JP2018184646A - 成膜装置及び成膜方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】金属製ターゲットと反応性ガスの組合せによる、反応性スパッタ法を用いて基板上に薄膜を形成する空間を備え、高速成膜を可能とする成膜装置を提供する。【解決手段】本発明は、金属ターゲットと反応性ガスの組合せにより、反応性スパッタ法を用いて基板上に薄膜を形成する空間を備えた成膜装置であって、前記空間内において、前記基板と前記金属ターゲットとは所定の距離をもって、互いに対向する位置に配置されており、前記金属ターゲットに印加する磁場強度の調整手段を備え、該調整手段は、該磁場強度[G]を460以上1000以下の範囲に設定する。【選択図】図1

Description

本発明は、金属製ターゲットと反応性ガスの組合せによる、反応性スパッタ法を用いて基板上に薄膜を形成する空間を備えた成膜装置及び成膜方法に係る。より詳細には、高速成膜を可能とする反応性スパッタ装置に関する。
反応性スパッタ法とは、金属製ターゲットを用い、ターゲット表面や、ターゲットと基板との間の空間(T/S空間とも呼ぶ)で、反応性ガスとして導入された酸素や窒素と、ターゲットから飛翔したスパッタ粒子とを反応させ、基板上に酸化膜や窒化膜、酸窒化膜を形成する成膜技術である。
反応性スパッタ法によれば、基板上に形成する堆積膜が導電性に限定されず、絶縁性であっても、金属製ターゲットを用いれば、ターゲットが導電性であるため、DCあるいはAC、何れの電源(図6ではP/Sと表示)を用いてもスパッタすることが可能である。ただし、ターゲットが絶縁性の場合は、RF電源が必要となる[図6]。
反応性スパッタ法において、RF電源を用いて成膜する場合、反応性には優れるが、成膜速度が遅いため、量産性に劣ることが課題であった。
特許文献1には、PEM法により、NbメタルターゲットとArガスと酸素ガスを用いた場合に、反応性ガス(酸素ガス)の導入量を調整して、所望のプラズマ発光強度に保つことにより、成膜速度を向上させることができる製造方法が開示されている。特許文献1では、DC電力でスパッタ成膜(DCスパッタ)を行ったことが記載されている(段落0022)。
しかしながら、DCスパッタ(DC Sputter)は、直流電流(Direct Current)を用い、グランド電位にある防着板やチムニー等がアノードとして機能する[図10]。スパッタ時間(成膜時間)が長引くと、防着板やチムニーの外面上に、たとえばSiOxなどの絶縁物が堆積し、アノードとしての機能を果たさなくなり(アノード消失あり)、放電が不安定になる傾向がある。ゆえに、DCスパッタは、反応性スパッタには不向きであった。
近年、反応性に優れた酸化膜や窒化膜、酸窒化膜を、高速成膜することが可能な成膜装置の開発が期待されていた。本発明者らは、特許文献1を改良し、スパッタ時間(成膜時間)が長引いても、放電の安定状態を保つことが可能であり、かつ、反応性に優れた被膜が、高速にて形成できる製造装置および製造方法を鋭意検討した結果、本発明の開発に成功した。
特開2006−28624号公報
本発明は、このような従来の実情に鑑みて考案されたものであり、金属製ターゲットと反応性ガスの組合せによる、反応性スパッタ法を用いて基板上に薄膜を形成する空間を備え、高速成膜を可能とする成膜装置及び成膜方法を提供することを目的とする。
本発明の請求項1に記載の成膜装置は、金属ターゲットと反応性ガスの組合せにより、反応性スパッタ法を用いて基板上に薄膜を形成する空間を備えた成膜装置であって、前記空間内において、前記基板と前記金属ターゲットとは所定の距離をもって、互いに対向する位置に配置されており、前記金属ターゲットに印加する磁場強度の調整手段を備え、該調整手段は、該磁場強度[G]を460以上1000以下の範囲に設定する、ことを特徴とする。
本発明の請求項2に記載の成膜装置は、請求項1において、プラズマエミッションモニタリング(PEM:Plasma Emission Monitoring)装置を用い、前記基板と前記金属ターゲットの間に発生させたプラズマ発光強度(PEM Intensity)を測定し、該プラズマ発光強度の変動幅に基づき、成膜速度の一様性を監視するシステムを備える、ことを特徴とする。
本発明の請求項3に記載の成膜装置は、請求項1又は2において、前記金属ターゲットが円筒型ターゲットであって、プラズマエミッションモニタリング(PEM)装置を用い、前記基板と前記金属ターゲットの間に発生させたプラズマ発光強度(PEM Intensity)を測定し、該プラズマ発光強度の変動幅に基づき、円筒型ターゲットの回転速度を監視するシステムを備える、ことを特徴とする。
本発明の請求項4に記載の成膜方法は、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の成膜装置を用い、金属ターゲットと反応性ガスを母材として、酸化膜、窒化膜、酸窒化膜から選択される薄膜を、遷移領域(遷移モード)で形成する、ことを特徴とする。
本発明の請求項5に記載の成膜方法は、請求項4において、前記金属ターゲットが円筒型ターゲットであって、該円筒型ターゲットの回転速度[rpm]を20以上50以下の範囲に制御して、前記薄膜を形成する、ことを特徴とする。
