JP2018166436A - 反芻動物用飼料シートの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 消化率がよく、かつルーメン内での発酵が穏やかでルーメンアシドーシスを予防し得るクラフトパルプを含む反芻動物用飼料を搬送性に優れた形態に加工する方法を提供する。【解決手段】 水分率90質量%以上のパルプを含むスラリーを網目状のワイヤーにて固液分離する工程、固液分離したパルプをプレスすることで水分率35〜70質量%に脱水し、かつ脱水後の厚さが0.5〜5.0mmのパルプシートとする工程、脱水したパルプシートに温風を吹き付けることで水分率を10〜25質量%に乾燥する工程、を含む方法により反芻動物用飼料シートを製造する。【選択図】 なし
Description
本発明は、パルプを含む反芻動物用飼料の製造方法に関するものである。
一般に、牧畜分野においては、家畜の乳量の増加や増体重などを目的に、栄養価の高い濃厚飼料が、牧草などの粗飼料とともに使用されることが多い。
濃厚飼料は、トウモロコシ、麦類、大豆などの易消化性炭水化物(デンプンなど)を多く含む一方、粗飼料は、牧草を乾燥した干草(乾草、わら類)や、青刈りした牧草を発酵させたもの(サイレージ化したもの)などを主とする。
反芻動物が粗飼料を摂取し消化することが可能であるのは、ルーメン(第一胃)を有するためである。ルーメンは、反芻動物が有する複数の胃のうち最大の容積を占め、粗飼料中のセルロースやヘミセルロースなどの難消化性の多糖類を分解(ルーメン発酵)し得る微生物群(ルーメン微生物)が豊富に含まれている。
しかし、粗飼料中のセルロースやヘミセルロースは、リグニン類と結合し、それぞれリグニン−セルロース複合体やリグニン−ヘミセルロース複合体として存在している場合が多い。このような複合体は、ルーメン発酵において十分に分解されないおそれがあり、粗飼料は、飼料効率が不十分になりやすいという問題点があった。また、未消化物が多くなると糞量の増加を引き起こすため、環境面においても望ましくないとされていた。
さらに、粗飼料は、牧草の収穫量や作柄により影響を受けやすく、供給量が不安定である。特にわが国では粗飼料の多くを輸入に頼っているため、概して価格変動が大きく、また、輸出国の諸事情により輸入困難になる場合もあり、牧場経営を圧迫する場合がある。
このため、牧草に代替でき、飼料効率に優れ、且つ安定的に入手可能な反芻動物用飼料が望まれている。
ここで、飼料中の栄養濃度を高めるため、易消化性の炭水化物(デンプン)を多く含む濃厚飼料を粗飼料に配合することが一般に行われている。乳用家畜の乳量を維持し、或いは、肉用家畜の増体を維持するためは、飼料摂取量をも増加させる必要があるが、乳量の増加や体格の増強にともなうエネルギー要求量の増加率は、摂取飼料量の増加率を超えるためである。ところが、濃厚飼料中のデンプンなどの炭水化物は、第一胃(ルーメン)のpHを急激に低下させることがあり、結果としてルーメンアシドーシスが発生することがある。ルーメンアシドーシスとは、反芻動物の疾病の一種であり、炭水化物に富む穀物、濃厚飼料、果実類などを急激に摂取することにより引き起こされる。ルーメンアシドーシスにおいては、ルーメン内において、グラム陽性乳酸生成菌、特にStreptcoccus bovisおよびLactobacillus属微生物が増加し、乳酸あるいは揮発性脂肪酸(VFA:Volatile Fatty Acid)の異常な蓄積が生じ、ルーメン内のpHが低下する(pH5以下)。その結果、ルーメン内のプロトゾア(原生動物)、及びある種の細菌の減少あるいは消滅を引き起こす。特に急性アシドーシスは、ルーメンの鬱血や脱水症(胃内容浸透圧の上昇に伴い体液が大量に胃内に移動)、さらには昏睡や死をもたらすため、極めて危険である。
