以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。実施形態の歩行者用エアバッグ装置(以下「エアバッグ装置」と省略する)Mは、図1,3〜5に示すように、車両Vのフードパネル15の後端15c近傍となる位置に、配置されている。詳細には、エアバッグ装置Mは、フードパネル15の後端15cの略直下となる位置であって、左右のフロントピラー5L,5Rの間となる車両Vの左右方向(車幅方向)の中央側となる位置に、配置されている。実施形態の場合、エアバッグ装置Mは、フードパネル15の後端15cを上昇させるフード跳ね上げ装置25とともに作動される。なお、本明細書では、特に断らない限り、前後、上下、及び、左右の方向は、それぞれ、車両Vの前後、上下、左右の方向と一致させて、説明する。
実施形態の場合、車両Vのフロントバンパ6(図1参照)には、歩行者との衝突を検知可能な図示しないセンサが、配設されており、センサからの信号を入力させている図示しない作動回路が、センサからの信号に基づいて車両Vと歩行者との衝突を検知した際に、エアバッグ装置Mのインフレーター35を作動させるように、構成されている。また、フード跳ね上げ装置25の後述するアクチュエータ28も、作動回路による車両Vと歩行者との衝突検知時に作動されて、フードパネル15の後端15cを押し上げ(図27,28参照)、フードパネル15の後端15cとカウル7との間にエアバッグ突出用の隙間を形成することとなる。
フードパネル15は、図1に示すように、車両Vにおけるエンジンルームの上方を覆うように配設されるもので、左縁15d側と右縁15e側とにおける後端15c近傍に配置されるヒンジ部18により、車両Vのボディ1側に対して、前開きで開閉可能に連結されている。フードパネル15は、実施形態の場合、鋼板や、アルミニウム(アルミニウム合金)等の板材等からなり、図2〜5に示すように、上面側のアウタパネル15aと、下面側に位置してアウタパネル15aより強度を向上させたインナパネル15bと、を備えている。フードパネル15は、後述するフロントウィンドシールド4に合わせて、図1に示すように、後端15cを、左右方向の中央を前方に位置させ、左右両端側を後方に位置させるように、左右方向に対して湾曲させて構成されている。
フードパネル15の後縁下方(後方)には、図4,5に示すように、ボディ1側の剛性の高いカウルパネル7aと、カウルパネル7aの上方の合成樹脂製のカウルルーバ7bと、からなるカウル7が、配設されている。カウルルーバ7bは、後端側をフロントウィンドシールド4の下部4a側に連ならせるように、配設されている。このカウル7も、フードパネル15の後端15cの湾曲形状に合わせて、左右の中央を前方に位置させ、左右両端側を後方に位置させるように、左右方向に対して湾曲して、構成されている(図1参照)。また、カウル7の部位には、図1,2に示すように、ワイパ8が、配設されている。このワイパ8は、図4,5の二点鎖線に示すように、カウルルーバ7bから上方に突出するように、配設されている。フロントウィンドシールド4の左右の外方には、図1に示すように、フロントピラー5L,5Rが、配設されている。フードパネル15は、フード跳ね上げ装置25の作動時に、後端15cを押し上げられることとなるが(図25,26参照)、この後端15cの上昇移動時には、フードパネル15の前端15f側は、前端15f側に配置される通常閉塞用の図示しないフードロックストライカを係止するラッチ機構により、ボディ1側から外れることはない。
ヒンジ部18は、フードパネル15の後端15c側における左縁15dと右縁15eとに配設され(図1,2参照)、それぞれ、ボディ1側の部材であるフードリッジリインホース2に連結された取付フランジ3に固定されるヒンジベース19と、フードパネル15側に固定されるヒンジアーム21と、を備えて構成されている(図1〜3参照)。各ヒンジアーム21は、図3に示すように、板金製のアングル材を下向きに突出させるように略半円弧状に湾曲させた形状として構成され、ヒンジベース19側の元部端21aが、支持軸20を利用してヒンジベース19に対して回動可能に連結されている。また、各ヒンジアーム21は、図3に示すように、元部端21aから離れる先端21b側に、先端21bからフードパネル15の下面に略沿うように延びる連結板部22を、備える構成とされ、この連結板部22が、フードパネル15の後端15cにおける下面側に、溶接等を利用して結合されている。また、ヒンジアーム21の先端21b付近には、図3に示すように、下縁を略円形状に切り欠くように構成される切欠凹部21cが、形成されており、この切欠凹部21cの周囲の部位が、詳細な図示を省略するが、フード跳ね上げ装置25におけるアクチュエータ28の作動時においてピストンロッド30がフードパネル15の後端15cを押し上げた際に、塑性変形する塑性変形部21dとされて、図25,26に示すように、フードパネル15の後端15cの上昇を許容することとなる。各支持軸20は、図2,3に示すように、それらの軸方向を、車両Vの左右方向に沿わせるように配置されている。そして、フードパネル15を開く際には、フードパネル15の前端15f側(図1参照)を前開きで上昇させれば、各支持軸20を回転中心として、フードパネル15を前開きで開くことができる(図3の二点鎖線参照)。
