JP2018204040A - 二相ステンレス鋼製造物およびその製造方法 - Google Patents

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尚也 床尾
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Abstract

【課題】二相ステンレス鋼としての利点を損なうことなく、脆化相(σ相)の生成を抑制できる二相ステンレス鋼製造物およびその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る二相ステンレス鋼製造物は、Fe-Cr-Ni-Mo系合金で、オーステナイト相およびフェライト相の二相が混在する二相ステンレス鋼からなる製造物であって、前記フェライト相の結晶粒の粒界領域に、前記Cr成分の濃化領域と薄化領域とが交互に連なる組成変調組織が形成されており、前記組成変調組織における前記Cr成分濃化領域と前記Cr成分薄化領域との前記Cr成分の濃度差が10質量%以上であることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、高耐食性ステンレス鋼の技術に関し、特に、オーステナイト相およびフェライト相の二相が混在する二相ステンレス鋼からなる製造物およびその製造方法に関するものである。
化学プラントや海水機器等の厳しい腐食環境で使用される鋼材として、二相ステンレス鋼が近年注目されている。二相ステンレス鋼は、オーステナイト相(γ相)およびフェライト相(α相)の二相が混在するステンレス鋼であり、優れた機械的特性と耐食性とを兼ね備えている。また、二相ステンレス鋼は、オーステナイト系ステンレス鋼よりもNi(ニッケル)含有率が低くCr(クロム)含有率が高いため、材料コストが相対的に低いという利点もある。
ステンレス鋼において機械的特性の向上や耐食性の向上を目指す場合、一般的に、組成制御と微細組織制御とが極めて重要である。組成制御に関しては、今までに非常に多くの研究・開発成果が報告されているが、微細組織制御に特化した報告は比較的少ない。
鋼材の微細組織制御に関する技術の一例として、特許文献1(特開2001-234240)には、C:0.05〜0.80 mass%を含有する組成になる鋼材に、α相温度域またはγ相温度域において、真歪が0.1以上となる加工を施した後、α相とγ相の2相域となる温度範囲において0.1〜20 Tの磁場を印加することを特徴とする複相組織鋼の組織制御方法が開示されている。特許文献1によると、複相組織鋼の組織制御を短時間かつ低コストで行うことができるとされている。
特開2001−234240号公報
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、α相とγ相の2相域となる温度範囲(例えば、745〜800℃という高温域)まで昇温した状態で磁場を印加していることから、結晶粒が成長・粗大化して、当該鋼材の機械的強度(例えば、耐力や引張強さ)が低下することが懸念される。機械的強度の観点からは、結晶粒の粗大化を抑制するため、できるだけ低い温度で組織制御を行うことが好ましい。
また、二相ステンレス鋼のように比較的Cr濃度の高いステンレス鋼に特許文献1の技術を適用しようとすると、その温度域で金属間化合物の脆化相(σ相)が生成し易くなり、二相ステンレス鋼の延性・靱性が著しく低下することが懸念される(いわゆる、σ相脆化)。
σ相脆化は、二相ステンレス鋼製の部材を溶接する際に、溶接強度を著しく低下させる要因として大きな問題になる可能性が高く、二相ステンレス鋼においてσ相脆化を抑制する技術が強く求められている。
したがって、本発明の目的は、二相ステンレス鋼としての利点(優れた機械的特性と耐食性)を損なうことなく、脆化相(σ相)の生成を抑制できる二相ステンレス鋼製造物およびその製造方法を提供することにある。
(I)本発明の一態様は、Fe(鉄)−Cr(クロム)−Ni(ニッケル)−Mo(モリブデン)系合金で、オーステナイト相(γ相)およびフェライト相(α相)の二相が混在する二相ステンレス鋼からなる製造物であって、
前記フェライト相の結晶粒の粒界領域に、前記Cr成分の濃化領域と薄化領域とが交互に連なる組成変調組織が形成されており、