ルーメンアシドーシスの予防には、飼料配合の急激な変化を避け、ルーメン発酵を安定化させ、pHの変動を少なくすることが重要である。また、唾液には重曹が含まれpH調節に寄与するため、十分な反芻により唾液分泌のできる飼料を給与することも重要である。ただし、ルーメンアシドーシスを恐れ、飼料の栄養価を低くすると、エネルギーが不足して乳生産量が低下してしまうという懸念もある。
ルーメンアシドーシスを予防する飼料として、特許文献1には、セルロースおよび/またはヘミセルロースを80%以上含有する木材パルプを含む反芻動物用飼料が開示されている。
本発明が解決しようとする課題は、消化率がよく、かつルーメン内での発酵が穏やかでルーメンアシドーシスを予防し得るクラフトパルプを含む反芻動物用飼料を搬送性に優れた形態に加工する方法を提供することである。
クラフトパルプを反芻動物用飼料とすることは、特開2011−83281号公報に記載があるが、水分率50質量%以上のクラフトパルプは、高水分であるが故に、カビなどの発生が懸念され、数ヶ月に渡る長期保存ができず、流通範囲が限られていた。また、パルプは繊維質であるため、フラッフ形状のまま乾燥させるとかさ密度が低く、嵩張ってしまうという課題があった。一方、飼料として一般的なペレット形状は、成型時の圧力が高いため、ルーメン内で膨潤するまでの時間が長く必要となり、消化速度および消化率が低下する可能性があった。そこで、乾燥・成型によって搬送性に優れつつも、ペレット形状より消化率に優れる形態にクラフトパルプを加工する方法の発明に取組んだ。
本発明の発明者らは、上記課題について鋭意検討したところ、パルプを厚さ0.5〜5.0mmのシートに成型したのちに、水分率10〜25質量%に乾燥することで、パルプを飼料として消化性に優れ、かつ搬送性にも優れた形態に加工することができた。
すなわち、本発明は以下の発明を含む。
(1) 水分率90質量%以上のパルプを含むスラリーを網目状のワイヤーにて固液分離する工程、固液分離したパルプをプレスすることで水分率35〜70質量%に脱水し、かつ脱水後の厚さが0.5〜5.0mmのパルプシートとする工程、脱水したパルプシートに温風を吹き付けることで水分率を10〜25質量%に乾燥する工程、を含むことを特徴とする反芻動物用飼料シートの製造方法。
(2) 前記方法にて製造されたパルプシートをΦ20mm以下に裁断または粉砕することを特徴とする(1)記載の反芻動物用飼料シートの製造方法。
(3) パルプがカッパー価5から20の範囲にある酸素脱リグニンクラフトパルプであることを特徴とする(1)ないし(2)記載の反芻動物用飼料シートの製造方法。
(1) 水分率90質量%以上のパルプを含むスラリーを網目状のワイヤーにて固液分離する工程、固液分離したパルプをプレスすることで水分率35〜70質量%に脱水し、かつ脱水後の厚さが0.5〜5.0mmのパルプシートとする工程、脱水したパルプシートに温風を吹き付けることで水分率を10〜25質量%に乾燥する工程、を含むことを特徴とする反芻動物用飼料シートの製造方法。
(2) 前記方法にて製造されたパルプシートをΦ20mm以下に裁断または粉砕することを特徴とする(1)記載の反芻動物用飼料シートの製造方法。
(3) パルプがカッパー価5から20の範囲にある酸素脱リグニンクラフトパルプであることを特徴とする(1)ないし(2)記載の反芻動物用飼料シートの製造方法。
本発明によれば、消化率の良いパルプを長期間にわたり市場で流通することができる。
パルプシートの製造
本発明の反芻動物用飼料シートは、パルプを含むスラリーをワイヤーパート、プレスパート、ドライヤーパートを順に通過させて脱水して得られる。すなわち、水分率90質量%以上のパルプを含むスラリーを網目状のワイヤーにて固液分離する工程、固液分離したパルプをプレスすることで水分率35〜70質量%に脱水し、かつ脱水後の形状が厚さ0.5〜5.0mmのシートとする工程、脱水したパルプシートに温風を吹き付けることで水分率を10〜25質量%に乾燥する工程、を経て製造する。その際使用されるパルプマシンまたは抄紙機としては、例えば、長網式、円網式、短網式、ツインワイヤー式抄紙機などが挙げられる。
