以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施形態について説明する。本明細書では、先に説明した構成と同一の構成には同一の符号を付し、説明を適宜省略することとする。
[三次元測定機の説明]
<全体構成>
図1は三次元測定機の全体構成図である。本実施形態では、門型移動の三次元測定機を例に説明する。三次元測定機は、Coordinate Measuring Machineと呼ばれることがある。Coordinate Measuring MachineはCMMと省略されることがある。
図1においてXを付した矢印線は、マシン座標系におけるX軸方向の正方向を表している。Yを付した矢印線は、マシン座標系におけるY軸方向の正方向を表している。Zを付した矢印線は、マシン座標系におけるZ軸方向の正方向を表している。
マシン座標系は、三次元測定機10に固有のマシン座標系の原点に基づいて定められる座標系である。後述するワーク座標系は、ワークに設定されたワーク座標系の原点に基づいて定められる座標系である。
図1に示した三次元測定機10は、ジョイスティック操作盤29を操作して、プローブヘッド24を移動させて、被測定物であるワークを測定する。なお、図1では、ワークの図示を省略する。ワークは、図10に符号450を付して図示する。ジョイスティック操作盤29は操作部の一態様である。
三次元測定機10は、架台12、テーブル14、右Yキャリッジ16R、左Yキャリッジ16L、Xガイド18、Xキャリッジ20、Zスピンドル22、及びプローブヘッド24を備えている。
架台12は、テーブル14の下面14Cを支持する。テーブル14は、定盤を適用可能である。テーブル14は、上面14Aに右Yキャリッジ16R、及び左Yキャリッジ16Lが立設される。右Yキャリッジ16Rは、テーブル14のX軸方向における一方の端部14Dに配置される。左Yキャリッジ16Lは、テーブル14のX軸方向における他方の端部14Eに配置される。
テーブル14のX軸方向における一方の端部14Dの側の側面14Bは、右Yキャリッジ16Rとの摺動面が形成される。右Yキャリッジ16Rにおけるテーブル14の側面14Bと対向する面は、ベアリングが設けられる。
テーブル14のX軸方向における他方の端部14Eの側の側面14Fは、左Yキャリッジ16Lとの摺動面が形成される。左Yキャリッジ16Lにおけるテーブル14の側面14Fと対向する面は、ベアリングが設けられる。
X方向におけるテーブル14の上面14AのX軸方向における一方の端部14Dは、右Yキャリッジ16Rとの摺動面が形成される。右Yキャリッジ16Rにおけるテーブル14の上面14AのX軸方向における一方の端部14Dと対向する面は、ベアリングが設けられる。
X方向におけるテーブル14の上面14AのX軸方向における他方の端部14Eは、左Yキャリッジ16Lとの摺動面が形成される。左Yキャリッジ16Lにおけるテーブル14の上面14AのX軸方向における他方の端部14Eと対向する面は、ベアリングが設けられる。なお、右Yキャリッジ16Rのベアリング、及び左Yキャリッジ16Lのベアリングの図示は省略する。
右Yキャリッジ16Rの上部と左Yキャリッジ16Lの上部とは、Xガイド18を用いて連結される。右Yキャリッジ16R、左Yキャリッジ16L、及びXガイド18は、門型フレーム26の構成要素である。門型フレーム26は、テーブル14を用いてY軸方向に沿って移動可能に支持されている。
テーブル14の側面14Bは、Y軸方向位置検出用リニアスケールが取り付けられている。Y軸方向位置検出用リニアスケールは、Y軸方向における右Yキャリッジ16Rの位置を検出する。Y軸方向位置検出用リニアスケールは、Y軸方向における右Yキャリッジ16Rの位置を表す検出信号を出力する。Y軸方向位置検出用リニアスケールは、マシン座標系におけるY軸方向の座標値を出力する。
Xガイド18は、Xキャリッジ20が取り付けられている。Xガイド18はXキャリッジ20との摺動面18Aを有している。Xキャリッジ20はXガイド18の摺動面18Aと対向する面にベアリングが設けられている。Xキャリッジ20は、Xガイド18を用いて、X軸方向に沿って移動可能に支持されている。なお、Xキャリッジ20のベアリングの図示は省略する。
Xガイド18は、X軸方向位置検出用リニアスケールが取り付けられている。X軸方向位置検出用リニアスケールは、X軸方向におけるXキャリッジ20の位置を検出する。X軸方向位置検出用リニアスケールは、X軸方向におけるXキャリッジ20の位置を表す検出信号を出力する。X軸方向位置検出用リニアスケールは、マシン座標系におけるX軸方向の座標値を出力する。
Xキャリッジ20にはZ軸方向案内用のベアリングが内蔵されている。Z軸方向案内用のベアリングに沿ってZスピンドル22が取り付けられている。Zスピンドル22は、Z軸方向に移動自在に支持されている。なお、Z軸方向案内用のベアリングの図示は省略する。
Xキャリッジ20は、Z軸方向位置検出用リニアスケールが取り付けられている。Z軸方向位置検出用リニアスケールは、Z軸方向におけるZスピンドル22の位置を検出する。Z軸方向位置検出用リニアスケールは、Z軸方向におけるZスピンドル22の位置を表す検出信号を出力する。Z軸方向位置検出用リニアスケールは、マシン座標系におけるZ軸方向の座標値を出力する。
なお、X軸方向位置検出用リニアスケール、Y軸方向位置検出用リニアスケール、及びZ軸方向位置検出用リニアスケールの図示は省略する。X軸方向位置検出用リニアスケール、Y軸方向位置検出用リニアスケール、及びZ軸方向位置検出用リニアスケールは、図4に示す測定部142の構成要素である。
Zスピンドル22は、下端にプローブヘッド24が取り付けられている。プローブヘッド24は、プローブ24A、スライタス24B、及び接触子24Cを備えている。プローブ24Aの先端はスライタス24Bが取り付けられる。スライタス24Bの先端は接触子24Cが取り付けられる。
プローブヘッド24は無段階位置決め機構を備えたプローブヘッドである。プローブヘッド24は、五軸同時制御プローブヘッドである。プローブヘッド24は、第一回転軸24D、又は第二回転軸24Eの周りにプローブ24Aを回転させる回転駆動部を備えている。回転駆動部の図示は省略する。回転駆動部は、図4に示す駆動部140の構成要素である。
プローブヘッド24は、第一回転軸24D、又は第二回転軸24Eの周りの回転動作のみを用いて、プローブ24Aを回転させることが可能である。これにより、より速い測定が可能である。ここでいう測定は、プロービング、又は座標値の決定と読み替えてもよい。
三次元測定機10は、Xキャリッジ20を駆動するXキャリッジ駆動部、門型フレーム26を駆動するYキャリッジ駆動部、及びZスピンドル22を駆動するZスピンドル駆動部を備えている。
