果:図22では、TEX−1708M Cu−SSZ13+TEX−1596 Cu−SSZ13を有するシステムの場合、SCR1−outおよびSCR2−outの位置でのBSN2Oレベルは、両方とも0.2g/bhphを上回っており、0.1g/bhphの目標限度の少なくとも2倍であったことが分かる。
Fe/Cu−SSZ13に区分されたTEX−1384+TEX−1596 Cu−SSZ13を有するシステムの場合、両方のSCR1−outおよびSCR2−outでのBSN2Oレベルは、著しく減少したが、依然として0.1g/bhphの目標をわずかに上回っていた。
TEX−1383 Fe−SSZ13+TEX−1596 Cu−SSZ13を有するシステムの場合、SCR1−outおよびSCR2−outでのBSN2Oレベルは、さらにそれぞれ0.052g/bhphおよび0.078g/bhphに減少し、したがって、両方の位置は、誤差を含めて0.1g/bhphを下回った。
TEX−1383 Fe−SSZ13+Fe/Cu−SSZ13に区分されたTEX−1384を有するシステムの場合、BSN2Oレベルは、TEX−1383 Fe−SSZ13+TEX−1596 Cu−SSZ13を有するシステムと同程度であり、したがって、追加的なBSN2O減少量は、このシステムでは見られなかった。ここで、SCR2−outでは、最も低いBSNOx(0.082g/bhph)が、Fe/Cu−SSZ13に区分されたTEX−1384+TEX−1596 Cu−SSZ13を有するシステムの場合に達成された。最も低いBSN2Oおよび依然として良好なBSNOxレベルでは、TEX−1383 Fe−SSZ13+TEX−1596 Cu−SSZ13を有するシステムが最良である。低いBSNOxおよび低いBSN2Oの最適条件は、これらのシステムと、おそらく67:33または75:25の区分で全体的な性能における良好なバランスをもたらすFe/Cu−SSZ13に区分されたTEX−1384との間のどこかにあることを示す。