JP2018172747A - 水蒸気処理製品の製造方法および製造装置 - Google Patents

水蒸気処理製品の製造方法および製造装置 Download PDF

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Abstract

【課題】鋼板等の被処理物を、処理コストの増大を抑えつつ良好に水蒸気処理することができる水蒸気処理方法を提供する。【解決手段】被処理物1を密閉容器10内で水蒸気と接触させることにより水蒸気処理製品を製造する方法であって、被処理物1が内部に配置され、かつ、所定量の水7が予め内部に貯留された密閉容器10内で、水7を加熱して水蒸気を発生させ、当該水蒸気と被処理物1とを接触させる水蒸気処理工程を少なくとも備えることを特徴とする。【選択図】図2

Description

本発明は、めっき鋼板等の被処理物に水蒸気処理を行うことにより水蒸気処理製品を製造する方法および装置に関する。
建築物の屋根材や外装材、家電製品、自動車などの分野では、意匠性などの観点から黒色や青色などの外観を有する鋼板のニーズが高まっている。
鋼板の表面を黒色化したり青色化したりする方法としては、鋼板の表面に黒色塗料や青色塗料を塗布して塗膜を形成する方法があるが、塗膜を形成せずに、めっき鋼板の金属光沢および銀白色の色調を遮蔽して、めっき層そのものを酸化させて黒色化したり青色化したりする方法が提案されている。
例えば、特許文献1および特許文献3には、溶融Al、Mg含有Znめっき鋼板を、密閉容器の内部で水蒸気と接触させて、黒色化した酸化皮膜を溶融Al、Mg含有Znめっき層に形成する黒色化処理について記載されている。
また、特許文献2には、鋼板を密閉容器の内部で水蒸気と接触させて、鋼板の表面に酸化被膜を形成するブルーイング処理について記載されている。
鋼板の表面に水蒸気を接触させる処理(水蒸気処理)を行って鋼板の表面に酸化被膜を形成する装置としては、例えば、特許文献2に記載の熱処理炉がある。この熱処理炉は、鋼板を収容する容器(以下、「鋼板収容容器」と称する)と、鋼板収容容器内にその外部から水蒸気を供給する水蒸気供給手段と、鋼板収容容器内に雰囲気ガス(水素および窒素から成る)を供給するガス供給手段と、鋼板収容容器内の水蒸気および雰囲気ガスを排出するガス排出手段とを備えている。上記水蒸気供給手段は、水蒸気供給制御弁を含んでおり、この水蒸気供給制御弁によって水蒸気の供給量を制御する。上記熱処理炉においては、鋼板が装入された鋼板収容容器内に水蒸気および雰囲気ガスを供給することにより、鋼板の表面に酸化被膜が形成される。
特許第5335159号公報 特開2012−132061号公報 特許第6072952号公報
しかしながら、特許文献1乃至3のいずれにおいても、被処理物(鋼板)が収容された容器への水蒸気の供給、当該容器からの水蒸気の排出だけでなく、被処理物の温度も制御する必要がある。また、特許文献2に記載の熱処理炉を用いた水蒸気処理では、鋼板収容容器内に水蒸気を供給しつつ鋼板収容容器内の水蒸気が排出されるため、水蒸気の供給および排出が適切に制御されないと、鋼板が過度に酸化される虞がある。しかも、鋼板収容容器に供給された水蒸気の一部は、鋼板の酸化に寄与しないまま鋼板収容容器から排出されるので、鋼板収容容器に供給された水蒸気の一部が無駄になる。また、水蒸気の供給および排出を水蒸気供給制御弁で制御する必要があるので、熱処理炉の構造が複雑となり、処理コストが増大する虞がある。また、特許文献1および特許文献3の水蒸気処理では、水蒸気の供給および排出が適切に制御されないと、めっき層の表面が過度に酸化されて、酸化被膜が過度に成長する虞がある。
そこで、本願発明では、鋼板等の被処理物を、処理コストの増大を抑えつつ良好に水蒸気処理を行うことができる水蒸気処理方法および水蒸気処理装置を提供することを目的とする。
(1)被処理物を密閉容器内で水蒸気と接触させることにより水蒸気処理製品を製造する方法であって、前記被処理物が内部に配置され、かつ、所定量の水が予め内部に貯留された前記密閉容器内で、前記水を加熱して水蒸気を発生させ、当該水蒸気と前記被処理物とを接触させる水蒸気処理工程を少なくとも備えることを特徴とする、水蒸気処理製品の製造方法。
上記(1)の構成によれば、密閉容器内の貯留水から水蒸気を生成し、その水蒸気で水蒸気処理を行うので、貯留水が全て蒸発した時点もしくは当該時点よりも前に水蒸気処理は停止する。したがって、特許文献2のように鋼板収容容器にその外部から連続的に供給される水蒸気で水蒸気処理を行う場合とは異なり、被処理物が過度に水蒸気処理されることを抑制することができる。しかも、特許文献2のように水蒸気の供給および排出を制御弁によって必ずしも制御する必要がなく、比較的簡単な構成で水蒸気処理を行うことができる。したがって、処理コストの増大を抑えつつ、被処理物を良好に水蒸気処理(黒色化処理を含む)することができる。
(2)前記密閉容器内に貯留される水の量は、前記被処理物において前記水蒸気と接触する部分の表面積に基づいて設定された量であることを特徴とする、(1)に記載の水蒸気処理製品の製造方法。
鋼板等の被処理物を水蒸気処理する際に必要な水の量は、被処理物の水蒸気処理される部分の表面積(例えば、めっき鋼板の黒色化処理される部分の表面積)等に基づいて予め把握可能である。したがって、上記(2)の構成によれば、密閉容器内に貯留されるべき水の量を、適切な値に設定することができる。これにより、鋼板等の被処理物を、より良好に水蒸気処理することができる。
