上記特許文献1に記載のワイパモータでは、センサ磁石はウォームホイールに設けられた保持片の爪部によって保持されているが、保持片は径方向外側に弾性変形可能であるため、センサ磁石が保持片から脱落する恐れがある。また、センサ磁石と磁気センサとの間隔は磁気センサに必要な磁束を確保するために小さく設定されているため、車両振動等によりセンサ磁石が所定の位置から出力軸の軸線方向で磁気センサ側にずれ、センサ磁石が磁気センサに接触する恐れがある。このような接触は、センサ磁石の割れや、磁気センサの故障に繋がる。
一方、特許文献2乃至特許文献3に記載のセンサ磁石固定手段においても、次のような問題がある。特許文献2では、センサ磁石の周囲の樹脂を熱カシメする量を磁石の全周にわたって均等かつ適切に設定することが難しい。このため、加熱ヘッドを押し当てる際の位置決めが難しいという問題がある。また、一部が露出しているセンサ磁石の外周側の樹脂を直接加熱ヘッドにより熱カシメするため、加熱ヘッドがセンサ磁石に接触する恐れがある。さらに、加熱ヘッドの位置決めが適切でない場合には、一部又は全体の熱カシメの量が不足することにより、センサ磁石がずれたり、脱落したりする恐れもある。
特許文献3では、センサ磁石の外周側の外周リブに設けられたカシメ部に対して直接カシメ用ヘッドを押し当て、センサ磁石の露出された端面に向けて熱又は超音波カシメするため、カシメ用ヘッドがセンサ磁石に接触する恐れがある。また、センサ磁石の露出されている面に対して、カシメ部を均等かつ適切に設定することが難しい。このため、カシメ用ヘッドを押し当てる際の位置決めが難しいという問題がある。さらに、カシメ部が適切に設定されていないと、センサ磁石がずれたり、脱落したりする恐れもある。
そこで、本発明の目的は、センサ磁石が歯車から脱落することを防ぐことができ、振動によりセンサ磁石が磁気センサに接触することを防ぐことができると共に、センサ磁石の固定時に加熱ヘッド等の製造装置がセンサ磁石に接触することを防ぎ、かつ、センサ磁石を歯車に固着することが容易な構造の磁石付き歯車を提供することにある。
本発明の他の目的は、プレートのバリ取りを不要にすることができる磁石付き歯車を提供することにある。
本発明の他の目的は、センサ磁石の位置決めを容易に行うことができる磁石付き歯車を提供することにある。
本発明の他の目的は、前記磁石付き歯車の効果を奏することができるモータを提供することにある。
さらに本発明の他の目的は、前記磁石付き歯車の効果を奏することができるワイパモータを提供することにある。
本発明の上記目的は、以下の構成によって達成できる。すなわち、本発明の第1の態様の磁石付き歯車は、軸方向から見て円形であり、外周に外歯が形成された歯車であって、前記歯車の軸方向の一方の面に設けられ、磁石が挿入される磁石挿入部と、前記磁石挿入部に挿入された前記磁石と、前記磁石挿入部の前記軸方向の一方の少なくとも一部を閉塞するプレートと、前記歯車の軸方向の一方の面に設けられ前記プレートを固定する固定手段と、前記プレートに設けられ、前記固定手段と係合して固定される被固定手段とを備え、前記磁石は前記磁石挿入部と前記プレートとの間に保持されていることを特徴とする。
本発明の第2の態様の磁石付き歯車は、第1の態様の磁石付き歯車において、前記磁石は磁気センサにより歯車の回転を検出するためのセンサ磁石であることを特徴とする。
本発明の第3の態様の磁石付き歯車は、第1又は第2の態様の磁石付き歯車において、前記磁石は略円板状であり、前記歯車の軸線に垂直な方向に着磁されていることを特徴とする。
本発明の第4の態様の磁石付き歯車は、第1〜第3のいずれかの態様の磁石付き歯車において、前記プレートは非磁性金属製であることを特徴とする。
本発明の第5の態様の磁石付き歯車は、第1〜第4のいずれかの態様の磁石付き歯車において、前記プレートは前記磁石よりも大径の略円板状であることを特徴とする。
本発明の第6の態様の磁石付き歯車は、第1〜第4のいずれかの態様の磁石付き歯車において、前記プレートは少なくとも長辺が前記磁石挿入部を横断する長さを有する帯形状であることを特徴とする。
本発明の第7の態様の磁石付き歯車は、第6の態様の磁石付き歯車において、前記プレートの少なくとも前記磁石に対向する面には複数のディンプルが設けられていることを特徴とする。
本発明の第8の態様の磁石付き歯車は、第1〜第7のいずれかの態様の磁石付き歯車において、前記磁石の外周と対向する外周対後面が形成された挿入壁を備えることを特徴とする。
