以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。実施形態の歩行者用エアバッグ装置(以下「エアバッグ装置」と省略する)Mは、図1,3〜5に示すように、車両Vのフードパネル15の後端15c近傍となる位置に、配置されている。詳細には、エアバッグ装置Mは、フードパネル15の後端15cの略直下となる位置であって、左右のフロントピラー5L,5Rの間となる車両Vの左右方向(車幅方向)の中央側となる位置に、配置されている。実施形態の場合、エアバッグ装置Mは、フードパネル15の後端15cを上昇させるフード跳ね上げ装置25とともに作動される。なお、本明細書では、特に断らない限り、前後、上下、及び、左右の方向は、それぞれ、車両Vの前後、上下、及び、左右の方向と一致させて、説明する。
実施形態の場合、車両Vのフロントバンパ6(図1参照)には、歩行者との衝突を検知可能な図示しないセンサが、配設されており、センサからの信号を入力させている図示しない作動回路が、センサからの信号に基づいて車両Vと歩行者との衝突を検知した際に、エアバッグ装置Mのインフレーター35を作動させるように、構成されている。また、フード跳ね上げ装置25の後述するアクチュエータ28も、作動回路による車両Vの歩行者との衝突検知時に作動されて、フードパネル15の後端15cを押し上げ(図31,32参照)、フードパネル15の後端15cとカウル7との間にエアバッグ突出用の隙間を形成することとなる。
フードパネル15は、図1に示すように、車両Vにおけるエンジンルームの上方を覆うように配設されるもので、左縁15d側と右縁15e側とにおける後端15c近傍に配置されるヒンジ部18により、車両Vのボディ1側に対して、前開きで開閉可能に連結されている。フードパネル15は、実施形態の場合、鋼板や、アルミニウム(アルミニウム合金)等の板材等からなり、図2〜5に示すように、上面側のアウタパネル15aと、下面側に位置してアウタパネル15aより強度を向上させたインナパネル15bと、を備えている。フードパネル15は、後述するフロントウィンドシールド4に合わせて、図1に示すように、後端15cを、左右方向の中央を前方に位置させ、左右両端側を後方に位置させるように、左右方向に対して湾曲させて構成されている。
フードパネル15の後縁下方(後方)には、図4,5に示すように、ボディ1側の剛性の高いカウルパネル7aと、カウルパネル7aの上方の合成樹脂製のカウルルーバ7bと、からなるカウル7が、配設されている。カウルルーバ7bは、後端側をフロントウィンドシールド4の下部4a側に連ならせるように、配設されている。このカウル7も、フードパネル15の後端15cの湾曲形状に合わせて、左右の中央を前方に位置させ、左右両端側を後方に位置させるように、左右方向に対して湾曲して、構成されている(図1参照)。また、カウル7の部位には、図1,2に示すように、ワイパ8が、配設されている。フロントウィンドシールド4の左右の外方には、図1に示すように、フロントピラー5L,5Rが、配設されている。フードパネル15は、フード跳ね上げ装置25の作動時に、後端15cを押し上げられることとなるが(図31,32参照)、この後端15cの上昇移動時には、フードパネル15の前端15f側は、前端15f側に配置されている通常閉塞用の図示しないフードロックストライカを係止するラッチ機構により、ボディ1側から外れることはない。
ワイパ8は、エアバッグ装置M(ケース80)の後側に近接して配置されるもので、回動軸10aをカウルルーバ7bから上方に突出させるようにしてカウルルーバ7bの上面において左右方向に沿った2箇所に配置されるワイパ本体10(10L,10R)と、カウルルーバ7bの下部側に配設されてワイパ本体10を駆動させる図示しない駆動モータを有した駆動機構9と、を備える構成とされている(図1,2,4,5参照)。駆動機構9は、実施形態の場合、図2,5の二点鎖線に示すように、ケース80において左側に配置される一般部89Lの後側に、近接して配設されている。各ワイパ本体10(10L,10R)は、駆動機構9に連結される回動軸10aと、回動軸10aから右方に向かって延びる長尺状のアーム部10bと、を備える構成とされている。詳細には、左側のワイパ本体10Lの回動軸10aは、ケース80の左端よりも左方となるカウル7の左端近傍となる位置に、配置され、右側のワイパ本体10Rの回動軸10aは、ケース80における後述する変形可能部88と左側の一般部89Lとの境界付近の後側に、近接して、配置されている(図2の二点鎖線参照)。
ヒンジ部18は、フードパネル15の後端15c側における左縁15dと右縁15eとに配設され(図1,2参照)、それぞれ、ボディ1側の部材であるフードリッジリインホース2に連結された取付フランジ3に固定されるヒンジベース19と、フードパネル15側に固定されるヒンジアーム21と、を備えて構成されている(図1〜3参照)。各ヒンジアーム21は、図3に示すように、板金製のアングル材を下向きに突出させるように略半円弧状に湾曲させた形状として構成され、ヒンジベース19側の元部端21aが、支持軸20を利用してヒンジベース19に対して回動可能に連結されている。また、各ヒンジアーム21は、図3に示すように、元部端21aから離れる先端21b側に、先端21bからフードパネル15の下面に略沿うように延びる連結板部22を、備える構成とされ、この連結板部22が、フードパネル15の後端15cにおける下面側に、溶接等を利用して結合されている。また、ヒンジアーム21の先端21b付近には、図3に示すように、下縁を略円形状に切り欠くように構成される切欠凹部21cが、形成されており、この切欠凹部21cの周囲の部位が、詳細な図示を省略するが、フード跳ね上げ装置25におけるアクチュエータ28の作動時においてピストンロッド30がフードパネル15の後端15cを押し上げた際に、塑性変形する塑性変形部21dとされて、図31,32に示すように、フードパネル15の後端15cの上昇を許容することとなる。各支持軸20は、図2,3に示すように、それらの軸方向を、車両Vの左右方向に沿わせるように配置されている。そして、フードパネル15を開く際には、フードパネル15の前端15f側(図1参照)を前開きで上昇させれば、各支持軸20を回転中心として、フードパネル15を前開きで開くことができる(図3の二点鎖線参照)。
