JP2018188569A - アクリル系ブロック共重合体、樹脂組成物、フィルム - Google Patents

アクリル系ブロック共重合体、樹脂組成物、フィルム Download PDF

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Takashi Iwata
昂 岩田
村上 史樹
Fumiki Murakami
史樹 村上
真実 米村
Masamitsu Yonemura
真実 米村
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Abstract

【課題】本発明は、透明性、光学特性、耐熱性、及び物理的強度に優れたアクリル系ブロック共重合体を提供することを目的とする。【解決手段】主鎖に環構造を有するメタクリル系共重合体ブロック(A)と、アクリル系重合体ブロック(B)とを含むことを特徴とする、アクリル系ブロック共重合体(C)。【選択図】なし

Description

本発明は、透明性、光学特性、耐熱性、及び物理的強度に優れたアクリル系ブロック共重合体、及び当該アクリル系ブロック共重合体を含有する樹脂組成物、並びに当該アクリル系ブロック共重合体を含有するフィルムに関する。
従来、アクリル樹脂は光学用途に広く用いられている。しかし、一般にアクリル樹脂はガラス転移温度Tgが110℃程度であり、耐熱性が不十分であった。
そこで主鎖に環構造を有するアクリル樹脂を用いることで耐熱性を付与し、また位相差等の光学性能を制御する試みが従来からなされてきた(特許文献1)。
しかし、主鎖に環構造を有するアクリル樹脂はその剛直性から脆く、例えばフィルム状に成形した場合にひび割れが起きたり、成形体としての強度が劣る等の問題があった。
そこでアクリル樹脂の強度を改善させる技術としてABAブロック共重合体が知られている(特許文献2)。
国際公開第2011/149088号 特開2016−147949号公報
しかし従来のABAブロック共重合体は、純粋なアクリル樹脂に比べ、透明性、光学特性、耐熱性が劣るという問題があった。またABAブロック共重合体をアクリル樹脂にブレンドした場合、屈折率の違いから透明性が低下するという問題があった。
そこで、本発明は、透明性、光学特性、耐熱性、及び物理的強度に優れたアクリル系ブロック共重合体を提供することを目的とする。
本発明者らは鋭意検討の結果、ブロック共重合体の特定のブロック部分を主鎖に環構造を有するメタクリル系共重合体ブロックとすることで、透明性、光学特性、耐熱性、及び物理的強度に優れたアクリル系ブロック共重合体、当該アクリル系ブロック共重合体を含有する樹脂組成物、及び当該アクリル系ブロック共重合体を含有するフィルムが得られることを見出した。
すなわち、本発明は以下に関する。
(1)主鎖に環構造を有するメタクリル系共重合体ブロック(A)と、アクリル系重合体ブロック(B)とを含むことを特徴とする、アクリル系ブロック共重合体(C)。
(2)前記メタクリル系共重合体ブロック(A)が、2種以上の単量体単位を含む、(1)に記載のアクリル系ブロック共重合体(C)。
(3)前記メタクリル系共重合体ブロック(A)と前記アクリル系重合体ブロック(B)の結合形式が、ABA型である、(1)又は(2)に記載のアクリル系ブロック共重合体(C)。
(4)前記メタクリル系共重合体ブロック(A)の重量平均分子量MwAの、前記アクリル系重合体ブロック(B)の重量平均分子量MwBに対する割合MwA/MwBが、1以上4以下である、(1)〜(3)のいずれかに記載のアクリル系ブロック共重合体(C)。
(5)前記アクリル系重合体ブロック(B)の重量平均分子量MwBが、7万以上15万以下である、(4)に記載のアクリル系ブロック共重合体(C)。
(6)前記アクリル系ブロック共重合体(C)が、
−60℃〜0℃のガラス転移温度Tg(1)と100℃〜150℃のガラス転移温度Tg(2)とを有し、
前記Tg(1)における熱容量変化ΔCp(1)(J/g・℃)と前記Tg(2)における熱容量変化ΔCp(2)(J/g・℃)とが、ΔCp(1)≦ΔCp(2)の関係を満たす、
(1)〜(5)のいずれかに記載のアクリル系ブロック共重合体(C)。
(7)前記熱容量変化ΔCp(2)が0.05J/g・℃以上である、(6)に記載のアクリル系ブロック共重合体(C)。
(8)アルコキシアミン末端を有するアクリル系重合体に、メタクリル酸メチル、及びポリマー主鎖に環構造を生成する機能を持つモノマーをリビング重合することで製造される、請求項1に記載のアクリル系ブロック共重合体(C)。
(9)(1)〜(8)のいずれかに記載のアクリル系ブロック共重合体(C)を1〜20質量部、主鎖に環構造を有するメタクリル系樹脂を99〜80質量部含有し、全光線透過率が80%以上である、ことを特徴とする、樹脂組成物。
(10)(1)〜(8)のいずれかに記載のアクリル系ブロック共重合体(C)を含有し、厚さが10〜100μmであり、JIS P8115に準拠して測定した耐折回数が300回以上である、ことを特徴とする、フィルム。
本発明によれば、透明性、光学特性、耐熱性、及び物理的強度に優れたアクリル系ブロック共重合体を提供することができる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と言う。)について、詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
なお、以下において、本実施形態の重合体を構成する構成単位のことを、「〜単量体単位」、及び/又は複数の該「〜単量体単位」を含む「〜構造単位」という。
また、かかる「〜単量体単位」の構成材料のことを、「単位」を省略して、単に「〜単量体」と記載する場合もある。
なお、本明細書において、ディスプレイ前面板、光学レンズ、導光板、メーターパネル、車載用センターコンソール等の、本実施形態のアクリル系ブロック共重合体を含む成形体を、「本実施形態の成形体」と称する場合がある。
<アクリル系ブロック共重合体(C)>
本実施形態のアクリル系ブロック共重合体(C)は、主鎖に環構造を有するメタクリル系共重合体ブロック(A)と、アクリル系重合体ブロック(B)とを含む。
本実施形態の一態様によれば、主鎖に環構造を有するメタクリル系共重合体ブロック(A)が2種以上の単量体単位を、アクリル系重合体ブロック(B)が1種又は2種以上の単量体単位を含むことが好ましい。
また、本実施形態の一態様によれば、アクリル系ブロック共重合体(C)に含まれるメタクリル系共重合体ブロック(A)とアクリル系重合体ブロック(B)の結合形式が、ABA型であることが好ましい。
以下、本実施形態のアクリル系ブロック共重合体(C)に含まれるメタクリル系共重合体ブロック(A)及びアクリル系重合体ブロック(B)について詳細に記載する。
<メタクリル系共重合体ブロック(A)>
本実施形態のアクリル系ブロック共重合体(C)に含まれるメタクリル系共重合体ブロック(A)は、メタクリル酸エステル単量体由来の繰り返し構造単位(X)と、環構造単位(Y)とを含む。また、本実施形態のメタクリル系共重合体ブロック(A)は、メタクリル酸エステル単量体と共重合可能なその他のビニル系単量体単位(Z)を含んでいてもよい。
以下、メタクリル系共重合体ブロック(A)に含まれる単量体単位及び構造単位について詳細に記載する。
[メタクリル酸エステル単量体由来の繰り返し構造単位(X)]
本実施形態のメタクリル系共重合体ブロック(A)を構成するメタクリル酸エステル単量体由来の繰り返し構造単位(X)(以下、(X)構造単位と記載する場合がある。)としては、下記一般式(1)で示される構造単位が好適に用いられる。
Figure 2018188569
・・・・・(1)
前記一般式(1)中、Rは、炭素数が1〜6の置換若しくは非置換のアルキル基を表し、当該アルキル基は、例えば、水酸基で置換されていてもよい。Rは、メチル基であることが好ましい。
は、炭素数が1〜3の基、好ましくは炭素数が1〜3の炭化水素基、を表し、当該炭化水素基は、例えば、水酸基で置換されていてもよい。Rは、炭素数1〜3の直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基が好ましく、炭素数1〜3の直鎖状又は分岐鎖状の飽和炭化水素基がより好ましい。
前記一般式(1)に示すメタクリル酸エステル単量体由来の繰り返し構造単位(X)をなす単量体としては、特に限定されるものではないが、下記一般式(2)で示すメタクリル酸エステル単量体を用いることが好ましい。
Figure 2018188569
・・・・・(2)
前記一般式(2)中、Rは、炭素数が1〜6の置換若しくは非置換のアルキル基を表し、当該アルキル基は、例えば、水酸基で置換されていてもよい。Rは、メチル基であることが好ましい。
は、炭素数が1〜3の基、好ましくは炭素数が1〜3の炭化水素基、を表し、当該炭化水素基は、例えば、水酸基で置換されていてもよい。Rは、炭素数1〜3の直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基が好ましく、炭素数1〜3の直鎖状又は分岐鎖状の飽和炭化水素基がより好ましい。
かかる単量体の具体例としては、耐熱性や取扱性、光学特性の観点から、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピルが好ましく、Tgを高く保つ観点から、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルが好ましく、入手しやすさ等の観点から、メタクリル酸メチルが好ましい。
前記メタクリル酸エステル単量体は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記メタクリル系共重合体ブロック(A)のメタクリル酸エステル単量体由来の繰り返し構造単位(X)は、環構造単位(Y)により、アクリル系ブロック共重合体(C)、アクリル系ブロック共重合体(C)を含む樹脂組成物、及び本実施形態の成形体に対して耐熱性を十分に付与する観点から、メタクリル系共重合体ブロック(A)中に46〜96.5質量%含まれ好ましく、より好ましくは50〜96.5質量%、さらに好ましくは55〜96.5質量%、さらにより好ましくは55〜95質量%、よりさらに好ましくは60〜93質量%、特に好ましくは60〜90質量%含まれる。
[環構造単位(Y)]
本実施形態のメタクリル系共重合体ブロック(A)を構成する、環構造単位(Y)(以下、(Y)構造単位と記載する場合がある。)は、マレイミド系構造単位(Y−1)、グルタル酸無水物系構造単位(Y−2)、グルタルイミド系構造単位(Y−3)、及びラクトン環構造単位(Y−4)からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含むことが好ましい。
環構造単位(Y)は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
[マレイミド系構造単位(Y−1)]
本実施形態のメタクリル系共重合体ブロック(A)を構成するマレイミド系構造単位(Y−1)としては、下記一般式(3)で示される構造単位が好適に用いられる。
Figure 2018188569
・・・・・(3)
前記一般式(3)中、Rは、水素原子、炭素数が1〜12のアルキル基、炭素数が1〜12のアルコキシ基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、及び炭素数が6〜12のアリール基からなる群より選択されるいずれかを表し、当該アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、アリール基は、炭素原子上に置換基を有していてもよい。
マレイミド系構造単位(Y−1)を形成するための単量体としては、特に限定されるものではないが、例えば、マレイミド;N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のN−アルキル基置換マレイミド;N−フェニルマレイミド、N−メチルフェニルマレイミド、N−エチルフェニルマレイミド、N−ブチルフェニルマレイミド、N−ジメチルフェニルマレイミド、N−ヒドロキシフェニルマレイミド、N−メトキシフェニルマレイミド、N−(o−クロロフェニル)マレイミド、N−(m−クロロフェニル)マレイミド、N−(p−クロロフェニル)マレイミド等のN−アリール基置換マレイミドが挙げられる。
上記単量体は、耐熱性付与、耐湿熱性の観点から、好ましくは、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−メチルフェニルマレイミド、N−(o−クロロフェニル)マレイミド、N−(m−クロロフェニル)マレイミド、N−(p−クロロフェニル)マレイミドが挙げられ、入手のしやすさ、耐熱性付与の観点から、より好ましくはN−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミドが挙げられ、さらに好ましくはN−フェニルマレイミドが挙げられる。