Xキャリッジ駆動部、Yキャリッジ駆動部、及びZスピンドル駆動部の図示は省略する。Xキャリッジ駆動部、Yキャリッジ駆動部、及びZスピンドル駆動部は、図4に示す駆動部140の構成要素である。駆動部140は、操作部から出力された移動指令信号に基づいてプローブを駆動する駆動部の一態様である。
三次元測定機10は、コントローラ28、ジョイスティック操作盤29、及びコンピュータ32を備えている。コントローラ28は、三次元測定機10の本体部10Aの測定部と電気接続される。なお、図1では、測定部の図示を省略する。測定部は図4に符号142を付して図示する。
コントローラ28は、ジョイスティック操作盤29と電気接続される。コントローラ28は、ジョイスティック操作盤29から送信された移動指令信号を受信する。移動指令信号の一例として、プローブヘッド24を移動させる際のプローブヘッド24の移動方向、及びプローブヘッド24の移動速度が含まれる移動指令信号が挙げられる。
コントローラ28は、ジョイスティック操作盤29から送信された移動指令信号に基づいて、Xキャリッジ20を駆動する駆動指令、Yキャリッジ駆動部を駆動する駆動指令、及びZスピンドル駆動部を駆動する駆動指令を生成する。
コントローラ28は、Xキャリッジ20を駆動するXキャリッジ駆動部と電気接続される。コントローラ28は、Xキャリッジ駆動部へ駆動指令を送信する。
コントローラ28は、門型フレーム26を駆動するYキャリッジ駆動部と電気接続される。コントローラ28は、Yキャリッジ駆動部へ駆動信号を送信する。
コントローラ28は、Zスピンドル22を駆動するZスピンドルと電気接続される。コントローラ28は、Zスピンドルへ駆動信号を送信する。
コントローラ28は、測定部から送信された測定結果を表す電気信号を受信する。コントローラ28は、測定部を用いて測定されたワークの測定位置における座標値の情報を取得する。座標値の情報は、X軸方向の座標値、Y軸方向の座標値、及びZ軸方向の座標値が含まれる。
ジョイスティック操作盤29は、ジョイスティック、及び複数の操作ボタンを備えている。ジョイスティック操作盤29は、操作者が操作する操作部である。図1では、ジョイスティック、及び複数の操作ボタンの図示は省略する。ジョイスティック操作盤29の詳細は後述する。
コンピュータ32は、ソフトウエア32Aがインストールされる。ソフトウエア32Aは、ジョイスティック操作盤29を用いた測定方法の手順が記述された測定プログラムが含まれる。また、ソフトウエア32Aは、測定部142から得られた測定結果を確認するプログラムが含まれる。
コンピュータ32は、図示しない入力インターフェースを介してコントローラ28と電気接続される。コンピュータ32は、コントローラ28から送信されるプログラムの実行命令に基づいて、ソフトウエア32Aに含まれる各種プログラムを実行することが可能である。コンピュータ32は、コントローラ28から送信されるプログラムの送信命令に基づいて、ソフトウエア32Aに含まれる各種プログラムをコントローラ28へ送信することが可能である。
コンピュータ32は、図示しない操作部、及び表示部を備えていてもよい。操作部の例として、キーボード、及びマウス等が挙げられる。表示部の例として、モニタ装置が挙げられる。モニタ装置としてタッチパネル方式のディスプレイを適用して、操作部、及び表示部を兼用してもよい。
コントローラ28とジョイスティック操作盤29との電気信号の伝送、及びコントローラ28とコンピュータ32との電気信号の伝送は、有線方式でもよいし、無線形式でもよい。電気信号の伝送は、公知の通信プロトコルを適用可能である。
<プローブヘッドの回転動作の説明>
図2はプローブヘッドの第一回転軸の周りの回転動作を示すプローブヘッドの拡大図である。プローブ24Aは、第一回転軸24Dに対して、垂直角からマイナスθの範囲、及び垂直角からプラスθの範囲で、無段階に移動させることが可能である。
例えば、接触子24Cの位置が最下点の位置をプローブ24Aが0度の位置とした場合、プローブヘッド24は、第一回転軸24Dを中心として、マイナス115度以上、プラス115度以下の範囲で回転移動が可能である。
図3はプローブヘッドの第二回転軸の周りの回転動作を示すプローブヘッドの拡大図である。
プローブ24Aは、第二回転軸24Eに対して、水平角からマイナスφの範囲、及び水平角からプラスφの範囲で、無段階に移動させることが可能である。例えば、プローブヘッド24は、第二回転軸24Eを中心として、マイナス180度以上、プラス180度以下の範囲で回転移動が可能である。
<コントローラの詳細な説明>
図4はコントローラの構成例を示すブロック図である。図4に示したコントローラ28は、システム制御部102を備えている。システム制御部102は、コントローラ28の全体制御部として機能する。システム制御部102は、測定データ記憶部120等の記憶素子へのデータの書き込み、及び記憶素子からのデータの読み出しを制御するメモリコントローラとして機能する。
システム制御部102は、CPU、及びメモリを含んでいてもよい。CPUは、中央処理装置を表す英語表記である、Central Processing Unitの省略語である。システム制御部102は、一つ以上のプロセッサーを含んでいてもよい。システム制御部102は、電気回路を含んでいてもよい。
メモリは、読み取り専用の記憶素子であるROM、並びに書き込み、及び読み出しが可能な記憶素子であるRAMの少なくともいずれかを含んでいてもよい。ROMはRead Only Memoryの省略語である。RAMは、Random Access Memoryの省略語である。
コントローラ28は、プログラム実行部104を備えている。プログラム実行部104は、図1に示したコンピュータ32から任意のプログラムを読み出し、コンピュータ32から読み出したプログラムを実行する。
コントローラ28は、信号入力部106を備えている。信号入力部106は、ジョイスティック操作盤29から送信された移動指令信号、及び操作指令信号を受信する。信号入力部106は、システム制御部102を介して、受信した移動指令信号、及び操作指令信号を各部へ送信する。
コントローラ28は、座標系追従モード設定部108、及び座標変換部110を備えている。座標系追従モード設定部108は、ジョイスティック操作盤29の操作をワーク座標系に追従させるか否かを設定する。
座標系追従モード設定部108を用いて、ジョイスティック操作盤29の操作をワーク座標系に追従させる、ワーク座標系追従モードに設定された場合、コントローラ28は、マシン座標系を用いて表されたプローブ24Aの移動方向、及びプローブ24Aの移動速度を座標変換部110へ送信する。座標系追従モード設定部108は、マシン座標系に基づく測定をワーク座標系に基づく測定へ切り替える切替部の一態様である。
座標変換部110は、マシン座標系を用いて表されたプローブ24Aの移動方向、及びプローブ24Aの移動速度を、ワーク座標系を用いて表されたプローブ24Aの移動方向、及びプローブ24Aの移動速度へ変換する。座標変換部110は、変換部の一態様である。
