JP2018187921A - インクジェット記録方法、及びインクジェット記録装置 - Google Patents
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本発明のインクジェット記録方法は、ラインヘッドを備えたインクジェット記録装置を使用して記録媒体に画像を記録する方法である。このラインヘッドは、水性インクを吐出する複数のノズルが所定方向に配列されて構成されたノズル列をそれぞれ有する複数の記録素子基板を備える。複数の記録素子基板は、隣接する記録素子基板の端部同士が、所定方向において重複して重複部を構成するように、所定方向に配列されている。そして、重複部を構成する重複部ノズルから吐出される水性インクの平均温度To(℃)と、ノズル列の中央部を構成する中央部ノズルから吐出される水性インクの平均温度Tc(℃)とが、Tc>Toの関係を満たす。さらに、重複部ノズルからは、隣接する記録素子基板に割り振って水性インクを吐出することを特徴とする。
上記のような構成を有するラインヘッドを備えたインクジェット記録装置を使用して画像を記録すると、ある条件下においてコックリングが生じやすいことがわかった。そこで、本発明者らは、ラインヘッドを用いた場合に顕著にコックリングが生ずる理由について検討した。ラインヘッドのヘッド幅は、通常、記録媒体の幅を包含するように構成されており、基本的には1度の相対走査(1パス)で画像を記録する。すなわち、シリアルヘッドのように、記録媒体の送り方向(主走査方向)に対して直交するように記録ヘッドを移動させる必要がない反面、単位領域に一度に付与されるインク量が多くなる。ベタ画像のような画像を記録する場合には、一度に付与されるインク量が特に多くなるため、記録媒体が一気に濡れることになる。一度に付与されるインク量の多さが、ラインヘッドを用いた場合にコックリングが生じやすくなる理由の一つであると考えられる。一方、シリアルヘッドは、主走査方向と直交する方向(副走査方向)に動きながら画像を記録することができるとともに、マルチパス記録を行うことができるため、記録媒体の幅相当の領域が一度に濡れるということは実質的に起こりにくい。マルチパス記録は、単位領域の画像を記録ヘッドの複数回の走査で記録する手法であり、記録媒体の単位領域に一度に付与されるインク量を低減するのに有効である。
次に、本発明者らは、ラインヘッドのつなぎ部付近のノズルから吐出されたインクの浸透深さが深くなる理由について検討した。前述の通り、つなぎ部は、記録素子基板同士の境目部分におけるノズル列の不連続な箇所である。また、一般的に、隣接する記録素子基板のつなぎ部に対応する位置に存在するノズル同士が、ノズルの配列方向と交差する方向において重複する重複部を構成するように、ノズルの配列方向と同じ方向に複数の記録素子基板が配列されている。そして、つなぎ部に対応する位置に存在するノズルについては、通常、以下のように制御した上で画像を記録する。
以上の検討結果を考慮した上で、本発明者らは、ラインヘッドを備えたインクジェット記録装置を使用して画像を記録する場合であっても、コックリングを抑制しうる手段についてさらに検討した。その結果、ノズル列の重複部を構成する重複部ノズルから吐出されるインクの平均温度To(℃)と、ノズル列の中央部を構成する中央部ノズルから吐出されるインクの平均温度Tc(℃)とが、Tc>Toの関係を満たす温度制御が有効であることを見出した。このような効果が得られる点につき、本発明者らは以下のように推測している。
本発明のインクジェット記録方法に用いるインクジェット記録装置は、ラインヘッドを備えたインクジェット記録装置である。ラインヘッドは、水性インクを吐出する複数のノズルが所定方向に配列されて構成されたノズル列をそれぞれ有する複数の記録素子基板を備える。複数の記録素子基板は、隣接する記録素子基板の端部同士が、所定方向において重複して重複部を構成するように、前記所定方向に配列されている。そして、インクジェット記録装置は、Tc>Toの関係を満たすように、重複部ノズルから吐出される水性インクの平均温度To(℃)と、中央部ノズルから吐出される水性インクの平均温度Tc(℃)との関係を制御する手段をさらに備える。さらに、インクジェット記録装置は、重複部ノズルからは、隣接する記録素子基板に割り振って水性インクを吐出する。以下、図面を参照しつつ、本発明のインクジェット記録装置の詳細について説明する。
以下、本発明のインクジェット記録方法に用いるインクを構成する各成分やインクの物性などについて詳細に説明する。本発明で用いるインクは、いわゆる「硬化型インク」である必要はない。したがって、本発明で用いるインクは、外部エネルギーの付加により重合しうる重合性モノマーなどの化合物を含有しなくてもよい。