本発明の第9の態様の磁石付き歯車は、第8の態様の磁石付き歯車において、前記固定手段は、前記挿入壁よりも前記軸方向の一方へ突出していることを特徴とする。
本発明の第10の態様の磁石付き歯車は、第8又は第9のいずれかの態様の磁石付き歯車において、前記外周対向面には前記磁石を周方向に位置決めする第1位置決め手段が設けられており、前記磁石には前記第1位置決め手段と係合する第2位置決め手段が設けられていることを特徴とする。
本発明の第11の態様の磁石付き歯車は、第10の態様の磁石付き歯車において、前記第2位置決め手段は前記磁石のN極とS極との境界近傍に設けられていることを特徴とする。
本発明の第12の態様の磁石付き歯車は、第1〜第11のいずれかの態様の磁石付き歯車において、前記磁石挿入部の底面における前記固定手段又は前記第1位置決め手段の周囲には、底面凹部が設けれていることを特徴とする。
本発明の第13の態様の磁石付き歯車は、第1〜12のいずれかの態様の磁石付き歯車において、前記磁石挿入部の底面における前記固定手段又は前記第1位置決め手段の近傍には、前記磁石側に凸となる磁石支持部が設けられていることを特徴とする。
本発明の第14の態様の磁石付き歯車は、第1〜13のいずれかの態様の磁石付き歯車において、前記歯車は外周に外歯が形成された略円盤状のギヤ部と、前記ギヤ部の軸方向の他方の面から突設された軸部と、を有し、前記ギヤ部の前記軸方向の一方の面の中央に前記磁石が配置されていることを特徴とする。
本発明の第15の態様のモータは、第1〜14のいずれかの態様の磁石付き歯車を備え、前記磁石に対向して磁気センサを備えたことを特徴とする。
本発明の第16の態様のワイパモータは、第15の態様のモータの出力軸にワイパ装置が接続されることを特徴とする。
本発明の第1の態様の磁石付き歯車によれば、磁石は磁石挿入部とプレートとの間に支持されているため、センサ磁石が歯車から脱落することを防ぐことができ、振動によりセンサ磁石が磁気センサに接触することを防ぐと共に、センサ磁石の固定時に加熱ヘッド等の製造装置がセンサ磁石に接触することを防ぐことができる。また、固定手段を被固定手段に係合し、例えば熱カシメによりプレートを固定することにより、センサ磁石を歯車に固着することが容易な構造の磁石付き歯車を提供することができる。
本発明の第2の態様の磁石付き歯車によれば、磁石付き歯車の磁石をセンサ磁石として用いることができ、例えばワイパモータの絶対位置検出手段として利用することができる。
本発明の第3の態様の磁石付き歯車によれば、磁石は略円板状であり、歯車の軸線に垂直な方向に着磁されているので、磁石をセンサ磁石として利用した際に、磁気センサによって磁束の変化をより確実に検出することができる。
本発明の第4の態様の磁石付き歯車によれば、プレートは非磁性金属製であるので、磁石をセンサ磁石として利用した際に、センサ磁石の磁束をより確実に磁気センサで検出することができる。
本発明の第5の態様の磁石付き歯車によれば、プレートは磁石よりも大径の略円板状であるから、磁石が露出することが無い。このため、磁石の固定時に加熱ヘッド等の製造装置がセンサ磁石に接触することを防ぐことができる。
本発明の第6の態様の磁石付き歯車によれば、プレートは少なくとも長辺が磁石挿入部を横断する長さを有する帯形状であるので、プレートの材料を少なくすることができる。
本発明の第7の態様の磁石付き歯車によれば、プレートの少なくとも磁石に対向する面には複数のディンプルが設けられており、プレートの複数のディンプルが磁石に当接する。このため、プレートのプレス加工の際にプレートの端部にバリが発生した場合にも、バリが磁石に接触することを避けることができる。それにより、プレートのバリ取り加工を省くことができ、プレートの製造工程を簡略化することができる。
本発明の第8の態様の磁石付き歯車によれば、磁石挿入部は、磁石の外周と対向する外周対向面が形成された挿入壁を備えているので、磁石の外周を外周対向面に嵌め込むことにより、磁石を所定の位置に確実に固定することができる。
本発明の第9の態様の磁石付き歯車によれば、固定手段は、前記挿入壁よりも前記軸方向の一方へ突出しているので、固定手段を被固定手段に係合させることが容易であると共に、確実に係合させることができる。
本発明の第10の態様の磁石付き歯車によれば、外周対向面には磁石を周方向に位置決めする第1位置決め手段が設けられており、磁石には第1位置決め手段と係合する第2位置決め手段が設けられているので、磁石の周方向の位置決めが確実にできる。これにより、磁石をセンサ磁石として用いた際に、センサ磁石の磁束の向きを所定の状態に設定することが容易にできる。
