JP2016141870A - 滑り性に優れた黒色めっき鋼板 - Google Patents

滑り性に優れた黒色めっき鋼板 Download PDF

Info

Publication number
JP2016141870A
JP2016141870A JP2015020283A JP2015020283A JP2016141870A JP 2016141870 A JP2016141870 A JP 2016141870A JP 2015020283 A JP2015020283 A JP 2015020283A JP 2015020283 A JP2015020283 A JP 2015020283A JP 2016141870 A JP2016141870 A JP 2016141870A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
steel sheet
plated steel
black
plating layer
slipperiness
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2015020283A
Other languages
English (en)
Inventor
榊 正仁
Masahito Sakaki
正仁 榊
冨村 宏紀
Hiroki Tomimura
宏紀 冨村
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Nisshin Co Ltd
Original Assignee
Nisshin Steel Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nisshin Steel Co Ltd filed Critical Nisshin Steel Co Ltd
Priority to JP2015020283A priority Critical patent/JP2016141870A/ja
Publication of JP2016141870A publication Critical patent/JP2016141870A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Coating With Molten Metal (AREA)

Abstract

【課題】滑り性に優れたコインシューターやスライドレール等に使用される部材を低コストで提供する。【解決手段】Al:1.0〜22.0質量%、Mg:1.3〜10.0質量%を含み、かつZnの黒色酸化物がめっき層中に分布している溶融Al、Mg含有Znめっき層を有し、前記溶融Al、Mg含有Znめっき層表面の粗さは、Rzで10〜25μmの範囲内である黒色めっき鋼板。前記Znの黒色酸化物は、Zn2Mg相に由来するZnの酸化物であることが好ましい。【選択図】図4

