以下、図面を参照して本発明の実施形態の一例を詳細に説明する。なお、同じ働きを担う構成要素又は処理には、全図面を通して同じ符号を付与し、重複する説明を適宜省略する。
<第1実施形態>
図1は、外力によって物体に発生した状態を、物体から離れた場所にいる人物に通知する通知システム1の構成例を示す図である。ここでは、状態を通知する物体の一例としてラバーコーン10を用い、例えば車両等が衝突することによって加えられた外力によるラバーコーン10の状態の変化を、作業員に通知する例について説明する。
図1に示すように、通知システム1は、ラバーコーン10、管理装置20、及び携帯端末30を含んで構成される。ラバーコーン10の数に制限はなく、通知システム1は、少なくとも1つのラバーコーン10を含む。
既に説明したように、ラバーコーン10の上部にはLED等の発光装置が取り付けられているが、発光装置内には、更に通信ユニット40が取り付けられている。通信ユニット40は、ラバーコーン10の状態を判別し、例えば無線手段を用いて、判別したラバーコーン10の状態に対応した状態属性を管理装置20に通知する。
通信ユニット40は、通信範囲内に管理装置20が存在すれば、ラバーコーン10の状態属性を管理装置20に直接送信するが、通信範囲内に管理装置20が存在しなければ、通信範囲内にある他の通信ユニット40を中継装置として利用する。
具体的には、通信範囲内に管理装置20が存在しない場合、通信ユニット40は、通信範囲内に存在する他のラバーコーン10の通信ユニット40に、ラバーコーン10の状態属性を送信する。ラバーコーン10の状態属性を受信した通信ユニット40は、通信範囲内に管理装置20が存在すれば、受信したラバーコーン10の状態属性を管理装置20に送信する。通信範囲内に管理装置20が存在しなければ、通信範囲内に存在し、且つ、ラバーコーン10の状態属性の送信元とは異なるラバーコーン10の通信ユニット40に受信したラバーコーン10の状態属性を転送する。以降、通信ユニット40は、上述した中継処理を行うことで、通信範囲内に存在しない管理装置20に、ラバーコーン10の状態属性を送信する。
なお、後ほど詳細に説明するが、ラバーコーン10の状態を表す状態属性には、車両が衝突したことを示す「衝突」、及びラバーコーン10に外力が加えられ、転倒したことを示す「転倒」が存在する。また、ラバーコーン10の状態を表す状態属性には、ラバーコーン10に外力が加えられ、道路に対して傾斜している状態のように、「衝突」及び「転倒」とは異なるその他の異常が発生したことを示す「異常」が存在する。
管理装置20は、例えば現場事務所や工事車両等に設置され、通信ユニット40からラバーコーン10の状態属性を受信すると、受信した状態属性に応じた情報を管理装置20の周囲に存在する作業員に報知する。また、管理装置20は、各作業員が携帯する各々の携帯端末30に、例えば無線手段を用いて、受信したラバーコーン10の状態属性を送信する。
携帯端末30は、作業員が携帯する情報機器であり、管理装置20からラバーコーン10の状態属性を受信すると、受信した状態属性に応じた情報を作業員に報知する。
このようにして通知システム1は、ラバーコーン10の状態を、携帯端末30を携帯する作業員に通知する。
なお、通知システム1では無線手段を用いて通信ユニット40、管理装置20、及び携帯端末30の間で通信を行う例を示したが、有線手段を用いてもよく、また、無線手段と有線手段が混在する形態であってもよいことは言うまでもない。
図2は、通信ユニット40の機能構成例を示す図である。図2に示すように、通信ユニット40は、高レンジ加速度センサ41、低レンジ加速度センサ42、事象判別部43、標識具状態判定部44、ユニット通信部45、及び記憶部46を含んで構成される。
高レンジ加速度センサ41は、例えば各々直交する3軸方向の加速度を測定する加速度センサである。その上で、高レンジ加速度センサ41は、数100Gから数1000G程度といった、例えば高速道路を走行する車両が衝突した際の加速度を測定できる程度の加速度測定能力を有する加速度センサである。なお、“G”は重力加速度を表す単位であり、1Gは約9.8m/s2である。
高レンジ加速度センサ41は、例えばX軸、Y軸、及びZ軸で表される3軸のうち何れかの軸方向で、予め定められた閾値より大きい加速度が測定された場合に、ラバーコーン10に何らかの事象が発生したことを事象判別部43に通知する。
また、高レンジ加速度センサ41は、後述する事象判別部43から加速度取得要求を受け付けると、加速度取得要求を受け付けるまでに測定した予め定めた期間内の加速度を事象判別部43に通知する。
事象判別部43への通知の判定に用いられる閾値(以降、「事象判定閾値」という)は、ラバーコーン10の実物による実験やラバーコーン10の設計仕様に基づくコンピュータシミュレーション等により予め求められる。事象判定閾値の設定値に制約はないが、例えばラバーコーン10が風によって自然に転倒した場合に測定される加速度の最小値を、事象判定閾値として設定すればよい。すなわち、通知システム1は、高レンジ加速度センサ41で測定された加速度が事象判定閾値以下の場合には、作業員へ通知すべき事象は発生していないものとして取り扱う。
低レンジ加速度センサ42は、高レンジ加速度センサ41と同じく、例えば各々直交する3軸方向の加速度を測定する加速度センサである。ただし、低レンジ加速度センサ42は、測定可能な加速度の最大値が高レンジ加速度センサ41よりも小さく設定されており、例えば数G程度までしか測定することができない。
しかしながら、各種の微細加工技術を応用し、微小な電気要素と機械要素を一つの基板上に組み込んだMEMS(Micro Electro Mechanical System)型の加速度センサの場合、測定可能な加速度の範囲と、加速度の測定誤差との間にはトレードオフの関係がある。高レンジ加速度センサ41及び低レンジ加速度センサ42を共にMEMS型の加速度センサとすれば、高レンジ加速度センサ41は、低レンジ加速度センサ42よりも大きい加速度を測定できるが、加速度の測定誤差は低レンジ加速度センサ42よりも大きくなる。
一方、低レンジ加速度センサ42は、上述したように、高レンジ加速度センサ41よりも小さい加速度しか測定できないが、加速度の測定誤差は高レンジ加速度センサ41よりも小さくなる。具体的には、低レンジ加速度センサ42の測定誤差は、高レンジ加速度センサ41の測定誤差の約1/100程度に抑えられる特性を有する。
その上で、ラバーコーン10が直立している状態で、何れかの軸方向(例えばZ軸)にラバーコーン10の重力成分がかかるように低レンジ加速度センサ42を取り付ける。低レンジ加速度センサ42は、後述する標識具状態判定部44から加速度取得要求を受け付けると、加速度取得要求を受け付けるまでに測定した予め定めた期間内の加速度を標識具状態判定部44に通知する。
なお、高レンジ加速度センサ41及び低レンジ加速度センサ42は測定部の一例である。また、低レンジ加速度センサ42は第1の測定部の一例であり、高レンジ加速度センサ41は第2の測定部の一例である。