(3)前記被処理物の加熱を前記水蒸気処理工程よりも前に開始する被処理物加熱工程をさらに備えることを特徴とする、(1)または(2)に記載の水蒸気処理製品の製造方法。
上記(3)の構成によれば、水蒸気処理工程において被処理物の表面に結露が生じることを防止することができる。これにより、被処理物の表面に水蒸気反応のムラが生じることを防止することができる。
(4)前記密閉容器内に水を注入して前記密閉容器内に前記所定量の水を貯留する注水工程をさらに備え、前記注水工程は、前記被処理物加熱工程の開始時点と前記水蒸気処理工程との間に設けられることを特徴とする、(3)に記載の水蒸気処理製品の製造方法。
上記(4)の構成によれば、水蒸気処理工程の前に貯留水から水蒸気が発生したとしても、その水蒸気によって被処理物の表面に結露が生じることを防止することができる。
(5)前記密閉容器内に注水して前記密閉容器内に前記所定量の水を貯留する注水工程をさらに備え、前記注水工程は、前記被処理物加熱工程よりも前に設けられることを特徴とする、(3)に記載の水蒸気処理製品の製造方法。
上記(5)の構成によれば、注水に比較的長い時間がかかる場合であっても、注水を早い時点から開始することにより、操業時間を短縮することができる。
(6)被処理物を密閉容器内で水蒸気と接触させることにより水蒸気処理製品を製造する装置であって、前記被処理物を内部に配置可能な密閉容器と、前記密閉容器内に設けられ、所定量の水を貯留可能な貯水部と、前記貯水部内の水を加熱して水蒸気を発生させる加熱部と、を備え、前記貯水部は、前記水蒸気を前記被処理物に接触させ得る状態で設けられていることを特徴とする、水蒸気処理製品の製造装置。
上記(6)の発明によれば、上記(1)の発明と同様の効果を奏することができる。
本願発明によれば、鋼板等の被処理物を、処理コストの増大を抑えつつ良好に水蒸気処理(黒色化処理を含む)することができる。
本願発明に係る黒色めっき鋼板を製造する方法のフローチャートである。 本願発明に係る黒色めっき鋼板を製造する装置の模式図である。 密閉容器内における貯水槽の配置状態を模式的に示す平面図である。 密閉容器内の水蒸気および水素の圧力(分圧)を示すグラフである。 本発明に係る黒色めっき鋼板を製造する装置の制御系を示す図である。
以下、本実施形態に係る水蒸気処理方法の一例として、めっき鋼板に水蒸気処理を施すことにより、黒色めっき鋼板を製造する方法を説明する。
なお、この明細書では、溶融Al、Mg含有Znめっき鋼板を、単に「めっき鋼板」と称することがある。また、溶融Al、Mg含有Znめっき鋼板の溶融Al、Mg含有Znめっき層を、単に「めっき層」と称することがある。さらに、溶融Al、Mg含有Znめっき鋼板の溶融Al、Mg含有Znめっき層を黒色化するために、密閉容器の内部で溶融Al、Mg含有Znめっき鋼板に水蒸気を接触させることを、単に「水蒸気処理」と称することがある。
[黒色めっき鋼板を製造する方法]
本願発明に係る黒色めっき鋼板を製造する方法は、AlおよびMgを含有する溶融Al、Mg含有Znめっき鋼板を密閉容器の内部で水蒸気に接触させて黒色めっき鋼板を製造する方法である。
本願発明の方法は、図1のフローチャートに示されているように、密閉容器の内部に配置した溶融Al、Mg含有Znめっき鋼板を加熱する第1工程(S110)と、密閉容器の内部の雰囲気ガスを排気して、密閉容器内部の気体圧力を70kPa以下にする第2工程(S120)と、密閉容器内に注水して密閉容器内に水を貯留し、その水(貯留水)を加熱して水蒸気を発生させ、めっき層を黒色化する第3工程(S130)と、第3工程(S130)の後に密閉容器の内部の圧力をいったん大気圧に戻した後に、密閉容器内部の気体圧力を再び70kPa以下にする第4工程(S140)と、密閉容器内部のめっき鋼板を冷却する第5工程(S150)とを、この順番で行う。なお、雰囲気ガスとは、密閉容器の内部に存在するガスを意味し、本願明細書に記載された大気、水蒸気、水素を含有する水蒸気、窒素ガスなどの総称である。上記第1工程は本発明の「被処理物加熱工程」に含まれ、上記第3工程における注水は本発明の「注水工程」に含まれ、上記第3工程における水蒸気処理は本発明の「水蒸気処理工程」に含まれる。
以下、各工程についてより詳しく説明する。
(第1工程)
第1工程(S110)では、密閉容器の内部に配置しためっき鋼板を加熱する。
図2に示されるように、密閉容器10は、めっき鋼板1を配置する配置部12を内部に有し、雰囲気ガスの排気による内部の気体圧力の低下や水蒸気の導入、加熱、冷却などに耐えうる強度を有していればよい。図2に示される例では、密閉容器10は、底部フレーム8と、上部カバー9とを有している。底部フレーム8は、めっき鋼板1が配置される配置部12を備えている。また、上部カバー9は、天井面がドーム状に形成された上部カバー天井部13と、側面が円形筒状に形成された上部カバー縦壁部14とを有している。上部カバー9は、下部が開放される形状によって構成されている。密閉容器10は、その外部から内部への気体の流入が実質的に不可能な密閉状態と、外部から内部へのめっき鋼板の搬入が可能な開放状態との、いずれをもとることが可能に構成されている。密閉容器10は、後述するガス導入配管51およびドレン配管35などを接続可能な開口をその壁面または底面に有しており、これらの配管に設けられた開閉弁を閉じることで容器の内部を密閉状態にできるように構成されている。また、密閉容器10は、その外壁面に、密閉容器10を加熱または冷却して密閉容器10内の温度調整を行う温度調整機構20、21を備えていてもよい。