フード跳ね上げ装置25は、図1〜3に示すように、エアバッグ装置Mの左右両側であって、フードパネル15の後端15c側における左縁15d,右縁15eの下方となるヒンジ部18の下方に配設されている。各フード跳ね上げ装置25は、図3に示すように、アクチュエータ28と、アクチュエータ28をボディ1側のフードリッジリインホース2に取り付ける取付ブラケット26と、を備えている。取付ブラケット26は、アクチュエータ28を保持可能な断面略U字形状として、フードリッジリインホース2に連結される取付フランジ2aに対してボルト27止めされている。アクチュエータ28は、駆動源として、図示しないガス発生器を使用しており、取付ブラケット26に保持されるシリンダ29と、シリンダ29から上方へ突出するように配設されるピストンロッド30と、を備えている。このアクチュエータ28では、シリンダ29の下端側に内蔵される図示しないガス発生器を作動させて発生する作動ガスにより、シリンダ29内に収納されるピストンロッド30の図示しないピストンを押し上げて、ピストンロッド30を上昇移動させる構成である。そして、アクチュエータ28の作動時に、上昇移動するピストンロッド30の上端30aが、フードパネル15の後端15cの下面に当接することとなり、この上昇移動するピストンロッド30の上端30aによって、図25,26に示すように、フードパネル15の後端15cが上方に押し上げられて、カウル7とフードパネル15の後端15cとの間に、膨張するエアバッグ45を突出させるための隙間が形成されることとなる。
エアバッグ装置Mは、図2,4,5に示すように、エアバッグ45と、エアバッグ45に膨張用ガスを供給するインフレーター35と、エアバッグ45とインフレーター35とを収納する収納部位としてのケース80と、折り畳まれたエアバッグ45を覆うエアバッグカバー110と、インフレーター35とエアバッグ45とをケース80側に取り付ける取付ブラケット115と、を備えている。
インフレーター35(35L,35R)は、図2,6に示すように、車幅方向側(左右方向側)で2箇所に、配設されるもので、それぞれ、軸方向を左右方向(車幅方向)に略沿って配置されて、外形形状を略円柱状としたシリンダタイプとされている。各インフレーター35は、軸方向の一端側(先端35a側)に、膨張用ガスを吐出可能なガス吐出口部36を配設させて構成されるもので、軸方向の他端側(元部35b側)から延びる図示しないリード線を介して、作動回路と電気的に接続されている。インフレーター35L,35Rは、ガス吐出口部36を備える先端35a側を相互に離隔させるようにして、車両Vに搭載されている(図2参照)。また、各インフレーター35(35L,35R)は、先端35a側を、エアバッグ45の後述する流入口部51(51L,51R)に挿入させ、流入口部51の外周側に配置される2つのクランプ39,130を利用して、エアバッグ45に対して連結される構成である(図19〜21参照)。さらに、実施形態の場合、各インフレーター35(35L,35R)は、図18の二点鎖線に示すように、ケース80における後述する端側部位89(89L,89R)の領域内に、先端35a(ガス吐出口部36)を挿入させるようにして、後述する中央側部位88と端側部位89(89L,89R)とにまたがるようにして、ケース80内に収納されている。
エアバッグ45は、図7〜10に示すように、内部に膨張用ガスを流入させて膨張するバッグ本体46と、バッグ本体46の展開膨張時の挙動を規制する規制手段(周長短縮部)としてのつまみ部65(65L,66R)と、バッグ本体46をケース80に取り付ける取付ベルト67,68と、を備える構成とされている。
バッグ本体46は、膨張完了時に下面側に配置される車体側壁部47aと上面側に配置される歩行者側壁部47bとを離隔させるように内部に膨張用ガスを流入させて膨張するガス流入部47と、ガス流入部47の外周縁側を構成する外周縁部61と、を備えている。
