JP2018166473A - チロソール生産微生物 - Google Patents

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【課題】チロソールを効率的に生産可能な微生物を提供する。【解決手段】アミノトランスフェラーゼの活性が強化された微生物、およびこれを用いたチロソールの製造方法を提供する。【選択図】なし

Description

本発明は、アミノトランスフェラーゼの活性が強化された微生物、およびチロソールの製造方法に関する。
チロソールはポリフェノールの一種であり、抗酸化活性や、メラニンの生成を抑制する活性を有することが知られている。チロソールはオリーブオイルに多く含まれるため、オリーブオイルからチロソールを回収することが可能である。より効率的な生産方法として、微生物によるチロソールの生産方法の開発も進められている。
非特許文献1は、微生物細胞内においてチアミンを経由する生合成経路によりチロソールを生産する方法を記載している。
非特許文献2は、ヒドロキシフェニルピルビン酸デカルボキシラーゼおよびアルデヒドリダクターゼの活性が強化された微生物の細胞内において、ヒドロキシフェニルピルビン酸、およびヒドロキシフェニルアルデヒドを経由する生合成経路によりチロソールを生産する方法を記載している。特許文献1は、ヒドロキシフェニルピルビン酸デカルボキシラーゼの活性が強化された微生物の細胞内において、非特許文献2と同様の生合成経路によりチロソールを生産する方法を記載している。
中国特許出願公開第104099379号
J.Agric.Food Chem.,2012,60(4),pp979−984 Appl Environ Microbiol.2012 Sep;78(17),pp6203−16
従来の、微生物によるチロソールの生産方法では、生産効率が充分とはいえず、生産速度も遅いものであった。本発明は、微生物により効率的にチロソールを生産することを課題とする。
本発明者らは、アミノトランスフェラーゼの活性が強化された微生物をチロシンを含む培地で培養すると、チロソールを効率的に生産できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明はアミノトランスフェラーゼの活性が強化された微生物に関する。
前記微生物は、アミノトランスフェラーゼをコードする遺伝子を染色体上に含むことが好ましい。
前記アミノトランスフェラーゼが配列番号1に記載のアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなることが好ましい。
前記アミノトランスフェラーゼが配列番号11に記載のアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなることが好ましい。
前記微生物が細菌または酵母であることが好ましい。
前記微生物は、さらに、アミノ酸トランスポーター、ヒドロキシフェニルピルビン酸デカルボキシラーゼ、またはアルデヒドリダクターゼの活性が強化されていることが好ましい。
前記微生物は、さらに、フェニルアセトアルデヒドデヒドロゲナーゼの活性が抑制されたものであることが好ましい。
また、本発明は、前記微生物をチロシンを含む培地で培養する工程を含む、チロソールの製造方法に関する。
本発明の微生物は、アミノトランスフェラーゼの活性が強化されることにより、細胞内におけるチロシンからの4−ヒドロキシフェニルピルビン酸の生合成が強化され、チロソールの効率的な生産を実現する。
本発明の微生物における、チロシンからチロソールに至る生合成経路を示す。 実施例1のPAR−254株の培養液におけるチロシンの濃度の経時変化を示す。 実施例1のPAR−254株の培養液におけるチロソールの濃度の経時変化を示す。 実施例1のPAR−254株の培養液における2−フェニルエタノールの濃度の経時変化を示す。 実施例1のPAR−255株の培養液におけるチロシンの濃度の経時変化を示す。 実施例1のPAR−255株の培養液におけるチロソールの濃度の経時変化を示す。 実施例1のPAR−255株の培養液における2−フェニルエタノールの濃度の経時変化を示す。
本発明は、アミノトランスフェラーゼの活性が強化された微生物に関する。微生物としては細菌、酵母が挙げられる。細菌としてはEscherichia coli、などのEscherichia属、Pseudomonas putidaなどのPseudomonas属、Corynebacterium efficienceやCorynebacterium glutamicumなどのCorynebacterium属、Streptomyces lividansやStreptomyces avermitilisなどのStreptomyces属、Thermus thermophilusなどのThermus属などが挙げられる。酵母としてはSaccharomyces cerevisiaeなどのSaccharomyces属、Schizosaccharomyces pombeなどのSchizosaccharomyces属が挙げられる。この中でも細菌が好ましく、Escherichia属がより好ましく、Escherichia coli(大腸菌)がさらに好ましい。
アミノトランスフェラーゼは、アミノ酸とα−ケト酸の間でアミノ基を転移する活性を有する酵素である。アミノトランスフェラーゼとしては、チロシンからアミノ基を脱離させ4−ヒドロキシフェニルピルビン酸を生成する活性を有するものが好ましい。チロシンから4−ヒドロキシフェニルピルビン酸を生成する活性が強化されることにより、チロソールを効率的に生産することができる。
アミノトランスフェラーゼの由来生物としてはEscherichia coliやPseudomonasなどの細菌、Saccharomyces cerevisiae、Schizosaccharomyces pombeなどの酵母が挙げられる。この中でも、Escherichia coliやPseudomonasなどの細菌に由来するアミノトランスフェラーゼが好ましい。