めっき鋼板1は、基材鋼板と、基材鋼板の表面に形成された溶融Al、Mg含有Znめっき層とを有する。
基材鋼板の種類は特に限定されないが、例えば、低炭素鋼、中炭素鋼、高炭素鋼、および合金鋼などからなる鋼板を使用することができる。良好なプレス成形性が必要とされる場合は、低炭素Ti添加鋼および低炭素Nb添加鋼などの深絞り用鋼板が基材鋼板として好ましい。また、P、Si、Mnなどを添加した高強度鋼板を用いてもよい。
溶融Al、Mg含有Znめっき層は、水蒸気との接触により黒色化する組成を有していればよい。めっき層が水蒸気との接触により黒色化するメカニズムは不明であるが、一つの仮説としては、水蒸気との接触によりめっき層表面およびめっき層中に酸素欠乏型の欠陥構造を有するZn、Al、Mgの酸化物(例えば、ZnO1−xなど)や水酸化物が生成されるためと推察される。このように、酸素欠乏型の酸化物や水酸化物が生成されると、その欠陥準位に光がトラップされるため、上記の酸化物や水酸化物が黒色外観を呈することになる。例えば、Alが0.1質量%以上60質量%以下、Mgが0.01質量%以上10質量%以下、Znが残部の組成を有するめっき層は、水蒸気との接触によって好適に黒色化することができる。
市場で最も多く流通している溶融Al、Mg含有Znめっき鋼板は、めっき層中にAlを6質量%程度、Mgを3質量%程度含んだものである。このようなめっき組成の金属組織は、[Al/Zn/ZnMgの三元共晶組織]の素地中に、[初晶のAl相]、または、[初晶のAl相]と[Zn単相]とが混在したものとなっており、水蒸気処理により好適にめっき層を黒色化することができる。各相(Al相、Zn相およびZnMg相)は、それぞれ不規則な大きさおよび形状を成して互いに入り組んでいる。初晶のAl相とAl/Zn/ZnMgの三元共晶組織中のAl相は、Al−Zn−Mgの三元系平衡状態図における高温でのAl”相(Znを固溶するAl固溶体であり、少量のMgを含む)に由来するものである。この高温でのAl”相は、常温では、通常は微細なAl相と微細なZn相に分離して現れる。三元共晶組織中のZn相は、少量のAlを固溶し、場合によってはさらにMgを固溶するZn固溶体である。三元共晶組織中のZnMg相は、Zn−Mgの二元系平衡状態図におけるZnが約84質量%の点付近に存在する金属間化合物相である。
水蒸気との接触によって好適に黒色化することができるめっき層は、[Al/Zn/ZnMgの三元共晶組織]の素地中に、[初晶のAl相]、または、[初晶のAl相]と[Zn単相]とが混在した金属組織を有するものに限られず、初晶はZn相であってもよく、また、例えばSiのように、めっき層中に含有されている他の元素に由来する金属間化合物が初晶であってもよい。さらに、Al/Zn/ZnMgの三元共晶組織に代えて、ZnMgやZn11Mgの金属間化合物であってもよい。これらの金属間化合物であっても、水蒸気と接触することにより、めっき層表面およびめっき層中に酸素欠乏型の欠陥構造を有するZn、Al、Mgを含む酸素欠乏型の酸化物や水酸化物が生成され、その欠陥準位に光がトラップされるため、上記の酸化物や水酸化物が黒色外観を呈することになる。
めっき層の厚みは特に限定されるものではないが、3μm以上100μm以下であることが好ましい。めっき層の厚みが3μm以上であれば、めっき鋼板1の取り扱い時に入るキズが基材鋼板に到達しにくくなり、黒色外観の保持性および耐食性がより高くなる。また、めっき層の厚みが100μm以下であると、圧縮を受けた際のめっき層と基材鋼板の延性が異なることによる、加工部におけるめっき層と基材鋼板との剥離がより生じにくくなる。
めっき鋼板1の形状は、黒色化すべき領域のめっき層が水蒸気と接触することができるのであれば、特に限定されない。例えば、めっき鋼板1の形状は、めっき層が平坦な形状(例えば、平板状)でもよいし、屈曲した形状(例えば、コイル状)であってもよい。なお、コイル状とは、めっき鋼板1により構成される金属帯が、径方向に間隔をあけて巻かれた形状を意味する。密閉容器10内部への配置の容易さや、その前後の搬送の容易さの観点から、めっき鋼板1の形状はコイル状であることが好ましい。めっき鋼板1の形状をコイル状とした場合、当該めっき鋼板1の径方向の間隔については、水蒸気の浸入が容易となるように、径方向に隣り合う表面同士の間隔の最短距離が0.05mm以上確保されることが好ましい。
また、コイル状のめっき鋼板1における上記間隔を維持するため、巻かれためっき鋼板1の表面の間にスペーサーを配置することができる。当該スペーサーの形状は、コイル状のめっき鋼板表面のめっき層に十分水蒸気を行き渡らせることができればよく、例えば、線状のスペーサーでもよいし、面状のスペーサーであってもよい。線状のスペーサーは、めっき鋼板表面の一部に配置される線材であり、面状のスペーサーは、めっき鋼板表面の少なくとも一部に配置される平板状の部材である。めっき鋼板表面とスペーサーとが接触する面積は小さい方が好ましく、一つの接触点における接触面積は15mm以下であることが好ましい。スペーサーの材質は、水蒸気処理中に著しい劣化や発火、めっき鋼板との融着または溶解が生じなければ特に限定されないが、その材質は金属または樹脂が好ましく、水蒸気透過性を有する材料であることがより好ましい。