ガス流入部47は、膨張完了時の形状を、正面側から見て、左右に幅広の略U字形状とされるもので、左右に延びてカウル7(カウルルーバ7b)の上面側を覆う横膨張部48と、横膨張部48の左右の端部から後方に延びて左右のフロントピラー5L,5Rの前面の下部5a側を覆う縦膨張部56(56L,56R)と、横膨張部48の前縁48a側から延びるように形成されてインフレーター35L,35Rと接続される流入口部51(51L,51R)と、を備えて構成されている。ガス流入部47を構成する車体側壁部47aと歩行者側壁部47bとは、外形形状を略同一として、構成されており、ガス流入部47は、車体側壁部47aと歩行者側壁部47bとの外周縁相互を、流入口部の開口51aを除いて、外周縁部61を構成する周縁結合部62によって結合(縫着)されて、袋状とされている。
横膨張部48は、収納部位としてのケース80から突出するように膨張して、実施形態の場合、膨張完了時に、フードパネル15の後縁(後端15c)下方のカウル7の上方を、左右方向の略全域にわたって覆い可能に、左右方向に略沿って配置されることとなる。具体的には、横膨張部48は、バッグ本体46の膨張完了時に、図24,25に示すように、前縁48aをフードパネル15の後端15cに近接させつつ、カウル7からフロントウィンドシールド4の下部4a側にかけての領域の上面側を覆うように、構成されている。
流入口部51(51L,51R)は、横膨張部48の前縁48a側から前方に突出するように形成されるもので(図6,7参照)、実施形態の場合、左右方向で離れた2箇所に配設されている。各流入口部51は、それぞれ、左右のインフレーター35L,35Rを挿入させて膨張用ガスを内部に流入させるように、左右方向側で対向して配設されている。この流入口部51(51L,51R)は、実施形態の場合、横膨張部48において、縦膨張部56L,56Rよりも左右方向の内側となる位置に、形成されるもので、横膨張部48の前縁48aから前方に突出しつつ、インフレーター35を挿入させる先端側の開口を51aを左右の内方に向けるように、屈曲して形成されている。実施形態のエアバッグ45では、この流入口部51L,51Rは、エアバッグ45の膨張完了時に、横膨張部48側となる元部側部位52(52L,52R)を、ケース80の突出用開口80aから突出させて、ケース80と、フードパネル15の後端15cと、の間に介在させるように、配置される構成である(図26参照)。また、横膨張部48において、膨張完了時に左右方向の中央側に配置されて、前側に流入口部51L,51Rを配設させていない中央側部位49は、図25に示すように、エアバッグ45の膨張完了時に、フードパネル15の下方に配置されず、フードパネル15の後方に配置されることとなる。
また、実施形態のエアバッグ45では、流入口部51L,51Rの内部に、図7,10に示すように、耐熱性を高めるとともに、内部に流入した膨張用ガスを左右に分岐させるためのインナチューブ54(54L,54R)が、配設されている。各インナチューブ54は、図7,11に示すように、三叉状として、流入口部51の開口51a側に形成される開口54aと、横膨張部48内に配置される領域において左右両端側に形成される開口54b,54cと、を備える構成とされている。このインナチューブ54を内部に配置させることにより、流入口部51から流入する膨張用ガスは、ダイレクトに後方に向かうことを抑制されて、左右に向かうように流れることとなる。
さらに、実施形態のバッグ本体46内(ガス流入部47内)には、膨張完了時における歩行者側壁部46bと車体側壁部46aとの離隔距離を規制可能に、歩行者側壁部46bと車体側壁部46aとを連結する中央側テザー58と端側テザー59(59L,59R)とが、配設されている(図7〜10参照)。中央側テザー58は、横膨張部48から左右の縦膨張部56L,56Rの領域内にかけて配置されるもので、横膨張部48の前後の略中央となる位置において、平らに展開した状態のバッグ本体46の後縁に略沿うように、全長にわたって緩やかな曲線状として、配設されている。この中央側テザー58は、図9〜11に示すように、車体側壁部46a側に配置される車体側部位73aと、歩行者側壁部46b側に配置される歩行者側部位73bと、の2枚のテザー用基布73から、形成されている。端側テザー59(59L,59R)は、横膨張部48の前縁48a近傍であって、各流入口部51L,51Rの後方となる位置に、それぞれ、配置されている。各端側テザー59(59L,59R)は、中央側テザー58に略沿って、左右方向の内側を前側に位置させ、左右方向の外側を後側に位置させるように、左右方向に対して傾斜して形成されるもので、略左右対称形とされている。この端側テザー59も、図10,11に示すように、車体側壁部46a側に配置される車体側部位74aと、歩行者側壁部46b側に配置される歩行者側部位74bと、の2枚のテザー用基布74から、形成されている。
