以下、本発明の複層塗膜形成方法について、さらに詳細に説明する。
本発明の複層塗膜形成方法の一態様は、
基材上に、
工程(1):ケチミン構造含有シランカップリング剤を含有するプライマー組成物(A)を塗布して、プライマー層を形成する工程、
工程(2):前記工程(1)でプライマー層が形成された基材上に、下塗り塗料組成物(B)を塗装して下塗り塗膜を形成する工程、
工程(3):前記工程(2)で下塗り塗膜が形成された基材上に、水酸基含有アクリル樹脂(c1)及びポリイソシアネート化合物(c2)を含有する上塗り塗料組成物(C)を塗装して上塗り塗膜を形成する工程、
を含むことを特徴とする。
基材
本発明の複層塗膜形成方法が適用される基材の材質としては、特に制限はなく、無機材料、有機材料、或いは、有機と無機とのハイブリッド材料のいずれであってもよい。
上記無機材料としては、例えば、鉄、アルミニウム、真鍮、銅、ブリキ、ステンレス鋼、亜鉛メッキ鋼、亜鉛合金(Zn−Al、Zn−Ni、Zn−Fe等)メッキ鋼等の金属材料;ガラス;セメント;コンクリート;ポリシロキサン等が挙げられる。
前記有機材料は有機樹脂を含む材料であり、該有機樹脂としては、例えば、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ−1、4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−1、2−ジフェノキシエタン−4、4’−ジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレートなどのようなポリエステル樹脂、エピコート(商品名:油化シェルエポキシ(株)製)などの市販品に代表されるエポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂、ノボラック樹脂、フェノール樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロースエステル(例、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ニトロセルロース)、ポリアミド、ポリスチレン(例、シンジオタクチックポリスチレン)、ポリオレフィン(例、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン等が挙げられる。
また、上記有機材料は、その成分の一部として、顔料及び/又は繊維を含有するものであってもよい。
上記顔料としては、例えば、炭酸カルシウム、シリカ、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、カオリン、水酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム等が挙げられる。
また、前記繊維としては、例えば、ガラス繊維、アラミド繊維、炭素繊維、セルロース繊維等が挙げられる。
このため、各種の繊維強化プラスチック材料(Fiber Reinforced Plastics:以下FRP材料又は単にFRPという。)は上記有機材料に包含される。
プライマー組成物(A)
プライマー組成物(A)はケチミン構造含有シランカップリング剤を含有する組成物である。
ケチミン構造含有シランカップリング剤は、ケチミン構造を有している有機ケイ素化合物である。
ケチミン構造含有シランカップリング剤は、以下の化学式(I)
(R1O)3Si−(CH2)n−N=C(R2)R3・・・(I)
(式中、R1は炭素数1〜6、好ましくは1〜3のアルキル基であり、R2、R3は各々独立した炭素数1〜6、好ましくは1〜3のアルキル基、水素原子またはフェニル基であり、nは1〜6、好ましくは1〜3の整数を意味する。)
で示すことができる。
プライマー組成物(A)は、さらに必要に応じて、基体樹脂や架橋剤を含むことができるが、これらを実質的に含まなくても本発明の効果を発揮することができる。
上記基体樹脂としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。
上記架橋剤としては、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロックポリイソシアネート化合物などが挙げられる。
プライマー組成物(A)は、さらに必要に応じて、顔料を含有することができ、さらに増粘剤、可塑剤、充填剤、タレ止め剤、顔料分散剤等の各種添加剤を適宜含有することができる。
本発明で使用するケチミン構造含有シランカップリング剤を含むプライマー組成物(A)は、有効成分が1〜40重量%、好ましくは2〜20重量%の範囲となるように有機溶剤で希釈して、有機溶剤溶液として使用することが好ましい。なお、本明細書において、有効成分とは、試料から、水、有機溶剤などの希釈剤を除いた残渣を意味する。
上記有機溶剤としては、該シランカップリング剤と実質的に反応を起こさない溶剤を使用することができ、具体的には、例えば、芳香族炭化水素系有機溶剤、脂肪族炭化水素系有機溶剤、ケトン系有機溶剤、エステル系有機溶剤、アルコール系有機溶剤が使用できる。
芳香族炭化水素系有機溶剤としては、トルエン、キシレン等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
脂肪族炭化水素系有機溶剤としては、n−ブタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−ペンタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、n−ウンデカン、n−ドデカン、n−トリデカン、n−テトラデカン、n−ペンタデカン、n−ヘキサデカン、n−ヘプタデカン等の直鎖状アルカン;2−メチルブタン、2,2−ジメチルプロパン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、2,3−ジメチルペンタン、2,4−ジメチルペンタン、2,2,3−トリメチルペンタン、2,2,4−トリメチルペンタン、3,4−ジエチルヘキサン、2,6−ジメチルオクタン、3,3−ジメチルオクタン、3,5−ジメチルオクタン、4,4−ジメチルオクタン、3−エチル−3−メチルヘプタン、2−メチルノナン、3−メチルノナン、4−メチルノナン、5−メチルノナン、2−メチルウンデカン、3−メチルウンデカン、2,2,4,6,6−ペンタメチルヘプタン等の分岐状アルカン;シクロペンタン、t−デカリン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、1,2−ジメチルシクロヘキサン、1,3−ジメチルシクロヘキサン、1,4−ジメチルシクロヘキサン、プロピルシクロヘキサン、イソプロピルシクロヘキサン、1,2−メチルエチルシクロヘキサン、1,3−メチルエチルシクロヘキサン、1,4−メチルエチルシクロヘキサン、1,2,3−トリメチルシクロヘキサン、1,2,4−トリメチルシクロヘキサンおよび1,3,5−トリメチルシクロヘキサン等のシクロアルカン等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、脂肪族炭化水素系有機溶剤は直鎖又は分岐状であることが好ましい。
ケトン系有機溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、エチルイソアミルケトン、ジイソブチルケトン、メチルヘキシルケトン、イソホロンなどを挙げることができ、これらは単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。
エステル系有機溶剤としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸2エチルヘキシル、酢酸シクロヘキシル、3−メトキシブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせることができる。なかでも、エステル系有機溶剤は直鎖又は分岐状であることが好ましい。また、エステル系有機溶剤は炭素数が4〜8であることが好ましい。
アルコール系有機溶剤としては、例えば、イソプロパノール、n−ブチルアルコール、2−ヒドロキシ−4−メチルペンタン、2−エチルヘキシルアルコール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等を挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせることができる。なかでも、アルコール系有機溶剤は直鎖又は分岐状であることが好ましい。また、アルコール系有機溶剤は炭素数が1〜8であることが好ましい。
上記有機溶剤は1種もしくは2種以上組合わせて使用することができる。
