(1.処理ラインの全体構成)
処理ライン1の全体構成について、図1を参照して説明する。処理ライン1は、ワークWを搬送すると共に、ワークWに所定の処理を行うラインである。所定の処理は、例えば、加工や組み立てなどの生産処理、検査処理などである。処理ライン1は、生産処理を行う生産ライン、検査を行う検査ラインなどである。また、処理ライン1は、1つの処理を行うライン、及び、複数の処理を行うラインを含む。つまり、処理ライン1は、少なくとも1つの処理機械10と、処理機械10に処理されるワークWを搬送する搬送装置20,30とを備える。
本実施形態においては、処理ライン1は、ワークWに対して切削加工を行う工作機械である処理機械10と、ワークWを処理機械10に搬入する第一の搬送装置20と、処理機械10にて処理されたワークWを搬出する第二の搬送装置30とを備える場合を例にあげる。なお、処理ライン1は、複数の処理機械10、複数の第二の搬送装置30を備えるようにしてもよい。また、ワークWは、例えば、エンジンのシリンダブロックを例にあげる。シリンダブロックは、例えば、所定のピッチで4つのボアが形成されている。
処理機械10は、ワークWを搬送方向に搬送可能な搬送路11を備える。搬送路11は、搬送方向に配列された複数のローラ11aを備えており、複数のローラ11aは、自由回転可能である。搬送路11の上面を、ワークWが搬送される。搬送路11は、図示しないクランプ装置を備えており、クランプ装置は、処理機械10に搬入されてきたワークWを所定位置にてクランプすることができる。処理機械10は、加工工具12を備えており、加工工具12をワークWに対して相対移動することによりワークWを加工する。
第一の搬送装置20は、処理機械10に対して搬送路11の上流側(搬送方向と反対側)に隣接して配列されている。第一の搬送装置20は、ワークWを搬送方向に搬送可能な搬送路21を備える。搬送路21は、搬送方向に配列された複数のローラ21aを備えており、複数のローラ21aは、自由回転可能である。搬送路21は、処理機械10の搬送路11の上流に連続している。搬送路21の上面を、ワークWが搬送される。
第一の搬送装置20は、搬送路21の上面に載置されたワークWを処理機械10に向けて押し付けるワーク移動装置22を備える。本実施形態においては、ワーク移動装置22は、ワークWの後端面を押し付けて、ワークWを搬送路21,11に沿って移動させ、処理機械10の所定位置に搬送する。
第二の搬送装置30は、処理機械10に対して搬送路11の下流側(搬送方向)に隣接して配列されている。第二の搬送装置30は、ワークWを搬送方向に搬送可能な搬送路31を備える。搬送路31は、搬送方向に配列された複数のローラ31aを備えており、複数のローラ31aは、自由回転可能である。搬送路31は、処理機械10の搬送路11の下流に連続している。搬送路31の上面を、ワークWが搬送される。
ここで、処理機械10による処理後のワークWは、第一の搬送装置20のワーク移動装置22によって処理前のワークWが処理機械10の所定位置に搬送されることに伴って、処理前のワークWによって第二の搬送装置30の搬送路31の初期位置に押し出される。
第二の搬送装置30は、処理機械10から搬送路31の初期位置に搬入されてきた処理後のワークWを、搬送路31の下流に搬送するワーク移動装置32を備える。ワーク移動装置32は、搬送路31の上方に配置されている。ワーク移動装置32は、主として、アクチュエータ50、移動体本体60、ワーク押付部材70、初期位置ストッパ100を備える。アクチュエータ50は、搬送路31に沿う方向に駆動する。すなわち、本実施形態においては、アクチュエータ50は、直動機構のアクチュエータである。
移動体本体60は、アクチュエータ50の駆動によって、搬送路31に沿って移動する。ワーク押付部材70は、移動体本体60の移動に伴って搬送路31に沿って移動可能であり、ワークWを押し付けた状態で搬送路31の下流に移動する。これにより、ワーク押付部材70は、ワークWを搬送路31の下流に移動させることができる。
初期位置ストッパ100は、搬送路31の初期位置に搬入されてきたワークWの搬送を規制する状態と、ワークWの搬送を許容する状態とに切り替えられる。ワークWが処理機械10から搬送路31に搬入されてきた場合に、ワークWは搬送路31に沿って下流へ移動しようとする。このとき、初期位置ストッパ100は、ワークWが搬送路31の下流へ移動することを規制して、ワークWを搬送路31の初期位置に位置決めすることができる。そして、ワーク押付部材70によってワークWを搬送路31の下流へ移動する際には、初期位置ストッパ100はワークWの搬送を許容する状態に切り替えられる。
(2.ワーク移動装置32の詳細構成)