標識具状態判定部44は、後述する事象判別部43から状態取得要求を受け付けると、低レンジ加速度センサ42に加速度取得要求を通知して、低レンジ加速度センサ42で測定された加速度(以降、「低レンジ加速度」という)を取得する。標識具状態判定部44は、取得した低レンジ加速度を用いてラバーコーン10の静動状態を判定する。ここで、「ラバーコーン10の静動状態」とは、ラバーコーン10が静止状態にあるか動作状態にあるかの状態をいう。また、「静止状態」とは、ラバーコーン10がぐらつかずに直立している状態をいい、「動作状態」とは、ラバーコーン10の底面が設置面の一例である道路に対して傾斜している状態をいう。ラバーコーン10の静動状態を判定する標識具状態判定部44は、判定部の一例である。
標識具状態判定部44は、判定したラバーコーン10の静動状態を事象判別部43に通知する。
事象判別部43は、高レンジ加速度センサ41で事象判定閾値より大きい加速度が測定された場合で、且つ、標識具状態判定部44でラバーコーン10が動作状態にあると判定された場合、標識具状態判定部44の判定結果に応じて、ラバーコーン10の状態属性を判別する。
また、事象判別部43は、高レンジ加速度センサ41で事象判定閾値より大きい加速度が測定された場合で、且つ、標識具状態判定部44でラバーコーン10が静止状態にあると判定された場合、高レンジ加速度センサ41に加速度取得要求を通知して、高レンジ加速度センサ41で測定された加速度(以降、「高レンジ加速度」という)を取得する。事象判別部43は、取得した高レンジ加速度を用いてラバーコーン10の状態属性を判別する。このように、ラバーコーン10の状態属性を判別する事象判別部43は、判別部の一例である。
事象判別部43は、判別したラバーコーン10の状態属性をユニット通信部45に通知する。
ユニット通信部45は、他の通信ユニット40又は管理装置20とデータを送受信するための通信プロトコルを備える。ユニット通信部45は、事象判別部43からラバーコーン10の状態属性を受け付けると、通信範囲内に管理装置20が存在する場合には、受け付けた状態属性にラバーコーン10を一意に識別するラバーコーンIDを付加して、管理装置20に送信する。
一方、ユニット通信部45は、通信範囲内に管理装置20が存在しない場合、通信範囲内に存在する他のラバーコーン10の通信ユニット40に、ラバーコーンIDを付加したラバーコーン10の状態属性を送信する。すなわち、ユニット通信部45は、ラバーコーン10の通信ユニット40を中継装置として利用し、状態属性を管理装置20に送信する。このように、ラバーコーン10の状態属性を送信するユニット通信部45は、送信部の一例である。
ユニット通信部45におけるラバーコーン10の状態属性の中継には、既存のルーティングプロトコルが用いられる。具体的には、例えばAODV(Ad hoc On-Demand Distance Vector)、及びRPL(IPv6 Routing Protocol for Low-Power and Lossy Networks)等のルーティングプロトコルが用いられる。通信範囲内に管理装置20が存在しない場合、ユニット通信部45は、予め定めたルーティングプロトコルを用いて、ラバーコーン10の状態属性を送信する通信ユニット40を決定すればよい。
記憶部46は、不揮発性の記憶装置を含み、事象判別部43及び標識具状態判定部44の処理で用いられる閾値等のパラメータを記憶する。記憶部46は、事象判別部43及び標識具状態判定部44からパラメータの取得を要求された場合、要求されたパラメータを要求元に出力する。
図3は、管理装置20の機能構成例を示す図である。図3に示すように、管理装置20は、第1管理通信部21、第2管理通信部22、管理制御部23、及び管理報知部24を含んで構成される。
第1管理通信部21は、ラバーコーン10の通信ユニット40とデータを送受信するための通信プロトコルを備え、ラバーコーン10のユニット通信部45から、ラバーコーンIDが付加された状態属性を受信する。第1管理通信部21は、ラバーコーンIDが付加された状態属性を受信した場合、管理制御部23に通知する。
管理制御部23は状態属性を受け付けると、状態属性に付加されているラバーコーンIDと共に、第2管理通信部22に通知する。また、管理制御部23は、状態属性が「衝突」、「転倒」、「異常」の何れであるかを解析し、管理装置20で状態属性の内容に応じた報知が行われるように、管理報知部24を制御する。
例えばラバーコーン10の状態属性が「衝突」であれば、ラバーコーンIDに対応したラバーコーン10に車両が追突したことを表す内容を管理報知部24の表示装置に表示させる。また、ラバーコーン10の状態属性が「転倒」であれば、ラバーコーンIDに対応したラバーコーン10が転倒したことを表す内容を管理報知部24の表示装置に表示させる。また、ラバーコーン10の状態属性が「異常」であれば、ラバーコーンIDに対応したラバーコーン10で何らかの異常が発生したことを表す内容を管理報知部24の表示装置に表示させる。なお、管理制御部23は、管理報知部24の表示装置に表示する内容と同様の内容を音声で報知させるように管理報知部24を制御してもよい。また、管理制御部23は、警告灯の点灯色及び点灯パターンの少なくとも一方を、状態属性に応じて変化させるように管理報知部24を制御してもよい。
管理報知部24は、管理制御部23の制御に従って、表示装置、スピーカー、及び警告灯の少なくとも1つを用いて、指示された内容に応じた警告を報知し、管理装置20の周囲にいる作業員に注意を促す。なお、管理報知部24は、警告を表示装置に表示する場合、状態属性に付加されたラバーコーンIDに基づいて、どの地点に設置されたラバーコーン10で状態の変化があったかを表示装置の地図上に表示してもよい。この場合、ラバーコーンIDとラバーコーン10の設置位置との対応関係を予め設定し、管理装置20に記憶しておけばよい。
第2管理通信部22は、作業員が携帯する携帯端末30とデータを送受信するための通信プロトコルを備え、管理制御部23から受け付けたラバーコーンIDが付加された状態属性を携帯端末30に送信する。なお、状態属性を携帯端末30に送信する場合、情報伝達に関する即時性の観点から、全ての携帯端末30に同時に状態属性を送信する同報送信(「ブロードキャスト」ともいう)を用いることが好ましいが、状態属性を全ての携帯端末30に順次送信するようにしてもよい。
図4は、携帯端末30の機能構成例を示す図である。図4に示すように、携帯端末30は、端末通信部31、端末制御部32、及び端末報知部33を含んで構成される。
端末通信部31は、管理装置20の第2管理通信部22とデータを送受信するための通信プロトコルを備え、管理装置20の第2管理通信部22から、ラバーコーンIDが付加された状態属性を受信する。端末通信部31は、ラバーコーンIDが付加された状態属性を受信した場合、端末制御部32に通知する。
端末制御部32は状態属性を受け付けると、状態属性が「衝突」、「転倒」、「異常」の何れであるかを解析し、携帯端末30で状態属性の内容に応じた報知が行われるように、端末報知部33を制御する。
この場合、端末制御部32は、表示内容、警告灯の点灯色及び点灯パターンの少なくとも一方、並びに、警告音の種類を、状態属性に応じて変化させるように端末報知部33を制御してもよい。