前記アミノトランスフェラーゼは、アミノ酸とα−ケト酸の間でアミノ基を転移する活性を有する限りその構造は特に限定されないが、配列番号1に記載のアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなることが好ましい。配列番号1に記載のアミノ酸配列との配列同一性は、85%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましく、95%以上がさらにより好ましく、97%以上が特に好ましい。アミノ酸配列の配列同一性は、配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列と、評価対象のアミノ酸配列とを比較し、アミノ酸が一致した位置の数を総アミノ酸数で除して100を乗じた値で表される。
また、前記アミノトランスフェラーゼは、配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列において、1または複数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換および/または付加したアミノ酸配列からなり、アミノトランスフェラーゼ活性を有するものであることが好ましい。欠失、挿入、置換および/または付加されるアミノ酸の個数は、80個以下であることが好ましく、60個以下であることがより好ましく、40個以下であることがさらに好ましく、20個以下であることがさらにより好ましく、10個以下であることが特に好ましい。
アミノトランスフェラーゼは、配列番号2に記載の塩基配列と80%以上の配列同一性を有する塩基配列からなる遺伝子によりコードされるものであることが好ましい。この遺伝子の、配列番号2に記載の塩基配列との配列同一性は、85%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましく、95%以上がさらにより好ましく、97%以上が特に好ましい。塩基配列の配列同一性は、アミノ酸の配列同一性と同様に算出できる。なお、配列番号2に記載の塩基配列は大腸菌のtyrB遺伝子のコード領域である。
また、アミノトランスフェラーゼは、配列番号11に記載のアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなることが好ましい。また、アミノトランスフェラーゼは、配列表の配列番号11に示すアミノ酸配列において、1または複数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換および/または付加したアミノ酸配列からなり、アミノトランスフェラーゼ活性を有するものであることが好ましい。また、アミノトランスフェラーゼは、配列番号12に記載の塩基配列と80%以上の配列同一性を有する塩基配列からなる遺伝子によりコードされるものであることが好ましい。ここで、配列同一性、および欠失、挿入、置換および/または付加されるアミノ酸の個数は、配列番号1〜2についての前記の内容と同様である。なお、配列番号12に記載の塩基配列は大腸菌のaspC遺伝子のコード領域である。
アミノトランスフェラーゼの活性の強化は、アミノトランスフェラーゼの発現量の向上や、活性を強化する変異の導入により実現される。アミノトランスフェラーゼの発現量の向上は、アミノトランスフェラーゼをコードする遺伝子の導入や高発現プロモーターの導入により実現される。
微生物にアミノトランスフェラーゼをコードする遺伝子を微生物に導入する場合、導入された遺伝子は染色体外のプラスミド上に保持されていてもよく、染色体上に導入されていてもよい。染色体上に導入する場合、その方法としては、一般的な相同組換え(部位特異的組換え、部位非特異的組換え)、ファージによる遺伝子導入が挙げられる。大腸菌において相同組換えを行う場合には、Red recombinaseやCre−loxPを用いた相同組換えを行うことが可能である。アミノトランスフェラーゼをコードする遺伝子をプラスミドに挿入し、そのプラスミドを微生物に導入する場合、プラスミドは特に限定されず、微生物において遺伝子を発現させられるものであればよい。
微生物の染色体上にアミノトランスフェラーゼ遺伝子を導入する場合には、染色体上の特定の遺伝子中のプロモーターやORFに導入することにより、その遺伝子の活性を抑制し、または失わせることも可能である。活性を抑制し、または失わせる遺伝子としては、フェニルアセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ遺伝子、コリスミ酸ムターゼ/プレフェン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子、アルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子、乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子などが挙げられる。なお、大腸菌では、フェニルアセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ遺伝子としてはfeaB遺伝子が好ましく、乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子としてはldhA遺伝子が好ましく、コリスミ酸ムターゼ/プレフェン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子としてはtyrA遺伝子が好ましく、アルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子としてはadhE遺伝子が好ましい。また、これらの遺伝子の活性を抑制し、または失わせる方法としては、そのプロモーターやORFに、アミノトランスフェラーゼ遺伝子以外の塩基配列を導入する方法も挙げられる。