ワーク移動装置32の詳細構成について、図2−図4を参照して説明する。ワーク移動装置32は、より詳細には、固定部材40、アクチュエータ50、移動体本体60、ワーク押付部材70、切替部材80、ガイド部材90、初期位置ストッパ100、及び、ストッパ切替部材110を備える。
固定部材40は、第二の搬送装置30の搬送路31に固定的に設けられる。固定部材40は、図2及び図4に示すように、第一固定部材41、第二固定部材42、及び、第三固定部材43を備える。第一固定部材41は、アクチュエータ50のアクチュエータ本体51を固定するための部材である。第一固定部材41は、図2及び図4に示すように、搬送方向に直交する鉛直板状の部材41a、部材41aの下縁から搬送路31の上流に向かって延びる水平板状の部材41b、及び、部材41aの奥縁から搬送路31の上流に向かって延びる鉛直板状の部材41cを備える。
第二固定部材42は、図4に示すように、鉛直板状に形成されており、第一固定部材41の部材41bの奥面に固定されており、第一固定部材41から下方に垂れ下がるように固定されている。第二固定部材42の下端は、搬送路31にワークWが載置された状態において、ワークWの上面よりも僅かに上方に位置する。
第三固定部材43は、図4に示すように、第一固定部材41の部材41bの前面に固定されており、アクチュエータ本体51を跨いで、第一固定部材41から下方に垂れ下がるように固定されている。第三固定部材43の下端は、第二固定部材42と同様に、搬送路31にワークWが載置された状態において、ワークWの上面よりも僅かに上方に位置する。
アクチュエータ50は、上述したように、直動機構のアクチュエータである。アクチュエータ50は、例えば、油圧又は空圧のシリンダ装置を用いることができる。ただし、アクチュエータ50は、シリンダ装置に限られることなく、例えば、ボールねじ機構、リニアモータ機構など、種々のアクチュエータを用いることができる。
アクチュエータ50は、図2に示すように、第一固定部材41に固定されるアクチュエータ本体51と、アクチュエータ本体51に対して搬送路31に沿って移動するアクチュエータ移動部52とを備える。シリンダ装置としてのアクチュエータ50において、アクチュエータ移動部52は、シリンダロッドである。アクチュエータ移動部52は、第一固定部材41の部材41aより搬送路31の下流に向かって延びる。
移動体本体60は、アクチュエータ移動部52に連結されており、アクチュエータ移動部52の移動に伴って搬送路31に沿って移動する。移動体本体60は、第一移動体本体61と、ベルト62と、第二移動体本体63と、調整機構64とを備える。
第一移動体本体61は、アクチュエータ移動部52に固定されている。つまり、第一移動体本体61は、アクチュエータ移動部52の移動と同一の移動をする。第一移動体本体61は、アクチュエータ移動部52の先端に固定され、アクチュエータ移動部52の移動方向に長尺状に形成されている長尺部61aを備える。第一移動体本体61は、さらに、長尺部61aの両端に回転可能に設けられた2つのプーリ61b,61cを備える。
ベルト62は、2つのプーリ61b,61cに掛けられている。さらに、ベルト62の一部が、第一固定部材41の水平板状の部材41bに固定されている。従って、ベルト62は、アクチュエータ移動部52の移動に伴って、第一移動体本体61に対して回転する。詳細には、アクチュエータ移動部52が搬送方向に移動する場合に、ベルト62は、図2の時計回りに回転する。一方、アクチュエータ移動部52が搬送方向とは反対側に移動する場合には、図2の反時計回りに回転する。
第二移動体本体63は、ベルト62の下面側に固定されている。第二移動体本体63は、ベルト62の回転に伴って搬送路31に沿って移動する。第二移動体本体63の移動距離は、第一移動体本体61の移動距離とベルト62の回転に伴ってベルト62が搬送路31に沿って移動する距離との合計となる。つまり、第二移動体本体63の移動距離は、第一移動体本体61の移動距離の2倍となる。
調整機構64は、第二移動体本体63に設けられており、ワーク押付部材70の移動範囲を規制する。調整機構64は、第二移動体本体63において、搬送路31に平行な方向の位置を調整可能となる。つまり、調整機構64の調整によって、ワーク押付部材70の移動範囲が調整される。
ワーク押付部材70は、第二移動体本体63の移動に伴って搬送路31に沿って移動可能である。ワーク押付部材70は、第二移動体本体63に旋回可能に設けられている。そして、ワーク押付部材70は、旋回によってワークWを押付可能な状態とワークWへの接触を回避可能な状態とに切り替えられる。ワーク押付部材70は、ワークWを押し付けた状態で搬送路31の下流に移動することにより、ワークWを搬送路31の下流に移動させる。