Description

本発明は、コインシューターやスライドレール等で用いられる、滑り性が必要とされる鋼板に関する。
自動販売機のコインシューターやスライドレール等に使用される部材は、部材と接する品物(コイン、引き出し)との滑りやすさが要求される。例えば、コインと接するコインシューターは、自動販売機内でコインを円滑に送るために販売機内で大きな角度を付ける必要があり、それに伴い販売機内でスペースを拡大させる必要が生じる。また、引き出しと接するスライドレールについても、引き出しの出し入れを円滑にできることが必要である。そのため、このような部材は、滑りやすさに優れた特性が望まれている。
一方、表面に凹凸形状を付与した鋼板は、主に意匠性を目的とした部材として使用されている。このような鋼板は、圧延、プレス成形またはエッチング等で製造される。最近では、表面に凹凸を有する鋼板の機能性に着目した種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1は、0.5重量%以上のCuを含み、Cu主体の第2相を0.2体積%以上析出させたステンレス鋼を基材とし、凹凸の高低差50μm以上、凸部頂面の面積が0.5cm/個以下、凸部頂面の肩角度が135度以下で、鋼板表面に対する凸部の総面積の占有面積率が10〜50%の範囲にある凸部を形成したステンレスエンボス鋼板が提案されている。
特許文献2は、微細な凹凸からなるエンボス加工によって、貼り紙類に対する非粘着性、景観性および耐蝕性を有する鋼板が提案されている。同文献には、ステンレス鋼板表面または炭素鋼板表面に、凹凸の高さ、凸部の投影面積率、凸部の平坦部の面積率等を規定した鋼板が記載されている。また、鋼板表面に微細な固体を添加した塗料を塗装し、鋼板表面に微細かつ非連続的な凸部からなる凹凸を形成する非粘着性に優れた鋼板の製造方法が提案されている。
特許文献3は、表面に非連続かつ一定の規則性を有して配列された、頂部断面形状が円弧状の複数の凸部が形成されたコインシューター用鋼板を提案している。
特許文献4は、エンボス加工により、鋼板表面に断面形状が同一である複数の凸条が平行に形成されているストライプエンボス鋼板を提案している。
特開2000−129411号公報 特開2002−66657号公報 特開2009−176007号公報 特開2011−125880号公報 特許5097305号公報
しかしながら、特許文献1のステンレスエンボス鋼板は、抗菌性が改善されたステンレス鋼板を基材とし、凹凸の高低差、凸部頂面の面積、凸部頂面の肩角度、鋼板表面に対する凸部占有面積率を規制し、靴底に対する摩擦力を高めた表面としているため、滑りやすさを求めるには不向きである。
特許文献2のステンレスおよび炭素鋼板は、圧延またはプレスにより鋼板表面に凹凸を形成した鋼板であり、貼り紙等の付着しにくい非粘着性や景観性に優れるが、滑り性については不明である。
特許文献3のコインシューター用鋼板は、コインの滑りやすさの観点で、鋼板の表面にエンボス模様を付与している。コインの寸法に対応させた凹凸パターンは、凸部直径が1〜4mm、凸部間隔が2〜10mm、凸部高さが素材の板厚の1/2程度としている。これらの凹凸パターンの中で、凹部の寸法が凸部間隔の最大値である10mm、凸部深さを素材の板厚の1/2で、鋼板を圧延により製造する場合、圧延に要する荷重が増大し、その結果、圧延ロールの磨耗も著しくなることが予想される。
また、鋼板の凸部先端を円弧形状としている。コインシューターの使用初期時には、接触面積が小さく良好な滑り性が維持される。しかし、接触面積が極端に小さいと、鋼板の初期磨耗が大きく、鋼板の凸部形状の経時変化により、安定した滑りやすさを発揮できないことが懸念される。そのため、圧延ロールおよび鋼板の寿命が短くなり、コスト高になる可能性がある。
特許文献4の鋼板は、鋼板表面に断面形状が同一である複数の凸条が平行に形成されており、複数の凸条が滑らせる品物と1箇所以上接触する間隔および滑らせる品物の接触面の幅以下の間隔で形成されているストライプエンボスである。この鋼板は、鋼板の長手方向に平行に凸部および凹部が形成されていることから、品物の滑り方向は、凹部および凸部と平行となるように制約を受ける。そのため、ストライプ模様と90度の方向では、滑りやすさが低下する。したがって、この鋼板を棚板や生産設備に使用する場合、施工性の自由度が低くなる。