本発明の請求項6に記載の成膜方法は、請求項4において、プラズマエミッションモニタリング(PEM)装置により得られたプラズマ発光強度に基づき、前記反応性ガスの導入量を制御して、所望の組成を備える前記薄膜を形成する、ことを特徴とする。
請求項1に記載の発明(成膜装置)は、金属ターゲットと反応性ガスの組合せにより、反応性スパッタ法を用いて基板上に薄膜を形成する空間を備えている。この空間内において、前記基板と前記金属ターゲットとは所定の距離をもって、互いに対向する位置に配置されており、前記金属ターゲットに印加する磁場強度の調整手段を備えている。このような構成において、本発明に係る成膜装置は、磁場強度の調整手段が、該磁場強度[G]を460以上1000以下の範囲に設定する。本発明の成膜装置は、反応性スパッタ法において、磁場強度[G]を特定の範囲(460以上1000以下)とすることにより、高速成膜を実現することが可能になった。ゆえに、本発明は、放電の安定状態を維持しながら、高速にて成膜することが可能な、量産性に優れた、成膜装置の提供に貢献する。
請求項4に記載の発明(成膜方法)は、上述した本発明の成膜装置を用い、金属ターゲットと反応性ガスを母材として、酸化膜、窒化膜、酸窒化膜から選択される薄膜を、遷移領域(遷移モード)で形成する。これにより、成膜速度が高く、かつ、成膜熱負荷が低い
成膜方法が得られる。ゆえに、本発明は、反応性に優れた被膜が、高速にて形成できる成膜方法をもたらす。
本発明に係る成膜装置の一例を示す構成図。 図1の成膜装置が備えるカソードの一例を示す構成図。 図1の成膜装置が備えるカソードの他の一例を示す構成図。 図3のカソードにおけるターゲットを含む領域を示す要部拡大斜視図。 磁場強度と成膜速度との関係(反応性スパッタの遷移モード領域)を示すグラフ。 反応性スパッタのメカニズムを示す模式図。 反応性スパッタの3つのモード(メタル、遷移、酸化物)を説明するグラフ。 PID制御を示す模式図。 PEM制御を示す模式図。 DCスパッタを示す模式図。 AC(MF)スパッタを示す模式図。 磁場強度と放電電圧との関係(マグネトロンスパッタ)を示すグラフ。 酸素流量とPEM強度との関係(磁場強度依存性)を示すグラフ。 マグネトロンスパッタのメカニズムを示す模式図。 円筒形ターゲットの回転速度とPEM強度との関係を示すグラフ。 円筒形ターゲットの回転速度と電圧の変動量との関係を示すグラフ。 酸素分圧とITO膜の比抵抗との関係(磁場強度660G)を示すグラフ。 酸素分圧とITO膜の比抵抗との関係(磁場強度900G)を示すグラフ。 酸素分圧とITO膜の比抵抗との関係(磁場強度1200G)を示すグラフ。 酸素分圧とITO膜の比抵抗との関係(磁場強度1600G)を示すグラフ。 円筒形ターゲットの回転速度とPEM強度の変動幅との関係を示すグラフ。 成膜速度の一様性とPEM強度の変動幅との関係を示すグラフ。
以下では、本発明を実施するに好適な成膜装置について、図面に基づいて説明する。
[成膜装置(スパッタ装置)の全体構成]
図1は、本発明に係る成膜装置(スパッタ装置)の一例を示す構成図であり、成膜装置の全体構成を表わしている。スパッタ装置10は、被処理体となる樹脂製シート体S(以下、基板とも呼ぶ)に対して被膜を形成するものである。スパッタ装置10は、図1の左側から右側へ向けて順に、送り出しチャンバ11、前処理チャンバ12、成膜チャンバ13、および、巻き取りチャンバ16を備えている。これらの4つのチャンバは、被処理体の搬送方向に沿ってこの順に並んでいる。4つのチャンバのうち、互いに隣り合うチャンバの間の各々は、連絡通路17、17a、17bによって接続されている。
連絡通路17、17a、17bを除く4つのチャンバの各々は、各チャンバの内部を個別に減圧する排気部18に接続している。4つのチャンバの各々は、複数の搬送ローラー19を各チャンバの内部に搭載している。複数の搬送ローラー19の各々は、搬送方向と直交する軸方向に沿って延び、搬送方向に沿って延びる帯状に形成されたシート体Sは、複数の搬送ローラー19の各々に掛け渡される。複数の搬送ローラー19の各々、あるいは、複数の搬送ローラー19の一部は、搬送ローラー19の中心軸を中心として搬送ローラー19を自転させるモーター(不図示)に接続している。複数の搬送ローラー19は、送り出しチャンバ11から巻き取りチャンバ16に向けてシート体Sを搬送する。
送り出しチャンバ11は、軸方向に沿って幅を有するシート体Sが巻き付けられた第一ローラー11Rを搭載する。第一ローラー11Rは、成膜前のシート体Sを巻き取りチャンバ16へ向けて送り出す。シート体Sの形成材料は、たとえば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルサルホン(PES)、シクロオレフィンポリマー(COP)、トリアセチルセルロース(TAC)、および、ポリカーボネート(PC)から構成される群から選択される少なくとも1つの合成樹脂である。シート体Sの軸方向に沿った幅は、たとえば、1500mmである。
前処理チャンバ12は、シート体Sを加熱する加熱部12Hを搭載している。加熱部12Hは、シート体Sを加熱することによって、シート体Sが含む水分子をシート体Sの外部へ放出させる。シート体Sが含む水分子は、シート体Sが吸着した水分子、および、シート体Sが吸蔵した水分子である。また、加熱部12Hは、シート体Sが吸着したガス、および、吸蔵したガスもシート体Sの外部へ放出させる。加熱部12Hにより、シート体Sは、たとえば、80℃以上200℃以下の温度に加熱される。