本発明の第11の態様の磁石付き歯車によれば、第2位置決め手段は前記磁石のN極とS極との境界近傍に設けられている。第2位置決め手段が設けられた部位では磁束が一様とならずに乱れる恐れがあり、磁束が強い部分で磁束が乱れることはできる限り避けたい。一方、磁石のN極とS極との境界近傍は磁束が弱く、磁束の乱れの影響は比較的小さい。そこで、第2位置決め手段を磁石のN極とS極との境界近傍に設けることにより、磁石をセンサ磁石として使用する際に、磁束の乱れの影響を抑制することができる。
本発明の第12の態様の磁石付き歯車によれば、磁石挿入部の底面における固定手段又は第1位置決め手段の周囲には、底面凹部が設けれている。磁石を固定手段に沿って挿入壁の外周対向面に嵌め込む際に、樹脂製の固定手段の表面が削られ、樹脂の削りかすが発生する恐れがある。磁石挿入部の底面における固定手段の周囲に底面凹部が設けれていると、樹脂の削りかすは底面凹部に収容されるので、樹脂の削りかすが飛散するのを防止することができる。
本発明の第13の態様の磁石付き歯車によれば、磁石挿入部の底面において、磁石支持部で磁石を支持することができる。磁石を支持する部分の面積が広いと、精密な面加工を要する部分が広くなる。これに対して、磁石挿入部の底面において、凸となる磁石支持部で磁石を支持するようにすれば、磁石支持部だけを精密に面加工すればよいので、磁石挿入部の底面の面加工の工程を簡略化することができる。
本発明の第14の態様の磁石付き歯車によれば、上記効果を奏する磁石付き歯車を例えばウォームホイールとして用いることができる。
本発明の第15の態様のモータによれば、上記効果を奏する磁石付き歯車を備えたモータを提供することができる。
本発明の第16の態様のワイパモータによれば、上記効果を奏する磁石付き歯車を備えたワイパモータを提供することができる。
本発明の第1実施形態に係るワイパモータの断面図である。
図1の分解斜視図である。
図3(A)はウォームホイールの平面図であり、図3(B)はウォームホイールの側面図である。
ウォームホイールの磁石挿入部の分解斜視図である。
プレートの平面図である。
図6(A)はセンサ磁石の平面図であり、図6(B)はセンサ磁石の側面図である。
センサ磁石周囲の部分断面図である。
図7の部分拡大断面図である。
図9(A)は第2実施形態のプレートの平面図であり、図9(B)は第2実施形態のウォームホイールの平面図である。
第3実施形態に係るプレートの斜視図である。
図10の部分断面図である。
第3実施形態に係る磁石挿入部の断面斜視図である。
図13(A)は第4実施形態に係るプレートを用いたウォームホイールの分解斜視図であり、図13(B)は図13(A)の組立後の斜視図であり、図13(C)は第1変形例に係るプレートを用いたウォームホイールの分解斜視図であり、図13(D)は図13(C)の組立後の斜視図であり、図13(E)は第2変形例に係るプレートを用いたウォームホイールの分解斜視図であり、図13(F)は図13(E)の組立後の斜視図である。
以下、図面を参照して本発明の実施形態に係る磁石付き歯車を説明する。但し、以下に示す実施形態は本発明の技術思想を具体化するための磁石付き歯車を例示するものであって、本発明をこれらに特定するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものにも等しく適用し得るものである。また、以下ではワイパモータを例に挙げて説明するが、本発明をこれに特定するものではない。
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態に係るワイパモータ1について、図1〜8を参照して説明する。
<ワイパモータ1の概略構成>
まず、図1及び図2を用いて、本発明の実施形態に係るワイパモータ1の概略構成について説明する。なお、図1は本発明の第1実施形態に係るワイパモータ1の断面図であり、図2は図1の分解斜視図である。
ワイパモータ1は、車両のワイパ装置4の駆動源として使用されている。ワイパモータ1は、正逆転可能に制御されるモータ本体10と、モータ本体10に接続され、ハウジング11に収納されている減速機構部20と、ハウジング11の開口側を覆い、ハウジング11との間に密閉空間を構成するカバー41と、密閉空間に配置される制御装置45と、密閉空間を減速機構部20側と制御装置45側とに仕切るセパレータ51とから構成されている。
