JP2018186823A - イソフラバノン類の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】乳酸菌を用いて効率的にイソフラバノン類、例えばジヒドロダイゼインを製造することを課題とする。【解決手段】効率的にイソフラバノン類、例えばジヒドロダイゼインを生産することができる乳酸菌を見出した。これにより、ジヒドロダイゼインの前駆体であるダイゼインのみならず、大豆イソフラボンや豆乳を発酵原料とした場合においても、イソフラバノン類、例えばジヒドロダイゼインを効率的に産生することが可能になった。【選択図】なし

Description

本発明は、イソフラバノン類、例えばジヒドロダイゼインの製造方法に関する。
ダイズ、インゲンマメ、ソラマメ、ラッカセイ、ヒヨコマメ、クズ、レッドクローバー、またはカンゾウなどのマメ科植物に多く含まれているイソフラボン類はポリフェノールの分類のひとつであり、イソフラボンを基本骨格とするフラボノイドである。近年の調査により、イソフラボン類は女性ホルモン作用(エストロゲン作用)や抗酸化作用を有し、イソフラボン類を摂取することにより、乳癌、前立腺癌、骨粗しょう症、高コレステロール血症、心疾患、更年期障害などに対して予防効果があることが明らかとなっている(非特許文献1〜6)。
イソフラボン類は、たとえばダイズ内では、糖と共有結合した配糖体である、ダイジン(daidzin)、グリシチン(glycitin)、ゲニスチン(genistin)として存在しており、イソフラボンアグリコンとしてはごく少量存在しているのみである。これらイソフラボン配糖体はさらにアセチル化、マロニル化され、それぞれイソフラボンアセチル化配糖体、イソフラボンマロニル化配糖体としても存在している(表1)。
(表1)ダイズに含まれるイソフラボン類
Figure 2018186823
これらの配糖体は、ヒトや動物の体内に入ると消化酵素または腸内細菌の産生する酵素であるβグルコシダーゼ等の働きにより、それぞれダイゼイン(daidzein)、グリシテイン(glycitein)、ゲニステイン(genistein)となる。その後、腸内細菌の働きにより、ジヒドロダイゼイン、ジヒドロゲニスチン、ジヒドログリシチンといったイソフラバノン類になる。さらに、ジヒドロダイゼイン(dihydrodaidzein)は、O-デスメチルアンゴレンシン(O-desmethylangolensin:O-DMA)又はエクオール(equol)へと酵素的に変換されることが知られている。
エクオールは、これらの代謝産物の中で最もエストロゲン活性が高いことが知られているが(非特許文献7及び8)、中間代謝物であるイソフラバノン類であるジヒドロダイゼインについても、イソフラボンの代謝産物であることからエストロゲン様生理活性を有することが考えられる。また、イソフラバノン類であるジヒドロダイゼインはエクオールの前駆体であることから、ジヒドロダイゼインの効率的な産生は、エクオールの効率的な産生に繋がる。例えばイソフラバノン類であるジヒドロダイゼインからエクオールを生産する微生物としてEggerthella sp. Julong 732が知られている(非特許文献9)。
しかしながらヒトの場合、上記のようにダイゼインを発酵させてイソフラバノン類であるジヒドロダイゼインやエクオールを産生する能力を有する腸内細菌の保有は個人差があり、必然的にイソフラボンの代謝にも個人差がある。例えば、エクオールを産生する腸内細菌の保有率は日本人で約5割、欧米人で約3割程度であることが明らかとなっている(非特許文献10及び11)。そのため、イソフラバノン類であるジヒドロダイゼインやエクオール産生菌を保有しない人は、ダイズ等のマメ科食物を摂取してもジヒドロダイゼインやエクオールを体内で産生することができないという問題点が存在していた。
このような問題を克服するために、生体にとって有用なイソフラバノン類であるジヒドロダイゼインやエクオールを体外的に産生する方法が試みられている。例えば、嫌気性微生物を用いてイソフラボン化合物を発酵させることによりエクオールやジヒドロダイゼインを産生する方法が知られている(特許文献1および2)。
しかしながら、イソフラバノン類であるジヒドロダイゼインやエクオールは、食品、医薬品あるいは化粧品の成分として生体への摂取の用に提供されるところ、当該方法は、ヒトにおいて食経験が非常に少ない微生物を用いることから、斯かる目的には適さないものであった。
また、イソフラバノン類であるジヒドロダイゼインについては、牛の胃から単離されたNiu-O16(Aeroto-Niu-O16)なる微生物を用いてジヒドロダイゼインを生合成したとの報告もある(非特許文献12〜14)。しかしながら、このNiu-O16(Aeroto-Niu-O16)なる微生物は、16S rDNAについての配列相同性検索の結果、各種の牛ルーメン細菌と非常に高い相同性を示すものであり、同様にヒトにおいて食経験が非常に少ない微生物である蓋然性が極めて高い。
WO2007/066655 特開2012−135218
Adlercreutz, H., The Lancet Oncol., 3, 364-373 (2002) Duncan, A. M. et al., Best Pract. Res. Clin. Endocrinol. Metab., 17, 253-271 (2003) Wu, A. H. et al., Carcinogenesis, 23, 1491-1496 (2002) Yamamoto, S. et al., J. Natl. Cancer Inst., 95,906-913 (2003) Onozawa, M. et al., Jpn. J. Cancer Res., 90, 393-398 (1999) Ridges, L. et al., Asia Pac. J. Clin. Nutr., 10, 204-211 (2001) Schmitt, E. et al., Toxicol. In