JP2018174187A - 太陽電池モジュール用裏面保護シート - Google Patents

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Abstract

【課題】厚い太陽電池モジュール用裏面保護シートを用いた場合に、配線の折れや曲がりを起因とした突起による外観不良が発生することのない太陽電池モジュール用裏面保護シートを提供する。【解決手段】2枚以上のプラスチックフィルムが接着剤により積層され、厚さが290μm以上であり、長さ方向および幅方向の熱収縮率がともに−0.5〜0.6%の範囲にあることを特徴とする太陽電池モジュール用裏面保護シート。【選択図】図1

Description

本発明は、耐電圧特性に優れながら、太陽電池モジュール裏面側の突起欠点が発生せず、外観が優れた太陽電池モジュールに仕上げることができる太陽電池モジュール用裏面保護シートに関するものである。
太陽光発電は、半永久的で無公害のクリーンエネルギー源として実用化され、普及が進んでいる。太陽光エネルギーを直接電気に変換する単結晶シリコンや多結晶シリコンによる太陽電池素子は、実用的な電気出力を発生させるために複数個接続されて、種々の材料で封止・固定された太陽電池モジュールに加工されて使用される。一般に太陽電池モジュールは、透明表面保護シート、表面側充填材、太陽電池素子、裏面側充填材、および裏面保護シートを順次積層し、これらを真空吸引して加熱圧着する方法により製造される。太陽電池モジュールは長期間にわたって屋外に設置して使用されることが多いため、太陽電池モジュールを構成する部材には高い耐候性と耐久性が必要とされる。なかでも、裏面保護シートは、機械強度に優れ、かつ耐候性・耐加水分解性・耐久性等を備えることが必要とされており(例えば特許文献1を参照)、さらに近年の太陽電池モジュールの発電効率向上に向けたシステム電圧の高電圧化に伴い、裏面保護シートの高耐電圧化への要求が強くなっている。
裏面保護シートの耐電圧特性を向上させる技術としては、例えば特許文献2に開示されているような熱可塑性樹脂と表面抵抗値の調整により絶縁性を担保する技術や、特許文献3に開示されているように、単にシートを厚くすることで良好な絶縁性を担保する技術が提案されている。
しかしながら、太陽電池モジュール用裏面保護シートを厚くすると、太陽電池モジュール製造時のラミネート工程の熱により裏面保護シートに収縮する応力が発生し、太陽電池素子の裏面側の配線が折れ曲がったりねじれたりすることによって配線の突起が発生し、外観不良となることが問題となっている。
特開2000―164907号公報 特開2015−146411号公報 特開2015−192107号公報
本発明が解決しようとする課題は、厚い太陽電池モジュール用裏面保護シートを用いた場合に、配線の折れや曲がりを起因とした突起による外観不良が発生することのない太陽電池モジュール用裏面保護シートを提供することである。
上記課題を解決するために、本発明は以下の構成をとる。
第1の発明は、2枚以上のプラスチックフィルムが接着剤により積層され、厚さが290μm以上であり、長さ方向および幅方向の熱収縮率がともに−0.5〜0.6%の範囲にあることを特徴とする太陽電池モジュール用裏面保護シートである。
第2の発明は、太陽電池モジュールの最外層側に配置されるプラスチックフィルムが、耐加水分解性を有するポリエチレンテレフタレートからなることを特徴とする上記に記載の太陽電池モジュール用裏面保護シートである。
第3の発明は、太陽電池モジュールの最外層側に配置されるプラスチックフィルムが、フッ素樹脂からなることを特徴とする上記に記載の太陽電池モジュール用裏面保護シートである。
第4の発明は、太陽電池モジュールの最内層側に配置されるプラスチックフィルムが、ポリオレフィンおよびエチレン・酢酸ビニル共重合体から選ばれる樹脂からなることを特徴とする上記に記載の太陽電池モジュール用裏面保護シートである。
第5の発明は、気中法における部分放電の最大許容システム電圧が1200V以上であることを特徴とする上記の太陽電池モジュールである。
本発明により、耐電圧特性に優れ、突起による外観欠点のない太陽電池モジュールを製造することができる。