また、めっき鋼板1の表面の一部に黒色化されない部分を意図的に形成しようとするときは、当該黒色化されない部分をアルミテープまたは樹脂テープによってマスキングしてもよい。
また、めっき鋼板1は、密閉容器10の内部に配置されるにあたって、単層に配置してもよいし、積層して配置してもよい。例えば、上記コイル状のめっき鋼板1はアイアップで配置することができる。また、2個以上のコイル状のめっき鋼板1を同時に黒色化するときは、2個以上のコイル状のめっき鋼板1をいずれもアイアップで重ねて密閉容器内に配置することができる。なお、密閉容器内に配置する際は、水蒸気を容易に浸入させるため、隣り合うめっき鋼板の間にスペーサーを配置するなどして、前述したように、径方向に隣り合う表面同士の間隔の最短距離が0.05mm以上となるように配置することが好ましい。また、任意の形状に加工されためっき鋼板1を密閉容器内に配置して黒色化してもよく、その際は密閉容器10内に棚を設けて、加工されためっき鋼板を棚に乗せてもよいし、加工されためっき鋼板を棚から吊り下げるようにしてもよい。
また、第1工程(S110)において、めっき鋼板1は、露点が常にめっき鋼板温度未満であるガス(低水蒸気ガス)の存在下で加熱される。つまり、密閉容器10の内部に存在する雰囲気ガスは低水蒸気ガスである。めっき鋼板1の加熱作業を容易にする観点から、低水蒸気ガスは大気であってもよいが、めっき鋼板1の黒色化が可能な限りにおいて、窒素などの不活性ガスに置換してもよい。その他、大気よりも低露点の雰囲気に置換してもよい。なお、低水蒸気ガスは、密閉容器10に接続されたガス導入部50から密閉容器10内へ導入することができる。なお、この明細書では、露点がめっき鋼板温度未満であるガスのことを「低水蒸気ガス」という。
加熱前のめっき鋼板1の温度は、通常、常温程度であり、また、めっき鋼板1の熱容量は大きい。したがって、露点がめっき鋼板温度以上となる、水蒸気を多く含有する雰囲気ガスの存在下でめっき鋼板1を配置すると、めっき鋼板1の表面近傍の雰囲気ガスがめっき鋼板1で冷却されてめっき鋼板表面に結露が生じることがある。その結果、めっき鋼板1の結露が生じた部分に対して水蒸気が接触できずに黒色化が阻害され、めっき層を均一に黒色化できないおそれがある。さらに、結露によってめっき鋼板表面が腐食し、白錆に覆われることで外観を損なうおそれもある。
これに対して本発明では、この第1工程(S110)において、低水蒸気ガスの存在下でめっき鋼板1を加熱している。これにより、水蒸気の凝縮による結露を発生し難くし、めっき層をより均一に黒色化してめっき鋼板1の外観をより見栄え良くできる。したがって、この第1工程(S110)における雰囲気ガスの露点は常温以下であることがより好ましく、例えば、本工程における雰囲気ガスを大気とすることができる。また、加熱に伴ってめっき鋼板1の温度が上昇していくので、加熱開始時における雰囲気ガスの露点がめっき鋼板1の温度より低い状態であれば、通常、雰囲気ガスの露点は常にめっき鋼板温度未満となり、上記めっき鋼板1に対する結露の発生が防がれることとなる。
第1工程(S110)におけるめっき鋼板1の加熱は、めっき層の表面温度が水蒸気との接触によってめっき層が黒色化される温度(以下、「黒色処理温度」ともいう。)に達するまで行われる。例えば、密閉容器10内に設置しためっき鋼板1の表面温度を温度測定センサーで測定しながら黒色処理温度を超えるまで加熱を行うようにするとよい。なお、めっき鋼板1の加熱は、めっき鋼板1を、黒色処理温度の範囲内で、後の第3工程(S103)において加熱された貯留水7(図2参照。例えば110℃)よりも高い温度に達するまで行われてもよい。このようにめっき鋼板1を加熱することにより、第3工程(S103)においてめっき鋼板1のめっき層の表面に結露が生じることを防止することができる。
なお、めっき鋼板1は熱容量が大きいため、表面温度が一様に上昇せず、表面温度にムラが生じることがある。めっき鋼板1の表面温度にムラが生じた場合、後の第3工程(S130)において密閉容器10内に水蒸気を導入してめっき鋼板1のめっき層を黒色化する際に、めっき鋼板1の黒色化の程度にムラが生じて、黒色化めっき鋼板の美観が低下する虞がある。したがって、めっき鋼板表面の複数の点もしくは領域、または表面全体の温度を測定しながら加熱を行い、測定された最も低い表面温度が黒色処理温度に到達するまで加熱が行われるようにすることが好ましい。なお、測定データを蓄積することによって、温度を実測することなく、加熱条件を設定して加熱を終了することも可能である。
黒色処理温度は、めっき層の組成(例えば、めっき層中のAlおよびMgの量)もしくは厚み、または必要とする明度などに応じて任意に設定することができるが、50℃以上350℃以下であることが好ましく、105℃以上200℃以下であることがより好ましい。黒色処理温度が105℃以上であれば黒色化をより短時間で行うことができる。また、黒色処理温度が350℃以下であれば黒色化装置の小型化が図れるとともに、黒色化する際の水蒸気やめっき鋼板1の加熱に必要なエネルギー消費を抑えることができ、さらにめっき層の黒色化度合いを容易に制御することができる。