また、フェニルアセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ遺伝子としては、配列番号10に記載の塩基配列と80%以上の配列同一性を有する塩基配列からなり、4−ヒドロキシフェニルアセトアルデヒドから4−ヒドロキシフェニル酢酸を生成する酵素をコードするものが好ましい。この遺伝子の、配列番号10に記載の塩基配列との配列同一性は、85%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましく、95%以上がさらにより好ましく、97%以上が特に好ましい。なお、配列番号10に記載の塩基配列は大腸菌のfeaB遺伝子のコード領域である。
また、アルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子としては、配列番号14に記載の塩基配列と80%以上の配列同一性を有する塩基配列からなり、アセトアルデヒドからエタノールを生成する酵素をコードするものが好ましい。この遺伝子の、配列番号14に記載の塩基配列との配列同一性は、85%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましく、95%以上がさらにより好ましく、97%以上が特に好ましい。なお、配列番号14に記載の塩基配列は大腸菌のadhE遺伝子のコード領域である。
本発明の微生物は、アミノトランスフェラーゼの活性が強化されていることに加えて、アミノ酸トランスポーター、ヒドロキシフェニルピルビン酸デカルボキシラーゼ、またはアルデヒドリダクターゼの活性が強化されていることが好ましい。これらの活性の強化方法としては、アミノトランスフェラーゼの活性の強化と同じ方法を用いることができる。
アミノ酸トランスポーターは、配列番号7に記載のアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、細胞壁を通してアミノ酸、特にチロシンを細胞内に運搬する活性を有するものであることが好ましい。配列番号7に記載のアミノ酸配列との配列同一性は、85%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましく、95%以上がさらにより好ましく、97%以上が特に好ましい。
また、アミノ酸トランスポーターは、配列番号8に記載の塩基配列と80%以上の配列同一性を有する塩基配列からなる遺伝子によりコードされるものであることが好ましい。この遺伝子の、配列番号8に記載の塩基配列との配列同一性は、85%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましく、95%以上がさらにより好ましく、97%以上が特に好ましい。なお、配列番号8に記載の塩基配列は大腸菌のaroP遺伝子のコード領域である。
ヒドロキシフェニルピルビン酸デカルボキシラーゼは、配列番号3に記載のアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、ヒドロキシフェニルピルビン酸に対する脱炭酸活性を有するものであることが好ましい。配列番号3に記載のアミノ酸配列との配列同一性は、85%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましく、95%以上がさらにより好ましく、97%以上が特に好ましい。
また、ヒドロキシフェニルピルビン酸デカルボキシラーゼは、配列番号4に記載の塩基配列と80%以上の配列同一性を有する塩基配列からなる遺伝子によりコードされるものであることが好ましい。この遺伝子の、配列番号4に記載の塩基配列との配列同一性は、85%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましく、95%以上がさらにより好ましく、97%以上が特に好ましい。なお、配列番号4に記載の塩基配列は大腸菌Azospirillum brasilenseのipdC遺伝子のコード領域である。
また、ヒドロキシフェニルピルビン酸デカルボキシラーゼは、配列番号16に記載の塩基配列と80%以上の配列同一性を有する塩基配列からなる遺伝子によりコードされるものであることが好ましい。ここで、配列同一性は、配列番号4についての前記の内容と同様である。なお、配列番号16に記載の塩基配列は酵母Saccharomyces cerevisiaeのARO10遺伝子のコード領域である。
アルデヒドリダクターゼは、配列番号5に記載のアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、芳香族アルデヒド、特にヒドロキシフェニルアセトアルデヒドに対する活性を有するものであることが好ましい。配列番号5に記載のアミノ酸配列との配列同一性は、85%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましく、95%以上がさらにより好ましく、97%以上が特に好ましい。
また、アルデヒドリダクターゼは、配列番号6に記載の塩基配列と80%以上の配列同一性を有する塩基配列からなる遺伝子によりコードされるものであることが好ましい。この遺伝子の、配列番号6に記載の塩基配列との配列同一性は、85%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましく、95%以上がさらにより好ましく、97%以上が特に好ましい。なお、配列番号6に記載の塩基配列は大腸菌のyahK遺伝子のコード領域である。
上記微生物を、チロシンを含む培地で培養することにより、チロソールを製造することができる。培地中のチロシンの濃度は、0.0045〜4.5重量%が好ましく、0.0045〜0.45重量%がより好ましく、0.0045〜0.045重量%がさらに好ましい。
微生物の増殖初期から、チロシンを含む培地で培養することにより、微生物の増殖とチロソールの製造を並行して行うことができる。また、高濃度のチロシンは微生物の増殖を抑制するおそれがあるので、微生物をチロシンを含まない培地で一定期間増殖させた後、チロシンを含む培地で培養してチロソールを製造することもできる。また、チロシンは水への溶解度が低いので、培地に継続的に添加しながらチロソールを製造することもできる。