前記組成変調組織における前記Cr成分濃化領域と前記Cr成分薄化領域との前記Cr成分の濃度差が10質量%以上であることを特徴とする二相ステンレス鋼製造物を提供する。
(II)本発明の他の一態様は、上記の発明に係る二相ステンレス鋼製造物の製造方法であって、
前記製造物の成形加工後に、前記組成変調組織を形成するための熱処理工程を有し、
前記熱処理は、前記製造物に対して0.1 T以上10 T以下の磁場を印加した状態で400℃以上500℃以下に加熱する熱処理であることを特徴とする二相ステンレス鋼製造物の製造方法を提供する。
本発明によれば、二相ステンレス鋼としての利点を損なうことなく、脆化相(σ相)の生成を抑制できる二相ステンレス鋼製造物およびその製造方法を提供することができる。
実施例1の二相ステンレス鋼製造物の微細組織の例を示す断面模式図である。 実施例2の二相ステンレス鋼製造物の微細組織の例を示す断面模式図である。
本発明は、前述した発明に係る二相ステンレス鋼製造物(I)において、以下のような改良や変更を加えることができる。
(i)前記組成変調組織における変調周期が5 nm以上40 nm以下である。
(ii)前記Mo成分の含有率が4質量%以上である。
(iii)前記二相ステンレス鋼製造物内に生成するFe-Cr-Mo系金属間化合物が占有面積率で2%未満である。
(本発明の基本思想)
前述したように、二相ステンレス鋼のように比較的Cr濃度の高いステンレス鋼は、700〜800℃の温度域で脆化相(σ相)が生成し易く、σ相脆化を起こすと延性・靱性が著しく低下するという問題がある。二相ステンレス鋼におけるσ相は、「Fe:Cr ≒ 1:1」の金属間化合物であり、その中にMo,W(タングステン),Si(ケイ素),Nb(ニオブ),Ti(チタン)等の元素が固溶したものである。なお、固溶元素の中で、MoやSiはσ相を促進する元素と言われている。
σ相が生成・成長するためには、二相ステンレス鋼の結晶粒内および/または結晶粒間でσ相構成元素が拡散移動する必要がある。原子の拡散移動は、通常、バルク拡散よりも粒界拡散の方が圧倒的に速い。そのため、σ相の生成・成長は、二相ステンレス鋼結晶の粒界領域(特に、α相/γ相の界面)で優先して起こる。
本発明者等は、σ相構成元素の拡散移動を抑制することができれば、σ相の生成・成長を抑制できると考えた。そして、σ相構成元素の拡散移動を抑制するため、二相ステンレス鋼結晶の粒界領域に、スピノーダル分解を利用した組成変調組織を意図的に形成することを考えた。当該組成変調組織を構成する相は、σ相の元素構成比率から離れる方向の組成を有しており、σ相を生成・成長するための拡散がより多く必要となることから、実質的にσ相生成の障壁になると考えられる。また、スピノーダル分解は、熱力学的により安定な状態への遷移なので、σ相を生成するための拡散の障害になると考えられる。これらの相乗作用により、二相ステンレス鋼製造物でσ相の生成・成長を抑制できると考えた。
本発明は、上記の技術的思想に基づいて、実験的に検証して完成されたものである。
以下、本発明に係る実施形態について、二相ステンレス鋼製造物の製造手順に沿って、図面を参照しながら具体的に説明する。ただし、本発明は、ここで取り挙げた実施形態に限定されることはなく、発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜組み合わせや改良が可能である。また、図面において、同義の部材・部位には同じ符号を付して重複する説明を省略する。
まず、Fe-Cr-Ni-Mo系合金で、オーステナイト相(γ相)およびフェライト相(α相)の二相が混在する二相ステンレス鋼材を用意する。Fe-Cr-Ni-Mo系合金の組成は、該4元素が少なくとも含有されていて二相ステンレス鋼を形成する限り特段の限定はなく、従前の二相ステンレス鋼の組成を利用できる。また、二相ステンレス鋼材の製造方法にも特段の限定はなく、従前の方法(例えば、原料混合−溶解−鋳造)を利用することができる。
次に、所望の形状となるように二相ステンレス鋼材を成形加工する。鋼材への成形加工方法に特段の限定はなく、従前の方法(例えば、鋳塊への熱間加工や冷間加工)を利用することができる。以下では、二相ステンレス鋼製造物として圧延材を例にして説明するが、本発明の二相ステンレス鋼製造物はそれに限定されるものではない。