本発明の反芻動物用飼料シートは、パルプを含むスラリーをワイヤーパート、プレスパート、ドライヤーパートを順に通過させて脱水して得られる。すなわち、水分率90質量%以上のパルプを含むスラリーを網目状のワイヤーにて固液分離する工程、固液分離したパルプをプレスすることで水分率35〜70質量%に脱水し、かつ脱水後の形状が厚さ0.5〜5.0mmのシートとする工程、脱水したパルプシートに温風を吹き付けることで水分率を10〜25質量%に乾燥する工程、を経て製造する。その際使用されるパルプマシンまたは抄紙機としては、例えば、長網式、円網式、短網式、ツインワイヤー式抄紙機などが挙げられる。
また、本発明の反芻動物用飼料シートは、プレス後のパルプの水分が35〜70質量%である。パルプの水分が35質量%未満では現行の抄紙機では装置の制約上製造することが困難であり、またパルプの水分が70質量%より高ければ、輸送・保管の点で問題があり好ましくない。本水分は、抄き上げたパルプシートの水分である。また、プレス後のシートの厚さは0.5〜5.0mmとすることが必須である。0.5mm以下のシートは強度がなく、ワイヤーパート、プレスパート、ドライヤーパートを順に通過させる際に、千切れる可能性が高まる。一方、5mm以上のシートは厚く強度が増すため、裁断や粉砕が困難となる。
本発明のパルプシートは、水分率90質量%以上のパルプを含むスラリーをワイヤーパート、プレスパート、ドライヤーパートを順に通過させて脱水して得られる。ワイヤーパートの型式としては、特に限定されるものではなく、例えば、長網式、短網式、円網式、ツインワイヤー式等が挙げられる。本発明においては、脱水効率の良いツインワイヤー式のワイヤーパートとすることが、パルプシートの効率的な製造につながるため好ましい。
プレス型式については特に限定されず、ツインバープレス、トライニッププレス、トライベントプレス、エクステンディッドニッププレス、シュープレス、タンデムシュープレス、ベビープレス、ツインワイヤープレス、ヘビーデューティープレス等、を1種あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。またプレスロールについても特に限定されず、グルーブドロール、サクションロール、プレーンロール等のゴムカバー、樹脂カバー等がなされたロール等、を1種あるいは2種以上を、適宜選択、組み合わせて使用することができる。
プレスパートを通過したパルプシートの水分含量を35〜70質量%以下とすることにより、ドライヤーパートにかかる負荷を低減でき、効率的なパルプシートの製造が可能となる。ドライヤー型式については温風を吹き付ける方式であれば特に限定されず、IRドライヤー、熱風式エアドライヤー等を使用することができ、このうちの1種、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。パルプシートは未叩解であり強度が弱く、シリンダードライヤーではシリンダー間の張力に耐えられないので、好ましくない。ドライヤーパートを通過したパルプシートの水分含量は外販のための輸送時の輸送ロスを軽減するために、10〜25質量%以下とすることが必要で、15質量%以下とすることがさらに好ましい。水分含量の下限については特に限定されないが、5質量%以上とすることが好ましい。水分含量を5質量%未満にするとドライヤー乾燥を増強する必要があるため、省エネの観点から好ましくない。