微生物の培養のための培地は、チロシンに加えて、微生物が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類等を含有する培地であれば、天然培地、合成培地のいずれを用いることもできる。
炭素源としては、グルコース、ガラクトース、フラクトース、キシロース、スクロース、ラフィノース、アラビノース、デンプン、糖蜜、廃糖蜜等の炭水化物、酢酸、プロピオン酸等の有機酸、エタノール、プロパノール、グリセロール等のアルコール類が挙げられる。窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機酸若しくは有機酸のアンモニウム塩又はその他の含窒素化合物が挙げられる。その他、ペプトン、肉エキス、コーンスティープリカー、各種アミノ酸等を用いてもよい。無機塩類としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、硫酸亜鉛、炭酸カルシウム等が挙げられる。このような成分を含む具体的な培地として、LB培地、M9培地、SOC培地、YM培地や、これらの改変型培地が挙げられる。
微生物の培養時の温度は、25〜46℃が好ましく、27〜37℃がより好ましく、30〜37℃がさらに好ましく、34〜37℃がさらにより好ましい。25℃未満では生育や生産速度が遅くなる傾向があり、46℃を超えると生育や生産が困難となる傾向がある。微生物の培養は、通常、8〜120時間の範囲で行うことができる。
微生物の培養時の培地のpHは、pH5〜8が好ましく、pH6〜7.5がより好ましく、pH6.5〜7.2がさらに好ましい。pH5未満では生育や生産が困難となる傾向があり、pH8を超えると生育や生産速度が遅くなる傾向がある。培地のpHは、無機酸、有機酸、アルカリ溶液などを添加することにより調整できる。
試験管やフラスコを用いて培養する場合、微生物の培養時の培地の振とう速度は、20〜300rpmが好ましく、50〜280rpmがより好ましく、100〜250rpmがさらに好ましい。20rpm未満では酸素が不足して有機酸が蓄積する傾向がある。
微生物により製造されたチロソールは、培地中に蓄積する。チロソールは、培地から常法により回収できる。例えば、酢酸エチルなどの有機溶媒を用いて抽出する方法、凍結乾燥による方法、エバポレーターなどにより蒸留する方法、分離膜を用いる方法、またはそれらを併用する方法などが挙げられる。
培地中に蓄積されたチロソールの濃度は常法により測定できる。例えば、培地サンプルをODSカラムを装着したHPLCで分析し、チロソールの標品を用いて作成した検量線を用いて培地中のチロソールの濃度を定量する方法(非特許文献2)が挙げられる。培地中に蓄積された4−ヒドロキシフェニル酢酸、2−フェニルエタノール、フェニル酢酸の濃度も、同様の方法で測定できる。
図1に示すように、4−ヒドロキシフェニル酢酸は、4−ヒドロキシフェニルアセトアルデヒドからチロソールとは別に生成され得る物質である。アミノトランスフェラーゼの活性の強化により、4−ヒドロキシフェニル酢酸の生産効率も向上し得るが、本発明では4−ヒドロキシフェニル酢酸の生産効率は一定程度に保ちつつ、チロソールの生産効率が改善することが好ましい。
フェニル酢酸は、フェニルアセトアルデヒドがフェニルアルデヒドデヒロドゲナーゼの作用を受けて生成する物質である。フェニルアセトアルデヒドは、培地に含まれるグルコースがフェニルピルビン酸へと変換された後に、フェニルピルビン酸デカルボキシラーゼまたはヒドロキシフェニルピルビン酸デカルボキシラーゼの作用により生成する。本発明では、培地中に蓄積されるフェニル酢酸の濃度は低い方が好ましい。
2−フェニルエタノールは、フェニルアセトアルデヒドがアルデヒドリダクターゼの作用を受けて生成する物質である。フェニルアセトアルデヒドは、培地に含まれるグルコースがフェニルピルビン酸へと変換された後に、フェニルピルビン酸デカルボキシラーゼまたはヒドロキシフェニルピルビン酸デカルボキシラーゼの作用により生成する。本発明では、培地中に蓄積される2−フェニルエタノールの濃度は低い方が好ましい。
(製造例1)遺伝子のクローニング
ipdC遺伝子はコドンを大腸菌用に最適化したものをOptimum Gene(登録商標) algorithm(GenScript USA Inc.)を用いて全合成した。合成した遺伝子をNdeIとXhoIを用いて37℃で一晩消化したpET21a−FRTベクターに連結し、pET21a−FRT−ipdCを得た。
yahK遺伝子は2種類のプライマー(5’−CCAACCATATGAAGATCAAAGCTGTTGGTG−3’および5’−CACTCGAGTCAGTCTGTTAGTGTGCG−3’)を用いて大腸菌BW25113株のゲノムDNAを鋳型としてPCRで増幅した。PCR産物をNdeIとXhoIを用いて37℃で一晩消化し、上記と同様に消化したpET21a−FRTベクターとライゲーションして、pET21a−FRT−yahKを得た。
tyrB遺伝子は2種類のプライマー(5’−CAACACATATGTTTCAAAAAGTTGACGC−3’および5’−TACTCGAGTTACATCACCGCAGCAAAC−3’)を用いて大腸菌BW25113株のゲノムDNAを鋳型としてPCRで増幅した。PCR産物をNdeIとXhoIを用いて37℃で一晩消化し、上記と同様に消化したpET21a−FRTベクターとライゲーションして、pET21a−FRT−tyrBを得た。
aroP遺伝子は2種類のプライマー(5’−GTTTAACTTTAAGAAGGAGATATACATATGATGGAAGGTCAACAGCACG−3’と5’−GTGGTGGTGGTGCTCGAGTTAATGCGCTTTTACGGCTTTG−3’)を用いて、大腸菌W3110のゲノムDNAを鋳型としてPCRで増幅した。PCR産物とNdeIとXhoIを用いて37℃で一晩消化したpET21a−FRTベクターをGibson反応により連結し、pET21a−FRT−aroPを得た。
なお、PCR反応の酵素にはPhusion HS2ポリメラーゼ(Thermo Fisher Scientific Inc.)を用い、プロトコールに従って反応を行った。
(製造例2)アミノトランスフェラーゼ(tyrB)高発現株の作成