本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートの一例を示した側断面図である。 本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートを用いた太陽電池モジュールを例示する側断面図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、図に示すものは一実施形態であり、これに限定されるものではない。
図1は、太陽光が入射する側からポリオレフィンフィルム1、ポリエチレンテレフタレートフィルム2、耐加水分解性ポリエチレンテレフタレートフィルム3の順で積層された太陽電池モジュール用裏面保護シートである。
図2は、表面ガラス4、表面側充填材シート5、配線を配設した太陽電池素子6、裏面側充填材シート7、および本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シート8によって構成された太陽電池モジュールである。外部からの光は、表面ガラスから入射し、表面側充填材シートを通り、太陽電池素子に到達し、光起電力が生ずる。また、太陽電池モジュール用裏面保護シートに反射した光が太陽電池素子に到達し、発電に寄与する。
本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートを構成するプラスチックフィルムは、例えばポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、ポリエチレンテレフタレートをPET、ポリエチレンテレフタレートフィルムをPETフィルムと省略することがある)、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリフッ化ビニルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、フッ素樹脂フィルムなどが層毎の目的に応じて選択される。
本発明におけるプラスチックフィルムのうち、太陽電池モジュールの最外層側に配置されるプラスチックフィルムは耐加水分解性を有するポリエチレンテレフタレートからなることが好ましく、120℃、100%RHで48時間処理した後の破断伸度が未処理のものの破断伸度の50%を維持するPETフィルムが良い。
また、太陽電池モジュールの最外層側に配置されるプラスチックフィルムとしてのPETフィルムは、白色微粒子を添加し耐紫外線性を向上させたものが好ましく、単層の白色PETフィルムであっても良く、また一部の層に白色微粒子が添加された複層の白色PETフィルムであっても良いが、この場合は白色微粒子の添加されたPET樹脂層の厚さに対する白色微粒子の添加されていないPET樹脂層の厚さの比が2〜8の範囲であることが経済性の観点から望ましい。
白色微粒子としては、酸化チタン、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等が用いられ、さらにこれらの白色微粒子は紫外線吸収剤としての機能も有する。白色微粒子としては紫外線劣化を抑制し、光線を長時間照射したときのフィルム黄変や機械的強度の低下を少なくすることができる酸化チタン粒子が好ましく、白色度、分散性、隠蔽性、耐候性等の観点から好適な粒子径や添加量を適用するのがよい。酸化チタン粒子等の白色化剤の平均一次粒子径は、0.1〜1μmの範囲が好ましく、0.15〜0.5μmの範囲にあるものがより好ましい。平均粒子径が上記範囲外では均一分散化が難しくなったり、フィルム表面の平滑性が悪化したりするので好ましくない。また白色微粒子の添加されたPET樹脂層における白色微粒子の添加量は5〜20重量%の範囲が好ましく、7〜15重量%の範囲にあるものがより好ましい。添加量が上記範囲未満ではフィルムの光学濃度、白色度等の特性を向上させることが難しく、逆に上記範囲以上では延伸時にフィルム破れや、後加工の際に粉発生等の不都合を生じる場合がある。PETフィルムが、白色微粒子が添加された白色PETフィルムであることで、ラミネート工程で加熱圧着する際に、太陽発電素子の端部や、隣接する光起電力素子を相互に接続するためのインターコネクターや、セルストリングスを相互に接続するためのバスバーと呼ばれる集電電極などの配線部材が透けないような隠蔽性を得ることができる。
