JP2018178159A - ガスワイピングノズル - Google Patents

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Abstract

【課題】鋼帯に対する溶融金属の目付量を安定化する。【解決手段】溶融金属めっき浴から上方に引き上げられた鋼帯に対してガスを吹き付けて、前記鋼帯の表面に付着した溶融金属膜の膜厚を調節するガスワイピングノズルであって、互いに対向して設けられ、前記ガスが導入されるノズル室を内側に形成する第1のリップ部及び第2のリップ部と、前記ノズル室から噴射される前記ガスの噴出口として、前記第1のリップ部及び前記第2のリップ部の各々の前記鋼帯側の端部の間に形成されるスリットと、前記ノズル室における前記スリット側に設けられ、前記第1のリップ部及び前記第2のリップ部と固定される固定部材と、を備え、前記固定部材には、前記固定部材に対して前記スリット側と前記スリットの逆側とを連通する第1連通孔が前記鋼帯の幅方向に沿って複数並設される、ガスワイピングノズルが提供される。【選択図】図7

Description

本発明は、ガスワイピングノズルに関する。
連続溶融金属めっき装置は、鋼帯に代表される金属帯を亜鉛などの溶融金属でめっきするための装置である。この連続溶融金属めっき装置は、溶融金属を貯留しためっき槽中に配置されるロールとして、金属帯の搬送方向を変更するシンクロールと、金属帯の形状を平坦に矯正する一対のサポートロールを備える。めっき浴内に斜め方向に向けて導入された金属帯は、シンクロールによって搬送方向を鉛直方向上方に変更された後、一対のサポートロールの間に挟まれながら通過してめっき浴外に引き上げられる。その後、金属帯の両側に配置されたガスワイピングノズルから金属帯の表面にガスを吹き付けて、金属帯の表面に付着して引き上げられた余剰の溶融金属を掻き取ることにより、溶融金属の付着量(以下、「目付量」とも称する。)が調節される。
ガスワイピングノズルの金属帯側の端部である先端部には、ガスワイピングノズルの内部から噴射されるガスの噴射口として、金属帯の幅方向に延在するスリットが形成されている。ガスワイピングノズルは、当該スリットを介してガスを噴射し、当該ガスをめっき浴から引き上げられた金属帯の表面に対して吹き付けることで、当該金属帯の表面に付着している余剰の溶融金属を掻き取る。当該スリットは、例えば、上下方向に互いに対向して設けられる一対のリップ部の先端部の間に形成され得る。
このような連続溶融金属めっき処理において、ガスワイピングによって調整される、金属帯に対する溶融金属の目付量の精度は、金属帯に付着して引き上げられた溶融金属の慣性力と、金属帯に対するガスの衝突圧力とのバランスによって決まる。ガスワイピングノズルのスリットの幅(以下、スリットギャップとも称する。)の変化は、ガスの噴流の安定性やガスの噴射圧に影響を与え、金属帯に対するガスの衝突圧力を変化させる要因になり得る。それにより、金属帯に対する溶融金属の目付量が不安定となり得る。そこで、ガスワイピングノズルのスリットギャップを適切に調整するための技術が種々提案されている。
例えば、特許文献1には、上リップ部及び下リップ部が延出するノズル本体を貫通し、かつ、先端が下リップ部の上面に当接したプッシュロッドと、ノズル本体の外面に取付けられプッシュロッドを押出すロッド押出し手段とからなるギャップ調整機構によって、スリットギャップを調整する技術が開示されている。
また、特許文献2には、上リップ部と下リップ部のうちの少なくとも一方のリップ部には、スリットの長手方向に沿い伸びる液圧孔が穿設されており、液圧孔に加圧流体を導くことにより、液圧孔が形成されたリップ部を弾性変形させることによって、スリットギャップを調整する技術が開示されている。
特開平9−241813号公報 特開2011−001567号公報
しかしながら、スリットが上下方向に互いに対向して設けられる一対のリップ部の先端部の間に形成されるガスワイピングノズルでは、調整することが困難なスリットギャップの変化が生じ得る。
例えば、ガスワイピングノズルを構成する部品の一部又は全部をメンテナンスのために交換する場合には、上リップ部と下リップ部とを組み立て直す必要が生じ得る。このような組み立て後におけるスリットギャップは、各組み立てについてばらつき得る。
また、近年、鋼帯等の金属帯の溶融金属めっきにおける生産性の向上を目的として、金属帯の搬送速度の高速化が求められている。金属帯の搬送速度を上げた場合には、金属帯に付着して持ち上げられる溶融金属の量が増加するので、目付量を所望の値になるように管理するために、ガスワイピングによって掻き取る溶融金属の量を増加させる必要が生じ得る。ここで、ガスワイピングによって掻き取る溶融金属の量を増加させるために、ガスワイピングノズルへ供給されるガス圧を増大させることによって、金属帯に対するガスの衝突圧力を増大させることが行われる。それにより、ガスワイピングノズルの内部圧力が増大する。このような内部圧力の増大に起因して、上リップ部及び下リップ部の先端部が互いに離れる方向に変形し得る。ゆえに、スリットギャップが拡がり得る。
このような調整することが困難なスリットギャップの変化が大きいほど、金属帯に対するガスの衝突圧力の変化が大きくなる。それにより、金属帯(具体的には鋼帯)に対する溶融金属の目付量が不安定となり得る。
また、上記のように金属帯の搬送速度の高速化に伴ってガスワイピングノズルの内部圧力を増大させた場合、ガスワイピングノズルの内部におけるガスの流れが金属帯の幅方向について不均一になりやすくなる。それにより、金属帯に対するガスの衝突圧力の金属帯の幅方向についてのばらつきが増大し得る。よって、金属帯(具体的には鋼帯)に対する溶融金属の目付量が不安定となり得る。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、鋼帯に対する溶融金属の目付量を安定化することが可能な、新規かつ改良されたガスワイピングノズルを提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、溶融金属めっき浴から上方に引き上げられた鋼帯に対してガスを吹き付けて、前記鋼帯の表面に付着した溶融金属膜の膜厚を調節するガスワイピングノズルであって、互いに対向して設けられ、前記ガスが導入されるノズル室を内側に形成する第1のリップ部及び第2のリップ部と、前記ノズル室から噴射される前記ガスの噴出口として、前記第1のリップ部及び前記第2のリップ部の各々の前記鋼帯側の端部の間に形成されるスリットと、前記ノズル室における前記スリット側に設けられ、前記第1のリップ部及び前記第2のリップ部と固定される固定部材と、を備え、前記固定部材には、前記固定部材に対して前記スリット側と前記スリットの逆側とを連通する第1連通孔が前記鋼帯の幅方向に沿って複数並設される、ガスワイピングノズルが提供される。