フード跳ね上げ装置25は、図1〜3に示すように、エアバッグ装置Mの左右両側であって、フードパネル15の後端15c側における左縁15d,右縁15eの下方となるヒンジ部18の下方に配設されている。各フード跳ね上げ装置25は、図3に示すように、アクチュエータ28と、アクチュエータ28をボディ1側のフードリッジリインホース2に取り付ける取付ブラケット26と、を備えている。取付ブラケット26は、アクチュエータ28を保持可能な断面略U字形状として、フードリッジリインホース2に連結される取付フランジ2aに対してボルト27止めされている。アクチュエータ28は、駆動源として、図示しないガス発生器を使用しており、取付ブラケット26に保持されるシリンダ29と、シリンダ29から上方へ突出するように配設されるピストンロッド30と、を備えている。このアクチュエータ28では、シリンダ29の下端側に内蔵される図示しないガス発生器を作動させて発生する作動ガスにより、シリンダ29内に収納されるピストンロッド30の図示しないピストンを押し上げて、ピストンロッド30を上昇移動させる構成である。そして、アクチュエータ28の作動時に、上昇移動するピストンロッド30の上端30aが、フードパネル15の後端15cの下面に当接することとなり、この上昇移動するピストンロッド30の上端30aによって、図31,32に示すように、フードパネル15の後端15cが上方に押し上げられて、カウル7とフードパネル15の後端15cとの間に、膨張するエアバッグ45を突出させるための隙間が形成されることとなる。
エアバッグ装置Mは、図2,4,5に示すように、エアバッグ45と、エアバッグ45に膨張用ガスを供給するインフレーター35と、エアバッグ45とインフレーター35とを収納するケース80と、折り畳まれたエアバッグ45を覆うエアバッグカバー110と、インフレーター35とエアバッグ45とをケース80側に取り付ける取付ブラケット115と、を備えている。
インフレーター35(35L,35R)は、図2,6に示すように、車幅方向側(左右方向側)で2箇所に、配設されるもので、それぞれ、軸方向を左右方向(車幅方向)に略沿って配置されて、外形形状を略円柱状としたシリンダタイプとされている。各インフレーター35は、軸方向の一端側(先端35a側)に、膨張用ガスを吐出可能なガス吐出口部36を配設させて構成されるもので、軸方向の他端側(元部35b側)から延びる図示しないリード線を介して、作動回路と電気的に接続されている。インフレーター35L,35Rは、ガス吐出口部36を備える先端35a側を相互に離隔させ、元部35b側を相互に近接させつつ、元部35b,35b間に隙間を設けるようにして、車両Vに搭載されている(図2参照)。また、各インフレーター35(35L,35R)は、先端35a側を、エアバッグ45の後述する流入口部51(51L,51R)に挿入させ、流入口部51の外周側に配置される2つのクランプ39,130を利用して、エアバッグ45に対して連結される構成である(図21〜23参照)。また、実施形態の場合、各インフレーター35(35L,35R)は、図20の二点鎖線に示すように、ケース80における後述する一般部89(89L,89R)の領域内に、先端35a(ガス吐出口部36)を挿入させるようにして、後述する変形可能部88と一般部89(89L,89R)とにまたがるようにして、ケース80内に収納されている。
エアバッグ45は、図7〜10に示すように、内部に膨張用ガスを流入させて膨張する袋状のバッグ本体46と、バッグ本体46をケース80に取り付ける取付ベルト62,63,64,65と、を備える構成とされている。
バッグ本体46は、膨張完了時の形状を、正面側から見て、左右に幅広の略U字形状とされるもので、左右に延びてカウル7(カウルルーバ7b)の上面側を覆う横膨張部48と、横膨張部48の左右の端部付近からそれぞれ後方へ延びて左右のフロントピラー5L,5Rの前面の下部5a側を覆う縦膨張部56L,56Rと、を備えて構成されている。バッグ本体46は、実施形態の場合、膨張完了時に上面側に位置する歩行者側壁部46bと、歩行者側壁部46bと対向するように下面側に位置する車体側壁部46aと、を有し、歩行者側壁部46bと車体側壁部46aとの外周縁相互を、流入口部51(51L,51R)の先端側を除いて結合(縫着)させることにより、袋状とされている。
横膨張部48は、膨張完了時に、カウル7の上方を、車幅方向(左右方向)の略全域にわたって覆い可能に構成されるもので、具体的には、膨張完了時に、図30,31に示すように、前縁48aをフードパネル15の後端15cに近接させつつ、カウル7からフロントウィンドシールド4の下部4a側にかけての領域の上面側を覆うように、構成されている。そして、横膨張部48における前縁48a側には、左右のインフレーター35L,35Rを挿入させて、膨張用ガスを流入させる流入口部51L,51R(51)が、左右方向側で対向して配設されている。各流入口部51L,51Rは、詳細には、横膨張部48において、縦膨張部56L,56Rよりも左右方向側の内側となる位置に、形成されるもので、横膨張部48から前方に突出しつつ、インフレーター35を挿入させる先端側の開口51aを左右の内方に向けるように、屈曲して形成されている。