上述したマレイミド系構造単位(Y−1)は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
[グルタル酸無水物系構造単位(Y−2)]
本実施形態のメタクリル系共重合体ブロック(A)を構成するグルタル酸無水物系構造単位(Y−2)は、樹脂重合後に形成されてよい。
(Y−2)構造単位としては、下記一般式(4)で示される構造単位が好適に用いられる。
Figure 2018188569
・・・・・(4)
前記一般式(4)中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数が1〜6の置換若しくは非置換のアルキル基を表し、当該アルキル基は、例えば、水酸基で置換されていてもよい。
上述したグルタル酸無水物系構造単位(Y−2)は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
グルタル酸無水物系構造単位(Y−2)の形成方法は、特に限定されないが、例えば、下記一般式(5)で表される構造の単量体を、上述したメタクリル酸エステル単量体由来の繰り返し構造単位(X)をなす単量体と共重合させた後、触媒の存在/非存在下での加熱処理により環化する方法が挙げられる。
Figure 2018188569
・・・・・(5)
前記一般式(5)中、Rは、水素原子、炭素数が1〜6の置換、又は非置換のアルキル基を表し、当該アルキル基は、例えば、水酸基で置換されていてもよい。
は、水素原子、又はt−ブチル基を表す。
また、本発明の効果を発揮できる範囲であれば、一般式(5)で表される構造の単量体がメタクリル系共重合体ブロック(A)中に未反応のまま残っていてもよい。
[グルタルイミド系構造単位(Y−3)]
本実施形態のメタクリル系共重合体ブロック(A)を構成するグルタルイミド系構造単位(Y−3)は、樹脂重合後に形成されてよい。
(Y−3)構造単位としては、下記一般式(6)で示される構造単位が好適に用いられる。
Figure 2018188569
・・・・・(6)
前記一般式(6)中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数が1〜6の置換若しくは非置換のアルキル基を表し、当該アルキル基は、例えば、水酸基で置換されていてもよい。
また、Rは、水素原子、炭素数が1〜6の置換又は非置換のアルキル基、及び炭素数が6〜18の置換又は非置換のアリール基からなる群より選択されるいずれかを表す。
特に好適には、R、R、及びRは、いずれもメチル基である。
上述したグルタルイミド系構造単位(Y−3)は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記グルタルイミド系構造単位(Y−3)の含有量は、特に限定されず、耐熱性や成形加工性、光学特性等を考慮して、適宜決定することができる。
グルタルイミド系構造単位(Y−3)の含有量は、メタクリル系共重合体ブロック(A)を100質量%として、1〜60質量%であることが好ましく、さらに好ましくは3〜50質量%であり、とりわけ好ましくは3〜25質量%である。
なお、グルタルイミド系構造単位(Y−3)の含有量は、例えば、国際公開第2015/098096号の[0136]〜[0137]に記載の方法で、算出することができる。
グルタルイミド系構造単位(Y−3)を含む樹脂の酸価は、樹脂の物性、成形加工性、色調等のバランスを考慮すると、0.50mmol/g以下であることが好ましく、より好ましくは0.45mmol/g以下である。
なお、酸価は、例えば、特開2005−23272号公報に記載の滴定法等により算出することができる。
グルタルイミド系構造単位(Y−3)は、メタクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸を共重合させた後、高温下で、アンモニアやアミンを、尿素又は非置換尿素反応させる方法、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体とアンモニア又はアミンとを反応させる方法、ポリメタクリル酸無水物とアンモニア又はアミンとを反応させる方法等の公知の方法によって得ることができる。
具体的には、アールエムコプチック(R.M.Kopchik)の米国特許第4,246,374号明細書に記載された方法等挙げられる。
また、無水マレイン酸等の酸無水物、当該酸無水物と炭素数1〜20の直鎖又は分岐鎖のアルコールとのハーフエステル、α、β−エチレン性不飽和カルボン酸をイミド化することによっても、上記グルタルイミド系構造単位(Y−3)を形成することができる。
さらに、他の好ましい調製法としては、(メタ)アクリル酸エステル及び、必要に応じて、芳香族ビニル単量体やその他のビニル単量体を重合させた後、イミド化反応を行い、上記グルタルイミド系構造単位(Y−3)を含む樹脂を得る方法も挙げられる。
イミド化反応の工程においては、イミド化剤を用いて行ってよく、必要に応じて、閉環促進剤を添加してもよい。ここで、イミド化剤としては、アンモニア又は一級アミンを用いることができる。一級アミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリン、トルイジン、ベンジルアミン等を好適に用いることができる。
イミド化反応を実施する方法としては、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができ、例えば、押出機、又は横型二軸反応装置、バッチ式反応槽を用いる方法が挙げられる。押出機としては、特に限定されず、単軸押出機、二軸押出機又は多軸押出機を好適に用いることができる。より好適には、二軸押出機を2台直列に並べたタンデム型反応押出機を用いることができる。
また、上記樹脂を製造するにあたっては、イミド化反応の工程に加えて、エステル化剤で処理するエステル化工程を含むことができる。エステル化工程を含めることによって、イミド化工程中に副生した、樹脂中に含まれるカルボキシル基をエステル基に変換することができ、樹脂の酸価を所望の範囲に調整することができる。ここで、エステル化剤としては、本願の効果を発揮できる範囲であれば特に制限はされないが、好適にはジメチルカーボネート、トリメチルアセテートを使用することができる。エステル化剤の使用量は、特に制限されないが、樹脂100質量部に対して、0〜12質量部であることが好ましい。また、エステル化剤に加えて、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン等の脂肪族3級アミンを、触媒として併用することもできる。
[ラクトン環構造単位(Y−4)]
本実施形態のメタクリル系共重合体ブロック(A)を構成するラクトン環構造単位(Y−4)は、樹脂重合後に形成されてよい。
(Y−4)構造単位としては、下記一般式(7)で示される構造単位が好適に用いられる。
Figure 2018188569
・・・・・(7)
前記一般式(7)中、R、R、及びRは、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1〜20の有機基を表す。なお、当該有機基は、酸素原子を含んでいてもよい。
上述したラクトン環構造単位(Y−4)は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ラクトン環構造単位(Y−4)を含有する重合体の形成方法は、特に限定されないが、側鎖に水酸基を有する単量体、例えば、下記一般式(8)で表される構造の単量体(2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル等)と、上述したメタクリル酸エステル系単量体由来の繰り返し構造単位(X)等のエステル基とを有する単量体を共重合した後に、得られた共重合体を、所定の触媒の存在/非存在下で加熱処理することによりラクトン環構造を重合体に導入することにより製造する方法が挙げられる。
Figure 2018188569
・・・・・(8)
前記一般式(8)中、Rは、水素原子、又は炭素数が1〜6の置換又は非置換のアルキル基を表し、当該アルキル基は、例えば、水酸基で置換されていてもよい。
は、炭素数が1〜12の基、好ましくは炭素数が1〜12の炭化水素基を表し、当該炭化水素基は、例えば、水酸基で置換されていてもよい。
特に好適には、Rは、水素原子であり、Rは、メチル基である。
また、本発明の効果を発揮できる範囲であれば、一般式(8)で表される構造の単量体がメタクリル系共重合体ブロック(A)中に未反応のまま残っていてもよい。
ここまでに記載されるメタクリル系共重合体ブロック(A)に含まれる(Y)構造単位としては、熱安定性、成形加工性から、マレイミド系構造単位(Y−1)及びグルタルイミド系構造単位(Y−3)からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含むことが好ましく、マレイミド系構造単位(Y−1)を含むことがより好ましい。
マレイミド系構造単位(Y−1)の中でも、入手のしやすさを考慮すると、好ましくはN−シクロヘキシルマレイミド系の構造単位及び/又はN−アリール置換マレイミド系の構造単位であり、少量添加での耐熱性付与効果を考慮すると、N−アリール置換マレイミド系の構造単位がより好ましく、さらに好ましくはN−フェニルマレイミド系の構造単位である。
環構造単位(Y)は、本実施形態のメタクリル系樹脂組成物の耐熱性や熱安定性、強度及び流動性の観点から、メタクリル系共重合体ブロック(A)中に3〜30質量%含まれることが好ましい。メタクリル系共重合体ブロック(A)中における前記環構造単位(Y)の含有量は、本実施形態のメタクリル系樹脂組成物の耐熱性・熱安定性付与の観点から、より好ましくは5質量%以上であり、さらに好ましくは7質量%以上、さらにより好ましくは8質量%以上である。また、成形体として必要な強度、流動性をバランスよく保持する観点から、メタクリル系共重合体ブロック(A)中における前記環構造単位(Y)の含有量は、より好ましくは28質量%以下、さらに好ましくは25質量%以下、さらにより好ましくは20質量%以下、よりさらに好ましくは18質量%以下、特に好ましくは15質量%未満である。
メタクリル系共重合体ブロック(A)中に、環構造単位(Y)を含むことにより、メタクリル系共重合体ブロック(A)を高温環境下に置いた際、熱分解が抑制され、揮発成分の発生量を低減することができる。これにより、本実施形態のメタクリル系共重合体ブロック(A)の熱安定性の向上効果が得られる。
[その他のビニル系単量体単位(Z)]
本実施形態のメタクリル系共重合体ブロック(A)に含まれていてもよい、メタクリル酸エステル単量体と共重合可能なその他のビニル系単量体単位(Z)(以下、(Z)単量体単位と記載する場合がある。)としては、芳香族ビニル系単量体単位(Z−1)、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(Z−2)、シアン化ビニル系単量体単位(Z−3)、これら以外の単量体単位(Z−4)が挙げられる。
メタクリル酸エステル単量体と共重合可能なその他のビニル系単量体単位(Z)は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
前記(Z)単量体単位は、本実施形態のメタクリル系共重合体ブロック(A)に求められる特性に応じて、適宜材料を選択することができるが、熱安定性、流動性、機械特性、耐薬品性等の特性が特に必要な場合は、芳香族ビニル系単量体単位(Z−1)、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(Z−2)、及びシアン化ビニル系単量体単位(Z−3)からなる群より選ばれる少なくとも一種が好適である。
[芳香族ビニル系単量体単位(Z−1)]
本実施形態のメタクリル系共重合体ブロック(A)を構成する芳香族ビニル系単量体単位(Z−1)をなす単量体としては、特に限定されるものではないが、下記一般式(9)で表される芳香族ビニル系単量体が好ましい。
Figure 2018188569
・・・・・(9)
前記一般式(9)中、Rは、水素原子、又は炭素数が1〜6のアルキル基を表し、当該アルキル基は、例えば、水酸基で置換されていてもよい。
は、水素原子、炭素数が1〜12のアルキル基、炭素数が1〜12のアルコキシ基、炭素数が6〜8のアリール基、及び炭素数が6〜8のアリーロキシ基からなる群より選択されるいずれかであり、Rは、全て同じ基であっても、異なる基であってもよい。また、R同士で環構造を形成してもよい。