外周縁部61は、ガス流入部47の外周縁側において、膨張用ガスを流入させない構成とされるもので、実施形態の場合、車体側壁部47aと歩行者側壁部47bとを結合(縫着)させている周縁結合部62と、周縁結合部62から外方に延びるシート状部位63と、を備える構成とされている。周縁結合部62は、車体側壁部47aと歩行者側壁部47bとを縫合糸を用いて縫着させることにより、形成されている。シート状部位63は、実施形態の場合、車体側壁部47a及び歩行者側壁部47bから連なって外方に延びるような2枚重ね状として、構成されている。
シート状部位63は、各流入口部51の左右の外方側において、各流入口部51の前縁51bから、縦膨張部56の外縁56aに連なるように形成される前縁側部64(64L,64R)を、備える構成とされている。各前縁側部64は、図7,8に示すように、外形形状を、流入口部51の前縁51bと縦膨張部56の外縁56aとを連結させるような略三角形状として、実施形態の場合、端縁64aを略直線状とするように構成されている。そして、この前縁側部64に、端縁64aの長さを縮めた周長短縮部としてのつまみ部65が、下面側に向かって突出するように、形成されている。つまみ部65は、詳細に説明すれば、図12のAに示すように、車体側壁部47aと歩行者側壁部47bとを重ねて平らに展開した状態におけるつまみ部形成前の前縁側部64において、端縁64a上において、左右方向側で離れた2点OP1,OP2を、端縁64aより後側でかつOP1,OP1間となる点IPを起点として、重ねるように、前縁側部64を、IPとOP1,OP2との間とを通る線CLで折り返し、IPと、重なっている状態のOP1,OP2と、を通る線L1,L2(図12のA参照)上に、縫合部位66(結合部位)を形成するように、縫合糸Tを用いて前縁側部64相互を縫着させることにより、形成されることとなる。すなわち、つまみ部65は、端縁64a側から後側にかけて収束させるような略三角形状に折り重ねられる構成とされており、縫合部位66は、折り重ね部65a,65aにおいて前縁側部64の一般部64b側の縁部相互を結合させるように、配置される構成である。また、この縫合部位66は、実施形態の場合、端縁64aに対して略直交しつつ、折り重ね部65a,65aを全域にわたって結合させるように、配置されている(図13のB参照)。このつまみ部65は、バッグ本体46の展開膨張時の挙動を規制する規制手段を、構成するもので、つまみ部65による端縁64aのつまみ量(つまみ部形成前の端縁64a上の2点OP1,OP2間の離隔距離D1、図12のA参照)は、バッグ本体46の展開膨張時と膨張完了時とに、前縁側部64の部位に、流入口部51側に向かうような張力F(図12のB参照)を発揮させることができて、この張力Fによって、縦膨張部56の展開膨張時の左右にぶれるような挙動と、膨張完了時の縦膨張部56のぶれと、を規制可能な寸法に、設定されている。なお、図12,13では、便宜上1枚で表記しているが、実際には、つまみ部65も、シート状部位63と同様に、2枚重ねとして構成されている。
取付ベルト67(67L,67R),68は、横膨張部48において流入口部51L,51L間となる中央側部位49の前縁48aから延びるように配設されるもので、左右対称となる位置に、配置されている。取付ベルト67(67L,67R)は、図7,8に示すように、横膨張部48の前縁48aにおける流入口部51(51L,51R)の左右方向の内側近傍から前方に延びるように配設されるもので、先端67a側に、各取付ブラケット115から突出している取付ボルト125Cを挿通可能な取付孔67bを、有している(図21参照)。取付ベルト68は、図7,8に示すように、横膨張部48の前縁48aにおける左右の略中央から前方に延びるように配設されるもので、先端68a側に、取付ブラケット115Lから突出している取付ボルト125Aを挿通可能な取付孔68bを、有している(図23参照)。これらの取付ベルト67L,67R,68は、バッグ本体46の展開膨張時に、横膨張部48の前縁48a側とケース80の底壁部81との離隔距離を規制して、横膨張部48全体、特に、中央側部位49が、ケース80から大きく離隔して上方に浮き上がることを抑制するために、配設されている(図25参照)。
