JP2018178125A - 導電性接着剤組成物、接続体、太陽電池モジュール及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】低温短時間接続において良好な接続強度が得られ、かつ、高温高湿試験において良好な接続信頼性が得られる導電性接着剤組成物を提供する。【解決手段】融点が220℃以下の金属を含む導電性粒子と、熱硬化性樹脂と、熱カチオン重合開始剤と、を含有する、導電性接着剤組成物。【選択図】なし
Description
本発明は、導電性接着剤組成物、接続体、太陽電池モジュール及びその製造方法に関する。特に、本発明は、太陽電池セルの電極と配線部材とを電気的に接続するために用いられる導電性接着剤組成物、当該導電性接着剤組成物を用いて得られる接続体及び太陽電池モジュール、並びに、当該太陽電池モジュールの製造方法に関する。
深刻化する地球温暖化及び化石エネルギー枯渇問題を解決する手段として、太陽光を用いた発電システムである太陽電池が注目されている。現在主流の太陽電池では、単結晶又は多結晶のシリコン(Si)ウェハ上に形成された電極を有する太陽電池セルが用いられており、金属配線部材を介して複数の太陽電池セルを互いに直列又は並列に接続して得られる構造が採用されている。
通常、太陽電池セルの電極と配線部材の接続には、良好な導電性を示しかつ比較的安価なはんだが用いられている(例えば、下記特許文献1参照)。さらに、最近では、環境問題を考慮して、鉛(Pb)を含まないSn−Ag−Cuはんだを、配線部材である銅線に被覆した後、はんだを溶融温度以上に加熱して太陽電池セルの電極と配線部材を接続する方法が知られている(例えば、下記特許文献1及び2参照)。
しかしながら、Sn−Ag−Cuはんだを使用して太陽電池セルの電極と配線部材とを接続する際には、Sn−Ag−Cuはんだの融点を超える260℃以上の加熱が必要となる。これにより、太陽電池セルの特性劣化が起こることに加えて、太陽電池セルの反り又は割れが発生することにより歩留まりが低下することが問題となっている。
特に、200℃以上の加熱によって太陽電池特性が著しく低下することが知られているヘテロ接合型太陽電池セルの電極の接続に上記のはんだ被覆配線部材を適用した場合、太陽電池セルの特性劣化が起こることに加え、太陽電池セル上の電極の劣化に起因して生じる接続強度の低下によってセル上の電極剥がれ及び電極破壊が起こることにより製造時のハンドリング性が著しく低下することが問題となっている。
また、このセル上の電極の劣化に起因して生じる接続強度の低下は、ヘテロ接合型太陽電池に限らず、セル上の電極自体の強度、又は、電極とセル界面との強度が脆弱な太陽電池セルに関して共通する課題である。
このような太陽電池セルの電極と配線部材との接続には、導電性接着剤組成物の使用が提案されている(例えば、下記特許文献3参照)。導電性接着剤組成物は、熱硬化性樹脂中に金属粒子(銀粒子等)が混合又は分散された組成物であり、主として金属粒子が太陽電池セルの電極及び配線部材と物理的に接触することで電気的な接続が発現する。
しかしながら、前記特許文献3等に記載の導電性接着剤組成物における導電性発現機構は、金属同士の接触によるものであるため、必ずしも充分な接続特性が得られず、高温高湿試験(例えば85℃/85%)後に接続特性が低下してしまう傾向にある。
ところで、一般的な太陽電池モジュールの製造方法の一例として、下記の方法が挙げられる。まず、太陽電池セルの電極面にフラックス活性剤を塗布した後、太陽電池セルの電極面と配線部材とを相対向するように配置して積層し、さらに、ホットエア加熱を行うことにより、太陽電池セルと配線部材の接続体(「太陽電池ストリングス」と呼ばれる)を作製する。その後、太陽電池ストリングスの両面に封止材を積層した後、太陽電池セルの受光面側の封止材上にガラス部材を積層すると共に太陽電池セルの裏面(受光面とは反対側の面)側の封止材上に保護フィルムを積層して積層体を作製し、さらに、真空ラミネータを用いて積層体を加熱封止する。
この太陽電池ストリングス作製時のホットエア加熱工程においては、高い加熱温度及び長い加熱時間が、太陽電池セルの特性劣化、及び、太陽電池セルの反り又は割れに起因する歩留まりの低下の直接的な原因となるため、低温短時間での加熱接続が求められている。特に、セル上の電極自体の強度、又は、電極とセル界面との強度が脆弱な太陽電池セルに関しては、低温短時間の加熱であっても、配線接続部への熱応力によって接続強度の極端な低下が見られ、配線が剥がれることによるハンドリング性及び歩留まりの低下が顕著である。
そこで、本発明は、低温短時間接続において良好な接続強度が得られ、かつ、高温高湿試験において良好な接続信頼性が得られる導電性接着剤組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、このような導電性接着剤組成物を用いて得られる接続体及び太陽電池モジュール、並びに、当該太陽電池モジュールの製造方法を提供することを目的とする。
本発明に係る導電性接着剤組成物は、融点が220℃以下の金属を含む導電性粒子と、熱硬化性樹脂と、熱カチオン重合開始剤と、を含有する。
本発明に係る導電性接着剤組成物によれば、熱カチオン重合開始剤を用いることで、低温短時間加熱において、良好な接続強度を与える程度に熱硬化性樹脂を硬化させることができる。また、本発明に係る導電性接着剤組成物によれば、低温短時間加熱において、熱カチオン重合開始剤から遊離した酸によって、導電性粒子の表面酸化膜、及び、導電性粒子と接触する接続部の表面酸化膜が除去される。これにより、導電性粒子の溶融及び凝集が促進されると共に、接続部に対する充分な濡れ性が発現する。そのため、電気的な導通パス形成が可能となることから、良好な電気特性を得ることができる。したがって、本発明に係る導電性接着剤組成物によれば、良好な接続強度と電気特性とを両立することが可能であり、低温短時間接続(例えば、Sn−Ag−Cuはんだの融点よりも低温における短時間接続)において良好な接続強度が得られ、かつ、高温高湿試験(例えば85℃/85%)において良好な接続信頼性が得られる。
導電性粒子の含有量は、導電性接着剤組成物の全量に対して5〜95質量%であることが好ましい。
導電性粒子の前記金属は、ビスマス、インジウム、スズ及び亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。
本発明に係る導電性接着剤組成物は、フラックス活性剤を更に含有していてもよい。フラックス活性剤は、水酸基及びカルボキシル基を有することが好ましい。
熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂を含むことが好ましい。
熱カチオン重合開始剤は、加熱により、アンチモン原子を含む無機酸イオン、リン原子を含む無機酸イオン、及び、ホウ素原子を含む有機酸イオンからなる群より選ばれる少なくとも一種を放出することが好ましい。
熱硬化性樹脂と熱カチオン重合開始剤との反応開始温度は、30〜200℃が好ましい。
本発明に係る導電性接着剤組成物は、太陽電池セルの電極と配線部材とを電気的に接続するために用いられてもよい。
本発明に係る接続体は、太陽電池セルと、前記導電性接着剤組成物又はその硬化物を介して太陽電池セルの電極と電気的に接続された配線部材と、を備える。
本発明に係る太陽電池モジュールの製造方法は、前記導電性接着剤組成物を介して太陽電池セルの電極と配線部材とを相対向するように配置する工程と、太陽電池セルの受光面側と、当該受光面とは反対側の裏面側とに封止材を積層する工程と、太陽電池セルの受光面側の封止材にガラス部材を積層する工程と、太陽電池セルの裏面側の封止材に保護フィルムを積層する工程と、前記ガラス部材及び前記保護フィルムを有する積層体を加熱することで、太陽電池セルの電極と配線部材とを電気的に接続すると共に太陽電池セルを封止する工程と、を備える。
本発明に係る太陽電池モジュールは、太陽電池セルと、前記導電性接着剤組成物又はその硬化物を介して太陽電池セルの電極と電気的に接続された配線部材と、太陽電池セルの受光面側、及び、当該受光面とは反対側の裏面側にそれぞれ積層された封止材と、太陽電池セルの受光面側の封止材に積層されたガラス部材と、太陽電池セルの裏面側の封止材に積層された保護フィルムと、を備える。
本発明によれば、低温短時間接続において良好な接続強度が得られ、かつ、高温高湿試験において良好な接続信頼性が得られる。このような本発明では、Sn−Ag−Cuはんだの融点よりも低温(例えば220℃以下)での接続が可能であり、低温短時間加熱による配線の接続後に良好な接続強度が得られ、かつ、高温高湿試験(例えば85℃/85%)曝露後も導電性が低下することを抑制することができる。
また、本発明によれば、太陽電池モジュール製造工程における配線接続プロセスにおいて、低温短時間加熱での接続が可能であり、セル上の電極自体の強度、又は、電極とセル界面との強度が脆弱な太陽電池セルにおいても良好な接続強度が得られ、ハンドリング性の向上により歩留まりを改善することができる。
本発明によれば、太陽電池への導電性接着剤組成物の応用を提供できる。本発明によれば、太陽電池セルの電極と配線部材との接続への導電性接着剤組成物の応用を提供できる。本発明によれば、ヘテロ接合型太陽電池(HIT(登録商標)型太陽電池)への導電性接着剤組成物の応用を提供できる。本発明によれば、結晶シリコン型太陽電池への導電性接着剤組成物の応用を提供できる。本発明によれば、裏面電極型(バックコンタクト型)太陽電池セルへの導電性接着剤組成物の応用を提供できる。
以下、本実施形態について説明するが、本発明は、下記実施形態に限定されるものではない。
<導電性接着剤組成物>
本実施形態に係る導電性接着剤組成物は、(A)融点が220℃以下の金属を含む導電性粒子と、(B)熱硬化性樹脂と、(C)熱カチオン重合開始剤と、を含有する。
本実施形態に係る導電性接着剤組成物は、(A)融点が220℃以下の金属を含む導電性粒子と、(B)熱硬化性樹脂と、(C)熱カチオン重合開始剤と、を含有する。
((A)成分:導電性粒子)
(A)導電性粒子は、融点が220℃以下である金属を含む。このような導電性粒子を導電性接着剤組成物において用いると、金属が溶融してなる金属部が強固な導電パスを形成できるため、銀粒子等の粒子同士の接触による比較的細く脆弱なパスと比較して、低抵抗に伴う発電効率の向上、及び、温度サイクル試験での熱歪に対する耐性の向上を図ることができる。