端末報知部33は、端末制御部32の制御に従って、作業員に警告を報知する。具体的には、例えば表示装置への警告の表示、スピーカーからの警告音の出力、警告灯の点灯、及びバイブレータ等の振動デバイスの振動等によって、作業員に警告を報知する。
なお、状態属性にラバーコーンIDを付加する形態は一例であり、必ずしも状態属性にラバーコーンIDを付加する必要はない。
図5は、通信ユニット40の電気系統の要部構成例を示すブロック図である。図5に示すように、ラバーコーン10の通信ユニット40は、例えばコンピュータ50を用いて実現される。なお、コンピュータ50は、通信ユニット40に実装される組み込みコンピュータである。
コンピュータ50は、CPU(Central Processing Unit)50A、ROM(Read Only Memory)50B、RAM(Random Access Memory)50C、不揮発性メモリ50D、及びI/O50Eを備える。そして、CPU50A、ROM50B、RAM50C、不揮発性メモリ50D、及びI/O50Eが、バス50Fを介して互いに接続される。
CPU50Aは、ROM50Bからプログラムを読み出し、RAM50Cをワークエリアとしてプログラムを実行する。なお、不揮発性メモリ50Dは、通信ユニット40の電源をオフにしてもデータ内容が保持されるメモリであり、例えばプログラムで使用するパラメータ等が記憶される。CPU50Aは、通信ユニット40における判定部及び判別部として機能し、不揮発性メモリ50Dは、通信ユニット40における記憶部46として機能する。
I/O50Eには、高レンジ加速度センサ41、低レンジ加速度センサ42、及び通信装置47が接続され、それぞれCPU50Aによって制御される。通信装置47は、ユニット通信部45に対応した機能を実現する通信ユニットである。なお、I/O50Eに接続される装置等は、図5に示した装置等に限定されない。例えば車両からの視認性を高めるため、I/O50Eに発光装置を接続するようにしてもよい。
図6は、管理装置20の電気系統の要部構成例を示すブロック図である。図6に示すように、管理装置20は、例えばコンピュータ60を用いて実現される。
コンピュータ60は、CPU60A、ROM60B、RAM60C、不揮発性メモリ60D、及びI/O60Eを備える。そして、CPU60A、ROM60B、RAM60C、不揮発性メモリ60D、及びI/O60Eが、バス60Fを介して互いに接続される。
CPU60Aは、ROM60Bからプログラムを読み出し、RAM60Cをワークエリアとしてプログラムを実行する。不揮発性メモリ60Dには、例えばプログラムで使用するパラメータ等が記憶される。
I/O60Eには、入力装置25、表示装置26、及び通信装置27が接続され、それぞれCPU60Aによって制御される。
入力装置25は、作業員の指示を受け付ける入力デバイスであり、例えばキーボード、マウス、及びタッチパネル等が含まれる。表示装置26は、作業員へ情報を表示する表示デバイスであり、例えば液晶ディスプレイ及び有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等が含まれる。通信装置27は、第1管理通信部21及び第2管理通信部22に対応した機能を実現する通信ユニットである。なお、I/O60Eに接続される装置等は、図6に示した装置等に限定されない。例えば警告を報知するスピーカー及び警告灯をI/O60Eに接続してもよい。
また、図7は、携帯端末30の電気系統の要部構成例を示すブロック図である。図7に示すように、携帯端末30は、例えばコンピュータ70を用いて実現される。なお、コンピュータ70は、携帯端末30に実装される組み込みコンピュータであり、携帯端末30として、市販のスマートフォン及びタブレット端末等の情報機器を用いてもよい。
コンピュータ70は、CPU70A、ROM70B、RAM70C、不揮発性メモリ70D、及びI/O70Eを備える。そして、CPU70A、ROM70B、RAM70C、不揮発性メモリ70D、及びI/O70Eが、バス70Fを介して互いに接続される。
CPU70Aは、ROM70Bからプログラムを読み出し、RAM70Cをワークエリアとしてプログラムを実行する。不揮発性メモリ70Dには、例えばプログラムで使用するパラメータ等が記憶される。
I/O70Eには、入力装置35、表示装置36、及び通信装置37が接続され、それぞれCPU70Aによって制御される。
入力装置35は、図6に示した管理装置20の入力装置25と同じく、作業員の指示を受け付ける入力デバイスである。表示装置36も、図6に示した管理装置20の表示装置26と同じく、作業員へ情報を表示する表示デバイスである。通信装置37は、端末通信部31に対応した機能を実現する通信ユニットである。なお、I/O70Eに接続される装置等は、図7に示した装置等に限定されない。例えば警告を報知するスピーカー、警告灯、及び振動デバイス等をI/O70Eに接続してもよい。
次に、通信ユニット40のCPU50Aによって実行されるラバーコーン10の状態属性判別処理の作用について説明する。
図8は、第1実施形態に係る通信ユニット40の状態属性判別処理の流れの一例を示すフローチャートである。
状態属性判別処理を規定する状態属性判別プログラムはROM50Bに予め記憶されており、通信ユニット40の電源がオンされた場合に、CPU50Aが状態属性判別プログラムをROM50Bから読み出して実行する。状態属性判別プログラムの実行に伴い、高レンジ加速度センサ41で加速度の測定が開始される。
まず、ステップS10において、CPU50Aは、高レンジ加速度センサ41の3軸方向に沿った各加速度のうち、何れかの軸方向の高レンジ加速度が事象判定閾値を越えたか否かを判定する。否定判定の場合には、ステップS10を繰り返し実行して、高レンジ加速度の監視を継続する。肯定判定の場合には、ステップS20に移行する。
ステップS20において、CPU50Aは、低レンジ加速度センサ42から低レンジ加速度を取得する。この場合、CPU50Aは、ステップS10の判定処理で高レンジ加速度が事象判定閾値を越えた時点から過去に遡って設定した予め定めた期間(以降、「事象判定期間」という)内における、複数の低レンジ加速度を取得する。
CPU50Aは、予め定めた間隔で加速度を測定するように高レンジ加速度センサ41及び低レンジ加速度センサ42を制御し、測定した各々の加速度を時系列に従って一定期間に亘り、例えばRAM50Cに記憶している。したがって、CPU50Aは、事象判定期間に含まれる複数の低レンジ加速度をRAM50Cから取得する。
例えば、ステップS10で高レンジ加速度が事象判定閾値を越えたと判定された後に、低レンジ加速度センサ42で例えば加速度の測定が3回行われた場合、CPU50Aは、当該3回分の低レンジ加速度を除いた予め定めた期間内の低レンジ加速度を、事象判定期間内における低レンジ加速度として取得する。なお、以降では、ステップS10の判定処理で高レンジ加速度が事象判定閾値を越えた時点を、「異常検出時点」ということにする。
