JP2018188402A - ペンテン酸エステルの製造方法 - Google Patents

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【課題】エーテルの副生を抑制しつつ、アルコールの使用量を大過剰にしなくても高い収率でペンテン酸エステルを得ることが可能な製造方法を提供すること。
【解決手段】X型ゼオライトを含む触媒の存在下、γ−バレロラクトンと式(1)のアルコールとを接触させることによって、式(2)、式(3)及び式(4)からなる群より選ばれる少なくとも一つを含むペンテン酸エステルを合成する工程を有する、ペンテン酸エステルの製造方法を提供する。
Figure 2018188402

[式(1)中、Rは炭素原子数1〜6のアルキル基を示す。]
Figure 2018188402

[式(2)、式(3)及び式(4)中、Rは炭素原子数1〜6のアルキル基を示す。]
【選択図】なし

Description

本開示は、ペンテン酸エステルの製造方法に関する。
ペンテン酸エステルは、カプロラクタム及びアジピン酸のようなナイロンモノマーに誘導できる有用な前駆体である。例えば、ペンテン酸エステルは、ヒドロホルミル化により5−ホルミルバレレートに変換され、さらに還元的アミノ化反応、及び環化反応を経ることで硫酸アンモニウムの生成を伴うことなくε−カプロラクタムに変換され得る。
ペンテン酸エステルの製造方法としては、p−トルエンスルホン酸又はトリフルオロメタンスルホン酸を触媒として用い、γ−バレロラクトンとアルコールを反応蒸留方式で反応させることでペンテン酸エステルを製造する方法が知られている(特許文献1、非特許文献1〜2を参照)。
例えば、特許文献2においては、ベータゼオライト触媒の存在下、γ−バレロラクトンとメタノールを流通方式で反応させることによってペンテン酸エステルを製造する方法が記載されている。
例えば、特許文献3においては、塩基触媒の存在下、γ−バレロラクトンとアルコールを流通方式で反応させることによってペンテン酸エステルを製造する方法が記載されている。
WO2005−058793号公報 WO2013−092408号公報 WO2004−007421号公報
Chemical Communications,2007,p.3488−3490 ChemSusChem,vol.6,2013,p.600−603
しかしながら、特許文献1及び非特許文献1〜2の方法では、高収率でペンテン酸エステルを得ることができるものの、反応速度が遅く生産性が著しく低いうえに大過剰量のメタノールが必要である。
特許文献2及び特許文献3の方法では、γ−バレロラクトンの転化率を上げるとペンテン酸エステルの選択率が低下するため、高収率でペンテン酸エステルを得ることが困難である。さらに、特許文献2の方法では、アルコールが脱水縮合してエーテルが副生するために、アルコール基準のペンテン酸エステルの選択率が低くなってしまう。
そこで、本発明は、一つの側面において、エーテルの副生を抑制しつつ、アルコールの使用量を大過剰にしなくても高い収率でペンテン酸エステルを得ることが可能な製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、一つの側面において、X型ゼオライトを含む触媒の存在下、γ−バレロラクトンと式(1)のアルコールとを接触させることによって、式(2)、式(3)及び式(4)からなる群より選ばれる少なくとも一つを含むペンテン酸エステルを合成する工程を有する、ペンテン酸エステルの製造方法を提供する。
Figure 2018188402

式(1)中、Rは炭素原子数1〜6のアルキル基を示す。
Figure 2018188402

式(2)、式(3)及び式(4)中、Rは炭素原子数1〜6のアルキル基を示す。
上述の製造方法では、X型ゼオライトを含む触媒を用いることによって、エーテルの副生が抑制され、アルコール基準のペンテン酸エステルの選択率を向上することができる。また、γ−バレロラクトンの転化率を高くすることができる。これらの要因によって、メタノールの使用量を大過剰にしなくても高い収率でペンテン酸エステルを得ることができる。
アルコールはメタノールを含むことが好ましい。上記製造方法におけるアルコールの使用量は、γ−バレロラクトンに対して1〜20モル当量であることが好ましい。上記製造方法は、ペンテン酸エステルを気相反応で合成することが好ましい。γ−バレロラクトンとアルコールの反応温度は200〜250℃であることが好ましい。
本発明は、一つの側面において、エーテルの副生を抑制しつつ、アルコールの使用量を大過剰にしなくても高い収率でペンテン酸エステルを得ることが可能な製造方法を提供することができる。
以下、本発明の実施形態を説明する。ただし、以下の実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。
本実施形態のペンテン酸エステルの製造方法は、X型ゼオライトを含む触媒の存在下、γ−バレロラクトンと下記式(1)のアルコールとを接触させることによって、下記式(2)、下記式(3)及び下記式(4)からなる群より選ばれる少なくとも一つを含むペンテン酸エステルを合成する合成工程を有する。
Figure 2018188402