以上のような問題点を解消し、滑り性、施工性、製造コストの点で優れる滑り部材が望まれていた。
本発明は、上記の課題を解消するために案出されたものであり、滑り性に優れた鋼板を提供することを目的とする。
本発明者等は、物品が滑りやすい鋼板について鋭意検討を重ねた。その過程で、鋼板の素材として、Al:1.0〜22.0質量%、Mg:1.3〜10.0質量%を含み、かつZnMg相がめっき層中に分布した溶融Al、Mg含有Znめっき層を有するめっき鋼板を原板とし、このめっき鋼板を密封容器中で水蒸気と接触させて、めっき層を黒色化させる水蒸気処理を施した黒色化めっき鋼板が滑り性に優れることを見出し、さらに、めっき層の表面粗さが特定範囲にあることを知見し、本発明を完成させるに至った。
水蒸気処理により作製した黒色めっき鋼板は、例えば、特許文献5に記載されている。しかしながら、このような黒色めっき鋼板は、意匠性、外観性、加工性などの特性や用途について提案されているが、滑り性について着目したものは知られていなかった。具体的には、本発明は、以下を提供するものである。
(1)本発明は、Al:1.0〜22.0質量%、Mg:1.3〜10.0質量%を含み、かつZnの黒色酸化物がめっき層中に分布している溶融Al、Mg含有Znめっき層を有し、前記溶融Al、Mg含有Znめっき層表面の粗さは、Rzで10〜25μmの範囲内である黒色めっき鋼板である。
(2)前記Znの黒色酸化物は、ZnMg相に由来するZnの酸化物である上記(1)に記載の黒色めっき鋼板である。
本発明に係る黒色めっき鋼板は、Al:1.0〜22.0質量%、Mg:1.3〜10.0質量%を含み、かつZnMg相がめっき層中に分布した溶融Al、Mg含有Znめっき層を有するめっき鋼板を原板として使用し、当該原板に水蒸気と接触させる処理により表面を黒色化させた黒色めっき鋼板である。さらに、めっき層の表面粗さが、Rzで10〜25μmの範囲内であることから、通常の溶融Znめっき鋼板と比べて滑り性が向上する。
本発明の黒色めっき鋼板は、コインの滑りやすさの観点で自動販売機内のコインシューターに使用されるケースが多い。また、コインの他にも滑りやすさが必要とされる部材へ適用される。例えば、鋼板を連続的にプレス機により打ち抜き抜く際、製品とスクラップの分別に使用され、製品またはスクラップの搬送に使用される。
スライドレール部材としては、キッチン、OAデスク、ATM、キャビネットおよびコピー機等、幅広い分野での使用が可能であり、このスライドレールは、凹凸が付与された黒色めっき鋼板をロールフォーミングで成形することで、低コストでの製品化が可能となっている。
本発明に係る黒色化めっき鋼板について、表面粗さの波形を示す図である。 水蒸気処理を施していない比較鋼板について、表面粗さの波形を示す図である。 めっき鋼板の滑り性評価試験の概要を示す図である。 本発明に係る黒色めっき鋼板および水蒸気処理を施していない比較鋼板における摩擦係数の経時変化を示す図である。
以下に本発明の実施形態を説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
本発明は、黒色化させた表面を有する黒色めっき鋼板を基材として用いたものであり、例えば、特許文献5に記載された黒色めっき鋼板を使用することが好ましい。本発明に係る黒色めっき鋼板は、Al:1.0〜22.0質量%、Mg:1.3〜10.0質量%を含み、かつZnMg相がめっき層中に分布している溶融Al、Mg含有Znめっき層を有するめっき鋼板を原板とし、当該めっき鋼板を密封容器中で水蒸気と接触させ、表面を黒色化させることにより製造される。この特定組成のめっき層を有する鋼板であって、水蒸気処理により表面を黒色化させた黒色めっき鋼板は、滑りやすい機能を有している。
本発明に係る黒色めっき鋼板は、その表面性状を示す粗さ波形(粗さ曲線)によると、水蒸気処理を施していないめっき鋼板に比べて、表面粗さが相対的に粗く、且つ凹凸ピッチが小さいことが特徴的である。表面粗さが粗いと、表面全体のうち凸部において物品と接触する割合が高くなり、物品との接触面積が小さくなるため、摩擦抵抗が減少し、その結果、滑りやすくなっていると考えられる。また、凹凸ピッチが小さいので、凹凸の配列方向による影響が小さいため、滑る方向に依存しない安定した滑りやすさが得られる。