ステップS30において、CPU50Aは、ステップS20で取得した低レンジ加速度を用いて、重力方向に沿ったZ軸方向の低レンジ加速度の分散値を算出する。取得した低レンジ加速度の数をN、i番目のZ軸方向の低レンジ加速度をxi(i=1〜N)、事象判定期間におけるZ軸方向の低レンジ加速度の平均値をμとすれば、Z軸方向の低レンジ加速度の分散値σ2は、(1)式を用いて算出される。
なお、設定する事象判定期間の長さに制約はないが、取得する低レンジ加速度の数が増加すれば、低レンジ加速度の分散値σ2の算出精度の向上が見込まれる。したがって、異常検出時点以前に測定された全ての低レンジ加速度が含まれる期間を、事象判定期間として設定してもよい。
ステップS40において、CPU50Aは、ステップS30で算出した低レンジ加速度の分散値σ2が、静止閾値未満であるか否かを判定する。「静止閾値」とは、分散値がこの値未満であれば、物体(この場合、ラバーコーン10)が静止しているとみなすことができる閾値である。静止閾値は、ラバーコーン10の実物による実験やラバーコーン10の設計仕様に基づくコンピュータシミュレーション等により予め求められ、例えば不揮発性メモリ50Dに予め記憶されている。
低レンジ加速度の分散値σ2が大きくなる程、Z軸方向の低レンジ加速度のばらつきが大きいことを示すが、Z軸方向の低レンジ加速度のばらつきはラバーコーン10のぐらつきによって生じる。したがって、低レンジ加速度の分散値σ2が静止閾値未満の場合には、ラバーコーン10は静止状態にあると判定され、ステップS50に移行する。
ステップS50において、CPU50Aは、異常検出時点以前に測定された高レンジ加速度を、RAM50Cから取得する。例えば上述した事象判定期間に測定された高レンジ加速度をRAM50Cから取得してもよい。
そして、CPU50Aは、取得した各々の高レンジ加速度の大きさを算出する。高レンジ加速度のX軸方向の加速度を“ax”、Y軸方向の加速度を“ay”、及びZ軸方向の加速度を“aZ”とすれば、高レンジ加速度の大きさAhは(2)式を用いて算出される。
ステップS60において、CPU50Aは、ステップS50で取得した高レンジ加速度のうち、高レンジ加速度の大きさAhが衝突閾値を超える高レンジ加速度が少なくとも1つ存在するか否かを判定する。
「衝突閾値」とは、高レンジ加速度の大きさAhがこの値を超えれば、物体(この場合、ラバーコーン10)に車両等の移動体が衝突したとみなすことができる閾値である。衝突閾値は、ラバーコーン10の実物による衝突実験やラバーコーン10の設計仕様に基づくコンピュータシミュレーション等により予め求められ、例えば不揮発性メモリ50Dに予め記憶されている。
取得した何れかの高レンジ加速度の大きさAhが衝突閾値を超える場合、ステップS70に移行し、ステップS70において、CPU50Aは、ラバーコーン10に車両が衝突したものと判別する。したがって、CPU50Aは、ラバーコーン10の状態属性を「衝突」に設定する。
一方、取得した何れの高レンジ加速度の大きさAhも衝突閾値以下である場合、ステップS80に移行する。
この場合、ラバーコーン10に何らかの外力が加えられたものの、車両の衝突によるものではなく、しかも、ラバーコーン10は静止状態にあることになる。例えば、風の影響でラバーコーン10が移動した状況や、作業員がラバーコーン10を移動させた状況等が考えられる。
したがって、ステップS80において、CPU50Aは、ラバーコーン10に注意すべき異常が発生したものと判別し、ラバーコーン10の状態属性を「異常」に設定する。
一方、ステップS40の判定処理が否定判定、すなわち、低レンジ加速度の分散値σ2が静止閾値以上の場合には、ラバーコーン10は動作状態にあると判定され、ステップS90に移行する。
ステップS90において、CPU50Aは、ステップS20で取得した低レンジ加速度のうち、例えば測定時期が最も新しい低レンジ加速度の各軸方向の加速度と、ラバーコーン10が静止状態にある場合の各軸方向の加速度と、を用いて、ラバーコーン10の傾斜角を算出する。ラバーコーン10が静止状態にある場合の各軸方向の加速度は、例えば不揮発性メモリ50Dに予め記憶しておけばよい。
ここで、「傾斜角」とは、ラバーコーン10の道路に接する底面と、道路との成す角度を表す。また、以降では、ラバーコーン10が静止状態にある場合の各軸方向の加速度を、「静止基準加速度」という。静止基準加速度は、水平な道路にラバーコーン10が設置される場合、重力方向であるZ軸方向の加速度は1Gとなり、その他の軸方向の加速度は0Gとなる。なお、静止基準加速度は、傾斜角の算出に用いられる基準加速度の一例である。
ステップS100において、CPU50Aは、ステップS90で算出したラバーコーン10の傾斜角が転倒角度を超えるか否かを判定する。
「転倒角度」とは、物体(この場合、ラバーコーン10)の傾斜角がこの角度を超えれば、物体が転倒したとみなすことができる閾値である。転倒角度は、ラバーコーン10の実物による転倒実験やラバーコーン10の設計仕様に基づくコンピュータシミュレーション等により予め求められ、例えば不揮発性メモリ50Dに予め記憶されている。
ステップS90で算出したラバーコーン10の傾斜角が転倒角度を超える場合、ステップS110に移行し、ステップS110において、CPU50Aは、ラバーコーン10が転倒したものと判別する。したがって、CPU50Aは、ラバーコーン10の状態属性を「転倒」に設定する。
一方、ステップS100において、ステップS90で算出したラバーコーン10の傾斜角が転倒角度以下であると判定された場合、ステップS120に移行する。
この場合、ラバーコーン10は転倒していないが動作状態にあり、例えば傾斜した状態にあると考えられる。したがって、ステップS120において、CPU50Aは、ラバーコーン10に注意すべき異常が発生したものと判別し、ラバーコーン10の状態属性を「異常」に設定する。
ステップS130において、CPU50Aは通信装置47を制御して、ステップS70、S80、S110、又はS120で設定したラバーコーン10の状態属性を管理装置20へ送信する。なお、CPU50Aは、状態属性にラバーコーン10のラバーコーンIDを付加して管理装置20へ送信してもよい。ラバーコーンIDは、例えば不揮発性メモリ50Dに予め記憶しておけばよい。
以上により、図8に示した通信ユニット40の状態属性判別処理を終了する。
図9は、管理装置20における管理処理の流れの一例を示すフローチャートである。
管理処理を規定する管理プログラムは管理装置20のROM60Bに予め記憶されており、管理装置20の電源がオンされた場合に、管理装置20のCPU60Aが管理プログラムをROM60Bから読み出して実行する。
まず、ステップS200において、CPU60Aは、通信装置27で状態属性を受信したか否かを判定する。否定判定の場合にはステップS200を繰り返し実行して、状態属性の受信を監視する。状態属性を受信した場合には、ステップS210に移行する。
ステップS210において、CPU60Aは、ステップS200で受信した状態属性を参照し、状態属性が「転倒」であるか否かを判定する。状態属性が「転倒」の場合にはステップS220に移行する。
ステップS220において、CPU60Aは、ラバーコーン10が転倒したことを報知するメッセージを表示装置26に表示する。