式(1)中、Rは炭素原子数1〜6のアルキル基を示す。
Figure 2018188402

式(2)、式(3)及び式(4)中、Rは炭素原子数1〜6のアルキル基を示す。なお、式(2)及び式(3)のペンテン酸エステルは、シス体とトランス体の一方又は両方を含んでもよい。
合成工程では、γ−バレロラクトンと下記式(1)のアルコールとを接触させることによって、下記式(2)、下記式(3)及び下記式(4)からなる群より選ばれる少なくとも一つを含むペンテン酸エステルを合成する反応(以下、「合成反応」ということもある。)が進行する。合成工程で用いられる触媒は、X型ゼオライトを含む。ただし、触媒は、X型ゼオライトのみからなるものであってもよいし、X型ゼオライトを担体として、当該担体に金属成分を担持させたものであってもよい。
X型ゼオライトの細孔内カチオンは特に限定されない。ペンテン酸エステルの収率を高くする観点から、細孔内カチオンは好ましくはプロトン及びナトリウムカチオンの少なくとも一方を含む。ペンテン酸エステルの収率及び選択率の両方を高くする観点から、細孔内カチオンはより好ましくはナトリウムカチオンを含む。
ペンテン酸エステルを合成する反応は、液相反応(反応蒸留方式)であってもよく、気相反応であってもよい。
合成反応を液相(反応蒸留方式)で行う場合には、例えば、反応器内で触媒とγ−バレロラクトンとアルコールとを混合し、攪拌しながら反応させる。合成されるペンテン酸エステルはアルコールとともに蒸留により連続的に抜き出す。これに並行して、抜き出されたアルコールの量と同じ量のアルコールを反応器に連続的に供給する。
合成反応を気相で行う場合には、例えば、触媒を充填した反応管に、γ−バレロラクトンとアルコールの混合物を流通させながら反応させる。なお、必要に応じて、キャリアガスとして不活性ガスを流通させてもよい。また、反応管に充填された触媒層を支持するために不活性な固体充填物を反応管内に配してもよい。さらに、反応管における触媒層の温度を所定範囲に維持するために、触媒層の上に不活性な固体充填物の層を予熱層として設けてもよい。
合成反応を行う際の反応温度は、好ましくは180〜280℃であり、より好ましくは200〜250℃である。反応圧力は、好ましくは常圧〜5MPaであり、より好ましくは常圧〜2MPaである。
反応温度及び反応圧力は、ペンテン酸エステルを合成する合成工程において、上記範囲内で断続的又は連続的に変化させてもよい。反応温度及び反応圧力を上記範囲とすることによって、副生物の生成を一層抑制しつつ、高い反応速度で、高収率且つ高選択的に目的物であるペンテン酸エステルを得ることができる。
アルコールの使用量は、γ−バレロラクトンの使用量1モルに対して、好ましくは1〜20モル(1〜20モル当量)であり、より好ましくは2〜10モル(2〜10モル当量)である。アルコールの使用量をこのような範囲にすることで、目的物であるペンテン酸エステルを高収率で得ることができる。
式(1)のアルコールにおける「R」と、式(2)〜式(4)における各ペンテン酸エステルにおける「R」は、通常同一である。式(1)〜式(4)におけるRは、炭素原子数1〜3のアルキル基であってもよく、炭素原子数1〜2のアルキル基であってもよい。ペンテン酸エステルの収率を一層高くする観点から、アルコールはメタノールを含むことが好ましい。
本実施形態では、ペンテン酸エステルを合成する合成工程において、原料の供給のしやすさ、及び、液相反応での攪拌性の向上、又は気相反応での流通性の向上等の観点から、式(1)のアルコールとは異なる溶媒を使用してもよい。溶媒は反応を阻害しないものであれば特に限定されない。
溶媒としては、例えば、ヘプタン、ヘキサン、シクロヘキサン、及びトルエン等の炭化水素類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、及びN−メチル−2−ピロリドン等のアミド類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、及びジオキサン等のエーテル類;塩化メチレン、ジクロロエタン、及びクロロシクロヘキサン等のハロゲン化炭化水素類が挙げられる。これらのうち、好ましい溶媒としては、炭化水素類及びエーテル類が挙げられ、より好ましい溶媒としてはエーテル類が挙げられる。なお、上述の溶媒は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
溶媒の使用量は、原料(γ−バレロラクトンとアルコールの合計)1gに対して、好ましくは0〜50gであり、より好ましくは0〜25gである。溶媒の使用量をこのような範囲とすることで、攪拌及び流通が速やかに行われ、反応をスムーズに進行させることができる。