エアバッグ45は、図11に示すように、ガス流入部47において車体側壁部47aを構成する車体側基布70及び歩行者側壁部47bを構成する歩行者側基布71と、インナチューブ54を構成するインナチューブ用基布72と、中央側テザー58を構成するテザー用基布73と、端側テザー59を構成するテザー用基布74と、取付ベルト67,68を構成するベルト用基布75,76と、から、構成されている。なお、これらの基布(素材)は、ポリアミド糸やポリエステル糸等を織成して形成される織布の表面に、ガス漏れ防止用のコーティング剤を塗布させたコート布を所定形状に裁断して、形成されている。
ケース80は、フードパネル15の後端15cの略直下となる位置に配置されるもので、左右方向に略沿って配置される長尺状として構成されている。ケース80は、板金製として、図14,15に示すように、底壁部81と、底壁部81の周縁から立ち上がるように構成されて上端側を開口させて構成される周壁部82と、を備えた略箱形状として、上端側を開口させて構成されている。底壁部81は、インフレーター35とエアバッグ45とを取り付けてインフレーター35の下面側を支持する構成とされるもので、実施形態の場合、取付ブラケット115の取付ボルト125を挿通させて取付可能な多数の取付孔81aを、備えている。底壁部81に形成される取付孔81aは、図18に示すように、取付ボルト125を挿通させる部位以外にも、形成されているが、取付ボルト125挿通用ではないものは、内部に雨水等が進入した際に水分を排出させるために、形成されている。周壁部82は、前後方向側で対向する前壁部83,後壁部84と、左右方向側で対向する左壁部85,右壁部86と、を備えている。実施形態の場合、後壁部84は、エアバッグ45の後上方側への突出を容易とするために、図20〜23に示すように、上下方向側の幅寸法を、前壁部83より小さく設定されて、前壁部83よりも上端を下側に位置させる構成とされている。
また、実施形態では、ケース80は、図15,18に示すように、左右方向の中央側となる中央側部位88を、左右方向の両端側の端側部位89L,89R(89)よりも、前後方向側の幅寸法を小さくして、構成されている。詳細には、実施形態のケース80では、前壁部83を、左右方向に沿って連ならせ、後壁部84に段差を設けるようにして、中央側部位88と、端側部位89L,89Rと、の前後方向側の幅寸法を異ならせている。また、ケース80には、ケース80をボディ1側のカウルパネル7aに取り付けるためのブラケット部102が、下端付近から前後左右の外方に延びるように、複数個形成されている(図14,15参照)。
エアバッグカバー110は、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)等の軟質合成樹脂製とされるもので、ケース80の上端側の突出用開口80aを覆うように配置されて、エアバッグ45の展開膨張時に、エアバッグ45に押されて開き可能な扉部111を、有する構成とされている(図4,5,25,26参照)。このエアバッグカバー110は、所定箇所を、図示しない取付手段を用いて、ケース80に取り付けられている。
インフレーター35(35L,35R)とエアバッグ45とをケース80側に取り付ける取付ブラケット115(115L,115R)は、図6,16に示すように、略左右対称形として、2個配置されている。各取付ブラケット115L,115Rは、それぞれ、図16,17に示すように、インフレーター35L,35Rと折り畳まれたエアバッグ45との下面側を支持するように左右方向に略沿って延びる帯状の板金製の支持部117(117L,117R)と、支持部117から下方に突出する複数の取付ボルト125(125A,125B,125C,125D)と、を備える構成とされている。各支持部117は、左右方向に略沿って延びる略帯板状として構成されるもので、エアバッグ45の流入口部51内に挿入された状態のインフレーター35を支持する領域に、図17〜19に示すように、保持片部120(120A,120B,120C)を、配設させている。保持片部120(120A,120B,120C)は、インフレーター35を保持可能に、支持部117における前後の縁部から先端を前後方向の外方に向けつつ上側に向かって延びるように傾斜して形成されるもので(図22参照)、実施形態の場合、左右方向側で断続的に3箇所に、形成されている。