減速機構部20のハウジング11の非開口側(図1の下側)には、「軸部」としての出力軸27が突出している。出力軸27は、直接又はリンク機構を介して間接的に、先端に車両のウインドウガラスを払拭するワイパブレード3が取り付けられたワイパアーム2に接続されている。ワイパ装置4は、モータ本体10により出力軸27が正逆転可能に駆動され、ワイパアーム2が揺動運動されることにより、ワイパブレード3がウインドウガラス面の上反転位置と下反転位置との間を往復払拭されるように構成されている。
なお、実施形態では、車両のワイパ装置4の駆動源であるワイパモータとして説明するが、本発明のモータの用途はワイパ装置4の駆動源であるワイパモータに限るものではなく、広く一般の装置の駆動源として用いることができるものであり、例えば車両に搭載されるパワーシート、スライドドア、パワーウインドウ、サンルーフ等の用途にも適用可能である。
モータ本体10は直流モータとしてのブラシ付きモータで構成されている。モータ本体10は、ヨーク29を含むステータと、ステータと同心状でステータの内側に回転自在に支持されたロータ(図示省略)とから構成されている。ステータはモータ本体10の筐体としてのヨーク29を含み、ヨーク29は鉄等の磁性材料からなり、略有底円筒状に構成され、ヨーク29の円筒部の内周側には例えば4極の永久磁石(図示省略)がN極とS極が周方向に交互に配列されるように設けられている。ロータの中心には丸棒状の回転軸が有底円筒状のヨーク29と同軸上に設けられている。ヨーク29の非開口側(底部側)には軸受が設けられており、回転軸の一端を回転可能に軸支している。回転軸の他端にはウォーム22が設けられている。ヨーク29の開口側には、ヨーク29の開口端から回転軸の軸線と直交方向外側に張り出したフランジ30が設けられており、このフランジ30はハウジング11に対してネジ等により固定されている。
ロータには、4極を構成する4つの永久磁石の内周面と対向するようにアーマチャが設けられており、このアーマチャはコイルが巻回された複数極の磁極を有し、各磁極が永久磁石と対向している。また、ロータのヨーク29の開口側には、コイルに導通されるコミュテータが設けられており、ブラシホルダ39に支持された複数のブラシが摺接することにより、コイルに通電する構成となっている。
なお、実施形態では、モータ本体10を直流モータとしてのブラシ付モータで説明しているが、本発明のモータ本体10のモータの形式は、これに限定されず、例えばブラシレスモータ等、どのような形式のモータでも適用できる。
ハウジング11は、開口側に減速機構部20を収容し、モータ本体10側に一体に形成されたブラシホルダ収容部40にブラシホルダ39を収容する有底箱状の形状をしており、材料は導電性金属、例えばアルミニウム又はアルミニウム合金等であり、例えばダイカスト成形等により形成されている。また、ハウジング11は、開口側とは反対側から出力軸27が挿通支持される出力軸孔80、モータ本体10側と連通して回転軸(不図示)が挿通される回転軸挿通孔32、及び、ブラシホルダ39の給電端子38部が挿通されるブラシホルダ挿通孔37を有している。出力軸27の外周における出力軸支持部50の端部側には、ティースワッシャ49が嵌着されており、出力軸27がハウジングの開口側(図2の上方)に抜け出ることを防止している。なお、ハウジング11の材質はアルミニウム又はアルミニウム合金に限定されず、導電性金属であればどのような材質であっても構わない。この有底箱状の側壁は、モータ本体10側でフランジ30の高さと略同等の高さまで立ち上がっており、この側壁のモータ本体10側にブラシホルダ39を収容する凹状のブラシホルダ収容部40が設けられている。この側壁にはブラシホルダ39の給電端子38に対応する位置に、この給電端子38部を挿通するブラシホルダ挿通孔37が設けられている。給電端子38は雌プラグとして構成されており、回路基板46と給電端子38との間を電気的に接続する接続端子の雄プラグ(不図示)が挿入される。
また、ハウジング11の開口側には、回路基板46を載置する載置部34及び周囲の縁部には雌ネジ28が設けられている。ここで、回路基板46は、例えばガラス樹脂基板であり、出力軸27の軸線方向を厚み方向とする、略矩形の板状に形成されており、制御装置45の一部を構成している。後述のように、回路基板46は、表面47には電界効果トランジスタ(以下、FETという。)等のパワー素子を実装し、裏面48にはマイクロコンピュータ(不図示)や磁気センサ53(図7参照)等の制御素子を実装しており、裏面48が載置部34に向くように配置されている。また、回路基板46はカバー41に固定されている。載置部34がFET等のパワー素子に対向して設けられていることにより、FET等のパワー素子で発生した熱をハウジング11へ伝導し、放熱することができる。回路基板46には、図示しない導電パターン部が設けられている。