コントローラ28は、変換行列記憶部112を備えている。変換行列記憶部112は、マシン座標系からワーク座標系への変換関係を規定した変換行列が記憶される。三次元座標系の変換を表す変換行列の例として、三行三列行列式が挙げられる。座標変換部110は、変換行列記憶部112から変換行列を読み出して、マシン座標系からワーク座標系への変換を実行する。
コントローラ28は、駆動指令生成部114、及び駆動指令出力部116を備えている。駆動指令生成部114は、図1に示したXキャリッジ20を駆動する駆動指令、右Yキャリッジ16R、及び左Yキャリッジ16Lを駆動する駆動指令、Zスピンドル22を駆動する駆動指令、並びに回転駆動部を駆動する駆動指令を生成する。
駆動指令生成部114を用いて生成された駆動指令は、駆動指令出力部116を介して三次元測定機10の本体部10Aに備えられる駆動部140へ送信される。駆動部140は、Xキャリッジ駆動部、Yキャリッジ駆動部、Zキャリッジ駆動部、及び回転駆動部が含まれる。
コントローラ28は、測定データ入力部118、及び測定データ記憶部120を備えている。測定データ入力部118は、三次元測定機10の本体部10Aに備えられる測定部142から送信される測定データを取得する。
測定部142は、X軸方向位置検出用リニアスケール、Y軸方向位置検出用リニアスケール、及びZ軸方向位置検出用リニアスケールが含まれる。すなわち、測定データ入力部118は、各測定位置におけるX軸方向の座標値、Y軸方向の座標値、及びZ軸方向の座標値を取得する。
測定データ入力部118を用いて取得された測定データは、測定データ記憶部120へ記憶される。測定データ記憶部120へ記憶された測定データは、図示しないデータ通信部を介して、図1に示したコンピュータ32へ送られる。
コントローラ28は、ワーク座標系設定部121を備えている。ワーク座標系設定部121は、ワーク座標系の設定指示に応じて、測定対象物に対してワーク座標系を設定する。ワーク座標系設定部121を用いたワーク座標系の設定の詳細は後述する。
コントローラ28は、電圧検出部122、電圧判定部124、プロービングモード切替部126、パラメータ設定部128、サーチ距離判定部130、エラーメッセージ表示部132、及び移動距離判定部134を備えている。
電圧検出部122、電圧判定部124、プロービングモード切替部126、パラメータ設定部128、サーチ距離判定部130、エラーメッセージ表示部132、及び移動距離判定部134は、第二実施形態において詳細に説明する。
図4では、コントローラ28を構成する各部を機能別に列挙している。図4に示した各部は適宜、統合、分離、兼用、又は省略が可能である。コントローラ28は、一つ以上のプロセッサーを含んでいてもよい。コントローラ28は、電気部品を用いて構成される電気回路が含まれていてもよい。
<ジョイスティック操作盤の構成例>
図5はジョイスティック操作盤の斜視図である。図5に示したジョイスティック操作盤29は、一つのジョイスティック160を備えている。ジョイスティック160は、図1に示したプローブ24Aの移動方向、及び移動速度を表す移動指令電圧を生成する。
図5に示したジョイスティック160が倒された場合、ジョイスティック160が倒された方向は、図1に示したプローブ24AのXY平面内における移動方向とされる。例えば、図5に+Xを付した矢印線が向く方向へジョイスティック160が倒された場合、ジョイスティック160は、図1に示したプローブ24AをX軸方向のプラス方向へ移動させる移動指令電圧を生成する。
図5に示した−Xを付した矢印線は、X軸方向のマイナス方向を表している。+Yを付した矢印線は、Y軸方向のプラス方向を表している。−Yを付した矢印線は、Y軸方向のマイナス方向を表している。
ジョイスティック160を起立させた姿勢を基準とした、ジョイスティック160を倒す角度の大きさは、図1に示したプローブ24Aの移動速度の大きさを表している。ジョイスティック160を起立させた姿勢とは、ジョイスティック160の非操作の姿勢である。図5に示したジョイスティック160の非操作の場合は、図1に示したプローブ24Aの移動速度はゼロとされる。
ジョイスティック160を倒す角度を相対的に大きくした場合、図1に示したプローブ24Aの移動速度は相対的に大きくなる。一方、図5に示したジョイスティック160を倒す角度を相対的に小さくした場合、図1に示したプローブ24Aの移動速度は相対的に小さくなる。
ジョイスティック160は、図5に示した四本の矢印線が示す方向に対して斜め方向に操作してもよい。例えば、+Xを付した矢印線、及び+Yを付した矢印線に対して斜め方向にジョイスティック160を操作した場合、図1に示したプローブ24Aは、X軸方向のプラス方向の成分、及びY軸方向のプラス方向の成分を有する方向へ移動する。
ジョイスティック160を回転させた場合、ジョイスティック160は、図1に示したプローブヘッド24をZ軸方向へ移動させる移動指令電圧を出力する。例えば、+Zを付した矢印線が向く方向へ、図5に示したジョイスティック160を回転させた場合、ジョイスティック160は、図1に示したプローブヘッド24をZ軸方向のプラス方向へ移動させる移動指令電圧を出力する。図5に示した−Zを付した矢印線はZ軸方向のマイナス方向を表している。
ジョイスティック160の回転角度の大きさは、図1に示したプローブ24AのZ軸方向への移動速度の大きさを表している。ジョイスティック160の非回転状態の場合は、図1に示したプローブ24AのZ軸方向への移動速度はゼロとされる。
ジョイスティック操作盤29は、複数の操作ボタン162を備えている。各操作ボタン162は、図1に示したプローブ24Aの移動に関する機能が割り付けられている。操作ボタン162に割り付けられる機能の例として、ティーチング動作機能、原点復帰機能、及びステップ送り機能などが挙げられる。
図1に示したプローブヘッド24の回転操作は、ジョイスティック操作盤29の操作モードを回転操作モードに切り替えて、ジョイスティック160を操作することで実現可能である。図1に示したプローブヘッド24の回転操作は、操作ボタン162を操作することで実現してもよい。
図5には一つのジョイスティック160を備えたジョイスティック操作盤29を例示したが、ジョイスティック操作盤29は、複数のジョイスティックを備えていてもよい。複数のジョイスティックを備える例として、X軸方向、及びY軸方向操作用の第一ジョイスティック、及びZ軸方向操作用の第二ジョイスティックを備える例が挙げられる。
図6はジョイスティックの概略構成を示すブロック図である。ジョイスティック160は、電圧出力部160A、及び角度検出部160Bを備えている。
電圧出力部160Aは、ジョイスティック160の操作量に応じた電圧を出力する。操作量とは、ジョイスティック160が倒される角度の大きさ、及びジョイスティック160を回転させる角度の大きさを含む概念である。