(A)導電性粒子は、融点が220℃以下である金属を含む。このような導電性粒子を導電性接着剤組成物において用いると、金属が溶融してなる金属部が強固な導電パスを形成できるため、銀粒子等の粒子同士の接触による比較的細く脆弱なパスと比較して、低抵抗に伴う発電効率の向上、及び、温度サイクル試験での熱歪に対する耐性の向上を図ることができる。
(A)導電性粒子に含まれる前記金属の融点は、強固な導電パスを形成しやすい観点から、180℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましい。(A)導電性粒子に含まれる前記金属の融点の下限は、特に限定されないが、例えば100℃程度である。融点は、例えば、示差走査熱量測定(Differential scanning calorimetry(DSC))により測定することができる。
(A)導電性粒子に含まれる金属全体の融点は、強固な導電パスを形成しやすい観点から、220℃以下が好ましく、180℃以下がより好ましく、150℃以下が更に好ましい。(A)導電性粒子に含まれる金属全体の融点の下限は、特に限定されないが、例えば100℃程度である。
(A)導電性粒子に含まれる金属は、環境への負荷が小さい観点から、鉛以外の金属が好ましい。このような金属としては、ビスマス(Bi)、インジウム(In)、スズ(Sn)及び亜鉛(Zn)からなる群より選ばれる少なくとも一種が好ましい。これらの金属は、1種単独又は2種以上を組み合わせて用いられ、2種以上の金属を含む合金であってもよい。合金は、更に良好な接続信頼性を得る観点から、(A)導電性粒子における金属全体としての融点が220℃以下となる範囲で、プラチナ(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、アルミニウム(Al)等の高融点の成分を含むことが好ましい。
(A)導電性粒子に含まれる金属としては、融解後の明確な固化挙動を示す観点から、Sn42−Bi58はんだ(融点138℃)、Sn48−In52はんだ(融点117℃)、Sn42−Bi57−Ag1はんだ(融点139℃)、Sn90−Ag2−Cu0.5−Bi7.5はんだ(融点189℃)、Sn89−Zn8−Bi3はんだ(融点190℃)、Sn91−Zn9はんだ(融点197℃)、及び、Sn96.5−Ag3−Cu0.5はんだ(融点217℃)が好ましい。固化挙動とは、金属が溶融後に冷えて固まることをいう。これらの中でも、入手容易性、低温接続性及び濡れ性に更に優れる観点から、Sn42−Bi58はんだがより好ましい。これらは1種単独又は2種以上を組み合わせて用いられる。
(A)導電性粒子の平均粒子径は、導電性接着剤組成物の粘度が高くなることを抑制し、更に良好な作業性を得る観点から、0.1μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましく、5μm以上が更に好ましい。(A)導電性粒子の平均粒子径は、更に良好な印刷性及び接続信頼性を得る観点から、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、30μm以下が更に好ましい。このような観点から、(A)導電性粒子の平均粒子径は、0.1〜100μmが好ましい。また、(A)導電性粒子の平均粒子径は、導電性接着剤組成物の更に良好な印刷性及び作業性を得る観点から、1〜50μmがより好ましい。さらに、(A)導電性粒子の平均粒子径は、導電性接着剤組成物の保存安定性及び硬化物の実装信頼性を向上させる観点から、5〜30μmが更に好ましい。ここで、平均粒子径は、例えば、レーザー回折・散乱法(例えば神岡鉱業試験法No.2)によって求められる。
(A)導電性粒子は、融点が220℃以下である金属のみで構成される粒子に限定されず、220℃よりも高い融点を有する金属を含んでいてもよい。また、(A)導電性粒子は、セラミックス、シリカ、樹脂材料等の金属以外の固体材料からなる粒子の表面を、融点が220℃以下である金属からなる金属膜で被覆した導電性粒子であってもよく、複数種の導電性粒子の混合物であってもよい。
導電性接着剤組成物における(A)導電性粒子の含有量は、導電性接着剤組成物の硬化物の更に良好な導電性を得る観点から、導電性接着剤組成物の全量に対して、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上が更に好ましく、45質量%以上が特に好ましい。(A)導電性粒子の含有量は、導電性接着剤組成物の粘度が高くなることを抑制し、更に良好な作業性を得る観点、及び、導電性接着剤組成物中における(A)導電性粒子以外の成分(以下、「接着剤成分」という)の含有量が相対的に少なくなることを抑制し、硬化物の更に良好な実装信頼性を得る観点から、導電性接着剤組成物の全量に対して、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、85質量%以下が更に好ましい。このような観点から、(A)導電性粒子の含有量は、5〜95質量%が好ましい。また、(A)導電性粒子の含有量は、作業性及び導電性を更に向上させる観点から、10〜90質量%がより好ましく、硬化物の実装信頼性を更に向上させる観点から、15〜85質量%が更に好ましい。
なお、(A)導電性粒子と共に、融点が220℃より高い金属からなる導電性粒子を併用していてもよい。融点が220℃より高い金属としては、例えば、Pt、Au、Ag、Cu、Ni、Pd、Al、及び、これらの2種以上の金属からなる合金が挙げられる。このような導電性粒子としては、例えば、Au粉、Ag粉、Cu粉及びAgめっきCu粉が挙げられる。市販品としては、例えば、鍍銀銅粉である「MA05K」(日立化成株式会社製、商品名)が入手できる。
また、(A)導電性粒子が、220℃以下の融点を有する金属a1と、220℃よりも高い融点を有する金属a2とを含む場合、配合比(a1:a2、質量比)は、更に良好な濡れ性と導電性を得る観点から、99:1〜50:50が好ましく、99:1〜60:40がより好ましい。
本実施形態に係る導電性接着剤組成物において、(A)導電性粒子に起因する効果を更に有効に得る観点から、(A)導電性粒子の含有量に対する接着剤成分の含有量の配合比(接着剤成分の含有量/(A)導電性粒子の含有量)は、導電性接着剤組成物中の固形分比(質量比)で、5/95〜50/50が好ましい。配合比は、接着性、導電性及び作業性に更に優れる観点から、10/90〜30/70がより好ましい。配合比率が5/95以上であると、接着剤組成物の粘度が高くなることが抑制されることで更に良好な作業性が得られると共に、導電性接着剤組成物の接着力を充分に確保することができる。配合比率が50/50以下であると、導電性を確保しやすい。
((B)成分:熱硬化性樹脂)
(B)熱硬化性樹脂は、被着体を接着する作用を有すると共に、導電性接着剤組成物中の導電性粒子、及び、必要に応じて添加されるフィラーを互いに結合するバインダ成分として作用する。このような熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、マレイミド樹脂、シアネート樹脂等の熱硬化性の有機高分子化合物、及び、それらの前駆体が挙げられる。ここで、「(メタ)アクリル樹脂」とは、メタクリル樹脂及びアクリル樹脂を示す。これらの中では、エポキシ樹脂、及び、重合可能な炭素−炭素二重結合を有する化合物に由来する構造単位を有する重合体(例えば(メタ)アクリル樹脂及びマレイミド樹脂)が好ましい。これらの熱硬化性樹脂は、耐熱性及び接着性に更に優れると共に、必要に応じて有機溶剤中に溶解又は分散させれば液体の状態で取り扱うことができるため作業性に優れている。また、入手容易性、及び、被着体との接着性に更に優れる観点から、エポキシ樹脂がより好ましい。(B)熱硬化性樹脂は、1種単独又は2種以上を組み合わせて用いられる。
(B)熱硬化性樹脂は、被着体を接着する作用を有すると共に、導電性接着剤組成物中の導電性粒子、及び、必要に応じて添加されるフィラーを互いに結合するバインダ成分として作用する。このような熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、マレイミド樹脂、シアネート樹脂等の熱硬化性の有機高分子化合物、及び、それらの前駆体が挙げられる。ここで、「(メタ)アクリル樹脂」とは、メタクリル樹脂及びアクリル樹脂を示す。これらの中では、エポキシ樹脂、及び、重合可能な炭素−炭素二重結合を有する化合物に由来する構造単位を有する重合体(例えば(メタ)アクリル樹脂及びマレイミド樹脂)が好ましい。これらの熱硬化性樹脂は、耐熱性及び接着性に更に優れると共に、必要に応じて有機溶剤中に溶解又は分散させれば液体の状態で取り扱うことができるため作業性に優れている。また、入手容易性、及び、被着体との接着性に更に優れる観点から、エポキシ樹脂がより好ましい。(B)熱硬化性樹脂は、1種単独又は2種以上を組み合わせて用いられる。
エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物であれば、特に制限なく公知の化合物を使用することができる。このようなエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、及び、これらとエピクロロヒドリンとから誘導されるエポキシ樹脂が挙げられる。