このような白色PETフィルムとしては、白色微粒子が添加された耐加水分解性ポリエチレンテレフタレート樹脂からなる耐加水分解性白色PETフィルムである東レ(株)製の“ルミラー”(登録商標)MG13や、耐加水分解性ポリエチレンテレフタレート樹脂層と白色微粒子が添加された耐加水分解性ポリエチレンテレフタレート樹脂層が共押し出し成形された耐加水分解性白色PETフィルムである東レ(株)製の“ルミラー”(登録商標)MX11を好ましく用いることができる。
本発明におけるプラスチックフィルムとしての白色PETフィルムとしては、PET樹脂層中に空洞を有するものが好ましい。白色PETフィルムが空洞を有することで、反射率や、絶縁性の指標である部分放電電圧が向上する。本発明において「空洞」とは、太陽電池モジュール用裏面保護シートを厚さ方向に潰すことなく、シート面と垂直に切断して得られる断面に観察される、面積が0.1μm以上の空隙をいう。
白色PETフィルムにおける空隙率(白色PET断面における空洞に対応した面積の占める割合)が10%以上であることが好ましく、より好ましくは15%以上、さらに好ましくは20%以上である。白色PETフィルムの空隙率が高いほど後述する太陽電池モジュール用裏面保護シートの部分放電の最大許容システム電圧が向上する。白色PETフィルムの空隙率は、太陽電池モジュール用裏面保護シートの部分放電の最大許容システム電圧を向上させる観点から、10%以上が好ましく、15%以上が好ましい。
白色PETフィルムの内部に空洞を形成させる方法は、特に限定されるものではないが、PETフィルム中に空洞核剤を含有させた後に延伸することによって形成されるものが好ましい。
ここで、空洞核剤としてはポリエステル樹脂と非相溶であるオレフィン系樹脂などの有機系核剤や、無機粒子やガラスビーズなどの無機系核剤が挙げられる。得られる空洞の大きさを製膜条件により調整可能という観点から、空洞核剤としては有機系核剤が好ましい。
有機系核剤としてはオレフィン系樹脂、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン46、ナイロンMXD6、ナイロン6Tなどのポリアミド系樹脂、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレンコポリマー、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレンコポリマーなどのスチレン系樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸ブチルなどのアクリル系樹脂、ポリテトラフロロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系樹脂、ポリフェニレンサルファイド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミドなどのスーパーエンプラ、あるいは本発明のポリエステルフィルムの構成するポリエステル樹脂と非相溶である異なる種類のポリエステル樹脂なども用いることができる。
これら空洞を有する白色PETフィルムの厚さは、50μm〜200μmの範囲が好ましく、70μm〜200μmの範囲が絶縁性の観点からより好ましい。
本発明におけるプラスチックフィルムのうち、太陽電池モジュールの最外層側に配置されるプラスチックフィルムは、フッ素樹脂からなるフッ素系樹脂フィルムとしても良い。フッ素系樹脂とは、樹脂を形成する全原子100モル%中、フッ素原子を20モル%以上含む樹脂のことをいう。フッ素系樹脂としては、例えばポリフッ化ビニル(PVF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、四フッ化エチレン・六フッ化ポリプロピレン共重合体(FEP)等を単独で又は複数種類を混合して用いることができる。中でも、太陽電池モジュールとしたときの長期耐久性の観点から、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデンを用いることが好ましい。これらフッ素樹脂フィルムは、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理、化学処理などにより表面を活性化処理することで積層された後の密着強度を向上させることができる。