具体的には、流入口部51は、元部側の左右方向側の幅寸法を、横膨張部48における縦膨張部56L,56R間の領域の左右方向側の長さ寸法の1/3程度として、それぞれ、横膨張部48における縦膨張部56L,56Rの左右方向の内側において縦膨張部56L,56Rに隣接した領域の前縁48aから前方に突出するように形成されており(図7,8参照)、各インフレーター35に対応して、略左右対称形とされている。この流入口部51L,51Rは、エアバッグ45の膨張完了時に、横膨張部48側となる元部側部位52(52L,52R)を、ケース80の突出用開口80aから突出させて、ケース80と、フードパネル15の後端15cとの間に介在させるように、配置される構成である(図32参照)。そして、横膨張部48の左右の中央側において、前側に流入口部51L,51Rを配設させていない中央側部位49は、図31に示すように、エアバッグ45の膨張完了時に、フードパネル15の下方に配置されず、フードパネル15の後方に配置されることとなる。また、実施形態の場合、流入口部51L,51Rの内部には、図7,10に示すように、耐熱性を高めるとともに、内部に流入する膨張ガスを左右に分岐させるためのインナチューブ54(54L,54R)が、配設されている。各インナチューブ54は、図7,11に示すように、三叉状として、流入口部51の開口51a側に形成される開口54aと、横膨張部48内に配置される領域において左右両端側に形成される開口54b,54cと、を備える構成とされている。
また、バッグ本体46内には、膨張完了時における歩行者側壁部46bと車体側壁部46aとの離隔距離を規制可能に、歩行者側壁部46bと車体側壁部46aとを連結する中央側テザー58と端側テザー59(59L,59R)とが、配設されている(図7〜10参照)。中央側テザー58は、横膨張部48から左右の縦膨張部56L,56Rの領域内にかけて配置されるもので、横膨張部48の前後の略中央となる位置において、平らに展開した状態のバッグ本体46の後縁に略沿うように、全長にわたって緩やかな曲線状として、配設されている。この中央側テザー58は、図9〜11に示すように、車体側壁部46a側に配置される車体側部位73aと、歩行者側壁部46b側に配置される歩行者側部位73bと、の2枚のテザー用基布73から、形成されている。端側テザー59(59L,59R)は、横膨張部48の前縁48a近傍であって、各流入口部51L,51Rの後方となる位置に、それぞれ、配置されている。各端側テザー59(59L,59R)は、中央側テザー58に略沿って、左右方向の内側を前側に位置させ、左右方向の外側を後側に位置させるように、左右方向に対して傾斜して形成されるもので、略左右対称形とされている。この端側テザー59も、図10,11に示すように、車体側壁部46a側に配置される車体側部位74aと、歩行者側壁部46b側に配置される歩行者側部位74bと、の2枚のテザー用基布74から、形成されている。
取付ベルト62(62L,62R),63(63L,63R),64(64L,64R),65は、それぞれ、略左右対称となる位置に配置されるもので、横膨張部48の前縁48a側と後縁48b側とからそれぞれ延びるように、形成されている。各取付ベルト62(62L,62R),63(63L,63R),64(64L,64R),65は、先端62a,63a,64a,65a側を、折り畳まれたエアバッグ45(折り完了体145)とインフレーター35とをケース80に取り付けるための取付ブラケット115(115L,115R)を使用して、ケース80側に取り付けられる構成である(図23,25,26参照)。具体的には、取付ベルト62(62L,62R)は、図7,8に示すように、横膨張部48の前縁48aにおける左右方向の端部側(縦膨張部56L,56Rの前方となる領域)から、先端62aを左右方向の中央側に向けるように配設されるもので、先端62a側に、各取付ブラケット115から突出している取付ボルト125Eを挿通可能な取付孔62bを、有している(図26参照)。取付ベルト63(63L,63R)は、図7,8に示すように、横膨張部48の後縁48bにおける縦膨張部56L,56Rとの境界部位付近から前方に延びるように配設されるもので、先端63a側に、各取付ブラケット115から突出している取付ボルト125Eを挿通可能な取付孔63bを、有している(図26参照)。これらの取付ベルト62,63は、取付孔62b,63bに、取付ブラケット115の同じ取付ボルト125Eを挿通させる構成とされるもので、ケース80への取付位置を一致されている。取付ベルト64(64L,64R)は、図7,8に示すように、横膨張部48の前縁48aにおける流入口部51(51L,51R)の左右方向の内側近傍から前方に延びるように配設されるもので、先端64a側に、各取付ブラケット115から突出している取付ボルト125Cを挿通可能な取付孔64bを、有している(図23参照)。取付ベルト65は、図7,8に示すように、横膨張部48の前縁48aにおける左右の略中央から前方に延びるように配設されるもので、先端65a側に、取付ブラケット115Lから突出している取付ボルト125Aを挿通可能な取付孔65bを、有している(図25参照)。
エアバッグ45は、図11に示すように、バッグ本体46において車体側壁部46aを構成する車体側基布70及び歩行者側壁部46bを構成する歩行者側基布71と、インナチューブ54を構成するインナチューブ用基布72と、中央側テザー58を構成するテザー用基布73と、端側テザー59を構成するテザー用基布74と、取付ベルト62,63,64,65を構成するベルト用基布75,76,77,78と、から、構成されている。なお、これらの基布(素材)は、ポリアミド糸やポリエステル糸等を織成して形成される織布の表面に、ガス漏れ防止用のコーティング剤を塗布させたコート布を所定形状に裁断して、形成されている。
