JP2016141870A - 滑り性に優れた黒色めっき鋼板 - Google Patents
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Description
また、鋼板の凸部先端を円弧形状としている。コインシューターの使用初期時には、接触面積が小さく良好な滑り性が維持される。しかし、接触面積が極端に小さいと、鋼板の初期磨耗が大きく、鋼板の凸部形状の経時変化により、安定した滑りやすさを発揮できないことが懸念される。そのため、圧延ロールおよび鋼板の寿命が短くなり、コスト高になる可能性がある。
本発明に係る黒色めっき鋼板は、Rz(最大高さ)で表した表面粗さが10〜25μmであることが好ましい。Rzは、粗さ曲線のX軸方向に基準長さにおける最大高さの粗さを示したパラメータである。Rzが10μm未満であると、物品と接触する面積が増大し、摩擦抵抗が上昇するため、滑り性が低下する。他方、Rzが25μmを超えると、表面の凸部に応力集中し、接触部分が変形することにより、表面に新生面が現れて焼付きが発生するため、滑り性が低下する。
本発明に係る黒色めっき鋼板は、基材鋼板と、溶融Al、Mg含有Znめっき層(以下「めっき層」ともいう。)を有する。当該黒色めっき鋼板は、さらに、めっき層の上に無機系皮膜または有機系樹脂皮膜を有していてもよい。
本発明に係る黒色めっき鋼板は、そのめっき層中に分布しているZnの黒色酸化物を含有する。ここで、めっき層中とは、めっき層表面とめっき層内部の両方を含む。本発明に係る黒色めっき鋼板では、Zn2Mg相に由来するZnの黒色酸化物がラメラ状に分布している。Znの黒色酸化物が生成する機構は、以下のように考えられる。
また、めっき層中にAlの初晶が存在する場合は、より短時間でめっき層内部にZnの黒色酸化物が進行する。Alは、ZnおよびMgと比較してH2Oとの反応性が高い。したがって、金属Alは、高温の水蒸気と接触すると、速やかに酸化物となる。初晶Al相に含まれるAlが速やかに酸化した後は、その下側に位置するZn2Mg相に含まれるZnの酸化がめっき層の深さ方向に進行する。このように初晶Al相などのAlの単独相は、めっき層内部のZnの酸化を促進するための「パス」となる。結果として、めっき層中に初晶Al相などのAlの単独相が存在する場合は、より短時間でめっき層内部にZnの
黒色酸化物が形成される。
上記の黒色化は、めっき鋼板を密封容器中で水蒸気に接触させて、めっき層を黒色させる処理である。水蒸気処理を行う際は、雰囲気中に酸素が存在すると、めっき層を十分に黒色できない場合がある。そこで、酸素濃度を調整できる密閉系で水蒸気処理を行うことが好ましく、雰囲気中の酸素濃度(酸素分圧)を下げて水蒸気処理を行うことが好ましい。具体的には、水蒸気処理中の酸素濃度は、13%以下であることが好ましい。雰囲気中の酸素濃度を下げる方法としては。水蒸気濃度(相対湿度)を挙げてもよいし、容器内の空気を不活性ガスで置換してもよいし、容器内に空気を真空ポンプで除去してもよい。
水蒸気処理の温度を100℃未満に下げたい場合、容器内の圧力を大気圧以上として酸素の混入を抑制するため、不活性ガスを容器内に入れてもよい。不活性ガスの種類は、黒色化反応に無関係なものであれば特に限定されない。不活性ガスの例には、Ar、N2、He、Ne、Kr、Xeなどが含まれる。これらの中では、安価に入手可能なAr、N2、Heが好ましい。また、真空ポンプなどで容器内の空気を除去してから水蒸気処理を行ってもよい。
水蒸気処理の処理時間は、水蒸気処理の条件(温度や相対湿度、圧力など)やめっき層
中のAlおよびMgの量、必要とする明度などに応じて適宜設定されうる。
形加工や溶接などを行った後のめっき鋼板のいずれに対して行ってもよい。
次いで、このめっき鋼板を密封容器中で、110℃、24時間で水蒸気と接触させ、めっき層の表面を黒色化させた。水蒸気の雰囲気は、酸素濃度4%、相対湿度80%であった。これを本発明例の黒色めっき鋼板として滑り性評価試験に供した。
めっき鋼板の表面粗さに関して、JIS B 0601−2001に準拠して、表面粗さ測定機により粗さ曲線を測定し、基準長さ4mmで最大高さRzを求めた。
表面の凹凸ピッチは、上記基準長さにおいて、輪郭形状を測定し、その際の谷部の間隔を算出した。