電圧出力部160Aから出力されたアナログ信号は、アナログデジタル変換器170を用いてデジタル信号に変換される。アナログデジタル変換器170から出力されたデジタル信号は、プロセッサー172へ送信される。
角度検出部160Bは、ジョイスティック160が倒される方向、又はジョイスティック160を回転させる方向を検出する。角度検出部160Bから出力される信号は、プロセッサー172へ送信される。
プロセッサー172は、X軸方向の速度vx、Y軸方向の速度vy、及びZ軸方向の速度vzを表す移動指令電圧を出力する。プロセッサー172から出力される移動指令電圧は、下記の式1を用いて表される。
上記の式1を用いて表される移動指令電圧は、マシン座標系を用いて表されている。
[ワーク座標系の設定]
次に、ワーク座標系の設定例について説明する。図7はワーク座標系の設定の模式図である。本実施形態に示すワーク座標系の設定は、空間補正、原点設定、及び基準軸設定を含んで構成される。以下に、空間補正、原点設定、及び基準軸設定の順に説明をする。
<空間補正>
空間補正では、ワーク401における任意の平面400が測定される。平面400の測定では、まず、図1に示したプローブ24Aの姿勢を、プローブ24A、及びスライタス24Bがマシン座標系のZ軸に平行となる姿勢とする。
次に、接触子24Cを、図7に示した平面400の上の異なる三つの位置に接触させて、平面400の上の異なる三つの位置のマシン座標系における座標値を取得する。平面400の上の異なる三つの位置のマシン座標系における座標値を用いて平面400が特定される。平面400の測定によって、平面400とZ0軸の交点402、及び平面400の法線ベクトル404が決められる。
図7に実線を用いて図示したX0Y0Z0座標系はマシン座標系である。Z0軸は、マシン座標系のZ軸である。Z0軸を平面400の法線ベクトル404と平行となる向きに回転させる。そうすると、マシン座標系は、破線を用いて図示されたX1Y1Z1座標系に変換される。X0Y0Z0座標系をX1Y1Z1座標系に変換する処理が空間補正である。
<原点設定>
図8はワーク座標系の設定における原点設定の説明図である。原点設定では、図7に示したX1Y1Z1座標系の原点406をZ0軸に沿って平行移動させて、平面400とZ0軸の交点402へ移動させる。
そうすると、X1Y1Z1座標系は、長破線を用いて図示されたX2Y2Z2座標系に変換される。以上の処理を経て、ワーク座標系のZ軸の方向、及びワーク座標系のZ軸の原点が決定される。
次に、図8に示した平面400における穴410が測定される。穴410の測定に代わり、平面400における任意の位置を測定してもよい。図8に示した穴410を測定して、穴410の中心412を求める。交点402を平面400に対して平行移動させて、交点402を穴410の中心412の位置に移動させる。
図8に実線を用いて図示されたX2Y2Z2座標系は、破線を用いて図示されたX3Y3Z3座標系に変換される。以上の処理を経て、ワーク座標系の原点は、X3Y3Z3座標系の原点である、穴410の中心412の位置に決定される。
<基準軸設定>
図9はワーク座標系の設定における基準軸設定の説明図である。基準軸設定では、平面400における穴420が測定される。穴420の測定に代わり、穴410の中心412とは異なる、平面400における任意の位置を測定してもよい。
穴420を測定して、穴420の中心422の位置を求める。次に、X3軸が穴420の中心422の位置を通る位置までX3軸、及びY3軸を回転させる。αはX3軸を回転させる角度を表している。
図9に示したX4軸はワーク座標系のX軸とされる。また、Y4軸はワーク座標系のY軸とされる。更に、図8に示したZ3軸は、ワーク座標系のZ軸とされる。なお、本実施形態に示したワーク座標系の設定方法は一例であり、ワーク座標系の設定方法は、三次元測定機に適用可能な他の方法を適用してもよい。ここで説明したワーク座標系の設定は、図4に示したワーク座標系設定部121を用いて実行可能である。
<変換行列の説明>
ワーク座標系追従モードが設定されていない場合、マシン座標系からワーク座標系への変換行列は、以下の式2のとおりである。式2に示した変換行列は、第二行列の一態様である。
図7に示したZ1軸のZ0軸に対する傾きが5度の場合、上記の式2の変換行列は、以下の式3の変換行列に更新される。
上記式3は、Z1軸のZ0軸に対する傾きがθの場合、以下の式4のとおりである。
図8に示したZ3軸周りのXY平面の回転は、回転の角度をαとして、以下の式5を用いて表される。
図9に示したX4軸とX3軸とのなす角度を5度とした場合、ワーク座標系へのマシン座標系からの変換行列は、以下の式6の変換行列に更新される。以下の式6を用いて変換されるワーク座標系は、X4軸をX軸とし、Y4軸をY軸とし、図8に示したZ3軸をZ軸とする座標系である。
上記の式6は、角度θ、及び角度αを用いて、以下の式7を用いて表される。
上記の式7に示した変換行列は第一行列の一態様である。上記の式6に示した変換行列は、第一行列の一態様における具体例である。
図7から図9を用いて説明したワーク座標系が設定された場合、マシン座標系とワーク座標系との変換関係を表す変換行列が、図4に示した変換行列記憶部112に記憶される。変換行列記憶部112は、ワークの測定対象面と変換行列とを関連付けして、変換行列を記憶する。
座標変換部110は、ワークの測定対象面をインデックスとして、変換行列記憶部112からワークの測定対象面に対応する変換行列の読み出しが可能である。
[第一実施形態に係る測定方法の説明]
<概要>
図10はプローブの移動を模式的に示した模式図である。図10は、テーブル14に載置されたワーク450の平面452を測定している状態が模式的に図示されている。具体的には、図10は、平面452に形成された穴454へプローブ24Aを挿入する状態を図示している。
図10に破線を用いて図示したZスピンドル22、及びプローブヘッド24は、動作開始の位置から、接触子24Cが穴454へ挿入される位置までの中間状態を表している。実線を用いて図示したZスピンドル22、及びプローブヘッド24は、接触子24Cが穴454の任意の位置へ挿入された状態を表している。
本実施形態に示した測定方法は、ワーク450に対してワーク座標系が設定された場合、ジョイスティック操作盤29の測定モードのワーク座標系追従モードへの切り替えが可能となる。ワーク座標系追従モードは、被測定面である平面452をマシン座標系のXY平面に見立て、かつ、平面452の法線をマシン座標系のZ軸に見立てて、ジョイスティック操作盤29を操作することが可能である。
ジョイスティック操作盤29の測定モードがマシン座標系追従モードの場合、水平面に対して傾斜しているワーク450の測定は、ジョイスティック操作盤29のジョイスティック160を倒す操作、及びジョイスティック160を回転させる操作を組み合わせた複雑な操作が必要となる。