ケース80は、フードパネル15の後端15cの略直下となる位置に配置されるもので、車両Vの車幅方向(左右方向)に略沿って配置される長尺状として構成されている。ケース80は、実施形態の場合、図12〜17に示すように、底壁部81と、底壁部81の周縁から立ち上がるように構成されて上端側を開口させて構成される周壁部82と、を、備えた略箱形状として、上端側を開口させて構成されている。底壁部81は、インフレーター35を取り付けてインフレーター35の下面側を支持する構成とされるもので、実施形態の場合、取付ブラケット115の取付ボルト125を挿通させて取付可能な多数の取付孔81aを備えている。取付孔81aは、図20に示すように、取付ボルト125を挿通させる部位以外にも、形成されているが、取付ボルト125挿通用ではないものは、内部に雨水等が進入した際に水分を排出させるために、形成されている。周壁部82において、底壁部81の前縁側から立ち上がるように形成される前壁部83は図12,14〜16、及び、図17の二点鎖線に示すように、左右両端側の領域を除いて、前壁部83と前後方向側で対向して配置される後壁部84よりも、上下方向側の幅寸法を大きく設定されて、上端83aを、後壁部84の上端84aよりも上側に位置させるように、構成されている。換言すれば、後壁部84は、前壁部83よりも、上端84aを下側に位置させる構成とされており、これは、エアバッグ45の後上方側への突出を容易とするためである。具体的には、前壁部83は、上下方向側の幅寸法を、後壁部84の2倍程度に設定されている。この前壁部83は、後述する一般部89(89L,89R)の領域となる左右両端側の部位において、左右両端側にかけて漸減させるように、上縁を傾斜させる構成とされており、周壁部82における左右方向側で対向するように配置される左壁部85,右壁部86に連なる端側部位83b,83cにおいては、上下方向側の幅寸法を、後壁部84,左壁部85,右壁部86と略一致させるように、構成されている。
実施形態の場合、ケース80は、板金製とされている。また、ケース80は、車幅方向に沿う領域として、一般部89(89L,89R)と、一般部89より剛性を低く設定される変形可能部88と、を備える。変形可能部88は、一般部89より上下方向の曲げ剛性を低くして、前壁部83Cを変形可能とされる部位である。詳細には、実施形態のケース80は、一般部89(89L,89R)を車幅方向の両端側(左右両端側)に配設させ、一般部89(89L,89R)間となる車幅方向(左右方向)の中間部位を、変形可能部88としている。すなわち、変形可能部88は、ケース80における車幅方向(左右方向)の中央側の1箇所に、車幅方向(左右方向)に沿って連続的に形成されている。実施形態では、変形可能部88は、一般部89を構成する板金素材と組成を異ならせて、剛性が低く、かつ、板厚を小さく設定される板金素材から構成することにより、一般部89よりも、上下方向の曲げ剛性を低く設定されている。実施形態では、変形可能部88は、後壁部84C及び底壁部81Cも、前壁部83Cとともに、一般部89と異なる板金素材から一体的に、構成されている。すなわち、実施形態の変形可能部88は、前後の全域にわたって剛性を低くして構成されている。
また、実施形態のケース80では、変形可能部88は、前後方向側の幅寸法を、一般部89より小さく設定されており、具体的には、前後方向側の幅寸法D1を、一般部89の前後方向側の幅寸法D2の1/2程度に設定されている(図13参照)。変形可能部88は、図13に示すように、後壁部84Cの前後方向側の位置を異ならせることにより(一般部89L,89Rにおける後壁部84L,84Rよりも前側に配置させることにより)、一般部89よりも狭幅に構成されている。すなわち、実施形態のケース80では、前壁部83(83L,83C,83R)は、一般部89から変形可能部88にかけて、左右方向に沿って連なるように、形成されている。具体的には、前壁部83(83L,83C,83R)は、左右の全域にわたって、車両搭載時に、左右方向の中央を前側に位置させるように左右方向に対して湾曲させて構成されるフードパネル15の後端15cよりも前側となる位置に、配置されている。変形可能部88を構成している中央側の後壁部84Cは、フードパネル15に対して、全域にわたって、後端15cより後側に配置され、一般部89を構成している後壁部84L,84Rは、左右方向の端縁側の領域のみを、フードパネル15の後端15cより前側に位置させるように、大部分を、後端15cより後側に配置されている(図13参照)。換言すれば、フードパネル15の後端15cにおける中央側部位15caは、変形可能部88を構成している前壁部83Cより後側であって、後壁部84Cよりも前側に配置される構成である(図4参照)。
また、変形可能部88は、左右方向側の長さ寸法を、ケース80全体の左右方向側の長さ寸法の1/2程度に設定されている。一般部89(89L,89R)は、それぞれ、変形可能部88側となる左右方向の中央側を、変形可能部88にかけて前後方向側の幅寸法を漸減させて、変形可能部88に連ならせる連結部90(90L,90R)として構成されている。また、各一般部89には、強度補強用に、補強板部92と補強リブ93F,93Bと、が、形成されている。
補強板部92は、各一般部89(89L,89R)において、それぞれ、左右方向の略中央となる位置に(図13参照)、前壁部83L,83Rから底壁部81L,81Rを経て後壁部84L,84Rにかけて連続的に配置されるもので、略U字形状の別体の板材から構成されている。すなわち、補強部としての補強板部92は、各一般部89(89L,89R)において、ブラケット部102Fよりも左右の外方となる位置に形成されるとともに、前壁部83L,83Rの上下の略全域にわたって、形成されている。実施形態の場合、補強板部92は、一般部89をそれぞれ構成している後述する内側部位98,外側部位99の結合部位となる位置に、配設されている(図15参照)。