めっき鋼板1の加熱方法は、めっき層の表面を黒色処理温度にすることができればよく、特に限定されるものではない。例えば、密閉容器10内にシースヒータ等の加熱装置24を設けて、密閉容器10内の雰囲気ガスを加熱してめっき鋼板1を加熱してもよいし、密閉容器10の外壁面に設けられた温度調整機構20、21により、密閉容器10内の温度調整を行ってめっき鋼板1を加熱してもよい。もちろん、加熱する際にシースヒータ等の加熱装置24や上記温度調整機構20、21を単独で使用してもよいし、これらを併用して加熱するようにしてもよい。
なお、密閉容器内の雰囲気ガスを加熱する際に、密閉容器10内に設けた循環ファン71などの撹拌部70で密閉容器10内の雰囲気ガスを撹拌しつつ対流させると、効率よく短時間でムラ無く、めっき鋼板1を加熱することが可能である。
(第2工程)
第2工程(S120)では、密閉容器10内の雰囲気ガスを、図外の排気配管を通じて排気し、密閉容器10内の気体の圧力を70kPa以下にする。例えば、密閉容器10外に設置した排気ポンプ(図示せず。)で、密閉容器10の中の雰囲気ガスを排出することで、密閉容器10内の気体の圧力を上記範囲にすることができる。第2工程(S120)においては、雰囲気ガスの排気を1回のみ行ってもよいし、密閉容器10内に残存する水蒸気以外の気体成分の量をより少なくするため、雰囲気ガスの排気と、ガス導入配管51からの低水蒸気ガスの導入を繰り返し行ってもよい。
本願発明の実施例では、第2工程(S120)で密閉容器10内の雰囲気ガスを排気して密閉容器10内の気体圧力を低くすることによって、後述する第3工程(S130)で貯水槽3から発生する水蒸気を、めっき鋼板1の間の隙間にまで十分に行き渡らせることができる。これにより、黒色化すべきめっき層全体をより均一に水蒸気処理することができ、黒色化のムラを発生しにくくすることができる。このような観点から、第2工程(S120)では、密閉容器10内の気体圧力を70kPa以下にすることが好ましく、さらに50kPa以下にすることがより好ましい。
(第3工程)
第3工程(S130)では、密閉容器10内の貯水槽3に注水して貯水槽3内に所定量の水7(図2参照)を貯留する。そして、貯留した水7(以下、「貯留水7」と称する)を加熱部15(図2参照)によって所定温度に達するまで加熱して、貯留水7から水蒸気を発生させ、その水蒸気でめっき鋼板1のめっき層を黒色化する。すなわち、第3工程(S130)では、めっき鋼板1に対して、水蒸気処理を行う。
貯水槽3は、本発明の「貯水部」に含まれる。貯水槽3は、所定量の水を貯留可能である。また、貯水槽3は、貯留水7から発生した水蒸気をめっき鋼板1に接触させ得る状態で設けられる。
具体的に説明すると、図2に示されるように、貯水槽3は、底部フレーム8に上部カバー9が組み付けられた状態で上部カバー9の内側に位置するように、底部フレーム8の上面に配置される。図3は、密閉容器10内における貯水槽3の配置状態を模式的に示す平面図である。図3においては、便宜的に、上部カバー9、貯水槽3、および配置部12の各々をハッチングで示している。
貯水槽3は、図3に示される例では、平面視で、配置部12の周囲を包囲するように、底部フレーム8の周縁部に沿って環状に形成されている。貯水槽3の内部は、水を貯水できるように中空に形成されている。本実施形態では、貯水槽3を鉛直方向(図2の紙面上下方向)に切断したときの断面が四角形状とされているが(図2参照)、円形等の他の断面形状を採用することも可能である。また、貯水槽3は、密閉容器10の内部で、いくつかに分割された状態で配置されていてもよい。
また、貯水槽3は、水を貯留する槽本体5と、この槽本体5の上部に設けられる蓋部4とを備えている。蓋部4には、貯水槽3内で発生した水蒸気を貯水槽3の外側(密閉容器10内)へ放出する開口部6が形成されている。この開口部6は、水蒸気処理に必要な量の水蒸気を放出可能な開口面積を有していればよい。この開口部6は、一定の開口面積を有していてもよいし、或いは、水蒸気の放出量を調整できるように開口面積を調整可能に構成されていてもよい。また、蓋部4は、開口部6を完全に閉じることができるように構成されていてもよい。
貯水槽3に注水する方法は特に問われないが、例えば、注水バルブ22を備えた注水管19(図2参照)によって注水することができる。注水管19は、上部カバー9が底部フレーム8に組み付けられた状態で注水可能とされていてもよいし、或いは、上部カバー9と底部フレーム8との結合が解除されて、上部カバー9が底部フレーム8から持ち上げられた状態で注水可能とされていてもよい。
上記「所定量」は、当該所定量の水を加熱して発生した水蒸気により、めっき層の表面のうち水蒸気処理(黒色化処理)が要求される領域を所望の厚みで黒色化させることのできる量である。
上記「所定量」は、めっき層の表面のうち水蒸気処理が要求される領域(黒色化が要求される領域)の表面積に基づいて、予め把握可能である。したがって、水蒸気処理が要求される領域の表面積が設定されれば、その表面積に基づいて上記所定量を設定することができる。なお、上記「所定量」は、上記表面積と、それ以外のパラメータと、に基づいて設定することも可能である。例えば、上記「所定量」は、上記表面積と、めっき層のうち水蒸気処理が要求される厚み(めっき層表面からの深さ、つまり酸化被膜の厚み)と、に基づいて予め把握することも可能である。この場合には、上記表面積および上記厚みが設定されれば、それらの値に基づいて上記所定量を設定することができる。