前処理チャンバ12においては、加熱部12Hがシート体Sを加熱するため、前処理チャンバ12よりもシート体Sの流れにおける下流に位置するチャンバでは、加熱部を備えていない構成と比べて、水分子の分圧を低く抑えることができる。
前処理チャンバ12は、送り出しチャンバ11から連絡通路17を介して搬入したシート体Sを搬送方向に沿って、成膜チャンバ13に向けて搬送しながら加熱する。
成膜チャンバ13は、成膜空間K1と、成膜空間K1を囲む搬送空間K2とに、成膜チャンバ13の内部空間を分ける分離壁部13aを有する。複数の搬送ローラー19は、搬送空間K2の内部に位置している。
成膜チャンバ13は、成膜ローラー13Rを搭載する。成膜ローラー13Rは、成膜チャンバ13の内部における略中央に位置し、成膜ローラー13Rにおいて、その外周面のほとんどは成膜空間K1に位置し、その外周面の一部が搬送空間K2に位置している。
成膜ローラー13Rは、成膜ローラー13Rの中心軸を中心として成膜ローラー13Rを自転させるモーター(不図示)に接続している。成膜ローラー13Rは、モーターの回転を受けてシート体Sを搬送方向に沿って搬送する方向に回転する。
成膜ローラー13Rは、アノード(陽極)として機能する。成膜ローラー13Rと対向する位置に、後述する複数のカソード13Cが配置される。アノード(陽極)として機能する成膜ローラー13Rは、電力ケーブル(不図示)を介してアースと電気的に接続されていればよい。成膜ローラー13Rの外面に沿って、被処理体であるシート体Sが移動する。
成膜チャンバ13は、スパッタ法によりシート体S上に被膜を形成するための複数のカソード13Cを備えている。図1に示す成膜チャンバ13では、4つのカソード13Cを成膜空間K1の内部に搭載し、4つのカソード13Cは、搬送方向に沿って並んでいる(詳細は、後述する図2や図3を参照)。
成膜チャンバ13は、軸方向に沿って延びる3つの隔壁部13bを成膜空間K1の内部に有する。各隔壁部13bは、搬送方向にて互いに隣り合うカソード13Cの間に位置している。各隔壁部13bの軸方向における2つの端面の一方は、軸方向にて対向するチャンバ13の2つの側壁の一方に接続し、2つの端面の他方は、2つの側壁の他方に接続している。
各隔壁部13bは、軸方向に直交する高さ方向に沿って延び、高さ方向の2つの端面のうち、下方の端面が成膜チャンバ13の底壁部に接続し、上方の端面が成膜ローラー13Rに接しない状態で、成膜ローラー13Rの外周面の近くに位置している。
このような構成からなる各隔壁部13bは、成膜空間K1内において、1つのカソード13Cが位置する空間と他のカソード13Cが位置する空間とを互いに区分する。複数の隔壁部13bによって区画された複数の空間には、それぞれ1つの排気部18が接続されており、複数の空間はそれぞれ、各排気部18によって個別に減圧される。
チャンバ13は、前段に位置する連絡通路17aを介して前処理チャンバ12から搬入したシート体Sを後段に位置する連絡通路17bへ向けて搬送しながら、各カソード13Cと向かい合うシート体Sの一主面上に、各カソード13Cに設置されたターゲットやプロセスガスに応じた、所望の被膜を形成する。
巻き取りチャンバ16は、軸方向に沿って延びて、成膜後のシート体Sを巻き取る第二ローラー16Rを搭載する。第二ローラー16Rは、連絡通路17bを介して成膜チャンバ13から搬入したシート体Sを巻き取る。第一ローラー11R、成膜ローラー13R、第二ローラー16R、および、複数の搬送ローラー19が、搬送部の一例である。
スパッタ装置10は、第一ローラー11Rに巻き付けられたシート体Sを第一ローラー11Rの回転によって送り出し、送り出したシート体Sを複数の搬送ローラー19および成膜ローラー13Rにより、第二ローラー16Rに向けて搬送する。
スパッタ装置10は、シート体Sを第一ローラー11Rから第二ローラー16Rに向けて搬送する途中で、成膜チャンバ13にて、シート体Sにおけるカソード13Cと向かい合う一主面上に、所定のターゲットおよび所定のプロセスガスを用いて、所望の被膜を形成する。
[カソード]
図2および図3は,図1の成膜装置が備えるカソード13Cに適用される異なるタイプの構成例を示す図である。図2のカソード13C(α)は、平板状の2つターゲットが配置されている場合であり、図3のカソード13C(β)は、円筒状の2つのターゲットが配置されている場合である。以下では、図2および図3に基づき、詳細に説明する。
図2および図3の何れのカソード13C(α)、13C(β)であっても、以下の2点(a)、(b)については共通である。
(a)図1に示した4つのカソード13Cでは、チャンバ13の内部での位置が互いに異なるものの、所望の被膜の形成に関わる構成は互いに同じである。
(b)図1に示した4つのカソード13Cは、各カソード13Cに搭載されるターゲットの形成材料を互いに異なるものとすることにより、異なる膜組成の被膜が順に積層して形成されるようにしてもよい。
そのため、以下では、1つのカソード13Cを説明し、他のカソードの詳しい説明は省略する。
<カソードが平板状ターゲットを備える場合>
図2は、図1の成膜装置が備えるカソードの一例を示す構成図である。