nは、0〜5の整数を表す。
上記一般式(9)で表される単量体の具体例としては、特に限定されるものではないが、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン、3,4−ジメチルスチレン、3,5−ジメチルスチレン、p−エチルスチレン、m−エチルスチレン、о−エチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、1,1−ジフェニルエチレン、イソプロペニルベンセン(α−メチルスチレン)、イソプロペニルトルエン、イソプロペニルエチルベンゼン、イソプロペニルプロピルベンゼン、イソプロペニルブチルベンゼン、イソプロペニルペンチルベンゼン、イソプロペニルヘキシルベンゼン、イソプロペニルオクチルベンゼン等が挙げられる。
上記の中でも、スチレン、イソプロペニルベンゼンが好ましく、流動性付与や、重合転化率の向上による未反応モノマー類の低減等の観点から、スチレンがより好ましい。
これらは、本実施形態のアクリル系ブロック共重合体(C)において、要求される特性に応じて適宜選択してよい。
芳香族ビニル系単量体単位(Z−1)を使用する場合の含有量は、耐熱性、残存モノマー種の低減、流動性のバランスを考慮すると、(X)構造単位と(Y)構造単位との合計量を100質量%とした場合に、23質量%以下であることが好ましく、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは18質量%以下、さらにより好ましくは15質量%以下、よりさらに好ましくは10質量%以下である。
芳香族ビニル系単量体単位(Z−1)を、上述したマレイミド系構造単位(Y−1)と併用する場合、(Y−1)構造単位の含有量に対する(Z−1)単量体単位の含有量の割合(質量比)(すなわち、(Z−1)含有量/(Y−1)含有量)としては、フィルムを成形加工する際の加工流動性や、残存モノマー低減によるシルバーストリークス低減効果等の観点から、0.3〜5であることが好ましい。
ここで、良好な色調や耐熱性を保持する観点から、上限値は、5以下であることが好ましく、より好ましくは3以下、さらに好ましくは1以下である。また、残存モノマー低減の観点から、下限値は、0.3以上であることが好ましく、より好ましくは0.4以上である。
上述した芳香族ビニル系単量体(Z−1)は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
[(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(Z−2)]
本実施形態のメタクリル系共重合体ブロック(A)を構成する(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(Z−2)をなす単量体としては、特に限定されるものではないが、下記一般式(10)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体が好ましい。
なお、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(Z−2)には、上記メタクリル酸エステル単量体由来の繰り返し構造単位(X)は含まれないものとする。
Figure 2018188569
・・・・・(10)
前記一般式(10)中、Rは、水素原子、炭素数が1〜12のアルコキシ基、又はメチル基を表す。式(10)中、Rが、炭素数が1〜12のヒドロキシアルキル基(特に、末端炭素原子に少なくとも1個のヒドロキシ基を有する、炭素数1〜12のアルキル基)である場合、Rは、炭素数が1〜5のアルキル基、ベンジル基、又はフェニル基を表し、Rが、水素原子又はメチル基の場合、Rは、t−ブチル基、ベンジル基、又はフェニル基を表す。
前記(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(Z−2)を形成するための単量体としては、本実施形態のメタクリル系共重合体ブロック(A)において、耐熱性、流動性、熱安定性を高める観点、複屈折等の光学特性を調整する観点から、メタクリル酸t−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル等が好ましく、入手しやすさの観点から、アクリル酸t−ブチルがさらに好ましい。
上記(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(Z−2)は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(Z−2)を使用する場合の含有量は、耐熱性及び熱安定性の観点から、(X)構造単位と(Y)構造単位との合計量を100質量%とした場合に、5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは3質量%以下である。
[シアン化ビニル系単量体単位(Z−3)]
本実施形態のメタクリル系共重合体ブロック(A)を構成するシアン化ビニル系単量体単位(Z−3)をなす単量体としては、特に限定されるものではないが、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、シアン化ビニリデン等が挙げられ、中でも、入手のしやすさ、耐薬品性付与の観点から、アクリロニトリルが好ましい。
上記シアン化ビニル系単量体単位(Z−3)は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
シアン化ビニル系単量体単位(Z−3)を使用する場合の含有量は、耐溶剤性、耐熱性保持の観点から、(X)構造単位と(Y)構造単位との合計量を100質量%とした場合に、15質量%以下であることが好ましく、より好ましくは12質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
[(Z−1)〜(Z−3)以外の単量体単位(Z−4)]
本実施形態のメタクリル系共重合体ブロック(A)を構成する(Z−1)〜(Z−3)以外の単量体単位(Z−4)をなす単量体としては、特に限定されるものではないが、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のエチレングリコール又はそのオリゴマーの両末端水酸基をアクリル酸又はメタクリル酸でエステル化したもの;ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリレート等の2個のアルコールの水酸基をアクリル酸又はメタクリル酸でエステル化したもの;トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール誘導体をアクリル酸又はメタクリル酸でエステル化したもの;ジビニルベンゼン等の多官能モノマー等が挙げられる。
上述した(Z)単量体単位を構成する単量体の中でも、スチレン、及びアクリロニトリルからなる群より選ばれる少なくとも一種が、入手のしやすさの観点から、好ましい。
メタクリル酸エステル単量体と共重合可能なその他のビニル系単量体単位(Z)の含有量は、(Y)構造単位による耐熱性付与の効果を高める観点から、メタクリル系共重合体ブロック(A)を100質量%として、0〜20質量%であることが好ましく、0〜18質量%であることがより好ましく、0〜15質量%であることがさらに好ましい。
特に、(Z)単量体単位として反応性二重結合を複数有する架橋性の多官能(メタ)アクリレートを使用する場合は、(Z)単量体単位の含有量は、重合体の流動性の観点から、0.5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.3質量%以下、さらに好ましくは0.2質量%以下である。
特に、本実施形態では、メタクリル系共重合体ブロック(A)の耐熱性、光学特性の観点から、(Y)構造単位と(Z)単量体単位との合計量を100質量%とした時に、(Y)構造単位の含有量が、45〜100質量%であることが好ましい。このとき、(Z)構造単位の含有量は0〜55質量%であることが好ましい。そして、(Y)構造単位の含有量は、好ましくは50〜100質量%であり、より好ましくは50〜90質量%であり、さらに好ましくは50〜80質量%である。
<メタクリル系共重合体ブロック(A)の重量平均分子量MwA>
本実施形態のメタクリル系共重合体ブロック(A)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定される重量平均分子量MwAが、剛直性と柔軟性のバランスの観点から、5万以上50万以下であることが好ましい。より好ましくは7万以上45万以下であり、さらに好ましくは8万以上40万以下である。
<アクリル系重合体ブロック(B)>
本実施形態のアクリル系ブロック共重合体(C)を構成するアクリル系重合体ブロック(B)は、下記一般式(I)で表される単量体単位である。
Figure 2018188569
・・・(I)
(式(I)中、R11は、水素原子を表し、R12は、炭素数1〜12の有機基を表す。)
なお、式(I)中のR12は、酸素原子や硫黄原子を含んでいてもよい。
(B)単量体単位におけるR12としては、機械的強度付与の観点から、炭素数1〜12の有機基、好ましくは、炭素数3〜5の炭化水素基、が好ましく、ブチル基が特に好ましい。
前記一般式(I)に示すアクリル系重合体ブロック(B)をなす単量体としては、特に限定されるものではないが、下記一般式(II)で示すアクリル酸エステル単量体を用いることが好ましい。
Figure 2018188569
・・・(II)
(式(II)中、R11は、水素原子を表し、R12は、炭素数1〜12の有機基を表す。)
なお、式(I)中の、R12は、酸素原子や硫黄原子を含んでいてもよい。
かかる単量体としては、耐熱分解性を高める観点から、例えば、n−ブチルアクリレート、アクリル酸エチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクタデシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸(t−ブチルシクロヘキシル)等が挙げられ、中でも、n−ブチルアクリレート、アクリル酸エチル、が好ましい。
また、アクリル系重合体ブロック(B)には、重合開始剤由来の構造が含まれていてもよい。
<アクリル系重合体ブロック(B)の重量平均分子量MwB>
アクリル系重合体ブロック(B)は、GPCで測定される重量平均分子量MwBが、7万以上15万以下であることが、強度を付与できる観点から好ましい。より好ましくは7.5万以上14.5万以下であり、さらに好ましくは8万以上14万以下であることが好ましい。
<MwAのMwBに対する割合>
本実施形態のアクリル系ブロック共重合体(C)は、メタクリル系共重合体ブロック(A)の重量平均分子量MwAの、アクリル系重合体ブロック(B)の重量平均分子量MwBに対する割合MwA/MwBが、1以上4以下であることが好ましい。当該数値の範囲であれば、透明性、光学特性を維持しながら、機械強度にすぐれた樹脂組成物が得られる。より好ましくは1.5以上3.5以下であり、さらに好ましくは2以上3以下である。
<アクリル系ブロック共重合体(C)の製造方法>
本実施形態のアクリル系ブロック共重合体(C)の製造方法は、特に限定されるものではなく、ブロック構造を生じる技法であればどのようなものでも好適に使用することができる。これらの技法としては、例えば、リビングフリーラジカル重合法、リビングアニオン重合法、擬似リビング重合(例えばイニファータを用いたもの)、及び基移動重合法が挙げられる。中でもリビングフリーラジカル重合法が好ましく、特に例を挙げると、原子移動重合法及び可逆的断片付加鎖移動重合法がある。
リビング重合法としては、特に限定されず、例えば、N,N,N’,N’−テトラエチルリチウムジスルフィド、ベンジル−N,N−ジエチルジチオカルバメート、p−キシレンビス(N,N−ジエチルジチオカルバメート)等のイニファータを開始剤として用いる方法;有機ランタノイド化合物を開始剤として用いる方法;アルキルリチウム等を開始剤として用いるアニオン重合法;シリルケテンアセタール等を開始剤として用いるグループトランスファー法;アルミニウムポルフィリンを開始剤として用いる方法;メタルフリーリビングアニオン法;リビングラジカル法等の公知の各手法を採用することができる。
[イニファータを開始剤として用いるリビング重合法]
以下、本実施形態のアクリル系ブロック共重合体(C)の製造方法の一例として、イニファータを開始剤として用いるリビング重合法について、具体的に説明する。