ワーク押付部材70は、ワークWを押付可能な状態において、旋回中心に対して下流側且つ下方に延びる形状に形成されている。ワーク押付部材70は、旋回中心に対して下流側且つ前記下方に延びる先端にてワークWに接触する。ワークWを押付可能な状態におけるワーク押付部材70の先端が上方へ移動するように僅かに旋回するだけで、ワークWへの接触を回避する状態となる。
ここで、ワーク押付部材70は、第二移動体本体63に移動可能に設けられるワーク押付本体71と、ワーク押付本体71に着脱可能に取り付けられ、ワーク押付本体71に比べて軟質な材料により形成され、ワークWに接触し得る部位に設けられる軟質材72とを備える。ワーク押付本体71は、クランク状に形成されており、クランク状の一端付近を旋回中心とし、クランク状の他端側が旋回中心に対して下流側且つ下方に位置する。ワーク押付本体71において、旋回中心よりも上端部における搬送路31の下流側の面が、調整機構64に接触可能な部位となる。
ワーク押付本体71は、例えば鋼材などの金属により形成されており、軟質材72は、樹脂又はゴムなどにより形成されている。従って、軟質材72がワークWに接触したとしても、軟質材72がワークWにキズを付けることを抑制できる。また、軟質材72は、着脱可能であるため、摩耗や劣化した場合に容易に新品と交換できる。ここで、軟質材72は、ワーク押付本体71の下端において、搬送方向の下流側の面、搬送方向の上流側の面、及び、下面に配置するとよい。軟質材72の形状は、平面状、ローラ状など種々の形状とすることができる。
切替部材80は、図3及び図4に示すように、第二移動体本体63の移動に伴って搬送路31に沿って移動可能であり、搬送路31の下流への移動と搬送路31の上流への移動とに応じてワーク押付部材70に対して係合状態と非係合状態とが切り替わる。
本実施形態においては、切替部材80は、第二移動体本体63に、ワーク押付部材70の旋回中心と同軸上に旋回可能に設けられている。切替部材80は、搬送路31の下流への移動と搬送路31の上流への移動とに応じて旋回方向が異なる。切替部材80は、一方方向への旋回の際にワーク押付部材70に対して非係合状態となり、他方方向への旋回の際にワーク押付部材70に対して係合状態となる。
切替部材80は、板状に形成され第二移動体本体63に旋回可能に支持された切替部材本体81と、切替部材本体81に固定されワーク押付部材70に係合する係合部材82と、切替部材本体81の下端付近に回転可能に設けられたローラ83とを備える。
係合部材82は、ワーク押付本体71において、旋回中心よりも上端部における搬送路31の下流側の面に係合し得る。詳細には、係合部材82は、ローラ83が旋回中心に対して下方に位置する状態である基準状態において、ワーク押付部材70に対して非係合状態となる。さらに、係合部材82は、ローラ83が旋回中心に対して搬送路31の上流側に位置する状態においても、ワーク押付部材70に対して非係合状態となる。つまり、係合部材82が、図3において反時計回りに旋回する場合に非係合状態となる。そして、切替部材80は、切替部材80が搬送路31の下流へ移動する際に、ワーク押付部材70に対して非係合状態となることで、ワーク押付部材70をワークWに押付可能な状態とする。
一方、係合部材82は、ローラ83が旋回中心に対して搬送路31の下流側に位置する状態において、ワーク押付部材70に対して係合状態となる。つまり、係合部材82は、図3に示すように、時計回りに旋回する場合に係合状態となる。そして、切替部材80は、切替部材80が搬送路31の上流へ移動する際に、ワーク押付部材70に対して係合状態となることで、ワーク押付部材70をワークWへの接触を回避可能な状態とする。
ガイド部材90は、第三固定部材43の下端に固定されており、搬送路31に沿って延びるように形成されている。ガイド部材90は、第二移動体本体63が搬送路31に沿って移動可能な距離より僅かに短く形成されている。ガイド部材90は、第一ガイド91と、第二ガイド92とを備える。
第一ガイド91は、ガイド部材90の搬送路31の下流側の端部からガイド部材90の大部分を占めている。第一ガイド91は、切替部材80に係合することで切替部材80の旋回姿勢を変化させる。詳細には、第一ガイド91をローラ83が転動する場合に、切替部材80が基準状態に対して図3の時計回り又は反時計回りに旋回した姿勢となる。ローラ83が用いられることにより、転動抵抗が小さくなり、ガイド部材90の摩耗が少なくなる。
特に、切替部材80は、搬送路31の下流へ移動しながら第一ガイド91に係合することで、ワーク押付部材70に対して非係合状態にて図3の反時計回りに旋回し、ワーク押付部材70をワークWに押付可能な状態とする。また、切替部材80は、搬送路31の上流へ移動しながら第一ガイド91に係合することで、ワーク押付部材70に対して係合状態となり、ワーク押付部材70と共に図3の時計回りに旋回し、ワーク押付部材70をワークWへの接触を回避可能な状態とする。