カナマイシン耐性遺伝子とT7プロモーターおよびT7ターミネーターに連結したtyrBの遺伝子カセット(FRT−Km−FRT−PT7−tyrB−TT7)を増幅するために、pET21a−FRT−tyrBを鋳型として、2種類のプライマー(5’−TCGCTGCGTACACTGAAATCACACTGGGTAAATAATAAGGAAAAGTGATGATTCCGGGGATCCGTCGACC−3’と5’−TGCCGTTTTTTACTTATGAGCGAACCAGATTAATACCGTACACACACCGAATTCGCCAATCCGGATATAG−3’)を用いて同様にPCRを行った。公知の方法(非特許文献2)に従って、遺伝子カセットを大腸菌MG1655(DE3)株の染色体DNA上のfeaBの座位に導入し、M−ARG−49(MG1655(DE3)feaB::FRT−Km−FRT−PT7−tyrB−TT7)株を得た。
(製造例3)ヒドロキシフェニルピルビン酸デカルボキシラーゼ(ipdC)高発現株の作成
カナマイシン耐性遺伝子とT7プロモーターおよびT7ターミネーターに連結したipdCの遺伝子カセット(FRT−Km−FRT−PT7−ipdC−TT7)を増幅するために、pET21a−FRT−ipdCを鋳型として、2種類のプライマー(5’−TCGGGCTTCCAGCCTGCGCGACAGCAAACATAAGAAGGGGTGTTTTTATGATTCCGGGGATCCGTCGACC−3’と5’−CTTCTCCATGTGGAGAGGGTGGGATTGGATTACTTACGACCTGCCAGCAGATTCGCCAATCCGGATATAG−3’)を用いてPCRを行った。なお、カセットの増幅にはPrimeSTAR GXLポリメラーゼ(Takara Bio Inc.)を用い、プロトコールに従って反応を行った。増幅したPCR産物を用いて、Red相同組換えを用いた公知の方法(非特許文献2)により、遺伝子カセットを大腸菌BW25113(DE3)株の染色体DNA上のmtlAの座位に導入し、ARG−84(BW25113(DE3)mtlA::FRT−Km−FRT−PT7−ipdC−TT7)株を得た。
(製造例4)アルデヒドリダクターゼ(yahK)高発現株の作成
カナマイシン耐性遺伝子とT7プロモーターおよびT7ターミネーターに連結したyahKの遺伝子カセット(FRT−Km−FRT−PT7−yahK−TT7)を増幅するために、pET21a−FRT−yahKを鋳型として、2種類のプライマー(5’−TATTTTTAGTAGCTTAAATGTGATTCAACATCACTGGAGAAAGTCTTATGATTCCGGGGATCCGTCGACC−3’と5’−CTCCCCTGGAATGCAGGGGAGCGGCAAGATTAAACCAGTTCGTTCGGGCAATTCGCCAATCCGGATATAG−3’)を用いて同様にPCRを行った。同様の方法で、遺伝子カセットを大腸菌BW25113(DE3)株の染色体DNA上のldhAの座位に導入し、ARG−121(BW25113(DE3)ldhA::FRT−Km−FRT−PT7−yahK−TT7)株を得た。
(製造例5)アミノ酸トランスポーター(aroP)高発現株の作成
カナマイシン耐性遺伝子とT7プロモーターおよびT7ターミネーターに連結したaroPの遺伝子カセット(FRT−Km−FRT−PT7−aroP−TT7)を増幅するために、pET21a−FRT−aroPを鋳型として、2種類のプライマー(5’−GATGATGTGAATCATCCGGCACTGGATTATTACTGGCGATTGTCATTCGCTGTAGGCTGGAGCTGCTTCG−3’と5’−GATGATGTGAATCATCCGGCACTGGATTATTACTGGCGATTGTCATTCGCATTCGCCAATCCGGATATAG−3’)を用いて同様にPCRを行った。同様の方法で、遺伝子カセットを大腸菌MG1655(DE3)株の染色体DNA上のtyrAの座位に導入し、M−ARG−60(MG1655(DE3)tyrA::FRT−Km−FRT−PT7−aroP−TT7)株を得た。
(製造例6)多重遺伝子高発現株の作成
P1形質導入法(非特許文献2)を用いて、ipdC遺伝子を大腸菌BW25113株の染色体に導入した。すなわち、BW25113(DE3)のmtlA座位にAR−G84株のP1ライセートを用いてFRT−Km−FRT−PT7−ipdC−TT7カセットを挿入し、酵母フリパーゼをコードするpCP20で形質転換してKmカセットを削除し、PAR−252(BW25113(DE3)mtlA::PT7−ipdC−TT7)株を得た。
(製造例7)多重遺伝子高発現株の作成
P1形質導入法により、PAR−252株のldhA座位にARG−121株のP1ライセートを用いてFRT−Km−FRT−PT7−yahK−TT7カセットを挿入し、酵母フリパーゼをコードするpCP20で形質転換してKmカセットを削除し、PAR−253(mtlA::PT7−ipdC−TT7 ldhA::PT7−yahK−TT7)株を得た。
(製造例8)多重遺伝子高発現株の作成
P1形質導入法により、PAR−253株のfeaB座位にM−ARG−49株のP1ライセートを用いてFRT−Km−FRT−PT7−tyrB−TT7カセットを挿入し、酵母フリパーゼをコードするpCP20で形質転換してKmカセットを削除し、PAR−254(mtlA::PT7−ipdC−TT7 ldhA::PT7−yahK−TT7 feaB::PT7−tyrB−TT7)株を得た。なお、この微生物ではフェニルアセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ(feaB)の活性が失われている。
(製造例9)多重遺伝子高発現株の作成
P1形質導入法により、PAR−254株のtyrA座位にM−ARG−60のP1ライセートを用いてFRT−Km−FRT−PT7−aroP−TT7カセットを挿入し、PAR−255(mtlA::PT7−ipdC−TT7 ldhA::PT7−yahK−TT7 feaB::PT7−tyrB−TT7 tyrA::FRT−Km−FRT−PT7−aroP−TT7)株を得た。なお、この微生物ではフェニルアセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ(feaB)の活性が失われている。