例えば、下記一般式(11)で表される、複数個のジチオカーバメイト基を有する開始剤を用いて後述の2段階の反応により本実施形態のアクリル系ブロック共重合体(C)を合成することができる。
Figure 2018188569
・・・・・(11)
先ず、第1段階として、一般式(11)で表されるジチオカーバメイト化合物を用いて上記一般式(10)で表されるアクリレート単量体を重合させ、両末端がジチオカーバメイト基であるアクリル系重合体ブロック(B)を得る。
次に、第2段階として、アクリル系重合体ブロック(B)の両末端のジチオカーバメイト基を開始点として、上記一般式(1)で表されるメタクリレート単量体と、上記一般式(3)で表されるN−置換マレイミド単量体等とを共重合させることにより、所望のアクリル系ブロック共重合体(C)を得ることができる。
第1段階、第2段階の重合反応は、塊状、溶液状、エマルジョン状、懸濁状のいずれの状態で行っても問題ない。
イニファータとしては、例えば、ジチオカルバメート類、トリフェニルメチルアゾベンゼン、テトラフェニルエタン誘導体等を用いることができる。これらのイニファータによって分子量の制御を行うことができ、さらには、これらのイニファータの添加量を調整することにより、分子量を制御することができる。
溶液重合により実施する場合、使用する有機溶媒としては、特に限定されず、例えば、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のエステル系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;n−ブチルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル系溶剤;トルエン、キシレン、スワゾール310(コスモ石油社製)、スワゾール1000(コスモ石油社製)、スワゾール1500(コスモ石油社製)等の芳香族石油系溶剤等を挙げることができる。単量体及び重合体をよく溶解することのできる溶剤が好ましい。これらは単独で用いてもよく、複数を組合せて用いてもよい。重合は、脱酸素下又は窒素、アルゴン等の不活性雰囲気下で行うことが好ましい。重合温度は、60〜100℃の範囲であれば問題ない。
有機溶媒の添加量は、重合が進行し、生産時に共重合体や使用モノマーの析出等が起こらず、容易に除去できる量であることが好ましい。有機溶媒の配合量は、具体的には、配合する全単量体の総量を100質量部とした場合に、10〜200質量部とすることが好ましい。より好ましくは25〜200質量部、さらに好ましくは50〜200質量部、さらにより好ましくは50〜150質量部である。
乳化重合法により実施する場合、使用する乳化剤としては特に限定されず、例えば、脂肪酸石けん、ロジン酸石けん、ナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸アンモニウム、アルキル硫酸トリエタノールアミン、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等のアニオン系界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド等の非イオン系界面活性剤;アルキルトリメチルアンモニウムクロライド等のカチオン系界面活性剤等を例示することができる。これらの乳化剤は単独で用いてもよく、複数を組合せて用いてもよい。必要に応じて、アルキルアミン塩酸塩等のカチオン系界面活性剤を使用してもよい。乳化剤の使用量は特に限定されない。
懸濁重合法により実施する場合、使用する分散剤としては特に限定されず、例えば部分けん化ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリアルキレンオキサイド、アニオン性界面活性剤と分散助剤の組合せ等従来公知のものを使用することができる。これらは単独で用いてもよく、複数を組合せて用いてもよい。分散剤の使用量は特に限定されない。
[リビングラジカル法]
以下、本実施形態のアクリル系ブロック共重合体(C)の製造方法の一例として、リビングラジカル法について、具体的に説明する。
本実施形態のアクリル系ブロック共重合体(C)の製造方法としては、特に、リビングラジカル法を用いることが好ましい。例えば、アルコキシアミン末端を有するアクリル系重合体ブロック(B)に、メタクリル酸メチル及び、ポリマー主鎖に環構造単位(Y)を生成する機能を持つモノマーをリビング重合することで製造することができ、製造安定性の観点から好ましい。
アルコキシアミン末端としては下記一般式(12)が挙げられる。
Figure 2018188569
・・・・・(12)
前記一般式(12)中、R14及びR16は、直鎖又は分岐鎖のアルキル基を表わし、好適には、1〜3個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、特に好適には、メチル基である。R14及びR16は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
15は、水素原子、1〜8個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖のアルキル基、フェニル基、アルカリ金属、及びアンモニウムイオンからなる群より選択されるいずれかを表わす。特に好適には、水素原子である。
Zは、アリール基及び式Z1−[X−C(O)](ここで、Z1は置換又は非置換の炭化水素基を表わし、好適には、1〜8個の炭素原子を有する置換又は非置換の炭化水素基であり、特に好適には、4個の炭素原子を有する置換又は非置換の炭化水素基である。Xは、酸素、窒素、及び硫黄からなる群より選択されるヘテロ原子を表す。)からなる群より選択されるいずれかを表わす。
nは、2以上の整数である。
前記一般式(12)のアルコキシアミン末端を用いたリビング重合の終了後、重合開始剤を追添し、残存モノマーを重合することでアクリル系ブロック共重合体(C)を製造することが好ましい。この操作により残存モノマー量が低減され、十分な機械強度と耐熱性を付与することができる。
[[反応器]]
反応器は、材料の量及び除熱の観点から必要となる大きさを考慮して、適宜選択すればよい。
反応器のL/Dは、重合反応溶液の撹拌効率の観点から、0.5〜50が好ましく、より好ましくは1〜25であり、さらに好ましくは、1〜10である。
また、反応器に供する単量体及び/又は有機溶媒の量は、十分に除熱ができる範囲であれば特に問題なく、満液での重合でもよいし、反応器中50〜99%の仕込み量で重合させてもよい。また、重合時は還流させてもよい。
反応器には撹拌装置が取り付けられていることが好ましく、使用に供される撹拌装置としては、例えば、傾斜パドル翼、平パドル翼、プロペラ翼、アンカー翼、ファウドラー翼(後退翼)、タービン翼、ブルマージン翼、マックスブレンド翼、フルゾーン翼、リボン翼、スーパーミックス翼、インターミグ翼、特殊翼、軸流翼等の撹拌翼が挙げられ、中でも、傾斜パドル翼、ファウドラー翼、マックスブレンド翼、フルゾーン翼が好適に用いられる。
重合時の撹拌速度は、用いる撹拌装置の種類、撹拌翼の撹拌効率、重合槽の容量等にも依存するが、重合初期の低粘度状態及び重合後期の高粘度状態のいずれも十分に撹拌混合できる速度であればよく、重合安定性を考慮すると、1〜500回転/分程度であることが好ましい。
各単量体を反応器に導入する方法としては、本発明の効果が得られる範囲であれば特に制限はなく、予め混合して反応器に導入しても、別々に反応器に導入してもよい。生産性、取り扱い性を考慮すると、一部又は全部の単量体を予め混合してから反応器に導入することが好ましい。
特に、予め混合する際には、重合で使用可能な有機溶媒の一部又は全部を同時に混合することができる。有機溶媒を使用する際には、重合に供される単量体を溶解可能なものを使用することが好ましく、有機溶媒の溶解度パラメータδは、7.0〜12.0(cal/cm1/2であることが好ましい。
なお、調合工程においては、本発明の効果を発揮できる範囲で、必要に応じて、単量体及び有機溶媒以外に、分子量調整剤やその他の添加剤(後述の重合工程においても用いられる)も、予め添加することができる。
[[重合開始剤]]
本実施形態においては、前記イニファータ又は前記アルコキシアミン末端を用いたリビングラジカルによる重合の開始点と合わせて、その他の重合開始剤を用いてもよい。その際に使用されるその他の重合開始剤としては、重合温度で分解し活性ラジカルを発生するものであればよいが、滞留時間の範囲内で必要な重合転化率を達成することが必要であり、重合温度における半減期が0.6〜60分、好ましくは1〜30分を満足するような重合開始剤が選択される。但し、重合温度における半減期が60分を超える開始剤に関しても、所定量を一括もしくは10分程の時間で投入することで、本実施形態に適した活性ラジカル量を発生する重合開始剤として使用することができる。その場合に必要な重合転化率を達成するためには、重合温度における半減期が60〜1800分、好ましくは26
0〜900分を満足するような重合開始剤が選択される。
好適に使用される重合開始剤は、重合温度、重合時間を鑑みて適宜選択することができ、例えば、日本油脂(株)「有機過酸化物」資料第13版、アトケム吉富(株)技術資料及び和光純薬工業(株)「Azo Polymerization Initiators」等に記載の開始剤を好適に使用することができ、上記半減期は、記載の諸定数等により容易に求めることができる。
前記重合開始剤としては、ラジカル重合を行う場合は、以下に限定されるものではないが、例えば、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシピバレート、ジラウロイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン(例えば、パーヘキサ(登録商標)C)、アセチルパーオキサイド、カプ
リエルパーオキサイド、2,4−ジクロルベンゾイルパーオキサイド、イソブチルパーオキサイド、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシビパレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、iso−プロピルパーオキシジカーボネート、iso−ブチルパーオキシジカーボネート、sec−ブチルパーオキシジカーボネート、n−ブチルパーオキシジカーボネート、2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシエチルヘキサノエート、1,1,2−トリメチルプロピルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(例えば、パーヘキサ(登録商標)25B)、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−アミルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、1,1,2−トリメチルプロピルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシイソノナエート、1,1,2−トリメチルプロピルパーオキシ−イソノナエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等の有機過酸化物や、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンニトリル、1,1−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、4,4’−アゾビス−4−シアノバレリン酸等のアゾ系化合物
等の、一般的なラジカル重合開始剤を挙げることができる。
これらのラジカル重合開始剤と適当な還元剤とを組み合わせてレドックス系開始剤として用いてもよい。
これらの重合開始剤は、1種単独で用いることができ、2種以上組み合わせて用いることもできる。
重合開始剤は、重合反応器で所望の重合率を得るために必要な量を添加すればよい。
重合反応においては重合開始剤の供給量を増やすことで重合度を上げることができるが、多量の開始剤を使用することで全体の分子量が低下する傾向にあるうえ、重合時の発熱量が増大するため、過熱により重合安定性が低下する場合もある。
重合開始剤は、所望の分子量を得やすくし、重合安定性を確保するという観点から、使用する全単量体の総量100質量部に対して、0〜1質量部の範囲で用いるのが好ましく、より好ましくは0.001〜0.8質量部であり、より好ましくは0.01〜0.5質量部である。重合開始剤の添加量は、重合を行う温度及び開始剤の半減期も考慮して、適宜選ぶことができる。