加熱部15は、例えばシースヒータにより構成することができる。加熱部15は、貯水槽3の内部に配置される。この加熱部15により、貯留水7を所定温度まで加熱し、貯留水7から水蒸気を発生させることができる。上記「所定温度」は例えば110℃に設定される。この場合、密閉容器3内の水蒸気の圧力(分圧)P1は、図4に示されるように、水蒸気処理中において一定に保たれる。なお、加熱部15に加えて、冷却部16(図2参照)を貯水槽3内に配置してもよい。図2に示される例では、加熱部15および冷却部16により、貯留水7の温度を調整する水温調整部18が構成されている。冷却部16を配置することにより、貯留水7の温度が上昇し過ぎることを防止することができる。貯留水7の温度は、貯水槽3内に設けられた水温計測部17(図2参照)によって計測される。そして、その計測結果に基づいて、貯留水7の温度が上記所定温度となるように加熱部15および冷却部16が制御される。
めっき鋼板1の黒色化を均一に行うため、第3工程(S130)は、めっき層の表面のうち複数の点もしくは領域、または表面の全体のうち、測定された温度が最も高い箇所の温度と、測定された温度が最も低い箇所の温度との差が30℃以下、好ましくは20℃以下、さらに好ましくは10℃以下となってから、行われることが好ましい。つまり、第3工程(S130)は、めっき鋼板全体の表面温度が一様となってから行われることがより好ましい。例えば、めっき鋼板表面の温度差を上記範囲内にするため、第1工程(S110)と第2工程(S120)との間や、第2工程(S120)と第3工程(S130)との間に、めっき鋼板1を静置してめっき層の表面温度を均一化させる表面温度均一化工程を設けてもよい。
第3工程(S130)では、水蒸気処理中の密閉容器10内の雰囲気温度が105℃以上であることが好ましい。雰囲気温度を105℃以上とすることで、黒色化をより短時間に行うことができる。また、雰囲気温度を105℃以上とすることによって、めっき層を十分に黒色化し、たとえばL色空間におけるめっき層の明度Lを、60以下、好ましくは40以下、さらに好ましくは35以下にまで低下させることができる。なお、上記めっき層表面の明度(L値)は、分光型色差計を用いて、分光反射測定法で測定される。また、雰囲気温度を105℃以上とすることによって水分が凝縮しにくくなるため、密閉容器10の内部や、めっき層表面への結露の発生を抑制することができる。なお、雰囲気温度は105℃以上350℃以下であることがより好ましく、105℃以上200℃以下であることがさらに好ましい。なお、この明細書では、密閉容器の内部の雰囲気ガスの温度を「雰囲気温度」と称する。雰囲気温度は、密閉容器の内部に設けられたガス温度計測部62により計測することができる。
また、第3工程(S130)における水蒸気処理中に、上記雰囲気温度を保つため、密閉容器10の内部を加熱してもよく、加熱方法は密閉容器の内部の温度および相対湿度が上記範囲に制御される限りにおいて特に限定されない。例えば、温度調整機構21、20を使用してもよく、密閉容器10内に設けたシースヒータ等の加熱装置24を使用してもよい。
ところで、この第3工程(S130)においては、めっき鋼板1の溶融Al,Mg含有Znめっき層を水蒸気と接触させてめっき層の表面に酸化皮膜が生成することにより、黒色化反応が進行する。この反応は、次の(1)式または(2)式のとおりと考えられる。
(1) Zn + HO → ZnO + H
(2) Zn + 2HO → Zn(OH)+ H
(1)式は、めっき層中のZnが水蒸気と反応して、Znの酸化物が生成されるとともに、反応の副生成物として水素ガスが発生する反応である。(2)式は、めっき層中のZnが水蒸気と反応して、Znの水酸化物が生成されるとともに、反応の副生成物として水素ガスが発生する反応である。
本願発明では、黒色化反応を進行させるために、密閉容器10の内部の貯水槽3の中に所定量の貯留水7を貯留しており、貯水槽3に設けられた加熱部15を用いて、この貯溜水7から水蒸気を発生させる。このとき、貯留水7を、ある温度、例えば110℃に加熱すると、そのときの水蒸気の圧力は、この貯留水7の温度に対応する飽和蒸気圧(例えば、0.04MPaG)と等しくなる。そして、この水蒸気は上記の(1)式または(2)式の反応によって黒色化反応のために消費されるので、貯留水7の加熱を続けて水蒸気を供給し続け、(1)式または(2)式の反応によってZnの酸化物または水酸化物の生成を継続させることにより、黒色化反応を進行させることができる。
なお、(1)式または(2)式のとおり、黒色化反応が進行することにより黒色化反応の副生成物として水素ガスが発生する。この水素ガスは水蒸気と異なり密閉容器の中で消費されないし、反応容器の外へ排出されることもないので、密閉容器の中に溜まっていく。
図4は、黒色化反応の開始直後から、密閉容器の内部の気体圧力の変化を、上記の貯留水7から発生する水蒸気の分圧P1と、黒色化反応に伴って発生する水素ガスの分圧P2とに分けて模式的に示したものである。黒色化反応の開始直後(横軸の0時間の時点)における密閉容器内の気体圧力は、加熱された貯留水7の温度に対応する水蒸気分圧である0.04MPaGと一致している。その後、貯留水の温度を一定に保って黒色化反応を進行させると、水蒸気の分圧は一定の圧力に保たれるが、黒色化反応の副生成物として発生する水素ガスは密閉容器内に溜まっていくので、水素ガスの分圧は上昇し続けることになる。