プライマー組成物(A)の塗布方法としては従来公知の塗布方法を用いることができる。プライマー組成物(A)は、例えば、エアースプレー、エアレススプレー、静電エアースプレー、フローコーター、回転霧化塗装機、ディッピング形式による塗装機などの通常使用される塗装機、または刷毛、ローラー、ワイピング布などを用いて塗布することができる。
基材上にプライマー組成物(A)を塗布して得られるプライマー層の乾燥膜厚は、基材との密着性、耐水性及び耐冷熱負荷性の観点から、1μm以下、好ましくは0.01〜1μm、さらに好ましくは0.1〜0.7μmであることが好適である。プライマー塗膜の乾燥膜厚が1μm未満の場合は刷毛を用いて塗布することが好ましく、1μm以上の場合には回転霧化塗装機を用いて塗布することが好ましい。
プライマー層の膜厚調整は、塗布量を調整することによって行うことができる。塗布量は通常、有効成分換算で0.05〜20g/m2、好ましくは0.1〜10g/m2の範囲である。塗布量が0.05g/m2未満になると基材に塗布されない部分を生じ、基材と塗膜との付着性及び塗膜性能が劣り、一方、塗布量が20g/m2を越えると、塗膜性能が低下したり、塗膜表面と内部と硬化速度の違いにより塗膜にチヂミを発生し塗膜外観や付着性が低下したりするので好ましくない。
また、プライマー層は、常温もしくは加熱により硬化させることができる。具体的には、例えば、20℃の室温で10〜30分間程度の温度で維持すれば良く、また、加熱する場合には、例えば、40〜80℃、好ましくは40〜60℃の温度で1〜30分間、好ましくは10〜20分間加熱することが好ましい。
下塗り塗料組成物(B)
下塗り塗料組成物(B)は、従来既知のものを制限なく用いることができるが、密着性、耐水性及び耐冷熱負荷性の観点から、水酸基含有アクリル樹脂(b1)を含有することが好ましい。
水酸基含有アクリル樹脂(b1)は、例えば、水酸基含有重合性不飽和モノマー及び該水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能な他の重合性不飽和モノマーを、それ自体既知の方法、例えば、有機溶媒中での溶液重合法、水中でのエマルション重合法等の方法により共重合せしめることによって製造することができる。
上記水酸基含有重合性不飽和モノマーは、1分子中に水酸基及び重合性不飽和結合をそれぞれ1個以上有する化合物である。該水酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等;該(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物のε−カプロラクトン変性体;N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド;アリルアルコール、さらに、分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらは、単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
水酸基含有重合性不飽和モノマーの配合割合は、モノマー成分の総量に対して、5〜40質量%であり、特に10〜40質量%、さらに特に10〜30質量%の範囲内であることが好ましい。
水酸基含有アクリル樹脂(b1)は、水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能な他の重合性不飽和モノマーとして、脂環式炭化水素基含有重合性不飽和モノマーを含有することが好ましい。
水酸基含有アクリル樹脂(b1)が、脂環式炭化水素基含有重合性不飽和モノマーを共重合成分として含有していることで、ガラス転移温度が上昇し、極性が低下することから、得られる塗膜の耐水性を向上せしめるものである。
脂環式炭化水素基の代表例としては、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基、イソボルニル基、アダマンチル基、トリシクロデカニル基等を挙げることができる。
脂環式炭化水素基含有重合性不飽和モノマーの具体例としては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート(例えば、4−メチルシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート)、エチルシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート(例えば、4−エチルシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート)、メトキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート(例えば、4−メトキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート)、tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート;イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、3,5−ジメチルアダマンチル(メタ)アクリレート、3−テトラシクロドデシル(メタ)アクリレート等を挙げることができ、好ましい例としては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
脂環式炭化水素基含有重合性不飽和モノマーの配合割合は、モノマー成分の総量に対して、20〜40質量%、好ましくは25〜35質量%の範囲内であることが好ましい。
水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能な他の重合性不飽和モノマーは、上記水酸基含有重合性不飽和モノマー及び脂環式炭化水素基含有重合性不飽和モノマー以外の1分子中に1個の不飽和結合を有する化合物であり、その具体例を以下(1)〜(7)に列挙する。
(1)酸基含有重合性不飽和モノマー:1分子中に1個以上の酸基と1個の不飽和結合とを有する化合物で、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸及び無水マレイン酸等の如きカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー;ビニルスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレート等の如きスルホン酸基含有重合性不飽和モノマー;2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシ−3−クロロプロピルアシッドホスフェート、2−メタクロイルオキシエチルフェニルリン酸等の酸性リン酸エステル系重合性不飽和モノマー等を挙げることができる。これらは1種で又は2種以上を組合せて使用することができる。
(2)アクリル酸又はメタクリル酸と炭素数1〜20の1価アルコールとのモノエステル化物:例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)クリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート,tert−ブチル(メタ)アクリレート,2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、イソステアリルアクリレート(大阪有機化学工業社製、商品名)、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等。
(3)芳香族系重合性不飽和モノマー:例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等。
芳香族系重合性不飽和モノマーを構成成分とする場合、その配合割合は、モノマー成分の総量に対して3〜50質量%、特に、5〜40質量%の範囲内であるのが好ましい。
(4)グリシジル基含有重合性不飽和モノマー:1分子中にグリシジル基と不飽和結合とをそれぞれ1個有する化合物で、具体的には、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等。
(5)窒素含有重合性不飽和モノマー:例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルプロピルアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール等。
(6)その他のビニル化合物:例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、塩化ビニル、バーサティック酸ビニルエステルであるベオバ9、ベオバ10(ジャパンエポキシレジン)等。
(7)不飽和結合含有ニトリル系化合物:例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等。