パルプシートの坪量は特に限定されないが、300〜2000g/m2が好ましい。ドライヤーパートを通過したパルプシートは、連続的に製品仕上げされる。製品仕上げの形状としては、巻取形状および/または平判形状とすることができ、客先の要望に合わせて、任意の形状に仕上げることができる製造装置を適宜選択し、製造することができる。得られたパルプシートはΦ20mm以下に裁断または粉砕することが好ましく、5〜50mm×5〜50mmのシート片としてもよい。
本発明の反芻動物用飼料シートが含有するパルプとして好ましいものは、漂白または未漂白のクラフトパルプである。クラフトパルプを10質量%以上含有することが好ましく、50質量%以上含有することがより好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、クラフトパルプのみからなっていてもよい。必要に応じて、他の飼料成分を含有させてもよい。クラフトパルプとしては、酸素脱リグニン処理したものが好ましく、また、カッパー価が30以下であることが好ましい。カッパー価の下限は特に制限されないが、5以上であることが好ましい。より好ましくはカッパー価は5〜28であり、7〜26であってもよい。カッパー価が30以下であると、反芻動物の嗜好性が良好である。
本発明の反芻動物用飼料シートは、クラフトパルプ(KP)を含有することが好ましいが、他の公知のパルプ化法によって製造されたパルプを併用することができる。例えば、機械パルプ、化学パルプのいずれもが適用可能である。機械パルプとしては、砕木パルプ(GP)、リファイナーグラウンドウッドパルプ(RGP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)等が挙げられる。化学パルプとしては、クラフトパルプ(KP)、溶解クラフトパルプ(DKP)、サルファイトパルプ(SP)、溶解サルファイトパルプ(DSP)等が挙げられる。また、漂白パルプ、未漂白パルプのいずれも使用できる。これらの中では、酸素脱リグニン処理した化学パルプ、漂白化学パルプなどが好ましい。
原料の木材としては、例えば、広葉樹、針葉樹、雑木、タケ、ケナフ、バガス、パーム油搾油後の空房が使用できる。具体的には、広葉樹としては、ブナ、シナ、シラカバ、ポプラ、ユーカリ、アカシア、ナラ、イタヤカエデ、センノキ、ニレ、キリ、ホオノキ、ヤナギ、セン、ウバメガシ、コナラ、クヌギ、トチノキ、ケヤキ、ミズメ、ミズキ、アオダモ等が例示される。針葉樹としては、スギ、エゾマツ、カラマツ、クロマツ、トドマツ、ヒメコマツ、イチイ、ネズコ、ハリモミ、イラモミ、イヌマキ、モミ、サワラ、トガサワラ、アスナロ、ヒバ、ツガ、コメツガ、ヒノキ、イチイ、イヌガヤ、トウヒ、イエローシーダー(ベイヒバ)、ロウソンヒノキ(ベイヒ)、ダグラスファー(ベイマツ)、シトカスプルース(ベイトウヒ)、ラジアータマツ、イースタンスプルース、イースタンホワイトパイン、ウェスタンラーチ、ウェスタンファー、ウェスタンヘムロック、タマラック等が例示される。
クラフトパルプ
本発明で使用するクラフトパルプのカッパー価は、特に制限されないが、例えば、10以上が好ましく、15以上がより好ましく、20以上や22以上としてもよい。カッパーの上限は特に制限されないが、30以下とすることができる。
本発明で使用するクラフトパルプのカッパー価は、特に制限されないが、例えば、10以上が好ましく、15以上がより好ましく、20以上や22以上としてもよい。カッパーの上限は特に制限されないが、30以下とすることができる。
木材チップからクラフトパルプを製造する場合、木材チップは蒸解液と共に蒸解釜へ投入され、クラフト蒸解に供する。また、MCC、EMCC、ITC、Lo−solidなどの修正クラフト法の蒸解に供しても良い。また、1ベッセル液相型、1ベッセル気相/液相型、2ベッセル液相/気相型、2ベッセル液相型などの蒸解型式なども特に限定はない。すなわち、本願のアルカリ性水溶液を含浸し、これを保持する工程は、従来の蒸解液の浸透処理を目的とした装置や部位とは別個に設置してもよい。好ましくは、蒸解を終えた未晒パルプは蒸解液を抽出後、ディフュージョンウォッシャーなどの洗浄装置で洗浄する。木材チップと薬液の液比は、例えば、1.0〜5.0L/kgとすることができ、1.5〜4.5L/kgが好ましく、2.0〜4.0L/kgがさらに好ましい。
