JP2018204113A - 耐食性と磁気特性に優れた鋼材およびその製造方法 - Google Patents

耐食性と磁気特性に優れた鋼材およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】電磁ステンレス鋼を超える耐食性と、優れた磁気特性とを兼備した鋼材を安価に提供する。
【解決手段】C:0.001〜0.025%(質量%の意味。化学成分について以下同じ)、Si:1.0〜4.0%、Mn:0.1〜1.0%、P:0.030%以下(0%を含まない)、S:0.10%以下(0%を含まない)、Cr:4.0%以下(0%を含まない)、Al:0.010%以下(0%を含まない)、およびN:0.01%以下(0%を含まない)を満たし、残部が鉄および不可避不純物からなり、かつ鋼材表面に、Siおよび/またはCrを含みかつ非晶質層を含む、厚みが50〜500nmの酸化被膜が形成されていることを特徴とする耐食性と磁気特性に優れた鋼材。
【選択図】なし

Description

本発明は、耐食性と磁気特性に優れた鋼材およびその製造方法に関する。
自動車等の省エネルギー化に対応して、該自動車等の電装部品には、磁気回路の制御がより精緻で省電力化と磁気応答速度の向上を実現できるものが求められている。従って、上記電装部品の素材となる鋼材には、磁気特性として、低い外部磁界で容易に磁化しかつ保磁力が小さいといった特性が要求される。
このため、材料内部の磁束密度が外部磁界に応答し易く、Ni、Coなどに比べて安価な軟磁性鋼材が通常使用されている。上記軟磁性鋼材として具体的には、例えばC量が約0.1質量%以下の極低炭素鋼(純鉄系軟磁性材料)などが用いられる。上記電装部品(軟磁性鋼部品)は、この鋼材に熱間圧延を施した後、二次加工工程と呼ばれる、酸洗い、潤滑処理および伸線加工等を行って得た鋼線に、部品成型や磁気焼鈍等を順次施して得られることが一般的である。
ところで上記電装部品は、使用環境によっては耐食性を要求される。この耐食性が要求される部位には電磁ステンレス鋼が使用される。電磁ステンレス鋼は、磁気特性と耐食性を兼ね備えた特殊鋼であり、用途は、センサ、アクチュエータ、モータ等の磁気回路を活用した部品や、腐食環境で使用される電装部品などが挙げられる。上記電磁ステンレス鋼として、従来より13Cr系電磁ステンレス鋼が用いられており、例えば特許文献1では、この13Cr系電磁ステンレス鋼の冷間鍛造性や被削性を改善する技術が提案されている。しかしながら、上記13Cr系電磁ステンレス鋼は、冷間鍛造性のより優れた極低炭素鋼と比較すると難加工性であり、また、合金元素が多いことに起因して材料価格も高く、合金価格の高騰時には連動して材料価格が上昇したり、材料供給が困難になるといった問題がある。また近年では、例えば燃料電池車用途等の電磁ステンレス鋼において、耐食性の更なる改善の要望が出つつある。
一方、極低炭素鋼として、例えば特許文献2や特許文献3等の技術が提案されている。
これらは、鋼材成分や鋼中の硫化物の分散状態を制御することによって、磁気特性を低下させずに強度や被削性を向上させることを主眼になされたものであり、耐食性が必要となる場合についてまで検討されたものではない。
以上のことから、優れた磁気特性を備えていると共に、上記電磁ステンレス鋼を超える高い耐食性を備えた鋼材を、安価に実現することが求められている。
特開平06−228717号公報 特開2010−235976号公報 特開2007−046125号公報
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、電磁ステンレス鋼を超える高い耐食性と、優れた磁気特性を兼備する鋼材を、合金元素を多量に添加せずに安価に実現することにある。
上記課題を解決し得た本発明の耐食性と磁気特性に優れた鋼材は、
C:0.001〜0.025%(質量%の意味。化学成分について以下同じ)、