エポキシ樹脂としては、市販品を用いることができる。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂であるAER−X8501(旭化成工業株式会社製、商品名)、R−301(三菱化学株式会社製、商品名)、YL−980(三菱化学株式会社製、商品名);ビスフェノールF型エポキシ樹脂であるYDF−170(東都化成株式会社製、商品名)、YL−983(三菱化学株式会社製、商品名)、YL−983U(三菱化学株式会社製、商品名);ポリアルキレンオキシ化したビスフェノールA型エポキシ樹脂であるEXA−4816(大日本インキ化学工業株式会社製、商品名)、EXA−4822(大日本インキ化学工業株式会社製、商品名);ビスフェノールAD型エポキシ樹脂であるR−1710(三井石油化学工業株式会社製、商品名);フェノールノボラック型エポキシ樹脂であるN−730S(大日本インキ化学工業株式会社製、商品名)、Quatrex−2010(ダウ・ケミカル株式会社製、商品名);クレゾールノボラック型エポキシ樹脂であるYDCN−702S(東都化成株式会社製、商品名)、EOCN−100(日本化薬株式会社製、商品名);多官能エポキシ樹脂であるEPPN−501(日本化薬株式会社製、商品名)、TACTIX−742(ダウ・ケミカル株式会社製、商品名)、VG−3010(三井石油化学工業株式会社製、商品名)、1032S(三菱化学株式会社製、商品名)、1032−H60(三菱化学株式会社製、商品名);ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂であるHP−4032(大日本インキ化学工業株式会社製、商品名);脂環式エポキシ樹脂であるEHPE−3150、CEL−3000(共にダイセル化学工業株式会社製、商品名)、DME−100(新日本理化株式会社製、商品名)、EX−216L(ナガセ化成工業株式会社製、商品名);脂肪族エポキシ樹脂であるW−100(新日本理化株式会社製、商品名);アミン型エポキシ樹脂であるELM−100(住友化学工業株式会社製、商品名)、YH−434L(東都化成株式会社製、商品名)、TETRAD−X、TETRAD−C(共に、三菱瓦斯化学株式会社製、商品名)、630、630LSD(共に三菱化学株式会社製、商品名);レゾルシン型エポキシ樹脂であるデナコールEX−201(ナガセ化成工業株式会社製、商品名);ネオペンチルグリコール型エポキシ樹脂であるデナコールEX−211(ナガセ化成工業株式会社製、商品名);ヘキサンディネルグリコール型エポキシ樹脂であるデナコールEX−212(ナガセ化成工業株式会社製、商品名);エチレン・プロピレングリコール型エポキシ樹脂であるデナコールEXシリーズ(EX−810、811、850、851、821、830、832、841、861(いずれもナガセ化成工業株式会社製、商品名));ビニルエーテル型エポキシ樹脂であるEXA−4850−1000(大日本インキ化学工業株式会社製、商品名)、EXA−4850−150(大日本インキ化学工業株式会社製、商品名);下記一般式(I)で表されるエポキシ樹脂E−XL−24、E−XL−3L(共に三井化学株式会社製、商品名)が挙げられる。これらのエポキシ樹脂の中でも、イオン性不純物が少なく、かつ、反応性に優れる観点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂及びアミン型エポキシ樹脂が好ましい。
[式(I)中、n1は、1〜5の整数を示す。]
上述のエポキシ樹脂は、1種単独又は2種以上を組み合わせて用いられる。
導電性接着剤組成物が(B)熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を含有する場合、反応性希釈剤として、1分子中に1個のみエポキシ基を有するエポキシ化合物を更に含有していてもよい。このようなエポキシ化合物は市販品として入手できる。このようなエポキシ化合物としては、例えば、PGE(日本化薬株式会社製、商品名)、PP−101(東都化成株式会社製、商品名)、ED−502、ED−509、ED−509S(いずれも旭電化工業株式会社製、商品名)、YED−122(油化シェルエポキシ株式会社製、商品名)、KBM−403(信越化学工業株式会社製、商品名)、TSL−8350、TSL−8355、TSL−9905(東芝シリコーン株式会社製、商品名)が挙げられる。これらは1種単独又は2種以上を組み合わせて用いられる。反応性希釈剤を導電性接着剤組成物に配合する場合、反応性希釈剤の含有量は、例えば、エポキシ樹脂の全量に対して0.1〜30質量%が好ましい。
(B)熱硬化性樹脂は(メタ)アクリル樹脂を含んでいてもよい。(メタ)アクリル樹脂は、重合可能な炭素−炭素二重結合を有する(メタ)アクリレート化合物に由来する構造単位を有する重合体である。ここで、「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレート及びアクリレートを示す。かかる化合物としては、例えば、モノアクリレート化合物、モノメタクリレート化合物、ジアクリレート化合物、及び、ジメタクリレート化合物が挙げられる。
モノアクリレート化合物としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、アミルアクリレート、イソアミルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘプチルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ノニルアクリレート、デシルアクリレート、イソデシルアクリレート、ラウリルアクリレート、トリデシルアクリレート、ヘキサデシルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソステアリルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ジエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリプロピレングリコールアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、2−ブトキシエチルアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、2−ベンゾイルオキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、ベンジルアクリレート、2−シアノエチルアクリレート、γ−アクリロキシエチルトリメトキシシラン、グリシジルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、アクリロキシエチルホスフェート、及び、アクリロキシエチルフェニルアシッドホスフェートが挙げられる。
モノメタクリレート化合物としては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、イソアミルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、ヘプチルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ノニルメタクリレート、デシルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、トリデシルメタクリレート、ヘキサデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、イソステアリルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、ジエチレングリコールメタクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート、ポリプロピレングリコールメタクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、2−ブトキシエチルメタクリレート、メトキシジエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、2−フェノキシエチルメタクリレート、フェノキシジエチレングリコールメタクリレート、フェノキシポリエチレングリコールメタクリレート、2−ベンゾイルオキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、2−シアノエチルメタクリレート、γ−メタクリロキシエチルトリメトキシシラン、グリシジルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、メタクリロキシエチルホスフェート、及び、メタクリロキシエチルフェニルアシッドホスフェートが挙げられる。
ジアクリレート化合物としては、例えば、エチレングリコールジアクリレート;1,4−ブタンジオールジアクリレート;1,6−ヘキサンジオールジアクリレート;1,9−ノナンジオールジアクリレート;1,3−ブタンジオールジアクリレート;ネオペンチルグリコールジアクリレート;ジエチレングリコールジアクリレート;トリエチレングリコールジアクリレート;テトラエチレングリコールジアクリレート;ポリエチレングリコールジアクリレート;トリプロピレングリコールジアクリレート;ポリプロピレングリコールジアクリレート;ビスフェノールA、ビスフェノールF又はビスフェノールAD1モルとグリシジルアクリレート2モルの反応物;ビスフェノールA、ビスフェノールF又はビスフェノールADのポリエチレンオキサイド付加物のジアクリレート;ビスフェノールA、ビスフェノールF又はビスフェノールADのポリプロピレンオキサイド付加物のジアクリレート;ビス(アクリロキシプロピル)ポリジメチルシロキサン;ビス(アクリロキシプロピル)メチルシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマーが挙げられる。
ジメタクリレート化合物としては、例えば、エチレングリコールジメタクリレート;1,4−ブタンジオールジメタクリレート;1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート;1,9−ノナンジオールジメタクリレート;1,3−ブタンジオールジメタクリレート;ネオペンチルグリコールジメタクリレート;ジエチレングリコールジメタクリレート;トリエチレングリコールジメタクリレート;テトラエチレングリコールジメタクリレート;ポリエチレングリコールジメタクリレート;トリプロピレングリコールジメタクリレート;ポリプロピレングリコールジメタクリレート;ビスフェノールA、ビスフェノールF又はビスフェノールAD1モルとグリシジルメタクリレート2モルの反応物;ビスフェノールA、ビスフェノールF又はビスフェノールADのポリエチレンオキサイド付加物のジメタクリレート;ビスフェノールF又はビスフェノールADのポリプロピレンオキサイド付加物;ビス(メタクリロキシプロピル)ポリジメチルシロキサン;ビス(メタクリロキシプロピル)メチルシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマーが挙げられる。
これらの(メタ)アクリレート化合物は、1種単独又は2種以上を組み合わせて用いられる。また、(B)熱硬化性樹脂が(メタ)アクリル樹脂を含むとき、(メタ)アクリレート化合物をあらかじめ重合してから用いてもよく、(メタ)アクリレート化合物を(A)導電性粒子と混合すると同時に重合を行ってもよい。(メタ)アクリレート化合物は、1種単独又は2種以上を組み合わせて用いられる。
(メタ)アクリル樹脂としては、市販品を用いることができる。(メタ)アクリル樹脂としては、例えば、FINEDIC A−261(大日本インキ化学工業株式会社製、商品名)、及び、FINEDIC A−229−30(大日本インキ化学工業株式会社製、商品名)が挙げられる。