本発明におけるプラスチックフィルムのうち、太陽電池モジュールの最内層側に配置されるプラスチックフィルムとしては、ポリオレフィンおよびエチレン・酢酸ビニル共重合体から選ばれる樹脂からなるポリオレフィンフィルムまたはエチレン・酢酸ビニル共重合体フィルム(以下、EVAフィルムと略することがある。)が、充填剤との密着性の点から好ましい。
ポリオレフィンとはエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテンなどのオレフィンモノマーを単独あるいは共重合したものであり、耐熱性の点でポリエチレン系樹脂とポリプロピレン系樹脂が好ましい。
本発明におけるポリオレフィンフィルムには、顧客要求により白色微粒子が添加された樹脂や黒色微粒子が添加されたものが好ましく用いられる。白色微粒子としては、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛、タルク、酸化チタン、硫酸バリウム等であり、白色微粒子を添加することによって、反射率向上の効果により発電効率の向上が期待できる。また、黒色微粒子としては、カーボンブラックやカーボンナノチューブ、アニリンブラック、黒色酸化鉄などを添加することができる。これらの黒色微粒子を添加することによって意匠性が向上する。
これらポリオレフィンフィルムの厚さは、用いられる太陽電池モジュールの構造によって変わるものの、10μm〜200μmの範囲が好ましく、20〜150μmの範囲がフィルム製造の面や他基材とのラミネート加工性から好ましいが、必要な絶縁破壊電圧や部分放電電圧が保持できる範囲でなるべく薄い方が、経済性の面において好ましい。
本発明におけるプラスチックフィルムは、酢酸ビニル含有率が2〜20重量%であるエチレン・酢酸ビニル共重合樹脂フィルムとしても良い。酢酸ビニル含有率が2重量%以上では、封止材シートとの密着性を良好とすることができ、20重量%以下では、ブロッキングなく取り扱い性の良いものとできる。
本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートは、前述のプラスチックフィルムを2つ以上積層したものをいう。プラスチックフィルムを積層し、太陽電池モジュール用裏面保護シートに加工する手法としては、公知のドライラミネート法が利用できる。ドライラミネート法を用いた樹脂フィルムの貼り合わせには、ポリエーテルポリウレンタン系、ポリエステルポリウレタン系、ポリエステル系、ポリエポキシ系樹脂などの主剤とポリイソシアネート系の硬化剤とを成分とする公知のドライラミネート用接着剤を用いることができる。ただし、これらの接着剤を用いて形成される接着剤層には、接着強度が長期間の屋外使用で劣化することに起因する剥離を生じないこと、外観の悪化や光線反射率の低下につながる黄変を生じないことなどが必要である。また、接着剤層の厚さとしては、好ましくは1〜5μmの範囲である。1μm未満であると十分な接着強度が得られ難い場合がある。一方、5μmを越えると接着剤塗工のスピードが上がらないこと、さらには接着剤使用量が増加することなどを理由に生産コストが上がるため、好ましくない。
接着剤層の材料としては、公知のドライラミネート用接着剤を使用することができる。一般にドライラミネート用接着剤は主剤および架橋剤の2つの成分を希釈溶媒で希釈して調合したものが用いられるが、架橋剤としては活性水酸基との反応性に富み、その反応速度及び初期密着力の発現が早いイソシアネート基含有オリゴマーを用いる処方が好ましい。これらの利点に加えて、基材フィルムとの接着強度が高く、さらにその接着強度の熱安定性、長期耐久性にも優れる接着性樹脂層を形成することができる。このイソシアネート基含有オリゴマーと組合せて用いる主剤樹脂としては、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリオール系などのウレタン系樹脂やエポキシ系樹脂を例示することができ、詳細な要求特性、加工条件適性に応じて、適宜選択して用いることができる。