Si:1.0〜4.0%、
Mn:0.1〜1.0%、
P:0.030%以下(0%を含まない)、
S:0.10%以下(0%を含まない)、
Cr:4.0%以下(0%を含まない)、
Al:0.010%以下(0%を含まない)、および
N:0.01%以下(0%を含まない)
を満たし、残部が鉄および不可避不純物からなり、かつ鋼材表面に、Siおよび/またはCrを含みかつ非晶質層を含む、厚みが50〜500nmの酸化被膜が形成されているところに特徴を有する。
前記鋼材は、更に他の元素として、
(a)Cu:0.5%以下(0%を含まない)、および/またはNi:0.5%以下(0%を含まない)や、
(b)Pb:1.0%以下(0%を含まない)
を含んでいてもよい。
本発明には、上記鋼材の製造方法も含まれる。該製造方法は、前記成分組成の鋼を用い、下記の条件で焼鈍を行うところに特徴を有する。
(焼鈍条件)
焼鈍雰囲気:酸素濃度が1.0体積ppm以下
焼鈍温度:800〜1200℃
焼鈍時間:1時間以上20時間以下
本発明によれば、電磁ステンレス鋼を超える高い耐食性と、優れた磁気特性とを兼備した鋼材を安価に提供することができる。本発明の鋼材は、軟磁性特性を有しており、自動車や電車、船舶用などを対象とする各種電装部品に使用される、例えば電磁弁、ソレノイド、リレー等の鉄心材や磁気シールド材、アクチュエータ部材として有用である。特に高い耐食性の要求される環境で優れた特性を発揮する。
本発明者は、電磁ステンレス鋼を超える高い耐食性と、優れた磁気特性とを兼備する鋼材を、合金元素を多量に添加せずに安価に実現すべく鋭意研究を重ねた。その結果、鋼材の成分組成を下記の通り制御(特には、Si量とCr量を制御)すると共に、該鋼材の製造工程において、規定の焼鈍(後に詳述する)を行って、耐食性に優れた酸化被膜を鋼材表面に形成すればよいことを見い出した。
具体的には上記酸化被膜として、その組成がSiおよび/またはCrを含む(鋼材がCuおよび/またはNiを含む場合は、酸化被膜に更にCuおよび/またはNiが含まれる場合がある)ものであって、かつその構造が非晶質層を含むものとすれば、高い耐食性を達成できることを見出した。
上記非晶質層は素地と高い密着性を有し、かつステンレス鋼の不動態被膜(約5nm)と比べて厚く形成することができるため、不動態被膜が溶解されて腐食が進行するといった過酷な腐食環境においても高い耐食性を示す。尚、本発明において「非晶質層を含む」とは、後述する実施例に示す通り、酸化被膜のナノ電子線回折像において、ハローパターンが確認できることをいう。
前記酸化被膜の厚みは、電磁ステンレス鋼を超える耐食性を達成するため、50nm以上とする。前記酸化被膜の厚みは、好ましくは60nm以上、より好ましくは70nm以上、更に好ましくは80nm以上である。一方、前記酸化被膜の厚みが厚くなりすぎると、非晶質層が形成されにくくなり結晶化(例えばγ−FeOOH等)するため好ましくない。よって前記酸化被膜の厚みは、500nm以下とする。好ましくは350nm以下、より好ましくは300nm以下、更に好ましくは200nm以下である。
上記規定の酸化被膜を鋼材表面に形成すると共に、優れた磁気特性、および例えば部品として要求される高強度等の特性を確保するには、鋼材が下記の成分組成を満たす必要がある。以下、本発明の鋼材の成分組成について説明する。
[C:0.001〜0.025%]
Cは、機械的強度を確保するのに必要な元素であり、また少量であれば電気抵抗を増加させて、渦電流による磁気特性の劣化を抑制できる。しかしCは鋼中に固溶してFe結晶格子を歪ませるため、含有量が増加すると磁気特性を著しく劣化させる。そのためC量は0.025%以下とする。好ましくは0.020%以下、より好ましくは0.015%以下、更に好ましくは0.010%以下である。尚、C量が0.001%を下回っても、磁気特性の改善効果は飽和するため、本発明ではC量の下限を0.001%とした。
[Si:1.0〜4.0%]