補強リブ93F,93Bは、図13に示すように、各一般部(89L,89R)の前壁部83と後壁部84とにおいて、それぞれ、前後方向の外方に向かって部分的に突出するように、形成されている。具体的には、補強リブ93F,93Rは、補強板部92よりも左右の外方となる位置に形成されるもので、左右方向側から見た外形形状を、下方に向かって幅広とされる略三角板状とされている(図12,16参照)。この補強部としての補強リブ93F,93Bは、前壁部83と後壁部84との上下の略全域にわたって、形成されている。この補強リブ93F,93Bは、別体の板材を溶接等によって固着させたり、あるいは、周囲の部材を曲げ加工することにより、適宜形成されている。実施形態では、図16に示すように、補強リブ93F,93Bは、別体の板材を溶接されている。
実施形態のケース80は、それぞれ、板金素材から構成されて、一般部89(89L,89R)を構成する一般部用素材97(97L,97R)と、変形可能部88を構成する変形部用素材96と、を、所定箇所で溶接させることにより、箱形状とされている。変形部用素材96は、変形可能部88における前壁部83C,後壁部84C,底壁部81Cを構成するように、断面略U字形状とされている(図14参照)。一般部用素材97(97L,97R)は、それぞれ、断面略U字形状とされて連結部90から左右方向の中央側(内側)にかけての領域における前壁部83L,83R,後壁部84L,84R,底壁部81L,81Rを構成する内側部位98(98L,98R)と、断面略U字形状とされて左右方向の外側の領域における前壁部83L,83R,後壁部84L,84R,底壁部81L,81Rを構成する外側部位99(99L,99R)と、略平板状として左壁部85若しくは右壁部86を構成する側壁側部位100(100L,100R)と、を備えている(図12,15,16参照)。変形部用素材96は、上述した如く、一般部用素材97(97L,97R)を構成する板金素材よりも、剛性が低い素材から形成されて、かつ、板厚を小さく設定される板金素材から構成されている。また、ケース80には、ケース80をボディ1側のカウルパネル7aに取り付けるためのブラケット部102が、下端付近から外方に延びるように、複数個形成されている(図12,13参照)。詳細に説明すれば、ブラケット部102において、ケース80の前側(前壁部83側)に配置されるブラケット部102Fは、変形可能部88から左右方向側で離隔して、一般部89L,89Rの領域において、略左右対称となる位置に配置され、ケース80の後側(後壁部84側)に配置されるブラケット部102Rは、変形可能部88の領域において、略左右対称となる位置に配置されている。
実施形態では、ケース80(エアバッグ装置M)は、図4,5に示すように、周壁部82における後側に配置される後壁部84を、フードパネル15の後端15cより僅かに後側に位置させるようにして、フードパネル15とカウル7(カウルルーバ7b)との間に、配設される。また、実施形態のエアバッグ装置Mでは、ケース80は、車両搭載時に、図1,2に示すように、左右方向側の長さ寸法を、フードパネル15の左右方向側の幅寸法より小さくして、中心を、フードパネル15の左右の中心と略一致させつつ、左右のヒンジ部18との間に隙間を設けるようにして、車両Vに搭載される。詳細には、ケース80は、上述したごとく、ワイパ8の駆動機構9の前側近傍に、左側の一般部89Lを位置させつつ、右側のワイパ本体10Rの回動軸10aの前側に近傍に、左側の一般部89Lと変形可能部88との境界部位付近を位置させるようにして、車両Vに搭載される。すなわち、ケース80は、左側の一般部89Lを、ワイパ本体10L,10Rの回動軸10a,10a間の領域に配置させるようにして、車両Vに搭載される。また、ケース80における一般部89L,89Rは、変形可能部88よりも前後に幅広とされており、車両搭載状態において、折り完了体145における蛇腹折り部位146L,146R(図6及び図29のC参照)を収納させる部位である。さらに、車両搭載状態におけるエアバッグ45の膨張完了時には、車両Vを上方から見た状態において、各流入口部51L,51Rにおける元部側部位52L,52Rが、一般部89L,89Rの後上側に配置されることとなる(図32参照)。
エアバッグカバー110は、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)等の軟質合成樹脂製とされるもので、ケース80の上端側の突出用開口80aを覆うように配置されて、エアバッグ45の展開膨張時に、エアバッグ45に押されて開き可能な扉部111を、有する構成とされている(図4,5,31,32参照)。このエアバッグカバー110は、所定箇所を、図示しない取付手段を用いて、ケース80に取り付けられている。
インフレーター35(35L,35R)とエアバッグ45とをケース80側に取り付ける取付ブラケット115(115L,115R)は、図6,18に示すように、略左右対称形として、2個配置されている。各取付ブラケット115L,115Rは、それぞれ、図18,19に示すように、インフレーター35L,35Rと折り畳まれたエアバッグ45との下面側を支持するように左右方向に略沿って延びる帯状の板金製の支持部117(117L,117R)と、支持部117から下方に突出する複数の取付ボルト125(125A,125B,125C,125D,125E)と、を備える構成とされている。各支持部117は、左右方向に略沿って延びるとともに、左右方向の外方側となる外側端部119(119L,119R)を後側に位置させるように、外側端部119側を傾斜させている。また、各支持部117において、エアバッグ45の流入口部51内に挿入された状態のインフレーター35を支持する領域には、図24に示すように、前後の縁部から先端を前後方向の外方に向けつつ上側に向かって延びるように傾斜して形成されてインフレーター35を保持する保持片部120(120A,120B,120C)が、形成されている。