右側の取付ブラケット115Rと左側の取付ブラケット115Lとは、図6,14に示すように、車両搭載時に左右の中央側に位置する内側端部118L,118R以外は、同一の構成とされている。左側の取付ブラケット115Lは、5本の取付ボルト125A,125B,125C,125Dを備える構成とされており、詳細には、取付ボルト125A,125B,125C,125Dは、左右の外側に位置する外側端部119L付近と、内側端部118L付近と、左右方向の内側に配置される保持片部120Aの内側と、保持片部120Bと保持片部120Cとの間と、において、それぞれ、下方に突出するように形成されている。右側の取付ブラケット115Rは、内側端部118R付近を除いて、左側の取付ブラケット115Lと同様の位置に、取付ボルト125B,125C,125Dを配設させる構成とされ、内側端部118Rには、左側の取付ブラケット115Lの内側端部118Lに形成される取付ボルト125Aを挿通可能な取付孔118aを、備えている。また、右側の取付ブラケット115Rにおける内側端部118Rには、取付孔118aに取付ボルト125Aを挿通させた際に、左側の取付ブラケット115Lの内側端部118Lの前後移動を抑制するストッパ片118b,118bが、前後の縁から上方に突出するように、形成されている(図6,19,23参照)。
各取付ブラケット115は、後述する折り完了体145(エアバッグ45の流入口部51)にインフレーター35を組み付けた状態で、折り完了体145の下面側に配設させ、保持片部120A,120B間の領域において、流入口部51の外周側から、クランプ130を巻き付けることにより、このクランプ130を利用して、エアバッグ45の流入口部51及びインフレーター35と支持部117とを連結させ、エアバッグ45及びインフレーター35を取り付ける構成である(図19,20参照)。実施形態の場合、他の部位には、折り完了体145の所定箇所の外周側から支持部117にかけて、補助的に、図示しない破断可能なテープ材を巻き付けている。また、各取付ブラケット115において、保持片部120B,120C間に配設される取付ボルト125Cは、図21に示すように、取付ベルト67の先端67a側に形成される取付孔67bに挿通される構成であり、取付ブラケット115Lにおいて、内側端部118L側に配置される取付ボルト125Aは、図23に示すように、取付ベルト68の先端68a側に形成される取付孔68bに挿通される構成である。また、各取付ブラケット115は、エアバッグ45とインフレーター35を取り付けた状態で、各取付ボルト125をケース80の底壁部81から突出させ、底壁部81から突出している取付ボルト125にナット126を締結させることにより、エアバッグ45とインフレーター35とをケース80に取り付けることとなる。このとき、エアバッグ45の取付ベルト67,68も、それぞれ、先端67a,68a側を、ケース80側に連結されることとなる。
次に、実施形態のエアバッグ装置Mの車両Vへの搭載について説明をする。まず、エアバッグ45を、ケース80内に収納可能に折り畳む。実施形態では、エアバッグ45は、車体側壁部47aと歩行者側壁部47bとを重ねるように平らに展開した状態から、前後方向側の幅寸法を縮める前後縮小折りと、左右方向側の幅寸法を縮める左右縮小折りと、を経て折り畳まれるもので、折り完了体145は、左右縮小折り時に形成される蛇腹折り部位146L,146Rを、左右両端側に配置させて、左右両端側の領域を厚くするように構成されている(図6参照)。そして、実施形態では、この蛇腹折り部位146L,146Rは、ケース80における端側部位89L,89R内に収納されることとなる。
エアバッグ45の折り畳み完了後には、折り完了体145の周囲に、折り崩れ防止用の破断可能なテープ材160(ラッピング材)を巻き付けておく(図6参照)。このとき、流入口部51の先端側の開口51aと、各取付ベルト67,68の先端67a,68a側と、は、折り完了体145から突出させておく。そして、各インフレーター35を、それぞれ、ガス吐出口部36側を開口51aから流入口部51内に挿入させ、クランプ39を用いて、流入口部51と接続させる。その後、折り完了体145の下面側に、各取付ブラケット115を配置させ、クランプ130を利用して、各インフレーター35及び折り完了体145(エアバッグ45)を各取付ブラケット115と連結させる。また、折り完了体145の所定箇所と取付ブラケット115の支持部117とに、図示しない破断可能なテープ材を補助的に巻き付ける。このとき、左右の取付ブラケット115L,115Rは、左側の取付ブラケット115Lの内側端部118Lに形成される取付ボルト125Aを、右側の取付ブラケット115Rの内側端部118Rに形成される取付孔118aに挿通させることにより、連結させておく。また、各取付ベルト67,68の先端67a,68a側に形成される取付孔67b,68bに、各取付ボルト125A,125Cを挿通させて、エアバッグ組付体を製造する。その後、エアバッグ組付体を、各取付ボルト125を底壁部81から突出させるようにして、ケース80内に収納させ、底壁部81から突出している各取付ボルト125に、ナット126を締結させれば、エアバッグ45(バッグ本体46)とインフレーター35とを、ケース80に取り付けることができ、また、バッグ本体46から延びる各取付ベルト67,68を、ケース80に連結させることができる。その後、エアバッグカバー110をケース80に取り付け、ケース80から延びるブラケット部102を、カウルパネル7aに取り付け、インフレーター35を、図示しない作動回路に接続させれば、エアバッグ装置Mを車両Vに搭載することができる。