Vitro, 15, 433-439 (2001) Sathyamoorthy, N. and Wang, T. T., Eur. J. Cancer, 33, 2384-2389 (1997) Xiu-Ling, W., et al.,Appl. Environ. Microbiol., 71, 1, 214-219 (2005) Arai, Y. et al., J. Epidemiol., 10, 127-135 (2000) Setchell, K. D. et al., J. Nutr., 133, 1027-1035 (2003) Xiu-Ling, W., et al., J. Biotechnol., 115, 261-269 (2005) Xiu-Ling W., et al., Arch Microbiol 187, 155-160 (2007) Hui Z., et al., Appl Microbiol Biotechnol 92 803-813 (2011)
従って、食品、医薬品あるいは化粧品の成分として生体への摂取の用に提供されるイソフラバノン類、例えばジヒドロダイゼインやエクオールを、ヒトにおいて食経験が豊富な微生物を用いて体外的に産生し得る方法の確立が求められていた。
本発明者らは、食品、医薬品あるいは化粧品の成分として有用なイソフラバノン類であるジヒドロダイゼインを、ヒトにおいて食経験が豊富な微生物を用いて体外的に産生し得る方法について精力的に研究開発を行った結果、豆乳や大豆イソフラボン等から乳酸菌を用いてイソフラバノン類であるジヒドロダイゼインを効率的に生産できることを見出し、本発明を完成することに成功した。
本発明は、より具体的には以下の〔1〕から〔24〕を提供するものである。
〔1〕
次の工程を含む式1で示されるイソフラバノン類の製造方法:
(1)発酵原料を含有する培地で乳酸菌を培養し、発酵原料から式1で示されるイソフラバノン類を発酵させる工程、及び
(2)式1で示されるイソフラバノン類を培地から回収する工程。
Figure 2018186823
〔式中、R1、R2、R3およびR4は、水素原子、水酸基および低級アルコキシ基からなる群から独立して選択される基である。〕
〔2〕
イソフラバノン類がジヒドロダイゼインである〔1〕記載の製造方法。
〔3〕
発酵原料が、イソフラボン類またはマメ科植物である、〔1〕または〔2〕記載の製造方法。
〔4〕
イソフラボン類が、イソフラボンアグリコン、イソフラボン配糖体、イソフラボンアセチル化配糖体、およびイソフラボンマロニル化配糖体からなる群より選択される、〔3〕記載の製造方法。
〔5〕
イソフラボン類がイソフラボンアグリコンである、〔4〕記載の製造方法。
〔6〕
イソフラボン類が、ダイジン、ダイゼイン、アセチルダイジン、およびマロニルダイジンからなる群より選択される、〔4〕記載の製造方法。
〔7〕
イソフラボン類がダイゼインである、〔6〕記載の製造方法。
〔8〕
イソフラボン類が、マメ科植物に由来する、〔3〕〜〔7〕のいずれか一項記載の製造方法。
〔9〕
マメ科植物が、ダイズ、インゲンマメ、ソラマメ、ラッカセイ、ヒヨコマメ、クズ、レッドクローバー、およびカンゾウからなる群より選択される、〔3〕または〔8〕記載の製造方法。
〔10〕
発酵原料が、マメ科植物の加工品である、〔1〕記載の製造方法。
〔11〕
マメ科植物の加工品が、豆乳である、〔10〕記載の製造方法。
〔12〕
乳酸菌が、ラクトバチルス(Lactobacillus)属に分類される、〔1〕〜〔11〕のいずれか記載の製造方法。
〔13〕
乳酸菌が、ラクトバチルス シミリス(Lactobacillus similis)種に分類される、〔12〕記載の製造方法。
〔14〕
乳酸菌が、ラクトバチルス シミリス JCM 2765である、〔13〕記載の製造方法。
〔15〕
培地にデキストリン類を含む、〔1〕〜〔14〕のいずれか記載の製造方法。
〔16〕
デキストリン類が、βシクロデキストリン、βシクロデキストリン誘導体及びγシクロデキストリンからなる群から選択される、〔15〕記載の製造方法。
〔17〕
水素を含む1種類以上の気体からなる気相下で発酵させる、〔1〕〜〔16〕のいずれか記載の製造方法。
〔18〕
気相における水素の質量パーセント濃度が40〜100%である、〔17〕記載の製造方法。
〔19〕
気相における水素の質量パーセント濃度が100%である、〔18〕記載の製造方法。
〔20〕
〔1〕〜〔19〕のいずれか記載の製造方法によって得られるイソフラバノン類。
〔21〕
〔2〕〜〔19〕のいずれか記載の製造方法によって得られるジヒドロダイゼイン。
〔22〕
〔20〕記載のイソフラバノン類または〔21〕記載のジヒドロダイゼインを含む食品もしくは食品添加物。
〔23〕
〔20〕記載のイソフラバノン類または〔21〕記載のジヒドロダイゼインを含む化粧品。
〔24〕
〔20〕記載のイソフラバノン類または〔21〕記載のジヒドロダイゼインを含む医薬品。
イソフラボン類とともに嫌気性微生物を培養することによりエクオールを高い含有量で含む培養物(発酵液)が製造されることは、本発明者らによりすでに開示されている(WO2012/033150)。しかし乳酸菌を用いてイソフラバノン類、例えばジヒドロダイゼインやエクオールを製造する方法は未だ確立されていなかった。また、乳酸菌ではないAeroto-Niu-016を用いた場合、ジヒドロダイゼインの蓄積濃度は約800μM(0.205g/L)が上限であったのに対し(非特許文献11)、本発明では最大0.652g/Lものジヒドロダイゼインを産生することが可能となった(実施例3)。
すなわち、本発明によって、乳酸菌を用いて効率的にイソフラバノン類、例えばジヒドロダイゼインを得る方法が実現した。本発明の方法により得られるイソフラバノン類、例えばジヒドロダイゼインや、当該ジヒドロダイゼインから得られたエクオールを、飲食品又は医薬品として摂取することにより、乳癌、前立腺癌、骨粗しょう症、高コレステロール血症、心疾患、更年期障害等を予防又は治療できることが期待できる。さらに、消費者の食経験の乏しい微生物によって産生されたイソフラバノン類であるジヒドロダイゼインではなく、消費者の食経験が豊富な乳酸菌を用いて得られたイソフラバノン類であるジヒドロダイゼインは、食品に添加した際、消費者に抵抗なく受け入れられることが期待できる。