(B)熱硬化性樹脂が(メタ)アクリル樹脂を含む場合、導電性接着剤組成物はラジカル重合開始剤を含有することが好ましい。ラジカル重合開始剤としては、ボイドを有効に抑制する観点等から、有機過酸化物が好ましい。また、接着剤成分の硬化性及び粘度安定性を向上させる観点から、有機過酸化物の分解温度は、130〜200℃が好ましい。
ラジカル重合開始剤としては、通常用いられているものを使用できる。ラジカル重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル等のアゾ化合物が挙げられる。
ラジカル重合開始剤の含有量は、導電性接着剤組成物の総量に対して、0.01〜20質量%が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましく、0.5〜5質量%が更に好ましい。
導電性接着剤組成物における(B)熱硬化性樹脂の含有量は、更に優れた接着強度を得る観点から、導電性接着剤組成物の総量に対して、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上が更に好ましい。(B)熱硬化性樹脂の含有量は、充分な導電性を確保しやすい観点から、導電性接着剤組成物の総量に対して、60質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更に好ましい。
((C)成分:熱カチオン重合開始剤)
本実施形態に係る導電性接着剤組成物は、加熱により酸等を発生して重合を開始する(C)熱カチオン重合開始剤を含有する。(C)熱カチオン重合開始剤は、カチオン重合開始剤の中でも、加熱プロセス適用性及び熱硬化性に優れている。(C)熱カチオン重合開始剤は、(B)熱硬化性樹脂の重合を促進して充分な接続強度を与える効果に加え、(C)熱カチオン重合開始剤から発生する遊離酸が導電性粒子及び接続部の表面酸化膜を除去することにより導電性粒子の溶融及び凝集が促進されると共に接続部に対する充分な濡れ性が発現することによって導通パスを形成する効果を有する。
本実施形態に係る導電性接着剤組成物は、加熱により酸等を発生して重合を開始する(C)熱カチオン重合開始剤を含有する。(C)熱カチオン重合開始剤は、カチオン重合開始剤の中でも、加熱プロセス適用性及び熱硬化性に優れている。(C)熱カチオン重合開始剤は、(B)熱硬化性樹脂の重合を促進して充分な接続強度を与える効果に加え、(C)熱カチオン重合開始剤から発生する遊離酸が導電性粒子及び接続部の表面酸化膜を除去することにより導電性粒子の溶融及び凝集が促進されると共に接続部に対する充分な濡れ性が発現することによって導通パスを形成する効果を有する。
(C)熱カチオン重合開始剤としては、例えば、スルホニウム塩、チオフェニウム塩、チオラニウム塩、ベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、ヒドラジニウム塩、カルボン酸エステル、スルホン酸エステル、アミンイミド、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩及びホスホニウム塩が挙げられる。
(C)熱カチオン重合性開始剤の市販品としては、例えば、アデカオプトンCP−66、アデカオプトンCP−77(共に株式会社ADEKA製)、サンエイドSI−25、サンエイドSI−45、サンエイドSI−60L、サンエイドSI−60LA、サンエイドSI−60B、サンエイドSI−80L、サンエイドSI−100L、サンエイドSI−110L、サンエイドSI−180L、サンエイドSI−110、サンエイドSI−180(いずれも三新化学工業株式会社製)、CI−2855(日本曹達株式会社製)、及び、PI−2074、(ローディア・ジャパン株式会社製)が挙げられる。
なお、サンエイドSI−25、サンエイドSI−45、サンエイドSI−60L、サンエイドSI−60LA、サンエイドSI−60B、サンエイドSI−80L、サンエイドSI−100L、サンエイドSI−110L、サンエイドSI−180L、サンエイドSI−110、サンエイドSI−180(いずれも三新化学工業株式会社製)、CI−2855(日本曹達株式会社製)、PI−2074(ローディア・ジャパン株式会社製)は、後述する光カチオン重合開始剤としても用いることができる。
(C)熱カチオン重合開始剤としては、加熱接続プロセスにおける低温での硬化温度での速硬化性、可使時間の長さ、硬化物の強靭性等に優れる観点から、スルホニウム塩が好ましい。このような熱カチオン重合開始剤の市販品としては、例えば、「サンエイドSI−60L」、「サンエイドSI−80L」及び「サンエイドSI−100L」(いずれも三新化学工業社製、商品名)が挙げられる。
(C)熱カチオン重合開始剤としては、導電性粒子の表面酸化膜を除去する効果が更に優れる観点から、加熱により、アンチモン原子を含む無機酸イオン、リン原子を含む無機酸イオン、及び、ホウ素原子を含む有機酸イオンからなる群より選ばれる少なくとも一種を遊離酸として放出する化合物が好ましい。特に、(B)熱硬化性樹脂に対する速硬化性と(A)導電性粒子の表面酸化膜の除去能力に更に優れる観点から、加熱により、アンチモン原子を含む無機酸イオンを遊離酸として放出する化合物がより好ましい。市販品としては、例えば、「サンエイドSI−25」、「サンエイドSI−45」、「サンエイドSI−60L」、「サンエイドSI−80L」及び「サンエイドSI−100L」(いずれも三新化学工業社製、商品名)が挙げられる。
(C)熱カチオン重合開始剤の含有量は、優れた硬化性が得やすい観点から、(B)熱硬化性樹脂100質量部に対して、0.01質量部以上が好ましく、0.1質量部以上がより好ましい。(C)熱カチオン重合開始剤の含有量は、粘度が高くなることを抑制し、導電性接着剤組成物の優れた保存安定性を得る観点から、90質量部以下が好ましく、50質量部以下がより好ましい。
(B)熱硬化性樹脂と(C)熱カチオン重合開始剤との反応開始温度(重合開始温度)は、優れた保存安定性が得られやすい観点から、30℃以上が好ましく、40℃以上がより好ましく、60℃以上が更に好ましい。特に、太陽電池モジュール製造時の配線接続における設定温度までの到達時間が遅い場合であっても、反応開始温度がこれらの温度の範囲内であると、(A)導電性粒子の溶融及び凝集が起こる前に(B)熱硬化性樹脂の硬化が進行して導電性粒子の溶融及び凝集を妨げることが抑制しやすい。(B)熱硬化性樹脂と(C)熱カチオン重合開始剤との反応開始温度は、(B)熱硬化性樹脂の優れた硬化性が得られることにより太陽電池モジュール製造時の配線接続工程において充分な接続強度が得られやすい観点から、200℃以下が好ましく、180℃以下がより好ましく、160℃以下が更に好ましい。また、反応開始温度は、加熱接続時に硬化が進行し優れた接続強度が得られやすい観点から、30〜200℃が好ましく、40〜180℃がより好ましく、40〜160℃が更に好ましく、60〜160℃が特に好ましい。
(B)熱硬化性樹脂と(C)熱カチオン重合開始剤との反応開始温度は、溶剤を用いず(B)熱硬化性樹脂と(C)熱カチオン重合開始剤とを導電性接着剤組成物における配合比と同じ配合比で配合し、DSC測定によって昇温したときの硬化発熱反応が始まる温度を指す。反応開始温度は、例えば、下記の手順により測定することができる。まず、溶剤を用いず(B)熱硬化性樹脂と(C)熱カチオン重合開始剤とを混合する。次に、DSC測定によって昇温したときの単独硬化系における硬化発熱ピークを示すDSCチャートを得る。そして、硬化発熱ピークの立ち上がり温度(DSC Onset)を反応開始温度として得る。ここで、DSCチャートの発熱ピークが立ち上がる点Aを通る基線の延長線と、発熱ピークが立ち上がる点Aから発熱のピーク点Bとの間のDSC曲線の変曲点に対する接線との交点に相当する温度をOnset温度として用いることができる。
((D)成分:フラックス活性剤)
本実施形態に係る導電性接着剤組成物は、電気導通性が更に向上する観点から、(C)熱カチオン重合開始剤の他に(D)フラックス活性剤を更に含有していてもよい。(D)フラックス活性剤は、(A)導電性粒子の表面に形成された酸化膜の除去能を示すものである。このようなフラックス活性剤を用いることにより、(A)導電性粒子の溶融及び凝集の妨げとなる酸化膜の除去が更に促進され、電気導通性が更に向上する。(D)フラックス活性剤は、(C)熱カチオン重合開始剤の硬化反応を阻害しない化合物であれば、特に制限なく公知の化合物を使用することができる。
本実施形態に係る導電性接着剤組成物は、電気導通性が更に向上する観点から、(C)熱カチオン重合開始剤の他に(D)フラックス活性剤を更に含有していてもよい。(D)フラックス活性剤は、(A)導電性粒子の表面に形成された酸化膜の除去能を示すものである。このようなフラックス活性剤を用いることにより、(A)導電性粒子の溶融及び凝集の妨げとなる酸化膜の除去が更に促進され、電気導通性が更に向上する。(D)フラックス活性剤は、(C)熱カチオン重合開始剤の硬化反応を阻害しない化合物であれば、特に制限なく公知の化合物を使用することができる。
(D)フラックス活性剤としては、例えば、ロジン系樹脂、及び、分子内にカルボキシル基、フェノール性水酸基又はアルコール性水酸基を有する化合物が挙げられる。これらの中で、良好なフラックス活性を示し、かつ、前記(B)熱硬化性樹脂として用いることのできるエポキシ樹脂と反応性を示すことから、分子内に水酸基及びカルボキシル基を有する化合物が好ましく、脂肪族ジヒドロキシカルボン酸がより好ましい。具体的には、下記一般式(II)で表される化合物、又は、酒石酸が好ましい。
ここで、式(II)中、R2は、炭素数1〜5のアルキル基を示し、良好な接続強度及び接続信頼性を更に有効に得る観点から、メチル基、エチル基又はプロピル基が好ましい。また、n21及びn22は、それぞれ独立に0〜5の整数を示し、良好な接続強度及び接続信頼性を更に有効に得る観点から、n21が0かつn22が1であるか、n21及びn22の両方が1であることが好ましい。
上記一般式(II)で表される化合物としては、例えば、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸、及び、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ペンタン酸が挙げられる。