本願発明では、密閉容器内の貯水槽3に所定量の水があらかじめ貯留されている。貯留されていた水の全量が蒸発した時点で、水蒸気の発生が停止するので、(1)式または(2)式に基づく黒色化反応は終了することになる。
この所定量の水の量は、めっき層の表面のうち黒色化処理が要求される領域に所望の厚みで酸化皮膜を生成させて黒色化させることができる量の水であるから、あらかじめ設定することができる。そして、その所定量の水の全量を蒸発させて黒色化反応に消費させることによって、密閉容器の内部の水蒸気分圧の制御や、めっき層の温度に左右されることなく、所望の厚みの酸化皮膜が得られることになる。
また、めっき鋼板1の黒色化のムラを防ぐため、密閉容器10の内部での黒色化処理中に、密閉容器10の内部の雰囲気ガスを撹拌部70によって撹拌してもよい。
また、水蒸気処理の処理時間は、めっき層の組成(たとえば、めっき層中のAlおよびMgの量)もしくは厚み、ならびに必要とする明度などに応じて任意に設定することができるが、水蒸気処理は24時間程度行うのが好ましい。
(第4工程)
第4工程(S140)では、密閉容器10の内部の圧力をいったん大気圧に戻した後に、密閉容器10の内部の雰囲気ガスを排気して、密閉容器の内部の気体圧力を70kPa以下にする。例えば、密閉容器10の内部の圧力をいったん大気圧に戻すためには、密閉容器に設けた大気圧開放弁(図示せず。)を開くことで行うことができる。また、密閉容器10内の気体圧力を70kPa以下とするためには、密閉容器外に設置した排気ポンプ(図示せず。)使用し、密閉容器10内の雰囲気ガスを、図外の排気配管を通じて排出することで密閉容器10内の圧力を低くすることができる。
第4工程(S140)における主な目的であるが、後述する第5工程(S150)で、密閉容器10の内部に水蒸気が残ったままめっき鋼板1を冷却すると、めっき鋼板1の隙間などに残った水蒸気が冷却されて凝縮し、めっき鋼板1の表面または密閉容器10の内部に結露が生じることがある。そして、めっき鋼板1の表面に結露が生じると、めっき鋼板1の表面に水分が付着してめっき鋼板1の黒色にムラが生じる可能性がある。そのため、第4工程(S140)において密閉容器10の内部の圧力をいったん大気圧に戻した後、密閉容器10の内部の雰囲気ガスを排気して、密閉容器10の内部の水蒸気量を少なくしている。これにより、後の第5工程(S150)におけるめっき鋼板1の冷却の際、上記のような問題を防ぐことができる。なお、上記のような観点から、第4工程(S140)において密閉容器10内の気体圧力を70kPa以下にすることが好ましく、30kPa以下にすることがより好ましい。
(第5工程)
第5工程(S150)では、密閉容器10の内部に露点が常にめっき鋼板温度未満であるガス(低水蒸気ガス)をガス導入管51から導入してめっき鋼板1を冷却する。第5工程(S150)で導入されるガスは、加熱されていないことが好ましいが、必要に応じて、密閉容器10内の雰囲気温度よりも低温に加熱されていてもよい。
例えば、第5工程(S150)で導入される低水蒸気ガスは、大気、窒素ガス、または不活性ガスとすることができ、作業性を考慮すると、密閉容器10を大気開放して、大気を導入することが好ましい。
さらに、必要に応じて温度調整機構20、21を使用して密閉容器10内の雰囲気ガスの温度を下げ、めっき鋼板1を冷却してもよい。
なお、密閉容器内の雰囲気ガスを冷却する際に、密閉容器10内に設けた循環ファン71などの撹拌部70で雰囲気ガスを撹拌すると、効率よく短時間でムラ無く、めっき鋼板1を冷却することが可能である。
[黒色めっき鋼板を製造する装置]
以下、本実施形態に係る水蒸気処理装置の一例として、めっき鋼板に水蒸気処理を施すことにより、黒色めっき鋼板を製造する装置を説明する。
(装置の構成)
本願発明に係る黒色めっき鋼板を製造する装置(以下、「本発明の装置」ともいう。)は、その一例を示す模式断面図である図2に示されているように、めっき鋼板1を取り出し可能に配置できる配置部12を有する密閉容器10と、密閉容器10の内部を加熱(または冷却)する天井部温度調整機構21、縦壁部温度調整機構20、シースヒータ等の加熱装置24と、所定量の水を貯留可能な貯水槽3と、貯水槽3内の貯留水7を所定温度まで加熱して水蒸気を発生させる水温調整部18(加熱部15および冷却部16を含む)とを有する。本発明の装置は、さらに、密閉容器10の内部に大気を含むガスを導入するガス導入部50や、密閉容器10の内部の圧力を大気圧に戻すための大気圧開放弁(図示せず。)を有していてもよい。本発明の装置は、さらに、めっき鋼板1の温度を測定する鋼板温度計測部60や密閉容器10内の圧力を測定する圧力計測部61、雰囲気ガスの温度を計測するガス温度計測部62、貯留水7の温度を計測する水温計測部17を有していてもよい。さらに、密閉容器10の内部の雰囲気ガスを撹拌する循環ファン71などの撹拌部70を有していてもよい。また、本発明の装置は、図5に示されているように、水温調整部18、温度調整機構21、20、シースヒータ等の加熱装置24、ガス導入部50、撹拌部70の他、各弁装置(注水バルブ22を含む)の開閉動作を制御して、黒色めっき鋼板1を製造させる制御部90を有していてもよい。また、ドレン配管35およびドレン弁36を有しているとき、制御部90はドレン弁36の動作を制御して、装置内部から外部へ水を排出させてもよい。また、密閉容器10の上部に図外の水素ガス燃焼器を取り付けて、密閉容器10内に溜まった水素ガスを上記水素ガス燃焼木器によって燃焼させることにより、密閉容器10内から水素ガスを除去するようにしてもよい。