(表面粗さ)
本発明に係る黒色めっき鋼板は、Rz(最大高さ)で表した表面粗さが10〜25μmであることが好ましい。Rzは、粗さ曲線のX軸方向に基準長さにおける最大高さの粗さを示したパラメータである。Rzが10μm未満であると、物品と接触する面積が増大し、摩擦抵抗が上昇するため、滑り性が低下する。他方、Rzが25μmを超えると、表面の凸部に応力集中し、接触部分が変形することにより、表面に新生面が現れて焼付きが発生するため、滑り性が低下する。
(めっき鋼板)
本発明に係る黒色めっき鋼板は、基材鋼板と、溶融Al、Mg含有Znめっき層(以下「めっき層」ともいう。)を有する。当該黒色めっき鋼板は、さらに、めっき層の上に無機系皮膜または有機系樹脂皮膜を有していてもよい。
本発明に係る黒色めっき鋼板は、(1)めっき層中にZnの黒色酸化物が分布していること、(2)めっき層表面の明度がL値で60以下(好ましくは40以下、さらに好ましくは35以下)であることが好ましい。めっき層表面の明度(L値)は、分光型色差計を用いて、JIS K 5600に準拠した分光反射測定法で測定される。
基材鋼板の種類は、特に限定されない。たとえば、基材鋼板としては、低炭素鋼や中炭素鋼、高炭素鋼、合金鋼などからなる鋼板を使用することができる。良好なプレス成形性が必要とされる場合は、低炭素Ti添加鋼、低炭素Nb添加鋼などからなる深絞り用鋼板が基材鋼板として好ましい。また、P、Si、Mnなどを添加した高強度鋼板を用いてもよい。
本発明の黒色めっき鋼板の原板としては、Al:1.0〜22.0質量%、Mg:1.3〜10.0質量%を含み、かつZnMg相がめっき層中に分布している溶融Al、Mg含有Znめっき層を有する溶融Al、Mg含有Znめっき鋼板が使用される。より好ましくは、さらにめっき層の金属組織としてAlの単独相を含有する溶融Al、Mg含有Znめっき層を有する溶融Al、Mg含有Znめっき鋼板が使用される。ここで「Alの単独相」とはZnを固溶したAl”相など共晶組織が形成されていないAl相を意味する。たとえば、Alの単独相は、初晶のAl相である。AlおよびMgは、Zn系めっき鋼板の耐食性を向上させる元素であるが、本発明においては、黒色化のために必須の元素である。Al含有量またはMg含有量が上記範囲の下限値より小さい場合、十分な耐食性が得られない。一方、上限値より大きい場合は、めっき鋼板製造の際にめっき浴表面に酸化物(ドロス)の発生が過多となり、美麗なめっき鋼板が得られない。
本発明の黒色めっき鋼板に係る溶融Al、Mg含有Znめっき層は、Al/Zn/ZnMgの三元共晶組織を含む。当該溶融Al、Mg含有Znめっき層は、例えば、Al:1.0〜22.0質量%、Mg:1.3〜10.0質量%、残部:Znおよび不可避不純物からなるものを用いることが可能である。また、基材鋼板とめっき層との密着性を向上させるために、基材鋼板とめっき層との界面におけるAl−Fe合金層の成長を抑制できるSiを0.005質量%〜2.0質量%の範囲でめっき層に添加してもよい。Siの濃度が2.0質量%を超えると、黒色化を阻害するSi系酸化物がめっき層表面に生成してしまうおそれがある。また、Ti、B、Ti−B合金、Ti含有化合物またはB含有化合物をめっき層に添加してもよい。これらの化合物の添加量は、Tiが0.001質量%〜0.1質量%の範囲内となるように、Bが0.0005質量%〜0.045質量%の範囲内となるように設定することが好ましい。TiまたはBを過剰量添加すると、めっき層に析出物を成長させるおそれがある。なお、めっき層中へのTi、B、Ti−B合金、Ti含有化合物またはB含有化合物の添加は、水蒸気処理による黒色化にほとんど影響を与えない。
めっき層の厚みは、特に限定されないが、3〜100μmの範囲内が好ましい。めっき層の厚みが3μm未満の場合、取り扱い時に基材鋼板に到達するキズが入りやすくなるため、黒色外観の保持性および耐食性が低下するおそれがある。一方、めっき層の厚みが100μm超の場合、圧縮を受けた際のめっき層と基材鋼板の延性が異なるため、加工部においてめっき層と基材鋼板とが剥離してしまうおそれがある。
(黒色酸化物)