Siは、鋼の溶製時に脱酸剤として作用する元素である。また本発明においてSiは、酸化被膜中に非晶質層を形成するのに有用であり、酸化被膜を強化して耐食性をより向上させる元素である。更にSiは、電気抵抗を増加させて渦電流による磁気特性の低下を抑制する効果ももたらす。これらの観点から、Si量は1.0%以上とする。好ましくは1.4%以上であり、より好ましくは1.8%以上である。しかしSiが多量に含まれると、前記非晶質層がかえって形成され難くなり優れた耐食性を確保できない。また冷間鍛造性や磁気特性も低下する。よって、Si量の上限を4.0%と定めた。Si量は、好ましくは3.6%以下、より好ましくは3.0%以下である。
[Mn:0.1〜1.0%]
Mnは、脱酸剤として有効に作用する元素である。またSと結合しMnS析出物として微細分散することでチップブレーカーとなり、被削性の向上に寄与する元素でもある。こうした作用を有効に発揮させるには、Mnを0.1%以上含有させる必要がある。Mn量は、好ましくは0.15%以上、より好ましくは0.20%以上である。しかしMn量が多過ぎると、磁気特性に有害なMnS個数の増加を招くため、1.0%を上限とする。Mn量は、好ましくは0.8%以下、より好ましくは0.70%以下、更に好ましくは0.50%以下である。
[P:0.030%以下(0%を含まない)]
P(リン)は、鋼中で粒界偏析を起こして冷間鍛造性や磁気特性に悪影響を及ぼす有害元素である。よってP量を0.030%以下に抑える。P量は、好ましくは0.015%以下、より好ましくは0.010%以下である。
[S:0.10%以下(0%を含まない)]
S(硫黄)は、上記の様に鋼中でMnSを形成し、切削加工時に応力が負荷されたときに応力集中箇所となって被削性を向上させる作用を有している。こうした作用を有効に発揮させるには、Sを0.003%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.01%以上である。しかしS量が多くなり過ぎると、磁気特性に有害なMnS個数の増加を招く。また冷間鍛造性も著しく劣化するので、S量は0.10%以下に抑える。S量は、好ましくは0.09%以下、より好ましくは0.050%以下である。
[Cr:4.0%以下(0%を含まない)]
Crは、フェライト相の電気抵抗を増加させ、渦電流の減衰時定数低減に有効な元素である。またCrは、腐食反応の活性態域での電流密度を低下させる効果があり、耐食性向上に寄与する。更にCrは、酸化被膜に含まれうる元素でもあり、酸化被膜をより強固なものとして耐食性の更なる向上に寄与する。これらの効果を十分に発揮させるには、Crを0.01%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.05%以上である。しかしCrが多量に含まれていると、磁気特性が低下する。また、焼鈍により形成される酸化被膜中に非晶質層がかえって形成されにくくなり、酸化被膜の厚みも過剰となりやすい。更には、合金コストが上昇して安価に提供できなくなる。よってCr量の上限を4.0%と定めた。Cr量は、好ましくは3.6%以下、より好ましくは3.0%以下、更に好ましくは2.0%以下である。
[Al:0.010%以下(0%を含まない)]
Alは、脱酸剤として添加される元素であり、脱酸に伴って不純物を低減し、磁気特性を改善する効果がある。この効果を発揮させるには、Al量を0.001%以上(より好ましくは0.002%以上)とすることが好ましい。しかし、Alは固溶NをAlNとして固定し結晶粒を微細化する作用がある。よってAlが過剰に含まれると、結晶粒の微細化により結晶粒界が増加し、磁気特性の劣化を招く。従って本発明では、Al量を0.010%以下とする。より優れた磁気特性を確保するには、Al量を0.008%以下とすることが好ましく、より好ましくは0.005%以下である。
[N:0.01%以下(0%を含まない)]