前記第1連通孔は、等間隔に並設されてもよい。
前記第1のリップ部及び前記第2のリップ部の内側には、前記ノズル室へ導入される前記ガスが導入されるガスヘッダ室がさらに形成され、前記ノズル室と前記ガスヘッダ室との間には、前記ノズル室における前記スリットと逆側及び前記ガスヘッダ室を連通する第2連通孔が前記鋼帯の幅方向に沿って複数並設され、前記第1連通孔は、前記第2連通孔と比較して短い間隔で並設されてもよい。
前記第1のリップ部及び前記第2のリップ部には外側からボルトがそれぞれ挿通し、前記固定部材は、前記ボルトが前記固定部材に螺合されることによって、前記第1のリップ部及び前記第2のリップ部と固定され、前記第1のリップ部及び前記第2のリップ部の外周部には、前記ボルトの頭を収容するザグリ孔が形成され、前記ザグリ孔は、シール部材によって閉鎖されてもよい。
以上説明したように本発明によれば、鋼帯に対する溶融金属の目付量を安定化することが可能となる。
本発明の実施形態に係る連続溶融金属めっき装置の概略構成の一例を示す模式図である。 参考例に係るガスワイピングノズルの一例を示す斜視図である。 参考例に係るガスワイピングノズルの一例を示す分解斜視図である。 参考例に係るガスワイピングノズルの一例を示す断面図である。 同実施形態に係るガスワイピングノズルの一例を示す斜視図である。 同実施形態に係るガスワイピングノズルの一例を示す分解斜視図である。 同実施形態に係るガスワイピングノズルの一例を示す断面図である。 ノズル室へ供給されるガス圧の各々についてのスリットギャップの拡がり量である口開き量の解析結果を示す説明図である。 ガスワイピングノズルにおける鋼帯の幅方向の各位置についての鋼帯に対するガスの衝突圧力の解析結果を示す説明図である。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
<1.連続溶融金属めっき装置の構成>
まず、図1を参照して、本発明の実施形態に係る連続溶融金属めっき装置1の構成について説明する。図1は、本実施形態に係る連続溶融金属めっき装置1の概略構成の一例を示す模式図である。
図1に示すように、連続溶融金属めっき装置1は、鋼帯2を、溶融金属を満たしためっき浴3に浸漬することにより、鋼帯2の表面に溶融金属を連続的に付着させた後、溶融金属を所定の目付量にするための装置である。連続溶融金属めっき装置1は、めっき槽4と、スナウト5と、シンクロール6と、上下一対のサポートロール7,8と、ガスワイピングノズル10と、を備える。
鋼帯2は、溶融金属によるめっき処理を施される対象となる金属帯の一例である。また、めっき浴3を構成する溶融金属としては、例えば、Zn,Al,Sn,Pbの単体又はこれらの合金が例示される。あるいは、溶融金属は、これらの金属又は合金に、例えばSi,P等の非金属元素、Ca,Mg,Sr等の典型金属元素、Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu等の遷移金属元素を含有するものも含まれる。以下の説明では、めっき浴3をなす溶融金属として溶融亜鉛が用いられ、鋼帯2の表面に溶融亜鉛を付着させて、亜鉛めっき鋼板を製造する例について説明する。
めっき槽4は、溶融金属からなるめっき浴3を貯留する。スナウト5は、上端が例えば焼鈍炉の出口側に接続され、下端がめっき浴3内に浸漬させて傾斜して設けられる。シンクロール6は、めっき浴3内の下方に配設される。シンクロール6は、サポートロール7,8よりも大きい直径を有する。シンクロール6は、鋼帯2の搬送に伴って図示の時計回りに回転し、スナウト5を通ってめっき浴3内に斜め下方に向けて導入された鋼帯2の搬送方向を、鉛直方向上方へ変更する。
サポートロール7,8は、めっき浴3中のシンクロール6の上方に配設され、シンクロール6によって方向転換され、鉛直方向上方に引き上げられる鋼帯2を左右両側から挟み込む。サポートロール7,8は、引き上げられる鋼帯2の振動を抑制する。サポートロール7,8は、対にせずに1つだけであってもよいし、3つ以上設けられてもよい。あるいは、サポートロール7,8の配置が省略されていてもよい。トップロール9は、めっき浴3の上方であって、シンクロール6の上方に配設される。トップロール9は、めっき浴3から鉛直方向上方に引き上げられ、溶融金属の目付量が調整された鋼帯2の搬送方向を、搬出方向へ変更する。
ガスワイピングノズル10は、鋼帯2に対する溶融金属の目付量を調節するために、鋼帯2の表面に吹き付けられる空気等のガスを噴射する。ガスワイピングノズル10には、図示しないコンプレッサ等によって圧縮されたガスが導入される。ガスワイピングノズル10は、鋼帯2の厚み方向の両側に配置され、サポートロール7,8の上方であって、めっき浴3の浴面から所定の高さの位置に配設される。係るガスワイピングノズル10から噴射されたガスは、めっき浴3から鉛直方向上方に引き上げられた鋼帯2の両面に吹き付けられ、余剰の溶融金属が掻き取られる。これにより、鋼帯2の表面に対する溶融金属の目付量が適正量に調整され、鋼帯2の表面に付着した溶融金属膜の膜厚が調節される。
具体的には、ガスワイピングノズル10の各々の内部には、ガスが導入されるノズル室が形成され、ガスワイピングノズル10の各々の鋼帯2側の端部である先端部には、鋼帯2の幅方向に延在するスリットが形成されている。ノズル室に導入されたガスは、スリットから噴射され、鋼帯2へ吹き付けられる。このように、スリットが、ノズル室から噴射されるガスの噴射口として機能する。