本発明に係る黒色めっき鋼板は、そのめっき層中に分布しているZnの黒色酸化物を含有する。ここで、めっき層中とは、めっき層表面とめっき層内部の両方を含む。本発明に係る黒色めっき鋼板では、ZnMg相に由来するZnの黒色酸化物がラメラ状に分布している。Znの黒色酸化物が生成する機構は、以下のように考えられる。
上述の溶融Al、Mg含有Znめっき鋼板を密閉容器中で水蒸気に接触させると、三元共晶組織を構成するZnMg相に含まれるZnが優先的に酸化する。時間の経過とともに、ZnMg相に含まれるZnの酸化はめっき層の深さ方向に進行する。水蒸気雰囲気で酸素ポテンシャルが低下しているため、Zn酸化物の近傍に存在する、酸素との反応性の高いMgは、Zn酸化物から酸素を奪ってMg酸化物となる。このため、Zn酸化物は、非化学量論組成で酸素欠乏型の酸化物(例えば、ZnO1−x)に変化するものと考えられる。このように酸素欠乏型の酸化物が生成すると、その欠陥準位に光がトラップされるため、酸化物が黒色外観を呈することになる。
また、めっき層中にAlの初晶が存在する場合は、より短時間でめっき層内部にZnの黒色酸化物が進行する。Alは、ZnおよびMgと比較してHOとの反応性が高い。したがって、金属Alは、高温の水蒸気と接触すると、速やかに酸化物となる。初晶Al相に含まれるAlが速やかに酸化した後は、その下側に位置するZnMg相に含まれるZnの酸化がめっき層の深さ方向に進行する。このように初晶Al相などのAlの単独相は、めっき層内部のZnの酸化を促進するための「パス」となる。結果として、めっき層中に初晶Al相などのAlの単独相が存在する場合は、より短時間でめっき層内部にZnの
黒色酸化物が形成される。
(水蒸気処理)
上記の黒色化は、めっき鋼板を密封容器中で水蒸気に接触させて、めっき層を黒色させる処理である。水蒸気処理を行う際は、雰囲気中に酸素が存在すると、めっき層を十分に黒色できない場合がある。そこで、酸素濃度を調整できる密閉系で水蒸気処理を行うことが好ましく、雰囲気中の酸素濃度(酸素分圧)を下げて水蒸気処理を行うことが好ましい。具体的には、水蒸気処理中の酸素濃度は、13%以下であることが好ましい。雰囲気中の酸素濃度を下げる方法としては。水蒸気濃度(相対湿度)を挙げてもよいし、容器内の空気を不活性ガスで置換してもよいし、容器内に空気を真空ポンプで除去してもよい。
水蒸気処理を行う際の処理温度は、50℃以上、350°以下の範囲内が好ましい。水蒸気処理が50℃未満の場合、黒色加速度が遅く、生産性が低下する。密閉容器の中で水を100℃以上に加熱すると、容器内の圧力が1気圧以上となり、雰囲気中の酸素濃度を容易に下げることができるため、水蒸気処理の温度は100℃以上であることがより好ましい。一方、水蒸気処理の温度が350℃超の場合、黒色化速度が非常に速くなり、制御することが困難となる。また、処理装置が大型になってしまうだけでなく、昇温および降温に要する時間を含む合計処理時間も長くなってしまい、実用的でない。したがって、雰囲気中の酸素の除去および黒色化速度の制御の観点から、水蒸気処理の温度は、105℃以上かつ200℃以下の範囲内が特に好ましい。
水蒸気処理の温度を100℃未満に下げたい場合、容器内の圧力を大気圧以上として酸素の混入を抑制するため、不活性ガスを容器内に入れてもよい。不活性ガスの種類は、黒色化反応に無関係なものであれば特に限定されない。不活性ガスの例には、Ar、N、He、Ne、Kr、Xeなどが含まれる。これらの中では、安価に入手可能なAr、N、Heが好ましい。また、真空ポンプなどで容器内の空気を除去してから水蒸気処理を行ってもよい。
水蒸気処理の処理時間は、水蒸気処理の条件(温度や相対湿度、圧力など)やめっき層
中のAlおよびMgの量、必要とする明度などに応じて適宜設定されうる。
水蒸気処理中の水蒸気の相対湿度は、30%以上かつ100%以下の範囲内が好ましく、30%以上かつ100%未満の範囲内がより好ましい。水蒸気の相対湿度が30%未満の場合、黒色化速度が遅く、生産性が低下してしまう。また、水蒸気の相対湿度が100%の場合、めっき鋼板の表面に結露水が付着して外観不良が生じやすくなるおそれがある。
水蒸気処理は、コイル状に巻かれためっき鋼板、成形加工前の平板状のめっき鋼板、成
形加工や溶接などを行った後のめっき鋼板のいずれに対して行ってもよい。