図2のカソード13C(α)は、成膜ローラー13Rの外周面に対する接線TLとほぼ平行な方向である接線方向に沿って並ぶ2つのターゲット21を備えている。各ターゲット21は、軸方向に沿って延びる板状に形成され、1つの側面である表面が、成膜ローラー13Rと向かい合う。
各ターゲット21の側面のうち、成膜ローラー13Rと向かい合わない裏面には、軸方向に沿って延びる板状に形成されたバッキングプレート22が接続している。バッキングプレート22はたとえば銅等の金属で形成されている。バッキングプレート22では、接線方向における幅がターゲット21の接線方向における幅よりも大きく、かつ、軸方向における幅がターゲット21の軸方向における幅よりも大きい。
各バッキングプレート22において、ターゲット21と接していない裏面側には、ターゲット21の表面に漏洩磁場を形成する磁気回路23が配されている。磁気回路23では、軸方向に沿った幅が、ターゲット21の軸方向に沿った幅に略等しい。2つのバッキングプレート22は、1つのカソード電源24に対してたとえば並列に接続している。ターゲットが導電性材料の場合には、カソード電源24は、各バッキングプレート22に直流電圧を印加する。なお、ターゲットが絶縁性材料の場合には、カソード電源24は、各バッキングプレート22に、たとえば交流電圧を印加する。
接線方向における2つのターゲット21の間、および、各ターゲット21の接線方向における他のターゲット21とは隣り合わない端部の各々には、軸方向に沿って延びる略板状に形成されたシールド25が配されている。各シールド25は、金属で形成され、各シールド25では、軸方向での幅が、ターゲット21の軸方向の幅よりも大きい。
接線方向と直交する方向である法線方向では、ターゲット21の表面と成膜ローラー13Rの外周面との間に、マスク26が配されている。マスク26は、法線方向に沿ってマスク26を貫通する開口部を有している。マスク26は、ターゲット21から放出される複数のスパッタ粒子のうち、マスク26の開口部を通過したスパッタ粒子を成膜ローラー13Rに到達させ、それ以外の方向に向けて飛翔したスパッタ粒子を成膜ローラー13Rに到達させない。
法線方向におけるターゲット21とマスク26との間であって、接線方向での2つのターゲット21の端部のうち、他のターゲット21と隣り合わない端部の各々には、反応ガス供給配管27が位置している。各反応ガス供給配管27は、軸方向に沿って延びる円筒状に形成されて、軸方向に沿って並ぶ複数の配管を含む。各配管は、軸方向にて等間隔を空けて形成されて、外周面を貫通する複数の供給孔を有している。反応ガス供給配管27は、たとえば、酸素ガスをターゲット21に向けて供給する。
法線方向におけるターゲット21と各反応ガス供給配管27との間であって、接線方向での各反応ガス供給配管27よりも外側の各々には、スパッタガス供給配管28が位置している。各スパッタガス供給配管28は、軸方向に沿って延びる円筒状に形成されて、軸方向に沿って並ぶ複数の配管を含む、各配管は、軸方向にて等間隔を空けて形成されて、外周面を貫通する複数の供給孔を有している。スパッタガス供給配管28は、たとえば、アルゴンガスをターゲット21に向けて供給する。
ターゲット材料が酸化物(ITOやSiO、Nb等)からなるカソード13C、カソード電源24、反応ガス供給配管27、および、スパッタガス供給配管28が、成膜部を構成する場合には、反応ガス供給配管が酸素ガスをターゲットに向けて供給し、スパッタガス供給配管が、たとえば、アルゴンガスをターゲットに向けて供給する。
ターゲット21,21に交流電流(AC)または直流電流(DC)が印加されると、成膜空間K1内のArガスがグロー放電プラズマとなり、多数のArイオンが発生する。そして、この多数のArイオンはカソード13Cに接続されたターゲット21に衝突する。ターゲット21はこのArの衝突によりスパッタリングされ、ターゲットの構成材料の粒子(スパッタ粒子)は、アノード12に載置されたシート体S上に堆積する。これによって、シート体Sの一面に、ターゲット21の構成材料からなる薄膜を形成することができる。
本発明では、上記スパッタ成膜時に発生するプラズマを観測できる位置に、不図示のPEMシステム用のセンサー(Sensor head)を配置する。これにより、成膜時のプラズマ状態を常時、観測することができる。このプラズマ状態の観測結果にもとづき、ターゲットに印加する電力やガス流量等を制御可能となっている。
<カソードが円筒状ターゲットを備える場合>
図3は、図1の成膜装置が備えるカソードの他の一例を示す構成図である。
図3のカソード(陰極)13C(β)は、後述するターゲット31に電気的に接続される端子を構成し、電力ケーブルを介して電源装置(たとえば、交流電源装置)34に電気的に接続されている。また、このカソード13C(β)は、冷却水供給装置(不図示)と接続される冷却水循環パイプ(不図示)によって、成膜時の温度上昇が抑制される。
ガス供給装置(不図示)は、ガス供給パイプを介して成膜空間K1に接続される。これにより、成膜時に、成膜空間K1内にスパッタガス(たとえばArガス)や、反応ガス(たとえば酸素ガス、窒素ガス)が供給される。
図4は、図3のカソードにおけるターゲットを含む領域を示す要部拡大斜視図である。