第二ガイド92は、第一ガイド91の上流端から搬送路31の上流側に距離を隔てて配置される。第二ガイド92は、第一ガイド91に比べて非常に短い。第二ガイド92は、切替部材80に係合することで切替部材80の旋回姿勢を変化させる。詳細には、第一ガイド91をローラ83が転動する場合に、切替部材80が基準状態に対して図3の時計回り又は反時計回りに旋回した姿勢となる。
特に、切替部材80は、初期待機位置にて第二ガイド92に係合することで、ワーク押付部材70に対して係合状態となり、ワーク押付部材70を搬送路31の初期位置に搬入されてくるワークWへの接触を回避可能な状態とする。また、切替部材80は、第二ガイド92に係合した状態から第一ガイド91と第二ガイド92との間に移動することで、ワーク押付部材70をワークWに押付可能な状態とする。さらに、切替部材80は、第一ガイド91に係合した状態から第一ガイド91と第二ガイド92との間に移動することで、ワーク押付部材70に対する係合状態が解除される。
ここで、第一ガイド91の下流端及び上流端は、切替部材80が第一ガイド91と係合していない状態から切替部材80が第一ガイド91に係合した状態に誘導するための第一誘導部91a,91bを備える。第一誘導部91a,91bによって、切替部材80が第一ガイド91に対して係合した状態へ移行する際に、切替部材80の挙動が滑らかになる。
さらに、第二ガイド92の下流端は、切替部材80が第二ガイド92と係合していない状態から切替部材80が第二ガイド92に係合した状態に誘導するための第二誘導部92aを備える。第二誘導部92aによって、切替部材80が第二ガイド92に対して係合した状態へ移行する際に、切替部材80の挙動が滑らかになる。
初期位置ストッパ100は、図2に示すように、第二固定部材42に設けられ、搬送路31の初期位置に搬入されてきたワークWの搬送を規制する状態とワークWの搬送を許容する状態とに切り替えられる。詳細には、初期位置ストッパ100は、第二固定部材42に旋回可能に設けられ、旋回によってワークWの搬送を規制する状態とワークWの搬送を許容する状態とに切り替えられる。
初期位置ストッパ100は、ストッパ本体101と、軟質材102と、ローラ103とを備える。ストッパ本体101は、第二固定部材42に移動可能に設けられる部材である。ストッパ本体101は、クランク状に形成されている。つまり、ストッパ本体101は、ストッパ本体101における搬送路31の下流側の端部から上方に向かって突出する部分を有し、且つ、ストッパ本体101における搬送路31の上流側の端部から下方に向かって突出する部分を有する。
ストッパ本体101は、初期位置ストッパ100の重心から搬送路31の下流側にずれた位置を旋回中心として旋回する。ここで、ストッパ本体101は、第二固定部材42に設けられた2つの旋回規制部材42a,42bによって旋回範囲が規制されている。
軟質材102は、ストッパ本体101に比べて軟質な材料により形成され、ストッパ本体101に着脱可能に取り付けられる。詳細には、軟質材102は、ストッパ本体101の下方に突出する部分における搬送路31の上流側の面に取り付けられている。つまり、軟質材102は、搬送路31に搬入されてきたワークWに接触し得る部位に設けられている。
ここで、ストッパ本体101は、例えば鋼材などの金属により形成されており、軟質材102は、樹脂又はゴムなどにより形成されている。従って、軟質材102がワークWに接触したとしても、軟質材102がワークWにキズを付けることを抑制できる。また、軟質材102は、着脱可能であるため、摩耗や劣化した場合に容易に新品と交換できる。
ローラ103は、ストッパ本体101の上方に突出する部分に回転可能に設けられる。ローラ103は、ワーク押付部材70が初期待機位置よりも下流位置を移動する際に、後述するストッパ切替部材110を転動する。ローラ103が用いられることにより、転動抵抗が小さくなり、ストッパ切替部材110の摩耗が少なくなる。
ストッパ切替部材110は、長尺部61aの奥面に、長尺部61aから下方に垂れ下がるように固定されている。ストッパ切替部材110の下面は、アクチュエータ移動部52の移動方向に平行な平面状に形成されている。
つまり、ストッパ切替部材110は、第一移動体本体61の移動に伴って搬送路31に沿って移動可能となる。ストッパ切替部材110は、初期位置ストッパ100のローラ103に対して係合状態と非係合状態とを切り替えられることで、初期位置ストッパ100の旋回姿勢を切り替える。特に、ストッパ切替部材110は、ワーク押付部材70が初期待機位置に位置する際とワーク押付部材70が初期待機位置より下流位置に位置する際とに応じて、初期位置ストッパ100の旋回姿勢を切り替える。