本発明のインクジェット記録方法に用いるインクは、色材を含有することが好ましい。色材としては、染料及び顔料のいずれをも用いることができる。染料としては、アニオン性基を有するものなどを挙げることができる。染料としては、フタロシアニン、アゾ、キサンテン、アントラピリドンなどの骨格を有する化合物を用いることができる。また、顔料としては、無機顔料及び有機顔料を挙げることができる。顔料としては、分散剤として樹脂を用いる樹脂分散タイプの顔料、及び顔料の粒子表面に親水性基を導入した自己分散タイプの顔料(自己分散顔料)などを用いることができる。なかでも、色材として顔料を含有するインクを用いることが好ましい。色材として顔料を用いることで、記録媒体に付着したインクの固液分離が促進され、記録媒体の表面に顔料が残りやすくなるので、記録される画像の光学濃度をより高めることができる。さらに、顔料が記録媒体の表面に残るとともに、固液分離により液体成分(水性媒体)のみが記録媒体に速やかに浸透して均一に濡れを生じさせるため、コックリングの抑制効果をより一層高めることができる。色材として顔料を用いる場合、樹脂分散剤を利用しない分散方式を利用することが好ましく、自己分散顔料を用いることがさらに好ましい。
インクは、水性媒体として水を含有する。水としては、脱イオン水(イオン交換水)を用いることが好ましい。インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、50.0質量%以上95.0質量%以下であることが好ましく、60.0質量%以上95.0質量%以下であることがさらに好ましい。
インクには、界面活性剤を含有させることができる。インク中の界面活性剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上5.0質量%以下であることが好ましく、0.2質量%以上3.0質量%以下であることがさらに好ましい。界面活性剤の具体例としては、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーなどの炭化水素系の界面活性剤;パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物などのフッ素系の界面活性剤;ポリエーテル変性シロキサン化合物などのシリコーン系界面活性剤などを挙げることができる。なかでも、ノニオン性界面活性剤を用いることが好ましい。これらの界面活性剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
インクには、上記成分の他に、必要に応じて所望の物性値を有するインクとするために、樹脂、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、及び還元防止剤などの種々の添加剤を含有させてもよい。
インクの25℃における動的表面張力は、30mN/m以上であることが好ましい。インクの25℃における動的表面張力が30mN/m以上であると、インクの浸透性と、記録される画像の光学濃度とのバランスがより良好となる。インクの動的表面張力は、最大泡圧法によって測定される寿命時間10m秒における値である。また、インクの25℃における動的表面張力は、50mN/m以下であることが好ましい。最大泡圧法は、測定する液体中に浸したプローブ(細管)の先端部分で形成された気泡を放出するために必要な最大圧力を測定し、測定した最大圧力から液体の表面張力を求める方法である。寿命時間は、最大泡圧法において、プローブの先端部分で気泡を形成する際に、気泡が先端部分から離れて新しい気泡の表面が形成された時点から、最大泡圧時(気泡の曲率半径とプローブ先端部分の半径が等しくなる時点)までの時間である。
インクの25℃における静的表面張力は、55mN/m以下であることが好ましい。また、インクの25℃における静的表面張力は、15mN/m以上であることがさらに好ましく、25mN/m以上であることが特に好ましい。
インクの25℃における粘度は、1.0mPa・s以上5.0mPa・s以下であることが好ましく、1.0mPa・s以上3.0mPa・s以下であることがさらに好ましい。インクの25℃におけるpHは、5以上9以下であることが好ましい。
(顔料分散液1)
水溶性樹脂であるスチレン/アクリル酸共重合体(組成(モル)比=33:67)を中和当量1となる水酸化カリウムで中和してイオン交換水に溶解させ、樹脂の含有量が20.0%である樹脂分散剤の水溶液を調製した。この水溶性樹脂の重量平均分子量は10,000であり、酸価は200mgKOH/gである。顔料(カーボンブラック)15.0部、樹脂分散剤の水溶液30.0部、及び水55.0部の混合物をサンドグラインダーに入れ、1時間分散処理した。遠心分離処理して粗大粒子を除去した後、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧ろ過した。次いで、適量のイオン交換水を加えて顔料分散液1を得た。得られた顔料分散液1中の顔料の含有量は15.0%、樹脂分散剤の含有量は6.0%であった。