(D)フラックス活性剤の含有量は、接続部の表面酸化膜の量が多い場合において金属の溶融性が低下することが抑制され、優れた導電性が得られやすい観点から、(A)導電性粒子の全量100質量部に対して、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。(D)フラックス活性剤の含有量は、優れた保存安定性及び印刷性が得られやすい観点から、(A)導電性粒子の全量100質量部に対して、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましく、10質量部以下が更に好ましい。(D)フラックス活性剤の含有量は、良好な接続強度及び接続信頼性を更に有効に得る観点から、(A)導電性粒子の全量100質量部に対して、0.5〜20質量部が好ましく、0.5〜15質量部がより好ましい。(D)フラックス活性剤の含有量は、保存安定性及び導電性に更に優れる観点から、1〜10質量部が更に好ましい。
(その他の成分)
本実施形態に係る導電性接着剤組成物は、紫外線等のエネルギー線の照射によりカチオン重合を開始することのできる酸を発生する光カチオン重合開始剤(熱カチオン重合開始剤としても用いられる化合物を除く)を含有していてもよい。光カチオン重合開始剤としては、例えば、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩及び芳香族アンモニウム塩が挙げられる。
本実施形態に係る導電性接着剤組成物は、紫外線等のエネルギー線の照射によりカチオン重合を開始することのできる酸を発生する光カチオン重合開始剤(熱カチオン重合開始剤としても用いられる化合物を除く)を含有していてもよい。光カチオン重合開始剤としては、例えば、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩及び芳香族アンモニウム塩が挙げられる。
光カチオン重合性開始剤の市販品としては、例えば、CPI−100P、CPI−110P、CPI−101A、CPI−200K、CPI−210S(いずれもサンアプロ株式会社製)、サイラキュア光硬化開始剤UVI−6990、サイラキュア光硬化開始剤UVI−6992、サイラキュア光硬化開始剤UVI−6976(いずれもダウ・ケミカル日本株式会社製)、アデカオプトマーSP−150、アデカオプトマーSP−152、アデカオプトマーSP−170、アデカオプトマーSP−172、アデカオプトマーSP−300(いずれも株式会社ADEKA製)、CI−5102(日本曹達株式会社製)、エサキュア1064、エサキュア1187(共にランベルティ社製)、オムニキャット550(アイジーエム レジン社製)、及び、イルガキュア250(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製)が挙げられる。
本実施形態に係る導電性接着剤組成物は、硬化速度の制御の観点から、(C)熱カチオン重合開始剤の他に硬化触媒を更に含有していてもよい。硬化触媒は、(B)熱硬化性樹脂の重合を促進する役割を有する。このような硬化触媒としては、可使時間の長さ、硬化物の耐熱性等に優れる観点から、イミダゾール化合物が好ましい。中でも、イミダゾール系エポキシ樹脂硬化剤が好ましい。市販品としては、例えば、イミダゾール系エポキシ樹脂硬化剤である、2P4MHZ−PW(2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール)、2PHZ−PW(2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール)、C11Z−CN(1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール)、2E4MZ−CN(1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール)、2PZ−CN(1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール)、2MZ−A(2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン)、2E4MZ−A(2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン)、及び、2MAOK−PW(2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物)(いずれも四国化成工業株式会社製、商品名)が挙げられる。これらの硬化触媒は、1種単独又は2種以上を組み合わせて用いられる。
硬化触媒の含有量は、優れた硬化性が得られやすい観点から、(B)熱硬化性樹脂100質量部に対して、0.01質量部以上が好ましく、0.1質量部以上がより好ましい。硬化触媒の含有量は、粘度が増大することが抑制され、導電性接着剤組成物を取り扱う際の優れた作業性が得られやすい観点から、90質量部以下が好ましく、50質量部以下がより好ましい。
本実施形態に係る導電性接着剤組成物は、上述の各成分の他、必要に応じて、応力緩和のための可撓剤、又は、作業性を向上させるための添加剤(希釈剤、接着力向上剤、濡れ性向上剤及び消泡剤からなる群より選ばれる少なくとも一種の添加剤)を含有していてもよい。また、これらの成分の他、本実施形態に係る効果を阻害しない範囲において各種添加剤を含有していてもよい。
可撓剤としては、例えば、液状ポリブタジエン(宇部興産株式会社製、商品名「CTBN−1300×31」、「CTBN−1300×9」;日本曹達株式会社製、商品名「NISSO−PB−C−2000」)、ウレタンアクリレートオリゴマー(新中村化学工業株式会社製、商品名「NKオリゴ U−200PA」、「NKオリゴ UA−4200」;日本化薬株式会社製、商品名「UXF−4001−M35」、「UXF−4200」、「UX−3204」、「UX−0937」、「UX−4101」;共栄社化学株式会社製、商品名「UF−B01P」、「UF−B01X」、「UF−B01T」、「UF−A01P」、「UF−07DF」)が挙げられる。可撓剤を用いる場合、可撓剤の含有量は、(B)熱硬化性樹脂の総量100質量部に対して、0.01〜500質量部が好ましい。上記ウレタンアクリレートオリゴマーを使用する場合、導電性接着剤組成物はラジカル重合開始剤を含有していてもよい。
本実施形態に係る導電性接着剤組成物は、接着力が向上する観点から、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等のカップリング剤を接着力向上剤として含有していてもよい。シランカップリング剤としては、例えば、信越化学工業株式会社製、商品名「KBM−573」が挙げられる。また、本実施形態に係る導電性接着剤組成物は、濡れ性が向上する観点から、アニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等の濡れ性向上剤を含有していてもよい。さらに、導電性接着剤組成物は、消泡剤としてシリコーン油等を含有していてもよい。上記接着力向上剤、濡れ性向上剤及び消泡剤は、それぞれ1種単独又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの添加剤を用いる場合、各添加剤の含有量は、導電性接着剤組成物の全量に対して、0.1〜10質量%が好ましい。
本実施形態に係る導電性接着剤組成物の接着剤成分は、ペースト組成物の作製時の作業性及び使用時の塗布作業性を更に良好にするため、必要に応じて希釈剤を含有することができる。このような希釈剤としては、γ−ブチロラクトン、酢酸エチル、ブチルセロソルブ、カルビトール、酢酸ブチルセロソルブ、酢酸カルビトール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、α−テルピネオール等の比較的沸点の高い有機溶剤が好ましい。これらの希釈剤を含有する場合、希釈剤の含有量は、導電性接着剤組成物の全量に対して0.1〜30質量%が好ましい。
本実施形態に係る導電性接着剤組成物は、フィラーを含有していてもよい。フィラーとしては、例えば、シリコーンゴム、アクリルゴム、ポリスチレン等のポリマー粒子;ダイヤモンド、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、アルミナ、シリカ等の無機粒子が挙げられる。これらのフィラーは、1種単独又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記フィラーとしては、接続部の衝撃吸収性に優れる観点から、シリコーンゴムパウダー、シリコーン複合パウダー、及び、シリコーンレジンパウダーが好ましい。シリコーンゴムパウダーとしては、例えば、信越シリコーン株式会社製の商品名「KMP−597」、「KMP−598」、「KMP−594」及び「X52−875」が挙げられる。シリコーン複合パウダーとしては、例えば、信越シリコーン株式会社製の商品名「KMP−600」、「KMP−601」、「KMP−605」及び「X52−7030」が挙げられる。シリコーンレジンパウダーとしては、例えば、信越シリコーン株式会社製の商品名「KMP−590」、「KMP−701」、「X−52−854」及び「X52−1621」が挙げられる。
上記フィラーとしては、導電性接着剤組成物の沈降防止に優れる観点から、シリカフィラーが好ましい。シリカフィラーとしては、例えば、日本アエロジル株式会社製の商品名「R972」、「R972V」、「R972CF」、「R974」、「R202」、「R805」、「R812」、「R812S」、「R812S」、「RX200」及び「RY200」が挙げられる。
本実施形態に係る導電性接着剤組成物は、(B)熱硬化性樹脂(例えばエポキシ樹脂)の硬化速度を調整するために硬化剤を含有していてもよい。
硬化剤としては、従来用いられているものであれば特に限定されず、市販品が入手できる。市販の硬化剤としては、例えば、フェノールノボラック樹脂であるH−1(明和化成株式会社製、商品名)、VR−9300(三井東圧化学株式会社製、商品名);フェノールアラルキル樹脂であるXL−225(三井東圧化学株式会社製、商品名);下記一般式(III)で表されるp−クレゾールノボラック樹脂であるMTPC(本州化学工業株式会社製、商品名);アリル化フェノールノボラック樹脂であるAL−VR−9300(三井東圧化学株式会社製、商品名);下記一般式(IV)で表される特殊フェノール樹脂であるPP−700−300(日本石油化学株式会社製、商品名)が挙げられる。
式(III)中、R3は、それぞれ独立に1価の炭化水素基(好ましくはメチル基又はアリル基)を示し、n3は、1〜5の整数を示す。また、式(IV)中、R41は、アルキル基(好ましくはメチル基又はエチル基)を示し、R42は、水素原子又は1価の炭化水素基を示し、n4は、2〜4の整数を示す。