[[連鎖移動剤]]
本実施形態のメタクリル系樹脂においては、分子量を調整したり、ポリマーの熱安定性を向上させる目的で、連鎖移動剤(分子量調整剤)を使用してもよく、使用に供される連鎖移動剤としては、本発明の効果を発揮できるものであれば、その種類及び使用方法は限定されるものではなく、例えば、アルキルメルカプタン類、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、トリエチルアミン等が挙げられる。
取扱性や安定性の点から、連鎖移動剤としてアルキルメルカプタン類が好適に用いられ、以下に限定されるものではないが、例えば、n−ブチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、n−オクタデシルメルカプタン、2−エチルヘキシルチオグリコレート、エチレングリコールジチオグリコレート、トリメチロールプロパントリス(チオグリコート)、ペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)等が挙げられる。
これら分子量調整剤は、要求される分子量に応じて適宜添加することができるが、一般的には使用する全単量体の総量100質量部に対して、0.001〜3質量部の範囲で用いられる。
また、その他の分子量制御方法としては重合方法を変える方法、重合開始剤の量を調整する方法、重合温度を変更する方法等が挙げられる。
これらの分子量制御方法は、1種の方法だけを単独で用いてもよいし、2種以上の方法を併用してもよい。
[[その他の添加剤]]
任意選択的に用いられるその他の添加剤は、本発明の効果を発揮できる限り特に限定されることなく、目的に応じて、適宜選択されてよい。
<アクリル系ブロック共重合体(C)の重量平均分子量Mw>
本実施形態のアクリル系ブロック共重合体(C)の重量平均分子量Mwは、30万〜100万であることが好ましい。
アクリル系ブロック共重合体(C)の重量平均分子量を前記範囲とすることにより、本実施形態のアクリル系ブロック共重合体(C)及びアクリル系ブロック共重合体(C)を含む樹脂組成物は、シャルピー衝撃強さ等の機械的強度及び流動性に優れたものとなる。上記重量平均分子量は、機械的強度保持の観点から、好ましくは30万以上、より好ましくは32万以上、さらに好ましくは33万以上、よりさらに好ましくは35万以上である。また、重量平均分子量は、成型加工時の流動性確保の観点から、100万以下とすることが好ましく、より好ましくは90万以下、さらに好ましくは80万以下である。
また、アクリル系ブロック共重合体(C)の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、流動性と機械強度、耐溶剤性のバランスを考慮すると、1〜10であることが好ましい。より好ましくは1.5〜5、さらに好ましくは2〜4である。
なお、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)については、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定することができる。詳細には、予め単分散の重量平均分子量、数平均分子量及びピーク分子量が既知で試薬として入手可能な標準メタクリル樹脂と、高分子量成分を先に溶出する分析ゲルカラムとを用い、溶出時間と重量平均分子量から検量線を作成しておく。次に、得られた検量線から、測定対象である樹脂試料の重量平均分子量及び数平均分子量を求めることができる。具体的には、後述する[実施例]に記載の方法により測定することができる。
<アクリル系ブロック共重合体(C)のガラス転移温度>
本実施形態のアクリル系ブロック共重合体(C)は、ガラス転移温度Tgを、0℃以下と100℃以上とにそれぞれ有することが好ましい。
ここで、0℃以下のガラス転移温度TgをTg(1)とし、100℃以上のガラス転移温度TgをTg(2)とする。Tg(1)はアクリル系重合体ブロック(B)に由来するTgであると考えられ、Tg(2)はメタクリル系共重合体ブロック(A)に由来するTgであると考えられる。
柔軟性と耐熱性とを両立する観点から、Tg(1)は、−60〜0℃であることが好ましく、Tg(2)は、100〜150℃であることが好ましい。
さらに、Tg(1)は、柔軟性と剛直性とをバランスするため、より好ましくは−30〜0℃、さらに好ましくは−20〜0℃である。Tg(1)が低いほどアクリル系重合体ブロック(B)の影響が支配的になり、得られるブロック共重合体が柔軟になり過ぎてしまう。
Tg(2)は、より好ましくは105〜150℃、さらに好ましくは110〜150℃である。
Tg(1)及びTg(2)は、それぞれ複数あってもよく、それら複数のTg(1)及び複数のTg(2)の全てが上記の好適範囲を満たしていれば、なお好ましい。
例えば、アクリル系ブロック共重合体(C)の結合形式が、ABA’型である場合(アクリル系重合体ブロック(B)の両端に組成の異なる2種類のメタクリル系共重合体ブロック(A)と(A’)が結合している場合)や、ABAB’型である場合(ABA型の共重合体に更にアクリル系重合体ブロック(B’)が結合している場合)に、Tg(1)及びTg(2)は、それぞれ2つ以上現れることがある。
本発明においては、生産性及び耐熱性、柔軟性と機械強度とのバランスの観点から、ABA型のブロック共重合体が好ましく、Tg(1)及びTg(2)各1点ずつを有することが好ましい。
なお、ガラス転移温度Tgは、JIS K7121に準拠して定義される中間点ガラス転移温度Tmgであり、ASTM−D−3418に準拠して中点法により測定することができる。具体的には、後述する[実施例]において記載する方法により求めることができる。
<アクリル系ブロック共重合体(C)の熱容量変化>
本実施形態のアクリル系ブロック共重合体(C)は、Tg(1)における熱容量変化ΔCp(1)と、Tg(2)における熱容量変化ΔCp(2)が、ΔCp(1)≦ΔCp(2)の関係を満たすことが好ましい。
この関係を満たすことで、共重合体の特性においてアクリル系重合体ブロック(B)よりもメタクリル系共重合体ブロック(A)の影響が支配的となり、柔軟性を合わせ持ちながら剛直なポリマーが得られるため好ましい。
また、ΔCp(1)は、0.01〜0.1J/g・℃であることが好ましく、0.02〜0.09J/g・℃であることがさらに好ましい。
ΔCp(2)は、0.05〜2J/g・℃であることが好ましく、0.2〜1J/g・℃であることがより好ましい。
なお、熱容量変化は、ASTM−D−3418に準拠して測定した補外融点開始温度から、この補外融点開始温度と補外融点終了温度との中間点までの吸熱量であり、具体的には、後述する[実施例]において記載する方法により測定することができる。
<樹脂組成物>
本実施形態の樹脂組成物は、前述のアクリル系ブロック共重合体(C)と、主鎖に環構造を有するメタクリル系樹脂(D)とを含む。
主鎖に環構造を有するメタクリル系樹脂(D)は、前述のメタクリル系共重合体ブロック(A)と同じ構造を有することが、ブロック共重合体(C)とメタクリル系樹脂(D)の相溶性の観点から好ましく、主鎖に環構造を有するメタクリル系樹脂(D)に含まれる単量体単位や構造単位、及びこれらの含有量等については、前述のとおりである。
本実施形態の樹脂組成物は、アクリル系ブロック共重合体(C)を1〜20質量部、主鎖に環構造を有するメタクリル系樹脂(D)を99〜80質量部含有することが、透明性及び機械強度の観点から好ましい。より好ましくは、アクリル系ブロック共重合体(C)を3〜15質量部、主鎖に環構造を有するメタクリル系樹脂(D)を97〜85質量部含む。
本実施形態の樹脂組成物は、公知の方法により製造することができる。具体的には、後述の[実施例]に記載の方法により製造することができる。
本実施形態の樹脂組成物は、剛性や寸法安定性等の各種特性を付与するため、所定の添加剤を添加してもよい。
添加剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、紫外線吸収剤、熱安定剤、光安定剤等の各種安定剤;可塑剤;難燃剤;難燃助剤;硬化剤;硬化促進剤;帯電防止剤;導電性付与剤;応力緩和剤;離型剤;結晶化促進剤;加水分解抑制剤;潤滑剤;衝撃付与剤;摺動性改良剤;相溶化剤;核剤;強化剤;流動調整剤;染料;増感剤;着色剤;増粘剤;沈降防止剤;タレ防止剤;充填剤;消泡剤;カップリング剤;光拡散性微粒子;防錆剤;抗菌・防カビ剤;防汚剤;導電性高分子等が挙げられる。
<成形体>
本実施形態の成形体としては、例えば、ディスプレイ前面板、光学レンズ、導光板、メーターパネル、車載用センターコンソール、タッチパネル等の透明導電性基板、光通信システム、光交換システム、光計測システム分野における、導波路、レンズアレイ、光ファイバー、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ等のディスプレイ等に用いられる偏光板保護フィルム;1/4波長板、1/2波長板等の位相差板等が挙げられる。
本実施形態の成形体は、前述のアクリル系ブロック共重合体(C)を単独で、又は前述の主鎖に環構造を有するメタクリル系樹脂(D)との樹脂組成物として含むことを特徴とする。
本実施形態の成形体が光を通す部分を有する光学材料である場合、成形体中の光が通る道筋の最大長さは100μm〜1100mmであることが好ましく、より好ましくは200μm〜210mmである。
具体的には、ディスプレイ前面板の場合は、厚みが200μm〜10mmであることが好ましく、メーターパネルである場合は、200μm〜10mmであることが好ましく、フィルムである場合は、5〜200μmであることが好ましく、導光板の場合は、対角線長さとして20〜210mmであることが好ましい。
以下、本実施形態の樹脂組成物及び成形体の特性について記載する。
[面内方向位相差Re]
本実施形態の樹脂組成物及び成形体は、面内方向位相差Reの絶対値(例えば、成形温度240℃及び/又は270℃で成形した試験片を用いて測定した面内方向位相差Reの絶対値)が30nm以下であることが好ましい。但し、ここで面内方向位相差Reとは、100μm厚に換算して求めた値である。
面内方向の位相差Reの絶対値は、20nm以下であることがより好ましく、15nm以下であることがさらに好ましく、11nm以下であることが特に好ましい。一般に、面内方向位相差Reの絶対値は、複屈折の大小を表す指標である。
本実施形態の樹脂組成物及び成形体は、既存樹脂(例えば、PMMA、PC、トリアセチルセルロース樹脂、環状オレフィン樹脂等)の複屈折に対して十分に小さく、光学材料として低複屈折やゼ口複屈折を要求される用途に好適である。
一方、面内方向の位相差Reの絶対値が30nmを超える場合、屈折率異方性が高いことを意味し、光学材料として低複屈折やゼ口複屈折を要求される用途には使用できないことがある。また、光学材料(例えば、フィルム、シート等)の機械的強度を向上させるために延伸加工をする場合があるが、延伸加工後の面内方向位相差Reの絶対値が30nmを超える場合は、光学材料として低複屈折やゼ口複屈折材料が得られたことにはならない。
なお、面内位相差Re値は、後述の[実施例]に記載の方法により測定することができる。
[厚み方向位相差Rth]
本実施形態の樹脂組成物及び成形体は、厚み方向位相差Rthの絶対値が30nm以下であることが好ましい。
なお、ここで厚み方向位相差Rthとは、100μm厚に換算して求めた値である。
厚み方向の位相差Rthの絶対値は、20nm以下であることがより好ましく、15nm以下であることがさらに好ましく、11nm以下であることが特に好ましい。
この厚み方向の位相差Rthは、光学材料、特に光学フィルムとしたとき、該光学フィルムを組み込んだ表示装置の視野角特性と相関する指標である。具体的には、厚み方向位相差Rthの絶対値が小さいほど視野角特性は良好であり、見る角度による表示色の色調変化、コントラストの低下が小さい。
本実施形態の樹脂組成物及び成形体は、既存樹脂(例えば、PMMA、PC、トリアセチルセルロース樹脂、環状オレフィン樹脂等)と比較して、光学フィルムとしたときの厚み方向位相差Rthの絶対値が非常に小さいという特徴を有する。
なお、厚み方向位相差Rthは、以下の方法で求めることができる。
樹脂組成物及び成形体について、王子計測機器(株)製位相差測定装置(KOBRA−21ADH)を用いて、波長589nmにおける位相差(nm)を測定し、得られた値を厚さ100μmの成形体に換算して測定値とする。
なお、複屈折の絶対値(|Δn|)と厚み方向位相差(Rth)は以下の関係にある。
Rth=|Δn|×d
(d:サンプルの厚み)
また、複屈折の絶対値(|Δn|)は、以下に示す値である。