ハウジング11のモータ本体10側の側壁における内側には、図示省略したシールド部材の一対の接地部が係合接触する一対の溝部35が、給電端子38を跨ぐように設けられている。また、この一対の溝部35の給電端子側には、それぞれ傾斜面36が設けられており、傾斜面36にはシールド部材の接地部が係合して接触する。
ハウジング11の開口側にはウォーム収容部及びウォームホイール収容部31が設けられており、それぞれモータ本体10の回転軸の他端に設けられたウォーム22及び「磁石付き歯車」としてのウォームホイール21がそれぞれ収容されている。モータ本体10の回転軸の他端は、ハウジング11の回転軸挿通孔32を貫通した先端にウォーム22が設けられており、さらにウォーム22の先端はハウジング11に設けられた軸受により軸支されている。ウォーム22はウォームホイール21と噛み合っているので、モータ本体10の回転軸の回転は、ウォーム22及びウォームホイール21の作用によりウォーム減速されて、出力軸27から出力される。
ウォームホイール21のハウジング11の開口側の中心部であり、出力軸27の非出力側の端面には、後述のように、磁気センサ53(図7参照)により出力軸27の絶対回転角度を検出するために、センサ磁石23が非磁性材料からなるプレート24によって取り付けられている。後述のように、センサ磁石23は円盤状の形状であり、出力軸27と同心上に取り付けられており、例えば出力軸27の軸線方向から見て一方の半円をN極に他方の半円をS極に着磁(N極とS極に分極)されている。また、センサ磁石23と回路基板46との間には所定の間隙が設けられている。
カバー41は有底箱状で、例えば絶縁性の樹脂材料により射出成形等により形成されており、外部接続端子43、接続端子及びシールド部材が例えばインサート成形されることにより一体に取り付けられていると共に、周囲の縁部にはネジ孔44が設けられている。外部接続端子43は、カバー41の周壁におけるモータ本体10側とは略反対側の外側に配置され外部コネクタ(図示省略)が接続されるコネクタ部42の内部に設けられている。シールド部材は、導電金属板、例えば銅板に対してプレス成形等を行うことにより形成されており、給電端子38やスイッチング素子であるFETから放出される電磁ノイズを遮蔽するための部材である。ハウジング11の開口側に、カバー41の開口側を被せることにより、両者の間で密閉空間を構成する。セパレータ51は、ハウジング11とカバー41により構成される密閉空間を、減速機構部20側と制御装置45側とに仕切るものであり、例えば樹脂材料により射出成形等を行うことにより形成されている。セパレータ51には、センサ磁石23を回路基板46上の磁気センサ53に臨ませるセンサ磁石用開孔59、ブラシホルダ39の給電端子38部を挿通する給電端子挿通孔54、及び、回路基板46を載置する載置部34を回路基板46側に露出状態で収容する載置部収容孔55が設けられている。
<ウォームホイール21の構造>
次に、図3乃至図8を参照して、ウォームホイール21の構造を説明する。ウォームホイール21は外周に外歯26が形成されたギヤ部56と出力軸27とから構成されている。出力軸27はギヤ部56のセンサ磁石23搭載面と反対側の面から、センサ磁石23搭載面とは垂直に突設されている。具体的には、出力軸27のギヤ部56形成部位には固着プレート58が圧入固定されており、固着プレート58と共に出力軸27を、合成樹脂によりインサート成形することにより、ギヤ部56が形成されている。出力軸27を固着プレート58と共にインサート成形することにより、ウォームホイール21の出力軸27に対する周方向の強度を高めることができる。ギヤ部56は、外周に外歯26が形成されたギヤ形成部68、ギヤ形成部68と出力軸27との間に形成された円板部75、ギヤ部56の中央においてセンサ磁石を収容するために開口側に立設して設けられた一対の挿入壁62、及び、挿入壁62の外周からギヤ形成部68側に向かって放射状に設けられたリブ74を有している。リブ74を設けることによってウォームホイール21の周方向の強度を高めることができる。ギヤ成形部68の軸方向の厚みは、円板部75の厚みよりも大きい。外歯26は出力軸27の先端側(図3(B)の右側)において弧状に拡径されている。すなわち、外歯26における出力軸27の先端側は、全歯たけが増加する円弧状に形成され、ウォーム22との噛み合い代を増加させていている。回路基板46との対向面側では、外歯26の全歯たけは一定となっている。外歯26における全歯たけが円弧状に増加した部分にウォーム22が噛合することにより、ウォームホイール21が回路基板46の方向へ抜け出すのを規制することができる。