図4に示すように、カソード13C(β)は、全体が略円筒形に形成されている。カソード13C(β)は、中空円筒形の基体(バッキングチューブ)32と、この基体32の軸心方向Rに沿った中央領域S1で、基体32の外周面を覆うターゲット31とからなる。この中央領域S1を除く両端側は、基体22が露出した連結領域S2とされている。
基体32は、たとえば、厚みが数ミリ程度のステンレスチューブによって形成されていればよい。基体32の中央領域S1を覆うターゲット31は、被成膜物に成膜したい薄膜の材料、たとえば、W、Ti、Ta、Mo、Al合金等の各種金属材料、シリコン(Si)、ニオブ(Nb)、インジウム−スズ酸化物(以下、ITOと呼ぶ)等を所定の厚みで形成したものであればよい。
円筒形のターゲット31がスパッタ装置10にセットされた際には、基体32の内部にマグネット33(図3参照)が配される。このマグネット33は、ターゲット31の周囲に磁場を形成し、マグネトロンスパッタリングを行う。このようなマグネット33によってプラズマをターゲット31付近に封じ込めることで、スパッタ速度を高速化するとともに、ターゲット31の近傍にターゲットを構成する部材が再付着して堆積することを防止する。
ターゲット31の両端部、即ち連結領域S2には、電源装置34と電気的かつ機械的に接続される不図示の部位J(中空円筒形の基体32の端部に相当する)が設けられる。この部位Jと連結領域S2との接続は、連結部S3に形成されたクランプ41を介して行われる。この連結部S3は、円筒形のターゲット31を回転させる回転軸47としても機能する。
このようなターゲット31は、たとえば、同一のものが2本並列に形成されていればよい。そして、それぞれのターゲット31,31は、図示しないモータによって、成膜中に所定の回転速度で回転するように構成されている。
以上のような構成のスパッタ装置10を用いて、被処理体をなすシート体Sの一面に、たとえば金属薄膜を成膜する際には、まず、成膜空間K1内にArガス供給装置28からArガスを導入し、同時に真空ポンプ(不図示)により成膜空間K1内を減圧させ、たとえば圧力を1.3Paに設定する。次に、被処理体をなすシート体Sを載置した、アノード(陽極)として機能する成膜ローラー13Rを、並列して配された2本のターゲット31,31に対面させる。
そして、電源装置34から部位Jを介して2本のターゲット31,31に交流電流(AC)を流す。その際、一方のターゲット31と他方のターゲット31には、電流が陰極と陽極に交互に入れ替わるように印加される。
ターゲット31,31に交流電流(AC)が印加されると、成膜空間K1内のArガスがグロー放電プラズマとなり、多数のArイオンが発生する。そして、この多数のArイオンはカソード13C(β)に接続されたターゲット31に衝突する。ターゲット31はこのArの衝突によりスパッタリングされ、ターゲットを構成する材料の粒子(スパッタ粒子)は、アノード(陽極)として機能する成膜ローラー13Rに載置されたシート体S上に堆積する。これによって、シート体Sの一面に、ターゲット31の構成材料からなる薄膜を形成することができる。なお、反応性スパッタをする場合は、反応性ガス供給装置27から反応性ガスを適宜導入して成膜が行われる。
本発明では、上記スパッタ成膜時に発生するプラズマを観測できる位置に、不図示のPEMシステム用のセンサー(Sensor head)を配置する。これにより、成膜時のプラズマ状態を常時、観測することができる。このプラズマ状態の観測結果にもとづき、ターゲットに印加するRFパワーやターゲットの回転数を制御可能となっている。
たとえば、スパッタリングの際に、ターゲット31,31を、軸心方向Rを回転中心として所定の速度で回転させることにより、ターゲットが均一な厚みで減少するとともに、大面積(長尺状)のシート体Sの一面全体に対して、均一な膜厚の薄膜を形成できる。
PEMシステム用のセンサー(Sensor head)としては、Gencoa社製のスピードフロー(PEM制御スパッタ)を用いた。このセンサーは、コントローラを兼ねているため、反応性スパッタリングをフィードバック制御にて制御することができる。
以下では、本発明を開発するに至った経緯を含めて、本発明の成膜装置を用いて形成した酸化膜の成膜方法および評価結果について詳述する。
反応性スパッタ法によれば、基板上に形成する堆積膜が導電性に限定されず、絶縁性であっても、金属製ターゲットを用いれば、ターゲットが導電性であるため、DCあるいはAC、何れの電源を用いてもスパッタすることが可能である。ただし、ターゲットが絶縁性の場合は、RF電源が必要となる[図6]。
DCスパッタ(DC Sputter)は、直流電流(Direct Current)を用い、グランド電位にある防着板やチムニー等がアノードとして機能する[図10]。スパッタ時間(成膜時間)が長引くと、防着板やチムニーの外面上に、たとえばSiOxなどの絶縁物が堆積し、アノードとしての機能を果たさなくなり(アノード消失あり)、放電が不安定になる傾向がある。ゆえに、DCスパッタは、反応性スパッタには不向きであった。
これに対して、ACスパッタ(AC(MF) Sputter)は、交流電流(Alternating Current)を用い、隣接する位置にあるターゲットがアノードとして機能する[図11]。ACスパッタでは、高周波(AC:たとえばRF)または中波(MF)電源が用いられる。隣接する位置のターゲットが交互にアノードとカソードに切り替わるため、ターゲット面上に再度付着した膜(Re-depo膜)がスパッタされ、取り除かされるので、安定したアノードが確保されることにより(アノード消失なし)、安定した放電が維持できる。