本実施形態に係るガスワイピングノズル10では、上下方向に互いに対向して設けられる一対のリップ部に固定される固定部材がノズル室におけるスリット側に設けられる。それにより、調整することが困難なスリットギャップの変化を抑制することができるので、鋼帯2に対するガスの衝突圧力を安定化することによって、鋼帯2に対する溶融金属の目付量を安定化することが可能となる。このようなガスワイピングノズル10の詳細については、後述する。
上記構成の連続溶融金属めっき装置1の動作について説明する。連続溶融金属めっき装置1は、図示しない駆動源により鋼帯2を移動させ、装置内の各部を通板させる。係る鋼帯2は、スナウト5を通じてめっき浴3中に斜め下方に向けて導入され、シンクロール6を周回して、搬送方向が鉛直方向上方に変更される。次いで、鋼帯2は、サポートロール7,8の間を通過して上昇し、めっき浴3外に引き上げられる。その後、ガスワイピングノズル10から吹き付けられるガスの圧力により、鋼帯2に付着している余剰の溶融金属が掻き取られて、鋼帯2の表面に対する溶融金属の付着量が所定の目付量に調節される。以上のようにして、連続溶融金属めっき装置1は、鋼帯2をめっき浴3中に連続的に浸漬して、溶融金属をめっきすることにより、所定の目付量の溶融金属めっき鋼板を製造する。
<2.参考例に係るガスワイピングノズル>
続いて、本実施形態に係るガスワイピングノズル10の詳細な説明に先立って、図2〜図4を参照して、参考例に係るガスワイピングノズル90について説明する。図2は、参考例に係るガスワイピングノズル90の一例を示す斜視図である。図3は、参考例に係るガスワイピングノズル90の一例を示す分解斜視図である。図4は、参考例に係るガスワイピングノズル90の一例を示す断面図である。具体的には、図4は、図2に示したA−A断面についての断面図である。A−A断面は、ガスワイピングノズル90のスリット940の長手方向に直交する断面である。なお、ガスワイピングノズル90は、本実施形態に係るガスワイピングノズル10と同様に、鋼帯2の厚み方向の両側に一対配置されるが、図2〜図4では、その一方について図示されており、他方についての図示は省略されている。また、図2及び図3では、後述するボルト951,952及びナット961,962の図示は省略されている。また、以下では、鋼帯2側を先端側として説明する。
参考例に係るガスワイピングノズル90は、例えば、図2〜図4に示すように、上下方向に互いに対向して設けられる上リップ部910及び下リップ部920と、当該上リップ部910及び当該下リップ部920によって挟まれるシム930と、上リップ部910の鋼帯2側の端部である先端部911及び下リップ部920の鋼帯2側の端部である先端部921の間に形成されるスリット940と、を含んで構成される。
上リップ部910及び下リップ部920は、図4に示すように、互いに対向して設けられ、内側にノズル室991及びガスヘッダ室992を形成する。ノズル室991及びガスヘッダ室992は、上リップ部910及び下リップ部920によって、ガスワイピングノズル90における先端側及び後端側にそれぞれ形成され、上リップ部910及び下リップ部920にそれぞれ設けられた連通孔913,923によって互いに連通される。ガスヘッダ室992へ外部からガスが導入され、当該ガスは連通孔913,923を介してノズル室991へ導入されるように構成される。
また、上リップ部910及び下リップ部920は、上下方向にシム930を挟んだ状態で固定される。上リップ部910、下リップ部920及びシム930は、例えば、上下方向にボルト951,952及びナット961,962によるネジ締結によって、互いに固定される。具体的には、上リップ部910、下リップ部920及びシム930は、ガスワイピングノズル90におけるガスヘッダ室992より後端側の位置において、上下方向にボルト952及びナット962によって固定される。ボルト952及びナット962のペアは鋼帯2の幅方向に沿って複数並設され得る。また、上リップ部910、下リップ部920及びシム930は、ガスワイピングノズル90におけるノズル室991とガスヘッダ室992との間の位置において、上下方向にボルト951及びナット961によって固定される。ボルト951及びナット961のペアは鋼帯2の幅方向に沿って複数並設され得る。このように、上リップ部910及び下リップ部920は、後端側で支持される片持ち梁構造をなす。
シム930は、各リップ部における先端部の鋼帯2の幅方向についての中央側を除いた部分と当接する。具体的には、シム930の上部は、上リップ部910における先端部911の鋼帯2の幅方向についての中央側を除いた部分と当接する。一方、シム930の下部は、下リップ部920における先端部921の鋼帯2の幅方向についての中央側を除いた部分と当接する。それにより、上リップ部910の先端部911及び下リップ部920の先端部921の間にシム930の厚さに応じた隙間を設けることができる。ゆえに、上リップ部910の先端部911及び下リップ部920の先端部921の間に、図2及び図4に示すように、ノズル室991から噴射されるガスの噴出口としてスリット940が形成される。スリット940は、具体的には、鋼帯2の幅方向に延在する。
また、シム930は、図3に示すように、鋼帯2の幅方向についての両端側において、それぞれ後端側から先端側へ延在する一対の側方延在部933を有する。それにより、スリット940は、当該一対の側方延在部933の先端部によって長手方向に画成される。
ところで、ガスワイピングノズル90を構成する部品の一部又は全部をメンテナンスのために交換する場合には、上リップ部910と下リップ部920とを組み立て直す必要が生じ得る。このような組み立て後におけるスリットギャップは、各組み立てについてばらつき得る。
また、鋼帯2の搬送速度を上げた場合には、鋼帯2に付着して持ち上げられる溶融金属の量が増加するので、目付量を所望の値になるように管理するために、ガスワイピングノズル90によって掻き取る溶融金属の量を増加させる必要が生じ得る。ここで、ガスワイピングノズル90によって掻き取る溶融金属の量を増加させるために、ガスワイピングノズル90のノズル室991へ供給されるガス圧を増大させることによって、鋼帯2に対するガスの衝突圧力を増大させることが行われる。それにより、ガスワイピングノズル90のノズル室991の内部圧力が増大することに起因して、上リップ部910及び下リップ部920の先端部が互いに離れる方向に変形し得る。ゆえに、スリットギャップが拡がり得る。