一方、ステップS210の判定処理において、受信した状態属性が「転倒」でない場合にはステップS230に移行する。
ステップS230において、CPU60Aは、ステップS200で受信した状態属性を参照し、状態属性が「衝突」であるか否かを判定する。状態属性が「衝突」の場合にはステップS240に移行する。
ステップS240において、CPU60Aは、ラバーコーン10に車両が衝突したことを報知するメッセージを表示装置26に表示する。
一方、ステップS230の判定処理において、受信した状態属性が「衝突」でない場合にはステップS250に移行する。
ステップS250において、CPU60Aは、ラバーコーン10に注意すべき何らかの異常が発生したことを報知するメッセージを表示装置26に表示する。
ステップS260において、CPU60Aは、通信装置27を制御して、ステップS200で受信した状態属性を携帯端末30へ転送する。CPU60Aは、受信した状態属性にラバーコーンIDが付加されている場合には、ラバーコーンIDを付加したまま状態属性を携帯端末30へ転送する。
以上により、図9に示した管理装置20の管理処理を終了する。なお、図6に示したI/O60Eにスピーカー及び警告灯が接続されている場合、ステップS220、S240、及びS250において、CPU60Aは、スピーカー及び警告灯を用いて状態属性に応じた内容を報知するようにしてもよい。
図10は、携帯端末30における報知処理の流れの一例を示すフローチャートである。
報知処理を規定する報知プログラムは携帯端末30のROM70Bに予め記憶されており、携帯端末30の電源がオンされた場合に、携帯端末30のCPU70Aが報知プログラムをROM70Bから読み出して実行する。
まず、ステップS300において、CPU70Aは、通信装置37で状態属性を受信したか否かを判定する。否定判定の場合には、ステップS300を繰り返し実行して、状態属性の受信を監視する。状態属性を受信した場合には、ステップS310に移行する。
ステップS310において、CPU70Aは、ステップS300で受信した状態属性を参照し、状態属性が「転倒」であるか否かを判定する。状態属性が「転倒」の場合にはステップS320に移行する。
ステップS320において、CPU70Aは、ラバーコーン10が転倒したことを報知するメッセージを表示装置36に表示する。
一方、ステップS310の判定処理において、受信した状態属性が「転倒」でない場合にはステップS330に移行する。
ステップS330において、CPU70Aは、ステップS300で受信した状態属性を参照し、状態属性が「衝突」であるか否かを判定する。状態属性が「衝突」の場合にはステップS340に移行する。
ステップS340において、CPU70Aは、ラバーコーン10に車両が衝突したことを報知するメッセージを表示装置36に表示する。
一方、ステップS330の判定処理において、受信した状態属性が「衝突」でない場合にはステップS350に移行する。
ステップS350において、CPU70Aは、ラバーコーン10に注意すべき何らかの異常が発生したことを報知するメッセージを表示装置36に表示する。
以上により、図10に示した携帯端末30の報知処理を終了する。なお、図7に示したI/O70Eにスピーカー、警告灯、及び振動デバイスが接続されている場合、ステップS320、S340、及びS350において、CPU70Aは、スピーカー、警告灯、及び振動デバイスを用いて状態属性に応じた内容を報知するようにしてもよい。これにより、作業員が目視では確認できない距離にあるラバーコーン10の状態を、作業員に報知することができる。
このように第1実施形態に係る通知システム1では、ラバーコーン10に何らかの外力が加えられたと判定された時点以前に測定された加速度を用いることで、ラバーコーン10の状態属性を判別し、作業員に報知することができる。したがって、ラバーコーン10に何らかの外力が加えられたと判定してから加速度センサで加速度を測定し、ラバーコーン10の状態属性を判別する場合と比較して、ラバーコーン10に外力が加えられてから、作業員にラバーコーンの状態属性が報知されるまでに要する遅延時間を短縮することができる。当該遅延時間が短縮されることで、例えば規制車線に車両が進入してきた際、作業員は回避行動を取り易くなる。
また、通知システム1では、通信ユニット40で測定可能範囲及び測定精度の異なる2つの加速度センサ、すなわち、高レンジ加速度センサ41及び低レンジ加速度センサ42を用いて、ラバーコーン10に加わる加速度とラバーコーン10の傾斜角を算出する。したがって、高レンジ加速度センサ41及び低レンジ加速度センサ42の何れか一方を用いてラバーコーン10の状態属性を判別する場合と比較して、ラバーコーン10の状態の判別精度を向上させることができる。
なお、高レンジ加速度センサ41及び低レンジ加速度センサ42を一体化させた加速度センサを用いた場合には、通信ユニット40に実装する加速度センサを1つにすることができる。しかしながら、このような加速度センサは高価であり、高レンジ加速度センサ41及び低レンジ加速度センサ42をそれぞれ実装した方が、通信ユニット40のコストを低減することができる。
<第2実施形態>
第1実施形態に係る通信ユニット40は、高レンジ加速度センサ41及び低レンジ加速度センサ42で測定された各々の加速度と各種閾値とを用いて、ラバーコーン10の状態属性を判別した。しかしながら、ラバーコーン10の状態が確定していない期間における加速度を用いてラバーコーン10の状態属性を判別した場合、状況によっては、ラバーコーン10の最終的な状態と異なる状態属性に判別してしまうことがある。
第2実施形態では、ラバーコーン10の過渡的な状態を考慮してラバーコーン10の状態属性を判別する通信ユニット40Aについて説明する。なお、通信ユニット40Aにおける電気系統の要部構成例は、図5に示した通信ユニット40における電気系統の要部構成例と同じである。また、管理装置20の機能構成例、電気系統の要部構成例、及び管理処理は、それぞれ図3、図6、及び図9と同じであり、携帯端末30の機能構成例、電気系統の要部構成例、及び報知処理は、それぞれ図4、図7、及び図10と同じである。
図11は、通信ユニット40Aの機能構成例を示す図である。図11に示す通信ユニット40Aの機能構成例が、図2に示した第1実施形態に係る通信ユニット40の機能構成例と異なる点は、タイマ部48が追加された点である。タイマ部48は、事象判別部43及び標識具状態判定部44に接続され、事象判別部43及び標識具状態判定部44からの要求により、指定された時間が経過したことを通知するタイマ機能を提供する。
図12は、第2実施形態に係る通信ユニット40Aの状態属性判別処理の流れの一例を示すフローチャートである。図12に示す状態属性判別処理が、図8に示した第1実施形態に係る状態属性判別処理と異なる点は、ステップS80がステップS80Aに置き換えられ、ステップS120がステップS120Aに置き換えられた点である。その他の処理については図8に示した状態属性判別処理と同じであるため、以降では、ステップS80A及びステップS120Aの処理について説明する。