本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートの厚さは、290μm以上あることが重要である。より好ましくは350μm以上であり、更に好ましくは380μm以上である。
本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートは、太陽電池モジュール製造工程における加熱による充填材の収縮による配線突起の折れ曲がりやねじれの抑制、屋外設置後の太陽光照射による昇温や昼夜の寒暖差に起因する伸縮による歪みを軽減すべく、150℃、30分の熱処理後の収縮率がフィルム長手方向(以下、MDと略すことがある。)およびフィルム幅方向(以下、TDと略すことがある。)ともに、−0.5〜0.6%であることが重要であり、好ましくは0.3%〜0.6%であることが太陽電池モジュール製造時の太陽電池モジュール用裏面保護シート側の配線突起の見えにくさの観点から好ましい。そのためには、プラスチックフィルムの加工温度を考慮する必要があり、PETフィルムの場合は、結晶化温度よりも高い温度で加工することが好ましい。すなわち、PETフィルムにアニール処理を施す際のオーブン温度をPETフィルムの結晶化温度よりも高く、好ましくは結晶化温度よりも30℃以上高い温度とすることが好ましい。具体的な例として、PETフィルムをアニール処理する場合、PETフィルムの結晶化温度が125℃であることから、125℃よりも高い温度、より好ましくは155℃以上の温度で乾燥することにより上述の収縮率を効率よく低減することができる。
本発明における積層体は、気中法における部分放電の最大許容システム電圧が1200V以上であることが好ましく、1500V以上であることがより好ましい。気中法における部分放電の最大許容システム電圧の測定法は後述するが、本最大許容システム電圧が高ければ、太陽電池モジュールを使用する際に太陽電池モジュール用裏面保護シートに高電圧が印加されても、太陽電池モジュール用裏面保護シート内部で部分放電が発生しにくくなる。その結果、太陽電池モジュール用裏面保護シートの電気絶縁性を担保されやすくなる。気中法における部分放電の最大許容システム電圧は、太陽電池モジュール用裏面保護シートの全体厚みを厚くするか、白色PETフィルムの空隙率を高めることで高くすることが可能である。なお、同じ裏面保護シートの厚さであっても、構成部材であるPETフィルムに処理を施した方がフィルムの結晶化を進めることができ、部分放電の最大許容システム電圧を高くすることが可能である。
本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートは、太陽光に曝される最外層側から耐加水分解性PETフィルム、空洞を含む白色PETフィルム、ポリオレフィンを形成しても良いし、必要に応じて、最外層のプラスチックフィルムをフッ素樹脂、充填材と接着するプラスチックフィルムをポリオレフィンやエチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂を用い形成しても良い。各プラスチックフィルムは、公知のドライラミネート法を用いて積層することができる。
本発明における太陽電池モジュール用裏面保護シートは、前述した積層体の厚さと熱収縮率を組み合わせたものである必要がある。具体的には、厚さが290μm以上かつ熱収縮率が−0.5〜0.6%であることが配線の突起状外観の見えにくさの観点から好ましい。より好ましくは、厚さが350μm以上かつMD熱収縮率が0.3〜0.6%であり、更に好ましくは厚さが380μm以上かつMD熱収縮率が0.3〜0.6%である。
厚さが290μm以上で、MD熱収縮率が0.6%よりも大きいと太陽電池モジュール用裏面保護シートでは、シートの剛性が高いため配線を押し、配線突起が目立ちやすくなるために好ましくない。
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。本発明の実施例および比較例における特性値は、以下に示す測定方法ならびに評価基準によるものである。
(評価方法)