これに対してワーク座標系追従モードの場合、マシン座標系におけるジョイスティック操作盤29の操作が、ワーク座標系におけるプローブ24Aの動作に変換される。操作者は、ワーク450の平面452をマシン座標系のXY平面に見立て、かつ、平面452の法線をマシン座標系のZ軸に見立てて、ジョイスティック操作盤29を操作することが可能となる。プローブヘッド24の回転は、ワーク座標系におけるZ軸方向とマシン座標系におけるZ軸との変換関係を利用して自動実行してもよいし、手動で実行してもよい。
<測定手順>
図11は第一実施形態に係る測定方法の手順を示したフローチャートである。図11に手順を示した測定方法は、図1に示したコンピュータ32に搭載されている測定プログラムを実行することにより実現してもよい。
測定モード切替判定工程S10では、図4に示した座標系追従モード設定部108は、測定モードがワーク座標系追従モードに切り替える操作がされたか否かを判定する。測定モードを切り替える操作の例として、図1に示したコンピュータ32に搭載されたアプリケーションソフトウエアを用いて、ワーク座標系追従モードボタンを操作者が押す例が挙げられる。
図11の測定モード切替判定工程S10において、図4に示した座標系追従モード設定部108が、測定モードをワーク座標系追従モードに切り替える操作がされていないと判定した場合は、No判定となる。No判定の場合は、図11のマシン座標系追従モード設定工程S12へ進む。
マシン座標系追従モード設定工程S12では、図4に示した座標変換部110は、変換行列を非変更として、上記の式2を用いて表されたデフォルトの変換行列を設定する。デフォルトの変換行列は、行列の初期値の一態様である。マシン座標系追従モード設定工程S12において、図4に示した座標変換部110が、上記の式2を用いて表された変換行列を設定した後に、操作判定工程S20へ進む。
一方、測定モード切替判定工程S10において、図4に示した座標系追従モード設定部108が、測定モードをワーク座標系追従モードに切り替える操作がされたと判定した場合は、Yes判定となる。Yes判定の場合は、図11のワーク座標系追従モード設定工程S14へ進む。測定モード切替判定工程S10は、切替工程の一態様である。
ワーク座標系追従モード設定工程S14では、図4に示した座標系追従モード設定部108は、ワーク座標系追従モードを設定する。図11のワーク座標系追従モード設定工程S14において、図4に示した座標系追従モード設定部108がワーク座標系追従モードを設定した後に、図11の変換行列取得工程S16へ進む。
変換行列取得工程S16では、図4に示した座標変換部110は、図10に示したワーク450の平面452をインデックスとして、図11に示した変換行列記憶部112に記憶されている、図10に示したワーク450の平面452に対応する変換行列を取得する。
図11の変換行列取得工程S16において、図4に示した座標変換部110が、変換行列を取得した後に、図11の変換行列変更工程S18へ進む。変換行列変更工程S18では、図4に示した座標変換部110は、デフォルトの変換行列を、図11の変換行列取得工程S16において取得した変換行列へ変更する。
変換行列変更工程S18において、図4に示した座標変換部110が、変換行列を変更した後に、図11の操作判定工程S20へ進む。操作判定工程S20から測定終了判定工程S28までの各工程は、図10に示したワーク450を測定する工程の構成要素である。変換行列取得工程S16、及び変換行列変更工程S18は、変換工程の構成要素の一例である。
図11の操作判定工程S20は、図10に示したジョイスティック操作盤29を操作者が操作したか否かが判定される。図11の操作判定工程S20において、図4に示した座標変換部110が、図10に示したジョイスティック操作盤29が操作されていないと判定した場合は、No判定となる。No判定の場合、座標変換部110は、図11の操作判定工程S20がYes判定となるまで、操作判定工程S20を繰り返し実行する。
一方、図11の操作判定工程S20において、図4に示した座標変換部110が、図10に示したジョイスティック操作盤29が操作されたと判定した場合は、Yes判定となる。Yes判定の場合は、図11の移動指令電圧取得工程S22へ進む。
移動指令電圧取得工程S22では、図4に示した座標変換部110は、図10に示したジョイスティック160から出力される各軸の移動指令電圧を取得する。各軸の移動指令電圧は、上記の式1を用いて表される。
図11の移動指令電圧取得工程S22において、図4に示した座標変換部110が、各軸の移動指令電圧を取得した後に、図11の移動指令電圧変換工程S24へ進む。
移動指令電圧変換工程S24では、図4に示した座標変換部110は、図11の変換行列変更工程S18において更新された変換行列、又はマシン座標系追従モード設定工程S12において設定されている変換行列を用いて、各軸の移動指令電圧を、ワーク座標系追従モード、又はマシン座標系追従モードに応じた各軸の移動指令電圧へ変換する。移動指令電圧は移動指令信号の一態様である。
変換行列が上記の式6を用いて表される場合の各軸の移動指令電圧(xv1,yv1,zv1)は、以下の式8を用いて表される。また、変換行列が上記の式2を用いて表される場合は、以下の式8の変換行列は、上記の式2の変換行列が適用される。
図11の移動指令電圧変換工程S24において、ワーク座標系追従モード、又はマシン座標系追従モードに応じた各軸の移動指令電圧が生成された後に、駆動指令出力工程S26へ進む。駆動指令出力工程S26では、図4に示した座標変換部110は、ワーク座標系追従モード、又はマシン座標系追従モードに応じた各軸の移動指令信号を駆動指令生成部114へ送信する。
駆動指令生成部114は各軸の駆動指令を生成し、駆動指令出力部116を介して、駆動部140へ各軸の駆動指令を送信する。
図11の駆動指令出力工程S26において、図4に示した駆動指令出力部116が、各軸の駆動指令を出力した後に、図11の測定終了判定工程S28へ進む。測定終了判定工程S28では、システム制御部102は、図10に示したワーク450の平面452の測定が終了したか否かを判定する。
図11の測定終了判定工程S28では、図10に示したジョイスティック160が、一定期間の非操作の場合に測定が終了したと判定してもよい。図11の測定終了判定工程S28では、測定終了命令が入力された場合に測定が終了したと判定してもよい。
図11の測定終了判定工程S28において、図4に示したシステム制御部102が、測定が終了していないと判定した場合は、No判定となる。No判定の場合は、操作判定工程S20に戻り、測定終了判定工程S28における判定がYes判定となるまで、操作判定工程S20から測定終了判定工程S28までの各工程を繰り返し実行する。
操作判定工程S20から測定終了判定工程S28までの各工程は、駆動工程の構成要素の一例である。
一方、測定終了判定工程S28において、図4に示したシステム制御部102が、測定が終了したと判定した場合は、Yes判定となる。Yes判定の場合は、図11の変換行列初期化工程S30へ進む。