|Δn|=|(nx+ny)/2−nz|
(nx:延伸方向の屈折率、ny:面内で延伸方向と垂直な方向の屈折率、nz:面外
で延伸方向と垂直な厚み方向の屈折率)
なおここで、理想となる、3次元方向すべてについて完全光学的等方性であるフィルム
では、面内位相差(Re)、厚み方向位相差(Rth)が共に0となる。
[透明性(全光線透過率)]
透明性の指標としては、全光線透過率(%)を用いることができる。
本実施形態の樹脂組成物及び成形体は、用途に応じて適宜最適化すればよいが、透明性の求められる用途で使用される場合は、視認性の観点から、100μm厚みにおける全光線透過率が85%以上であることが好ましく、88%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。全光線透過率が85%未満であると、透明性が低下し、高い透明性を要求される用途に使用できないことがある。
なお、全光線透過率は、以下の方法で求めることができる。
前述のアクリル系ブロック共重合体(C)又は樹脂組成物からなるフィルム(約100μm厚)を用いて、ISO13468−1規格に準拠して、全光線透過率の測定を行い、透明性の指標とする。
以下、複屈折Δnと延伸倍率Sとの関係について記載する。
本実施形態の成形体がフィルムである場合、フィルムは、一軸延伸フィルムとして特性評価した場合に、複屈折Δn(S)と延伸倍率Sとの最小二乗法近似直線関係式(ii−a)において、傾きKの値が下記式(ii−b)を満たすことが好ましい。
Δn(S)=K×S+C・・・(ii−a)
|K|≦0.30×10−5・・・(ii−b)
(式中、Δn(S)は、複屈折、Sは、延伸倍率を示し、ここで、複屈折Δn(S)は、フィルムとして測定した値(上記式(i−b)により求めた値)を100μm厚に換算して求めた値であり、Cは、定数であり、無延伸時の複屈折を示す。)
傾きKの絶対値(|K|)は、0.15×10−5以下であることがより好ましく、0.10×10−5以下であることがさらに好ましい。
ここで、Kの値は、フィルムのDSC測定によりガラス転移温度Tgを測定して、(Tg+20)℃の延伸温度、500mm/分の延伸速度で、一軸延伸を行ったときの値である。
一般に、延伸速度を遅くすると複屈折の増加量は小さくなることが知られている。なお、Kの値は、例えば延伸倍率(S)を100%、200%、300%として延伸して得られた一軸延伸フィルムが発現している複屈折(Δn(S))の値をそれぞれ測定し、これらの値を延伸倍率に対してプロットし最小二乗法近似することにより算出することができる。また、延伸倍率(S)とは、延伸前のチャック間距離をL、延伸後のチャック間距離をLとすると、以下の式で表される値である。
S={(L−L)/L}×100(%)
フィルム状又はシート状の成形体では、機械的強度を高めることを目的として延伸加工する場合がある。前述の関係式において、傾きKの値は、延伸倍率(S)に対する複屈折(Δn(S))の変化の大きさを表し、Kが大きいほど延伸に対する複屈折の変化量が大きく、Kが小さいほど延伸に対する複屈折の変化量が小さいことを意味している。
本実施形態の樹脂組成物及び成形体は、傾きKの値が、既存樹脂(例えば、PMMA、PC、トリアセチルセルロース樹脂、環状オレフィン樹脂等)に比較して十分に小さい。従って、既存樹脂が延伸加工時の延伸配向で複屈折が増大するのに対し、延伸加工しても複屈折が増大しにくいという特徴を有する。
本実施形態のアクリル系ブロック共重合体(C)は、光学フィルムに成形したときに、延伸加工の有り無しに関わらず、光学フィルムとして面内方向位相差Re、厚み方向位相差Rthの絶対値が小さい(近似的にはゼ口)ことで特徴付けられ、従来公知のブロック共重合体では達成されていない光学的に完全な等方性を実現することができる。さらに、高い耐熱性及び柔軟性をも同時に達成することができる。
本実施形態のアクリル系ブロック共重合体(C)及び樹脂組成物を成形してなる光学フィルムは、主として複屈折を必要としない用途、例えば偏光板保護フィルム等に好適である。
[フィルム強度(耐折回数)]
フィルム強度の指標として、耐折回数を用いることができる。
本実施形態の樹脂組成物及び成形体は、厚さ10〜100μmにおいて、耐折回数が300回以上となることが好ましい。
なお、耐折回数は、後述の[実施例]に記載の方法により測定される。
[製膜安定性]
本実施形態のアクリル系ブロック共重合体(C)について、フィルムの作製可否により製膜安定性を評価する。
なお、フィルムは、後述の[実施例]に記載の方法により作製され、製膜安定性を評価される。
[機械強度(引張強度及び引張伸び)]
本実施形態の樹脂組成物の引張強度(MPa)は、幅10mm、厚み4mm、長さ100mmのダンベルに成形した際に40〜90MPaであることが好ましく、50〜80MPaであることがより好ましい。
また、本実施形態の樹脂組成物からなる上記ダンベルの引張伸び(%)は、2.5〜10%であることが好ましく、3〜9%であることがより好ましい。
なお、引張強度(MPa)及び引張伸び(%)は、JIS K7161に準拠して測定される値である。
[高温ヘイズ]
本実施形態の樹脂組成物の高温ヘイズ値(%)は、70℃、厚み100μmにおいて10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましい。
なお、高温ヘイズ値(%)は、後述の[実施例]に記載の方法により測定される値である。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[原料]
後述する試験例及び比較例において使用した原料について下記に示す。
[[(A)を構成する単量体]]
・メタクリル酸メチル(MMA):和光純薬工業社製
・N−フェニルマレイミド(PMI):日本触媒社製
・N−シクロヘキシルマレイミド(CMI):日本触媒社製
・2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA):Combi Bloks社製
・スチレン(St):和光純薬工業社製
・メタクリル酸(MAA):和光純薬工業社製
[[(B)を構成する単量体]]
・n−ブチルアクリレート(BA):和光純薬工業社製
・アクリル酸エチル(EtA):和光純薬工業社製
[[有機溶媒]]
・メタキシレン:三菱ガス化学株式会社製
・メタノール:和光純薬工業社製
・トルエン:和光純薬工業社製
・n−ヘキサン:和光純薬工業社製
[[環化縮合の触媒]]
・リン酸ステアリル:堺化学社製、Phoslex A−18
・リン酸ステアリル/リン酸ジステアリル混合物:堺化学社製
[[イミド化剤]]
・メチルアミンメタノール溶液:和光純薬工業社製
・アンモニア:和光純薬工業社製
[[重合開始剤]]
・p−キシリレンビスN,Nジエチルジチオカーバメイト(XDC):東京化成工業社製
・アゾビスイソブチロニトリル(AIBN):和光純薬工業社製
・パーヘキサC−75(EB):日本油脂株式会社製
・2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(PH25B):日本油脂株式会社製
[[連鎖移動剤]]
・n−オクチルメルカプタン(n−octylmercaptan、NOM):日油社製
・N,N−ジメチルホルムアミド:東京化成株式会社製
[[その他]]
・1,4−ブタンジオールジアクリレート:Aldrich社製
・臭化銅(CuBr):和光純薬工業社製
・銅粉末:和光純薬工業社製
・N,N,N’,N’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA):和光純薬工業社製
・2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸:和光純薬工業社製
・塩化アンモニウム(NHCl):和光純薬工業社製
・ペンタン:丸善石油化学株式会社製
・エタノール:和光純薬工業社製
各測定値の測定方法は以下の通りである。
(1)重量平均分子量、数平均分子量の測定
後述の試験例及び比較例において、各樹脂の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)を、下記の装置及び条件で測定した。
・測定装置:東ソー社製、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(HLC−8320GPC)
・測定条件:
カラム:TSKguardcolumn SuperH−H 1本、TSKgel SuperHM−M 2本、TSKgel SuperH2500 1本を順に直列接続して使用した。本カラムでは、高分子量が早く溶出し、低分子量が遅く溶出する。
展開溶媒:テトラヒドロフラン、流速;0.6mL/分、内部標準として、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)を、0.1g/L添加した。
検出器:RI(示差屈折)検出器
検出感度:3.0mV/分
カラム温度:40℃
サンプル:0.02gの樹脂のテトラヒドロフラン20mL溶液
注入量:10μL
検量線用標準サンプル:単分散の重量ピーク分子量が既知で分子量が異なる、以下の10種のポリメタクリル酸メチル(Polymer Laboratories社製、PMMA Calibration Kit M−M−10)を用いた。
重量ピーク分子量(Mp)
標準試料1 1,916,000
標準試料2 625,500
標準試料3 298,900
標準試料4 138,600
標準試料5 60,150
標準試料6 27,600
標準試料7 10,290
標準試料8 5,000
標準試料9 2,810
標準試料10 850
上記の条件で、樹脂の溶出時間に対するRI検出強度を測定した。
GPC溶出曲線におけるエリア面積と、3次近似式の検量線とを基に、樹脂の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)を求めた。
(2)ガラス転移温度Tgの測定
後述の試験例及び比較例で得られたアクリル系ブロック共重合体(C)のガラス転移温度Tg(℃)は、NETZSCH社製 DSC3500を用いて、窒素ガス雰囲気下、規格:JIS K7121に準拠して測定した。
DSC曲線は、−60℃で2分保持した後、昇温速度20℃/分で200℃まで昇温して200℃で2分保持した後、降温速度20℃/分で−60℃まで冷却して−60℃で2分保持した後、昇温速度20℃/分で200℃まで昇温する条件により得られた。
得られたDSC曲線から、JIS K7121に準拠して下記のように定義される中間点ガラス転移温度Tmg、補外ガラス転移開始温度Tig、及び補外ガラス転移終了温度Tegを算出することができる。本開示では、中間点ガラス転移温度Tmgをガラス転移温度Tgとし、低温側をTg(1)、高温側をTg(2)とした。
中間点ガラス転移温度(Tmg):各ベースラインの延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線とが交わる点の温度。
補外ガラス転移開始温度(Tig):低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線のこう配が最大になるような点で引いた接線との交点の温度。
補外ガラス転移終了温度(Teg):高温側のベースラインを低温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線のこう配が最大になるような点で引いた接線との交点の温度。なお、階段状変化の高温側にピークが現れる場合の補外ガラス転移終了温度(Teg)は,高温側のベースラインを低温側に延長した直線と、ピークの高温側の曲線にこう配が最大になるような点で引いた接線との交点の温度とする。
(3)熱容量変化ΔCpの測定
後述の試験例及び比較例で得られたアクリル系ブロック共重合体(C)について、前記ガラス転移時の補外融点開始温度から、この補外融点開始温度と補外融点終了温度との中間点までの吸熱量である熱容量変化ΔCp(J/g・℃)を求めた。
(4)位相差の測定
<面内の位相差(Re)>
後述の試験例及び比較例で得られたフィルムの面内の位相差(Re)は、大塚電子社製RETS−100を用い、回転検光子法により波長400〜800nmの範囲について位相差(nm)を測定し、得られた値(nm)をフィルムの厚さ100μmに換算して測定値とした。
なお、複屈折の絶対値(|Δn|)と位相差(Re)は以下の関係にある。
Re=|Δn|×d
(|Δn|:複屈折の絶対値、Re:位相差、d:サンプルの厚み)
また、複屈折の絶対値(|Δn|)は以下に示す値である。
|Δn|=|nx−ny|
(nx:延伸方向の屈折率、ny:面内で延伸方向と垂直な方向の屈折率)
<厚み方向の位相差(Rth)>