N(窒素)は、上述の通り、Alと結合しAlNを形成して磁気特性を害するが、それに加えて、Alなどにより固定されなかったNは、固溶Nとして鋼中に残存し、これも磁気特性を劣化させる。よって、N量は何れにしても極力少なく抑えるべきである。本発明では、鋼材製造の実操業面を考慮すると共に、上記Nによる弊害を実質的に無視し得る程度に抑えることのできる0.01%をN量の上限値として定めた。N量は、好ましくは0.008%以下、より好ましくは0.0060%以下、更に好ましくは0.0040%以下、より更に好ましくは0.0030%以下である。
本発明の鋼材の基本成分は、上記の通りであって、残部は鉄および不可避不純物からなる。該不可避不純物として、原料、資材、製造設備等の状況によって持ち込まれる元素の混入が許容される。また、上記基本成分に加えて更に、
(a)下記量のCuおよび/またはNiを含有させて、耐食性をより向上させることや、(b)下記量のPbを含有させて、被削性を向上させることができる。
以下、これらの元素について詳述する。
[Cu:0.5%以下(0%を含まない)、および/またはNi:0.5%以下(0%を含まない)]
Cu、Niは、腐食反応の活性態域での電流密度を低下させる効果、および酸化被膜を強化する効果を発揮して、耐食性を向上させる元素である。これらの効果を発揮させるには、Cuを含有させる場合、0.01%以上(より好ましくは0.10%以上)含有させることが好ましく、またNiを含有させる場合、0.01%以上(より好ましくは0.10%以上)含有させることが好ましい。しかしこれらの元素が過剰に含まれていると、合金コストが上昇して鋼材を安価に提供できなくなる。更には、磁気モーメントの低下により磁気特性の劣化が顕著になる。よって、Cu、Niそれぞれの上限は0.5%以下とすることが好ましい。Cu、Niのより好ましい上限は、それぞれ0.35%以下、更に好ましい上限はそれぞれ0.20%以下、より更に好ましい上限はそれぞれ0.15%以下である。
[Pb:1.0%以下(0%を含まない)]
Pbは、鋼中でPb粒子を形成し、切削加工時に応力が負荷されたときに応力集中箇所となって被削性を向上させる効果を有している。よって、重切削でも切削面の高い面精度を維持したり、切屑処理性を向上させる等、特に被削性が要求される用途に適する元素である。これらの効果を発揮させるには、Pb量を0.01%以上とすることが好ましく、より好ましくは0.05%以上である。ただし、Pb量が多くなり過ぎると磁気特性、冷間鍛造性が著しく劣化するので、1.0%以下に抑えることが好ましい。Pb量は、より好ましくは0.50%以下、更に好ましくは0.30%以下である。
本発明の鋼材には、棒状、線状、板状のもの(例えば圧延材);の他、これらに対し、更に二次加工(下記に示す通り、酸洗い、潤滑被膜の形成、伸線)や部品加工(例えば冷間鍛造、切削加工、磨棒加工等の部品成型)が施されて部品(例えば電装部品等の部品)形状に成型されたのもの;であって、下記の焼鈍が施されたものが含まれる。
[鋼材の製造方法]
本発明の鋼材を得るにあたり、該鋼材表面に規定の酸化被膜を形成するには、前記成分組成の鋼を用い、下記の条件で焼鈍を行えばよい。よって、前記焼鈍に供する鋼の製造方法は特に問わない。前記焼鈍に供する鋼が電装部品等の部品形状の場合、該焼鈍に供する鋼は、例えば次の様にして製造することができる。即ち、上記成分組成を満たすように通常の溶製法に従って溶製し、鋳造、熱間圧延して製造する。そして熱間圧延して得られた圧延材に対し、二次加工、部品成型を行って、前記焼鈍に供する鋼を得ることができる。
詳細には、前記熱間圧延後の圧延材に酸洗いを施し、潤滑被膜を形成してから伸線し、次いで冷間鍛造により部品成型することが挙げられる。前記部品成型は、切削加工や磨棒加工により行うこともできる。
鋼材表面に規定の酸化被膜を形成するには、焼鈍を、下記の条件(焼鈍雰囲気、加熱温度・時間)で行うことが重要である。以下、各条件について詳述する。