以上より、本発明者らは、反応性とレート(成膜速度)を上げるための手法として、電源と磁場に着目して総括した。表1および表2は、その総括した結果である。
Figure 2018184646
Figure 2018184646
表1および表2より、反応性を上げることができると共に、高いレートが実現でき、かつ、アノード消失が発生しないという観点から、AC電源と強磁場とを組合せたACスパッタが好ましいことが分かった。
しかしながら、ACスパッタにおいては、一般的にターゲット間の距離が100mm〜300mm程度であり、この範囲で極めて強い磁場を使用した場合、隣接するターゲットはお互いの磁気回路の干渉が起こるため、反応性が飽和するところまで磁場を上げることが好ましい。それ以上に磁場を上げると、膜厚分布やエロージョン片掘れのリスクが大きい。つまり、これが磁場の上限となる。
図7は、反応性スパッタにおける、反応性ガスの流量(図7ではOFlow Rate)と成膜速度(Rate)との関係を示すグラフである。流量が少ない領域では成膜速度が高い状態(メタルモード:Metal Mode)となり、流量が多い領域では成膜速度が低い状態(酸化物モード:Oxide Mode)をとる。メタルモードと酸化物モードの間には流量において中間領域(遷移モード:Transition Mode)が存在する。
遷移モードでは、スパッタ時に反応性ガスの流量を増加すると、急激に成膜速度が変化する。通常は、遷移モードでは、プラズマが安定することはなく、専用のフィードバック機構が必要となる。このような傾向を纏めたものが、表3である。
Figure 2018184646
図8と図9は何れも、上述した専用のフィードバック機構の一例を示す図である。図8はPID制御方式、図9はPEM制御方式、を各々表わしている。
PID制御方式(Impedance control System)は、ターゲット電圧を一定にするように、反応性ガスをフィードバックする方式である。この方式は、ターゲット材料に依存するため、使用できるターゲットに制限がある点が短所となる。
PEM制御方式(Plasma Emission Monitor System)は、プラズマの発光強度を一定にするように、反応性ガスを一定にする方式である。この方式は、ターゲット材料に依存せず、すべての材料に適応可能である点が長所となる。
図10と図11は何れも、スパッタの放電方式を示す模式的な断面図である。図10はDCスパッタ方式、図11はAC(MF)スパッタ方式、を各々表わしている。
DCスパッタ方式においては、直流電流(Direct Current)が用いられる。グランド電位にある防着板やチムニー等がアノードとして機能する。防着板やチムニーに、SiOx等の絶縁物が堆積すると、アノードとしての機能を果たさなくなり、放電(プラズマ)が不安定になりやすい。このため、DCスパッタ方式は、反応性スパッタには不向きである。
AC(MF)スパッタ方式においては、交流電流(Alternating Current)が用いられる。隣接するターゲットがアノードとして機能する。隣接するターゲットが交互にアノードとカソードに切り替わるため、ターゲット上に再付着した膜(Re-depo膜)がスパッタされるため、安定したアノードが確保され、放電(プラズマ)が安定しやすい。このため、AC(MF)スパッタ方式は、反応性に好ましい。
図12は、磁場と放電電圧の関係を示すグラフである。磁場強度(Magnetic field)が1000G以下の領域では、磁場強度が増加することにより、放電電圧(Sputtering Voltage)急激に増加(−375V→−250V)する。しかしながら、磁場強度が1000Gを超えた領域では、放電電圧が飽和する傾向(−250V→−240V)を示す。
磁場強度の調整手段としては、マグネット交換や、マグネット位置をシム・ブロック・ネジ(ネジにドーナツ状のシムブロックを入れた機構)、またはボールねじ機構等を用い物理的に移動させる手法、が挙げられる。磁場強度の測定点は、ターゲット直上である。
図13は、3種類の磁場強度における酸素流量とPEM強度の関係を示すグラフである。
図13より、所望の磁場強度(たとえば、460Gの場合:太い実線)において、メタルモード(Metal Mode)から酸化物モード(Oxide Mode)へ移行させるため酸素量を増加させた場合(Flow up)と、酸化物モードからメタルモードへ移行させるため酸素量を減少させた場合(Flow down)とは、放電の発光強度(PEM Intensity)は異なる変化を辿り、ヒステリシスループを描くことが分かった。この傾向は磁場強度に依存せず、800G(細い実線)、1000G(太い点線)の場合も同様である。
しかしながら、磁場強度が増えるに連れて(460G→800G→1000G)、酸化物モードに移行する酸素流量が減少する。すなわち、磁場強度の増加は、反応性の向上を促し、酸化に必要な酸素流量の減少をもたらす。
以下では、図13に示したPEM強度を求めるための発光強度の測定方法、及び、PEM強度から算出されるPEM変動について説明する。