また、本発明においては、キノン化合物を含むアルカリ性蒸解液を蒸解釜に添加してもよい。キノン化合物を含むアルカリ性蒸解液を添加する場合は絶乾チップ当たり0.01〜1.5質量%が好ましい。キノン化合物の添加量が0.01質量%未満であると添加量が少なすぎて蒸解後のパルプのカッパー価が低減されず、カッパー価とパルプ収率の関係が改善されない。さらに、粕の低減、粘度の低下の抑制も不十分である。また、キノン化合物の添加量が1.5質量%を超えてもさらなる蒸解後のパルプのカッパー価の低減、及びカッパー価とパルプ収率の関係の改善は認められない。
使用されるキノン化合物はいわゆる公知の蒸解助剤としてのキノン化合物、ヒドロキノン化合物又はこれらの前駆体であり、これらから選ばれた少なくとも1種の化合物を使用することができる。これらの化合物としては、例えば、アントラキノン、ジヒドロアントラキノン(例えば、1,4−ジヒドロアントラキノン)、テトラヒドロアントラキノン(例えば、1,4,4a,9a−テトラヒドロアントラキノン、1,2,3,4−テトラヒドロアントラキノン)、メチルアントラキノン(例えば、1−メチルアントラキノン、2−メチルアントラキノン)、メチルジヒドロアントラキノン(例えば、2−メチル−1,4−ジヒドロアントラキノン)、メチルテトラヒドロアントラキノン(例えば、1−メチル−1,4,4a,9a−テトラヒドロアントラキノン、2−メチル−1,4,4a,9a−テトラヒドロアントラキノン)等のキノン化合物であり、アントラヒドロキノン(一般に、9,10−ジヒドロキシアントラセン)、メチルアントラヒドロキノン(例えば、2−メチルアントラヒドロキノン)、ジヒドロアントラヒドロアントラキノン(例えば、1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン)又はそのアルカリ金属塩等(例えば、アントラヒドロキノンのジナトリウム塩、1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセンのジナトリウム塩)等のヒドロキノン化合物であり、アントロン、アントラノール、メチルアントロン、メチルアントラノール等の前駆体が挙げられる。これら前駆体は蒸解条件下ではキノン化合物又はヒドロキノン化合物に変換する可能性を有している。
蒸解液は、対絶乾木材チップ重量当たりの活性アルカリ添加率(AA)を10〜35質量%とすることが好ましい。活性アルカリ添加率を10質量%未満であるとリグニンやヘミルロースの除去が不十分となり、35質量%を超えると収率の低下や品質の低下が起こる。ここで活性アルカリ添加率とは、NaOHとNa2Sの合計の添加率をNa2Oの添加率として換算したもので、NaOHには0.775を、Na2Sには0.795を乗じることでNa2Oの添加率に換算できる。また、硫化度は20〜35%の範囲が好ましい。硫化度20%未満の領域においては、脱リグニン性の低下、パルプ粘度の低下、粕率の増加を招く。
クラフト蒸解は、120〜180℃の温度範囲で行うことが好ましく、140〜160℃がより好ましい。温度が低すぎると脱リグニン(カッパー価の低下)が不十分である一方、温度が高すぎるとセルロースの重合度(粘度)が低下する。また、本発明における蒸解時間とは、蒸解温度が最高温度に達してから温度が下降し始めるまでの時間であるが、蒸解時間は、60分以上600分以下が好ましく、120分以上360分以下がさらに好ましい。蒸解時間が60分未満ではパルプ化が進行せず、600分を超えるとパルプ生産効率が悪化するために好ましくない。