(実施例1)チロソールの生産
製造例8〜9の菌株を、LB培地を用いて27℃で一晩前培養した。培養液1mlを1.5mlチューブに入れて10000rpmで3分間遠心分離することによって菌体を沈殿回収した。回収した菌体を1mlの改変M9培地に懸濁した。この懸濁液0.5mlを、4.5mlの改変M9培地に加え、さらに50μlの100μM イソプロピル−β−D−チオガラクトシドを加えて、27℃で200rpmで振とう培養した。振とう培養開始時の培養液の濁度(OD660)の値は0.5程度であった。
24時間の培養後の、培地中のチロシン、チロソール、4−ヒドロキシフェニル酢酸、フェニル酢酸、2−フェニルエタノールの濃度を測定した。結果を表1に示す。
なお、改変M9培地は、下記の物質を1Lの純水に溶解し、フィルターでろ過除菌することにより作製した。
リン酸水素二ナトリウム 6g
リン酸二水素カリウム 3g
塩化ナトリウム 0.5g
塩化アンモニウム 4g
グルコース 10g
チロシン 362mg
硫酸マグネシウム七水和物 246.5mg
チアミン塩酸塩 1mg
硫酸鉄七水和物 7.55mg
塩化カルシウム 11.1mg
七モリブデン酸六アンモニウム四水和物 37.1μg
ホウ酸 247.3μg
塩化コバルト六水和物 71.4μg
硫酸銅五水和物 23.9μg
塩化マンガン四水和物 158.3μg
硫酸亜鉛七水和物 28.8μg
チロシン、チロソール、4−ヒドロキシフェニル酢酸、フェニル酢酸、2−フェニルエタノールは以下の方法で定量した。培養液0.5mlを純水0.5mlと混合し、200μlのメタノールと混合したものをHPLCの試料として用いた。分析機器にはフォトダイオードアレイを装備したHPLC(SPD−M10AVP、島津株式会社)にオクタデシルシリカカラム(Cosmosil 5C18−MS−II column,3.0 by 150mm,ナカライテスク株式会社)を取り付けたものを用いた。0.1%トリフルオロ酢酸溶液を溶離液A、0.1%トリフルオロ酢酸に80%のメタノールを含む溶液を溶離液Bとし、0.4ml/分の流速で20%溶離液B(80%溶離液A)を流し、サンプル注入後は5分間かけて溶離液Bの濃度を20%から100%に上昇させ、その後80%溶離液Bを10分間流した。この条件で、チロシンは約3.8分、チロソールは約5.4分、4−ヒドロキシフェニル酢酸は約5.7分、フェニル酢酸は約7.2分、2−フェニルエタノールは約7.3分に溶出した。それぞれの試薬を用いて検量線を作成し、検量線を用いてカラム分離後に溶出したそれぞれの化合物を定量した(ただし、フェニル酢酸はフェニルエタノールの検量線を代用した)。その際に、チロシン、チロソール、4−ヒドロキシフェニル酢酸は222nm、フェニル酢酸と2−フェニルエタノールは206nmの波長を用いて検出した。
培養液濁度は分光光度計(UV−160A、島津株式会社)を用いて培養液の濁度をOD660の値により測定して求め、各菌株の生育の指標とした。
(比較例1)チロソールの生産
製造例8〜9の菌株に代えて菌株を用いない(Blank)、または親株であるMG1655(DE3)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。24時間の培養後の、培地中のチロシン、チロソール、4−ヒドロキシフェニル酢酸、フェニル酢酸、2−フェニルエタノールの濃度を測定した。結果を表1に示す。
(比較例2)チロソールの生産
製造例8〜9の菌株に代えて製造例6〜7の菌株を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。24時間の培養後の、培地中のチロシン、チロソール、4−ヒドロキシフェニル酢酸、フェニル酢酸、2−フェニルエタノールの濃度を測定した。結果を表1に示す。
Figure 2018166473
(実施例2)チロソールの生産
製造例8〜9の菌株を用いてチロソールの生産を行った。培養条件は、27℃、30℃、34℃、または37℃の温度で培養した以外は実施例1に記載の条件を用いた。0時間、4時間、8時間、12時間、24時間の培養後の、培地中のチロシン、チロソール、2−フェニルエタノールの濃度を測定した。製造例8の菌株を用いたときの測定結果を図2〜4に示し、製造例9の菌株を用いたときの測定結果を図5〜7に示す。
(製造例10)遺伝子高発現株の作成
P1形質導入法(非特許文献2)を用いて、Saccharomyces cerevisiae由来のARO10遺伝子を大腸菌BW25113株の染色体に導入した。ARO10遺伝子を染色体上に含む菌株の作製法は下記の通りである。
ARO10遺伝子を含むプラスミドの作製:ARO10遺伝子は2種類のプライマー(5’−GTTTAACTTTAAGAAGGAGATATACATATGGCACCTGTTACAATTGAAAAG−3’および5’−GTGGTGGTGGTGCTCGAGTTTATTTTTTATTTCTTTTAAGTGCCGC−3’)を用いて、Saccharomyces cerevisiaeのゲノムDNAを鋳型としてPCRで増幅した。PCR産物と、NdeIとXhoIで一晩消化したpET21a−FRTベクターとをGibson試薬を用いて連結し、pET21a−FRT−ARO10を得た。