発光強度は、Speedflo V6 manual, section-8, control に記載されている、PMT(Photomultiplier tube) SENSOR TESTING、ADJUSTING THE GAIN ON PMTs、HYSTERESIS RAMP 項目を参考に取得される。
本願における具体的手順としては、次の手順a〜cにより発光強度を測定する。これに基づき、手順dによりPEM強度を、手順eによりPEM変動を、順に求める。
手順a:図13において、酸素流量が0(ゼロ)とした場合の発光強度を最大発光
基準強度とする。
手順b:酸素流量を増加させる。
手順c:酸素流量を増加させても(たとえば)光量変動が±1%以内に収まる状況と
なるか、最大流量(この場合は500sccm)とした状態を、最小発光
基準強度とする。
ただし、上記手順a−cにより求める「最大発光基準強度」と「最小発光強度」
は、成膜するバッチ毎に変更する。
手順d:PEM強度は下記定義に基づき算出する。
PEM強度(PEM Intensity)[%]
=100*[(現在発光強度−最小発光基準強度)
/最大発光基準強度−最小発光基準強度)]
手順e:PEM変動は下記定義に基づき算出する。
PEM変動(PEM Fluctuation)[%]
=|PEM強度最大値[%]−PEM強度最小値[%]|
≒|(10分連続計測Data範囲における)PEM強度最大値[%]
−(10分連続計測Data範囲における)PEM強度最小値[%]|
・上記手順eで採用した「10分」とは、ターゲットの回転数(rpm)を
考慮し、ターゲット1本あたり、10回転分の測定データに基づき判断する
ためである。但し、本発明は「10分」に限定されるものではない。
手順f:発光強度の監視は下記定義により行うものである。
・PEMで言う発光強度とはプラズマ光の特定波長における発光強度を指し、
図13の例で言えばNb,Nbをモニタリングする意味から410nmの
波長における発光強度のみを監視する。但し、あくまでもこれは一例であり、
複数波長の監視あるいは別波長を監視しても良い。
図14は、マグネトロンスパッタの原理図であり、白抜き矢印は磁力線を、灰色矢印は電界を、黒色矢印は電子の動きを、各々表わしている。磁石の上方に描写した二点鎖線はターゲットである。すなわち、図14は、ターゲットの下方に永久磁石を配置した構造のカソードを表わしている。ターゲット表面に磁界をおくと、電子がターゲットと平行に運動する。これにより、マグネトロンスパッタでは、Arのイオン化率が向上し、スパッタ率(成膜速度)が増加することを示している。
図15は、円筒型ターゲットにおけるターゲットの回転速度と放電のPEM変動との関係を示すグラフである。図15において、Motor、Center、DoorはPEM変動の測定位置であり、Motorは円筒型ターゲットの一端付近、Centerは円筒型ターゲットの中央付近、Doorは円筒型ターゲットの他端付近を表わしている。
円筒型ターゲットを用いたスパッタにおいては、ターゲットが回転しているため、電圧や発光強度の変動が生じる。この変動は、ターゲットの偏芯や回転軸のずれに起因するものであり回避することが難しい。
しかしながら、上述した遷移モードにおいて成膜する場合には、この変動の影響を受けて不安定になり易い。本発明者らは、図15に示すように、ターゲットの回転数を上げることにより、PEM変動を抑制できることを見出した。従来、ターゲットの回転数は10rpmであった。この場合はPEM変動が3.0を超えていた。これに対して、ターゲットの回転数を2倍以上(20、30、50rpm)とすることにより、PEM変動は1.0前後に抑制できることが分かった。図15より、ターゲットの回転数を20〜50rpmとすることにより、遷移モードの制御を安定して行うことが可能になった。
図16は、円筒型ターゲットにおけるターゲットの回転速度と放電の電圧変動との関係を示すグラフである。上述した図15の結果(PEM変動)と同様に、電圧変動についても、ターゲットの回転速度に依存することが分かった。すなわち、図16に示すように、ターゲットの回転数を上げることにより、電圧変動は抑制できる。従来(ターゲットの回転数は10rpm)は電圧変動が20.0を超えていた。これに対して、ターゲットの回転数を2倍以上(20、30、50rpm)とすることにより、電圧変動はほぼ半減し、10.0前後に抑制できる。図16より、ターゲットの回転数の増加(20〜50rpm)は、遷移モードにおける制御の安定に寄与することが明らかとなった。
図17〜図20は、ITOを例とした磁場と酸素量の関係を示すグラフである。図17は磁場が660Gの場合、図18は磁場が900Gの場合、図19は磁場が1200Gの場合、図20は磁場が1600Gの場合、を各々表わしている。図17〜図20において、●印は比抵抗(左縦軸)、▲印はキャリア濃度(右縦軸)、□印はホール移動度(右縦軸)、を各々表わしている。図17〜図20から、以下の点が明らかとなった。
(C1)磁場強度が上がるに連れて、比抵抗の極小値をとる最適酸素量の範囲が拡大する傾向を示した。
(C2)磁場強度が上がるに連れて、比抵抗の極小値が低下する傾向を示した。
(C3)磁場強度が上がるに連れて、比抵抗の極小値をとる最適酸素量が減少する傾向を示した。
以上より、磁場強度の増加は、反応性の向上を促すことが分かった。上記の結果から、同じ酸素を導入しても、酸化に寄与する酸素が増加し、酸化に寄与しない酸素はOの状態で膜中に取り込まれる、と本発明者らは推察した。