詳細には、ストッパ切替部材110は、ワーク押付部材70が初期待機位置に位置する際に、初期位置ストッパ100のローラ103に対して非係合状態となる。そして、初期位置ストッパ100は、初期位置ストッパ100の重心からずれた位置を旋回中心として旋回している。従って、ストッパ切替部材110が初期位置ストッパ100のローラ103に対して非係合状態の際に、初期位置ストッパ100は、初期位置ストッパ100の自重によりワークWの搬送を規制する状態となる。従って、ストッパ切替部材110は、ワーク押付部材70が初期待機位置に位置する際に、初期位置ストッパ100をワークWの搬送を規制する状態とする。
一方、ストッパ切替部材110は、ワーク押付部材70が初期待機位置より下流位置に位置する際に、初期位置ストッパ100のローラ103に対して係合状態となる。従って、ストッパ切替部材110は、ワーク押付部材70が初期待機位置より下流位置に位置する際に、初期位置ストッパ100をワークWの搬送を許容する状態とする。
さらに、ストッパ切替部材110は、初期位置ストッパ100のローラ103に対して非係合状態から係合状態に誘導するための誘導部110aを備える。誘導部110aによって、初期位置ストッパ100のローラ103がストッパ切替部材110に対して係合した状態へ移行する際に、初期位置ストッパ100の挙動が滑らかになる。
(3.第二の搬送装置30の動作)
第二の搬送装置30の動作及び第二の搬送装置30によるワークWの搬送方法について、図5−図15を参照して説明する。第二の搬送装置30は、図1に示す処理機械10から搬送路31の初期位置に搬入されてきた処理後のワークWを、搬送路31の下流に搬送する。そして、第二の搬送装置30は、当該搬送処理を繰り返す。
つまり、アクチュエータ50が駆動することによって、図5の最上段に示すように、第一移動体本体61が最上流位置である初期位置から最下流位置へ移動し、その後に、図6の最上段に示すように、第一移動体本体61が最下流位置から初期位置に戻ってくる。
(3−1.各部材の各状態の説明)
ここで、図5及び図6において、切替部材80の第一状態、第二状態及び第三状態は、以下のとおりである。切替部材80の第一状態は、図7及び図15に示すように、基準状態よりも図7及び図15の時計回りに旋回している姿勢、すなわち、ローラ83が旋回中心に対して搬送路31の下流側に位置する状態であり、係合部材82が基準状態の位置よりも下流側に位置する状態である。切替部材80の第二状態は、図9及び図13に示すように、基準状態の姿勢、すなわち、ローラ83が旋回中心に対して下方に位置する状態である。切替部材80の第三状態は、図11に示すように、基準状態よりも図11の反時計回りに旋回している姿勢、すなわち、ローラ83が旋回中心に対して搬送路31の上流側に位置する状態であり、係合部材82が基準状態の位置よりも上流側に位置する状態である。
また、図5及び図6において、ワーク押付部材70の第一状態及び第二状態は、以下のとおりである。ワーク押付部材70の第一状態は、図7及び図15に示すように、ワークWへの接触を回避する状態である。すなわち、ワーク押付部材70の第一状態は、図7及び図15に示すように、ワーク押付部材70が基準状態から時計回りに旋回している姿勢、つまりワーク押付部材70の下端部分が基準状態より上方に移動している状態である。ワーク押付部材70の第二状態は、図9、図11及び図13に示すように、ワークWを押付可能な状態である。すなわち、ワーク押付部材70の第二状態は、図9、図11及び図13に示すように、ワーク押付部材70が基準状態の姿勢、つまりワーク押付部材70の下端部分がワークWの上面よりも下方に位置している状態である。
また、図5及び図6において、初期位置ストッパ100の第一状態及び第二状態は、以下のとおりである。初期位置ストッパ100の第一状態は、図8に示すように、搬入されてきたワークWの搬送を規制する状態である。すなわち、初期位置ストッパ100の第一状態は、軟質材102がワークWに接触する位置に位置している状態である。初期位置ストッパ100の第二状態は、図10、図12及び図14に示すように、ストッパ本体101が図の反時計回りに旋回している姿勢であって、ワークWとの接触を回避する状態である。すなわち、初期位置ストッパ100の第二状態は、搬送路31においてワークWの搬送を許容する状態である。
(3−2.第一移動体本体が搬送方向へ移動する場合)
まず、第一移動体本体61が初期位置から最下流位置へ移動する場合について、図5、図7−図14を参照して説明する。図7に示すように、第一移動体本体61が初期位置に位置する場合の時刻T1において、切替部材80のローラ83が、第二ガイド92に係合している。従って、切替部材80は、図7に示すように、基準状態に対して時計回りに旋回した状態(切替部材80の第一状態)となる。