これらその他の重合性不飽和モノマーは、1種又は2種以上を用いることができる。
尚、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。また、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル又はメタクリロイルを意味し、「(メタ)アクリルアミド」は、アクリルアミド又はメタクリルアミドを意味する。
水酸基含有アクリル樹脂(b1)は、下塗り塗料組成物(B)を塗装して得られる塗膜の密着性及び耐冷熱負荷性の観点から、ガラス転移温度(Tg)が20〜100℃、特に50〜100℃の範囲内であることが好ましい。
なお、本明細書において、水酸基含有アクリル樹脂のガラス転移温度Tgは、下記式により算出される値である。
1/Tg(K)=W1/T1+W2/T2+・・・Wn/Tn
Tg(℃)=Tg(K)−273
式中、W1、W2、・・・Wnは各モノマーの質量分率であり、T1、T2・・・Tnは各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度Tg(K)である。
なお、各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度は、POLYMER HANDBOOK Fourth Edition,J.Brandrup,E.h.Immergut,E.A.Grulke編(1999年)による値であり、該文献に記載されていないモノマーのガラス転移温度は、該モノマーのホモポリマーを重量平均分子量が50,000程度になるようにして合成し、そのガラス転移温度を示差走査型熱分析により測定したときの値を使用する。
水酸基含有アクリル樹脂(b1)は、密着性、耐水性及び耐冷熱負荷性の観点から、重量平均分子量が5,000〜100,000、特に5,000〜50,000の範囲内であることが好ましい。
また本明細書において、重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて測定した保持時間(保持容量)を、同一条件で測定した分子量既知の標準ポリスチレンの保持時間(保持容量)によりポリスチレンの分子量に換算して求めた値である。カラムは、「TSKgel G−4000H×L」、「TSKgel G−3000H×L」、「TSKgel G−2500H×L」、「TSKgelG−2000H×L」(いずれも東ソー(株)社製、商品名)の4本を用い、移動相;テトラヒドロフラン、測定温度;40℃、流速;1ml/分、検出器;RIの条件で行ったものである。
水酸基含有アクリル樹脂(b1)の溶解性パラメーター(SP値)が8.7〜9.2の範囲内となるように上記重合性不飽和モノマーの組成を決定することが、下塗り塗料組成物(B)を塗装して得られる塗膜の密着性及び耐冷熱負荷性の点から好ましく、より好ましいSP値の範囲は、8.8〜9.1の範囲内である。
溶解性パラメーター(Solubility Parameter、「SP値」は略号)は、液体分子の分子間相互作用の尺度を表すものである。重合性モノマーのホモポリマーのSP値は、J.Paint Technology,vol.42,176(1970)に記載されている。重合性モノマー混合物の共重合体ポリマーのSP値は、下記式により計算して求めることができる。
SP値=SP1 ×fw1+SP2×fw2+………+SPn×fwn
上記式中、SP1、SP2、………SPnは、各重合性モノマーのホモポリマーのSP値を表し、fw1、fw2、………fwnは、各重合性不飽和モノマーのモノマー総量に対する質量分率を表す。
本発明に係る下塗り塗料組成物(B)において、上記水酸基含有アクリル樹脂(b1)の含有量は、密着性及び耐冷熱負荷性等の観点から、下塗り塗料組成物(B)の固形分総量を基準として、15〜90質量%、好ましくは20〜85質量%、さらに好ましくは25〜80質量%の範囲内であることが好適である。
本明細書において、「固形分」は、110℃で1時間乾燥させた後に残存する、組成物中に含有される樹脂、硬化剤、顔料等の不揮発性成分を意味する。このため、例えば、上記下塗り塗料組成物(B)の固形分総量は、アルミ箔カップ等の耐熱容器に下塗り塗料組成物(B)を量り取り、容器底面に該下塗り塗料組成物(B)を塗り広げた後、110℃で1時間乾燥させ、乾燥後に残存する下塗り塗料組成物(B)中の下塗り塗料組成物(B)中の成分の質量を秤量して、乾燥前の下塗り塗料組成物(B)の全質量に対する乾燥後に残存する成分の質量の割合を求めることにより、算出することができる。
下塗り塗料組成物(B)は、水酸基含有ポリエステル樹脂(b2)を含有することができる。
水酸基含有ポリエステル樹脂(b2)は、一般に多価アルコール及び多塩基酸をそれ自体既知の方法で、水酸基過剰でエステル化反応せしめることによって得ることができる。多価アルコールは1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物であり、多塩基酸は1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する化合物である。
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、3−メチル−1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2,3−ジメチルトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、3−メチル−4,3−ペンタンジオール、3−メチル−4,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ヒドロキシピヴァリン酸ネオペンチルグリコールエステルなどの2価アルコール;これらの2価アルコールにε−カプロラクトンなどのラクトン類を付加したポリラクトンジオール;ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレートなどのエステルジオール類;ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールなどのポリエーテルジオール類;プロピレンオキサイド及びブチレンオキサイドなどのα−オレフィンエポキシド、カージュラE10[シェル化学社製、商品名、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル]などのモノエポキシ化合物;グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ジグリセリン、トリグリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニットなどの3価以上のアルコール;これらの3価以上のアルコールにε−カプロラクトンなどのラクトン類を付加させたポリラクトンポリオール類;1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、水添ビスフェノールA及び水添ビスフェノールFなど脂環族多価アルコール;トリス(ヒドロキシアルキル)イソシアヌレート、該トリス(ヒドロキシアルキル)イソシアヌレートのε−カプロラクトン変性体、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートなどのヌレート構造を有する環状ポリオール化合物;などが挙げられる。
多塩基酸は、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、ジフェニルメタン−4,4’−ジカルボン酸などの芳香族多塩基酸及びその無水物;ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸などの脂環族ジカルボン酸及びその無水物;アジピン酸、セバシン酸、スベリン酸、コハク酸、グルタル酸、マレイン酸、クロロマレイン酸、フマル酸、ドデカン二酸、ピメリン酸、アゼライン酸、イタコン酸、シトラコン酸、ダイマー酸などの脂肪族多塩基酸及びその無水物;これらのジカルボン酸のメチルエステル、エチルエステルなどの低級アルキルエステル;トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメット酸、トリメシン酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸、テトラクロロヘキセン多塩基酸及びその無水物などの3価以上の多塩基酸などが挙げられる。
水酸基の導入は、例えば、1分子中に3個以上の水酸基を有する多価アルコールを併用することによって行なうことができる。