次に、得られた二相ステンレス鋼成形物の結晶の粒界領域に、所望の組成変調組織を形成するための熱処理(組成変調組織形成熱処理)を行う。この熱処理の温度は、少なくともα相のキュリー温度未満の温度で、α相がスピノーダル分解する温度が好ましく、具体的には400℃以上500℃以下が好ましい。熱処理温度が400℃未満になると、温度が低過ぎてスピノーダル分解が上手く進行しない(極めて長時間を要する)。一方、熱処理温度が500℃超になると、温度が高過ぎてスピノーダル分解量の制御が困難になる。
二相ステンレス鋼のα相がスピノーダル分解する結果、Cr成分濃化領域(Cr濃化相)とCr成分薄化領域(言い換えると、Fe成分濃化領域、Fe濃化相)とが交互に連なる組成変調組織が形成される。
また、本熱処理の際に、二相ステンレス鋼成形物に所定の磁場を印加することが好ましい。二相ステンレス鋼はα相とγ相とを有するが、γ相は非磁性であることから、基本的に印加磁場は磁性を有するα相に働く。磁場印加を行うことにより、次のような作用効果がある。
(1)スピノーダル分解によってCr濃化相とFe濃化相とが生成するが、磁場印加に呼応して磁化を高めるためにFe濃化相とCr濃化相との分離(すなわちスピノーダル分解)が促進される。また、磁場印加による静磁エネルギーを低下させるためFe濃化相は磁場方向に沿って成長しようとする。その結果、Fe濃化相およびCr濃化相が交互に積層した層状の組成変調組織(磁場方向の変調周期が長く、磁場方向に垂直方向の変調周期が短い)が形成される。
(2)スピノーダル分解の促進は、スピノーダル分解の進行温度が低下することに相当し(低い温度でもスピノーダル分解が進行することに相当し)、熱処理温度を低めに設定できることにつながる。そして、低い熱処理温度によって結晶粒成長が抑制されることから、機械的強度の低下が抑制される。
(3)スピノーダル分解は、原子の拡散移動によって進行する現象であるが、熱処理温度を低下させることでバルク拡散はほとんど機能せず粒界拡散が支配的になる。その結果、スピノーダル分解は、粒界およびその近傍(粒界領域と総称する)のみで局所的に生じる。言い換えると、粒界拡散が作用しうる範囲内の粒界領域でスピノーダル分解が生じ、結晶粒の内部領域(粒界領域よりも内部の領域)では、実質的にスピノーダル分解が生じない。
(4)スピノーダル分解は、熱力学的により安定な状態への遷移なので、スピノーダル分解した領域でσ相を生成するためには、より多くのエネルギーが必要になる。言い換えると、スピノーダル分解により生成した層状の組成変調組織は、σ相を生成するための拡散の障害になりえる。その結果、二相ステンレス鋼の結晶の粒界領域でσ相の生成・成長を抑制することができる。
印加する磁場強度は、0.1 T以上10 T以下が好ましい。磁場強度が0.1 T未満になると、上述の作用効果が十分に得られない。一方、磁場強度が10 T超になると、Fe濃化相が磁化を更に高めるように分散生成して層状の組成変調組織が得られなくなり、上述の作用効果が十分に得られない。印加する磁場強度は、0.1 T以上5 T以下がより好ましく、0.1 T以上2 T以下が更に好ましい。
なお、二相ステンレス鋼の圧延材では、構成するα相およびγ相の結晶粒が共に圧延方向に伸ばされたような微細組織を有している。すなわち、α相/γ相の界面も圧延方向に長い。そのため、σ相の生成を効率よく抑制する観点から、圧延材に対して本熱処理を施す場合、圧延方向に平行に磁場を印加することが好ましい。
また、本発明における磁場印加は、上記のような静磁場印加(磁場強度と印加方向とが一定)に限定されるものではなく、磁場印加方向が回転する回転磁場印加でもよい。例えば、被処理材が圧延材ではなく鍛造材の場合には、α相結晶およびγ相結晶に特定の配向性がないため(等軸晶からなるため)、α相/γ相界面をできるだけ網羅するように、静磁場よりも回転磁場の方がσ相抑制により有効となる。
上記で説明したように、本発明は、二相ステンレス鋼成形物に対して所定の磁場を印加しながら粒成長が生じないような比較的低温の熱処理を施すことにより、α相結晶の粒界領域に局所的にFe濃化相およびCr濃化相が交互に積層した層状の組成変調組織を形成することができる。該組成変調組織のFe濃化相は、Cr成分拡散の障壁となりえるため、得られた二相ステンレス鋼製造物は、α相/γ相界面でのσ相の生成・成長が抑制されるという作用効果を有する。例えば、本発明の二相ステンレス鋼製造物同士を溶接する場合、溶接の熱影響部においてσ相の生成・成長が抑制され、溶接物の溶接強度や信頼性を大幅に向上できる作用効果がある。