また当該イソフラバノン類、例えばジヒドロダイゼインを原料としてエクオールを得るだけでなく、イソフラボン類とともに本発明のイソフラバノン類、例えばジヒドロダイゼインを産生する乳酸菌とジヒドロダイゼインからエクオールを生産する乳酸菌を混合培養することによりエクオールを得ることもできる。
イソフラボン類の1つであるダイジンの代謝経路を示す図である。
本発明は、次の工程を含む式1で示されるイソフラバノン類の製造方法に関する。
(1)発酵原料を含有する培地で乳酸菌を培養し、発酵原料から式1で示されるイソフラバノン類を発酵させる工程、及び
(2)式1で示されるイソフラバノン類を培地から回収する工程。
Figure 2018186823
〔式中、R1、R2、R3およびR4は、水素原子、水酸基および低級アルコキシ基からなる群より独立して選択される基である。〕
本明細書における「低級アルコキシ基」とは、「低級アルキル基」が結合したオキシ基を意味する。
本明細書における「アルキル基」とは、骨格中にヘテロ原子又は不飽和炭素−炭素結合を含有しない脂肪族炭化水素から、任意の水素原子を1個除いて誘導される1価の基である。「低級アルキル基」として、具体的には炭素数1〜6個のアルキル基(C1−6アルキル基)が挙げられ、より具体的には、例えば、メチル基、エチル基、1−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソブチル基、1−ペンチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、2−メチル−1−ブチル基、3−メチル−1−ブチル基、2−メチル−2−ブチル基、3−メチル−2−ブチル基、2,2−ジメチル−1−プロピル基、1−へキシル基、2−へキシル基、3−へキシル基、2−メチル−1−ペンチル基、3−メチル−1−ペンチル基、4−メチル−1−ペンチル基、2−メチル−2−ペンチル基、3−メチル−2−ペンチル基、4−メチル−2−ペンチル基、2−メチル−3−ペンチル基、3−メチル−3−ペンチル基、2,3−ジメチル−1−ブチル基、3,3−ジメチル−1−ブチル基、2,2−ジメチル−1−ブチル基、2−エチル−1−ブチル基、3,3−ジメチル−2−ブチル基、あるいは2,3−ジメチル−2−ブチル基等が挙げられる。
低級アルコキシ基として具体的には、炭素数1〜6個のアルコキシ基(C1−6アルコキシ基)が挙げられ、より具体的には例えば、メトキシ基、エトキシ基、1−プロピルオキシ基、2−プロピルオキシ基、2−メチル−1−プロピルオキシ基、2−メチル−2−プロピルオキシ基、1−ブチルオキシ基、2−ブチルオキシ基、1−ペンチルオキシ基、2−ペンチルオキシ基、3−ペンチルオキシ基、2−メチル−1−ブチルオキシ基、3−メチル−1−ブチルオキシ基、2−メチル−2−ブチルオキシ基、3−メチル−2−ブチルオキシ基、2,2−ジメチル−1−プロピルオキシ基、1−へキシルオキシ基、2−へキシルオキシ基、3−へキシルオキシ基、2−メチル−1−ペンチルオキシ基、3−メチル−1−ペンチルオキシ基、4−メチル−1−ペンチルオキシ基、2−メチル−2−ペンチルオキシ基、3−メチル−2−ペンチルオキシ基、4−メチル−2−ペンチルオキシ基、2−メチル−3−ペンチルオキシ基、3−メチル−3−ペンチルオキシ基、2,3−ジメチル−1−ブチルオキシ基、3,3−ジメチル−1−ブチルオキシ基、2,2−ジメチル−1−ブチルオキシ基、2−エチル−1−ブチルオキシ基、3,3−ジメチル−2−ブチルオキシ基、あるいは2,3−ジメチル−2−ブチルオキシ基等が挙げられる。
イソフラバノン類として具体的には、例えば、ジヒドロダイゼイン、ジヒドロゲニスチン、ジヒドログリシチン等を挙げることができる。
本発明の発酵原料として、イソフラボン類を挙げることができる。イソフラボン類は、主にダイズ、インゲンマメ、ソラマメ、ラッカセイ、ヒヨコマメ、クズ、レッドクローバー、またはカンゾウなどのマメ科植物から得ることできる。例えば、ダイズから得られたイソフラボン類は大豆イソフラボン、クズから得られたイソフラボン類はクズイソフラボンなどということができる。本発明におけるイソフラボン類は、配糖体やそのアグリコン、マロニル化及びアセチル化等の任意のこれらの誘導体を含む。
配糖体の例として、ゲニスチン、グリシチン、ダイジン、プエラリンなどを挙げることができるがこれらに限定されない。
また、アグリコンの例として、ダイゼイン、6-ヒドロキシダイゼイン、ジヒドロキシダイゼイン、ゲニステイン、グリシテイン、ビオカニンA、フォルモネチン、及びクメストロールなどを挙げることができるがこれらに限定されない。
イソフラボン類はそのままでも、また、β-グルコシダーゼ等の酵素あるいは微生物を作用させ、イソフラボンアグリコンに変換したものでも使用することができる。イソフラボンアグリコンは、例えば、大豆胚芽に麹菌を加え発酵させ、得られた発酵大豆胚芽から抽出することによって得ることができる。
本発明においては、培地に含まれるイソフラボン類は必ずしも精製された純品である必要はない。培地から回収されるイソフラバノン類、例えばジヒドロダイゼインの使用目的や用途などに応じて、イソフラボン類の種類、形態、精製度等を任意に選択することができる。
例えば、培地に含まれる発酵原料は、ダイズ、インゲンマメ、ソラマメ、ラッカセイ、ヒヨコマメ、クズ、レッドクローバー、またはカンゾウなどのマメ科植物自体をすり潰した状態、もしくは浸漬した状態など、すなわち加工品の状態で用いることもできる。ダイズであれば、豆乳の状態においても用いることができる。