図12のステップS60において、ステップS50で取得した何れの高レンジ加速度の大きさAhも衝突閾値以下である場合、ステップS80Aに移行する。
ステップS80Aにおいて、CPU50Aは、ラバーコーン10の状態属性が「衝突」でないか否かを再判別する衝突再判別処理を実行する。
図13は、ステップS80Aにおける衝突再判別処理の流れの一例を示すフローチャートである。
まず、ステップS400において、CPU50Aは、ラバーコーン10に加えられる加速度が最大となる時間に合わせてタイムアウト通知が通知されるように、タイマに対して衝突再判別時間を設定する。
図14は、ラバーコーン10に車両が衝突した場合に、高レンジ加速度センサ41で測定される高レンジ加速度の一例を示す図である。図14に示すように、ラバーコーン10に外力が加わり始めてから一定時間が経過した後に、高レンジ加速度が最大値を示す傾向がある。したがって、CPU50Aは、高レンジ加速度が最大となる時間に合わせて衝突再判別時間を設定すればよい。
衝突再判別時間は固定値であってもよいが、例えば図12のステップS10で得られた高レンジ加速度の大きさから、高レンジ加速度が最大となる時間を推定し、推定した時間に合わせてタイマからタイムアウト通知が通知されるように、衝突再判別時間を設定してもよい。
具体的には、高レンジ加速度の大きさが大きくなるに従って、高レンジ加速度が最大になる時点までの時間は短くなると考えられるため、CPU50Aは、高レンジ加速度センサ41で測定された加速度が大きくなるに従って、衝突再判別時間を短く設定すればよい。なお、衝突再判別時間は、第2の設定時間の一例である。
CPU50Aは、例えばCPU50Aに内蔵されるタイマ機能を用いることで、指定した時間を計測することができる。
ステップS410において、CPU50Aは、ステップS400で設定した衝突再判別時間が経過したことを通知するタイムアウト通知をタイマから受信したか否かを判定する。否定判定の場合には、ステップS410を繰り返し実行して、タイムアウト通知の受信を監視する。タイムアウト通知を受信した場合には、ステップS420に移行する。
ステップS420において、CPU50Aは、高レンジ加速度センサ41を制御して、タイムアウト通知を受信した時点における高レンジ加速度を取得する。
ステップS430において、CPU50Aは、ステップS420で取得した高レンジ加速度の大きさAhが衝突閾値を越えているか否かを判定する。高レンジ加速度の大きさAhが衝突閾値を越えている場合、ステップS440に移行し、ステップS440において、CPU50Aは、ラバーコーン10に車両が衝突したものと判別する。したがって、CPU50Aは、ラバーコーン10の状態属性を「衝突」に設定する。
一方、ステップS420で取得した高レンジ加速度は、高レンジ加速度が最大になると推定された時点の高レンジ加速度であるため、これ以降にステップS420で取得した高レンジ加速度を超える高レンジ加速度が測定される可能性は低い。
したがって、高レンジ加速度の大きさAhが衝突閾値以下である場合、ステップS450に移行し、ステップS450において、CPU50Aは、ラバーコーン10に注意すべき異常が発生したものと判別し、ラバーコーン10の状態属性を「異常」に設定する。
以上により、図13に示した通信ユニット40Aの衝突再判別処理を終了する。
通信ユニット40Aは、高レンジ加速度が最大になる時間に合わせて高レンジ加速度を取得するため、ラバーコーン10に車両が衝突したか否かを精度よく判別することができる。
一方、図12のステップS100において、ステップS90で算出したラバーコーン10の傾斜角が転倒角度以下と判定された場合、ステップS120Aに移行する。
ステップS120Aにおいて、CPU50Aは、ラバーコーン10の状態属性が「転倒」でないか否かを再判別する転倒再判別処理を実行する。
図15は、ステップS120Aにおける転倒再判別処理の流れの一例を示すフローチャートである。
ステップS500において、CPU50Aは、ラバーコーン10の転倒推定時間に合わせてタイムアウト通知が通知されるように、タイマに対して転倒再判別時間を設定する。
転倒再判別時間は固定値であってもよいが、図12のステップS30で算出した低レンジ加速度の分散値σ2から、仮にラバーコーン10が転倒するならば、この時間に転倒すると考えられる転倒推定時間を算出してもよい。具体的には、低レンジ加速度の分散値σ2が大きい程、ラバーコーン10が転倒しやすい状態にあると考えられるため、CPU50Aは、低レンジ加速度の分散値σ2が大きくなるに従って、転倒再判別時間を短く設定すればよい。なお、転倒再判別時間は、第1の設定時間の一例である。
ステップS510において、CPU50Aは、ステップS500で設定した転倒再判別時間が経過したことを通知するタイムアウト通知をタイマから受信したか否かを判定する。否定判定の場合には、ステップS510を繰り返し実行して、タイムアウト通知の受信を監視する。タイムアウト通知を受信した場合には、ステップS520に移行する。
ステップS520において、CPU50Aは、低レンジ加速度センサ42を制御して、タイムアウト通知を受信した時点における低レンジ加速度を取得する。
ステップS530において、CPU50Aは、ステップS520で取得した低レンジ加速度の各軸方向の加速度と静止基準加速度を用いて、ラバーコーン10の傾斜角を算出する。
ステップS540において、CPU50Aは、ステップS530で算出したラバーコーン10の傾斜角が転倒角度を超えるか否かを判定する。ラバーコーン10の傾斜角が転倒角度を超える場合、ステップS550に移行し、ステップS550において、CPU50Aは、ラバーコーン10が転倒したものと判別する。したがって、CPU50Aは、ラバーコーン10の状態属性を「転倒」に設定する。
一方、ステップS520で取得した低レンジ加速度は、ラバーコーン10が転倒したと推定される時点の低レンジ加速度であるため、これ以降にラバーコーン10の状態が変化する可能性は低い。
したがって、ラバーコーン10の傾斜角が転倒角度以下の場合、ステップS560に移行し、ステップS560において、CPU50Aは、ラバーコーン10に注意すべき異常が発生したものと判別し、ラバーコーン10の状態属性を「異常」に設定する。
以上により、図15に示した通信ユニット40Aの転倒再判別処理を終了する。
図16は、ラバーコーン10に外力が加えられた場合のラバーコーン10の傾斜角の変化例を示す図である。図16に示すように、ラバーコーン10が動作状態にある場合、低レンジ加速度には外力による一時的な衝撃成分が含まれるため、動作状態にあるラバーコーン10の低レンジ加速度から算出したラバーコーン10の傾斜角は変動しやすい傾向がある。
これに対して、通信ユニット40Aは、図12のステップS100でラバーコーン10の傾斜角が転倒角度以下であると判定された後、転倒再判別時間が経過してから再びラバーコーン10の低レンジ加速度を測定する。転倒再判別時間の経過後には、ラバーコーン10は静止状態か転倒状態に移行していると考えられることから、ラバーコーン10の傾斜角を精度よく算出することができる。