変換行列初期化工程S30では、図4に示した座標変換部110は、変換行列を初期化する。変換行列の初期化では、図11の移動指令電圧変換工程S24に用いられる変換行列にデフォルトの変換行列である、上記の式2に示した変換行列を設定する。
図11のマシン座標系追従モード設定工程S12において、図4に示した座標変換部110がマシン座標系追従モードを設定した場合は、図11の変換行列初期化工程S30は省略してもよい。
変換行列初期化工程S30において、変換行列を初期化する操作の例として、図1に示したコンピュータ32に搭載されたアプリケーションソフトウエアを用いて、ワーク座標系追従モードクリアボタンを操作者が押す例が挙げられる。
変換行列初期化工程S30において、図4に示した座標変換部110が、変換行列の初期化を実行した後に、図4に示したシステム制御部102は、測定方法を終了する。
[作用効果]
上記の如く構成された三次元測定機によれば、ワーク座標系追従モードとマシン座標系追従モードとを選択的に切り替える座標系追従モード設定部108を備える。これにより、ワーク450の形状、及び操作者の能力等の測定条件に応じて、ワーク座標系追従モードとマシン座標系追従モードとの選択が可能となる。
また、ワーク座標系追従モードが設定されると、マシン座標系からワーク座標系への変換関係を表す変換行列が読み出され、ジョイスティック160から出力されるマシン座標系における移動指令信号が、ワーク座標系における移動指令信号に変換される。
これにより、操作者は、ワーク座標系が設定されている被測定面を、マシン座標系におけるXY平面とし、かつ、被測定面の法線をマシン座標系におけるZ軸として、ジョイスティック160を操作することが可能である。
[第二実施形態に係る測定方法の説明]
図12は第二実施形態に係る測定方法を模式的に示した模式図である。以下、第二実施形態における第一実施形態と共通する点についての説明は適宜省略し、第二実施形態における第一実施形態と相違する点について詳細に説明する。
<課題の説明>
図12に示したジョイスティック操作盤29を用いて、プローブ24Aを一定の低速で移動させて、図10に示したワーク450を測定する場合、ジョイスティック160の操作状態に応じて、プローブ24Aの移動速度が変動してしまい、プローブヘッド24の一定の低速の移動が困難である。
例えば、異なる操作者が同じ操作を実行する場合、操作者の違いに起因して、ジョイスティック160の操作状態が相違することがありうる。一人の操作者が複数回の同じ操作を実行する場合、操作者の状況に起因して、複数回のジョイスティック160の操作状態が相違することがありうる。
ジョイスティック160の操作状態の相違は、プローブ24Aの移動速度のばらつきとなる。プローブ24Aの移動速度のばらつきは、ワーク450の測定結果におけるばらつきの原因となりうる。
プロービングの際のプローブ24Aの移動速度は、ばらつきが少なく高精度にワーク450を測定する上で重要な要素である。ジョイスティック操作盤29を用いて手動測定を行う場合は、プローブ24Aを一定の速度で移動させることが好ましい。
本実施形態では、ジョイスティック160のトリガ操作が実行された場合に、オートプロービングモードに切り替えられる。オートプロービングモードでは、プローブ24Aは一定速度であり、かつ、低速で移動する。
<ジョイスティックのトリガ操作>
図12は、ジョイスティック160のトリガ操作が模式的に図示されている。図12に示したジョイスティック160のトリガ操作は、ジョイスティック160を叩く操作である。図12に示した矢印線は、ジョイスティック160が叩かれた方向を表している。また、一点鎖線を用いて図示したジョイスティック160は、叩かれた状態のジョイスティック160を表している。
ジョイスティック160を叩く操作とは、ジョイスティック160を急激に操作し、ジョイスティック160を操作した状態を非保持とする操作である。ジョイスティック160を叩く操作は、ジョイスティック160を任意の方向への最大ストロークの操作としてもよい。
ジョイスティック160のトリガ操作を、図4に示したコントローラ28が検知した場合、コントローラ28は、プローブヘッド24を予め決められたプロービング速度で移動させる移動指令信号を駆動部140へ送信する。プロービング速度は、コントローラ28のファームウエアで保持している。オペレータは、プロービング速度をソフトウエアから変更することができる。
プローブ24Aの移動方向は、ジョイスティック160が叩かれた方向としてもよい。プローブ24Aの移動方向は、X軸方向、又はY軸方向のうち、ジョイスティック160が叩かれた方向に近い方向としてもよい。
図10に示した穴454の内径の円における四点を測定する場合、先ず、穴454に接触子24Cを挿入した状態でプローブヘッド24を停止させる。次に、ジョイスティック160を互いに異なる四方向に、一回ずつ叩く操作を実行する。ジョイスティック160を叩く四方向は、プラスX軸方向、マイナスX軸方向、プラスY軸方向、及びマイナスY軸方向が好ましい。ここでいう一回の叩く操作は、サンプリング期間内に複数回の叩く操作が行われたが、コントローラ28が一回の叩く操作と判定した場合が含まれる。
本実施形態には、オートプロービングの例として穴の測定を例示したが、測定位置に応じてトリガ操作を実行することにより任意の形状の測定が可能である。
図4に示したコントローラ28は、図10に示したジョイスティック160のトリガ操作を検知すると、ジョイスティック160の現在位置から、ジョイスティック160を倒した方向について、プロービングの目標位置を設定する。ジョイスティック160の現在位置の座標を(xc,yc,zc)とし、プロービングの目標位置の座標を(xt,yt,zt)とし、ジョイスティック160を叩く方向の単位ベクトルを(i,j,k)とし、プローブ24Aのサーチ距離をDshとし、接触子24Cの半径をRpbとした場合、目標位置の座標(xt,yt,zt)は、以下の式9を用いて表される。
ここで、プローブ24Aのサーチ距離Dshは、予め決められた値をコントローラ28が保持してもよい。プローブ24Aのサーチ距離Dshは、測定対象に応じて、コントローラ28が保持した値を変更可能としてもよい。プローブ24Aのサーチ距離Dshのデフォルト値の例として、50ミリメートルが挙げられる。
プロービング速度は、予め決められた値をコントローラ28が保持してもよい。プロービング速度は、コントローラ28が保持した値を変更した値としてもよい。プロービング速度のデフォルト値の例として、3ミリメートル毎秒以上5ミリメートル毎秒以下の速度が挙げられる。
プロービング速度は、測定速度の5パーセント以上50パーセント以下の速度が好ましい。測定速度は、三次元測定機を用いて自動測定が実行されるとした場合に適用されるプローブの移動速度を適用可能である。測定速度の一例として15ミリメートル毎秒が挙げられる。