ギヤ部56の回路基板46との対向面の中央部には、底面61と一対の挿入壁62とからなる磁石挿入部60が設けられている。一対の挿入壁62は回路基板46の方向(出力軸27とは反対の軸方向)へ立設されており、その内周にはセンサ磁石23を嵌め込むための外周対向面64が設けられている。外周対向面64はセンサ磁石23の外周形状に対応する円弧面であり、外周対向面64にはセンサ磁石23が嵌め込まれ、後述するセンサ磁石23の第2位置決め手段72の部位が軽圧入されて係合している。挿入壁62の回路基板46との対向面には頂面77が設けられている。頂面77は出力軸27の軸線に垂直な面であり、頂面77にはプレート24が載置される。各挿入壁62の周方向の中央には「固定手段」としての固定ピン63が底面61から回路基板46の方向へ略垂直に立設されている。固定ピン63は円柱状であり、底面61側において固定ピン63の一部は挿入壁62内に埋め込まれており、残りの部分は外周対向面64から内周側へ凸となるように突出しており、この突出した部分がセンサ磁石23を位置決めするための第1位置決め手段65となっている。第1位置決め手段65は後述するセンサ磁石23の第2位置決め手段72と係合することにより、センサ磁石23が位置決めされる。固定ピン63の回路基板46側は、挿入壁62から突出しており、後述のプレート24に形成された「被固定手段」としてのピン挿入孔71に挿入される。センサ磁石23を挿入壁62に嵌め込まれ、プレート24を固定ピンに挿入した状態で、固定ピンの先端を熱カシメ装置の加熱ヘッドを用いて熱カシメすることにより、センサ磁石23はウォームホイール21のギヤ部56に固定される。
底面61における固定ピン63の近傍で挿入壁62を除く部分には、底面61から凹状に窪むように、固定ピン63を中心とする略円弧形状の底面凹部66が設けられている。センサ磁石23を挿入壁62に嵌め込み、センサ磁石23の第2位置決め手段72を固定ピン63の第1位置決め手段65に軽圧入する際に、固定ピン63の第2位置決め手段72側の表面が削られて削りかすが発生する場合があるが、削りかすは固定ピン63の近傍に形成された底面凹部66に収容されるので、削りかすが飛散することを防止することができる。しかも、センサ磁石23により底面凹部66が覆われるため、一層削りかすの飛散が防止される。
底面61における底面凹部66のギヤ部56中心側の縁部から、固定ピン63を中心とした所定の円弧までの間の領域には、底面61の他の部分よりも回路基板46側に略扇形状に盛り上がった磁石支持部67が設けられている。磁石支持部67の表面は精密に平面加工されており、出力軸27と直交する平面が形成されている。センサ磁石23のウォームホイール21側の表面は磁石支持部67によって、出力軸27に対して直交するように支持される。
底面61の中央部には凹状に窪んだ略円形の中央凹部73が設けられている。中央凹部73の底部にはウォームホイールを射出成形により成形する際のゲートが設定される。中央部にゲートを設けることにより成形時の樹脂の流れが考慮されている。また、ゲート跡は中央凹部73の底部に設けられているので、ゲート跡がセンサ磁石23の固定姿勢に影響を及ぼすことがないので、ゲート跡を切除する必要はない。
図5はプレート24の平面図である。プレート24は略円形の平板状であり、非磁性材であり、かつ、発錆性の無い材質であることが好ましく、例えば、ステンレス鋼をプレス加工することにより成形されている。プレート24の外周寄りには固定ピン63の位置に対応して、一対のピン挿入孔71が設けられている。プレート24のピン挿入孔71が設けられている部分には、外周側に所定の径の円弧状に張り出した形状の一対のプレート突出部76が設けられている。この所定の径はプレート24の全体形状を構成している円の径よりも小さい。ピン挿入孔71は一対のピン挿入孔71を結んだ方向に長くなる長円形である。ピン挿入孔71の一対の長円形状の内周側の配置及び形状は、一対の固定ピン63の位置及び形状に対応して形成されている。これにより、固定ピン63にピン挿入孔71を挿通することにより、プレート24は周方向及び径方向に位置決めされる。固定ピン63の第1位置決め手段65にセンサ磁石23の第2位置決め手段72を軽圧入して係合させる際に、固定ピン63が外周側へ倒れるように変形をする可能性がある。このように固定ピン63が変形した場合にも、ピン挿入孔71が長円形であるため、変形した固定ピン63をピン挿入孔71へ容易に挿入することができる。また、ピン挿入孔71が長円形であるため、寸法公差がある場合でも、固定ピン63をピン挿入孔71へ容易に挿入することができる。