後述する実施例および比較例における、擬似太陽電池モジュール製造方法、各種評価項目の評価方法を記載する。
(1)太陽電池モジュール用裏面保護シート厚さ測定方法
アンリツ(株)製膜厚計「K351C」を用いて、太陽電池モジュール用裏面保護シートの厚さを1μm単位で測定した。
(2)熱収縮率測定方法
太陽電池モジュール用裏面保護シートをMD、TDの熱収縮率測定用に以下の短冊状サイズでカットする。
MD測定用(MD250mm×TD25mm)
TD測定用(MD25mm×TD250mm)。
熱処理前の寸法として、(株)ミツトヨ製のデジタルノギスを用いてMD、TD共に250mm長の寸法を測定した。本短冊状シートを、タバイエスペック(株)製P−212オーブンにて150℃、30分の熱処理を行い、熱処理後の寸法を同様に測定した。熱処理前の寸法をA、熱処理後の寸法をBとし、((A−B))/A)×100(%)にて得られる数値を熱収縮率とした。
(3)部分放電の最大許容システム電圧
210mm×300mmの太陽電池モジュール用裏面保護シートをMess− & Pruefsyteme GmbH製の部分放電試験機“TPP5”を使用し、部分放電電圧を測定した。温度23±2℃、湿度50±5%RHに調節された部屋において、0Vから印加電圧を上昇させ電荷量が2pCとなる電圧を開始電圧とした。この開始電圧の1.1倍の電圧まで印加電圧を上昇させ、この電圧で10秒間印加した。その後、印加電圧を下げていき電荷が消滅する電圧(閾値1pC)となる電圧を部分放電消滅電圧(V)とした。この部分放電消滅電圧のn=10での測定結果の平均、標準偏差、安全係数(1.25、1.2)、交流から直流への変換を用いて、以下の式に従い計算し、得られた値を部分放電の最大許容システム電圧とし、下記の評価基準に従って評価した。
最大許容システム電圧(V)=(部分放電消滅電圧平均値−部分放電消滅電圧標準偏差)×1.414/(1.2×1.25) 。
○:部分放電の最大許容システム電圧が1500V以上
△:部分放電の最大許容システム電圧1200V以上1500V未満
×:部分放電の最大許容システム電圧が1200V未満
△または○を使用可能と判定した。
(4)擬似太陽電池モジュール製造方法
厚さ3.2mm、971mm×1475mmの白板ガラス(旭硝子(株)製)の上に厚さ0.45mmのEVAシート(SKC Co.,Ltd製「EF−3N」)を1枚重ねた。
6インチ太陽電池素子は3mm間隔で9枚並べ、厚さ0.24mm、幅1.5mmの配線で接続した後に、前述のEVAシート上にセットした。同様の手順で太陽電池素子9枚を作製し、先にセットした太陽電池素子と重ならない様な位置にもう1セットの太陽電池素子を並べた。2セットの太陽電池素子9枚の上に前述のEVAシートをもう1枚重ね、さらにその上から太陽電池モジュール用裏面保護シート(以下、裏面保護シートと記載する場合もある)を積層した状態で、(株)JET製フルサイズ真空ラミネータ装置を用いて熱板設定温度を160℃、真空時間5分20秒、100kPaで10秒間プレスした。その後、熱板設定温度を160℃、真空時間12秒、100kPaで5分間プレスし、擬似太陽電池モジュールを作製した。
(5)配線突起高さ確認方法
前述の方法で作製した擬似太陽電池モジュールの裏面保護シート側を上側にした状態で、配線の突起箇所に(株)タミヤ製メイクアップ材「光硬化パテ87076」を塗りつけ、およそ5分硬化させた。5分硬化後、硬化したパテを取り除き、突起によってできたパテの窪み部分をレーザー顕微鏡((株)キーエンス製VK−8700)を用いて観察し、配線突起高さとした。
該方法にて3箇所の配線突起高さを測定した後、平均値で代表させ、以下の基準に基づいて○のものを合格とした。
○:配線突起高さが40μm未満
×:配線突起高さが40μm以上 。
以下、実施例により本発明を詳述するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
(実施例1)
(接着剤の調整)
DIC(株)製ドライラミネート剤“ディックドライ”(登録商標)LX−903を16重量部、硬化剤としてDIC(株)製KL−75を2重量部、および酢酸エチルを29.5重量部量り取り、15分間撹拌することにより固形分濃度20%のドライラミネート用接着剤を得た。