ここで、参考例では、上述したように、上リップ部910及び下リップ部920は、後端側で支持される片持ち梁構造をなす。具体的には、上リップ部910及び下リップ部920は、ガスワイピングノズル90におけるノズル室991より後端側において固定される。ゆえに、上リップ部910及び下リップ部920が互いに固定される部分からスリット940の先端部までの鋼帯2の厚み方向についての距離L90は、比較的長くなる。それにより、組み立て後におけるスリットギャップの各組み立てについてのばらつきを抑制することが困難となり得る。また、鋼帯2の搬送速度を上げつつ目付量を所望の値になるように管理するために、ガスワイピングノズル90のノズル室991へ供給されるガス圧を増大させる場合に、ノズル室991の内部圧力の増大に起因してスリットギャップが拡がることを抑制することが困難となり得る。
このように、参考例では、調整することが困難なスリットギャップの変化を抑制することが困難となり得るので、鋼帯2に対するガスの衝突圧力の変化が比較的大きくなり得る。それにより、鋼帯2に対する溶融金属の目付量が不安定となり得る。
<3.本実施形態に係るガスワイピングノズル>
続いて、図5〜図7を参照して、本実施形態に係るガスワイピングノズル10について説明する。図5は、本実施形態に係るガスワイピングノズル10の一例を示す斜視図である。図6は、本実施形態に係るガスワイピングノズル10の一例を示す分解斜視図である。図7は、本実施形態に係るガスワイピングノズル10の一例を示す断面図である。具体的には、図7は、図5に示したB−B断面についての断面図である。B−B断面は、ガスワイピングノズル10のスリット140の長手方向に直交する断面である。なお、ガスワイピングノズル10は、上述したように、鋼帯2の厚み方向の両側に一対配置されるが、図5〜図7では、その一方について図示されており、他方についての図示は省略されている。また、図5及び図6では、後述するボルト151,152及びナット161,162の図示は省略されている。
本実施形態に係るガスワイピングノズル10は、例えば、図5〜図7に示すように、上下方向に互いに対向して設けられる上リップ部110及び下リップ部120と、上リップ部110の鋼帯2側の端部である先端部111及び下リップ部120の鋼帯2側の端部である先端部121の間に形成されるスリット140と、ノズル室191におけるスリット140側に設けられ上リップ部110及び下リップ部120と固定される固定部材170と、を含んで構成される。
上リップ部110及び下リップ部120は、図7に示すように、互いに対向して設けられ、内側にノズル室191及びガスヘッダ室192を形成する。上リップ部110及び下リップ部120は、本発明に係る第1のリップ部及び第2のリップ部にそれぞれ相当する。
ノズル室191及びガスヘッダ室192は、上リップ部110及び下リップ部120によって、ガスワイピングノズル10における先端側及び後端側にそれぞれ形成される。具体的には、上リップ部110の下部の先端側及び後端側には、ノズル室191の上部及びガスヘッダ室192の上部をそれぞれ構成する凹部が形成さる。一方、下リップ部120の上部の先端側及び後端側には、ノズル室191の下部及びガスヘッダ室192の下部をそれぞれ構成する凹部が形成さる。対応する凹部が結合されるように上リップ部110及び下リップ部120が互いに当接することによって、ノズル室191及びガスヘッダ室192が形成される。
上リップ部110及び下リップ部120は、例えば、図7に示すように、ガスワイピングノズル10における後端側では、互いに略平行である。ゆえに、ガスヘッダ室192の上下方向の寸法は、後端側から先端側へ亘って略一定である。一方、上リップ部110及び下リップ部120は、ガスワイピングノズル10における先端側では、先端側へ向かうにつれて、互いに近づく。ゆえに、ノズル室191の上下方向の寸法は、先端側へ向かうにつれて短くなる。
上リップ部110及び下リップ部120は、図7に示すように、ガスワイピングノズル10におけるノズル室191とガスヘッダ室192との間の位置において、互いに当接する。それにより、ガスワイピングノズル10の内部において、ノズル室191とガスヘッダ室192とが区分される。ノズル室191とガスヘッダ室192との間には、ノズル室191及びガスヘッダ室192を連通する連通孔113及び連通孔123が設けられる。具体的には、連通孔113及び連通孔123は、上リップ部110及び下リップ部120におけるノズル室191とガスヘッダ室192との間の部分に後端側から先端側へ貫通してそれぞれ設けられる。それにより、ノズル室191におけるスリット140と逆側及びガスヘッダ室192は、連通孔113及び連通孔123によって互いに連通される。
連通孔113及び連通孔123は、鋼帯2の幅方向に沿ってそれぞれ複数並設される。連通孔113及び連通孔123の断面形状は、例えば、円形状であってもよい。なお、連通孔113及び連通孔123の断面形状は、係る例に限定されず、他の形状であってもよい。連通孔113及び連通孔123の各々は、本発明に係る第2連通孔に相当する。
ガスワイピングノズル10における後端側には、ガスヘッダ室192と外部とを連通し、ガスヘッダ室192の内部へガスを導入するための図示しない導入孔が設けられる。例えば、上リップ部110における後端側に、導通孔が上下方向に貫通して設けられる。ガスヘッダ室192へ導入されたガスは連通孔113,123を介してノズル室191へ導入されるように構成される。具体的には、ガスヘッダ室192はガスヘッダとして機能し、ガスヘッダ室192の内部へ導入されたガスは、連通孔113,123を通過することにより、整流されてノズル室191に導入される。また、ノズル室191は均圧室として機能し、ノズル室191の内部に導入されたガスは、後述する固定部材170の連通孔171を通過した後、スリット140の長手方向の全体に亘って均一な圧力で噴射される。