プレート24はプレス加工の際にバリが発生する恐れがあるが、センサ磁石23は表面処理されているため、プレート24のバリでセンサ磁石23の表面を傷つけないようにする必要がある。そこで、プレート24の全体形状を構成している円の直径は、センサ磁石23の直径よりも大きく形成されている。これにより、プレート24のバリ取り加工をしなくとも、バリがセンサ磁石23に接触することがないので、プレート24のバリ取り工程を省略することができる。
図6(A)はセンサ磁石23の平面図であり、図6(B)はセンサ磁石23の側面図である。センサ磁石23は略円板形状であり、等方性ネオジウムボンド磁石で形成されている。センサ磁石23の外周には、センサ磁石23を挿入壁62に嵌め込む際に、固定ピン63に対応する位置に一対の第2位置決め手段72が設けられている。第2位置決め手段72は、センサ磁石23の外周側から内周側へ向けて凹となる円弧状であり、その径は固定ピン63の径とほぼ一致している。センサ磁石23の厚みは、磁石支持部67の回路基板46側の面から、挿入壁62の頂面までの距離と略一致している。センサ磁石23は、ウォームホイール21側の面が磁石支持部67に面接触して支持され、外周が外周対向面64に案内され、回路基板46側の面が固定ピン63により固定されたプレート24に面接触して支持されている。そして、センサ磁石23は、高さ方向では磁石支持部67とプレート24との間に挟持され、第2位置決め手段72が第1位置決め手段65に軽圧入されて係合することにより、径方向と周方向に位置決め固定されている。
センサ磁石23はN極とS極の2極に着磁、言い換えれば出力軸27に垂直な方向にN極とS極の2極に分極されており、磁極の境界面は一対の第2位置決め手段72を結ぶ線となっている。すなわち、一対の第2位置決め手段72を結ぶ線の一方側の半円がN極となり、他方側の半円がS極となるように着磁されている。第2位置決め手段72はセンサ磁石23の外周から円弧状に窪んで形成されているため、この部位では磁束が一様とならずに乱れる恐れがある。第2位置決め手段72の近傍はN極とS極との境界面であり、比較的磁束が弱いため、第2位置決め手段72の近傍で磁束に乱れが生じたとしても、その乱れが磁気センサ53に及ぼす影響は小さい。センサ磁石23の平面上において、一対の第2位置決め手段を結ぶ直線から機械角90度の位置で最も磁束が強くなっているが、この部分の形状は一様な円弧状(半径寸法が一定の形状)であるため、磁束も一様となっており、磁気センサ53においてセンサ磁石の位置、すなわち、出力軸の絶対位置を適切に検出することができる。
磁石挿入部60にセンサ磁石23を固定する方法について説明する。まず、出力軸27のギヤ部56形成部位に固着プレート58を圧入固定し、固着プレート58と共に出力軸27を合成樹脂によりインサート成形することにより、ギヤ部56を形成する。次に、N極とS極の2極に着磁されたセンサ磁石23を磁石挿入部に嵌め込み固定する。具体的には、固定ピン63の第1位置決め手段65にセンサ磁石23の第2位置決め手段72が軽圧入にて係合する状態で、センサ磁石23をギヤ部56の反出力軸27側から磁石挿入部60へ挿入していく。そして、センサ磁石23は、外周が外周対向面64に嵌め込まれ、ギヤ部56に対向する面が磁石支持部67に面接触するように支持される。この時、センサ磁石23は、第1位置決め手段65が第2位置決め手段72に軽圧入されて係合することにより径方向と周方向の位置決めがされており、一対の第2位置決め手段72を結ぶ線の一方側の半円がN極となり、他方側の半円がS極となるように載置される。また、センサ磁石23の反出力軸27側の面は、挿入壁62の頂面77と面一となっている。ただし、センサ磁石23の反出力軸27側の面が、挿入壁62の頂面77よりも反出力軸27側に若干突出していてもかまわない。次に、ピン挿入孔71に固定ピン63が挿通するように、センサ磁石23の上からプレート24を載置する。この時、プレート24のピン挿入孔71は長丸孔となっているため、センサ磁石23の圧入により固定ピン63が外周方向に変形していた場合であっても、容易にピン挿入孔71に固定ピン63を挿通することができる。最後に、固定ピンの先端を熱カシメ装置の加熱ヘッドを用いて熱カシメする。この時、センサ磁石23の上にはプレート24が重ねられているので、加熱ヘッドが直接センサ磁石23に直接接触する恐れはない。なお、ウォームホイール21にセンサ磁石23を固定する順序は、ハウジング11にウォームホイール21を装着する前でも、装着した後でも、どちらでもかまわない。