図3に示すような摩擦磨耗試験機6を用いて、めっき鋼板の摩擦係数を測定し、めっき鋼板の滑り性を評価した。摩擦磨耗試験機6の基台の上に試験体1のめっき鋼板を置いて、その上に厚さ1.0mmのSPCC(JIS G 3141)からなる冷間圧延鋼板(以下、「SPCC」という。)を重ねる。SPCC2にはフォルダー4を介して錘3が接続しており、この錘3の一定荷重を付加しながら、SPCC2を一定速度で回転し、連続的に試験体と摩擦させる。回転中のせん断力を測定し、せん断力をτ、錘から作用する荷重をpとして、式(1)から摩擦係数μを算出した。この摩擦係数μが小さいほど、試験体1(めっき鋼板)とSPCC2との間で発生する摩擦力が小さい。すなわち、物品が試験体1(めっき鋼板)と接触して移動する状況では、当該物品を小さい摩擦力で移動させることができるから、上記の摩擦係数μが小さいほど、試験体1のめっき鋼板の滑り性が良好であると評価できる。
本発明例と比較例の各試験体を用いて、表面粗さの粗さ曲線を測定した。本発明例の結果を図1に示し、比較例の結果を図2に示す。これらの粗さ曲線によると、本発明例の黒色めっき鋼板は、Rzが13.8μm、凹凸ピッチは、0.15mmであった。比較例のめっき鋼板は、Rzが8.4μm、凹凸ピッチが0.28mmであった。本発明例の黒色めっき鋼板は、比較例の水蒸気処理を施していない通常のめっき鋼板と比べて、表面粗さが相対的に粗く、且つ凹凸ピッチが小さいことを確認できた。
次に、本発明例の黒色めっき鋼板と比較例のめっき鋼板を用いて、摩擦磨耗試験機による摩擦係数が推移する経時変化を1秒ごとに測定した。その結果を図4に示す。
このことから、本発明例の黒色めっき鋼板は、摩擦係数が低く、滑りやすく、良好な滑り性を有することが判明した。そして、摩擦が続いてもこの良好な滑り性を維持できることも確認できた。
また、比較例のように黒色化されていない従来のめっき鋼板は、摩擦熱により接触表面が温度上昇し、摩擦係数が高まって滑り性が低下するのに対し、本発明例は、黒色めっき鋼板のめっき膜による良好な吸放熱作用が寄与して、温度上昇が抑制された結果、滑り性が保持されたと推測される。
2 SPCC
3 錘
4 フォルダー
5 円盤
6 摩耗摩擦試験機
7 黒色めっき鋼板
8 凸部
9 凹部
10 上ワークロール(段付きロール)
11 下ワークロール(フラットロール)
12 バックアップロール
13 バックアップロール
14 ペイオフリール
15 巻取りロール
16 めっき鋼板
Claims (2)
- Al:1.0〜22.0質量%、Mg:1.3〜10.0質量%を含み、かつZnの黒色酸化物がめっき層中に分布している溶融Al、Mg含有Znめっき層を有し、前記溶融Al、Mg含有Znめっき層表面の粗さは、Rzで10〜25μmの範囲内である黒色めっき鋼板。
- 前記Znの黒色酸化物は、Zn2Mg相に由来するZnの酸化物である請求項1に記載の黒色めっき鋼板。
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JP2015020283A JP2016141870A (ja) | 2015-02-04 | 2015-02-04 | 滑り性に優れた黒色めっき鋼板 |
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JP2018172747A (ja) * | 2017-03-31 | 2018-11-08 | 日新製鋼株式会社 | 水蒸気処理製品の製造方法および製造装置 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2013241671A (ja) * | 2012-04-25 | 2013-12-05 | Nisshin Steel Co Ltd | 黒色めっき鋼板の製造方法および黒色めっき鋼板の成形体の製造方法 |
JP2013241672A (ja) * | 2012-04-25 | 2013-12-05 | Nisshin Steel Co Ltd | 黒色めっき鋼板の製造方法および黒色めっき鋼板の成形体の製造方法 |
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