〈焼鈍雰囲気:酸素濃度が1.0体積ppm以下〉
焼鈍において、下記の温度制御に加えて焼鈍雰囲気における酸素濃度を厳しく管理することによって、非晶質層を有しかつ規定の厚さの酸化被膜を鋼材表面に形成することができる。具体的には、焼鈍雰囲気における酸素濃度を1.0体積ppm以下とする。具体的な上記焼鈍雰囲気として、例えば高純度水素、窒素などの雰囲気とすることが挙げられる。また、純度の高いArガスを用いて、上記焼鈍雰囲気を酸素濃度が1.0体積ppm以下のAr雰囲気としてもよい。上記酸素濃度は、好ましくは0.5体積ppm以下、より好ましくは0.3体積ppm以下である。尚、酸化被膜を形成する観点から、上記酸素濃度の下限値は0.1体積ppm程度となる。
〈焼鈍の加熱温度(焼鈍温度):800〜1200℃〉
焼鈍温度が低すぎると、鋼材表面に非晶質層を含む酸化被膜を形成することができない。また鍛造や切削で生じた歪を除去することもできない。よって、本発明では焼鈍温度を800℃以上とする。好ましくは850℃以上である。一方、焼鈍温度が高すぎると、酸化被膜の厚みが過剰となり、また非晶質層が形成されにくく、耐食性が低下するため望ましくない。さらに電力コスト、炉壁耐久性など量産性の低下も招く。よって焼鈍温度は1200℃以下とする。好ましくは1100℃以下であり、より好ましくは1000℃以下である。
〈焼鈍の加熱時間(焼鈍時間):1時間以上20時間以下〉
焼鈍時間が短すぎると、焼鈍温度を高めに設定したとしても焼鈍不足となり酸化被膜が均一に形成されない。よって焼鈍時間は1時間以上とする。好ましくは2時間以上である。しかし焼鈍時間が長すぎても、酸化被膜の厚みが増加し過ぎる他、生産性が悪くなるため、焼鈍時間は20時間以下とする。好ましくは10時間以下である。
焼鈍後の冷却時において、冷却速度が大きすぎると冷却中に発生する歪により磁気特性が低下する。よって、焼鈍後から300℃までの平均冷却速度は200℃/Hr(時間)以下とすることが好ましい。より好ましくは150℃/Hr以下である。一方、上記温度域の平均冷却速度が小さすぎると、生産性が著しく阻害されるため、50℃/Hr以上で冷却することが好ましい。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
表1に示す成分組成(残部は鉄および不可避不純物)の鋼を通常の溶製法に従って溶製し、鋳造した後、熱間圧延を行って直径20mmの圧延材を得た。次いで、量産条件で酸洗を行った後、潤滑被膜を付着し、その後磨棒加工を行い、切断して直径16mmの磨棒切断品を得た。また、前記磨棒加工とは異なる部品成型法として切削加工を模擬し、旋盤にて直径10mm×長さ10mmの円柱状の試験片(切削試験片)も作製した。この様にして得られた上記磨棒切断品または切削試験片を用いて、表2に示す条件で焼鈍を行った。尚、焼鈍後から300℃までの平均冷却速度は100〜150℃/Hrの範囲内とした。
そして上記磨棒切断品または切削試験片を用いて、酸化被膜の評価、および耐食性の評価を行った。また磁気特性の評価を、上記圧延材を用い、下記に示す通り評価用試験片を作製して行った。尚、酸化被膜の有無が耐食性に及ぼす影響を調べるため、表2の実験No.H03およびH07では、焼鈍後の試験片の表層を旋盤で切削加工して得られた(即ち、焼鈍により形成された酸化被膜の除去された)、直径8mm×長さ8mmの試験片を用いて、耐食性を評価した。
[酸化被膜の評価]
焼鈍後の酸化被膜の分析は、TEM−FIB観察によって行った。TEM観察用試料は次の様にして作製した。即ち、前記焼鈍後の切削試験片を用い、FIB加工は、日立製作所製の集束イオンビーム加工観察装置FB2000Aにて、イオン源としてGaを用い実施した。試料最表面保護のため、高真空蒸着装置とFIB装置を用いてカーボン膜をコーティングした後、FIBマイクロサンプリング法にて試料小片を摘出した。試料の摘出は、旋盤の切削加工等により生じた凹凸の凸部から行った。その後、摘出した小片をW(CO)6ガス中でFIB加工し、堆積するWによってMoメッシュに貼り付け、TEM観察可能な厚さまで薄片化を行った。