また、上リップ部110及び下リップ部120は、互いに当接する位置において、上下方向にボルト151,152及びナット161,162によるネジ締結によって、互いに固定される。具体的には、上リップ部110及び下リップ部120は、ガスワイピングノズル10におけるガスヘッダ室192より後端側の位置において、上下方向にボルト152及びナット162によって固定される。ボルト152及びナット162のペアは鋼帯2の幅方向に沿って複数並設され得る。また、上リップ部110及び下リップ部120は、ガスワイピングノズル10におけるノズル室191とガスヘッダ室192との間の位置において、上下方向にボルト151及びナット161によって固定される。ボルト151及びナット161のペアは鋼帯2の幅方向に沿って複数並設され得る。なお、上リップ部110及び下リップ部120は、互いに当接する位置において、ネジ締結と異なる他の方法によって互いに固定されてもよい。
上リップ部110の先端部111の下部及び下リップ部120の先端部121の上部は、鋼帯2の幅方向についての中央側において互いに上下方向に隙間を空けて対向する。具体的には、上リップ部110の先端部111の下部における鋼帯2の幅方向についての中央側の部分115は、先端部111の下部における他の部分と比較して上方に位置する。一方、下リップ部120の先端部121の上部における鋼帯2の幅方向についての中央側の部分125は、先端部121の上部における他の部分と比較して下方に位置する。このように、上リップ部110の部分115及び下リップ部120の部分125は、それぞれ上リップ部110の先端部111の下部及び下リップ部120の先端部121の上部に凹設される。ゆえに、上リップ部110の先端部111の下部における部分115及び下リップ部120の先端部121の上部におけるにおける部分125は、互いに上下方向に隙間を空けて対向する。それにより、上リップ部110の先端部111及び下リップ部120の先端部121の間に、図5及び図7に示すように、ノズル室191から噴射されるガスの噴出口としてスリット140が形成される。スリット140は、具体的には、鋼帯2の幅方向に延在する。
また、上リップ部110の先端部111の下部及び下リップ部120の先端部121の上部は、鋼帯2の幅方向についての両端側において互いに当接する。それにより、スリット140は長手方向に画成される。
スリット140のスリットギャップは、鋼帯2に対する溶融金属の目付量が所望の値となるように、種々のパラメータに基づいて適宜設定される。当該パラメータとして、例えば、ガスワイピングノズル10の各種寸法、ノズル室191の内部圧力、ガスワイピングノズル10と鋼帯2との間の位置関係等が該当し得る。なお、スリット140の長手方向の寸法は、鋼帯2の幅に対応して適宜設定され得る。
固定部材170は、ノズル室191におけるスリット140側に設けられ、上リップ部110及び下リップ部120と固定される。
固定部材170は、例えば、直方体形状を有し、ガスワイピングノズル10の鋼帯2の幅方向についての一端側から他端側へ延在する。なお、固定部材170の形状として種々の形状が適用され得るので、固定部材170の形状は係る例に限定されない。
例えば、上リップ部110及び下リップ部120には、図5〜図7に示したように、固定部材170と対応する位置に溝部117及び溝部127が設けられる。具体的には、溝部117は、上リップ部110の内周部のうちノズル室191を画成する部分におけるスリット140側に設けられる。溝部117は、上リップ部110における鋼帯2の幅方向についての一端側から他端側へ延在する。溝部117は、固定部材170の上部の形状と対応する断面形状(例えば、U字状)を有する。一方、溝部127は、下リップ部120の内周部のうちノズル室191を画成する部分におけるスリット140側に設けられる。溝部127は、下リップ部120における鋼帯2の幅方向についての一端側から他端側へ延在する。溝部127は、固定部材170の下部の形状と対応する断面形状(例えば、U字状)を有する。
固定部材170の上部は、上リップ部110の溝部117に嵌合される。また、固定部材170の下部は、下リップ部120の溝部127に嵌合される。固定部材170は、例えば、このように溝部117及び溝部127に嵌合された状態で上リップ部110及び下リップ部120に固定される。なお、溝部117及び溝部127は、固定部材170の各上リップ部に対する位置決め及び取り付けを容易にするために設けられるので、各リップ部の構成から省略されてもよい。
固定部材170は、例えば、ボルトによるネジ締結によって上リップ部110及び下リップ部120と固定される。なお、固定部材170と上リップ部110及び下リップ部120との固定方法として種々の方法が適用され得るので、固定部材170と上リップ部110及び下リップ部120との固定方法は係る例に限定されない。なお、固定部材170は、上リップ部110及び下リップ部120に対して、取り外し可能に固定されることが好ましい。それにより、固定部材170のガスワイピングノズル10からの取り外し及びガスワイピングノズル10への取り付けを容易に実行することができる。
例えば、固定部材170の上部及び下部には、図6及び図7に示したように、メネジ部を有するネジ取付孔173が設けられる。ネジ取付孔173は、固定部材170の上部及び下部において、鋼帯2の幅方向に沿って複数並設される。
また、上リップ部110及び下リップ部120には、固定部材170のネジ取付孔173と対応する位置にボルト180が貫通するザグリ孔及び所謂バカ孔であるネジ挿通孔が設けられる。具体的には、上リップ部110の外周部のうち固定部材170の上方の部分には、ザグリ孔119が鋼帯2の幅方向に沿って複数並設される。各ザグリ孔119は、ネジ挿通孔118によって溝部117と連通される。一方、下リップ部120の外周部のうち固定部材170の下方の部分には、ザグリ孔129が鋼帯2の幅方向に沿って複数並設される。各ザグリ孔129は、ネジ挿通孔128によって溝部127と連通される。