二相ステンレス鋼製造物の機械的特性や信頼性の観点からは、σ相の生成量はできるだけ少ない方が望ましいが、溶接等の後工程を考慮すると、現実的にはσ相生成量を完全にゼロにすることは困難である。ただし、σ相生成の悪影響を許容レベルに低減するためには、σ相の生成量は、電子線後方散乱回折(EBSD)によるσ相の占有面積率測定において、少なくとも2%未満に抑制することが好ましい。1%以下がより好ましく、0.5%以下が更に好ましい。本発明の二相ステンレス鋼製造物は、σ相の占有面積率を0.1%以上2%未満に抑制することができる。
また、本発明の二相ステンレス鋼製造物は、σ相の生成・成長抑制のみならず、他の脆化相(例えば、G相、χ相、Cr2N相など)の生成・成長抑制も期待できる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1の製造物の作製)
二相ステンレス鋼成形材として、Fe-25Cr-7Ni-4Mo-0.8Mn-0.5Si-0.2Cu-0.25N(数値は質量%)の名目組成を有する圧延材を、従前の方法により用意した。次に、該圧延材に対して、圧延方向に平行で1.0 Tの静磁場を印加し、キュリー温度(515℃)未満の500℃に昇温して組成変調組織形成熱処理を施した。
組成変調組織形成熱処理の詳細条件は、次のようである。圧延材が酸化しないようにアルゴンガスを流しながらヒータで加熱した。460℃まで1〜10℃/分の加熱速度で昇温させ、460〜500℃を0.5℃/分の加熱速度で昇温した。500℃に達した後、直ちに0.5℃/分の冷却速度で460℃まで徐冷し、460℃以下は炉冷とした。磁場印加は、昇温時の215℃から開始し、降温時の215℃まで継続して行った。
圧延材に印加された磁場強度は、圧延材の中央部で1.0 Tであり、端部で0.5 Tであった。なお、前述したように、0.1 T以上の磁場印加があれば組成変調組織が形成されるので、本実施例の条件であっても特段の問題はない。
(比較例1の製造物の作製)
比較例として、実施例1と同じ圧延材を用意した。次に、該圧延材に対して、磁場印加を行わなかったこと以外は実施例1と同様にして、組成変調組織形成熱処理を施した。
(実施例2の製造物の作製)
二相ステンレス鋼成形材として、実施例1と同じ名目組成を有する鍛造材を、従前の方法により用意した。次に、該鍛造材に対して、2.0 Tの回転磁場を印加したこと以外は実施例1と同様にして、組成変調組織形成熱処理を施した。
(測定・評価)
(a)X線回折測定
得られた実施例1〜2および比較例1の製造物に対して、X線回折測定を行った。
その結果、実施例1〜2の製造物では、α相の回折ピークが少なくとも2つに分離されて観察され、スピノーダル分解によってCr濃化相とFe濃化相とが生成していることが確認された。一方、比較例1の製造物は、α相の回折ピークに明確な分離が観察されず、磁場印加を行わない条件ではスピノーダル分解がほとんど進行しなかったと考えられる。
(b)硬さ測定
得られた実施例1〜2の製造物に対して、ビッカース硬さの測定を行った。また、組成変調組織形成熱処理前の成形物に対して、ビッカース硬さの測定を別途行った。
その結果、熱処理前の成形物においては、α相のビッカース硬さが270〜280 Hvであり、γ相のビッカース硬さが250〜290 Hvであった。これに対し、熱処理後の製造物では、α相のビッカース硬さが290〜500 Hvと増加していた。これは、スピノーダル分解によって生成したCr濃化相およびFe濃化相に起因すると考えられた。γ相のビッカース硬さは、熱処理の前後で特段の変化がなかった。
(c)微細組織観察
得られた実施例1〜2の製造物に対して、走査透過型電子顕微鏡−エネルギー分散型X線分光分析装置(STEM-EDX)を用いて、断面の微細組織観察を行った。図1は、実施例1の二相ステンレス鋼製造物の微細組織の例を示す断面模式図であり、図2は、実施例2の二相ステンレス鋼製造物の微細組織の例を示す断面模式図である。
実施例1の二相ステンレス鋼製造物10は、圧延材であることから、図1に示したように、α相結晶粒11およびγ相結晶粒12が共に圧延方向に伸ばされたような微細組織を有していた。また、組成変調組織形成熱処理において圧延方向に平行に磁場印加を行ったことから、α相結晶粒11の粒界領域で印加磁場方向に沿うように組成変調組織13が形成されていた。