この様にして得られたTEM観察用試料を用いて、下記の通りTEM観察を行った。即ち、TEM観察は、日立製作所製の電界放出形透過電子顕微鏡HF−2000にてビーム径10nm、倍率10,000〜750,000倍にて観察し、Kevex製EDX分析装置Sigmaを用いて、EDX分析により酸化被膜の組成を同定しながら明視野像を撮影した。そして、酸化被膜中のSiおよび/またはCrの有無(鋼材がCuおよび/またはNiを含む場合は、更にCuおよび/またはNiの有無)を確認した。また、上記明視野像を3視野撮影して酸化被膜の厚みを測定し、その平均値を求めて「酸化被膜の厚み」とした。尚、酸化被膜の構造解析は、標準試料にSiを用い、ナノ電子線回折図から求めた格子定数をJCPDSカードの値を照合(誤差5%未満)して決定した。ナノ電子線回折像において、多結晶からはデバイシェラーリング(回折環)が得られ、非晶質からはハローパターンが得られる。よって、ハローパターンを確認できたものを非晶質層を含む(○)と評価し、そうでないものを×と評価した。
[耐食性の評価]
耐食性は次の様にして評価した。即ち、1%H2SO4水溶液を用いたビーカーテストにて、水溶液を撹拌しながら室温で24〜36時間(Hr)浸漬した。そして試験後の外観観察と腐食減量測定を行った。試験後の外観観察は、目視で錆の発生有無を確認・測定し、100×(錆面積)/(試験片の表面積)で求められる値を「錆面積率」とし、この錆面積率が0%の場合を「○」、0%超10%未満の場合を「△」、10%以上の場合を「×」と判定した。また腐食減量の測定は、浸漬前後の試験片の質量変化量を試験片の初期表面積および浸漬時間で割った値を「腐食減量」として求めた。そして、上記錆面積率の判定が○であると共に、腐食減量が1.0g/(m2・Hr)以下の場合を、耐食性に優れる(電磁ステンレス鋼を超える高い耐食性を示す)と評価し(表2の耐食性の評価が「○」)、これらのいずれかを満たさない場合を、耐食性に劣ると評価した(表2の耐食性の評価が「×」)。尚、磨棒切断品と切削試験片との間で、耐食性の評価結果に大きな差異はみられなかった。
[磁気特性の評価]
磁気特性の評価は、上記の直径20mmの圧延材から、外径18mm、内径10mm、厚み3mmのリング試験片を作製し、表2の条件で焼鈍を行った後、JIS法(JIS C2504)に基づいて行った。測定は、励磁側コイルを150ターン、検出側コイルを25ターン巻き、室温で自動磁化測定装置(理研電子社製:BHS−40)を用いて磁化曲線を描き、印加磁界400A/mでの保磁力と磁束密度を求めた。そして保磁力が80A/m以下でかつ磁束密度が1.20T以上のものを磁気特性に優れると評価し(表2の磁気特性の評価が「○」)、これらのいずれかを満たさない場合を磁気特性に劣ると評価した(表2の磁気特性の評価が「×」)。
これらの結果を表2に示す。
Figure 2018204113
Figure 2018204113
表1および2から、次のように考察することができる。表2の実験No.G01〜G11は、化学成分組成、製造方法ともに適切に制御されているため、電磁ステンレス鋼を超える高い耐食性を示すと共に、優れた磁気特性を示した。
これらに対し、実験No.H01〜H14は、化学成分組成や製造方法が適切でなかったため、優れた耐食性が得られず、一部の例では更に磁気特性も劣る結果となった。詳細は次の通りである。
実験No.H01は、特にSi量が過剰であるため、焼鈍で形成された酸化被膜の厚みが本発明範囲を外れており、更に非晶質層を含まないため、優れた耐食性が得られなかった。