また上記多塩基酸と多価アルコールの反応時に、さらに必要に応じて一塩基酸、油成分(この脂肪酸も含む)などを用いても良い。一塩基酸としては、例えば安息香酸やt−ブチル安息香酸などが挙げられ、油成分としては、例えばヒマシ油、脱水ヒマシ油、サフラワー油、大豆油、あまに油、トール油、ヤシ油及びこれらの脂肪酸などが挙げられ、これらは1種又は2種以上使用できる。さらにポリエステル樹脂は、必要に応じて、ブチルグリシジルエーテル、アルキルフェニルグリシジルエーテル、ネオデカン酸グリシジルエステルなどのエポキシ化合物で変性されていてもよい。
水酸基含有ポリエステル樹脂(b2)は、得られる塗膜の耐擦り傷性、硬度、外観、付着性及び紫外線吸収剤等を含有する組成物に対する耐性等の観点から、水酸基価50〜200mgKOH/g、好ましくは50〜150mgKOH/g、数平均分子量2,000〜20,000、好ましくは2,000〜15,000である。
下塗り塗料組成物(B)において、上記水酸基含有ポリエステル樹脂(b2)の含有量は、密着性及び耐冷熱負荷性等の観点から、下塗り塗料組成物(B)の合計固形分を基準として、15〜90質量%、好ましくは20〜85質量%、さらに好ましくは25〜80質量%の範囲内であることが好適である。
また、上記下塗り塗料組成物(B)は、密着性及び耐冷熱負荷性等の観点から、さらにポリイソシアネート化合物(b3)を含有することが好ましい。
ポリイソシアネート化合物(b3)は、1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有する化合物であって、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、該ポリイソシアネートの誘導体等を挙げることができる。
上記脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4,4−又は2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトヘキサン酸メチル(慣用名:リジンジイソシアネート)等の脂肪族ジイソシアネート;2,6−ジイソシアナトヘキサン酸2−イソシアナトエチル、1,6−ジイソシアナト−3−イソシアナトメチルヘキサン、1,4,8−トリイソシアナトオクタン、1,6,11−トリイソシアナトウンデカン、1,8−ジイソシアナト−4−イソシアナトメチルオクタン、1,3,6−トリイソシアナトヘキサン、2,5,7−トリメチル−1,8−ジイソシアナト−5−イソシアナトメチルオクタン等の脂肪族トリイソシアネート等を挙げることができる。
前記脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−シクロペンテンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(慣用名:イソホロンジイソシアネート)、4−メチル−1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート(慣用名:水添TDI)、2−メチル−1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,3−もしくは1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(慣用名:水添キシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物、メチレンビス(4,1−シクロヘキサンジイル)ジイソシアネート(慣用名:水添MDI)、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート;1,3,5−トリイソシアナトシクロヘキサン、1,3,5−トリメチルイソシアナトシクロヘキサン、2−(3−イソシアナトプロピル)−2,5−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2,2,1)ヘプタン、2−(3−イソシアナトプロピル)−2,6−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2,2,1)ヘプタン、3−(3−イソシアナトプロピル)−2,5−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2,2,1)ヘプタン、5−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2,2,1)ヘプタン、6−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2,2,1)ヘプタン、5−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2,2,1)−ヘプタン、6−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2,2,1)ヘプタン等の脂環族トリイソシアネート等を挙げることができる。
前記芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、メチレンビス(4,1−フェニレン)ジイソシアネート(慣用名:MDI)、1,3−もしくは1,4−キシリレンジイソシアネート又はその混合物、ω,ω'−ジイソシアナト−1,4−ジエチルベンゼン、1,3−又は1,4−ビス(1−イソシアナト−1−メチルエチル)ベンゼン(慣用名:テトラメチルキシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物等の芳香脂肪族ジイソシアネート;1,3,5−トリイソシアナトメチルベンゼン等の芳香脂肪族トリイソシアネート等を挙げることができる。
前記芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート(慣用名:2,4−TDI)もしくは2,6−トリレンジイソシアネート(慣用名:2,6−TDI)もしくはその混合物、4,4'−トルイジンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルエーテルジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;トリフェニルメタン−4,4',4''−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトトルエン等の芳香族トリイソシアネート;4,4'−ジフェニルメタン−2,2',5,5'−テトライソシアネート等の芳香族テトライソシアネート等を挙げることができる。
また、前記ポリイソシアネートの誘導体としては、例えば、上記したポリイソシアネートのダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、ウレトジオン、ウレトイミン、イソシアヌレート、オキサジアジントリオン、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)、クルードTDI等を挙げることができる。
ポリイソシアネート化合物(b3)としては、基材との密着性及び耐冷熱負荷性等の観点から、上記脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート及びこれらの誘導体を好適に使用することができる。
また上記ポリイソシアネート化合物(b3)としては、上記ポリイソシアネート及びその誘導体と、該ポリイソシアネートと反応し得る化合物とを、イソシアネート基過剰の条件で反応させてなるプレポリマーを使用してもよい。該ポリイソシアネートと反応し得る化合物としては、例えば、水酸基、アミノ基等の活性水素基を有する化合物が挙げられ、具体的には、例えば、多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂、アミン、水等を使用することができる。
また、上記ポリイソシアネート化合物(b3)としては、イソシアネート基含有重合性不飽和モノマーの共重合体、又は該イソシアネート基含有重合性不飽和モノマーと該イソシアネート基含有重合性不飽和モノマー以外の重合性不飽和モノマーとの共重合体を使用してもよい。
また、上記ポリイソシアネート化合物(b3)は、イソシアネート基がブロック剤でブロックされたポリイソシアネート化合物、いわゆるブロック化ポリイソシアネート化合物であってもよい。