そして、実施形態のエアバッグ装置Mでは、図示しない作動回路が、フロントバンパ6に配置される図示しないセンサからの信号に基づいて、車両Vの歩行者との衝突を検知した際に、フード跳ね上げ装置25のアクチュエータ28が、ピストンロッド30によりフードパネル15の後端15cを押し上げるように作動されて、フードパネル15の後端15cとカウル7との間に、エアバッグ突出用の隙間が形成されることとなる。略同時に、インフレーター35が作動されて、内部に膨張用ガスを流入させてエアバッグ45(バッグ本体46)が膨張することとなり、膨張するエアバッグ45が、エアバッグカバー110の扉部111を押し開き、扉部111を押し開いて形成されるケース80の突出用開口80aから、後上方に向かって突出しつつ展開膨張して、カウル7の上面とフロントピラー5L,5Rの前面とを覆うように、膨張を完了させることとなる(図24〜26参照)。
実施形態のエアバッグ装置Mでは、規制手段を構成している周長短縮部としてのつまみ部65が、横膨張部48の前縁48a側における流入口部51(51L,51R)の左右両側(実施形態の場合、各流入口部51の左右の外方側)において、それぞれ、流入口部51から縦膨張部56における左右方向の外縁56a側に連なる前縁側部64の端縁64aの左右方向の周長を縮めるようにして、形成されることから、バッグ本体46の展開膨張時に、横膨張部48の前縁48a側における流入口部51(51L,51R)の左右の外方側の前縁側部64(64L,64R)の部位に、端縁64aの左右方向の周長を縮めることによる流入口部51側に向かうような張力Fを発揮させることができ(図12のB参照)、この張力Fによって、縦膨張部56(56L,56R)の展開膨張時の左右にぶれるような挙動を規制できる。具体的には、図27に示すようなエアバッグ45の展開膨張時において、各縦膨張部56が、図27のBの二点鎖線に示すように、先端側56bを左右の内方から、左右の外方に向けるように膨張した後、反動で、再度先端側を左右の内方に向けるように移動することを、前縁側部64に発生し、各縦膨張部56の外縁56a側にも作用する張力F(図27のB参照)によって、規制でき、各縦膨張部56(56L,56R)を、左右方向側で大きくぶれることを抑制して、フロントピラー5L,5Rを覆うように、迅速に配置させることができる。また、エアバッグ45の膨張完了時には、前縁側部64に発生し、各縦膨張部56の外縁56a側にも作用する張力Fによって、各縦膨張部56(56L,56R)を、フロントピラー5L,5Rを覆うように静止した状態で、迅速に配置させることができる。
さらに詳細に説明すれば、エアバッグ45のバッグ本体46は、膨張初期に、ケース80から後方に押し出されるようにして、展開することとなり、各縦膨張部56L,56Rは、先端56bを左右の外方に向けるように大きく突出し、このとき、横膨張部48も、後方へ大きく突出することとなる。その後、反動で、縦膨張部56L,56Rは、先端56bを左右の内方に向けるように揺動し、次いで、再度、先端56bを左右の外方に向けるように移動しようとするが、実施形態では、つまみ部56を設けることにより外縁56a側に発生する張力Fによって、縦膨張部56L,56Rは、先端56bを左右の外方に向けるような移動を、規制されることとなる。また、このとき、横膨張部48は、前縁側を、流入口部51を介して、インフレーター35に連結されており、後方への移動を、規制されることから、この横膨張部48の挙動と相まって、縦膨張部56L,56Rの外方への揺動を、迅速に規制することができる。また、このつまみ部65は、車体側壁部47aと歩行者側壁部47bとの外周縁相互を結合させて構成されるバッグ本体46における外周縁部61を構成している前縁側部64の端縁64aを縮めるように、構成されていることから、換言すれば、縦膨張部56L,56Rの左右方向側への揺動方向と略同一平面上に配置されることとなり、つまみ部65によって生じる張力Fを、ダイレクトに、縦膨張部56L,56Rの揺動を規制するように、作用させることができる。