化粧品向けのイソフラバノン類、例えばジヒドロダイゼインを製造する場合には、例えば、ダイズやクズ等から天然抽出し、精製された高純度品であるイソブラボン類(例えば、ダイゼイン)を使用することが好ましいが、有機合成法により合成されたものでも使用できる。
一方、食品向けのイソフラバノン類、例えばジヒドロダイゼインを製造する場合には、例えば、ダイズやクズ等から天然抽出した高精製品であって、イソフラボンアグリコン(例えば、ダイゼイン)を使用することが好ましい。
更に、飼料向けのイソフラバノン類、例えばジヒドロダイゼインを製造する場合には、安価に製造することが重要であるために、イソフラボン類として、例えば大豆胚軸等を使用することが好ましい。
市販されているイソフラボン類としては、例えば、フジッコ社製イソフラボンP40、P10、タマ生化学社製イソフラボン80、イソフラボン40などを用いることができるがこれらに限定されない。更に、イソフラボンアグリコンとして例えば「AglyMaX-30」 (ニチモウバイオテックス社製)、イソフラボンアグリコン(キッコーマン社製)などを用いることができるがこれに限定されない。
培養するイソフラボン類の量や濃度は特に限定されない。培養液の量や製造しようとするイソフラバノン類、例えばジヒドロダイゼインの量に応じて適宜設定することができる。
本発明においては、上述のイソフラボン類を含む培地において、乳酸菌を培養する。本発明においてジヒドロダイゼインの製造に用いられる乳酸菌は、20℃〜42℃、好ましくは30℃〜40℃の温度範囲でジヒドロダイゼインの生産能を有する乳酸菌である限り特に限定されない。
また、以下の群から選択される属に分類される乳酸菌をイソフラバノン類、例えばジヒドロダイゼインの生産能を有するものとして例示することができる。
・ラクトバチルス(Lactobacillus)属
・エンテロコッカス(Enterococcus)属
・ラクトコッカス(Lactococcus)属
・ペディオコッカス(Pediococcus)属
・リューコノストック(Leuconostoc)属
・オエノコッカス(Oenococcus)属
・ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属
したがって、これらの属に分類された微生物から選択され、イソフラボン類を利用してイソフラバノン類、例えばジヒドロダイゼインを生成する微生物は、本発明における好ましい微生物である。中でも、ラクトバチルス(Lactobacillus)属に分類される菌又はこれらの類縁菌は、イソフラバノン類、例えばジヒドロダイゼインの生産能を有するものとして好ましい。
より具体的には、たとえば以下の乳酸菌を、本発明におけるイソフラバノン類、例えばジヒドロダイゼインの産生能を有する乳酸菌として利用することができる。
・ラクトバチルス シミリス(Lactobacillus similis)種
・ラクトバチルス カゼイ(Lactobacillus casei)種
・ラクトバチルス プランタラム(Lactobacillus plantarum)種
・ラクトバチルス アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)種
・ラクトバチルス サリバリウス(Lactobacillus salivarius)種
・ラクトバチルス ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus)種
・ラクトバチルス ファーメンツム(Lactobacillus fermentum)種
・ラクトバチルス ブレビス(Lactobacillus brevis)種
・ラクトバチルス ブッフネル(Lactobacillus buchnerii)種
・ラクトバチルス セロビオズス(Lactobacillus cellobisous)種
特に以下に記載する乳酸菌またはこの菌と同様の種としての性質を有する類縁の菌をより好ましい乳酸菌として、挙げることができる。
・ラクトバチルス シミリス(Lactobacillus similis)JCM 2765株
上記の乳酸菌は、その寄託番号に示された寄託機関から入手することができる。寄託番号は、当該乳酸菌が、次の寄託機関に寄託されていることを示す。

独立行政法人 理化学研究所 バイオリソースセンター 微生物材料開発室(JCM)
http://www.jcm.riken.jp/JCM/Depositing_J.shtml
本発明においては、イソフラバノン類、例えばジヒドロダイゼインの生産能を有する乳酸菌は、イソフラバノン類、例えばジヒドロダイゼインの生産に適した条件でイソフラボン類等の発酵原料を培地中に含有させて培養される。本発明におけるイソフラバノン類、例えばジヒドロダイゼインの生産に適した条件とは、ジヒドロダイゼインの生成活性を持つ乳酸菌の生存と活動が維持される条件をいう。より具体的には、乳酸菌の生存が可能な気相条件が維持され、乳酸菌の活性と増殖を支持するための栄養素が与えられることをいう。乳酸菌の生存に適した種々の培地組成が公知である。したがって、先に示したイソフラバノン類、例えばジヒドロダイゼインの生産能を有する乳酸菌について、当業者は、適切な培地組成を選択することができる。たとえば、Difco社製のMRS培地、GYP培地、GAM培地等を使用することができるがこれらに限定されない。
たとえば、本発明で用いられる培地には、水溶性の有機物を炭素源として加えることができる。水溶性の有機物として、以下の化合物を挙げることができる。
ソルボース、フラクトース、グルコース、ブドウ糖などの糖類
メタノールなどのアルコール類
吉草酸、酪酸、プロピオン酸、酢酸、ギ酸など有機酸類
炭素源としての培地に加える有機物の濃度は、効率的に培地中の乳酸菌を発育させるために適宜調節することができる。一般的には、0.1〜10wt/vol%の範囲から添加量を選択することによって、過不足を避けることができる。