測定速度が15ミリメートル毎秒の場合、プロービング速度は0.75ミリメートル毎秒以上7.5ミリメートル毎秒以下とすることが可能である。
ジョイスティック160を叩く方向は、X軸方向、及びY軸方向だけでなく、X軸方向、及びY軸方向と交差する斜め方向としてもよい。
上記の式9を用いて表される目標位置が、プローブ24Aのストロークの範囲外の場合、図4に示したコントローラ28は、プローブ24Aを用いたプロービングを実行せずに、エラーメッセージを表示させる。
プローブ24Aのストロークの範囲外は、プローブ24Aが移動可能であるものの、測定対象の形状等の条件に基づいて、プローブ24Aを移動させることが禁止されている領域が含まれてもよい。
エラーメッセージは、エラーが発生したことを表す文字情報、又はエラーが発生したことを表す音声情報を適用可能である。エラーメッセージは、ビープ音、及びアラームなどの音情報を適用してもよい。
プローブ24Aがサーチ距離Dshを移動しても、接触子24Cがプロービング点に接触しない場合は、エラーとならないものとする。接触子24Cがプロービング点に接触しない状態で停止した場合は、ジョイスティック160の操作待ち状態としてもよい。
<ジョイスティックのトリガ操作の検知>
図13はトリガ操作が行われたジョイスティックの出力電圧を示した模式図である。図13に示したグラフの横軸は期間である。期間の単位は秒である。図13に示したグラフの縦軸は電圧である。電圧の単位はボルトである。
図4に示した電圧検出部122は、単位期間dtあたりのジョイスティック160の出力電圧差dv/dtを算出する。電圧判定部124は、電圧検出部122を用いて算出された、単位期間dtあたりのジョイスティック160の出力電圧差dv/dtが、予め決められている閾値δを超えるか否かを判定する。
単位期間dtあたりのジョイスティック160の出力電圧差dv/dtが、予め決められている閾値δを超える場合は、プロービングモード切替部126は、図10に示したジョイスティック160が叩かれたと判定して、プロービングモードをオートプロービングモードへ切り替える。
図4に示したプロービングモード切替部126を用いて、プロービングモードがオートプロービングモードに切り替えられた場合、駆動指令出力部116は駆動部140へオートプロービングモードの移動指令パラメータを送信する。移動指令パラメータは、プローブ24Aの移動方向指令、プローブ24Aの移動速度指令、及びプローブ24Aの移動距離指令が含まれる。
単位期間dtは、ファームウエアの内部において定義された、図10に示したジョイスティック160の出力電圧値のサンプリング期間とする。ジョイスティック160の出力電圧差dvは、任意のサンプリングタイミングにおいてサンプリングされた電圧値から、任意のサンプリングタイミングの一回前のサンプリングタイミングにおいてサンプリングされた電圧値を減算して算出する。
閾値δは、ジョイスティック160の仕様等に応じて、予めデフォルト値が設定されている。閾値δは変更可能としてもよい。
ジョイスティックの出力電圧は、ジョイスティックを操作した際の、単位期間あたりのジョイスティックの出力信号値の一態様である。単位期間dtあたりのジョイスティック160の出力電圧差dv/dtは、単位期間あたりのジョイスティックの出力信号値の変化値の一態様である。
図4に示した電圧判定部124は、ジョイスティックを操作した際の、単位期間あたりのジョイスティックの出力信号値の変化値と、予め決められた閾値とを比較した判定結果に基づいて、ジョイスティックのトリガ操作が行われたか否かを判定する判定部の一態様である。
図4に示したプロービングモード切替部126は、切替部の一態様である。
図4に示した駆動部140は、ジョイスティックのトリガ操作がされた場合に、オートプロービングモードによりプローブの移動を開始させる駆動部の一態様である。
図6に示した電圧出力部160Aは、ジョイスティックの操作量に比例した電圧を出力する電圧出力部の一態様である。
図4に示したパラメータ設定部128は、プローブの移動パラメータを設定するパラメータ設定部の一態様である。
パラメータ設定部128は、ジョイスティックがトリガ操作された場合の、ジョイスティックの操作方向に応じて、プローブの移動方向を設定するパラメータ設定部の一態様である。
図4に示した座標変換部110は、マシン座標系とワーク座標系との変換関係を規定する変換行列を用いて、パラメータ設定部を用いて設定されたプローブの移動パラメータを、ワーク座標系におけるプローブの移動パラメータに変換する変換部の一態様である。
図4に示したエラーメッセージ表示部132は、プローブの目標位置がプローブの移動可能範囲外の場合にエラーを報知する報知部の一態様である。
<オートプロービングの手順の説明>
図14は第二実施形態に係る測定方法の手順を示したフローチャートである。トリガ操作判定工程S100では、図4に示した電圧判定部124は、図10に示したジョイスティック160のトリガ操作が実行されたか否かを判定する。
図14のトリガ操作判定工程S100において、図4に示した電圧判定部124が、図10に示したジョイスティック160のトリガ操作が実行されていないと判定した場合は、No判定となる。No判定の場合は、図14の通常プロービングモード実行工程S102において、通常のプロービングが実行される。
通常プロービングモード実行工程S102において実行される通常プロービングは、図10に示したジョイスティック160の操作量に応じて、プロービング速度が設定される。図14の通常プロービングモード実行工程S102において、通常のプロービングが実行された後に、測定終了判定工程S120へ進む。
一方、トリガ操作判定工程S100において、図4に示した電圧判定部124が、図10に示したジョイスティック160のトリガ操作が実行されたと判定した場合は、Yes判定となる。Yes判定の場合は、図14のパラメータ設定工程S110へ進む。
図14のトリガ操作判定工程S100は、ジョイスティックを操作した際の、単位期間あたりのジョイスティックの出力信号値の変化値と、予め決められた閾値とを比較した判定結果に基づいて、ジョイスティックのトリガ操作が行われたか否かを判定する判定工程の一態様である。
図14のトリガ操作判定工程S100は、ジョイスティックのトリガ操作がされた場合に、プローブを一定の速度で移動させるオートプロービングモードに切り替える切替工程の一態様である。
パラメータ設定工程S110では、図4に示したパラメータ設定部128は、オートプロービングモードにおける、図10に示したプローブ24Aの移動速度、プローブ24Aの移動方向、プローブ24Aのサーチ距離、及びプローブ24Aの現在位置を設定する。
パラメータ設定工程S110において、図4に示したパラメータ設定部128が、オートプロービングモードにおけるパラメータが設定された後に、図14の目標位置算出工程S112へ進む。