そして、実施形態のエアバッグ装置では、このつまみ部65は、単に、バッグ本体46の一部である外周縁部61の前縁側部64を、端縁64aの左右方向の周長を縮めるようにして、形成されることから、製造が容易であり、また、従来の歩行者用エアバッグ装置のごとく、規制手段としてのストラップの先端をケース側に取り付けるための取付部材が不要となって、規制手段をケース側に取り付ける取付作業も不要となる。そのため、従来の歩行者用エアバッグ装置と比較して、部品点数を低減させることができ、組付工数も低減させることができて、製造コストを低減させることができる。また、つまみ部65は、単にバッグ本体46の一部をつまむようにして、形成されることから、エアバッグ45の折り畳み時に嵩張らず、収納部位内にコンパクトに収納させることができる。
したがって、実施形態のエアバッグ装置Mでは、簡便な構成として、バッグ本体46の展開膨張時の挙動を的確に規制することができる。
なお、実施形態のエアバッグ装置Mでは、エアバッグ45は、横膨張部48における左右の中央側となる中央側部位49から延びる取付ベルト67(67L,67R),68を、別途配設させている構成とされているが、実施形態のエアバッグ装置Mでは、これらの取付ベルト67(67L,67R),68は、エアバッグ45とインフレーター35とをケース80に取り付ける取付ブラケット115を利用して、エアバッグ45及びインフレーター35とともに、ケース80に取り付けられる構成であることから、別途取付部材を必要とせず、製造工数の増大や部品点数の増大も招かない。
なお、実施形態では、つまみ部65は、前縁側部64を折り重ねて、縫合部位66を設けるように、縫合糸Tを用いて縫着(結合)させて構成されているが、図28に示すように、周長結合部としてのつまみ部165を、前縁側部64Aを端縁64aからV字形状に切り欠き、この切欠部166(スリット)の縁部166a,166b相互を、重ねて(端縁64aと縁部166a,166bとの各交点OP1,OP2を、離隔距離を無くすように相互に重ねて)、縁部166a,166bに沿って縫合部位167を形成するように、縫合糸Tを用いて縫着(結合)させることにより、形成してもよい。このような縫合部位は、図28に示すごとく、切欠部166の縁部166a,166bに沿って形成しなくともよく、詳細な図示は省略するが、突き合わせた縁部相互をまたぐように、ジグザグ状に形成してもよい。また、周長結合部としてのつまみ部167は、図29に示すように、前縁側部64Bに、端縁64aから切れ目を入れるような直線状のスリット178を形成し、縁部64aとスリット178との近接している交点OP1,OP2市王語を相対的に離隔させるようにして、このスリット168の周縁を構成する縁部168a,168b相互を重ねて、スリット168と交差する縫合部位169を形成するように、縫合糸Tを用いて縫着(結合)させることにより、形成してもよい。さらに、実施形態のように、つまみ部を、前縁側部を折り重ねて結合させる構成とする場合、縫合部位の形状も、実施形態のごとく端縁と略直交させる形状に限られるものではなく、例えば、前縁側部の端縁に略沿うようにして、縫合部位(結合部位)を形成し、前縁側部の折り重ねられた領域を結合させる構成としてもよい。勿論、つまみ部を結合させる結合手段は、縫合糸に限られるものではなく、接着剤等も使用可能である。さらに、実施形態では、エアバッグのバッグ本体として、車体側壁部と歩行者側壁部との外周縁相互を、縫合糸を用いて縫着させることにより袋状としたものを使用しているが、エアバッグとしては、実施形態に限られるものではなく、バッグ本体を、袋織りにより製造してもよい。
なお、実施形態では、エアバッグ45として、流入口部51(51L,51R)が左右方向で離れた2箇所に配設される構成のものを、使用しているが、本発明は、実施形態のエアバッグに限られるものではなく、流入口部を1箇所のみに配設させる構成のエアバッグにも、本発明は適用可能である。しかしながら、流入口部を左右方向で離れた2箇所に配設させる構成とすれば、インフレーターも、流入口部に対応して、左右方向側で離れた2箇所に、配設されることとなり、膨張完了時に左右方向側で広く展開するように膨張するエアバッグを、左右でバランスよく、迅速に膨張させることができて、好ましい。
さらに、実施形態では、フードパネルの後端側下方におけるカウルの部位に搭載される歩行者用エアバッグ装置を例に採り説明しているが、搭載位置は実施形態に限られるものではなく、フードパネルの後端付近における裏面側に直接取り付けられるタイプのものや、フードパネルの後端近傍の領域を凹ませた領域に搭載させるタイプのものに、本発明を適用してもよい。