切替部材80が第一状態の場合には、図7に示すように、切替部材80の係合部材82が、ワーク押付部材70に対して係合状態となる。従って、図7に示すように、ワークWが搬送路31に搬入されてくるのを待機している位置(初期待機位置)において、ワーク押付部材70がワークWへの接触を回避する状態(ワーク押付部材70の第一状態)となる。つまり、ワーク押付部材70の下端は、搬入されてくるワークWの上面よりも上方に位置している。
さらに、図5の時刻T1において、ストッパ切替部材110は、最上流位置に位置する。このとき、図8に示すように、初期位置ストッパ100のローラ103は、ストッパ切替部材110に係合していない。従って、初期位置ストッパ100は、下側の旋回規制部材42aによって姿勢の変化を規制され、初期位置ストッパ100の軟質材102が、搬入されてきたワークWに接触可能な状態(初期位置ストッパ100の第一状態)となる。ここで、搬送路31に搬入されてきたワークWには、搬送路31のローラ31aによって搬送路31の下流側へ移動しようとする力が作用する。しかし、初期位置ストッパ100が、当該力に抗して、ワークWが搬送されることを規制する。つまり、ワークWが、当該位置に位置決めされる。
続いて、第一移動体本体61が初期位置から下流側へ移動した図5の時刻T2において、図9に示すように、切替部材80のローラ83は、第一ガイド91と第二ガイド92との間に位置する。そのため、ローラ83は、第一ガイド91及び第二ガイド92に係合していない。従って、切替部材80は、図9に示すように、基準状態(切替部材80の第二状態)となる。
そうすると、図9に示すように、切替部材80の係合部材82は、ワーク押付部材70に対して非係合状態となる。従って、図9に示すように、ワーク押付部材70は、調整機構64に接触することで、旋回規制された状態となる。このとき、ワーク押付部材70の下端は、ワークWの上面よりも下方に位置する。そして、本実施形態においては、ワーク押付部材70は、シリンダブロックであるワークWに接触することなく、ワークWのボアの中に進入する。つまり、ワーク押付部材70の軟質材72は、ボアの内周面に対向する。なお、ワークWの種類によっては、ワーク押付部材70がワークWの搬送路31の上流側の端面などに対向する状態となるようにしてもよい。
ここで、切替部材80のローラ83が第二ガイド92に係合している状態から、第二ガイド92に係合していない状態へ移行する際において、第二ガイド92の第二誘導部92aによって、切替部材80及びワーク押付部材70は、滑らかに姿勢を変化する。
さらに、図5の時刻T2において、図10に示すように、ストッパ切替部材110が第一移動体本体61と共に移動するため、初期位置ストッパ100のローラ103は、ストッパ切替部材110に係合する状態となる。そのため、初期位置ストッパ100は、図10の反時計回りに旋回することで、初期位置ストッパ100は、ワークWへの接触を回避可能な状態(初期位置ストッパ100の第二状態)となる。特に、初期位置ストッパ100のローラ103が初期位置ストッパ100の旋回中心より上流側且つ下方に位置するため、初期位置ストッパ100は、僅かな旋回により、回避状態となる。
ここで、初期位置ストッパ100のローラ103がストッパ切替部材110に係合していない状態から、ストッパ切替部材110に係合する状態へ移行する際において、ストッパ切替部材110の誘導部110aによって、初期位置ストッパ100は、滑らかに姿勢を変化する。
続いて、第一移動体本体61がさらに下流側へ移動した図5の時刻T3において、図11に示すように、切替部材80のローラ83は、第一ガイド91に係合する。このとき、切替部材80のローラ83が、切替部材80の旋回中心よりも移動方向の後方、すなわち搬送路31の上流側に移動する。つまり、切替部材80は、図11に示すように、基準状態に対して反時計回りに旋回した状態(切替部材80の第三状態)となる。
ここで、切替部材80のローラ83が第一ガイド91と第二ガイド92との間に位置する状態から、第一ガイド91に係合する状態へ移行する際において、第一ガイド91の第一誘導部91aによって、切替部材80は、滑らかに姿勢を変化する。
切替部材80が第三状態の場合には、図11に示すように、切替部材80の係合部材82は、ワーク押付部材70に対して非係合状態である。つまり、切替部材80のみが旋回して、ワーク押付部材70は、基準状態となる。ワーク押付部材70は、調整機構64によって図12の反時計回りへの旋回が規制されている。従って、ワーク押付部材70は、ワークWを搬送路31の下流に向かって押付可能となる。このようにして、切替部材80のローラ83が第一ガイド91に係合している間、ワーク押付部材70は、ワークWを押し付けた状態で搬送路31の下流へ移動させることができる。