硬化剤としては、ジシアンジアミド等のように従来硬化剤として用いられているものを用いることができ、市販品が入手できる。市販品としては、例えば、下記一般式(V)で表される二塩基酸ジヒドラジドであるADH、PDH、SDH(いずれも日本ヒドラジン工業株式会社製、商品名)、及び、エポキシ樹脂とアミン化合物との反応物からなるマイクロカプセル型硬化剤であるノバキュア(旭化成工業株式会社製、商品名)が挙げられる。これらの硬化剤は、1種単独又は2種以上を組み合わせて用いられる。
式(V)中、R5は、2価の芳香族基、又は、炭素数1〜12の直鎖若しくは分岐鎖のアルキレン基を示し、好ましくはm−フェニレン基又はp−フェニレン基を示す。
硬化剤は、保存安定性及び硬化時間に優れる観点から、実質的には、導電性接着剤組成物に含有されていないことが好ましい。実質的とは、導電性接着剤組成物の全量に対して0.05質量%以下であることをいう。
本実施形態において、上述の各成分は、それぞれにおいて例示されたもののいずれを組み合わせてもよい。
本実施形態に係る導電性接着剤組成物は、上述の各成分を一度に又は複数回に分けて混合、溶解、解粒混練又は分散することにより各成分が均一に分散したペースト状の組成物として得られる。このようにペースト状の組成物を得る際には、必要に応じて加熱してもよい。分散・溶解装置としては、例えば、公知の撹拌器、らいかい器、3本ロール及びプラネタリーミキサーが挙げられる。
以上説明した本実施形態に係る導電性接着剤組成物によれば、良好な導電性が得られ、かつ、高温高湿試験(例えば85℃/85%)後も所定の接着力と導電性を両立することができる。さらに、本実施形態に係る導電性接着剤組成物は、太陽電池セルの電極と配線部材とを電気的に接続するために用いられ、低温短時間の加熱工程においても、良好な接続強度と導電性を両立することができる。
<接続体、太陽電池モジュール及びこれらの製造方法>
次に、本実施形態に係る接続体、太陽電池モジュール及びこれらの製造方法を説明する。本実施形態に係る接続体は、太陽電池セルと、本実施形態に係る導電性接着剤組成物又はその硬化物を介して、太陽電池セルの電極面に配置された電極と電気的に接続された配線部材と、を備え、本実施形態に係る導電性接着剤組成物を用いて太陽電池セルの電極と配線部材とを電気的に接続することにより得ることができる。本実施形態に係る接続体は、太陽電池セルを複数備えていてもよく、配線部材を介して複数の太陽電池セルを互いに接続することにより得られてもよい。
次に、本実施形態に係る接続体、太陽電池モジュール及びこれらの製造方法を説明する。本実施形態に係る接続体は、太陽電池セルと、本実施形態に係る導電性接着剤組成物又はその硬化物を介して、太陽電池セルの電極面に配置された電極と電気的に接続された配線部材と、を備え、本実施形態に係る導電性接着剤組成物を用いて太陽電池セルの電極と配線部材とを電気的に接続することにより得ることができる。本実施形態に係る接続体は、太陽電池セルを複数備えていてもよく、配線部材を介して複数の太陽電池セルを互いに接続することにより得られてもよい。
本実施形態に係る太陽電池モジュールは、太陽電池セルと、本実施形態に係る導電性接着剤組成物又はその硬化物を介して、太陽電池セルの電極面に配置された電極と電気的に接続された配線部材と、太陽電池セルの受光面側、及び、当該受光面とは反対側の裏面側にそれぞれ積層された封止材と、太陽電池セルの受光面側の封止材に積層されたガラス部材と、太陽電池セルの裏面側の封止材に積層された保護フィルムとを備える。本実施形態に係る太陽電池モジュールは、後述するように、本実施形態に係る導電性接着剤組成物を用いて太陽電池セルの電極と配線部材とを電気的に接続すると共に、封止材、ガラス部材及び保護フィルムを配置することにより得ることができる。本実施形態に係る太陽電池モジュールは、太陽電池セルを複数備えていてもよく、配線部材を介して複数の太陽電池セルを互いに接続すると共に、封止材、ガラス部材及び保護フィルムを配置することにより得られてもよい。
太陽電池セルとしては、例えば、ヘテロ接合型太陽電池セル、結晶シリコン型太陽電池セル、及び、裏面電極型(バックコンタクト型)太陽電池セルが挙げられる。
図1は、本実施形態に係る太陽電池モジュールの要部を示す模式図であり、複数の太陽電池セルが相互に配線接続された構造の概略を示している。図1(a)は太陽電池セルの表面(受光面)側を示し、図1(b)は裏面(受光面とは反対側の面)側を示し、図1(c)は側面側を示す。
図1に示すように、太陽電池モジュール100は、太陽電池セル20を複数有しており、複数の太陽電池セル20が、配線部材4によって複数相互に接続されている。太陽電池セル20は、基板6と、基板6の表面側に配置されたグリッド電極7及びバス電極(バスバー電極、表面電極)3aと、基板6の裏面側に配置された裏面電極8及びバス電極(バスバー電極、表面電極)3bとを有している。配線部材4の一端は、一の太陽電池セル20のバス電極3aに導電性接着剤10を介して接続されている。配線部材4の他端は、他の太陽電池セル20のバス電極3bに導電性接着剤10又はその硬化物を介して接続されている。これにより、太陽電池セル20が直列に接続される。導電性接着剤10は、本実施形態に係る導電性接着剤組成物を含有している。
図2は、本実施形態に係る太陽電池モジュールの製造方法の一例を説明するための図である。本実施形態に係る太陽電池モジュールの製造方法は、例えば、接着剤塗布工程と、接続体作製工程と、第1の積層工程(封止材積層工程)と、第2の積層工程(透光部材積層工程、及び、保護フィルム積層工程)と、加熱工程とをこの順に備える。
接着剤塗布工程では、太陽電池セル20の電極面(例えば、バス電極3aが配置された表面、及び、バス電極3bが配置された裏面)又は配線部材4に導電性接着剤10を塗布する。電極面に塗布する場合には、少なくともバス電極3a,3bに導電性接着剤10を塗布する。導電性接着剤10は、本実施形態に係る導電性接着剤組成物を含有している。導電性接着剤10の塗布方法としては、例えば、バス電極3a,3b又は配線部材4上に導電性接着剤10をディスペンス法、スクリーン印刷法、スタンピング法等によって塗布する方法が挙げられる。
接続体作製工程では、太陽電池セル20のバス電極3a,3bと、バス電極3a,3bに電気的に接続される配線部材4とを相対向するように配置すると共に積層して接続体を得る。接続体作製工程では、例えば、導電性接着剤10を介して、一の配線部材4とバス電極3aとを相対向するように配置すると共に他の配線部材4とバス電極3bとを相対向するように配置して前記一の配線部材4、基板6及び前記他の配線部材4を積層することにより接続体30を作製する。
第1の積層工程では、太陽電池セル20の受光面側と、当該受光面とは反対側の裏面側とに封止材2を積層することにより接続体30の両面に封止材2を積層する。封止材2は、受光面側及び裏面側のそれぞれにおいて配線部材4を介して太陽電池セル20上に配置される。
第2の積層工程は、太陽電池セル20の受光面側の封止材2上にガラス部材(透光部材)1を積層する透光部材積層工程と、太陽電池セル20の裏面側の封止材2上にバックシート(保護フィルム、保護部材)5を積層する保護フィルム積層工程と、を有する。透光部材積層工程及び保護フィルム積層工程の順序は、特に限定されず、同時に行ってもよい。
加熱工程では、第2の積層工程で得られた積層体(ガラス部材1、封止材2、バックシート5及び太陽電池セル20を有する積層体)を加熱することで、太陽電池セル20のバス電極3a,3bと配線部材4とを電気的に接続すると共に接着しながら、太陽電池セル20を封止する。加熱温度は例えば140〜190℃であり、加熱時間は例えば1〜30分間である。加熱工程では、積層体を加熱圧着してもよく、圧力は例えば0.1〜0.3MPaである。加熱工程により、太陽電池セル20のバス電極3a,3bと配線部材4間の電気的な接続、及び、熱硬化性樹脂の硬化による接着が行われると同時に、太陽電池セル20の封止が行われ、太陽電池モジュールを一括で製造することができる。
本実施形態に係る太陽電池モジュールの製造方法は、接続体作製工程の後、140〜190℃で0.5〜60秒間、0.1〜6.0MPaの圧力で加熱圧着することで、太陽電池セル20のバス電極3a,3bと配線部材4との電気的な接続を行う仮圧着工程を備えていてもよい。仮圧着を行うことで、太陽電池セル20と配線部材4の接続が行われるため、接続体30が取り扱いやすくなり、太陽電池モジュール製造時の作業性が向上する。この方法で電気的に接続された接続体30は太陽電池ストリングスと呼ばれる。
仮圧着工程を行う方法としては、例えば、太陽電池セル20のバス電極3a,3bと配線部材4とからなる接続部を低圧でピン固定した状態で熱風を吹き付けて加熱するホットエア方式;平滑な熱板を押し当てるホットバー方式が挙げられる。このとき、上記接続部は、140〜190℃の温度で0.5〜60秒間、0.1〜6.0MPaの圧力で加熱圧着され、電気的に接続された接続体30が形成される。
仮圧着を行った場合、例えば、仮圧着工程で得られた接続体30の両面に封止材2を配置し、太陽電池セル20の受光面側の封止材2上にガラス部材1を配置すると共に太陽電池セル20の裏面の封止材2上にバックシート5を配置することにより得られた積層体を130〜180℃の温度で1〜30分間、0.1〜6MPaの圧力で加熱圧着して太陽電池セルを封止することで、太陽電池モジュールを製造することができる。
ガラス部材1としては、例えば、太陽電池用ディンプル付き白板強化ガラスが挙げられる。封止材2としては、例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)及び/又はポリビニルブチラールを用いた封止樹脂が挙げられる。配線部材4としては、例えば、銅線に半田をディップ又はめっきしたTAB線が挙げられる。バックシート5としては、例えば、PET系又はテドラ−PET積層材料、及び、金属箔−PET積層材料が挙げられる。基板6としては、例えば、シリコンウェハが挙げられる。
本実施形態に係る導電性接着剤組成物は、プラスチック基板上に配置された金属配線を有するフィルム状配線基板を使用する場合にも、上述と同様の工程で太陽電池セルの電極との接続を行うことができる。
図3は、太陽電池セルと配線部材との接続部を示す模式断面図である。本実施形態に係る導電性接着剤組成物の硬化物を介して接続された太陽電池セル20及び配線部材4の接続部(配線接合部。例えば、前記接続体30からなる太陽電池ストリングスの接続部)は、配線部材4が延びる方向に垂直な断面(例えば、配線部材4が延びる方向における中央の断面)をみたときに、図3(a)に示すように、バス電極3が配線部材4に金属部Mを介して電気的に接続された構造を有している。接続部は、(A)導電性粒子が溶融及び凝集して形成された金属導通パスを有する金属部Mと、接着補強効果を有すると共に(B)熱硬化性樹脂の硬化物によって構成される樹脂部Rとを有している。