上記の炭素源に加えて、培地には、窒素源が加えられる。本発明において、窒素源としては通常の発酵に用いうる各種の窒素化合物を用いることができる。好ましい無機窒素源は、アンモニウム塩、及び硝酸塩である。より好ましい無機窒素源は、硫安、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、リン酸水素アンモニウム、クエン酸トリアンモニウム、硝酸カリウム及び硝酸ソーダである。
一方、好ましい有機窒素源はアミノ酸類、酵母エキス、ペプトン類(例えばポリペプトンNなど)、肉エキス(例えばラブ−レムコ末、ブイヨンなど)、肝臓エキス、消化血清末などである。より好ましい有機窒素源はアルギニン、システイン、シトルリン、リジン、酵母エキス、ペプトン類(例えばポリペプトンNなど)である。
さらに、炭素源や窒素源に加えて、乳酸菌の培養に適した他の有機物あるいは無機物を培地に加えることもできる。たとえば、ビタミンなどの補因子や各種の塩類等の無機化合物を培地に加えることによって、乳酸菌の増殖や活性を増強できる場合もある。たとえば無機化合物、ビタミン類、動植物由来の微生物増殖補助因子として以下のものを挙げることができる。
無機化合物 ビタミン類
リン酸二水素カリウム ビオチン
硫酸マグネシウム 葉酸
硫酸マンガン ピリドキシン
塩化ナトリウム チアミン
塩化コバルト リボフラビン
塩化カルシウム ニコチン酸
硫酸亜鉛 パントテン酸
硫酸銅 ビタミンB12
明ばん チオオクト酸
モリブデン酸ソーダ p-アミノ安息香酸
塩化カリウム
ホウ酸等
塩化ニッケル
タングステン酸ナトリウム
セレン酸ナトリウム
硫酸第一鉄アンモニウム
酢酸ナトリウム三水和物
硫酸マグネシウム七水和物
硫酸マンガン四水和物
これらの無機化合物やビタミン類、あるいは増殖補助因子を添加して培養液を製造する方法は公知である。培地は、液体、半固体、あるいは固体とすることができる。本発明において、好ましい培地の形態は、液体培地である。
本発明の培地は、デキストリン類を含むことができる。デキストリン類を含む培地で乳酸菌を培養すれば、培養後に改めて培養物にデキストリン類を接触させることなく、イソフラバノン類、例えばジヒドロダイゼインおよびデキストリン類を含む液を調製することができる。
デキストリン類の培地への添加は、乳酸菌の培養前および培養中に行うことができる。
デキストリン類は固形状のものであっても、溶媒中に溶解したものであってもよい。デキストリン類の量は、例えば0.1〜20重量%、好ましくは0.5〜15重量%、より好ましくは1〜10重量%とすることができるがこれらに限定されない。
本発明の方法において、デキストリン類は特に限定されるものではないが、β−シクロデキストリン(シクロヘプタミロード)、β−シクロデキストリン誘導体またはγ−シクロデキストリンなどを例示することができる。β−シクロデキストリン誘導体としては以下のものを例示することができるがこれらに限定されない。
・グルコシル−β−シクロデキストリン(6-O-α-D-Glucosy-β-cyclodextrin)
・マルトシル−β−シクロデキストリン(6-O-α-D-Maltosy-β-cyclodextrin)
・ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(Hydroxypropy−β−cyclodextrin)
・メチル−β−シクロデキストリン(Methyl−β−cyclodextrin)
・ポリ−β−シクロデキストリン(Poly−β−cyclodextrin)
培地中へのデキストリンの添加量は、例えば培地中のイソフラボン類の0.5モル〜5モル倍、好ましくは1.0モル〜3モル倍とすることができるがこれらに限定されない。
本発明において、乳酸菌は、公知の培養方法にしたがって培養することができる。工業的な製造には、培地や基質ガスを連続的に供給することができ、かつ培養物を回収するための機構を備えた連続培養システム (continuous fermentation system)が好適である。
培養器は通常用いられる培養槽がそのまま利用できる。乳酸菌の培養にも利用することができる培養タンクが市販されている。培養槽内に混入する酸素を、窒素などの不活性気体あるいは基質ガスなどで置換することにより、嫌気的な雰囲気を作ることもできる。
本発明においては、培養槽に付加的な機能を与えることができる。たとえば、通常使用される撹はん混合槽のほか、気泡塔型、ドラフトチューブ型の培養槽も利用できる。液体培地に吹き込まれる混合気体によって微生物は遊離分散され、微生物と培地を十分に接触させることができる。また、バイオトリックリングフィルター(biotrickling filter)のように通気性の高いスラグ、その他セラミック系の無機充てん物、あるいはポリプロピレン等の有機合成物質の充てん層に、水分を滴らせながら微生物を生息させ、そこにガスを通気しながら培養することもできる。さらに、使用する微生物は常法によりカラギーナンゲル、アルギン酸ゲル、アクリルアミドゲル、キチン、セルロース、寒天などに固定化して用いることもできる。
培養槽の形状によっては、培地を十分に撹はんするため、撹はん機等を利用することもできる。培養槽内の培養物を攪拌することによって、培地成分や基質ガスを嫌気性微生物に接触させる機会を増やして、イソフラバノン類、例えばジヒドロダイゼインの生成効率を最適化することができる。また基質ガスをナノバブルとして供給することもできる。
微生物の十分な生育のため、培養物のpHは5.0〜8.0が好ましく、6.0〜7.5がより好ましく、6.5〜7.5がさらに好ましい。また、イソフラバノン類、例えばジヒドロダイゼインの回収量を増加させるため、培養槽の温度は特に制限されるものではないが、好ましくは30℃〜40℃を、さらに好ましくは33℃から38℃の温度を挙げることができる。
発酵時間は、イソフラバノン類、例えばジヒドロダイゼインの生成量、イソフラボン類の残存量等に応じて適宜設定できる。例えば8〜180時間、好ましくは12〜120時間、特に好ましくは16〜96時間を例示することができるがこれらに限定されない。