後述の試験例及び比較例で得られたフィルムの厚み方向の位相差(Rth)は、王子計測機器社製位相差測定装置(KOBRA−21ADH)を用いて、波長589nmにおける位相差(nm)を測定し、得られた値をフィルムの厚さ100μmに換算して測定値とした。
なお、複屈折の絶対値(|Δn|)と位相差(Rth)は以下の関係にある。
Rth=|Δn|×d
(|Δn|:複屈折の絶対値、Rth:位相差、d:サンプルの厚み)
また、複屈折の絶対値(|Δn|)は以下に示す値である。
|Δn|=|(nx+ny)/2−nz|
(nx:延伸方向の屈折率、ny:面内で延伸方向と垂直な方向の屈折率、nz:面外で延伸方向と垂直な厚み方向の屈折率)
なおここで、理想となる、3次元方向すべてについて完全光学的等方性であるフィルムでは、面内位相差(Re)、厚み方向位相差(Rth)ともに0となる。
(5)全光線透過率の測定
後述の試験例及び比較例で得られたフィルム(約100μm厚)を用いて、ISO13468−1規格に準拠して、全光線透過率(%)の測定を行い、透明性の指標とした。
全光線透過率が、90%以上100%以下の場合を◎(優れる)、85%以上90%未満の場合を○(良好)、85%未満の場合を△(やや不良)と評価した。但し、目視で明らかに白濁しているものは、透明性×(不良)とした。
(6)耐折回数の測定
後述の試験例及び比較例で得られたフィルムの強度を耐折回数で評価した。フィルムの耐折回数は、MIT耐折度試験機(テスター産業製、BE−201型)を用いて、23℃、50%RHの状態に1時間以上静置させた、幅15mm、長さ90mmの試験フィルムを使用し、荷重200gの条件で、JIS P8115に準拠して測定した。
各サンプルについて5枚のフィルムを測定し、得られた回数から、次の基準で評価した。
◎(優れる):300回以上の結果が3枚以上得られたもの
○(良好):150回以上の結果が3枚以上得られたもの
△(やや不良):100回〜149回の結果が1、2枚得られたもの
×(不良):上記以外
(7)製膜安定性の評価
後述の試験例及び比較例で得られたアクリル系ブロック共重合体(C)をメタキシレン中に約40%の濃度で溶かし、カプトンフィルム上に流延、乾燥し、キャストフィルムを作製して、次の基準で製膜安定性を評価した。
○(良好):キャストフィルムが得られたもの
×(不良):カプトンフィルム上に貼りついて剥がれずフィルムが得られなかったもの
(8)引張強度及び引張伸びの測定
後述の試験例及び比較例で得られたアクリル系ブロック共重合体(C)又は樹脂組成物からなるダンベル(幅10mm、厚み4mm、長さ100mm)の引張強度(MPa)及び引張伸び(%)を、JIS K7161に準拠して測定し、10回の平均を求めた。
得られた引張強度の平均値から、次の基準で評価した。
◎(優れる):55MPa以上
○(良好):50MPa以上55MPa未満
△(やや不良):40MPa以上50MPa未満
×(不良):40MPa未満
また、得られた引張伸びから、次の基準で評価した。
◎(優れる):3.0%以上
○(良好):2.5%以上3.0%未満
△(やや不良):2%以上2.5%未満
×(不良):2%未満
(9)高温ヘイズの測定
後述の試験例及び比較例で得られたアクリル系ブロック共重合体(C)又は樹脂組成物からなるフィルムについて、JIS−K7136に準じて、厚み100μmのフィルムを3mmのアクリル板で挟み込み、温水で70℃に保った状態で高温ヘイズ値(%)を測定した。得られた高温ヘイズ値から、次の基準で評価した。
◎(優れる):1%以下
○(良好):1%超2%以下
△(やや不良):2%超10%以下
×(不良):10%超
以下、アクリル系重合体ブロック(B)の製造方法について記載する。
<アクリル系重合体ブロック(B)の製造>
[二官能性アルコキシアミンの製造]
リビングラジカル末端を有するアクリル系重合体ブロック(B)の製造において、開始剤及び制御剤として二官能性アルコキシアミンを用いる。以下、二官能性アルコキシアミンの製造方法を示す。
二官能性アルコキシアミンの製造は、下記a段階とb段階の2段階で行う。
a段階:下記一般式(13)で示される一官能性アルコキシアミンである、2−メチル−2−[N−tert−ブチル−N−(1−ジエトキシホスホリル−2,2−ジメチルプロピル)アミノキシ]プロピオン酸を合成する。
Figure 2018188569
・・・・・(13)
b段階:上記の一官能性アルコキシアミンと1,4−ブタンジオールジアクリレートとを反応させて、下記一般式(14)の二官能性アルコキシアミンを得る。
Figure 2018188569
・・・・・(14)
[[a段階]]
窒素でパージした2リットル容のガラス製反応器中に、500mLの脱気したトルエンと、35.9g(250mmol)のCuBrと、15.9g(250mmol)の銅粉末と、86.7g(500mmol)のN,N,N’,N’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)とを導入した後、攪拌下に室温(20℃)で500mLの脱気したトルエンと、42.1g(250mmol)の2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸と、78.9g(84%、225mmol)の下記一般式(15)のニトロオキシドとから成る混合物を導入した。
Figure 2018188569
・・・・・(15)
得られた混合物を攪拌下に室温で90分間反応させた後、反応媒体を濾過した。トルエン濾液を1.5リットルのNHCl飽和水溶液で二回洗浄した。
得られた黄色固体をペンタンで洗浄すると51gの2−メチル−2−[N−(tert−ブチル)−N−(ジエトキシホスホリル−2,2’−ジメチルプロピル)アミノキシ)プロピオン酸が得られた。
[[b段階]]
窒素でパージした100mL容の丸底フラスコ中に下記を入れた。
・ a段階で調製した2g(2.1当量)のアルコキシアミン、
・ 純度が90%超の0.55gの1,4−ブタンジオールジアクリレート(1当量)、
・ 5.7mLのエタノール。
この混合物を20時間加熱還流(温度78℃)した後、エタノールを減圧蒸発させると、2.5Pa・sの二官能性アルコキシアミンが得られた。
リビングラジカル末端を有するアクリル系重合体ブロック(B)として、ポリ(n−ブチルアクリレート)ポリマーを製造した。
可変速電動攪拌器と、反応物の導入口と、酸素パージ用不活性ガスを導入するためのブリードラインと、温度測定用プローブと、蒸気の還流凝縮装置と、ジャケット中を循環する熱伝導流体によって反応器の内容物を加熱/冷却するジャケットとを備えた重合反応器に下記を導入した:
・320g(2.5mol)のn−ブチルアクリレート、
・8.8g(9.1mmol)の上記で製造した二官能性アルコキシアミン。
反応媒体を窒素で数回脱気した後、115℃に加熱し、温度を調節してこの温度を数時間維持する。反応中にサンプルを抜き出し、(1)重量測定(固体含有率の測定、によって重合反応速度を求め、(2)数平均分子量(Mn)の変化をモノマーのポリマーへの変換率の関数でモニターした。
変換率が80%に達したときに反応媒体を60℃に冷却し、残留n−ブチルアクリレートを減圧蒸発で除去する。
ポリ(n−ブチルアクリレート)の重量平均分子量(MwB)は、124,000g/molであった。
<アクリル系ブロック共重合体(C)の製造>
アクリル系重合体ブロック(B)として、上記の方法で製造したリビングラジカル末端を有するポリ(n−ブチルアクリレート)(MwB=12.4万)を用いてリビングラジカル重合を行った。
[マレイミド系構造単位(Y−1)含有ブロックポリマー]
[試験例A1]
パドル翼を付けた撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管を付した1.5Lの反応釜に、174.76gのメタクリル酸メチル(MMA)、10.28gのN−フェニルマレイミド(PMI)、20.56gのN−シクロヘキシルマレイミド(CMI)、493.54gのメタキシレン、20.56gのポリ(n−ブチルアクリレート)を仕込み、溶解して原料溶液を調整した。これに窒素を通じつつ、撹拌しながら105℃まで昇温し、3時間重合させた。
得られた重合溶液を300gのメタキシレンで希釈し、2Lのメタノール中に投入し、ポリマーを再沈殿させた。得られたポリマーを濾過、乾燥し、マレイミド系構造単位(Y−1)含有ブロックポリマー粉体を得た。
得られたポリマーの物性を表1に示す。
得られたポリマーは、ガラス転移温度Tgの結果から、MMA、PMI、CMIのメタクリル系共重合体ブロック(A)とアクリル系重合体ブロック(B)からなるABA型ブロック共重合体であることがわかった。
得られたポリマーを270℃、100kg/cmでプレス成形して厚さ約100μmのフィルムを製造し、その物性を測定した。結果を表1に示す。
[試験例A2及びA3]
組成比を表1の通りに変更した以外は、試験例A1と同様の方法で試験例A2、A3を重合した。また、試験例A1と同様に、フィルムを形成した。
得られたポリマー及びフィルムの物性を表1に示す。
[ラクトン環構造単位(Y−4)含有ブロックポリマー]
[試験例A4]
試験例A1と同様の方法で表1の組成で重合し、得られた重合溶液に環化縮合反応の触媒として、リン酸ステアリル0.21質量部を加え、90℃〜110℃の還流化において2時間、ラクトン環構造を形成するための反応を進行させた。得られた重合溶液を300gのメタキシレンで希釈し、2Lのメタノール中に投入し、ポリマーを再沈殿させた。得られたポリマーを濾過、乾燥し、ラクトン環構造単位(Y−4)含有ブロックポリマー粉体を得た。また、試験例A1と同様に、フィルムを形成した。
得られたポリマー及びフィルムの物性を表1に示す。
[グルタルイミド系構造単位(Y−3)含有ブロックポリマー]
[試験例A5]
試験例A1と同様の方法で表1の組成で重合し、得られた重合溶液に40%メチルアミンメタノール溶液130質量部を加え、さらに200℃で10分加熱した。得られた重合溶液を300gのメタキシレンで希釈し、2Lのメタノール中に投入し、ポリマーを再沈殿させた。得られたポリマーを濾過、乾燥し、グルタルイミド系構造単位(Y−3)含有ブロックポリマー粉体を得た。また、試験例A1と同様に、フィルムを形成した。
得られたポリマー及びフィルムの物性を表1に示す。
[試験例A6及びA7]
組成比を表1の通りに変更した以外は試験例A1と同様の方法で試験例A6、A7を重合した。試験例A7は十分に重合反応が進まず、フィルム評価ができる量のポリマーが得られなかった。試験例A6は、試験例A1と同様にフィルムを形成した。
得られたポリマー及びフィルムの物性を表1に示す。
[試験例A8]
シュレンク管にパラキシリレンビスN,Nジエチルジチオカーバメイト(XDC)0.29g、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.06g、トルエン250g、アクリル酸エチル(EtA)50gを仕込み、窒素雰囲気下70℃で8時間撹拌を行った。
重合終了後、得られたポリマー溶液を貧溶媒であるメタノールに混合してポリマーを析出させ、遠心分離によりアクリル系重合体ブロック(B)として20gのポリエチレンアクリレートポリマーを回収した。
得られたアクリル系重合体ブロック(B)5.0gとトルエン250gをシュレンク管に仕込み、窒素雰囲気化70℃に加熱し、重合液とした。該重合液にAIBN0.02g、メタクリル酸メチル107g、N−フェニルマレイミド11.4g、N−シクロヘキシルマレイミド15.4gの混合液を2時間かけて滴下し、さらに窒素雰囲気下70℃で10時間撹拌を行った後、反応溶液を多量のメタノールを用いて再沈精製し、真空乾燥することにより精製ポリマーを得た。また、試験例A1と同様に、フィルムを形成した。
得られた精製ポリマー及びフィルムの物性を表1に示す。
[試験例A9]
試験例A9において、XDC1.16g、AIBN0.24g、トルエン250g、EtA50gを用いた以外は試験例A8と同様の操作によりアクリル系重合体ブロック(B)を合成した。その後、アクリル系重合体ブロック(B)20g、トルエン250g、AIBN0.08g、MMA94g、PMI11.4g、CMI15.4gを用いた以外は試験例A8と同様の操作により精製ポリマーを得た。また、試験例A1と同様に、フィルムを形成した。
得られた精製ポリマー及びフィルムの物性を表1に示す。
[試験例A10]
試験例A10において、XDC5.22g、AIBN1.1g、トルエン500g、EtA50gを用いた以外は試験例A8と同様の操作によりアクリル系重合体ブロック(B)を合成した。その後、アクリル系重合体ブロック(B)45g、トルエン250g、AIBN0.18g、MMA70g、PMI11.4g、CMI15.4gを用いた以外は試験例A8と同様の操作により精製ポリマーを得た。また、試験例A1と同様に、フィルムを形成した。