このように第2実施形態に係る通信ユニット40Aによれば、各状態の特徴が最も現れやすい時間に合わせて状態属性の再判別を行うため、ラバーコーン10の状態属性の判別精度を向上させることができる。
<第2実施形態の変形例1>
通信ユニット40Aでは、高レンジ加速度センサ41で事象判定閾値を越える高レンジ加速度が測定された場合にラバーコーン10の状態属性を判別するが、高レンジ加速度の大きさによらず、ラバーコーン10の状態属性を判別するようにしてもよい。
例えば、ラバーコーン10が転倒した場合、車両の走行を妨げ、交通渋滞を引き起こす原因となる場合があることから、定期的にラバーコーン10が転倒しているか判別したいことがある。
図17は、定期的にラバーコーン10が転倒しているかを判別する定期転倒判別処理の流れの一例を示すフローチャートである。
ステップS600において、CPU50Aは状態判別時間をタイマに設定する。状態判別時間は、ラバーコーン10の転倒を判別する間隔を指定する時間である。
ステップS610において、CPU50Aは、ステップS600で設定した状態判別時間が経過したことを通知するタイムアウト通知をタイマから受信したか否かを判定する。否定判定の場合には、ステップS610を繰り返し実行して、タイムアウト通知の受信を監視する。タイムアウト通知を受信した場合には、ステップS620に移行する。
ステップS620において、CPU50Aは、ステップS610でタイムアウト通知を受信した時点から過去に遡った予め定めた期間内における、複数の低レンジ加速度を取得する。
ステップS630において、CPU50Aは、ステップS620で取得した低レンジ加速度を用いて、重力方向に沿ったZ軸方向の低レンジ加速度の分散値σ2を算出する。
ステップS640において、CPU50Aは、ステップS630で算出した低レンジ加速度の分散値σ2が、静止閾値未満であるか否かを判定する。
図16を用いて説明したように、ラバーコーン10が転倒したか否かの判別は、ラバーコーンが動作状態にある場合は精度よく判別できないことがある。したがって、低レンジ加速度の分散値σ2が静止閾値以上の場合、すなわち、ラバーコーン10が動作状態にある場合には、ステップS600に移行し、状態判別時間が経過した後に、再びステップS640でラバーコーン10が静止状態にあるか否かを判定する。
一方、低レンジ加速度の分散値σ2が静止閾値未満の場合、すなわち、ラバーコーン10が静止状態にある場合には、ステップS650に移行する。
ステップS650において、CPU50Aは、ステップS620で取得した低レンジ加速度の各軸方向の加速度と静止基準加速度を用いて、ラバーコーン10の傾斜角を算出する。
ステップS660において、CPU50Aは、ステップS650で算出したラバーコーン10の傾斜角が転倒角度を超えるか否かを判定する。ラバーコーン10の傾斜角が転倒角度以下の場合には、ラバーコーン10は転倒していないと判別されるため、ステップS600に移行することで、定期的にラバーコーン10が転倒しているか判別する。
一方、ラバーコーン10の傾斜角が転倒角度を超える場合には、ステップS670に移行し、ステップS670において、CPU50Aは、ラバーコーン10が転倒したものと判別する。したがって、CPU50Aは、ラバーコーン10の状態属性を「転倒」に設定する。
ステップS680において、CPU50Aは、例えばCPU50Aに供給される電圧を計測する。通信ユニット40Aが通信ユニット40Aに内蔵された電池で動作している場合、CPU50Aに供給される電圧がCPU50Aの動作を保証する基準電圧未満になると、通信ユニット40Aが正常に動作しなくなることがある。したがって、CPU50Aは、CPU50Aに供給される電圧が基準電圧以上か否かを判定し、肯定判定の場合にはステップS600に移行することで、引き続きラバーコーン10が転倒しているか判別を続ける。
なお、CPU50Aには、供給電圧を監視する機能が含まれることが一般的であることから、CPU50Aに供給される電圧の計測には、当該機能を用いればよい。
一方、ステップS680の判定処理が否定判定の場合には、図17に示した定期転倒判別処理を終了する。
これにより、通信ユニット40Aは、ラバーコーン10が転倒した際に測定された高レンジ加速度が事象判定閾値以下の場合であっても、ラバーコーン10が転倒したことを、状態判別時間で指定される間隔で定期的に判別することができる。
なお、タイマに設定する状態判別時間は、目的に応じて長さを調整すればよい。具体的には、ラバーコーン10が転倒したことを作業員にできるだけ早く報知したい場合には、状態判別時間を予め定めた標準時間より短く設定すればよい。また、通信ユニット40Aが通信ユニット40Aに内蔵された電池で動作している場合、状態判別時間を短く設定する程、CPU50Aの動作時間が増えるため、電池の消耗が早くなる。したがって、通信ユニット40Aでの電池交換の間隔をなるべく長くしたい場合には、状態判別時間を予め定めた標準時間より長く設定すればよい。
また、車両の通行量が増加する程、ラバーコーン10が転倒した場合に交通渋滞等を引き起こす度合いが高くなることから、例えば通信ユニット40Aに監視カメラを設けて車両の通行量を測定し、車両の通行量が多くなるに従って、状態判別時間を短く設定するようにしてもよい。
更に、風速が速くなる程、ラバーコーン10が転倒しやすくなることから、例えば通信ユニット40Aに風速計を設けて風速を測定し、風速が速くなるに従って、状態判別時間を短く設定するようにしてもよい。
<第2実施形態の変形例2>
図15に示した通信ユニット40Aの転倒再判別処理では、ステップS540の判定処理において、ラバーコーン10の傾斜角が転倒角度以下であれば、ラバーコーン10の状態属性を「異常」に設定した。
しかしながら、転倒再判別時間の設定によっては、ラバーコーン10がまだ動作状態にある場合にラバーコーン10の傾斜角を算出し、ラバーコーン10の状態属性を判別してしまうことがある。図16に示したように、ラバーコーン10が動作状態にある場合、ラバーコーン10の傾斜角は変動しやすいため、ラバーコーン10の状態属性を精度よく判別できないことがある。
図18は、図15に示した転倒再判別処理に代わる他の転倒再判別処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図18に示した転倒再判別処理が図15に示した転倒再判別処理と異なる点は、ステップS522及びS524が追加された点である。以降では、図15に示した転倒再判別処理と異なる点について説明する。
ステップS522において、CPU50Aは、ステップS520で取得した低レンジ加速度以前の予め定めた期間内に測定された低レンジ加速度を取得して、重力方向に沿ったZ軸方向の低レンジ加速度の分散値σ2を算出する。
ステップS524において、CPU50Aは、ステップS522で算出した低レンジ加速度の分散値σ2が、静止閾値未満であるか否かを判定する。低レンジ加速度の分散値σ2が静止閾値未満であれば、ラバーコーン10は静止状態にあるとみなすことができる。ラバーコーン10が静止状態にあれば、動作状態にある場合と比較して精度よくラバーコーン10の傾斜角を算出することができるため、ステップS530に移行する。そして、既に説明したステップS530〜S560を実行することで、ラバーコーン10の状態属性が「転倒」か「異常」かを判別する。