また、本発明におけるクラフト蒸解は、Hファクター(Hf)を指標として、処理温度及び処理時間を設定することができる。Hファクターとは、蒸解過程で反応系に与えられた熱の総量を表す目安であり、下記の式によって表わされる。Hファクターは、チップと水が混ざった時点から蒸解終了時点まで時間積分することで算出する。Hファクターとしては、300〜2000が好ましい。
Hf=∫exp(43.20−16113/T)dt
[式中、Tはある時点の絶対温度を表す]
本発明においては、蒸解後得られた未漂白(未晒)パルプは、必要に応じて、種々の処理に供することができる。例えば、クラフト蒸解後に得られた未漂白パルプに対して、漂白処理を行うことができる。
[式中、Tはある時点の絶対温度を表す]
本発明においては、蒸解後得られた未漂白(未晒)パルプは、必要に応じて、種々の処理に供することができる。例えば、クラフト蒸解後に得られた未漂白パルプに対して、漂白処理を行うことができる。
クラフト蒸解で得られたパルプについて、酸素脱リグニン処理を行うことができる。本発明に使用される酸素脱リグニンは、公知の中濃度法あるいは高濃度法がそのまま適用できる。中濃度法の場合はパルプ濃度が8〜15質量%、高濃度法の場合は20〜35質量%で行われることが好ましい。酸素脱リグニンにおけるアルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムを使用することができ、酸素ガスとしては、深冷分離法からの酸素、PSA(Pressure Swing Adsorption)からの酸素、VSA(Vacuum Swing Adsorption)からの酸素等が使用できる。
酸素脱リグニン処理の反応条件は、特に限定はないが、酸素圧は3〜9kg/cm2、より好ましくは4〜7kg/cm2、アルカリ添加率はパルプ絶乾重量当たり0.5〜4質量%、処理温度80〜140℃、処理時間20〜180分、この他の条件は公知のものが適用できる。なお、本発明において、酸素脱リグニン処理は、複数回行ってもよい。また、酸素脱リグニン処理などを施した後の酸素脱リグニンクラフトパルプのカッパー価は5〜20であることが好ましい。
さらなるカッパー価の低下、白色度の向上を目的とする場合、酸素脱リグニン処理が施されたパルプは、例えば、次いで洗浄工程へ送られ、洗浄後、多段漂白工程へ送られ、多段漂白処理を行うことができる。本発明の多段漂白処理は、特に限定されるものではないが、酸(A)、二酸化塩素(D)、アルカリ(E)、酸素(O)、過酸化水素(P)、オゾン(Z)、過酸等の公知の漂白剤と漂白助剤を組み合わせるのが好適である。例えば、多段漂白処理の初段は二酸化塩素漂白段(D)やオゾン漂白段(Z)を用い、二段目にはアルカリ抽出段(E)や過酸化水素段(P)、三段目以降には、二酸化塩素や過酸化水素を用いた漂白シーケンスが好適に用いられる。三段目以降の段数も特に限定されるわけではないが、エネルギー効率、生産性等を考慮すると、合計で三段あるいは四段で終了するのが好適である。また、多段漂白処理中にエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)等によるキレート剤処理段を挿入してもよい。
本発明の反芻動物用飼料シートは、他の飼料と併せて反芻動物に給与することができる。他の飼料成分としては、粗飼料(例えば牧草)、濃厚飼料(例えばトウモロコシ、麦などの穀類、大豆などの豆類)、ふすま、米糠、おから、蛋白質、脂質、ビタミン、ミネラルなどや添加剤(保存料、着色料、香料等)、等が挙げられる。
本発明の反芻動物用飼料は、水分含有率を15質量%以下とすることが好ましい。水分含有率を15質量%以下とすることで、運搬性が向上し、微生物による腐敗を軽減できる。