実験No.H02は、特にCr量が著しく過剰であり、またSi量が不足しているため、焼鈍で形成された酸化被膜の厚みが規定上限を著しく外れており、また非晶質層を含まないため、耐食性が不十分となった。更には、磁気特性にも劣る結果となった。
実験No.H03およびNo.H07は、鋼材表面の酸化被膜を切削加工で除去した例であり、鋼材表面に酸化被膜が存在しないため、耐食性が不十分となった(尚、実験No.H03はCrを過剰に含んでいるため、錆は発生しなかった)。実験No.H03は、鋼材中のCr量が過剰であるため、更に磁気特性にも劣る結果となった。
実験No.H04は、Cr量が過剰であるため、酸化被膜中に非晶質層が形成されず、耐食性が不十分となった。更には、磁気特性にも劣る結果となった。
実験No.H05は、焼鈍温度が低すぎるため、酸化被膜の厚みが規定下限を外れており、かつ上記酸化被膜は非晶質層を含まないものとなり、優れた耐食性が得られなかった。
実験No.H06は、製造工程において、酸素濃度が5.0体積ppmのAr雰囲気中で焼鈍した例である。この例では、鋼材中のSi量が不足しており、かつ焼鈍中の酸素濃度が高すぎるため、酸化被膜の厚みが規定上限を超え、また非晶質層が形成されず、耐食性が不十分となった。
実験No.H08およびNo.H09は、特にC量が過剰であるため、磁気特性に劣っており、またSi量が不足しているため、酸化被膜中に非晶質層が形成されず、耐食性にも劣る結果となった。
実験No.H10は、MnおよびSが過剰に含まれているため、磁気特性に劣っている。更にはSi量が不足しているため、酸化被膜中に非晶質層が形成されず、耐食性が不十分となった。
実験No.H11は、CuおよびNiが過剰であるため、磁気特性が低下した。また、Si量が不足しているため、酸化被膜中に非晶質層が形成されず、耐食性が不十分となった。
実験No.H12は、Si量が不足しているため、酸化被膜中に非晶質層が含まれず、耐食性が不十分となった。
実験No.H13は、大気中で焼鈍した例であり、焼鈍中の酸素濃度が高すぎるため、酸化被膜の厚みが規定上限を著しく超えており、かつ該酸化被膜は非晶質層を含まないため、耐食性が不十分となった。
実験No.H14は、焼鈍温度が高すぎるため、酸化被膜の厚みが規定上限を超え、また酸化被膜が非晶質層を含まないものとなったため、耐食性が不十分となった。

Claims (4)

  1. C:0.001〜0.025%(質量%の意味。化学成分について以下同じ)、
    Si:1.0〜4.0%、
    Mn:0.1〜1.0%、
    P:0.030%以下(0%を含まない)、
    S:0.10%以下(0%を含まない)、
    Cr:4.0%以下(0%を含まない)、
    Al:0.010%以下(0%を含まない)、および
    N:0.01%以下(0%を含まない)
    を満たし、残部が鉄および不可避不純物からなり、かつ
    鋼材表面に、Siおよび/またはCrを含みかつ非晶質層を含む、厚みが50〜500nmの酸化被膜が形成されていることを特徴とする耐食性と磁気特性に優れた鋼材。
  2. 更に他の元素として、
    Cu:0.5%以下(0%を含まない)、および/または
    Ni:0.5%以下(0%を含まない)
    を含有する請求項1に記載の鋼材。
  3. 更に他の元素として、
    Pb:1.0%以下(0%を含まない)を含有する請求項1または2に記載の鋼材。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の鋼材の製造方法であって、
    請求項1〜3のいずれかに記載の成分組成の鋼を用い、下記の条件で焼鈍を行うことを特徴とする耐食性と磁気特性に優れた鋼材の製造方法。
    (焼鈍条件)
    焼鈍雰囲気:酸素濃度が1.0体積ppm以下
    焼鈍温度:800〜1200℃
    焼鈍時間:1時間以上20時間以下
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