配線部材4が延びる方向に垂直な断面において金属部の面積と樹脂部の面積との面積比[金属部]:[樹脂部]は、5:95〜90:10が好ましく、10:90〜75:25がより好ましく、20:80〜70:30が更に好ましい。この面積比が5:95以上(すなわち、金属部の量が少な過ぎない)であると、電気抵抗が増大することを抑制しやすい。前記面積比が90:10以下(すなわち、金属部の量が多過ぎない)であると、優れた接続強度及びハンドリング性が得られやすい。
金属部Mが単一の部分ではなく金属部Mが複数部分に分離していても、導通性と接着補強効果に何ら支障はない。例えば、図3(b)に示すように、金属部M間に樹脂部Rを噛み込んだ形態においては、むしろ接続部への応力緩和効果が助長されることにより接続強度が向上するため信頼性が向上する。このような形態は、(C)熱カチオン重合開始剤による(B)熱硬化性樹脂の速硬化によって樹脂部Rが増粘し、導電性粒子の溶融一体化が抑制されることで達成される。このとき[金属部]:[樹脂部]の最適な面積比は上記の比率と同様である。
図3に示される上記配線接合部の構造は、(C)熱カチオン重合開始剤によって(B)熱硬化性樹脂の重合反応が速やかに進行し、バス電極3と配線部材4の間で充分な接着力を有する樹脂硬化物が形成されると共に、遊離した酸によって金属の表面酸化膜の除去効果が発現し(A)導電性粒子の溶融及び凝集によって金属導通パスが形成されることにより達成される。この構造によって、樹脂硬化物が金属導通パス及びバス電極の周囲を補強すると同時に、バス電極と配線部材間の充分な接着力を担うため、太陽電池ストリングスの配線部分の接続強度を劇的に改善することができる。
本実施形態に係る導電性接着剤組成物は裏面電極型(バックコンタクト型)太陽電池セルの電極と配線部材(配線基板)との接続にも用いることができる。この場合、まず、配線基板の電極上又は太陽電池セルの裏面電極上に本実施形態に係る導電性接着剤組成物を塗布する。次いで、配線基板の電極部(導電性接着剤組成物塗布部)が露出するようにくりぬいた封止材を配線基板上に積層した後、その上に太陽電池セルを、太陽電池セルの裏面電極と配線基板の電極部とが導電性接着剤組成物を介して接するように配置する。さらに、太陽電池セルの受光面上に封止材とガラス部材を配置し、太陽電池セルの裏面側に封止材とバックシートを配置した後、積層体を加熱圧着することで、太陽電池セルの裏面電極と配線基板の電極との接続及び接着と、太陽電池セルの封止を一括で行うことができる。ガラス部材及び封止材としては、前記太陽電池モジュールの製造方法で挙げたものを用いることができる。
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<導電性接着剤の準備>
実施例及び比較例で用いた材料は、下記の方法で作製したもの、あるいは、入手したものである。導電性接着剤の調製方法の詳細を実施例1に示すが、その他の実施例及び比較例の樹脂組成、配合比は表1及び表2に示すとおりであり、調製方法に関しては実施例1と同様である。
実施例及び比較例で用いた材料は、下記の方法で作製したもの、あるいは、入手したものである。導電性接着剤の調製方法の詳細を実施例1に示すが、その他の実施例及び比較例の樹脂組成、配合比は表1及び表2に示すとおりであり、調製方法に関しては実施例1と同様である。
(実施例1)
YL−980(三菱化学株式会社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の商品名)27.3質量部と、サンエイドSI−60L(三新化学工業株式会社製、商品名、熱カチオン重合開始剤)2.7質量部とを混合した後、3本ロールを3回通して接着剤成分を調製した。
YL−980(三菱化学株式会社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の商品名)27.3質量部と、サンエイドSI−60L(三新化学工業株式会社製、商品名、熱カチオン重合開始剤)2.7質量部とを混合した後、3本ロールを3回通して接着剤成分を調製した。
次に、上述の接着剤成分30質量部に対して、導電性粒子であるSn42−Bi58はんだ粒子(平均粒子径20μm、三井金属鉱業株式会社製、融点138℃)70質量部を加えた後、プラネタリーミキサーを用いて撹拌を行った。さらに、500Pa以下で10分間脱泡処理を行うことにより導電性接着剤として導電性接着剤組成物を得た。
(実施例2〜10、比較例1〜7)
表1及び表2に示す組成とした以外は実施例1と同様にして、導電性接着剤として、実施例2〜10及び比較例1〜7の導電性接着剤組成物を得た。表1及び表2中の各材料の配合割合の単位は質量部である。表1及び表2中の成分の詳細は下記のとおりである。
YDF−170:ビスフェノールF型エポキシ樹脂、東都化成株式会社製
630LSD:アミン型エポキシ樹脂、三菱化学株式会社製
サンエイドSI−80L:熱カチオン重合開始剤、三新化学工業株式会社製
サンエイドSI−100L:熱カチオン重合開始剤、三新化学工業株式会社製
2P4MHZ−PW:イミダゾール化合物、四国化成工業株式会社製
2PZ−CN:イミダゾール化合物、四国化成工業株式会社製
BHPA(2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸)
Sn42−Bi57−Ag1はんだ粒子:平均粒子径20μm、三井金属鉱業株式会社製、融点139℃
Sn96.5−Ag3−Cu0.5はんだ粒子:平均粒子径20μm、三井金属鉱業株式会社製、融点217℃
Sn99.3−Cu0.7はんだ粒子:平均粒子径20μm、三井金属鉱業株式会社製、融点227℃
表1及び表2に示す組成とした以外は実施例1と同様にして、導電性接着剤として、実施例2〜10及び比較例1〜7の導電性接着剤組成物を得た。表1及び表2中の各材料の配合割合の単位は質量部である。表1及び表2中の成分の詳細は下記のとおりである。
YDF−170:ビスフェノールF型エポキシ樹脂、東都化成株式会社製
630LSD:アミン型エポキシ樹脂、三菱化学株式会社製
サンエイドSI−80L:熱カチオン重合開始剤、三新化学工業株式会社製
サンエイドSI−100L:熱カチオン重合開始剤、三新化学工業株式会社製
2P4MHZ−PW:イミダゾール化合物、四国化成工業株式会社製
2PZ−CN:イミダゾール化合物、四国化成工業株式会社製
BHPA(2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸)
Sn42−Bi57−Ag1はんだ粒子:平均粒子径20μm、三井金属鉱業株式会社製、融点139℃
Sn96.5−Ag3−Cu0.5はんだ粒子:平均粒子径20μm、三井金属鉱業株式会社製、融点217℃
Sn99.3−Cu0.7はんだ粒子:平均粒子径20μm、三井金属鉱業株式会社製、融点227℃
(比較例8〜9)
比較例8では、導電性接続剤として、市販のSn42−Bi58クリームはんだを用いた。比較例9では、導電性接続剤として、市販のAgペーストを用いた。なお、これらの導電接着剤は、熱カチオン重合開始剤を含有していない。
比較例8では、導電性接続剤として、市販のSn42−Bi58クリームはんだを用いた。比較例9では、導電性接続剤として、市販のAgペーストを用いた。なお、これらの導電接着剤は、熱カチオン重合開始剤を含有していない。
<特性評価>
上記実施例及び比較例の導電性接着剤の特性を下記の方法で評価した。
上記実施例及び比較例の導電性接着剤の特性を下記の方法で評価した。
[太陽電池ストリングスの作製]
(実施例1〜8、比較例1〜9)
10個のヘテロ接合型太陽電池セル(125mm×125mm、厚さ210μm)を準備した。次に、実施例1〜8及び比較例1〜9の液状の導電性接着剤を、ヘテロ接合型太陽電池セル(125mm×125mm、厚さ210μm)の受光面上に形成された表面電極(材質:銀ペースト、2mm×125mm)上にメタルマスク(厚み100μm、開口寸法1.2mm×125mm)を用いて印刷した後、配線部材としてはんだ被覆タブ線(日立電線株式会社製、商品名:A−TPS)を配置した。同様の処理を太陽電池セルの裏面電極に行い、はんだ被覆タブ線を配置した。そして、太陽電池用ホットエア加熱接続装置(株式会社エヌ・ピー・シー製、商品名:NTS−150−M)を用いて、加熱部分の温度が160℃となるように設定して30秒間加熱し、太陽電池の表面電極とはんだ被覆タブ線、及び、太陽電池の裏面電極とはんだ被覆タブ線のそれぞれが導電性接着剤を介して接続された10連の太陽電池ストリングを作製した。また、ホットエア加熱の条件を160℃/10秒、160℃/2秒、220℃/2秒へ変更して、上記と同様に太陽電池ストリングを作製した。
(実施例1〜8、比較例1〜9)
10個のヘテロ接合型太陽電池セル(125mm×125mm、厚さ210μm)を準備した。次に、実施例1〜8及び比較例1〜9の液状の導電性接着剤を、ヘテロ接合型太陽電池セル(125mm×125mm、厚さ210μm)の受光面上に形成された表面電極(材質:銀ペースト、2mm×125mm)上にメタルマスク(厚み100μm、開口寸法1.2mm×125mm)を用いて印刷した後、配線部材としてはんだ被覆タブ線(日立電線株式会社製、商品名:A−TPS)を配置した。同様の処理を太陽電池セルの裏面電極に行い、はんだ被覆タブ線を配置した。そして、太陽電池用ホットエア加熱接続装置(株式会社エヌ・ピー・シー製、商品名:NTS−150−M)を用いて、加熱部分の温度が160℃となるように設定して30秒間加熱し、太陽電池の表面電極とはんだ被覆タブ線、及び、太陽電池の裏面電極とはんだ被覆タブ線のそれぞれが導電性接着剤を介して接続された10連の太陽電池ストリングを作製した。また、ホットエア加熱の条件を160℃/10秒、160℃/2秒、220℃/2秒へ変更して、上記と同様に太陽電池ストリングを作製した。
(実施例9〜10)
ヘテロ接合型太陽電池セルに代えて結晶シリコン型太陽電池セルを用いると共に、実施例9〜10の導電性接着剤を用いて、上記と同様に太陽電池ストリングスを作製した。
ヘテロ接合型太陽電池セルに代えて結晶シリコン型太陽電池セルを用いると共に、実施例9〜10の導電性接着剤を用いて、上記と同様に太陽電池ストリングスを作製した。
[接続強度評価]