(裏面保護シートの作製1)
最外層のプラスチックフィルムに耐加水分解性ポリエチレンテレフタレート樹脂層と白色微粒子が添加された耐加水分解性ポリエチレンテレフタレート樹脂層が共押し出し成形された白色耐加水分解性PETフィルムである東レ(株)製の“ルミラー”(登録商標)MX11(厚さ75μm)を準備した。この白色耐加水分解性PETフィルムの酸化チタン微粒子が添加されていない側に、岡崎機械工業(株)製のフィルムラミネータを用いてグラビア方式により接着剤を塗工し、80℃で15秒間乾燥し、固形分塗工層厚さ5μmとし、白色化剤が添加されたポリエステル樹脂層と非相溶ポリマーが添加されたポリエステル樹脂層が共押し出し成形されてなる高反射耐加水分解性二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムである東レ(株)製のMX07(厚さ160μm)と貼り合わせを行った。40℃オーブンにて48時間硬化エージングを行い、太陽電池モジュール用裏面保護シート部材を作製した。
(アニール処理)
裏面保護シートの作製1で作製した裏面保護シート部材を、富士機械工業(株)製のフィルムコーターを用いて、180℃の乾燥温度にて30秒間アニール処理を行った。
(裏面保護シートの作製2)
アニール処理を施した裏面保護シート部材において、貼り合わせを行っていない東レ(株)製MX07側に、裏面保護シートの作製1と同様の手順にて接着剤を塗工した後、東レフィルム加工(株)製の白色ポリエチレンフィルム4807W(厚さ150μm)のコロナ処理面と貼り合わせを行い、同様の手順にて接着剤の硬化エージングを行い、太陽電池モジュール用裏面保護シートを得た。該太陽電池モジュール用裏面保護シートの厚さは388μm、MD熱収縮率は0.52%、最大許容システム電圧は1515Vであった。擬似太陽電池モジュールの配線突起高さを測定したところ32μmであった。
(実施例2)
実施例1に記載の東レ(株)製“ルミラー”MX11(厚さ75μm)、MX07(厚さ160μm)をそれぞれ先にアニール処理を施し、その後に貼り合わせて裏面保護シート部材1とした以外は、実施例1と同様の手順で太陽電池モジュール用裏面保護シートを得た。該太陽電池モジュール用裏面保護シートの厚さは386μm、MD熱収縮率は0.56%、最大許容システム電圧は1507V、配線突起高さは34μmであった。
(実施例3)
実施例1に記載の“ルミラー”MX11(厚さ75μm)の代わりに東レ(株)製のMX40(厚さ160μm)、MX07(厚さ160μm)の代わりに東レ(株)製の“ルミラー”E20(厚さ50μm)を実施例1と同様の手順で裏面保護シート部材1を作製し、アニール処理を施し、東レフィルム加工(株)製の白色ポリエチレンフィルム4807W(厚さ100μm)とを貼り合わせ、太陽電池モジュール用裏面保護シートを得た。該太陽電池裏面保護シートの厚さは322μm、MD熱収縮率は0.60%、最大許容システム電圧は1394V、配線突起高さは25μmであった。
(実施例4)
実施例1に記載の“ルミラー”MX11の代わりにデュポン製のPVFフィルム“Tedlar”(50μm)を使用した以外は、実施例2と同様の手順で太陽電池モジュール用裏面保護シートを得た。該太陽電池モジュール用裏面保護シートの厚さは365μm、MD熱収縮率は0.52%、最大許容システム電圧は1260V、配線突起高さは38μmであった。
(比較例1)
実施例1に記載の東レ(株)製の“ルミラー”MX11(厚さ75μm)とMX07(厚さ160μm)を貼り合わせたものをアニール処理しない以外は、実施例1と同様の手順で太陽電池モジュール用裏面保護シートを得た。該太陽電池モジュール用裏面保護シートのPETフィルムをアニール処理しないためにMD熱収縮率が1.41%、最大許容システム電圧は1443V、配線突起高さが130μmとなった。
(比較例2)
実施例1に記載の東レ(株)製の“ルミラー”MX11(厚さ75μm)のみをアニール処理したこと以外は、実施例1と同様の手順で太陽電池モジュール用裏面保護シートを得た。PETフィルムの1種のみをアニール処理したが、MD熱収縮率が0.88%、最大許容システム電圧は1404V、配線突起高さが59μmとなった。
(比較例3)