保持片部120(120A,120B,120C)は、支持部117における左右方向の内側の領域において、左右方向側で断続的に3箇所に、形成されている。右側の取付ブラケット115Rと左側の取付ブラケット115Lとは、図6,18に示すように、車両搭載時に左右の中央側に位置する内側端部118L,118R以外は、同一の構成とされている。左側の取付ブラケット115Lは、5本の取付ボルト125A,125B,125C,125D,125Eを備える構成とされており、詳細には、取付ボルト125A,125B,125C,125D,125Eは、外側端部119L付近と、内側端部118L付近と、左右方向の内側に配置される保持片部120Aの内側と、左右方向の外側に配置される保持片部120Cの外側と、中間に配置される保持片部120Bと保持片部120Cとの間と、において、それぞれ、下方に突出するように形成されている。右側の取付ブラケット115Rは、内側端部118R付近を除いて、左側の取付ブラケット115Lと同様の位置に、取付ボルト125B,125C,125D,125Eを配設させる構成とされ、内側端部118Rには、左側の取付ブラケット115Lの内側端部118Lに形成される取付ボルト125Aを挿通可能な取付孔118aを、備えている。また、右側の取付ブラケット115Rにおける内側端部118Rには、取付孔118aに取付ボルト125Aを挿通させた際に、左側の取付ブラケット115Lの内側端部118Lの前後移動を規制するストッパ片118b,118bが、前後の縁から上方に突出するように、形成されている(図6,21,25参照)。
各取付ブラケット115は、後述する折り完了体145(エアバッグ45の流入口部51)にインフレーター35を組み付けた状態で、折り完了体145の下面側に配設させ、保持片部120A,120B間の領域において、流入口部51の外周側から、クランプ130を巻き付けることにより、このクランプ130を利用して、エアバッグ45の流入口部51及びインフレーター35と支持部117とを連結させ、エアバッグ45及びインフレーター35を取り付ける構成である(図21,22参照)。実施形態の場合、他の部位には、折り完了体145の所定箇所の外周側から支持部117にかけて、補助的に、図示しない破断可能なテープ材を巻き付けている。また、各取付ブラケット115において、外側端部119側に配設される取付ボルト125Eは、図26に示すように、エアバッグ45における取付ベルト62,63の先端62a,63a側に形成される取付孔62b,63bに挿通され、保持片部120B,120C間に配設される取付ボルト125Cは、図23に示すように、取付ベルト64の先端64a側に形成される取付孔64bに挿通される構成である。さらに、取付ブラケット115Lにおいて、内側端部118L側に配置される取付ボルト125Aは、図25に示すように、取付ベルト65の先端65a側に形成される取付孔65bに挿通される構成である。また、各取付ブラケット115は、エアバッグ45とインフレーター35を取り付けた状態で、各取付ボルト125をケース80の底壁部81から突出させ、底壁部81から突出している取付ボルト125にナット126を締結させることにより、エアバッグ45とインフレーター35とをケース80に取り付けることとなる。このとき、エアバッグ45の取付ベルト62,63,64,65も、それぞれ、先端62a,63a,64a,65a側を、ケース80側に連結されることとなる。
次に、実施形態のエアバッグ装置Mの車両Vへの搭載について説明をする。まず、エアバッグ45を、ケース80内に収納可能に折り畳む。エアバッグ45は、車体側壁部46aと歩行者側壁部46bとを重ねるように平らに展開した状態から、前後方向側の幅寸法を縮める前後縮小折りと、左右方向側の幅寸法を縮める左右縮小折りと、を経て折り畳まれることとなる。具体的には、まず、図27及び図28のAに示すように、車体側壁部46aと歩行者側壁部46bとを重ねるように平らに展開した状態のエアバッグ45において、縦膨張部56L,56Rの領域を、横膨張部48の後縁48b近傍にかけて、取付ベルト63もともに、先端(後縁)側から、車体側壁部46a側に向かって巻くようにロール折りして、ロール折り部位141を形成する。次いで、図28のB,29のAに示すように、横膨張部48を、流入口部51の元部側部位52にかけて、左右方向に沿った折目を付けて蛇腹折りして、蛇腹折り部位142を形成する。このとき、実施形態では、流入口部51の元部側部位52を、横膨張部48の領域よりも折幅を大きくして折り畳み、この流入口部51の元部側部位52を折り畳んで形成される広幅折畳部143を、折り返して、車両搭載時に蛇腹折り部位142の下面側を覆うように、配置させて、前後縮小折りを完了する(図29のA,B参照)。次いで、この前後縮小折りバッグ140を、図29のB,Cに示すように、左端140a側と右端140b側とを、それぞれ、左右の中央側に接近させるように、前後方向に沿った折目を付けて蛇腹折りして、蛇腹折り部位146L,146Rを形成し、左右縮小折りを完了して、ケース80内に収納可能な折り完了体145を形成する。実施形態では、上述したごとく、蛇腹折り部位146L,146Rは、図5に示すように、折りを前後方向側で重ねられるように横倒しされた状態で、ケース80の一般部89L,89R内に収納されることとなる。