ARO10遺伝子を染色体上に含む菌株の作製:カナマイシン耐性遺伝子とT7プロモーターおよびT7ターミネーターに連結したARO10の遺伝子カセット(FRT−Km−FRT−PT7−ARO10−TT7)を増幅するために、pET21a−FRT−ARO10を鋳型として、2種類のプライマー(5’−TCGGGCTTCCAGCCTGCGCGACAGCAAACATAAGAAGGGGTGTTTTTATGATTCCGGGGATCCGTCGACC−3’と5’−CTTCTCCATGTGGAGAGGGTGGGATTGGATTACTTACGACCTGCCAGCAGATTCGCCAATCCGGATATAG−3’)を用いてPCRを行った。なお、カセットの増幅にはPrimeSTAR GXLポリメラーゼ(Takara Bio Inc.)を用い、プロトコールに従って反応を行った。増幅したPCR産物を用いて、Red相同組換えを用いた方法(非特許文献2)により、遺伝子カセットを大腸菌MG1655(DE3)株の染色体DNA上のmtlAの座位に導入し、M−ARG−70(MG1655(DE3)mtlA::FRT−Km−FRT−PT7−ARO10−TT7)株を得た。P1形質導入法により、BW25113(DE3)株のmtlA座位にM−ARG−70株のP1ライセートを用いてFRT−Km−FRT−PT7−ARO10−TT7カセットを挿入し、PAR−256(BW25113(DE3)mtlA::FRT−Km−FRT−PT7−ARO10−TT7)株を得た。
(製造例11)多重遺伝子高発現株の作成
P1形質導入法により、ARG−70株のP1ライセートを用いて、PAR−253株のmtlA座位にFRT−Km−FRT−PT7−ARO10−TT7カセットを挿入し、PAR−257(mtlA::FRT−Km−FRT−PT7−ARO10−TT7 ldhA::PT7−yahK−TT7)株を得た。
(製造例12)多重遺伝子高発現株の作成
P1形質導入法により、M−ARG−70株のP1ライセートを用いて、PAR−254株のmtlA座位にFRT−Km−FRT−PT7−ARO10−TT7カセットを挿入し、PAR−258(mtlA::FRT−Km−FRT−PT7−ARO10−TT7 ldhA::PT7−yahK−TT7 feaB::PT7−tyrB−TT7)株を得た。なお、この微生物ではフェニルアセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ(feaB)の活性が失われている。
(実施例3)チロソールの生産
製造例8〜9の菌株に代えて製造例12の菌株を用い、130rpmで培養した以外は、実施例1と同じ培養条件でチロソールの生産を行った。24時間の培養後の、培地中のチロシン、チロソール、4−ヒドロキシフェニル酢酸、フェニル酢酸、2−フェニルエタノールの濃度を測定した。結果を表2に示す。
(比較例3)チロソールの生産
製造例8〜9の菌株に代えて製造例10〜11の菌株を用い、130rpmで培養した以外は、実施例1と同じ条件でチロソールの生産を行った。24時間の培養後の、培地中のチロシン、チロソール、4−ヒドロキシフェニル酢酸、フェニル酢酸、2−フェニルエタノールの濃度を測定した。結果を表2に示す。
Figure 2018166473
(製造例13)多重遺伝子高発現株の作成
カナマイシン耐性遺伝子とT7プロモーターおよびT7ターミネーターに連結したtyrBの遺伝子カセット(FRT−Km−FRT−PT7−tyrB−TT7)を増幅するために、pET21a−FRT−tyrBを鋳型として、2種類のプライマー(5’−CGAGCAGATGATTTACTAAAAAAGTTTAACATTATCAGGAGAGCATTATGATTCCGGGGATCCGTCGACC−3’と5’−CCGTTTATGTTGCCAGACAGCGCTACTGATTAAGCGGATTTTTTCGCTTTATTCGCCAATCCGGATATAG−3’)を用いてPCRを行った。なお、カセットの増幅にはPrimeSTAR GXLポリメラーゼ(Takara Bio Inc.)を用い、プロトコールに従って反応を行った。増幅したPCR産物を用いて、Red相同組換えを用いた公知の方法(非特許文献2)により、遺伝子カセットを大腸菌MG1655(DE3)株の染色体DNA上のadhEの座位に導入し、M−ARG−71(MG1655(DE3)adhE::FRT−Km−FRT−PT7−tyrB−TT7)株を得た。P1形質導入法により、PAR−252株のadhE座位にM−ARG−71株のP1ライセートを用いてFRT−Km−FRT−PT7−tyrB−TT7カセットを挿入し、PAR−259(mtlA::PT7−ipdC−TT7 adhE::FRT−Km−FRT−PT7−tyrB−TT7)株を得た。この微生物ではアルコールデヒドロゲナーゼ(adhE)の活性が失われている。
(製造例14)多重遺伝子高発現株の作成
P1形質導入法により、PAR−253株のadhE座位にM−ARG−71株のP1ライセートを用いてFRT−Km−FRT−PT7−tyrB−TT7カセットを挿入し、PAR−260(mtlA::PT7−ipdC−TT7 adhE::FRT−Km−FRT−PT7−tyrB−TT7 ldhA::PT7−yahK−TT7)株を得た。この微生物ではアルコールデヒドロゲナーゼ(adhE)の活性が失われている。
(実施例4)チロソールの生産
製造例8〜9の菌株に代えて製造例13〜14の菌株を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。24時間の培養後の、培地中のチロシン、チロソール、4−ヒドロキシフェニル酢酸、フェニル酢酸、2−フェニルエタノールの濃度を測定した。結果を表3に示す。
Figure 2018166473
製造例13のPAR−259株は、製造例6のPAR−252株(比較例2)よりも原料のチロシンを速やかに消費し、それに伴いチロソールの生産量が増加した。同様に、製造例14のPAR−260株は、製造例7のPAR−253株(比較例2)よりも原料のチロシンを速やかに消費し、それに伴いチロソールの生産量が増加した。これらの結果は、tyrBの高発現により微生物のチロソールの生産能力が向上していることを示す。
(製造例15)多重遺伝子高発現株の作成
P1形質導入法により、aspC遺伝子をPAR−253株のfeaB座位に導入した。aspC遺伝子を染色体上に含む菌株の作製法は下記の通りである。
aspC遺伝子を含むプラスミドの作製:aspC遺伝子を、2種類のプライマー(5’−GTTTAACTTTAAGAAGGAGATATACATATGTTTGAGAACATTACCGCC−3’および5’−GTGGTGGTGGTGCTCGAGTTTACAGCACTGCCACAATCG−3’)を用いてEschrichia coli MG1655のゲノムDNAを鋳型としてPCRで増幅した。PCR産物と、NdeIとXhoIで一晩消化したpET21a−FRTベクターとをGibson試薬を用いて連結し、pET21a−FRT−aspCを得た。