上リップ部110及び下リップ部120には外側からボルト180がそれぞれ挿通する。具体的には、上リップ部110のネジ挿通孔118にザグリ孔119側からボルト180が挿通する。一方、下リップ部120のネジ挿通孔128にザグリ孔129側からボルト180が挿通する。また、上リップ部110のネジ挿通孔118を挿通したボルト180は、固定部材170の上部に設けられるネジ取付孔173に螺合される。一方、下リップ部120のネジ挿通孔128を挿通したボルト180は、固定部材170の下部に設けられるネジ取付孔173に螺合される。固定部材170は、例えば、このようにボルト180が固定部材170に螺合されることによって、上リップ部110及び下リップ部120と固定される。
上リップ部110及び下リップ部120の外周部にそれぞれ形成されるザグリ孔119及びザグリ孔129には、ボルト180の頭181が収容される。ザグリ孔119及びザグリ孔129は、シール部材185によって閉鎖される。シール部材185は、各ザグリ孔と対応する形状を有する。シール部材185は、例えばネジ締結又は接着材を用いた接着等の各種固定方法によって、各リップ部と固定され得る。それにより、各リップ部の外周部においてボルト180の頭181が外部に露出することを防止することができる。ゆえに、各リップ部の外周部における先端側に段差部が形成されることを抑制することができる。各リップ部の外周部における先端側に段差部が形成される場合、スリット140から噴射された後のガスの流れが、ガスワイピングノズル10の外周部の近傍において不安定となり得る。ゆえに、このような段差部が形成されることを抑制することにより、スリット140から噴射された後のガスの流れを安定化することができる。
各リップ部に設けられるザグリ孔及びネジ挿通孔は、上述したように、固定部材170のネジ取付孔173と対応する位置に位置する。また、固定部材170に設けられるネジ取付孔173は、具体的には、鋼帯2の幅方向に沿って複数並設される。例えば、図6に示したように、2つのネジ取付孔173が鋼帯2の幅方向について各リップ部の両端部と対応する位置に位置し、4つのネジ取付孔173が当該両端部と対応する位置の間に位置する。ゆえに、固定部材170は、上リップ部110及び下リップ部120のノズル室191を介して互いに対向する部分と固定され得る。
固定部材170には、固定部材170に対してスリット140側とスリット140の逆側とを連通する連通孔171が鋼帯2の幅方向に沿って複数並設される。連通孔171の断面形状は、例えば、円形状であってもよい。なお、連通孔171の断面形状は、係る例に限定されず、他の形状であってもよい。連通孔171は、本発明に係る第1連通孔に相当する。
連通孔113,123を通過してノズル室191に導入されたガスは、固定部材170の連通孔171を通過してスリット140へ到達する。連通孔171は、鋼帯2の幅方向に沿って複数並設されることにより、連通孔171を通過するガスを整流する機能を有する。ゆえに、ノズル室191の内部におけるガスの流れが鋼帯2の幅方向について不均一になることを抑制することができる。
連通孔171は、等間隔に並設されてもよい。それにより、連通孔171によりガスを整流する効果をより向上させることができる。ゆえに、ノズル室191の内部におけるガスの流れが鋼帯2の幅方向について不均一になることをより効果的に抑制することができる。
連通孔171は、連通孔113及び連通孔123と比較して短い間隔で並設されてもよい。具体的には、図6に示したように、隣り合う連通孔171の間隔D17は、隣り合う連通孔123の間隔D12と比較して短くてもよい。なお、隣り合う連通孔113の間隔は、間隔D12と一致し得る。連通孔171が連通孔113及び連通孔123と比較して短い間隔で並設されることにより、連通孔171によりガスを整流する効果を連通孔113及び連通孔123によりガスを整流する効果と比較して高くすることができる。それにより、ノズル室191の内部におけるガスの流れが鋼帯2の幅方向について不均一になることをさらに効果的に抑制することができる。
本実施形態に係るガスワイピングノズル10には、上述したように、ノズル室191におけるスリット140側に設けられ、上リップ部110及び下リップ部120と固定される固定部材170が設けられる。ゆえに、上リップ部110及び下リップ部120は、鋼帯2の厚み方向についてノズル室191における先端側と対応する位置において固定される。それにより、上リップ部110及び下リップ部120が互いに固定される部分からスリット140の先端部までの鋼帯2の厚み方向についての距離L10を、固定部材170が設けられない場合と比較して短くすることができる。ゆえに、ガスワイピングノズル10を構成する部品の一部又は全部をメンテナンスのために交換するために、各部品を組み立て直す場合であっても、各組み立てについての組み立て後におけるスリットギャップがばらつくことを抑制することができる。また、鋼帯2の搬送速度を上げつつ目付量を所望の値になるように管理するために、ガスワイピングノズル10のノズル室191へ供給されるガス圧を増大させる場合であっても、ノズル室191の内部圧力の増大に起因してスリットギャップが拡がることを抑制することができる。
また、固定部材170には、固定部材170に対してスリット140側とスリット140の逆側とを連通する連通孔171が鋼帯2の幅方向に沿って複数並設される。それにより、ノズル室191の内部におけるガスの流れが鋼帯2の幅方向について不均一になることを抑制することができる。
このように、本実施形態によれば、ノズル室191の内部におけるガスの流れが鋼帯2の幅方向について不均一になることを抑制しつつ、調整することが困難なスリットギャップの変化を抑制することができる。ゆえに、鋼帯2に対するガスの衝突圧力を安定化することができる。それにより、鋼帯2に対する溶融金属の目付量を安定化することが可能となる。
また、固定部材170は、上述したように、具体的には、上リップ部110及び下リップ部120のノズル室191を介して互いに対向する部分と固定される。ここで、ガスワイピングノズル10のノズル室191へ供給されるガス圧を増大させるためにノズル室191の内部圧力を増大させる場合には、特にガスワイピングノズル10における鋼帯2の幅方向についての中央側においてスリットギャップが拡がりやすい。ゆえに、固定部材170を上リップ部110及び下リップ部120のノズル室191を介して互いに対向する部分と固定することによって、ノズル室191の内部圧力の増大に起因してスリットギャップが拡がることをより効果的に抑制することができる。