一方、低レンジ加速度の分散値σ2が静止閾値以上であれば、ラバーコーン10は動作状態にあるとみなすことができるため、状態属性の判別を一旦保留し、ステップS500に移行する。
このように図18に示す転倒再判別処理では、ラバーコーン10が動作状態にあるとみなせる場合には、ラバーコーン10が静止状態になるまで状態属性の判別を保留する。したがって、動作状態において、ラバーコーン10の傾斜角が一時的に転倒角度を超えるような状況が発生したが、最終的にラバーコーン10は転倒しなかったような場合であっても、ラバーコーン10の状態属性を精度よく判別することができる。
以上、各実施形態を用いて本発明について説明したが、本発明は各実施形態に記載の範囲に限定されない。本発明の要旨を逸脱しない範囲で各実施形態に多様な変更又は改良を加えることができ、当該変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
例えば、図8及び図12に示したように、通信ユニット40、40Aは、高レンジ加速度センサ41で事象判定閾値を超える加速度が測定された場合に、ラバーコーン10の状態属性を判別するようにしたが、これに限定されるものではない。低レンジ加速度センサ42で測定した加速度が予め定めた閾値を超えた場合に、ラバーコーン10の状態属性を判別するようにしてもよい。また、高レンジ加速度センサ41及び低レンジ加速度センサ42の少なくとも一方で測定された加速度が予め定めた閾値を超えた場合に、ラバーコーン10の状態属性を判別するようにしてもよい。
また、通信ユニット40、40Aは高レンジ加速度センサ41及び低レンジ加速度センサ42の2つの加速度センサを備えているが、これに限定されるものではない。例えば通信ユニット40、40Aは、低レンジ加速度センサ42だけを備えるようにしてもよい。具体的には、図8及び図12のステップS50で、高レンジ加速度を取得する代わりに低レンジ加速度センサ42から低レンジ加速度を取得し、ステップS60で、取得した低レンジ加速度と低レンジ加速度用に調整した衝突閾値とを比較して、ラバーコーン10に車両が衝突したか否かを判別すればよい。この場合、通信ユニット40、40Aに高レンジ加速度センサ41及び低レンジ加速度センサ42の2つの加速度センサを備える場合と比較して、通信ユニット40、40Aのコストを抑制することができる。
また、測定誤差が低レンジ加速度センサ42と同程度の高レンジ加速度センサ41が存在する場合、高レンジ加速度を用いてラバーコーン10の傾斜角が算出できるため、通信ユニット40、40Aは、高レンジ加速度センサ41だけを備えるようにしてもよい。
図8及び図12に示した通信ユニット40、40Aの状態属性判別処理では、ラバーコーン10が静止状態であるか否かを、低レンジ加速度の平均値に対する分散値σ2を用いて判定した(例えばステップS40)。しかし、ラバーコーン10の静止状態の判定は、例えばラバーコーン10が静止状態にある場合の重力方向に沿った静止基準加速度に対する分散値σ2を用いて判定してもよい。
ラバーコーン10を自由落下させた場合、落下中に測定される低レンジ加速度はほぼ0Gであるため、低レンジ加速度の平均値に対する分散値σ2は小さい値を示す傾向がある。したがって、場合によってはラバーコーン10が静止状態にあると誤判定してしまうことが考えられる。しかし、この場合であっても、低レンジ加速度の重力方向に沿った静止基準加速度に対する分散値σ2は、平均値に対する分散値σ2より変動量が少ないため、ラバーコーン10の状態属性を精度よく判別することができる。
また、静止基準加速度も、予め測定した値を用いるのではなく、状態属性判別処理の結果に応じて調整するようにしてもよい。例えば、第2実施形態で説明したように、状態判別時間をタイマに設定して定期的にラバーコーン10の状態属性を判別する場合、図12のステップS20において状態判別時間で表される間隔毎に低レンジ加速度を取得することになる。したがって、ステップS40の判定処理で、ラバーコーン10が静止状態にあると判定された際の低レンジ加速度の各軸方向における加速度の平均値を静止基準加速度として用いてもよい。
また、図1に示した通知システム1は、通信ユニット40又は通信ユニット40A、管理装置20、並びに携帯端末30を含むが、管理装置20の周囲のみで作業員が作業する場合、作業員は管理装置20から報知される情報でラバーコーン10の状態を把握することができる。したがって、この場合には、通信ユニット40又は通信ユニット40A、並びに管理装置20を含む通知システム1を構築してもよい。携帯端末30が不要となるため、通知システム1のコストを低減することができる。
更に言えば、管理装置20を用いずに、通信ユニット40又は通信ユニット40A、並びに携帯端末30を含む通知システム1を構築してもよい。この場合、通信ユニット40又は通信ユニット40Aは、状態属性を同報送信で送信する。状態属性を受信した他の通信ユニット40又は通信ユニット40Aが、受信した状態属性を更に同報送信で送信することで、状態属性を含む情報がラバーコーン10の設置される範囲の全域に伝達される。伝達されたラバーコーン10の状態属性は携帯端末30で受信され、携帯端末30からラバーコーン10の状態属性が作業員に報知される。
この場合、管理装置20が不要となるため、通知システム1のコストを低減することができる。また、ラバーコーン10の状態属性が携帯端末30に直接送信されるため、管理装置20を介してラバーコーン10の状態属性を受信する場合と比較して、ラバーコーン10で異常な振動又は傾きが発生してから作業員が把握するまでの遅延時間を短縮することができる。
また、図8及び図12に示した通信ユニット40、40Aの状態属性判別処理、図9に示した管理装置20の管理処理、及び図10に示した携帯端末30の報知処理に相当する処理をASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウエアで実現するようにしてもよい。この場合、ソフトウエアで実現する場合に比べて、処理の高速化が図られる。
各実施形態では、状態属性判別プログラムが通信ユニット40のROM50B、管理プログラムが管理装置20のROM60B、報知プログラムが携帯端末30のROM70Bにインストールされている形態を説明したが、これに限定されるものではない。
本発明に係る状態属性判別プログラム、管理プログラム、及び報知プログラムをコンピュータ読取可能な記憶媒体に記録した形態で提供してもよい。例えば、本発明に係る状態属性判別プログラム、管理プログラム、及び報知プログラムを、CD(Compact Disc)−ROM、およびDVD(Digital Versatile Disc)−ROM等の光ディスクに記録した形態、又はUSB(Universal Serial Bus)メモリおよびメモリカード等の半導体メモリ等に記録した形態で提供してもよい。また、本発明に係る状態属性判別プログラム、管理プログラム、及び報知プログラムを、通信回線を介して取得するようにしてもよい。