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
鋼板素材として、C0.19質量%、Si0.01質量%、Mg0.50質量%、P0.016質量%、S0.004質量%の組成を有する厚さ1.0mmの鋼板に、Al6質量%、Mg3質量%を含み、かつZnMg相が分布するめっき層を有する溶融Al、Mg含有Znめっき鋼板(「ZAM90C」、日新製鋼株式会社製)を用いた。めっき層の厚みは、15μmであった。これを比較例のめっき鋼板として滑り性評価試験に供した。
次いで、このめっき鋼板を密封容器中で、110℃、24時間で水蒸気と接触させ、めっき層の表面を黒色化させた。水蒸気の雰囲気は、酸素濃度4%、相対湿度80%であった。これを本発明例の黒色めっき鋼板として滑り性評価試験に供した。
(表面粗さ、凹凸ピッチの測定)
めっき鋼板の表面粗さに関して、JIS B 0601−2001に準拠して、表面粗さ測定機により粗さ曲線を測定し、基準長さ4mmで最大高さRzを求めた。
表面の凹凸ピッチは、上記基準長さにおいて、輪郭形状を測定し、その際の谷部の間隔を算出した。
(滑り性の評価試験)
図3に示すような摩擦磨耗試験機6を用いて、めっき鋼板の摩擦係数を測定し、めっき鋼板の滑り性を評価した。摩擦磨耗試験機6の基台の上に試験体1のめっき鋼板を置いて、その上に厚さ1.0mmのSPCC(JIS G 3141)からなる冷間圧延鋼板(以下、「SPCC」という。)を重ねる。SPCC2にはフォルダー4を介して錘3が接続しており、この錘3の一定荷重を付加しながら、SPCC2を一定速度で回転し、連続的に試験体と摩擦させる。回転中のせん断力を測定し、せん断力をτ、錘から作用する荷重をpとして、式(1)から摩擦係数μを算出した。この摩擦係数μが小さいほど、試験体1(めっき鋼板)とSPCC2との間で発生する摩擦力が小さい。すなわち、物品が試験体1(めっき鋼板)と接触して移動する状況では、当該物品を小さい摩擦力で移動させることができるから、上記の摩擦係数μが小さいほど、試験体1のめっき鋼板の滑り性が良好であると評価できる。
τ=μp・・・式(1)
本実施例の摩擦摩耗試験条件としては、29.4kNの錘により荷重を付与し、めっき鋼板とSPCCとを、無潤滑、常温、回転直径10mm、回転速度9.5rpmで、60秒間を連続的に摩擦させた。
<試験例1>
本発明例と比較例の各試験体を用いて、表面粗さの粗さ曲線を測定した。本発明例の結果を図1に示し、比較例の結果を図2に示す。これらの粗さ曲線によると、本発明例の黒色めっき鋼板は、Rzが13.8μm、凹凸ピッチは、0.15mmであった。比較例のめっき鋼板は、Rzが8.4μm、凹凸ピッチが0.28mmであった。本発明例の黒色めっき鋼板は、比較例の水蒸気処理を施していない通常のめっき鋼板と比べて、表面粗さが相対的に粗く、且つ凹凸ピッチが小さいことを確認できた。
<試験例2>
次に、本発明例の黒色めっき鋼板と比較例のめっき鋼板を用いて、摩擦磨耗試験機による摩擦係数が推移する経時変化を1秒ごとに測定した。その結果を図4に示す。
図4に示すように、本発明例の摩擦係数は、概ね0.1近辺を推移している。それに対し、比較例の摩擦係数は、試験初期が約0.2であったが、測定時間の経過につれて上昇する傾向にあり、最大で約0.3まで上昇した。
このことから、本発明例の黒色めっき鋼板は、摩擦係数が低く、滑りやすく、良好な滑り性を有することが判明した。そして、摩擦が続いてもこの良好な滑り性を維持できることも確認できた。
本発明例の黒色めっき鋼板は、めっき層に黒色酸化物が含まれることにより、滑り性が向上したと考えられる。
また、比較例のように黒色化されていない従来のめっき鋼板は、摩擦熱により接触表面が温度上昇し、摩擦係数が高まって滑り性が低下するのに対し、本発明例は、黒色めっき鋼板のめっき膜による良好な吸放熱作用が寄与して、温度上昇が抑制された結果、滑り性が保持されたと推測される。
1 試験体(めっき鋼板)
2 SPCC
3 錘
4 フォルダー
5 円盤
6 摩耗摩擦試験機
7 黒色めっき鋼板
8 凸部
9 凹部
10 上ワークロール(段付きロール)
11 下ワークロール(フラットロール)
12 バックアップロール
13 バックアップロール
14 ペイオフリール
15 巻取りロール
16 めっき鋼板