触媒体積基準のLHSVは、生産性の向上とペンテン酸エステルの収率の向上を両立する観点から、好ましくは0.1〜0.6であり、より好ましくは0.15〜0.5である。
本実施形態では合成工程におけるγ−バレロラクトンの転化率を高くすることができる。例えば、合成工程におけるγ−バレロラクトンの転化率は、好ましくは75%以上であり、より好ましくは80%以上である。合成工程におけるアルコールの転化率は、好ましくは10%以上であり、より好ましくは12%以上である。本開示におけるγ−バレロラクトン及びアルコールの転化率は、モル基準である。
合成工程で合成されるペンテン酸エステルは、式(2)、式(3)及び式(4)からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む。本実施形態では合成工程におけるペンテン酸エステルの選択率を高くすることができる。例えば、合成工程におけるペンテン酸エステルの選択率は、γ−バレロラクトン基準で、好ましくは85%以上、より好ましくは88%以上であり、また、アルコール基準で、好ましくは50%以上、より好ましくは53%以上である。本開示におけるペンテン酸エステルの選択率は、γ−バレロラクトン基準、又はアルコールを基準とするモル基準の選択率である。本実施形態の合成工程では、エーテルの副生が抑制されるため、アルコール基準のペンテン酸エステルの選択率を高くすることができる。
合成工程におけるペンテン酸エステルの収率は、好ましくは70%以上であり、より好ましくは72%以上である。本開示におけるペンテン酸エステルの収率は、γ−バレロラクトンを基準とするモル基準の収率である。
ペンテン酸エステルは、式(2)、式(3)及び式(4)から選ばれる少なくとも一種を含んでいればよく、その割合は特に限定されない。式(2)で表される2−ペンテン酸エステルの収率は、例えば10〜50%である。式(3)で表される3−ペンテン酸エステルの収率は、例えば35〜50%である。式(4)で表される4−ペンテン酸エステルの収率は、例えば5〜15%である。
本実施形態では、ペンテン酸エステルを合成する合成工程において、目的とするペンテン酸エステルを含む反応液を得ることができる。上記合成工程終了後、得られた反応液に対して、例えば、濾過、濃縮、抽出、蒸留、昇華、再結晶、カラムクロマトグラフィー等の一般的な操作(精製工程)を行うことによって、ペンテン酸エステルを単離又は精製してもよい。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。
実施例及び比較例を挙げて本発明の内容をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1:ペンテン酸エステルの合成)
反応管(φ10×100mm)に、ナトリウムX型ゼオライト触媒(和光純薬工業株式会社製、モレキュラーシーブス13X)2.0mLを充填した。また、予熱層として2mmサイズのガラスビーズ2.0mLを上記触媒層の上に充填した。
触媒及び予熱層を充填した反応管にキャリアガスとして窒素ガスを10mL/min.で供給しながら、反応管をヒーターで230℃に加熱した。その後、γ−バレロラクトンとメタノールの混合溶液を反応管の入口から供給した。このとき、γ−バレロラクトンの供給速度が3.1mmol/h、メタノールの供給速度が15.8mmol/hとなるように混合溶液を供給した。そして、反応管の出口から導出される反応液を捕集した。
反応を開始してから1時間を経過した時点における反応液の組成をガスクロマトグラフィーによって分析した。その結果、γ−バレロラクトンの転化率は82%、ペンテン酸エステルの収率は73%(うち、4−ペンテン酸メチル11%、3−ペンテン酸メチル39%、2−ペンテン酸メチル23%)、及び、γ−バレロラクトン基準のペンテン酸エステルの選択率は89%であった。また、メタノールの転化率は27%であり、メタノール基準のペンテン酸エステルの選択率は86%であった。
表1に実験条件を、表2に分析結果を纏めて示す。表1中のモル当量は、γ−バレロラクトンに対するメタノールのモル比を示す。表1中のLHSVは触媒体積基準の液空間速度を示す。表2中、GVL、M4P、M3P及びM2Pは、それぞれ、γ−バレロラクトン、4−ペンテン酸メチル、3−ペンテン酸メチル及び2−ペンテン酸メチルを示す。
(実施例2:ペンテン酸エステルの合成)