実施例1に記載の東レ(株)製のMX07(厚さ160μm)のみをアニール処理したこと以外は、実施例1と同様の手順で太陽電池モジュール用裏面保護シートを得た。厚さの厚いMX07をアニール処理したが、MD熱収縮率が1.12%、最大許容システム電圧は1448V、配線突起高さが74μmとなった。
(比較例4)
実施例1に記載の東レ(株)製の“ルミラー”MX11(厚さ75μm)の代わりにデュポン製のPVFフィルム“Tedlar”(38μm)を使用し、東レ(株)製MX07(厚さ160μm)の代わりに東レ(株)製“ルミラー”S10(厚さ250μm)を使用し、裏面保護シート部材を作製した。その後裏面保護シート部材をアニール処理せずに、東レフィルム加工(株)製の透明ポリエチレンフィルム4801(厚さ50μm)と貼り合わせを行い、太陽電池モジュール用裏面保護シートを得た。該太陽電池モジュール用裏面保護シートのMD熱収縮率が0.90%、最大許容システム電圧は1318V、配線突起高さが100μmとなった。
(比較例5)
最外層のプラスチックフィルムを東レ(株)製のMX40(厚さ160μm)に実施例1と同様の手順でアニール処理を施した後に接着剤を塗工し、東レフィルム加工(株)製の白色ポリエチレンフィルム4807W(厚さ100μm)と貼り合わせを行い貼り合わせ太陽電池モジュール用裏面保護シートを得た。
該太陽電池モジュール用裏面保護シートの厚さは263μm、MD熱収縮率は0.53%、部分放電電圧は1094V、配線突起高さは20であった。
実施例、比較例の特性を表1に示す。比較例1は、PETフィルムをアニール処理していないため、太陽電池モジュール用裏面保護シートの熱収縮率が高く、配線突起高さが高くなり不十分な結果となった。比較例2〜3は、1枚のPETフィルムにはアニール処理したが、他方のPETフィルムにはアニール処理をしておらず、全体の熱収縮率が高いことから不十分な結果となった。なお比較例1〜3は実施例1と同じフィルムの構成であるが、アニール処理が行われていないPETフィルムを含むため、実施例1と比較して最大許容システム電圧が低くなっている。
本発明は、厚さのある太陽電池モジュール用裏面保護シートを用いた太陽電池モジュール製造時に太陽電池モジュール用裏面保護シート側の配線突起によって外観不良の発生を抑制する機能を有した太陽電池モジュール用裏面保護シートを提供し、太陽電池市場拡大につなげることができる。
1:ポリオレフィンフィルム
2:ポリエチレンテレフタレートフィルム
3:耐加水分解性ポリエチレンテレフタレートフィルム
4:表面ガラス
5:表面側充填材シート
6:太陽電池素子
7:裏面側充填材シート
8:裏面保護シート
9:太陽電池モジュール

Claims (5)

  1. 2枚以上のプラスチックフィルムが接着剤により積層され、厚さが290μm以上であり、長さ方向および幅方向の熱収縮率がともに−0.5〜0.6%の範囲にあることを特徴とする太陽電池モジュール用裏面保護シート。
  2. 太陽電池モジュールの最外層側に配置されるプラスチックフィルムが、耐加水分解性を有するポリエチレンテレフタレートからなることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池モジュール用裏面保護シート。
  3. 太陽電池モジュールの最外層側に配置されるプラスチックフィルムが、フッ素樹脂からなることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池モジュール用裏面保護シート。
  4. 太陽電池モジュールの最内層側に配置されるプラスチックフィルムが、ポリオレフィンおよびエチレン・酢酸ビニル共重合体から選ばれる樹脂からなることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の太陽電池モジュール用裏面保護シート。
  5. 気中法における部分放電の最大許容システム電圧が1200V以上であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の太陽電池モジュール用裏面保護シート。

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