顔料の種類をC.I.ピグメントブルー15:3に変更したこと以外は顔料分散液1の調製と同様にして、顔料分散液2を得た。得られた顔料分散液2中の顔料の含有量は15.0%、樹脂分散剤の含有量は6.0%であった。
顔料の種類をC.I.ピグメントレッド122に変更したこと以外は顔料分散液1の調製と同様にして、顔料分散液3を得た。得られた顔料分散液3中の顔料の含有量は15.0%、樹脂分散剤の含有量は6.0%であった。
顔料の種類をC.I.ピグメントイエロー74に変更したこと以外は顔料分散液1の調製と同様にして、顔料分散液4を得た。得られた顔料分散液4中の顔料の含有量は15.0%、樹脂分散剤の含有量は6.0%であった。
水5.5gに濃塩酸70.6mmolを溶かした溶液を温度5℃に冷却し、4−アミノフタル酸9.8mmolを加えた。この溶液の入った容器をアイスバスに入れて液を撹拌し、溶液を常に10℃以下に保った状態とした。これに、5℃の水9.0gに亜硝酸ナトリウム24.9mmolを溶かした溶液を加えた。さらに15分間撹拌後、顔料6.0gを撹拌下で加えた。顔料としては、カーボンブラック(商品名「ブラックパールズ880」、キャボット製)を用いた。その後、さらに15分間撹拌してスラリーを得た。得られたスラリーをろ紙(商品名「標準用濾紙No.2」、アドバンテック製)でろ過した後、十分に水洗し、温度110℃のオーブンで乾燥させて自己分散顔料を得た。イオン交換水を用いて顔料の含有量を調整して、顔料分散液5を得た。顔料分散液5には、カウンターイオンがナトリウムであるフタル酸基が粒子表面に結合した自己分散顔料が含まれており、顔料の含有量は15.0%であった。
C.I.ダイレクトブラック195の15.0%水溶液を「染料水溶液」として用いた。
表1に示す各成分(単位:%)を混合して十分に撹拌した後、ポアサイズ1.20μmのセルロースアセテートフィルター(アドバンテック製)にて加圧ろ過し、各インクを調製した。調製したインクの25℃における表面張力を表1の下段に示す。インクの表面張力は、自動表面張力計(商品名「CBVP−Z型」、協和界面科学製)を使用し、25℃、湿度50%の環境下で測定した。表1中の「サーフィノール104」は、ノニオン性界面活性剤(日信化学工業製)の商品名である。
(ヘッドの構成)
熱エネルギーを付与してインクを吐出させるサーマルインクジェット方式の下記ヘッド1〜8を用意した。用意したヘッド1〜8は、いずれも、ノズル列1列当たりのノズル密度は600dpiであり、インク1色当たりのノズル列は2列である。
図7に示すように、複数の記録素子基板H1110がインライン状に配置されたラインヘッドである。図9に示すように、ノズル列1列当たりの重複部ノズル220の数は16個であり、1ノズル当たりのインク吐出量は5.0ng/ドットである。
図6に示すように、複数の記録素子基板H1100が千鳥状に配置されたラインヘッドである。図8に示すように、ノズル列1列当たりの重複部ノズル200の数は64個であり、1ノズル当たりのインク吐出量は5.0ng/ドットである。
図7に示すように、複数の記録素子基板H1110がインライン状に配置されたラインヘッドである。図9に示すように、ノズル列1列当たりの重複部ノズルの数は16個であり、1ノズル当たりのインク吐出量は5.9ng/ドットである。
図7に示すように、複数の記録素子基板H1110がインライン状に配置されたラインヘッドである。図9に示すように、ノズル列1列当たりの重複部ノズルの数は16個であり、1ノズル当たりのインク吐出量は7.5ng/ドットである。
図7に示すように、複数の記録素子基板H1110がインライン状に配置されたラインヘッドである。図9に示すように、ノズル列1列当たりの重複部ノズルの数は16個であり、1ノズル当たりのインク吐出量は30.0ng/ドットである。
ヘッド2を構成する記録素子基板を利用したシリアルヘッドである。
図6に示すように、複数の記録素子基板H1100が千鳥状に配置されたラインヘッドである。ノズル列1列当たりの重複部ノズルの数は0個であり、1ノズル当たりのインク吐出量は5.0ngである。
図7に示すように、複数の記録素子基板H1110がインライン状に配置されたラインヘッドである。ノズル列1列当たりの重複部ノズルの数は0個であり、1ノズル当たりのインク吐出量は5.0ngである。