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
実験1:サンプル製造
(サンプル1)
針葉樹未晒クラフトパルプ(樹種:スギ、カッパー価:25.0、ISO白色度:27.5%)を原料とした。
次いで、この針葉樹未晒クラフトパルプを、水分率90質量%以上のパルプスラリーとして、固液分離するワイヤーパートおよびプレス脱水するプレスパートを有するダブルワイヤーマシン(丸石製作所、MAE―12型)において抄速40m/分で水分率50.2質量%のウェットパルプシートを製造した。次いで、フレクトドライヤーにて水分率20質量%のドライパルプシート(坪量:1、200g/m2)を製造した。製造したドライパルプシートを6mm角に細切したものをサンプル1とした。
(サンプル1)
針葉樹未晒クラフトパルプ(樹種:スギ、カッパー価:25.0、ISO白色度:27.5%)を原料とした。
次いで、この針葉樹未晒クラフトパルプを、水分率90質量%以上のパルプスラリーとして、固液分離するワイヤーパートおよびプレス脱水するプレスパートを有するダブルワイヤーマシン(丸石製作所、MAE―12型)において抄速40m/分で水分率50.2質量%のウェットパルプシートを製造した。次いで、フレクトドライヤーにて水分率20質量%のドライパルプシート(坪量:1、200g/m2)を製造した。製造したドライパルプシートを6mm角に細切したものをサンプル1とした。
(サンプル2)
サンプル1で製造したウェットパルプシートを解繊機(商品名:ウェットパルプ解繊機、熊谷理機工業株式会社製)にてフラッフ形状に加工した。フラッフ形状にしたのち、水分率13.4%に乾燥したものをサンプル2とした。
サンプル1で製造したウェットパルプシートを解繊機(商品名:ウェットパルプ解繊機、熊谷理機工業株式会社製)にてフラッフ形状に加工した。フラッフ形状にしたのち、水分率13.4%に乾燥したものをサンプル2とした。
(サンプル3)
クラフトパルプペレットを下記の通り作成し、サンプル3とした。
サンプル2のフラッフ形状のパルプをリングダイ式小型ペレタイザー(カリフォルニアペレットミル製、モーター容量30kw)を用いて圧縮処理し、直径約4.8mm、長さ約20mmのペレットを製造した。ペレットの水分率は約12.2%だった。
クラフトパルプペレットを下記の通り作成し、サンプル3とした。
サンプル2のフラッフ形状のパルプをリングダイ式小型ペレタイザー(カリフォルニアペレットミル製、モーター容量30kw)を用いて圧縮処理し、直径約4.8mm、長さ約20mmのペレットを製造した。ペレットの水分率は約12.2%だった。
実験2:糖化率測定
0.02M酢酸緩衝液(pH5.0)2mLに2%(w/v)にセルラーゼ酵素(102321 セルラーゼ オノズカ R−10、メルク株式会社)0.1%を添加し、45℃にて48時間糖化処理を行った。セルラーゼ糖化率は反芻動物の消化率と高い相関がある。
0.02M酢酸緩衝液(pH5.0)2mLに2%(w/v)にセルラーゼ酵素(102321 セルラーゼ オノズカ R−10、メルク株式会社)0.1%を添加し、45℃にて48時間糖化処理を行った。セルラーゼ糖化率は反芻動物の消化率と高い相関がある。
実験3:かさ密度測定
パルプシート(サンプル1)はベールの縦、横、高さを測定し、ベール重量を用いることで、かさ密度を測定した。
パルプペレット(サンプル3)とフラッフパルプ(サンプル2)に関しては、JIS Z 7302-9 に準じて、次のように試験した。ただし、測定容器の大きさは5リットルとする。
円孔径3.15mmの板ふるいに掛けた試料(約8kg)を用いる。
測定容器: 取手付き5リットル円筒形容器
(a) 空の測定容器のみの質量と、容器に水を満たした時の質量を、いずれも1gの桁まではかり、水1g=1cm3として容器の容積(V)を次式から求める。