Claims (2)

  1. Al:1.0〜22.0質量%、Mg:1.3〜10.0質量%を含み、かつZnの黒色酸化物がめっき層中に分布している溶融Al、Mg含有Znめっき層を有し、前記溶融Al、Mg含有Znめっき層表面の粗さは、Rzで10〜25μmの範囲内である黒色めっき鋼板。
  2. 前記Znの黒色酸化物は、ZnMg相に由来するZnの酸化物である請求項1に記載の黒色めっき鋼板。
JP2015020283A 2015-02-04 2015-02-04 滑り性に優れた黒色めっき鋼板 Pending JP2016141870A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015020283A JP2016141870A (ja) 2015-02-04 2015-02-04 滑り性に優れた黒色めっき鋼板

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015020283A JP2016141870A (ja) 2015-02-04 2015-02-04 滑り性に優れた黒色めっき鋼板

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2016141870A true JP2016141870A (ja) 2016-08-08

Family

ID=56569818

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2015020283A Pending JP2016141870A (ja) 2015-02-04 2015-02-04 滑り性に優れた黒色めっき鋼板

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2016141870A (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2018172747A (ja) * 2017-03-31 2018-11-08 日新製鋼株式会社 水蒸気処理製品の製造方法および製造装置

Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2013241671A (ja) * 2012-04-25 2013-12-05 Nisshin Steel Co Ltd 黒色めっき鋼板の製造方法および黒色めっき鋼板の成形体の製造方法
JP2013241672A (ja) * 2012-04-25 2013-12-05 Nisshin Steel Co Ltd 黒色めっき鋼板の製造方法および黒色めっき鋼板の成形体の製造方法

Patent Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2013241671A (ja) * 2012-04-25 2013-12-05 Nisshin Steel Co Ltd 黒色めっき鋼板の製造方法および黒色めっき鋼板の成形体の製造方法
JP2013241672A (ja) * 2012-04-25 2013-12-05 Nisshin Steel Co Ltd 黒色めっき鋼板の製造方法および黒色めっき鋼板の成形体の製造方法

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2018172747A (ja) * 2017-03-31 2018-11-08 日新製鋼株式会社 水蒸気処理製品の製造方法および製造装置

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Manninen et al. Influence of Ag content on mechanical and tribological behavior of DLC coatings
JP7060693B2 (ja) 亜鉛合金めっき鋼材及びその製造方法
JP5341270B1 (ja) 黒色めっき鋼板の製造方法および黒色めっき鋼板の成形体の製造方法
JP5044976B2 (ja) 合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法および合金化溶融亜鉛めっき鋼板
JP5335159B1 (ja) 黒色めっき鋼板の製造方法および黒色めっき鋼板の成形体の製造方法
JP2017145508A (ja) Zn−Mg合金めっき鋼板及びその製造方法
CA2947403C (en) Hot-dip al-based alloy coated steel sheet excellent in workability
JP7273206B2 (ja) プレス成形性及び塗装後鮮映性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法及びこれによって製造された溶融亜鉛めっき鋼板
JP2017145441A (ja) 黒色表面被覆高強度鋼板およびその製造方法
Franz et al. Influence of phase transition on the tribological performance of arc-evaporated AlCrVN hard coatings
JP2016141870A (ja) 滑り性に優れた黒色めっき鋼板
JP5578116B2 (ja) 合金化溶融亜鉛めっき鋼板及びその製造方法
JP6504842B2 (ja) 滑り性に優れた黒色めっき鋼板
JP7160203B2 (ja) ホットスタンプ用亜鉛めっき鋼板、ホットスタンプ用亜鉛めっき鋼板の製造方法およびホットスタンプ成形体
JP3139232B2 (ja) プレス成形性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板
JP5540459B2 (ja) 合金化溶融亜鉛めっき鋼板
JP5044924B2 (ja) 合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法および合金化溶融亜鉛めっき鋼板
JP2007231375A (ja) 合金化溶融亜鉛めっき鋼板
JP4826486B2 (ja) 合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法
JP2011094215A (ja) めっき密着性に優れた合金化溶融亜鉛めっき高張力鋼板、およびその製造方法
JP4930182B2 (ja) 合金化溶融亜鉛めっき鋼板
JP2010106293A (ja) Mg、Al含有溶融Znめっき鋼板の製造方法
Goodwin Developments in the production of galvannealed steel for automotive
JP3644402B2 (ja) 合金化溶融亜鉛めっき鋼板
JP2695259B2 (ja) プレス成形性に優れた合金化溶融Znめっき鋼板

Legal Events

Date Code Title Description
RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20170131

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20171027

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20180719

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20180828

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20190326