本発明の効果を確認するために、本発明の実施形態に係るガスワイピングノズル10に対応する解析モデルを用いる実施例及びガスワイピングノズル10と異なるガスワイピングノズルに対応する解析モデルを用いる比較例の各々について、ノズル室へ供給されるガス圧とスリットギャップの拡がり量(以下、口開き量とも称する。)との関係性及び鋼帯2に対するガスの衝突圧力の鋼帯2の幅方向についての分布を評価するための数値解析を行った。当該数値解析として、具体的には、汎用ソフトを用いた応力解析(三次元ソリッド解析)を行った。
実施例では、図5〜図7を参照して説明した本実施形態に係るガスワイピングノズル10に対応する解析モデルを用いた。一方、比較例では、図2〜図4を参照して説明した参考例に係るガスワイピングノズル90に対応する解析モデルを用いた。実施例及び比較例の各モデルの間で、上リップ部及び下リップ部の厚さ等の各種寸法並びにノズル室及びガスヘッダ室の各種寸法は略一致する。
まず、ノズル室へ供給されるガス圧と口開き量との関係性についての数値解析の結果について説明する。当該数値解析では、実施例及び比較例の各々について、ノズル室へ供給されるガス圧が各数値をとる場合における口開き量を求めた。具体的には、実施例及び比較例の各モデルについて、ノズル室の内壁に各ガス圧に対応する圧力を付与したときのノズル先端の変位量を求めた。また、実施例及び比較例の各モデルについて、圧力付与前のスリットギャップを0.6[mm]として、数値解析を行った。実施例及び比較例では、ノズル室へ供給されるガス圧として、50[kPa]、100[kPa]、130[kPa]、170[kPa]及び200[kPa]をそれぞれ適用した場合について数値解析を行った。
図8は、ノズル室へ供給されるガス圧の各々についての口開き量の解析結果を示す説明図である。具体的には、比較例では、ガス圧が50[kPa]、100[kPa]、130[kPa]、170[kPa]及び200[kPa]をとる場合に、それぞれ口開き量は0.023[mm]、0.029[mm]、0.033[mm]、0.044[mm]及び0.049[mm]であった。一方、実施例では、ガス圧が50[kPa]、100[kPa]、130[kPa]、170[kPa]及び200[kPa]をとる場合に、それぞれ口開き量は0.00090[mm]、0.0011[mm]、0.0013[mm]、0.0017[mm]及び0.0019[mm]であった。
図8に示すように、比較例では、各ガス圧について、口開き量は比較的大きな値となることが確認された。また、比較例では、口開き量は、ガス圧が上昇するにつれて顕著に増大することが確認された。比較例における、このようなガス圧と口開き量との関係性は、上述したように上リップ部910及び下リップ部920が後端側で支持される片持ち梁構造をなすことに起因すると考えられる。
一方、実施例では、各ガス圧について、口開き量は比較的小さな値となることが確認された。また、実施例では、口開き量は、ガス圧の大きさによらず略一定となることが確認された。ゆえに、ガス圧の上昇に起因して口開き量が増大することが抑制されていることが確認された。ゆえに、調整することが困難なスリットギャップの変化を抑制することができることが確認された。
続いて、鋼帯2に対するガスの衝突圧力の鋼帯2の幅方向についての分布についての数値解析の結果について説明する。当該数値解析では、実施例及び比較例について、ノズル室へ供給されるガス圧の設定値を一致させて、ガスの衝突圧力の鋼帯2の幅方向についての分布を求めた。具体的には、実施例及び比較例の各モデルについて、ノズル室の内壁にガス圧の設定値に対応する圧力を付与したときのガスの衝突圧力の分布を求めた。ガスの衝突圧力の分布として、具体的には、ガスワイピングノズルにおける鋼帯2の幅方向の各位置におけるガスの衝突圧力を求めた。また、ガス圧の設定値として、比較的高い圧力を設定した。
図9は、ガスワイピングノズルにおける鋼帯2の幅方向の各位置についての鋼帯2に対するガスの衝突圧力の解析結果を示す説明図である。なお、図9では、ガスワイピングノズルにおける鋼帯2の幅方向の両端部の間の一部についてのガスの衝突圧力の解析結果が示されている。具体的には、実施例では、ガスワイピングノズルにおける鋼帯2の幅方向の各位置について、衝突圧力は162.5[kPa]の近傍の値となった。一方、比較例では、ガスワイピングノズルにおける鋼帯2の幅方向の一端側から他端側へ亘って、衝突圧力は162.5[kPa]の近傍の値から160[kPa]を下回る値までの範囲に分布した。
このように、比較例では、鋼帯2の幅方向の各位置について実施例と比較して衝突圧力が低くなることが確認された。比較例では、上述したように、ガス圧が上昇するにつれて口開き量が顕著に増大する。ゆえに、ガス圧の設定値として比較的高い圧力を設定したことによって、比較例では、口開き量が比較的大きな値となる。それにより、比較例における衝突圧力が鋼帯2の幅方向の各位置について実施例と比較して低くなったと考えられる。
また、比較例では、鋼帯2の幅方向について衝突圧力が局所的に高くなるピークが確認された。例えば、図9では、比較例についての解析結果において、周囲と比較して衝突圧力が高いピークP1及びピークP2が示されている。比較例では、ガス圧の設定値として比較的高い圧力を設定したことに起因してノズル室の内部におけるガスの流れが鋼帯2の幅方向について不均一になったことによって、これらのピークが生じたものと考えられる。
一方、実施例では、図9に示すように、ガスの衝突圧力の鋼帯2の幅方向についてのばらつきが少なくとも比較例におけるばらつき以下となることが確認された。ゆえに、実施例では、ノズル室191の内部におけるガスの流れが鋼帯2の幅方向について不均一になることを抑制することができることが確認された。このようにノズル室191の内部におけるガスの流れの均一性を確保する機能は、固定部材170に鋼帯2の幅方向に沿って複数並設される連通孔171によって実現される。
ゆえに、実施例では、ノズル室191の内部におけるガスの流れが鋼帯2の幅方向について不均一になることを抑制しつつ、調整することが困難なスリットギャップの変化を抑制することができることが確認された。ゆえに、本発明の実施形態に係るガスワイピングノズル10によれば、鋼帯2に対する溶融金属の目付量を安定化することが可能となる。