得られた精製ポリマー及びフィルムの物性を表1に示す。
[試験例A11]
試験例A11において、XDC11.3g、AIBN2.3g、トルエン500g、EtA150gを用いた以外は試験例A8と同様の操作によりアクリル系重合体ブロック(B)を合成した。その後、アクリル系重合体ブロック(B)65g、トルエン750g、AIBN0.26g、MMA48g、PMI11.4g、CMI15.4gを用いた以外は試験例A8と同様の操作により精製ポリマーを得た。また、試験例A1と同様に、フィルムを形成した。
得られた精製ポリマー及びフィルムの物性を表1に示す。
[比較例A’1〜A’3]
組成比を表1の通りに変更した以外は、試験例A1と同様の方法で比較例A’1〜A’3を重合した。また、試験例A1と同様に、フィルムを形成した。
得られたポリマー及びフィルムの物性を表1に示す。
Figure 2018188569
<メタクリル系樹脂(D)の製造>
[樹脂D1(マレイミド環構造含有樹脂)]
パドル翼を備え付けた撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管を付した1mの反応釜に、432.3kgのメタクリル酸メチル(MMA)、33.0kgのN−フェニルマレイミド(PMI)、84.7kgのN−シクロヘキシルマレイミド(CMI)、450.0kgのメタキシレン、及びn−オクチルメルカプタン0.045kg(全単量体の総量100質量部に対して100質量ppm)を仕込み、溶解して原料溶液を調整した。これに窒素を通じつつ、撹拌しながら125℃まで昇温した。
別途、0.23kgのパーヘキサC−75と1.82kgのメタキシレンとを混合してなる開始剤フィード液を調製した。
原料溶液が127℃に到達したところで、開始剤フィード液(重合開始剤混合液)のフィード(添加)を(1)〜(6)のプロファイルにて開始した。
(1)0.0〜0.5時間:フィード速度1.00kg/時
(2)0.5〜1.0時間:フィード速度0.50kg/時
(3)1.0〜2.0時間:フィード速度0.42kg/時
(4)2.0〜3.0時間:フィード速度0.35kg/時
(5)3.0〜4.0時間:フィード速度0.14kg/時
(6)4.0〜7.0時間:フィード速度0.13kg/時
合計7時間かけて開始剤をフィードした(B時間=7時間)後、さらに1時間反応を継続し、開始剤の添加開始時から8時間後まで重合反応を行った。
重合反応中、内温は127±2℃で制御した。得られた重合液の重合転化率を測定したところ、MMA単位:93.7質量%、PMI単位:95.5質量%、CMI単位:91.2質量%であった。総じて、重合転化率は93%であった。
上記で得られた重合液を、4フォアベント、1バックベント付φ42mm脱揮押出機を用いて、140rpm、樹脂量換算で10kg/時で脱揮処理を行い、樹脂ペレットを得た。
得られたペレットの重量平均分子量は18万、ガラス転移温度Tgは135℃であった。
また、NMRより求めた組成は、MMA単位:79質量%、PMI単位:6質量%、CMI単位:15質量%であった。
[樹脂D2(ラクトン環構造含有樹脂)]
パドル翼を備え付けた撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管を付した200Lの反応釜に、41.0kgのメタクリル酸メチル(MMA)、10.0kgの2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、50.0kgのトルエンを仕込み、原料溶液を調製した。これに窒素を通じつつ、撹拌し液温度を107℃まで昇温した。
別途、0.05kgのPHC−75と0.36kgのトルエンを混合した開始剤フィード液を調製した。
原料溶液温度が107℃に到達したところで、開始剤フィード液のフィードを(1)〜(6)のプロファイルにて開始した。
(1)0.0〜0.5時間:フィード速度0.20kg/時
(2)0.5〜1.0時間:フィード速度0.10kg/時
(3)1.0〜2.0時間:フィード速度0.08kg/時
(4)2.0〜3.0時間:フィード速度0.07kg/時
(5)3.0〜4.0時間:フィード速度0.028kg/時
(6)4.0〜7.0時間:フィード速度0.026kg/時
合計7時間かけて開始剤をフィードした(B時間=7時間)後、さらに1時間反応させて、合計8時間かけて重合反応を完結させた。
重合反応中、内温は107±2℃で制御した。得られた重合体溶液に、51gのリン酸ステアリル/リン酸ジステアリル混合物を加え、還流下(約90〜110℃)で5時間、環化縮合反応を行った。
得られた重合液を4フォアベント、1バックベント付φ42mm二軸脱揮押出機を用いて、140rpm、樹脂量換算で10kg/時で環化縮合反応及び、脱揮処理を行い、樹脂ペレットを得た。得られた樹脂の組成は、MMA単位:82質量%、ラクトン環構造単位:17質量%、MHMA単位:1質量%であり、ガラス転移温度Tgは129℃であった。
[樹脂D3(グルタルイミド含有樹脂)]
パドル翼を備え付けた撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管を付した200Lの反応釜に、69.1kgのメタクリル酸メチル(MMA)、5.32kgのスチレン(St)、9.57kgのメタクリル酸(MAA)、56.0kgのメタキシレン、及びn−オクチルメルカプタン0.105kg(全単量体の総量100質量部に対して1250質量ppm)を仕込み、原料溶液を調製した。これに窒素を通じつつ、撹拌しながら117℃まで昇温した。
別途、0.029kgの2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(PH25B)と0.10kgのメタキシレンを混合した開始剤フィード液Aと、0.0098kgのPH25Bと0.10kgのメタキシレンを混合した開始剤フィード液Bを調整した。
原料溶液温度が117℃に達したところで、フィード速度0.774kg/時で開始剤フィード液Aのフィードを10分間行い、2時間反応させた。その後、フィード速度0.110kg/時で開始剤フィード液Bのフィードを10分間行ってさらに10時間反応させ、合計12時間20分間、重合反応を実施して、反応を完結させた。
得られた重合液は270℃設定の高温真空室に供給し、未反応物及び溶媒を除去し、6員環酸無水物の生成を行った。
この生成共重合体のNMRによる組成分析の結果、MMA単位:78質量%、St単位:7質量%、MAA単位:4質量%、6員環酸無水物単位:11質量%であった。
このようにして得た共重合体ペレットの0.5kgを内容積5リットルのオートクレーブに仕込み、次いでN,N−ジメチルホルムアミド3.0kgを投入し、撹拌して溶解した。6員環酸無水物単位量に対して2当量のアンモニアを含む28%アンモニア水を仕込み、150℃で2時間反応させた。
反応液を抜き出し、n−ヘキサン中に投入してポリマーを析出させた。このポリマーを、さらに10toorの揮発炉内で250℃、2時間処理した。
最終的に得られた共重合体は、微黄色透明であり、組成は元素分析による窒素含有量定量、NMR、IRから、MMA単位:78質量%、St単位:7質量%、MAA単位:4質量%、グルタルイミド系構造単位:11質量%であった。上記操作を繰り返し、評価に必要なペレットを準備した。
得られたペレットのガラス転移温度Tgは127℃であった。
<樹脂組成物の製造>
[試験例B1]
上記で得られた樹脂D1を2700g(90質量部)と、試験例A1を300g(10質量部)ドライブレンドし、二軸押出機で240℃で押出して試験例B1の樹脂組成物を製造した。また、試験例A1と同様に、試験例B1からフィルムを形成した。
得られた樹脂組成物のフィルムの物性を表2に示す。
[試験例B2〜14]
組成を表2の通りに変更した以外は、試験例B1と同様の方法で試験例B2〜14の樹脂組成物を製造し、フィルムを成形した。
得られた樹脂組成物のフィルムの物性を表2に示す。
[比較例B’1、B’2]
組成を表2の通りに変更した以外は、試験例B1と同様の方法で比較例B’1、B’2の樹脂組成物を製造し、フィルムを成形した。
得られた樹脂組成物のフィルムの物性を表2に示す。
Figure 2018188569
表1に示されるとおり、試験例A1は、比較例A’1と比較して、ガラス転移温度Tg(2)が高く、耐熱性に優れていた。
表2に示されるとおり、試験例B1は、比較例B’1と比較して、透明性、及び強度に優れていた。
当該アクリル系ブロック共重合体(C)は、環構造含有ブロック部分(メタクリル系共重合体ブロック(A))の割合が大きいため、環構造含有樹脂(D)との相溶性が良く、樹脂組成物とした場合でも透明性が維持でき、少量の添加で樹脂組成物の強度を大幅に改善できることを見出した。
特に当該アクリル系ブロック共重合体(C)を用いてフィルムを製造した場合には、従来の環構造含有樹脂に比べて極めて強度が高いことから、安定してフィルムを製造できる。
本発明は、透明性、光学特性、耐熱性、及び物理的強度に優れたアクリル系ブロック共重合体、当該アクリル系ブロック共重合体を含有する樹脂組成物、及び当該アクリル系ブロック共重合体を含有する成形体を提供することができる。
本発明は、家庭用品、OA機器、AV機器、電池電装用、照明機器、テールランプ、メーターカバー、ヘッドランプ、導光棒、レンズ等の自動車部品用途、ハウジング用途、衛生陶器代替等のサニタリー用途や、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、リアプロジェクションテレビ等のディスプレイに用いられる導光板、拡散板、偏光板保護フィルム、1/4波長板、1/2波長板、視野角制御フィルム、液晶光学補償フィルム等の位相差フィルム、ディスプレイ前面板、ディスプレイ基盤、レンズ、タッチパネル等の透明基盤、加飾フィルム等や太陽電池に用いられる透明基盤や、光通信システム、光交換システム、光計測システムの分野において、導波路、レンズ、光ファイバー、光ファイバーの被覆材料、LEDのレンズ、レンズカバー等として、産業上の利用可能性がある。

Claims (10)

  1. 主鎖に環構造を有するメタクリル系共重合体ブロック(A)と、アクリル系重合体ブロック(B)とを含むことを特徴とする、アクリル系ブロック共重合体(C)。
  2. 前記メタクリル系共重合体ブロック(A)が、2種以上の単量体単位を含む、請求項1に記載のアクリル系ブロック共重合体(C)。
  3. 前記メタクリル系共重合体ブロック(A)と前記アクリル系重合体ブロック(B)の結合形式が、ABA型である、請求項1又は2に記載のアクリル系ブロック共重合体(C)。
  4. 前記メタクリル系共重合体ブロック(A)の重量平均分子量MwAの、前記アクリル系重合体ブロック(B)の重量平均分子量MwBに対する割合MwA/MwBが、1以上4以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のアクリル系ブロック共重合体(C)。
  5. 前記アクリル系重合体ブロック(B)の重量平均分子量MwBが、7万以上15万以下である、請求項4に記載のアクリル系ブロック共重合体(C)。
  6. 前記アクリル系ブロック共重合体(C)が、
    −60℃〜0℃のガラス転移温度Tg(1)と100℃〜150℃のガラス転移温度Tg(2)とを有し、
    前記Tg(1)における熱容量変化ΔCp(1)(J/g・℃)と前記Tg(2)における熱容量変化ΔCp(2)(J/g・℃)とが、ΔCp(1)≦ΔCp(2)の関係を満たす、
    請求項1〜5のいずれか一項に記載のアクリル系ブロック共重合体(C)。
  7. 前記熱容量変化ΔCp(2)が0.05J/g・℃以上である、請求項6に記載のアクリル系ブロック共重合体(C)。
  8. アルコキシアミン末端を有するアクリル系重合体に、メタクリル酸メチル、及びポリマー主鎖に環構造を生成する機能を持つモノマーをリビング重合することで製造される、請求項1に記載のアクリル系ブロック共重合体(C)。
  9. 請求項1〜8のいずれか一項に記載のアクリル系ブロック共重合体(C)を1〜20質量部、主鎖に環構造を有するメタクリル系樹脂を99〜80質量部含有し、全光線透過率が80%以上である、ことを特徴とする、樹脂組成物。
  10. 請求項1〜8のいずれか一項に記載のアクリル系ブロック共重合体(C)を含有し、厚さが10〜100μmであり、JIS P8115に準拠して測定した耐折回数が300回以上である、ことを特徴とする、フィルム。
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