[黒色めっき鋼板を製造するシステム]
以下に、本願発明の実施例である図5を参照して、本願発明の黒色めっき鋼板を製造する装置の例示的な動作と、その制御システムについて詳しく説明する。
配置部12にめっき鋼板1が配置され、密閉容器10が密閉された後に、制御部90は、以下のように、水温調整部18、注水バルブ22、温度調整機構20、21、シースヒータ等の加熱装置24、ガス導入部50および撹拌部70の動作を制御する。
密閉容器10内の気体の圧力が上記圧力となった後、第3工程に入り、制御部90は、注水バルブ22を開いて貯水槽3に注水し、貯水槽3に所定量の水を貯留させる。そして、制御部90は、加熱部15を加熱制御して、貯留水7を所定温度に達するまで加熱する。これにより、貯留水7から水蒸気が発生し、その水蒸気が貯水槽3の開口部6を通じて放出され、密閉容器10内に充満する。これにより、水蒸気がめっき鋼板1に接触して、めっき鋼板1の水蒸気処理(黒色化処理)が開始される。注水バルブ22は、複数の鋼板温度計測部60が測定した温度のうち、最も低い温度と最も高い温度との差が前述の所定の範囲内となったことを制御部90が認識したことにもとづいて、開弁され得る。
貯留水7を加熱する際、制御部90は、水温計測部17の計測データを常に監視し、貯留水7の温度が所定温度に維持されるように制御する。これによって、水蒸気処理に必要な水蒸気量を密閉容器10内に確保することができる。
水蒸気の生成後、黒色化処理のための時間が経過したら、制御部90は、貯留水7の加熱を停止する。
なお、上記実施形態では、貯水槽3が底部フレーム8の上面に配置されているが、貯水槽3が上部カバー9の内面に取り付けられていてもよい。また、上記実施形態では、めっき鋼板1の加熱処理が貯水槽3への注水前に行われているが、注水後に行われてもよい。
また、上記実施形態では、加熱部15が設けられた貯水槽3に所定量の水を予め貯留させているが、この貯水槽3に代えて、密閉容器10内に、加熱部15が設けられた図外の第1の貯水タンクと、加熱部15が設けられていない図外の第2の貯水タンクとを設け、第2の貯水タンクから第1の貯水タンクへ水を適宜に補給するようにしてもよい。この場合、第1の貯水タンクに予め貯留された水の量と第2の貯水タンクに予め貯留された水の量との合計が、貯水槽3に予め貯留された水の量(上記所定量)と同量とされる。言い換えると、第1の貯水タンクのサイズが小さくて多量の水を貯留できなくても、第1の貯水タンクと第2の貯水タンクとにより、上記所定量の水が予め密閉容器10内に貯留されていればよい。
(効果)
上記本願発明の方法によれば、めっき鋼板1を、水蒸気の無駄な発生を抑えて処理コストの増大を抑えつつ良好に水蒸気処理(黒色化処理)することができる。また、密閉容器10内に貯留させる水7の量をめっき面の表面積と酸化皮膜の所望の厚み次第で決めて、その水7の全量を蒸発させることで、酸化皮膜の厚みを決めることができるので、過度の酸化を防ぐことができる。
本願発明の方法は、処理コストの増大を抑えつつ良好にめっき鋼板1を水蒸気処理(黒色化処理)することができ、黒色化されためっき鋼板のより一層の普及に貢献することが期待される。
1 めっき鋼板
3 貯水槽
7 貯留水
10 密閉容器
15 加熱部
19 注水管

Claims (6)

  1. 被処理物を密閉容器内で水蒸気と接触させることにより水蒸気処理製品を製造する方法であって、
    前記被処理物が内部に配置され、かつ、所定量の水が予め内部に貯留された前記密閉容器内で、前記水を加熱して水蒸気を発生させ、当該水蒸気と前記被処理物とを接触させる水蒸気処理工程を少なくとも備える
    ことを特徴とする、水蒸気処理製品の製造方法。
  2. 前記密閉容器内に貯留される水の量は、前記被処理物において前記水蒸気と接触する部分の表面積に基づいて設定された量である
    ことを特徴とする、請求項1に記載の水蒸気処理製品の製造方法。
  3. 前記被処理物の加熱を前記水蒸気処理工程よりも前に開始する被処理物加熱工程をさらに備える
    ことを特徴とする、請求項1または2に記載の水蒸気処理製品の製造方法。
  4. 前記密閉容器内に注水して前記密閉容器内に前記所定量の水を貯留する注水工程をさらに備え、
    前記注水工程は、前記被処理物加熱工程の開始時点と前記水蒸気処理工程との間に設けられる
    ことを特徴とする、請求項3に記載の水蒸気処理製品の製造方法。
  5. 前記密閉容器内に注水して前記密閉容器内に前記所定量の水を貯留する注水工程をさらに備え、
    前記注水工程は、前記被処理物加熱工程よりも前に設けられる
    ことを特徴とする、請求項3に記載の水蒸気処理製品の製造方法。
  6. 被処理物を密閉容器中で水蒸気と接触させることにより水蒸気処理製品を製造する装置であって、
    前記被処理物を内部に配置可能な密閉容器と、
    前記密閉容器内に設けられ、所定量の水を貯留可能な貯水部と、
    前記貯水部内の水を加熱して水蒸気を発生させる加熱部と、を備え、
    前記貯水部は、前記水蒸気を前記被処理物に接触させ得る状態で設けられている
    ことを特徴とする、水蒸気処理製品の製造装置。
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