aspC遺伝子を染色体上に含む菌株の作製:カナマイシン耐性遺伝子とT7プロモーターおよびT7ターミネーターに連結したaspCの遺伝子カセット(FRT−Km−FRT−PT7−aspC−TT7)を増幅するために、pET21a−FRT−aspCを鋳型として、2種類のプライマー(5’−TCGCTGCGTACACTGAAATCACACTGGGTAAATAATAAGGAAAAGTGATGATTCCGGGGATCCGTCGACC−3’と5’−TGCCGTTTTTTACTTATGAGCGAACCAGATTAATACCGTACACACACCGAATTCGCCAATCCGGATATAG−3’)を用いてPCRを行った。なお、カセットの増幅にはPrimeSTAR GXLポリメラーゼ(Takara Bio Inc.)を用い、プロトコールに従って反応を行った。増幅したPCR産物を用いて、Red相同組換えを用いた公知の方法(非特許文献2)により、遺伝子カセットを大腸菌MG1655(DE3)株の染色体DNA上のfeaBの座位に導入し、M−ARG−62(MG1655(DE3)feaB::FRT−Km−FRT−PT7−aspC−TT7)株を得た。P1形質導入法により、M−ARG−62株のP1ライセートを用いて、PAR−253株のfeaB座位にFRT−Km−FRT−PT7−aspC−TT7カセットを挿入し、PAR−261(mtlA::PT7−ipdC−TT7 ldhA::PT7−yahK−TT7 feaB::FRT−Km−FRT−PT7−aspC−TT7)株を得た。なお、この微生物ではフェニルアセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ(feaB)の活性が失われている。
(実施例5)チロソールの生産
製造例8〜9の菌株に代えて製造例15の菌株を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。24時間の培養後の、培地中のチロシン、チロソール、4−ヒドロキシフェニル酢酸、フェニル酢酸、2−フェニルエタノールの濃度を測定した。結果を表4に示す。
Figure 2018166473
製造例15のPAR−261株は、製造例7のPAR−253株(比較例2)よりも原料のチロシンを速やかに消費し、それに伴いチロソールの生産量が増加しており、製造例8のPAR−254株(実施例1〜2)と同様の傾向を示した。この結果は、tyrBに限らずアミノトランスフェラーゼは一般に、微生物のチロソールの生産能力を向上させることを示す。
(製造例16)多重遺伝子高発現株の作成
Saccharomyces cerevisiae由来のARO10遺伝子をプラスミドベクターpET21a−FRT(非特許文献2)に導入し、さらにこのプラスミドベクターpET21a−FRT−ARO10を、大腸菌BW25113(DE3)に導入して、BW25113(DE3)/pET21a−FRT−ARO10株を得た。
(製造例17)多重遺伝子高発現株の作成
tyrB遺伝子をプラスミドベクターpET21a−FRTに導入し、さらにこのプラスミドベクターpET21a−FRT−tyrBを、大腸菌PAR−253株に導入して、PAR−253/pET21a−FRT−tyrB株を得た。
(実施例6)チロソールの生産
製造例8〜9の菌株に代えて製造例17の菌株を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。24時間の培養後の、培地中のチロシン、チロソール、4−ヒドロキシフェニル酢酸、フェニル酢酸、2−フェニルエタノールの濃度を測定した。結果を表5に示す。
(比較例4)チロソールの生産
製造例8〜9の菌株に代えて製造例16の菌株を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。24時間の培養後の、培地中のチロシン、チロソール、4−ヒドロキシフェニル酢酸、フェニル酢酸、2−フェニルエタノールの濃度を測定した。結果を表5に示す。
Figure 2018166473
製造例17のPAR−253/pET21a−FRT−tyrB株は、製造例16のBW25113(DE3)/pET21a−FRT−ARO10株よりも原料のチロシンを速やかに消費し、それに伴いチロソールの生産量が増加しており、製造例8のPAR−254株(実施例1〜2)と同様の傾向を示した。この結果は、アミノトランスフェラーゼ遺伝子はプラスミドにより細胞内に導入された場合にも、微生物のチロソールの生産能力を向上させることを示す。

Claims (8)

  1. アミノトランスフェラーゼの活性が強化された微生物。
  2. アミノトランスフェラーゼをコードする遺伝子を染色体上に含む、
    請求項1に記載の微生物。
  3. アミノトランスフェラーゼが配列番号1に記載のアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる、
    請求項1または2に記載の微生物。
  4. アミノトランスフェラーゼが配列番号11に記載のアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる、
    請求項1または2に記載の微生物。
  5. 細菌または酵母である、
    請求項1〜4のいずれかに記載の微生物。
  6. さらに、アミノ酸トランスポーター、ヒドロキシフェニルピルビン酸デカルボキシラーゼ、またはアルデヒドリダクターゼの活性が強化された、
    請求項1〜5のいずれかに記載の微生物。
  7. さらに、フェニルアセトアルデヒドデヒドロゲナーゼの活性が抑制された、請求項1〜6のいずれかに記載の微生物。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の微生物をチロシンを含む培地で培養する工程を含む、チロソールの製造方法。
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