目標位置算出工程S112では、図4に示したパラメータ設定部128は、上記の式9を用いて、図10に示したプローブ24Aの目標位置の座標(xt,yt,zt)を算出する。図14の目標位置算出工程S112において、図10に示したプローブ24Aの目標位置の座標(xt,yt,zt)が算出された後に、図14のサーチ距離判定工程S114へ進む。
サーチ距離判定工程S114では、図4に示したサーチ距離判定部130は、図10に示したプローブ24Aのサーチ距離Dshが、プローブ24Aのストロークの範囲内であるか否かを判定する。
図14のサーチ距離判定工程S114において、図4のサーチ距離判定部130が、図10に示したプローブ24Aのサーチ距離Dshが、プローブ24Aのストロークの範囲外であると判定した場合は、No判定となる。No判定の場合は、図14のエラーメッセージ表示工程S130へ進む。
エラーメッセージ表示工程S130では、図4に示したエラーメッセージ表示部132は、図10に示したプローブ24Aのサーチ距離Dshが、プローブ24Aのストロークの範囲外である旨のエラーメッセージを表示させる。
図14のエラーメッセージ表示工程S130において、図4に示したエラーメッセージ表示部132がエラーメッセージを表示させた後に、図14の測定終了判定工程S120へ進む。
一方、サーチ距離判定工程S114において、図4のサーチ距離判定部130が、図10に示したプローブ24Aのサーチ距離Dshが、プローブ24Aのストロークの範囲内であると判定した場合は、Yes判定となる。Yes判定の場合は、図14のプロービング開始工程S116へ進む。
プロービング開始工程S116では、図4の駆動指令出力部116は、駆動部140へオートプロービングに対応する移動指令信号を送信する。図10に示したプローブ24Aは、オートプロービングを実行する。
図14のプロービング開始工程S116において、図10に示したプローブ24Aのオートプロービングが開始されると、図14の移動距離判定工程S118へ進む。移動距離判定工程S118では、図4の移動距離判定部134は、図10に示したプローブ24Aの移動距離が、プローブ24Aのサーチ距離Dshに達したか否かを判定する。
図14の移動距離判定工程S118において、図4の移動距離判定部134が、図10に示したプローブ24Aの移動距離は、プローブ24Aのサーチ距離Dshに達していないと判定した場合は、No判定となる。No判定の場合は、図14の移動距離判定工程S118においてYes判定となるまで、移動距離判定工程S118が繰り返し実行される。
一方、図14の移動距離判定工程S118において、図4の移動距離判定部134が、図10に示したプローブ24Aの移動距離は、プローブ24Aのサーチ距離に達していると判定した場合は、Yes判定となる。Yes判定の場合は、図14の測定終了判定工程S120へ進む。
測定終了判定工程S120では、図4のシステム制御部102は、測定を終了するか否かを判定する。図14の測定終了判定工程S120において、図4のシステム制御部102が、測定を終了しないと判定した場合はNo判定となる。No判定の場合は、図14のトリガ操作判定工程S100へ進む。
一方、図14の測定終了判定工程S120において、図4のシステム制御部102が、測定を終了すると判定した場合は、Yes判定となる。Yes判定の場合は、測定は終了する。
図14のプロービング開始工程S116、移動距離判定工程S118、及び測定終了判定工程S120は、ジョイスティックのトリガ操作がされた場合に、オートプロービングモードによりプローブの移動を開始させる駆動工程の構成要素の一例である。
<ジョイスティックのトリガ操作の他の例>
図10に示したジョイスティック160は、Z軸方向についてのオートプロービングを実行する場合、ジョイスティック160のつまみを通常の操作よりも速く回転させる。図10に示した一つのジョイスティック160を備える場合、X軸方向、及びY軸方向のオートプロービングと、Z軸方向のオートプロービングとは、別々に実行される。
一方、Z軸方向専用のジョイスティックを含む、二つのジョイスティックを備える場合、X軸方向、及びY軸方向のオートプロービングと、Z軸方向のオートプロービングとは、同時に実行可能である。ここでいう同時とは、厳密にはタイミングが異なるものの、同時と同様の作用効果を得ることが可能な実質的な同時が含まれている。
[第二実施形態の作用効果]
第二実施形態に係る三次元測定機、及び測定方法によれば、ジョイスティック160のトリガ操作が検知された場合に、オートプロービングモードに切り替えられる。これにより、ジョイスティック160の操作のばらつきに起因する測定結果のばらつきが抑制され、高精度の測定が可能である。
単位期間dtあたりのジョイスティック160の出力電圧差dv/dtが予め決められた閾値を超えた場合に、ジョイスティック160のトリガ操作がされたと判定される。これにより、ジョイスティック160のトリガ操作の誤検知が抑制される。
ジョイスティック160のトリガ操作は、ジョイスティック160を叩くといったジョイスティック160の通常の操作と異なる操作が適用される。これにより、操作者の能力等の条件にかかわらず、オートプロービングモードの実行が可能である。
第二実施形態に係るオートプロービングモードは、第一実施形態に係るワーク座標系追従モードと組み合わせることが可能である。これにより、ワーク座標系におけるオートプロービングモードが、マシン座標系追従モードにおけるジョイスティック160の操作を適用して実現することが可能である。
例えば、マシン座標系からワーク座標系への変換関係を示す変換行列を用いて、上記式6を用いて表される、図10に示したプローブ24Aの目標位置の座標(xt,yt,zt)を、ワーク座標系におけるプローブ24Aの目標位置の座標に変換してもよい。
また、図10に示したプローブ24Aの移動パラメータを、ワーク座標系におけるプローブ24Aの移動パラメータに変換してもよい。変換されるプローブ24Aの移動パラメータとして、プローブ24Aのサーチ距離、プローブ24Aの移動方向が挙げられる。
マシン座標系からワーク座標系への変換関係を示す変換行列の例として、上記の式7を用いて表される変換行例等が挙げられる。
本明細書では、五軸同時制御のプローブヘッド24を用いた態様を例示したが、プローブヘッド24を非回転として、プローブ24AをX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向について移動させるプローブヘッド24を用いた態様も可能である。
以上説明した本発明の実施形態は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜構成要件を変更、追加、削除することが可能である。本発明は以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で当該分野の通常の知識を有する者により、多くの変形が可能である。