反応管に充填する触媒量を4.0mLに変更したこと、反応温度を215℃に変更したこと、及び、γ−バレロラクトンの供給速度が1.4mmol/h、メタノールの供給速度が11.1mmol/hになるようにγ−バレロラクトンとメタノールの混合溶液の供給量を変更したこと以外は、実施例1と同様にして反応を行った。そして、実施例1と同様にして、反応を開始してから1時間を経過した時点における反応液の組成を分析した。分析結果は、表2に示すとおりであった。実施例2では、ペンテン酸エステルのうち、2−ペンテン酸メチルの収率が最も高かった。
(実施例3:ペンテン酸エステルの合成)
NHCl水溶液を用いて、市販のプロトンX型ゼオライト(和光純薬工業株式会社製、モレキュラーシーブス13X)のイオン交換を行った。その後、空気中、500℃で3時間焼成して触媒を調製した。反応管に充填する触媒を、このようにして調製した触媒に変更したこと以外は、実施例1と同様にして反応を行った。そして、実施例1と同様にして、反応を開始してから1時間を経過した時点における反応液の組成を分析した。分析結果は、表2に示すとおりであった。
(比較例1:ペンテン酸エステルの合成)
反応管に充填する触媒をシリカ−アルミナ触媒(日揮触媒化成株式会社製、商品名:N632HN)に変更したこと、及び、充填する触媒の量を4.0mLに変更したこと以外は、実施例1と同様にして反応を行った。そして、実施例1と同様にして、反応を開始してから1時間を経過した時点における反応液の組成を分析した。分析結果は、表2に示すとおりであった。比較例1は、実施例1よりも、メタノール基準でのペンテン酸エステルの選択率が低かった。
(比較例2:ペンテン酸エステルの合成)
反応管に充填する触媒をプロトン型ベータゼオライト触媒(東ソー株式会社製、商品名:HSZ−940H0A)に変更したこと、及び、反応温度を250℃に変更したこと以外は、実施例1と同様にして反応を行った。そして、実施例1と同様にして、反応を開始してから1時間を経過した時点における反応液の組成を分析した。分析結果は、表2に示すとおりであった。比較例2は、実施例1よりも、メタノール基準でのペンテン酸エステルの選択率が低かった。
(比較例3:ペンテン酸エステルの合成)
反応管に充填する触媒をL型ゼオライト触媒(UOP社製、商品名:LZ−KL)に変更したこと、及び、反応温度を340℃に変更した以外は、実施例1と同様にして反応を行った。そして、実施例1と同様にして、反応を開始してから1時間を経過した時点における反応液の組成を分析した。分析結果は、表2に示すとおりであった。
(比較例4:ペンテン酸エステルの合成)
反応管に充填する触媒をナトリウムモルデナイト触媒(東ソー株式会社製、商品名:HSZ−320NAA)に変更したこと、及び、反応温度を320℃に変更した以外は、実施例1と同様にして反応を行った。そして、実施例1と同様にして、反応を開始してから1時間を経過した時点における反応液の組成を分析した。分析結果は、表2に示すとおりであった。
Figure 2018188402
Figure 2018188402
本開示によれば、エーテルの副生を抑制しつつ、アルコールの使用量を大過剰にしなくても高い収率でペンテン酸エステルを得ることが可能な製造方法が提供される。

Claims (5)

  1. X型ゼオライトを含む触媒の存在下、γ−バレロラクトンと式(1)のアルコールとを接触させることによって、式(2)、式(3)及び式(4)からなる群より選ばれる少なくとも一つを含むペンテン酸エステルを合成する工程を有する、ペンテン酸エステルの製造方法。
    Figure 2018188402

    [式(1)中、Rは炭素原子数1〜6のアルキル基を示す。]
    Figure 2018188402

    [式(2)、式(3)及び式(4)中、Rは炭素原子数1〜6のアルキル基を示す。]
  2. 前記アルコールがメタノールを含む、請求項1に記載のペンテン酸エステルの製造方法。
  3. 前記アルコールの使用量が、前記γ−バレロラクトンに対して1〜20モル当量である、請求項1又は2に記載のペンテン酸エステルの製造方法。
  4. 前記ペンテン酸エステルを気相反応で合成する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のペンテン酸エステルの製造方法。
  5. 前記γ−バレロラクトンと前記アルコールの反応温度が200〜250℃である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のペンテン酸エステルの製造方法。
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