<4.まとめ>
以上説明したように、本実施形態に係るガスワイピングノズル10には、ノズル室191におけるスリット140側に設けられ、上リップ部110及び下リップ部120と固定される固定部材170が設けられる。それにより、上リップ部110及び下リップ部120が互いに固定される部分からスリット140の先端部までの鋼帯2の厚み方向についての距離L10を、固定部材170が設けられない場合と比較して短くすることができる。ゆえに、ガスワイピングノズル10を構成する部品の一部若しくは全部を組み立て直す場合又は鋼帯2の搬送速度を上げつつ目付量を所望の値になるように管理するためにガスワイピングノズル10のノズル室191へ供給されるガス圧を増大させる場合において生じ得る調整することが困難なスリットギャップの変化を抑制することができる。
また、固定部材170には、固定部材170に対してスリット140側とスリット140の逆側とを連通する連通孔171が鋼帯2の幅方向に沿って複数並設される。それにより、ノズル室191の内部におけるガスの流れが鋼帯2の幅方向について不均一になることを抑制することができる。
このように、本実施形態によれば、ノズル室191の内部におけるガスの流れが鋼帯2の幅方向について不均一になることを抑制しつつ、調整することが困難なスリットギャップの変化を抑制することができる。ゆえに、鋼帯2に対するガスの衝突圧力を安定化することができる。それにより、鋼帯2に対する溶融金属の目付量を安定化することが可能となる。
なお、上記では、ノズル室191及びガスヘッダ室192が、ガスワイピングノズル10における先端側及び後端側にそれぞれ形成される例について説明したが、ガスワイピングノズル10の構成からガスヘッダ室192は省略されてもよい。なお、その場合、ノズル室191とガスヘッダ室192とを連通する連通孔113及び連通孔123は、上リップ部110及び下リップ部120の構成から省略される。
また、上記では、上リップ部110の先端部111の下部及び下リップ部120の先端部121の上部にそれぞれ凹設される部分115及び部分125によってスリット140が形成される例について説明したが、スリット140はシムを利用することによって形成されてもよい。その場合、シムは、例えば、上リップ部110及び下リップ部120により上下方向に挟まれ、各リップ部における先端部の鋼帯2の幅方向についての中央側を除いた部分と当接する。それにより、上リップ部110の先端部111及び下リップ部120の先端部121の間にシムの厚さに応じた隙間を設けることによってスリット140が形成され得る。なお、ガスワイピングノズル10にこのようなシムを設ける場合、シムと固定部材170の干渉を防止するために、シム又は固定部材170の形状は適宜設定される。また、ガスワイピングノズル10にこのようなシムを設ける場合、上リップ部110及び下リップ部120の構成から部分115及び部分125は省略されてもよい。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は係る例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は応用例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
1 連続溶融金属めっき装置
2 鋼帯
3 めっき浴
4 めっき槽
5 スナウト
6 シンクロール
7,8 サポートロール
9 トップロール
10 ガスワイピングノズル
110 上リップ部
113 連通孔
117 溝部
118 ネジ挿通孔
119 ザグリ孔
120 下リップ部
123 連通孔
127 溝部
128 ネジ挿通孔
129 ザグリ孔
140 スリット
151,152 ボルト
161,162 ナット
170 固定部材
171 連通孔
173 ネジ取付孔
180 ボルト
181 頭
185 シール部材
191 ノズル室
192 ガスヘッダ室

Claims (4)

  1. 溶融金属めっき浴から上方に引き上げられた鋼帯に対してガスを吹き付けて、前記鋼帯の表面に付着した溶融金属膜の膜厚を調節するガスワイピングノズルであって、
    互いに対向して設けられ、前記ガスが導入されるノズル室を内側に形成する第1のリップ部及び第2のリップ部と、
    前記ノズル室から噴射される前記ガスの噴出口として、前記第1のリップ部及び前記第2のリップ部の各々の前記鋼帯側の端部の間に形成されるスリットと、
    前記ノズル室における前記スリット側に設けられ、前記第1のリップ部及び前記第2のリップ部と固定される固定部材と、
    を備え、
    前記固定部材には、前記固定部材に対して前記スリット側と前記スリットの逆側とを連通する第1連通孔が前記鋼帯の幅方向に沿って複数並設される、
    ガスワイピングノズル。
  2. 前記第1連通孔は、等間隔に並設される、
    請求項1に記載のガスワイピングノズル。
  3. 前記第1のリップ部及び前記第2のリップ部の内側には、前記ノズル室へ導入される前記ガスが導入されるガスヘッダ室がさらに形成され、
    前記ノズル室と前記ガスヘッダ室との間には、前記ノズル室における前記スリットと逆側及び前記ガスヘッダ室を連通する第2連通孔が前記鋼帯の幅方向に沿って複数並設され、
    前記第1連通孔は、前記第2連通孔と比較して短い間隔で並設される、
    請求項1又は2に記載のガスワイピングノズル。
  4. 前記第1のリップ部及び前記第2のリップ部には外側からボルトがそれぞれ挿通し、
    前記固定部材は、前記ボルトが前記固定部材に螺合されることによって、前記第1のリップ部及び前記第2のリップ部と固定され、
    前記第1のリップ部及び前記第2のリップ部の外周部には、前記ボルトの頭を収容するザグリ孔が形成され、
    前記ザグリ孔は、シール部材によって閉鎖される、
    請求項1〜3のいずれか一項に記載のガスワイピングノズル。
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