この間、初期位置ストッパ100のローラ103は、ストッパ切替部材110に係合している状態を継続する。従って、初期位置ストッパ100は、図12に示すように、搬送されるワークWへの接触を回避しており、ワークWの搬送を許容している。
続いて、第一移動体本体61がさらに下流側へ移動した図5の時刻T4において、図13に示すように、切替部材80のローラ83は、第一ガイド91に係合していない状態となる。従って、切替部材80は、図13に示すように、基準状態(切替部材80の第二状態)となる。ここで、切替部材80のローラ83が第一ガイド91に係合している状態から、第一ガイド91に係合していない状態へ移行する際において、第一ガイド91の第一誘導部91bによって、切替部材80は、滑らかに姿勢を変化する。
そうすると、図14に示すように、切替部材80の係合部材82は、切替部材80の旋回中心まわりに旋回するが、ワーク押付部材70に対して非係合状態を維持する。従って、図14に示すように、切替部材80の係合部材82が第一ガイド91から係合しなくなった後においても、ワーク押付部材70は、ワークWを押し付けた状態で搬送路31の下流へ移動させることができる。このようにして、図5の時刻T4において、第二の搬送装置30は、ワークWを所定位置へ搬送することができる。
この間、初期位置ストッパ100のローラ103は、ストッパ切替部材110に係合している状態を継続する。従って、初期位置ストッパ100は、図14に示すように、搬送されるワークWへの接触を回避した姿勢を維持しており、ワークWの搬送を許容している。
(3−3.第一移動体本体が搬送方向とは反対側へ戻る場合)
次に、第一移動体本体61が最下流位置から初期位置に戻る場合について、図6−図10及び図13−図15を参照して説明する。図6の時刻T5における第二の搬送装置30の各部の状態は、図5の時刻T4と同一である。すなわち、第二の搬送装置30は、図13及び図14に示す状態となる。この状態から、第一移動体本体61が初期位置に向かって戻っていく。
続いて、第一移動体本体61が上流側へ移動した図6の時刻T6において、図15に示すように、切替部材80のローラ83は、第一ガイド91に係合する。このとき、切替部材80のローラ83は、切替部材80の旋回中心よりも移動方向の後方、すなわち搬送路31の下流側に移動する。つまり、切替部材80は、図15に示すように、基準状態に対して時計回りに旋回した状態(切替部材80の第一状態)となる。ここで、切替部材80の状態は、図11に示す第一移動体本体61が搬送路31の下流へ移動する場合とは異なる。
切替部材80が第一状態の場合には、図15に示すように、切替部材80の係合部材82が、ワーク押付部材70に対して係合状態となる。従って、図15に示すように、ワーク押付部材70が、搬送したワークWへの接触を回避する状態(ワーク押付部材70の第一状態)となる。つまり、ワーク押付部材70の下端は、搬入したワークWの上面よりも上方に位置している。
ここで、切替部材80のローラ83が第一ガイド91に係合していない状態から、第一ガイド91に係合する状態へ移行する際において、第一ガイド91の第一誘導部91bによって、切替部材80及びワーク押付部材70は、滑らかに姿勢を変化する。
この間、初期位置ストッパ100のローラ103は、ストッパ切替部材110に係合している状態を継続する。従って、初期位置ストッパ100は、図14に示すように、搬送されるワークWへの接触を回避した姿勢を維持しており、ワークWの搬送を許容している。
続いて、第一移動体本体61がさらに上流側へ移動した図6の時刻T7においては、第二の搬送装置30は、図9及び図10に示す状態となる。つまり、切替部材80は、基準状態(切替部材80の第二状態)となる。そして、切替部材80の係合部材82が、ワーク押付部材70に対して非係合状態となる。従って、ワーク押付部材70は、ワークWの上面よりも下方位置する状態となる。ただし、この時には、ワークWは、ワーク押付部材70の位置に存在していないため、ワークWに接触することはない。
ここで、切替部材80のローラ83が第一ガイド91に係合している状態から、第一ガイド91に係合していない状態へ移行する際において、第一ガイド91の第一誘導部91aによって、切替部材80及びワーク押付部材70は、滑らかに姿勢を変化する。
続いて、第一移動体本体61がさらに上流側の初期位置へ移動した図6の時刻T8においては、第二の搬送装置30は、図7及び図8に示す状態となる。つまり、切替部材80のローラ83が第二ガイド92に係合することで、切替部材80は、基準状態に対して図7の時計回りに旋回した状態(切替部材80の第一状態)となる。そして、切替部材80の係合部材82がワーク押付部材70に対して係合状態となるため、ワーク押付部材70は、初期待機位置において、ワークWへの接触を回避する状態(ワーク押付部材70の第一状態)となる。