効率よくイソフラバノン類、例えばジヒドロダイゼインを回収するため、培地を連続的に供給することもできる。培養槽に供給される新鮮な培地の量は、培養槽内の培養物における希釈率が時間当たり0.04〜2/hrが好ましい。より好ましい希釈率は0.08〜1/hrである。
本発明においては、乳酸菌の培養を、水素を含む1種類以上の気体からなる気相下で行うことが好ましい。水素濃度は特に限定されない。
本発明においては、気相を構成する気体の組み合わせは特に制限されるものではなく、水素の他に二酸化炭素、窒素等から選択される1種類以上の気体を構成成分として用いることが可能である。また、効率よくイソフラバノン類、例えばジヒドロダイゼインを回収するためには、気相を構成する混合気体の培養槽への通気量は0.01〜2.0 V/V/Mガス量/液量/分であることが好ましい。
本発明において、嫌気性微生物を培養する際の加圧条件は、当該微生物が生育できる条件であれば特に限定されるものではない。好ましい加圧条件としては、0.02〜0.2MPaの範囲を挙げることができるがこれに限定されない。
このような方法によって得られる培養精製液には、高濃度のイソフラバノン類、例えばジヒドロダイゼインが含まれる。培養液中のイソフラバノン類、例えばジヒドロダイゼインの含量は、使用する乳酸菌や発酵条件等によって異なるが、通常、培養液1.0リットル当たり少なくとも0.2〜10g、好ましくは0.4〜6g、より好ましくは0.6〜4g含まれる。
微生物がイソフラバノン類、例えばジヒドロダイゼインを生成することは、培養物中のダイゼイン、ジヒドロダイゼインなどを定量することにより確認することができる。これらの定量は、当業者であれば、例えばWO2012/033150、特開2012-135217、特開2012-135218、特開2012-135219などの記載に基づき行うことができる。これらの定量方法の一例を以下に示す。
例えば、培養液に酢酸エチルを加えて、激しく攪拌した後遠心し、酢酸エチル層を取り出す。必要に応じて同培養液に同様の操作を数回行い、それら酢酸エチル層を合わせてジヒドロダイゼイン抽出液を得ることができる。この抽出液をエバポレーターで減圧下に濃縮、乾固し、メタノールに溶解させる。これをポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜などの膜を使用して濾過し、不溶物を除去したものを高速液体クロマトグラフィー測定サンプルとすることができる。高速液体クロマトグラフィーの条件は例えば以下のものを例示することができるがこれに限定されない。
[高速液体クロマトグラフィー条件]
カラム:Synergi POLAR-RP 2 mm×150 mm(Phenomenex)
移動相:MeOH/水[45:55,v/v]
温度:40℃
流速:0.2 mL/min
検出:280 nm
保持時間:ジヒドロダイゼインが13.8分、ダイゼインが19.6分、グリシテインが22.5分、エクオールが25.6分、ゲニステインが35.0分。
本発明においては、培養により得られたイソフラバノン類、例えばジヒドロダイゼインを含む培養液を、ろ過あるいは遠心分離などにより固液分離し、液相を回収することにより、イソフラボン類などを原料として乳酸菌を用いて調製されるジヒドロダイゼインを取得することができる。一固液分離の方法としては、例えばろ紙あるいは限外ろ過膜等によるろ過、スパーデカンターなど遠心分離機が挙げられる。
本発明の製造方法により得られたイソフラバノン類、例えばジヒドロダイゼインは、必要に応じて加熱乾燥処理あるいは噴霧乾燥処理、凍結乾燥処理により固形状にして使用することができる。加熱乾燥処理あるいは噴霧乾燥処理は、例えばスプレードライ装置を使用して行うことができる。凍結乾燥処理は凍結乾燥装置を使用して行うことができる。加熱乾燥処理もしくは噴霧乾燥処理もしくは凍結乾燥処理された発酵培養物は、必要に応じて粉末化処理に供してもよい。
このような方法によって得られる加熱乾燥処理もしくは噴霧乾燥処理、もしくは凍結乾燥処理されたイソフラバノン類、例えばジヒドロダイゼインは、乾燥粉末中、ジヒドロダイゼインを1〜50重量%含むことができる。例えば、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、20%、30%、40%、50%から選択される2点の質量パーセント濃度を下限(〜以上、又は、〜より高い)及び上限(〜以下、又は、〜より低い)とする濃度範囲により示される質量パーセント濃度であることが好ましい。
本発明の製造方法によって得られたイソフラバノン類、例えばジヒドロダイゼインは、医薬品、飲食物、化粧品等の素材として提供することができる。
本発明の製造方法によって得られたイソフラバノン類、例えばジヒドロダイゼインを医薬品として提供する場合、その剤型は、予防または治療しようとする疾患や医薬品の使用形態、投与経路等に応じて選択することができる。例えば錠剤、被覆錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、注射剤、坐剤、浸剤、煎剤、チンキ剤等が挙げられる。これらの各種製剤は、常法に従って主薬に対して必要に応じて充填剤、増量剤、賦形剤、結合剤、保湿剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、着色剤、矯味矯臭剤、溶解補助剤、懸濁剤、コーティング剤などの医薬の製剤技術分野において通常使用しうる既知の補助剤を用いて製剤化することができる。また、この医薬製剤中に着色剤、保存剤、香料、風味剤、甘味剤等や他の医薬品を含有させてもよい。
本発明の製造方法によって得られたイソフラバノン類、例えばジヒドロダイゼインは、乳癌、前立腺癌、骨粗しょう症、心疾患、更年期障害の予防や治療のために使用することができる。また、エクオールを工業的に生産するための原料としても使用することができる。