上記ブロック剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、ニトロフェノール、エチルフェノール、ヒドロキシジフェニル、ブチルフェノール、イソプロピルフェノール、ノニルフェノール、オクチルフェノール、ヒドロキシ安息香酸メチル等のフェノール系;ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、β−プロピオラクタム等のラクタム系;メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコール、ラウリルアルコール等の脂肪族アルコール系;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メトキシメタノール等のエーテル系;ベンジルアルコール、グリコール酸、グリコール酸メチル、グリコール酸エチル、グリコール酸ブチル、乳酸、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、メチロール尿素、メチロールメラミン、ジアセトンアルコール、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等のアルコール系;ホルムアミドオキシム、アセトアミドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサンオキシム等のオキシム系;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセチルアセトン等の活性メチレン系;ブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、2−メルカプトベンゾチアゾール、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノール等のメルカプタン系;アセトアニリド、アセトアニシジド、アセトトルイド、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸アミド、ステアリン酸アミド、ベンズアミド等の酸アミド系;コハク酸イミド、フタル酸イミド、マレイン酸イミド等のイミド系;ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、キシリジン、N−フェニルキシリジン、カルバゾール、アニリン、ナフチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、ブチルフェニルアミン等アミン系;イミダゾール、2−エチルイミダゾール等のイミダゾール系;尿素、チオ尿素、エチレン尿素、エチレンチオ尿素、ジフェニル尿素等の尿素系;N−フェニルカルバミン酸フェニル等のカルバミン酸エステル系;エチレンイミン、プロピレンイミン等のイミン系;重亜硫酸ソーダ、重亜硫酸カリ等の亜硫酸塩系;アゾール系の化合物等が挙げられる。上記アゾール系の化合物としては、ピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、3−メチルピラゾール、4−ベンジル−3,5−ジメチルピラゾール、4−ニトロ−3,5−ジメチルピラゾール、4−ブロモ−3,5−ジメチルピラゾール、3−メチル−5−フェニルピラゾール等のピラゾール又はピラゾール誘導体;イミダゾール、ベンズイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等のイミダゾールまたはイミダゾール誘導体;2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン等のイミダゾリン誘導体等が挙げられる。
なかでも、好ましいブロック剤としては、オキシム系のブロック剤、活性メチレン系のブロック剤、ピラゾール又はピラゾール誘導体が挙げられる。
ブロック化を行なう(ブロック剤を反応させる)にあたっては、必要に応じて溶剤を添加して行なうことができる。ブロック化反応に用いる溶剤としてはイソシアネート基に対して反応性でないものが良く、例えば、アセトン、メチルエチルケトンのようなケトン類、酢酸エチルのようなエステル類、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)のような溶剤を挙げることができる。
上記ポリイソシアネート化合物(b3)は、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
下塗り塗料組成物(B)が上記ポリイソシアネート化合物(b3)を含有する場合、その配合割合は、密着性及び耐冷熱負荷性等の観点から、該ポリイソシアネート化合物(b3)のイソシアネート基量(ブロック化イソシアネート基を含む)と、前記水酸基含有アクリル樹脂(b1)及び水酸基含有ポリエステル樹脂(b2)の合計水酸基量との当量比(NCO/OH)が通常0.5〜2.0、特に0.6〜1.5の範囲内となる割合で使用することが好適である。
また、上記ポリイソシアネート化合物(b3)は、比較的低い温度で水酸基と反応し架橋塗膜を形成できるため、基材が有機材料等の熱変形し易い材料である場合に、特に好適に使用することができる。
また、下塗り塗料組成物(B)が、上記ポリイソシアネート化合物(b3)を含有する場合、該下塗り塗料組成物(B)はウレタン化反応触媒を含有することができる。
該ウレタン化反応触媒としては、具体的には、例えば、オクチル酸錫、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジ(2−エチルヘキサノエート)、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジ(2−エチルヘキサノエート)、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫サルファイト、ジオクチル錫オキサイド、ジブチル錫脂肪酸塩、2−エチルヘキサン酸鉛、オクチル酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、脂肪酸亜鉛類、オクタン酸ビスマス、2−エチルヘキサン酸ビスマス、オレイン酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマス、バーサチック酸ビスマス、ナフテン酸ビスマス、ナフテン酸コバルト、オクチル酸カルシウム、ナフテン酸銅、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート等の有機金属化合物;第三級アミン等が挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合せて使用することができる。
また、上記ウレタン化反応触媒を使用する場合、触媒量としては、下塗り塗料組成物(B)の固形分総量に対して、0.0001〜0.5質量%、特に0.0005〜0.1質量%の範囲内であることが好ましい。
下塗り塗料組成物(B)が上記ウレタン化反応触媒を含有する場合、該下塗り塗料組成物(B)は貯蔵安定性、硬化性等の観点から、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソペンタン酸、ヘキサン酸、2−エチル酪酸、ナフテン酸、オクチル酸、ノナン酸、デカン酸、2−エチルヘキサン酸、イソオクタン酸、イソノナン酸、ラウリル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、ネオデカン酸、バーサチック酸、無水イソ酪酸、無水イタコン酸、無水酢酸、無水シトラコン酸、無水プロピオン酸、無水マレイン酸、無水酪酸、無水クエン酸、無水トリメリト酸、無水ピロメリット酸、無水フタル酸等の有機酸;塩酸、リン酸等の無機酸;アセチルアセトン、イミダゾール系化合物等の金属配位性化合物等を含有してもよい。
下塗り塗料組成物(B)には、本発明の効果を損なわないことを限度として、(b1)及び(b2)以外の樹脂、溶媒、顔料、(b3)以外の架橋剤、触媒、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、表面調整剤、消泡剤、乳化剤、界面活性剤、防汚剤、湿潤剤、増粘剤、染料、ツヤ調整剤等の塗装の分野で通常使用される他の添加成分等を適宜含有させることができる。
下塗り塗料組成物(B)は、溶融物、溶液、懸濁液、エマルションのいずれの形態であってもよいが、溶媒中に水酸基含有アクリル樹脂(b1)及び/又は水酸基含有ポリエステル樹脂(b2)が溶解した溶液の形態であることが、生産性及び作業性の観点から好ましい。この場合、下塗り塗料組成物(B)は、水酸基含有アクリル樹脂(b1)及び/又は水酸基含有ポリエステル樹脂(b2)並びに溶媒を含有する。
上記溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、石油系炭化水素等を挙げることができる。
前記顔料としては、例えば、光輝性顔料、着色顔料、体質顔料等を挙げることができる。該顔料は単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
上記光輝性顔料としては、例えば、アルミニウム(蒸着アルミニウムも含む)、銅、亜鉛、真ちゅう、ニッケル、ガラスフレーク、酸化アルミニウム、雲母、酸化チタン及び/又は酸化鉄で被覆された酸化アルミニウム、酸化チタン及び/又は酸化鉄で被覆された雲母等が挙げられる。