上記方法で作製した太陽電池ストリングスのはんだ被覆タブ線部分のみを持ち、太陽電池ストリングスの水平面に対して垂直に引き上げる方法を用いて、接続部の接続強度を評価した。はんだ被覆タブ線と太陽電池ストリングスとが引き上げ時に自重によって剥がれない場合を、充分な接続強度を維持しているとみなして「A」と評価した。自重によって端部のみが剥がれる場合を「B」と評価した。はんだ被覆タブ線を引き上げたときに、太陽電池ストリングスが持ち上がることなく、自重によって接続部からタブ線が完全に剥離する場合を「C」と評価した。結果を表1及び表2に示す。
上記方法で作製した太陽電池ストリングスのはんだ被覆タブ線部分のみを持ち、太陽電池ストリングスの水平面に対して垂直に引き上げる方法を用いて、接続部の接続強度を評価した。はんだ被覆タブ線と太陽電池ストリングスとが引き上げ時に自重によって剥がれない場合を、充分な接続強度を維持しているとみなして「A」と評価した。自重によって端部のみが剥がれる場合を「B」と評価した。はんだ被覆タブ線を引き上げたときに、太陽電池ストリングスが持ち上がることなく、自重によって接続部からタブ線が完全に剥離する場合を「C」と評価した。結果を表1及び表2に示す。
[金属凝集状態評価]
上記方法で作製した太陽電池ストリングス(比較例2を除く)の表面電極と配線部材との間の導電性接着剤中の金属の凝集状態をX線透過装置(株式会社島津製作所製、マクロフォーカスX線透視装置、SMX−1000)で観察した(観察写真である図4参照)。導電性粒子が完全に溶融及び凝集している場合を「A」と評価し、溶融金属パス間に樹脂の噛み込みがある場合を「B」と評価し、導電性粒子が溶融及び凝集していない場合を「C」と評価した。導電性粒子が溶融及び凝集していない場合(非凝集)は、図4に示すように、X線透過装置像で黒い粒状の金属粒子が観測される。また、導電性粒子が溶融及び凝集している場合は、非凝集の時に見られた黒い粒状の金属粒子が観測されず、導電性粒子が溶融してできたバルク状の金属凝集体が一面の黒い影となって見られる。なお、完全溶融の「A」、及び、樹脂が噛み込んだ「B」の場合は、導電パス面積が本質的に変わらないため、導通性に関して差は見られない。結果を表1及び表2に示す。
上記方法で作製した太陽電池ストリングス(比較例2を除く)の表面電極と配線部材との間の導電性接着剤中の金属の凝集状態をX線透過装置(株式会社島津製作所製、マクロフォーカスX線透視装置、SMX−1000)で観察した(観察写真である図4参照)。導電性粒子が完全に溶融及び凝集している場合を「A」と評価し、溶融金属パス間に樹脂の噛み込みがある場合を「B」と評価し、導電性粒子が溶融及び凝集していない場合を「C」と評価した。導電性粒子が溶融及び凝集していない場合(非凝集)は、図4に示すように、X線透過装置像で黒い粒状の金属粒子が観測される。また、導電性粒子が溶融及び凝集している場合は、非凝集の時に見られた黒い粒状の金属粒子が観測されず、導電性粒子が溶融してできたバルク状の金属凝集体が一面の黒い影となって見られる。なお、完全溶融の「A」、及び、樹脂が噛み込んだ「B」の場合は、導電パス面積が本質的に変わらないため、導通性に関して差は見られない。結果を表1及び表2に示す。
[太陽電池モジュールの作製]
上記方法で作製した太陽電池ストリングスに関して、太陽電池セルの裏面に封止樹脂(三井化学ファブロ株式会社製、商品名:ソーラーエバSC50B)及び保護フィルム(株式会社コバヤシ製、商品名:コバテックPV)を積層し、太陽電池セルの表面(受光面)に封止樹脂(三井化学ファブロ株式会社製、ソーラーエバSC50B)及びガラス部材(200×200×3mm)を積層して積層体を得た。次に、真空ラミネータ(株式会社エヌ・ピー・シー製、商品名:LM−50×50−S)の熱板側にガラス部材が接するように積層体を搭載して5分間0.1MPaの減圧下に置いた後、真空ラミネータの真空を解放した状態で140℃、10分間加熱して太陽電池モジュールを作製した。この際、140℃に到達するまでの時間は8分であった。
上記方法で作製した太陽電池ストリングスに関して、太陽電池セルの裏面に封止樹脂(三井化学ファブロ株式会社製、商品名:ソーラーエバSC50B)及び保護フィルム(株式会社コバヤシ製、商品名:コバテックPV)を積層し、太陽電池セルの表面(受光面)に封止樹脂(三井化学ファブロ株式会社製、ソーラーエバSC50B)及びガラス部材(200×200×3mm)を積層して積層体を得た。次に、真空ラミネータ(株式会社エヌ・ピー・シー製、商品名:LM−50×50−S)の熱板側にガラス部材が接するように積層体を搭載して5分間0.1MPaの減圧下に置いた後、真空ラミネータの真空を解放した状態で140℃、10分間加熱して太陽電池モジュールを作製した。この際、140℃に到達するまでの時間は8分であった。
[高温高湿試験]
上記方法で作製した太陽電池モジュールのI−V曲線を、ソーラシミュレータ(ワコム電創社製、商品名:WXS−155S−10、AM:1.5G)を用いて測定した。また、太陽電池モジュールを85℃、85%RHの高温高湿雰囲気下で1500時間静置した後、同様にI−V曲線を測定した。それぞれのI−V曲線から、太陽電池の電気特性を示す曲線因子(Fill Factor:以下、「F.F」と略す)を各々導出した。高温高湿雰囲気下に静置する前のF.F(0h)と、高温高湿雰囲気下に静置した後のF.F(1500h)の変化率ΔF.F(=[F.F(1500h)×100/F.F(0h)]、単位「%」)を評価指標として算出した。なお、一般にΔF.Fの値が95%以上となると接続信頼性が良好であると判断される。結果を表1及び表2に示す。
上記方法で作製した太陽電池モジュールのI−V曲線を、ソーラシミュレータ(ワコム電創社製、商品名:WXS−155S−10、AM:1.5G)を用いて測定した。また、太陽電池モジュールを85℃、85%RHの高温高湿雰囲気下で1500時間静置した後、同様にI−V曲線を測定した。それぞれのI−V曲線から、太陽電池の電気特性を示す曲線因子(Fill Factor:以下、「F.F」と略す)を各々導出した。高温高湿雰囲気下に静置する前のF.F(0h)と、高温高湿雰囲気下に静置した後のF.F(1500h)の変化率ΔF.F(=[F.F(1500h)×100/F.F(0h)]、単位「%」)を評価指標として算出した。なお、一般にΔF.Fの値が95%以上となると接続信頼性が良好であると判断される。結果を表1及び表2に示す。
実施例1〜10は、220℃の加熱接続において、いずれも良好な接着強度、金属凝集状態及びΔF.F(%)を示し、低温短時間接続において良好な接続強度が得られ、かつ、高温高湿試験において良好な接続信頼性が得られることが確認された。また、実施例1〜9は、160℃の加熱接続においても、いずれも良好な接着強度、金属凝集状態及びΔF.F(%)を示した。
比較例1及び4では、金属粒子が溶融せず、接着強度も低下していた。比較例2及び3では、接着強度は良好であったが、ΔF.F(%)が低下したことから接続性に問題があることが確認された。比較例5〜8では、いずれも接続強度が低下していたが、比較例6及び7に関してはΔF.F(%)は比較的良好な値を示した。これはラミネート工程にて、熱硬化性樹脂の硬化が進行した影響である。比較例9では、接続強度は比較的良好であったが、ΔF.F(%)が低下したことから接続性に問題があることが確認された。
1…ガラス部材、2…封止材、3,3a,3b…バス電極、4…配線部材、5…バックシート(保護フィルム)、6…基板、7…グリッド電極、8…裏面電極、10…導電性接着剤、20…太陽電池セル、30…接続体、100…太陽電池モジュール、M…金属部、R…樹脂部。
Claims (12)
- 融点が220℃以下の金属を含む導電性粒子と、熱硬化性樹脂と、熱カチオン重合開始剤と、を含有する、導電性接着剤組成物。
- 前記導電性粒子の含有量が導電性接着剤組成物の全量に対して5〜95質量%である、請求項1に記載の導電性接着剤組成物。
- 前記導電性粒子の前記金属が、ビスマス、インジウム、スズ及び亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、請求項1又は2に記載の導電性接着剤組成物。
- フラックス活性剤を更に含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の導電性接着剤組成物。
- 前記フラックス活性剤が水酸基及びカルボキシル基を有する、請求項4に記載の導電性接着剤組成物。
- 前記熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の導電性接着剤組成物。
- 前記熱カチオン重合開始剤が、加熱により、アンチモン原子を含む無機酸イオン、リン原子を含む無機酸イオン、及び、ホウ素原子を含む有機酸イオンからなる群より選ばれる少なくとも一種を放出する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の導電性接着剤組成物。
- 前記熱硬化性樹脂と前記熱カチオン重合開始剤との反応開始温度が30〜200℃である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の導電性接着剤組成物。
- 太陽電池セルの電極と配線部材とを電気的に接続するために用いられる、請求項1〜8のいずれか一項に記載の導電性接着剤組成物。
- 太陽電池セルと、請求項1〜9のいずれか一項に記載の導電性接着剤組成物又はその硬化物を介して前記太陽電池セルの電極と電気的に接続された配線部材と、を備える、接続体。
- 請求項1〜9のいずれか一項に記載の導電性接着剤組成物を介して太陽電池セルの電極と配線部材とを相対向するように配置する工程と、
前記太陽電池セルの受光面側と、当該受光面とは反対側の裏面側とに封止材を積層する工程と、
前記太陽電池セルの前記受光面側の前記封止材にガラス部材を積層する工程と、
前記太陽電池セルの前記裏面側の前記封止材に保護フィルムを積層する工程と、
前記ガラス部材及び前記保護フィルムを有する積層体を加熱することで、前記太陽電池セルの電極と前記配線部材とを電気的に接続すると共に前記太陽電池セルを封止する工程と、を備える、太陽電池モジュールの製造方法。 - 太陽電池セルと、請求項1〜9のいずれか一項に記載の導電性接着剤組成物又はその硬化物を介して前記太陽電池セルの電極と電気的に接続された配線部材と、前記太陽電池セルの受光面側、及び、当該受光面とは反対側の裏面側にそれぞれ積層された封止材と、前記太陽電池セルの前記受光面側の前記封止材に積層されたガラス部材と、前記太陽電池セルの前記裏面側の前記封止材に積層された保護フィルムと、を備える、太陽電池モジュール。
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