一方、実施例2の二相ステンレス鋼製造物20は、鍛造材であることから、図2に示したように、α相結晶粒11およびγ相結晶粒12が共に特定の配向性を有しない等軸晶からなる微細組織を有していた。また、組成変調組織形成熱処理において回転磁場印加を行ったことから、α相結晶粒11の粒界領域で結晶粒全体を覆うように組成変調組織23が形成されていた。
実施例1〜2のそれぞれにおいて、組成変調組織13内でCr濃化相およびFe濃化相のCr濃度を測定したところ、両相のCr濃度差は10質量%以上(最大約15質量%)であった。また、組成変調組織13の厚さ方向でのCr成分の組成変調周期を測定したところ、5〜40 nm(平均約15 nm)であった。
(d)σ相生成試験
得られた実施例1〜2および比較例1の製造物に対して、σ相生成熱処理(750℃で45分間保持)を施し、電子線後方散乱回折(EBSD)を用いて、試料断面におけるσ相の占有面積率を測定した。
その結果、比較例1の製造物では、σ相が約2%の占有面積率で生成・析出していた。これに対し、実施例1〜2の製造物では、σ相の生成・析出が約0.2%に激減しており、本発明の二相ステンレス鋼製造物は、σ相の生成を抑制できることが確認された。
なお、本実験で用いた二相ステンレス鋼材は、σ相促進元素であるMo成分を4質量%も含有しているが、そのようなステンレス鋼材であっても上述のような作用効果を示していることから、本発明は、その工業的意義が高いと言える。
上述した実施形態や実施例は、本発明の理解を助けるために説明したものであり、本発明は、記載した具体的な構成のみに限定されるものではない。例えば、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。すなわち、本発明は、本明細書の実施形態や実施例の構成の一部について、削除・他の構成に置換・他の構成の追加をすることが可能である。
10,20…二相ステンレス鋼製造物、
11…α相結晶粒、12…γ相結晶粒、13,23…組成変調組織。

Claims (5)

  1. Fe-Cr-Ni-Mo系合金で、オーステナイト相およびフェライト相の二相が混在する二相ステンレス鋼からなる製造物であって、
    前記フェライト相の結晶粒の粒界領域に、前記Cr成分の濃化領域と薄化領域とが交互に連なる組成変調組織が形成されており、
    前記組成変調組織における前記Cr成分濃化領域と前記Cr成分薄化領域との前記Cr成分の濃度差が10質量%以上であることを特徴とする二相ステンレス鋼製造物。
  2. 請求項1に記載の二相ステンレス鋼製造物において、
    前記組成変調組織における変調周期が5 nm以上40 nm以下であることを特徴とする二相ステンレス鋼製造物。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の二相ステンレス鋼製造物において、
    前記Mo成分の含有率が4質量%以上であることを特徴とする二相ステンレス鋼製造物。
  4. 請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の二相ステンレス鋼製造物において、
    前記二相ステンレス鋼製造物内に生成するFe-Cr-Mo系金属間化合物が占有面積率で2%未満であることを特徴とする二相ステンレス鋼製造物。
  5. 請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の二相ステンレス鋼製造物の製造方法であって、
    前記製造物の成形加工後に、前記組成変調組織を形成するための熱処理工程を有し、
    前記熱処理は、前記製造物に対して0.1 T以上10 T以下の磁場を印加した状態で400℃以上500℃以下に加熱する熱処理であることを特徴とする二相ステンレス鋼製造物の製造方法。
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WO2019088222A1 (ja) 2017-11-02 2019-05-09 三菱マテリアル株式会社 接合体、及び、絶縁回路基板

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