本発明の製造方法によって得られたイソフラバノン類、例えばジヒドロダイゼインを飲食物として提供する場合、一般の食品の他、特定保健用食品、栄養補助食品、機能性食品、病者用食品、食品添加物等として使用できる。食品の形態としては、ジヒドロダイゼインを含む清涼飲料、ミルク、プリン、ゼリー、飴、ガム、グミ、ヨーグルト、チョコレート、スープ、クッキー、スナック菓子、アイスクリーム、アイスキャンデー、パン、ケーキ、シュークリーム、ハム、ミートソース、カレー、シチュー、チーズ、バター、ドレッシング等を例示することができる。
本発明の製造方法によって得られたイソフラバノン類、例えばジヒドロダイゼインには、水、タンパク質、糖質、脂質、ビタミン類、ミネラル類、有機酸、有機塩基、果汁、フレーバー類等を主成分として使用することができる。タンパク質としては、例えば全脂粉乳、脱脂粉乳、部分脱脂粉乳、カゼイン、大豆タンパク質、鶏卵タンパク質、肉タンパク質等の動植物性タンパク質、及びこれら加水分解物、バターなどが挙げられる。糖質としては糖類、加工澱粉(テキストリンのほか、可溶性澱粉、ブリティッシュスターチ、酸化澱粉、澱粉エステル、澱粉エーテル等)、食物繊維などが挙げられる。脂質としては、例えば、ラード、魚油等、これらの分別油、水素添加油、エステル交換油等の動物性油脂、パーム油、サフラワー油、コーン油、ナタネ油、ヤシ油、これらの分別油、水素添加油、エステル交換油等の植物性油脂などが挙げられる。ビタミン類としては、例えば、ビタミンA、カロチン類、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンD群、ビタミンE、ビタミンK群、ビタミンP、ビタミンQ、ナイアシン、ニコチン酸、パントテン酸、ビオチン、イノシトール、コリン、葉酸などが挙げられ、ミネラル類としては、例えば、カルシウム、カリウム、マグネシウム、ナトリウム、銅、鉄、マンガン、亜鉛、セレン、乳清ミネラルなどが挙げられる。有機酸としては、例えば、リンゴ酸、クエン酸、乳酸、酒石酸などが挙げられる。これらの成分は、2種以上を組み合わせて使用することができ、合成品及び/又はこれらを多く含む食品を用いてもよい。
これらの食品中のジヒドロダイゼインの配合割合は、食品の種類、イソフラバノン類、例えばジヒドロダイゼインの含量、摂取対象者の年齢や性別、期待される効果等に応じて、適宜設定することができる。一例として、食品100gに対して0.01〜100g、好ましくは0.1〜10g、更に好ましくは0.5〜5gとなる割合を挙げることができるがこれらに限定されない。イソフラバノン類、例えばジヒドロダイゼインを含む組成物を含む食品の一日当たりの摂取量については、組成物中のジヒドロダイゼインの含量、摂取者の年齢や体重、摂取回数等によって異なるが、例えば成人1日当たり、0.1〜10gに相当する組成物の量を挙げることができる。
また本発明の製造方法によって得られたイソフラバノン類、例えばジヒドロダイゼインを化粧品として提供する場合、当該組成物等を水溶液、ローション、スプレー液、懸濁液および乳化液などの液状、粉末、顆粒およびブロック状などの固体状、クリームおよびペーストなどの半固体状、ゲル状等の各種所望の形態の化粧品に調製することができる。このような化粧品は、洗顔料、乳液、クリーム、ジェル、エッセンス(美容液)、パック・マスク等の基礎化粧品、ファンデーション、口紅等のメーキャップ化粧品、口腔化粧品、芳香化粧品、毛髪化粧品、ボディ化粧品等の各種化粧料として有用である。本発明により得られるジヒドロダイゼインを含む化粧品は、美白用化粧料、ニキピ改善用化粧料として使用される。
本発明の製造方法によって得られたジヒドロダイゼインは、必要に応じて、瓶、袋、缶、スプレー缶、噴霧容器、箱、パック等の適宜の容器に封入することができる。
本発明の製造方法によって得られたジイソフラバノン類、例えばヒドロダイゼインを含有する化粧品において、化粧品中の組成物の配合割合は特に限定されない。該化粧品の種類、ジヒドロダイゼインの含量等に応じて、適宜設定することができるが、一例を示せば、化粧料100gに対して、組成物(乾燥重量換算)が総量で0.01〜10g、好ましくは0.1〜5gとなる割合を挙げることができるがこれらに限定されない。
なお本明細書において引用された全ての先行技術文献は、参照として本明細書に組み入れられる。
本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明の範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
MRS培地(Difco社製)10mLを分注したφ18mm試験管にブチルゴム栓、プラスチックキャップをし、気相を窒素置換した後、121℃、15分間オートクレーブ中、加熱滅菌した。ここに、Lactobacillus属細菌183株について、グリセロールストック溶液0.4mLを植菌し、35℃、24時間、静置で前培養を行った。
27.5g/Lのβ-シクロデキストリンを含む1.7倍濃度のMRS培地(Difco社製)6mLとイソフラボン濃度27.5g/Lの酵素処理溶液4mLを分注したφ18mm試験管にブチルゴム栓、プラスチックキャップをし、気相を窒素置換した後、121℃、15分間オートクレーブ中、加熱滅菌した。ここに、上記培養液1mLを植菌し、無菌的に気相を水素置換した後、35℃、96時間、本培養を行った。イソフラボンは予め市販β-グルコシダーゼ酵素製剤を用いて配糖体を加水分解し、アグリコン化したものを使用した。96時間培養後の培養液を20μLとり、70%エタノール水溶液を用いて適宜、混合、希釈した後、遠心分離によって得た上清中のジヒドロダイゼインを以下のHPLC分析条件で定量した。その結果、Lactobacillus similis JCM 2765株において、イソフラボン中のダイゼインがジヒドロダイゼインに変換され、産生したジヒドロダイゼインは620mg/Lであった。
HPLC分析条件
カラム:Synergi POLAR-RP 2 mm×150 mm(Phenomenex)
移動相:MeOH/水 [45:55, v/v]