また、前記着色顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、モリブデンレッド、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリン系顔料、スレン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサジン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料などが挙げられる。
また、前記体質顔料としては、例えば、クレー、カオリン、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、アルミナホワイト等が挙げられる。
下塗り塗料組成物(B)が、上記顔料を含有する場合、該顔料の含有量は、下塗り塗料組成物(B)の固形分総量に対して、1〜70質量%、好ましくは5〜60質量%、さらに好ましくは15〜50質量%の範囲内であることが好適である。
本発明の複層塗膜形成方法においては、前記プライマー層上に上記下塗り塗料組成物(B)が塗装されて、下塗り塗膜が形成される。
上記下塗り塗料組成物(B)の塗装方法としては、特に限定されず、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装、カーテンコート塗装等が挙げられ、これらの塗装方法でウェット塗膜を形成することができる。これらの内、エアスプレー塗装、回転霧化塗装等の方法が好ましい。塗装に際して、必要に応じて、静電印加してもよい。
上記下塗り塗膜は、加熱又は常温での放置等によって硬化塗膜とすることができる。該加熱は、公知の加熱手段により行うことができる。具体的には、例えば、熱風加熱、赤外線加熱、高周波加熱等により行うことができる。
なお、本発明において、硬化塗膜とは、JIS K 5600−1−1に規定された硬化乾燥状態、すなわち、塗面の中央を親指と人差指とで強く挟んで、塗面に指紋によるへこみが付かず、塗膜の動きが感じられず、また、塗面の中央を指先で急速に繰り返しこすって、塗面にすり跡が付かない状態の塗膜である。一方、未硬化塗膜とは、塗膜が上記硬化乾燥状態に至っていない状態であって、JIS K 5600−1−1に規定された指触乾燥状態及び半硬化乾燥状態をも含むものである。
上記下塗り塗料組成物(B)を塗装して下塗り塗膜を形成した後、該下塗り塗膜を加熱硬化させる場合、加熱の温度は、生産性、作業性及び基材の熱安定性等の観点から、40〜150℃、好ましくは50〜140℃、さらに好ましくは70〜130℃の範囲内であることが好適である。また、加熱の時間は、15分間〜24時間、好ましくは30〜120分間の範囲内であることが好適である。
また、上記下塗り塗膜の塗装膜厚は、硬化膜厚として、5〜70μm、好ましくは、10〜60μm、さらに好ましくは15〜50μmの範囲内であることが好適である。
上塗り塗料組成物(C)
上塗り塗料組成物(C)は、水酸基含有アクリル樹脂(c1)及びポリイソシアネート化合物(c2)を含有する。
水酸基含有アクリル樹脂(c1)は、1分子中に1個以上の水酸基を有するアクリル樹脂である。なかでも密着性、耐水性及び耐冷熱負荷性に優れた複層塗膜を得る観点から、水酸基含有アクリル樹脂(c1)のガラス転移温度(Tg)は−20℃〜50℃、好ましくは−15〜50℃、さらに好ましくは−10〜40℃のアクリル樹脂であることが好ましい。
上記水酸基含有アクリル樹脂(c1)は、例えば、水酸基含有重合性不飽和モノマー及び該水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能な他の重合性不飽和モノマーを、それ自体既知の方法、例えば、有機溶媒中での溶液重合法、水中でのエマルション重合法等の方法により共重合せしめることによって製造することができる。
上記水酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、前記水酸基含有アクリル樹脂(b1)の説明欄に記載した水酸基含有重合性不飽和モノマーを使用することができる。
また、該水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能な他の重合性不飽和モノマーとしては、上記水酸基含有アクリル樹脂(b1)の説明欄に記載した脂環式炭化水素基含有重合性不飽和モノマー及び水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能な他の重合性不飽和モノマーの具体例として(1)〜(7)に列挙した重合性不飽和モノマー等を使用することができる。
前記水酸基含有アクリル樹脂(c1)のガラス転移温度(Tg)は、例えば、該水酸基含有アクリル樹脂(c1)の合成時に使用する上記重合性不飽和モノマーの種類と配合割合を調節することにより、調整することができる。
ポリイソシアネート化合物(c2)は、1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有する化合物である。また、該ポリイソシアネート化合物(c2)は、イソシアネート基がブロック剤でブロックされたポリイソシアネート化合物、いわゆるブロック化ポリイソシアネート化合物であってもよい。
上記ポリイソシアネート化合物(c2)としては、前記ポリイソシアネート化合物(b3)の説明欄に記載したポリイソシアネート化合物を使用することができる。
ポリイソシアネート化合物(c2)としては、密着性及び耐冷熱負荷性等の観点から、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート及びこれらの誘導体を好適に使用することができる。
上塗り塗料組成物(C)において、上記水酸基含有アクリル樹脂(c1)とポリイソシアネート化合物(c2)との配合割合は、密着性及び耐冷熱負荷性等の観点から、該ポリイソシアネート化合物(c2)のイソシアネート基(ブロック化イソシアネート基を含む)と、該水酸基含有アクリル樹脂(c1)の水酸基との当量比(NCO/OH)が通常0.5〜2.0、特に0.6〜1.5の範囲内となる割合で使用することが好適である。
上塗り塗料組成物(C)には、本発明の効果を損なわないことを限度として、(c1)以外の樹脂、触媒、溶媒、顔料、ポリイソシアネート化合物(c2)以外の架橋剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、表面調整剤、消泡剤、乳化剤、界面活性剤、防汚剤、湿潤剤、増粘剤、染料、ツヤ調整剤等の塗装の分野で通常使用される他の添加成分等を適宜含有させることができる。
上記触媒としては、例えば、前記下塗り塗料組成物(B)の説明欄に記載したウレタン化触媒を使用することができる。
上塗り塗料組成物(C)は、溶融物、溶液、懸濁液、エマルションのいずれの形態であってもよいが、溶媒中に水酸基含有アクリル樹脂(c1)及びポリイソシアネート化合物(c2)が溶解した溶液の形態であることが、生産性及び作業性の観点から好ましい。この場合、上塗り塗料組成物(C)は、水酸基含有アクリル樹脂(c1)、ポリイソシアネート化合物(c2)及び溶媒を含有する。
上記溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、石油系炭化水素等を挙げることができる。
前記顔料としては、例えば、前記下塗り塗料組成物(B)の説明欄に記載した顔料を使用することができる。
本発明の複層塗膜形成方法においては、前記下塗り塗膜又は後記中塗り塗膜上に、上記上塗り塗料組成物(C)が塗装されて、上塗り塗膜が形成される。該上塗り塗膜又は中塗り塗膜は未硬化塗膜であってもよく、硬化塗膜であってもよい。
上塗り塗料組成物(C)の塗装方法としては、特に限定されず、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装、カーテンコート塗装等が挙げられ、これらの塗装方法でウェット塗膜を形成することができる。これらの内、エアスプレー塗装、回転霧化塗装等の方法が好ましい。塗装に際して、必要に応じて、静電印加してもよい。
上記上塗り塗膜の塗装膜厚は、硬化膜厚として、5〜70μm、好ましくは、10〜60μm、さらに好ましくは15〜50μmの範囲内であることが好適である。
上記上塗り塗膜は、加熱又は常温での静置等によって硬化塗膜とすることができる。なかでも、生産効率等の観点から、加熱によって硬化塗膜とすることが好ましい。該加熱は、公知の加熱手段により行うことができる。具体的には、例えば、熱風加熱、赤外線加熱、高周波加熱等により行うことができる。
上記上塗り塗料組成物(C)を塗装して上塗り塗膜を形成した後、該上塗り塗膜を加熱硬化させる場合、加熱の温度は、生産性、作業性及び基材の熱安定性等の観点から、40〜150℃、好ましくは50〜140℃、さらに好ましくは70〜130℃の範囲内であることが好適である。また、加熱の時間は、15分間〜24時間、好ましくは30〜120分間の範囲内であることが好適である。