図21は、円筒型ターゲットにおけるターゲットの回転速度と放電のPEM強度(PEM Intensity)の変動幅Δ[%]との関係を示すグラフである。図21に示すPEM強度の変動幅Δは、図15における3つの位置(Motor、Center、Door)にて測定された数値の平均値である。図21より、ターゲットの回転数を20〜50rpmとすることにより、PEM変動は1.0以下となり、ターゲットの回転数が遷移モードの安定した制御を貢献することが分かった。
図22は、円筒型ターゲットにおける成膜速度の一様性と放電のPEM強度(PEM Intensity)の変動幅Δ[%]との関係を示すグラフである。ここで、成膜速度の一様性とは、上述した「3つの位置(Motor、Center、Door)」)に対向した基板上の各位置における成膜速度のバラツキ(均一性)を表わしている。図22より、PEM強度の変動幅Δが1.0[%]の場合は、成膜速度のバラツキ(均一性)が5%以内にあることが分かった。一方、PEM強度の変動幅Δ[%]が3.5[%]の場合は、成膜速度のバラツキ(均一性)が13%程度となった。これより、本発明者らが見出した、ターゲットの回転速度の範囲(20〜50rpm)は、均一な膜厚分布をもたらすことが確認された。
最後に、成膜速度に関して、従来技術と本発明とを比較した結果(表4)について述べる。ここで、従来技術は、Spray Nb ターゲット(コールドスプレー法により製造された酸化ニオブのターゲット)を用い、酸化物モードにて成膜した場合である。本発明は、金属ニオブのターゲットを用い、遷移モードにて成膜した場合である。
Figure 2018184646
表4より、以下の点が明らかとなった。
(D1)磁場強度が460Gにおける本発明(Nb)の成膜速度(3.40)は、従来技術(Spray Nb)において磁場強度が1000Gの成膜速度(3.21)と同等である。これより、本発明(Nb)によれば、従来技術の半分の磁場強度で同等の成膜速度が得られることが分かった。
(D2)本発明(Nb)において、磁場強度800G、1000Gまで上げることにより、更なる成膜速度の増加が図れることが確認された。
以上、実施の形態および実施例について具体的に説明したが、本開示は、上述の実施の形態および実施例に限定されるものではなく、本開示の技術思想に基づく各種の変形が可能である。
たとえば、上述の実施の形態および実施例において挙げた数値、構造、構成、形状、材料などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれらと異なる数値、構造、構成、形状、材料などを用いても良い。
K1 成膜空間、K2 搬送空間、S シート体(基板)、10 スパッタ装置、11 送り出しチャンバ、11R 第一ローラー、12 前処理チャンバ、12H 加熱部、13 成膜チャンバ、13a 分離壁部、13b 隔壁部、13C (ターゲットを搭載する)カソード、13R 成膜ローラー(アノード)、16 巻き取りチャンバ、16R 第二ローラー、17 連絡通路、18 排気部、19 搬送ローラー。

Claims (6)

  1. 金属ターゲットと反応性ガスの組合せにより、反応性スパッタ法を用いて基板上に薄膜を形成する空間を備えた成膜装置であって、
    前記空間内において、前記基板と前記金属ターゲットとは所定の距離をもって、互いに対向する位置に配置されており、
    前記金属ターゲットに印加する磁場強度の調整手段を備え、該調整手段は、該磁場強度[G]を460以上1000以下の範囲に設定する、ことを特徴とする成膜装置。
  2. プラズマエミッションモニタリング(PEM)装置を用い、前記基板と前記金属ターゲットの間に発生させたプラズマ発光強度(PEM Intensity)を測定し、該プラズマ発光強度の変動幅に基づき、成膜速度の一様性を監視するシステムを備える、ことを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
  3. 前記金属ターゲットが円筒型ターゲットであって、
    プラズマエミッションモニタリング(PEM)装置を用い、前記基板と前記金属ターゲットの間に発生させたプラズマ発光強度(PEM Intensity)を測定し、該プラズマ発光強度の変動幅に基づき、円筒型ターゲットの回転速度を監視するシステムを備える、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の成膜装置。
  4. 請求項1乃至3のいずれか一項に記載の成膜装置を用い、
    金属ターゲットと反応性ガスを母材として、酸化膜、窒化膜、酸窒化膜から選択される薄膜を、遷移領域(遷移モード)で形成する、ことを特徴とする成膜方法。
  5. 前記金属ターゲットが円筒型ターゲットであって、該円筒型ターゲットの回転速度[rpm]を20以上50以下の範囲に制御して、前記薄膜を形成する、ことを特徴とする請求項4に記載の成膜方法。
  6. プラズマエミッションモニタリング(PEM)装置により得られたプラズマ発光強度に基づき、前記反応性ガスの導入量を制御して、所望の組成を備える前記薄膜を形成する、ことを特徴とする請求項4に記載の成膜方法。
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