ここで、切替部材80のローラ83が第一ガイド91及び第二ガイド92に係合していない状態から、第二ガイド92に係合する状態へ移行する際において、第二ガイド92の第二誘導部92aによって、切替部材80及びワーク押付部材70は、滑らかに姿勢を変化する。
このとき、図8に示すように、初期位置ストッパ100のローラ103は、ストッパ切替部材110に係合していない。従って、初期位置ストッパ100は、下側の旋回規制部材42aによって姿勢の変化を規制され、初期位置ストッパ100の軟質材102が、搬入されてきたワークWに接触可能な状態(初期位置ストッパ100の第一状態)となる。
(4.効果)
上述した第二の搬送装置30の切替部材80は、切替部材80が搬送路31の下流へ移動する際に、ワーク押付部材70に対して係合状態となることで、ワーク押付部材70をワークWに押付可能な状態とする。一方、切替部材80は、切替部材80が搬送路31の上流へ移動する際に、ワーク押付部材70に対して非係合状態となることで、ワーク押付部材70をワークWへの接触を回避可能な状態とする。
切替部材80の当該動作によって、ワーク押付部材70は、ワークWに押付可能な状態と、ワークWへの接触を回避可能な状態とに切り替えられる。そして、切替部材80の動作は、ワークWを搬送するためにワーク押付部材70を搬送路31に沿って移動させるためのアクチュエータ50によって行われる。つまり、アクチュエータ50が、ワークWを搬送するためにワーク押付部材70を移動させると共に、ワーク押付部材70がワークWへの接触を回避するために切替部材80を動作する。
従って、ワーク押付部材70がワークWへの接触を回避するためのアクチュエータ50は、専用ではなく、ワークWを搬送するためのアクチュエータ50と兼用となる。従って、第二の搬送装置30は、複数のアクチュエータを備えないため、低コストとなる。また、アクチュエータ50を兼用することにより、複数のシリンダ装置や複数のモータを用いることによる問題が生じることもない。
また、第二の搬送装置30の初期位置ストッパ100によって、搬送路31の初期位置に搬入されてきたワークWの搬送を規制する状態と、ワークWの搬送を許容する状態とが、切り替えられている。初期位置ストッパ100は、ストッパ切替部材110によって状態の切替が行われる。ここで、ストッパ切替部材110は、第一移動体本体61の移動に伴って移動し、第一移動体本体61は、アクチュエータ50の駆動によって移動する。つまり、初期位置ストッパ100は、アクチュエータ50によって切替動作を実行される。従って、初期位置ストッパ100は、初期位置に搬入されてきたワークWの搬送を規制する状態と、ワークWの搬送を許容する状態とを、確実に実現できる。
さらに、アクチュエータ50は、ワーク押付部材70を搬送路31に沿って移動するためのアクチュエータ50としても機能する。つまり、アクチュエータ50は、初期位置ストッパ100を動作するための専用ではなく、ワーク押付部材70を移動するアクチュエータ50と兼用となる。このように、第二の搬送装置30は、専用のアクチュエータを設けていないため、低コストを実現できる。
(5.その他)
上記実施形態において、切替部材80がワーク押付部材70に対して係合状態の時に、ワーク押付部材70がワークWへの接触を回避可能な状態とし、非係合状態の時に、ワーク押付部材70がワークWを押付可能な状態とした。この他に、係合状態の時に、ワーク押付部材70がワークWを押付可能な状態とし、非係合状態の時に、ワーク押付部材70をワークWへの接触を回避可能な状態としてもよい。
また、上記実施形態において、ワーク押付部材70は、第二移動体本体63に旋回可能に設けたが、第二移動体本体63に直動可能に設けることによって、ワークWへの接触を回避可能な状態とワークWを押付可能な状態とを切り替えるようにしてもよい。この場合、切替部材80も、旋回ではなく、直動としてもよい。
また、上記実施形態において、初期位置ストッパ100は、ストッパ切替部材110に対して非係合状態の時に、ワークWの搬送を規制する状態とし、非係合状態の時に、ワークWの搬送を許容する状態とした。この他に、係合状態の時に、初期位置ストッパ100がワークWの搬送を許容する状態とし、非係合状態の時に、初期位置ストッパ100がワークWの搬送を規制する状態としてもよい。
また、上記実施形態において、初期位置ストッパ100は、第一移動体本体61に旋回可能に設けたが、第一移動体本体61に直動可能に設けることによって、ワークWの搬送を規制する状態とワークWの搬送を許容する状態とを切り替えるようにしてもよい。