また、本発明の複層塗膜形成方法においては、前記下塗り塗膜は、上記上塗り塗料組成物(C)の塗装前に硬化させてもよく、該下塗り塗膜が未硬化の状態で、上記上塗り塗料組成物(C)を塗装して上塗り塗膜を形成し、その後、該下塗り塗膜及び上塗り塗膜を同時に硬化させてもよい。なかでも、省エネルギー等の観点から、後者の方法を用いることが好ましい。
また、本発明の複層塗膜形成方法においては、上記下塗り塗膜と上塗り塗膜との間に、これらの塗膜とは異なる中塗り塗膜を形成させてもよい。また、該中塗り塗膜は単層であってもよく、2層以上であってもよい。
上記中塗り塗膜を形成する場合、前記下塗り塗膜、中塗り塗膜、上塗り塗膜の各塗膜は各々硬化させてもよく、同時に硬化させてもよい。なかでも、省エネルギー等の観点から、該下塗り塗膜、中塗り塗膜及び上塗り塗膜を同時に硬化させることが好ましい。
上記中塗り塗膜は、中塗り塗料組成物を塗装することによって形成することができる。
該中塗り塗料組成物としては、公知の塗料組成物を使用することができる。具体的には、例えば、架橋性官能基を有する基体樹脂及び架橋剤を含有する塗料組成物を使用することができる。なかでも、耐冷熱負荷性等の観点から、水酸基含有アクリル樹脂及びポリイソシアネート化合物を含有する塗料組成物を使用することが好ましい。
また、上記中塗り塗料組成物は、触媒、溶媒、顔料、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、表面調整剤、消泡剤、乳化剤、界面活性剤、防汚剤、湿潤剤、増粘剤、染料、ツヤ調整剤等の塗装の分野で通常使用される他の添加成分等を適宜含有させることができる。
前記下塗り塗膜、必要に応じて形成される中塗り塗膜、及び上塗り塗膜を同時に加熱硬化させる場合、加熱の温度は、生産性、作業性及び基材の熱安定性等の観点から、40〜150℃、好ましくは50〜140℃、さらに好ましくは70〜130℃の範囲内であることが好適である。また、加熱の時間は、15分間〜24時間、好ましくは30〜120分間の範囲内であることが好適である。
本発明の複層塗膜形成方法の他の態様は、
基材上に、
工程(1):ケチミン構造含有シランカップリング剤を含有する組成物(A)を使用して、プライマー層を形成する工程、
工程(2):前記工程(1)でプライマー層が形成された基材上に、水酸基含有アクリル樹脂(c1)及びポリイソシアネート化合物(c2)を含有する上塗り塗料組成物(C)を塗装して上塗り塗膜を形成する工程、を含むことを特徴とする。
本発明の複層塗膜形成方法の他の態様における基材、プライマー組成物(A)及び上塗り塗料組成物(C)は、前記本発明の複層塗膜形成方法の一態様において記載したのと同じものを用いることができる。
本発明の複層塗膜形成方法の他の態様においては、前記プライマー層の上に、上塗り塗料組成物(C)が塗装されて、上塗り塗膜が形成される。該プライマー層は未硬化塗膜であってもよく、硬化塗膜であってもよい。
また、本発明の複層塗膜形成方法の他の態様においては、上記プライマー層と上塗り塗膜との間に、これらの塗膜及び前述の下塗り塗膜とは異なる中塗り塗膜を形成させてもよい。該中塗り塗膜は、前記本発明の複層塗膜形成方法の一態様において記載した、中塗り塗膜である。該中塗り塗膜は単層であってもよく、2層以上であってもよい。
上記中塗り塗膜を形成する場合、中塗り塗膜、上塗り塗膜の各塗膜は各々硬化させてもよく、同時に硬化させてもよい。なかでも、省エネルギー等の観点から、中塗り塗膜及び上塗り塗膜を同時に硬化させることが好ましい。
上記中塗り塗膜は、前記本発明の複層塗膜形成方法の一態様において記載した中塗り塗料組成物を塗装することによって形成することができる。
上記プライマー組成物(A)、必要に応じて用いられる中塗り塗料組成物及び上塗り塗料組成物(C)の塗装方法は、前記本発明の複層塗膜形成方法の一態様において記載した方法を採用することができる。
以下、製造例、実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明は、これらにより限定されない。各例において、「部」及び「%」は、特記しない限り、質量基準による。また、塗膜の膜厚は硬化塗膜に基づく。
プライマー組成物(A)の製造
製造例1
N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミンを、その有効成分が10%になるように酢酸ブチルで希釈攪拌して、プライマー組成物(A−1)を得た。なお、本化合物は、化学式(I)において、R1:エチル基、R2:イソブチル基、R3:メチル基である。
製造例2
N−(1−メチルプロピリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミンを、その有効成分が10%になるように酢酸ブチルで希釈攪拌して、プライマー組成物(A−2)を得た。なお、本化合物は、化学式(I)において、R1:エチル基、R2:エチル基、R3:メチル基である。
製造例3
N−(1−メチルエチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミンを、その有効成分が10%になるように酢酸ブチルで希釈攪拌して、プライマー組成物(A−3)を得た。なお、本化合物は、化学式(I)において、R1:エチル基、R2:メチル基、R3:メチル基である。
製造例4
N−エチリデン−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミンを、その有効成分が10%になるように酢酸ブチルで希釈攪拌して、プライマー組成物(A−4)を得た。なお、本化合物は、化学式(I)において、R1:エチル基、R2:メチル基、R3:水素原子である。
製造例5
N−(1−メチルベンジリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミンを、その有効成分が10%になるように酢酸ブチルで希釈攪拌して、プライマー組成物(A−5)を得た。なお、本化合物は、化学式(I)において、R1:エチル基、R2:フェニル基、R3:メチル基である。
製造例6
N−ベンジリデン−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミンを、その有効成分が10%になるように酢酸ブチルで希釈攪拌して、プライマー組成物(A−6)を得た。なお、本化合物は、化学式(I)において、R1:エチル基、R2:フェニル基、R3:水素原子である。
製造例7
「KBM−903」(商品名、信越シリコーン社製、3−アミノプロピルトリメトキシシラン)を、その有効成分が10%になるように酢酸ブチルで希釈攪拌して、プライマー組成物(A−7)を得た。
製造例8
「KBM−603」(商品名、信越シリコーン社製、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン)を、その有効成分が10%になるように酢酸ブチルで希釈攪拌して、プライマー組成物(A−8)を得た。
水酸基含有アクリル樹脂(b1)の製造
製造例9
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器に、酢酸ブチル45部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら115℃で攪拌し、この中に2−ヒドロキシエチルメタクリレート30部、イソボルニルアクリレート30部、スチレン5部、2−エチルヘキシルアクリレート35部及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリル4部からなるモノマー混合物を4時間かけて均一速度で滴下し、さらに同温度で1時間熟成した。その後さらに酢酸ブチル15部及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリル1.0部の混合物を3時間かけて反応容器に滴下し、滴下終了後1時間熟成させたのち、酢酸ブチルで希釈し、固形分50%の水酸基含有アクリル樹脂(b1−1)溶液を得た。得られた水酸基含有アクリル樹脂(b1−1)のガラス転移温度(Tg)は16.5℃、溶解性パラメーター(SP値)が8.64、水酸基価は129.3mgKOH/g、重量平均分子量は15,000であった。
製造例10〜14
製造例9において、モノマー配合組成を表1に示すものとする以外は、製造例9と同様にして、固形分50%の水酸基含有アクリル樹脂(b1−2)〜(b1−6)溶液を得た。各水酸基含有アクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)、溶解性パラメーター(SP値)、水酸基価及び重量平均分子量を表1にあわせて示す。
水酸基含有ポリエステル樹脂(b2)の製造
製造例15