温度:40℃
流速:0.2 mL/min
検出:280 nm
本培養において、β-シクロデキストリンを含む1.7倍濃度のMRS培地(Difco社製)6mLと10g/Lダイゼイン溶液4mLを用いた以外は実施例1と同様の方法でLactobacillus similis JCM 2765株の培養を行い、ジヒドロダイゼインの産生を確認した。その結果、96時間の培養で産生したジヒドロダイゼインは120mg/Lであった。
本培養において、β-シクロデキストリンを含む1.7倍濃度のMRS培地(Difco社製)6mLとイソフラボン溶液4mLを用いて実施例1と同様の方法でLactobacillus similis JCM 2765株の培養を行い、ジヒドロダイゼインの産生を確認した。イソフラボンは予め市販β-グルコシダーゼ酵素製剤を用いて配糖体を加水分解してアグリコン化処理したものと無処理のものを使用した。その結果、96時間の培養で、アグリコン化処理したものでは652mg/Lのジヒドロダイゼインが産生し、無処理のものにおいても154mg/Lのジヒドロダイゼインが産生した。
本培養において、β-シクロデキストリンを含む1.7倍濃度のMRS培地(Difco社製)6mLと無調製有機豆乳(大豆イソフラボン濃度150mg/L)4mLを用いた以外は実施例1と同様の方法でLactobacillus similis JCM 2765株の培養を行い、ジヒドロダイゼインの産生を確認した。豆乳中のイソフラボンは予め市販β-グルコシダーゼ酵素製剤を用いて配糖体を加水分解してアグリコン化処理したものと無処理のものを使用した。その結果、96時間の培養で、アグリコン化処理したものでは68.5mg/Lのジヒドロダイゼインが産生し、無処理のものにおいても1.2mg/Lのジヒドロダイゼインが産生した。
(表2)
Figure 2018186823
本発明により、乳酸菌を用いて効率的にイソフラバノン類、例えばジヒドロダイゼインを得る方法が提供された。本発明の方法により得られるイソフラバノン類、例えばジヒドロダイゼインや、当該ジヒドロダイゼインから得られたエクオールを、飲食品又は医薬品として摂取することにより、乳癌、前立腺癌、骨粗しょう症、高コレステロール血症、心疾患、更年期障害等を予防又は治療できることが期待できる。さらに、消費者の食経験が豊富な乳酸菌を用いて得られたイソフラバノン類は、食経験の乏しい微生物によって産生されたイソフラバノン類よりも、食品に添加した際、消費者に抵抗なく受け入れられることが期待できる。

Claims (24)

  1. 次の工程を含む式1で示されるイソフラバノン類の製造方法:
    (1)発酵原料を含有する培地で乳酸菌を培養し、発酵原料から式1で示されるイソフラバノン類を発酵させる工程、及び
    (2)式1で示されるイソフラバノン類を培地から回収する工程。
    Figure 2018186823
    〔式中R1、R2、R3およびR4は、水素原子、水酸基および低級アルコキシ基からなる群から独立して選択される基である。〕
  2. イソフラバノン類がジヒドロダイゼインである請求項1記載の製造方法。
  3. 発酵原料が、イソフラボン類またはマメ科植物である、請求項1または2記載の製造方法。
  4. イソフラボン類が、イソフラボンアグリコン、イソフラボン配糖体、イソフラボンアセチル化配糖体、およびイソフラボンマロニル化配糖体からなる群より選択される、請求項3記載の製造方法。
  5. イソフラボン類がイソフラボンアグリコンである、請求項4記載の製造方法。
  6. イソフラボン類が、ダイジン、ダイゼイン、アセチルダイジン、およびマロニルダイジンからなる群より選択される、請求項4記載の製造方法。
  7. イソフラボン類がダイゼインである、請求項6記載の製造方法。
  8. イソフラボン類が、マメ科植物に由来する、請求項3〜7のいずれか一項記載の製造方法。
  9. マメ科植物が、ダイズ、インゲンマメ、ソラマメ、ラッカセイ、ヒヨコマメ、クズ、レッドクローバー、およびカンゾウからなる群より選択される、請求項3または8記載の製造方法。
  10. 発酵原料が、マメ科植物の加工品である、請求項1記載の製造方法。
  11. マメ科植物の加工品が、豆乳である、請求項10記載の製造方法。
  12. 乳酸菌が、ラクトバチルス(Lactobacillus)属に分類される、請求項1〜11のいずれか一項記載の製造方法。
  13. 乳酸菌が、ラクトバチルス シミリス(Lactobacillus similis)種に分類される、請求項12記載の製造方法。
  14. 乳酸菌が、ラクトバチルス シミリス JCM 2765である、請求項13記載の製造方法。
  15. 培地にデキストリン類を含む、請求項1〜14のいずれか一項記載の製造方法。
  16. デキストリン類が、βシクロデキストリン、βシクロデキストリン誘導体及びγシクロデキストリンからなる群から選択される、請求項15記載の製造方法。
  17. 水素を含む1種類以上の気体からなる気相下で発酵させる、請求項1〜16のいずれか一項記載の製造方法。
  18. 気相における水素の質量パーセント濃度が40〜100%である、請求項17記載の製造方法。
  19. 気相における水素の質量パーセント濃度が100%である、請求項18記載の製造方法。
  20. 請求項1〜19のいずれか一項記載の製造方法によって得られるイソフラバノン類。
  21. 請求項2〜19のいずれか一項記載の製造方法によって得られるジヒドロダイゼイン。
  22. 請求項20記載のイソフラバノン類または請求項21記載のジヒドロダイゼインを含む食品もしくは食品添加物。
  23. 請求項20記載のイソフラバノン類または請求項21記載のジヒドロダイゼインを含む化粧品。
  24. 請求項20記載のイソフラバノン類または請求項21記載のジヒドロダイゼインを含む医薬品。
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