エアバッグ45の折り畳み完了後には、折り完了体145の周囲に、折り崩れ防止用の破断可能なテープ材160(ラッピング材)を巻き付けておく(図6参照)。このとき、流入口部51の先端側の開口51aと、各取付ベルト62,63,64,65の先端62a,63a,64a,65a側と、は、折り完了体145から突出させておく。そして、各インフレーター35を、それぞれ、ガス吐出口部36側を開口51aから流入口部51内に挿入させ、クランプ39を用いて、流入口部51と接続させる。その後、折り完了体145の下面側に、各取付ブラケット115を配置させ、クランプ130を利用して、各インフレーター35及び折り完了体145(エアバッグ45)を各取付ブラケット115と連結させる。また、折り完了体145の所定箇所と取付ブラケット115の支持部117とに、図示しない破断可能なテープ材を補助的に巻き付ける。このとき、左右の取付ブラケット115L,115Rは、左側の取付ブラケット115Lの内側端部118Lに形成される取付ボルト125Aを、右側の取付ブラケット115Rの内側端部118Rに形成される取付孔118aに挿通させることにより、連結させておく。また、各取付ベルト62,63,64,65の先端62a,63a,64a,65a側に形成される取付孔62b,63b,64b,65bに、各取付ボルト125A,125C,125Eを挿通させて、エアバッグ組付体を製造する。その後、エアバッグ組付体を、各取付ボルト125を底壁部81から突出させるようにして、ケース80内に収納させ、底壁部81から突出している各取付ボルト125に、ナット126を締結させれば、エアバッグ45とインフレーター35とを、ケース80に取り付けることができ、また、エアバッグ45の取付ベルト62,63,64,65をケース80に連結させることができる。その後、エアバッグカバー110をケース80に取り付け、ケース80から延びるブラケット部102を、カウルパネル7aに取り付け、インフレーター35を、図示しない作動回路に接続させれば、エアバッグ装置Mを車両Vに搭載することができる。
そして、実施形態のエアバッグ装置Mでは、図示しない作動回路が、フロントバンパ6に配置される図示しないセンサからの信号に基づいて、車両Vの歩行者との衝突を検知した際に、フード跳ね上げ装置25のアクチュエータ28が、ピストンロッド30によりフードパネル15の後端15cを押し上げるように作動されて、フードパネル15の後端15cとカウル7との間に、エアバッグ突出用の隙間が形成されることとなる。略同時に、インフレーター35が作動されて、内部に膨張用ガスを流入させてエアバッグ45が膨張することとなり、膨張するエアバッグ45が、エアバッグカバー110の扉部111を押し開き、扉部111を押し開いて形成されるケース80の突出用開口80aから、後上方に向かって突出しつつ展開膨張して、カウル7の上面とフロントピラー5L,5Rの前面とを覆うように、膨張を完了させることとなる(図30〜32参照)。
実施形態のエアバッグ装置Mでは、ボディ1(車体)側のカウルパネル7aに取り付けられるケース80が、一般部89L,89Rと変形可能部88と、を備える構成とされており、ケース80の前面側に配置される前壁部83において、変形可能部88を構成している前壁部83Cは、一般部89L,89Rを構成している前壁部83L,83Rよりも、上下方向の曲げ剛性を低くして変形可能に構成されている。そのため、フードパネル15の後端15c側の直下に配設される構成であっても、エアバッグ45の膨張完了後において、エアバッグ45が歩行者を受け止める際に、仮に、歩行者Pが、フードパネル15におけるこの変形可能部88近傍の領域を、後下方に向かって押圧するように干渉することとなっても、このような押圧力Fを受けて、カウルパネル7aに支持された状態のケース80において変形可能部88を構成している前壁部83Cを、上端83a側を下方に向けるように、円滑に変形させることができ(図33の二点鎖線参照)、歩行者を強く押圧することを抑制して、歩行者を的確に保護することができる。
したがって、実施形態のエアバッグ装置Mでは、エアバッグ45の膨張完了時における歩行者との接触時に、ケース80を的確に変形させることができて、歩行者保護性能を阻害しない。
また、実施形態のエアバッグ装置Mでは、一般部89L,89Rが、車幅方向(左右方向)の両端側に、配設され、変形可能部88が、左右方向の中央側に、配設される構成であることから、前壁部83における車幅方向の中央側の領域(前壁部83C)の曲げ剛性を低くすることができる。フードパネル15は、図33の二点鎖線に示すように、歩行者Pを受け止めると、下方へ移動するように変形することとなる。そして、実施形態では、変形するフードパネル15が前壁部83Cと干渉して前壁部83Cにより支持することを抑制でき、図33の二点鎖線に示すように、歩行者Pを受け止めて変形しつつ下方移動するフードパネル15を受けて、前壁部83Cを、上端83a側を下方に向けるように変形させることによって、フードパネル15と前壁部83Cとによって、円滑にエネルギーを吸収することができる。
実施形態のエアバッグ装置Mでは、この変形可能部88の領域には、エアバッグ45の膨張完了時に、横膨張部48において、前側に流入口部51L,51Rを配設させていない中央側部位49が、配置される構成である(図30,31,33参照)。この中央側部位49は、エアバッグ45の膨張完了時に、フードパネル15の後方に配置されることとなり、フードパネル15とケース80との間には、介在されない。しかしながら、実施形態のエアバッグ装置Mでは、このような領域に、変形可能部88を配設させていることから、前述したごとく、エアバッグを介在させない状態で、仮に歩行者Pが干渉することとなっても、変形可能部88(前壁部83C)を変形させることによって、歩行者を的確に保護することができる。なお、実施形態のエアバッグ装置Mでは、一般部89(89L,89R)の領域には、エアバッグ45の膨張完了時に、インフレーター35(35L,35R)と連結される流入口部51(51L,51R)の元部側部位52(52L,52R)が配設されることとなり、この元部側部位52(52L,52R)は、ケース80とフードパネル15の後端15cとの間に介在させるように、配置されることとなる(図32参照)。そのため、この一般部89L,89Rの配置領域では、図32に示すように、厚く膨張しているエアバッグ45(元部側部位52L,52Rから横膨張部48にかけての部位)によって、歩行者を的確に保護することができる。