V=(mW−m0)×1(cm3/g)(cm3)
ここで、V:測定容器の容積(cm3)、m0:空の測定容器の質量(g)、mW:水を満たした容器の質量(g)
(b) 測定容器を良く乾燥した後、試料を測定容器の縁からあふれる状態まで入れ、約15 cmの高さから厚さ1.5cmの木製板(中密度ファイバーボードMDF)上に3回落下させる。
(c)測定容器に減量分を追加して、試料がすりきり状態になるまで(b)の操作を繰り返す。
(d)試料の表面が平らになるように整え、試料で満たされた測定容器の質量を1gの桁まで計量する。
(e)かさ密度BDを次式から計算する。
BD={(m1−m0)/V}×1000(kg/m3)
ここで、BD:かさ密度(kg/m3)
m0:空の測定容器の質量(g)
m1:試料を満たした測定容器の質量(g)
V :測定容器の容積(cm3)
パルプシート(サンプル1)はベールの縦、横、高さを測定し、ベール重量を用いることで、かさ密度を測定した。
パルプペレット(サンプル3)とフラッフパルプ(サンプル2)に関しては、JIS Z 7302-9 に準じて、次のように試験した。ただし、測定容器の大きさは5リットルとする。
円孔径3.15mmの板ふるいに掛けた試料(約8kg)を用いる。
測定容器: 取手付き5リットル円筒形容器
(a) 空の測定容器のみの質量と、容器に水を満たした時の質量を、いずれも1gの桁まではかり、水1g=1cm3として容器の容積(V)を次式から求める。
V=(mW−m0)×1(cm3/g)(cm3)
ここで、V:測定容器の容積(cm3)、m0:空の測定容器の質量(g)、mW:水を満たした容器の質量(g)
(b) 測定容器を良く乾燥した後、試料を測定容器の縁からあふれる状態まで入れ、約15 cmの高さから厚さ1.5cmの木製板(中密度ファイバーボードMDF)上に3回落下させる。
(c)測定容器に減量分を追加して、試料がすりきり状態になるまで(b)の操作を繰り返す。
(d)試料の表面が平らになるように整え、試料で満たされた測定容器の質量を1gの桁まで計量する。
(e)かさ密度BDを次式から計算する。
BD={(m1−m0)/V}×1000(kg/m3)
ここで、BD:かさ密度(kg/m3)
m0:空の測定容器の質量(g)
m1:試料を満たした測定容器の質量(g)
V :測定容器の容積(cm3)
シート形状は積み重ねることできるため、サンプル間に余分な空隙が生じず、かさ密度をペレットとほぼ同等にすることができた。一方、成型時にペレットほど圧力がかからないため、酵素液に浸漬しやすく、セルラーゼの糖化率が高かった。ペレットと同等の搬送性を有し、かつ消化速度および消化率に優れる飼料形状とすることができた。
試験結果を表1に示す。
試験結果を表1に示す。
表1に示されるように、本発明のパルプシート(サンプル1)はペレット(サンプル3)並みのかさ密度でありながら、パルプペレットよりも消化率に優れていた。
Claims (3)
- 水分率90質量%以上のパルプを含むスラリーを網目状のワイヤーにて固液分離する工程、
固液分離したパルプをプレスすることで水分率35〜70質量%に脱水し、かつ脱水後の厚さが0.5〜5.0mmのパルプシートとする工程、
脱水したパルプシートに温風を吹き付けることで水分率を10〜25質量%に乾燥する工程、
を含むことを特徴とする反芻動物用飼料シートの製造方法。 - 前記方法にて製造されたパルプシートをΦ20mm以下に裁断または粉砕することを特徴とする請求項1記載の反芻動物用飼料シートの製造方法。
- パルプがカッパー価7〜30であるクラフトパルプであることを特徴とする請求項1ないし2記載の反芻動物用飼料シートの製造方法。
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