撹拌機、温度計、精留塔および水分離器を装備した反応容器に、ヘキサヒドロ無水フタル酸66部(0.43モル)、イソフタル酸71部(0.43モル)、ネオペンチルグリコール47部(0.45モル)、トリメチロールプロパン68部(0.5モル)を仕込み、200〜220℃に加熱し、酸価が1以下になるまで反応した。次に160℃まで冷却し、ヘキサヒドロ無水フタル酸28部(0.18モル)を加えそのまま反応を続け、酸価が40になった時点で反応を終了させた。80℃に冷却し、シクロヘキサノンを加えて固形分50%のポリエステル樹脂(b2−1)溶液を得た。得られた樹脂(b2−1)の数平均分子量は2600であり、水酸基価は110mgKOH/gであった。
製造例16
撹拌機、温度計、精留塔および水分離器を装備した反応容器に、ヘキサヒドロ無水フタル酸66部(0.43モル)、イソフタル酸71部(0.43モル)、ネオペンチルグリコール47部(0.45モル)、トリメチロールプロパン68部(0.5モル)を仕込み、200〜220℃に加熱し、酸価が1以下になるまで反応した。次に160℃まで冷却し、ヘキサヒドロ無水フタル酸46部(0.3モル)を加えそのまま反応を続け、酸価が65になった時点で反応を終了させた。80℃に冷却し、シクロヘキサノンを加えて固形分50%のポリエステル樹脂(b2−2)溶液を得た。得られた樹脂(b2−2)の数平均分子量は2700であり、水酸基価は77mgKOH/gであった。
下塗り塗料組成物(B)の製造
製造例17
水酸基含有アクリル樹脂(b1−1)溶液138部(固形分69部)及び「CR−95」(商品名、石原産業社製、酸化チタン顔料、固形分含有率100%)80部を広口ガラスビン中に入れ、ガラスビーズを加えて密封し、ペイントシェーカーで30分間分散した後、ガラスビーズを除去して、顔料分散ペーストを得た。次いで、得られた顔料分散ペースト218部(固形分149部)、「スミジュールN−3300」(商品名、住化バイエルウレタン社製、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート環付加物、固形分含有率100%)31部、ジブチル錫ジアセテート0.04部及び「ディスパロン LF−1985−50」(商品名、楠本化成社製、表面調整剤、固形分含有率50%)0.1部(固形分0.05部)を均一に混合し、さらに固形分が30%になるように酢酸ブチルで希釈攪拌して、下塗り塗料組成物(B−1)を得た。
製造例18〜25
製造例17において、配合組成を表2に示すものとする以外は、製造例17と同様にして、固形分30%の下塗り塗料組成物(B−2)〜(B−9)を得た。なお表2に示す配合組成は、各成分の固形分質量による。
水酸基含有アクリル樹脂(c1)の製造
製造例26
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器に、酢酸ブチル45部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら115℃で攪拌し、この中に2−ヒドロキシエチルアクリレート25部、スチレン28部、n−ブチルアクリレート47部及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリル4部からなるモノマー混合物を4時間かけて均一速度で滴下し、さらに同温度で1時間熟成した。その後さらに酢酸ブチル15部及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリル1.0部の混合物を3時間かけて反応容器に滴下し、滴下終了後1時間熟成させたのち、酢酸ブチルで希釈し、固形分50%の水酸基含有アクリル樹脂(c1−1)溶液を得た。得られた水酸基含有アクリル樹脂(c1−1)のガラス転移温度(Tg)は−14℃、水酸基価は121mgKOH/g、重量平均分子量は15,000であった。
製造例27、28
製造例26において、モノマー配合組成を表3に示すものとする以外は、製造例26と同様にして、固形分50%の水酸基含有アクリル樹脂(c1−2)、(c1−3)溶液を得た。各水酸基含有アクリル樹脂のガラス転移温度、水酸基価及び重量平均分子量を表3にあわせて示す。
上塗り塗料組成物(C)の製造
製造例29
水酸基含有アクリル樹脂(c1−1)溶液140部(固形分70部)、「スミジュールN−3300」(商品名、住化バイエルウレタン社製、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート環付加物、固形分含有率100%)30.4部、ジブチル錫ジアセテート0.02部及び「ディスパロン LF−1985−50」(商品名、楠本化成社製、表面調整剤、固形分含有率50%)0.1部(固形分0.05部)を均一に混合し、さらに固形分が30%になるように酢酸ブチルで希釈攪拌して、上塗り塗料組成物(C−1)を得た。
製造例30,31
製造例29において、配合組成を表4に示すものとする以外は、製造例29と同様にして、固形分30%の上塗り塗料組成物(C−2)、(C−3)を得た。なお表4に示す配合組成は、各成分の固形分質量による。
試験板の作製
(基材)
基材(a):ガラス板
100mm×150mm×3.0mmのガラス板の表面をイソプロピルアルコールで脱脂して、基材(a)とした。
基材(b):ポリカーボネート(PC)板
100mm×150mm×3.0mmのポリカーボネート(PC)板の表面をイソプロピルアルコールで脱脂して、基材(b)とした。
基材(c):繊維強化プラスチック(FRP)板
100mm×150mm×3.0mmの繊維強化プラスチック(FRP)板の表面をイソプロピルアルコールで脱脂して、基材(c)とした。
基材(d):アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)板
100mm×150mm×3.0mmのアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)板の表面をイソプロピルアルコールで脱脂して、基材(d)とした。
基材(e):ガラス繊維強化ポリプロピレン(GFPP)板
100mm×150mm×3.0mmのガラス繊維強化ポリプロピレン(GFPP)板の表面をイソプロピルアルコールで脱脂して、基材(e)とした。
実施例1
前記基材(a)上に、プライマー組成物(A−1)を刷毛を用いて膜厚が0.5μmとなるように塗布し、常温で10分間セッティングを行ってプライマー層を形成した。次に、下塗り塗料組成物(B−3)を、エアスプレーを用いて硬化膜厚が30μmとなるように塗装し、常温で10分間セッティングを行って、未硬化の下塗り塗膜を形成した。次に、該未硬化の下塗り塗膜上に、上塗り塗料組成物(C−2)を、エアスプレーを用いて硬化膜厚が35μmとなるように塗装し、常温で10分間セッティングを行って、未硬化の上塗り塗膜を形成した。その後、該未硬化の下塗り塗膜及び未硬化の上塗り塗膜を、90℃で1時間加熱して硬化させることにより、試験板を得た。
実施例2〜25、比較例1〜7
基材、プライマー組成物(A)、下塗り塗料組成物(B)、上塗り塗料組成物(C)及び膜厚を、表5に記載のものとする以外は、実施例1と同様にして、各試験板を得た。
評価試験
得られた各試験板について、下記の試験方法により評価を行なった。評価結果を表5に示す。
(試験方法)
<耐水性(基材との密着性)>
各試験板について、40℃の温水に10日間又は30日間浸漬した。次に、各試験板の塗面に、JIS K 5600−5−6(1990)に準じて2mm×2mmのゴバン目を100個作り、その面に粘着テープを貼着し、急激に剥がした後にゴバン目塗膜の残存状態を調べ、各試験板の耐水性を下記基準にて基材との密着性の点から評価した。
◎:残存個数/全体個数=100個/100個で、縁欠け無し
○:残存個数/全体個数=100個/100個で、縁欠けあり
△:残存個数/全体個数=99個〜90個/100個
×:残存個数/全体個数=89個以下/100個。
<耐水性(外観)>
各試験板について、40℃の温水に10日間又は30日間浸漬した後の耐水性を下記基準にて外観の点から評価した。
◎:試験前の塗膜に対して、全く外観の変化のないもの
○:試験前の塗膜に対して、わずかにツヤびけ、フクレ又は変色が見られるが、製品とした時に問題の無いレベル
△:試験前の塗膜に対して、若干、ツヤびけ、ワレ、フクレ又は変色が見られ、製品として劣る
×:試験前の塗膜に対して、著しく、ツヤびけ、ワレ、フクレ又は変色が見られる。
<耐冷熱負荷性(外観)>
各試験板について、「−30℃3時間→放冷3時間→70℃90%RH3時間→放冷3時間」を1サイクルとして、500サイクルの冷熱サイクル試験を実施し、下記評価基準により、外観の点から耐冷熱負荷性を評価した。
◎:試験前の塗膜に対して、全く外観の変化のないもの
○:試験前の塗膜に対して、わずかに、ツヤびけ、フクレ又は変色が見られるが、製品とした時に問題の無いレベル
△:試験前の塗膜に対して、若干、ツヤびけ、ワレ、フクレ又は変色が見られ、製品として劣る
×:試験前の塗膜に対して、著しく、ツヤびけ、ワレ、フクレ又は変色が見られる。