また、実施形態のエアバッグ装置Mでは、変形可能部88と一般部89L,89Rとを、それぞれ、剛性の異なる材料から形成していることから、変形可能部88と一般部89L,89Rとを備えるケース80を、剛性の異なる材料を結合させるだけで形成でき、ケース80を容易に製造することができる。実施形態では、ケース80は、板金製として、変形可能部88を構成する変形部用素材96を、一般部89L,89Rを構成する一般部用素材97L,97Rより低剛性の材料で、かつ、板厚も小さく設定される素材から構成して、変形可能部88の前壁部83Cの曲げ剛性を低く構成されている。なお、変形可能部88と一般部89L,89Rとの剛性の差は、同一素材からなるものを、板厚のみを変更したり、同一板材を複数枚重ねることにより、設定してもよく、また、変形可能部88と一般部89L,89Rとを異なる材料(例えば、一般部89L,89Rのみを板金製とし、変形可能部88を硬質合成樹脂製)から形成することにより、設定してもよい。
実施形態のエアバッグ装置Mでは、一般部89L,89Rに、曲げ剛性を高くする補強部としての補強リブ93F,93Bと、補強板部92と、を、配設させており、一般部89L,89Rが、適度な強度を有するように、構成されている。実施形態のエアバッグ装置Mでは、各インフレーター35L,35Rは、シリンダタイプとして、膨張用ガスを吐出させるガス吐出口部36を有する先端35a側を、一般部89L,89Rの領域内に配置させるように、ケース80内に収納される構成であるが、一般部89L,89Rは、このように、補強板部92と補強リブ93F,93Bとによって強度を向上させた構成とされるとともに、実施形態の場合、変形可能部88よりも前後に幅広に形成されている。そのため、インフレーター35L,35Rの作動時に、ガス吐出口部36から膨張用ガスが吐出される際にも、ケース80が大きく変形することを抑制でき、部分的に、剛性を低く設定される変形可能部88を備える構成であっても、エアバッグ45の展開膨張時には、この変形可能部88の変形を抑制して、エアバッグ45を迅速にケース80の突出用開口80aから突出させて、膨張を完了させることができる。
なお、実施形態では、補強リブ93F,93Bは、ケース80の前壁部83と後壁部84とに形成される構成であるが、補強リブ93F,93Bは、前壁部83若しくは後壁部84のどちらか一方に、形成する構成としてもよい。前壁部83に補強リブ93Fを配置させる構成とすれば、膨張初期において、内部に膨張用ガスを流入させて膨張するバッグ本体46が、ケース80の突出用開口80aから後上方に向かって突出する際に、剛性を高めた前壁部83Fによって、バッグ本体を安定して支持でき、バッグ本体46を円滑に後上方に向かって展開させることができる。後壁部84に補強リブ93Bを配置させる構成とすれば、後壁部84の曲げ剛性を高めて、変形し難くすることにより、例えば、ワイパの駆動機構を隣接して配置させる構成であっても、このような剛性部材と干渉することを、抑制できる。
なお、ケースにおける一般部の領域に設けられる曲げ剛性を高められる補強部の配設方法は、実施形態に限られるものではなく、例えば、図34に示すケース80Aのように、一般部89Aを構成している前壁部83A,後壁部84Aに、一部を波形状に湾曲させて形成した補強ビード165F,165Rを配設させる構成としてもよく、また、図35に示すケース80Bのように、一般部89Bを構成している前壁部83Bに、ボディ1側のカウルパネルに取り付けるためのブラケット部102Bを、配設させ、このブラケット部102Bを補強部としてもよい。なお、図34では、補強ビード165F,165Rは、前方側と後方側とに突出するように(凹凸を設けるように)左右方向側で2個並設されているが、ビードを設ける場合、凹凸の配置数は、2個に限られるものではなく、単数でも、3個以上配置させてもよい。また、このような曲げ剛性を高められる補強部は、一般部の他の領域と、材質を異ならせたり、板厚を変更することにより、構成してもよい。
さらに、実施形態のエアバッグ装置Mでは、インフレーター35L,35Rを車幅方向側で2個配置させる構成であることから、エアバッグ45が、膨張完了形状を、車幅方向に略沿った長尺状とされていても、エアバッグ45を、迅速に膨張させることができる。また、各インフレーター35を、ガス吐出口部36を相互に離隔させた状態で配置させることにより、上述したごとく、ガス吐出口部36側を、ケース80において剛性の確保されている一般部89の領域に配置させることができ、変形可能部88の剛性を相対的に低く設定することができる。そして、各インフレーター35において、ガス吐出口部36から離れた元部36b側には、作動回路から延びる図示しないリード線が結線される構成であり、各インフレーター35は、元部35b側を相互に離隔させた(間に隙間を設けた)状態で、ケース80に収納されることから、換言すれば、間に、変形可能部88の変形用のスペースを確保した状態で、各インフレーター35をケース80に取り付けることができる。そして、変形可能部88を、ケース80の車幅方向(左右方向)の中央側の1箇所に、連続的に配設させ、かつ、インフレーター35を相互に離隔させてケース80に取り付けることにより、ケース80の中央側の領域に、インフレーター35L,35Rを2個並設させる構成であっても、歩行者がインフレーター35L,35Rと干渉することを、的確に抑制することができる。なお、このような点を考慮しなければ、インフレーターを1個だけ使用する構成としてもよく、そのような構成とする場合、変形可能部を、ケースの左右方向の中央側において、左右方向側で分断されるように、構成してもよい。
なお、実施形態では、ケースにおける変形可能部と一般部とは、それぞれ、前壁部を含めた底壁部と後壁部とにかけての部位から、構成されているが、前壁部のみを剛性を異ならせて、変形可能部と一般部とを構成してもよい。