実施例1〜19、比較例1〜5、並びに参考例3及び4の評価には、ラインヘッドであるヘッド1〜5、7、及び8をそれぞれ搭載した、図2に示す構成のインクジェット記録装置を利用した。ヘッドはインクジェット記録装置に固定されている。このインクジェット記録装置は、ヘッドと記録媒体との1回の相対走査により画像を記録する装置である。調製した各インクをそれぞれインク収容部に充填した後、ポンプを使用してヘッドへと送液した。この装置を使用し、1/600インチ×1/600インチの単位領域にインク滴を20ng付与する条件で、8inch/secの速度で記録媒体を搬送し、所定サイズのベタ画像を記録した。
ラインヘッド長尺方向(シリアルヘッドの場合は記録ヘッドの走査方向)18cm×紙送り方向2cmのベタ画像を記録した。記録終了後、30秒経過時における記録媒体の変形(コックリング)を確認し、以下に示す評価基準にしたがってコックリングを評価した。以下に示す評価基準で、「AA」、「A」、及び「B」を許容できるレベル、「C」を許容できないレベルとした。評価結果を表3に示す。
AA:コックリングが発生しなかった。
A:ほとんどコックリングが発生しなかった。
B:ベタ画像のごく一部でコックリングが発生した。
C:ベタ画像の全体にわたってコックリングが発生した。
ラインヘッド長尺方向(シリアルヘッドの場合は記録ヘッドの走査方向)3cm×紙送り方向3cmのベタ画像を記録した後、25℃、相対湿度55%の環境下で記録物を24時間乾燥させた。蛍光分光濃度計(商品名「FD−7」、コニカミノルタジャパン製)を使用し、2°視野、D50光源の条件下でベタ画像の光学濃度を測定し、以下に示す評価基準(括弧内の数値は、カラーインクの場合の評価基準)にしたがって光学濃度を評価した。以下に示す評価基準で、「A」及び「B」を許容できるレベル、「C」を許容できないレベルとした。評価結果を表3に示す。
A:光学濃度が1.2以上(1.0以上)であった。
B:光学濃度が1.0以上1.2未満(0.8以上1.0未満)であった。
C:光学濃度が1.0未満(0.8未満)であった。
Claims (7)
- ラインヘッドを備えたインクジェット記録装置を使用して記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法であって、
前記ラインヘッドは、水性インクを吐出する複数のノズルが所定方向に配列されて構成されたノズル列をそれぞれ有する複数の記録素子基板を備えるとともに、複数の前記記録素子基板は、隣接する前記記録素子基板の端部同士が前記所定方向において重複して重複部を構成するように、前記所定方向に配列されており、
前記重複部を構成する重複部ノズルから吐出される水性インクの平均温度To(℃)と、前記ノズル列の中央部を構成する中央部ノズルから吐出される水性インクの平均温度Tc(℃)とが、Tc>Toの関係を満たし、
前記重複部ノズルからは、隣接する前記記録素子基板に割り振って前記水性インクを吐出することを特徴とするインクジェット記録方法。 - 前記水性インクが、色材として顔料を含有する請求項1に記載のインクジェット記録方法。
- 1ノズル当たりの水性インクの吐出量が、5.9ng/ドット以下である請求項1又は2に記載のインクジェット記録方法。
- 前記水性インクの25℃における動的表面張力が、30mN/m以上である請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
- 前記中央部ノズルから吐出される水性インクの平均温度Tc(℃)が、40℃以上である請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
- 前記重複部ノズルから吐出される水性インクの平均温度To(℃)と、前記中央部ノズルから吐出される水性インクの平均温度Tc(℃)とが、Tc−To≦10の関係を満たす請求項1乃至5のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
- 請求項1乃至6のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法に用いる、ラインヘッドを備えたインクジェット記録装置であって、
前記ラインヘッドは、水性インクを吐出する複数のノズルが所定方向に配列されて構成されたノズル列をそれぞれ有する複数の記録素子基板を備えるとともに、複数の前記記録素子基板は、隣接する前記記録素子基板の端部同士が前記所定方向において重複して重複部を構成するように、前記所定方向に配列されており、
前記重複部を構成する重複部ノズルから吐出される水性インクの平均温度To(℃)と、前記ノズル列の中央部を構成する中央部ノズルから吐出される水性インクの平均温度Tc(℃)とが、Tc>Toの関係を満たすように、前記重複部ノズルから吐出される水性インクの平均温度To(℃)と、前記中央部ノズルから吐出される水性インクの平均温度Tc(℃)との関係を制御する手段をさらに備えることを特徴とするインクジェット記録装置。
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