<磁気センサ53について>
図7はセンサ磁石23周囲の部分断面図である。回路基板46の裏面48におけるセンサ磁石23と対向する位置には、磁気センサ53が設けられている。磁気センサ53としては、例えばホールIC、磁気抵抗素子、ホール素子、MRセンサ等、絶対角度位置を検出できればどのような磁気検出素子を用いてもよい。センサ磁石23と磁気センサ53との間には所定の距離の間隙が設けられている。センサ磁石23の磁束を磁気センサ53によって適切に検出するためには、この間隙は小さい方が望ましく、例えば5mm以下に設定されている。また、この所定の間隙があることによって、ワイパモータ1に自動車の振動が加わった場合にも、センサ磁石23が磁気センサ53に接触することを防ぐことができる。センサ磁石23はプレート24と磁石挿入部60とにより挟持されているので、例え想定外の振動がワイパモータ1に加わったとしても、プレート24が介在しているので、センサ磁石23が磁気センサ53に直接接触することはなく、センサ磁石23の割れを防ぐことができる。
図2に示されているように、回路基板46の表面47には、ワイパ駆動回路78を構成する複数の回路素子が実装されている。ワイパ駆動回路78においては、Hブリッジを構成している4個のFETを含む回路が、モータ本体10を正逆転駆動する。なお、回路基板46には、ワイパブレード3の位置と移動方向に応じて、車両のウインドウガラスに洗浄液を供給するウォッシャ装置のウォッシャポンプ(図示省略)を駆動するポンプ駆動回路を集約して設けても良い。回路基板46の裏面48には、マイクロコンピュータ(図示省略)や磁気センサ53(図7参照)等の電子素子が実装されており、これらがワイパ制御回路79を構成している。ワイパ制御回路79は、ワイパブレード3に減速機構部20等を介して接続されたモータ本体10を正逆転駆動するワイパ駆動回路78の制御を行う。センサ磁石23は一対の第2位置決め手段72を結ぶ直線を境に、一方の半円がN極に、他方の半円がS極に着磁されている。磁気センサ53はセンサ磁石23の磁束の向きや強さの変化を検出し、電気信号に変換する。ワイパ制御回路79において、磁気センサ53から出力された電気信号からセンサ磁石23の回転角度を算出することにより、出力軸27の絶対角度位置、すなわちワイパブレード3の位置と移動方向を検出する。ワイパ制御回路79では、出力軸27の絶対角度位置の信号に基づいてモータ本体10の正逆転制御を行う。
<第1実施形態の作用及び効果>
ワイパ制御回路79は、磁気センサ53により検出された出力軸27の絶対角度位置の信号に基づいて、ワイパブレード3に減速機構部20等を介して接続されたモータ本体10を正逆転駆動するワイパ駆動回路78の制御を行う。ワイパ駆動回路78においては、Hブリッジを構成している4個のFET73を含む回路がモータ本体10を正逆転駆動する。モータ本体10の回転軸の回転は、減速機構部20により減速されて出力軸27に出力され、出力軸27は直接又はリンク機構を介して間接的に接続されているワイパアーム2及びその先端に取り付けられたワイパブレード3を揺動駆動し、ワイパブレード3が車両のウインドウガラスを払拭する。ワイパ駆動回路78の出力電流は接続端子を通して、ブラシホルダ39の給電端子38に導通し、ブラシホルダ39に支持されたブラシに給電される。モータ本体10ではブラシからロータのアーマチャのコイルに導通されるコミュテータに給電され、コイルの巻回されたロータの磁極と永久磁石からなるステータの磁極との吸引反発力により回転軸が回転する。
磁気センサ53は、ウォームホイール21に位置決め固定されたセンサ磁石23と所定の間隙をあけて対向しており、センサ磁石23の磁束の向きや強さの変化を検出し、電気信号に変換する。ワイパ制御回路79において、磁気センサ53から出力された電気信号からセンサ磁石23の回転角度を算出することにより、出力軸27の絶対角度位置、すなわちワイパブレード3の位置と移動方向を検出する。
図8は図7の部分拡大断面図であり、センサ磁石23が挿入壁62に嵌め込まれ、プレート24との間に挟持されている状態を示している。センサ磁石23は、ウォームホイール21の磁石挿入部60に軽圧入され、かつ、磁石挿入部60とプレート24との間に挟持されている。センサ磁石23が支持される磁石支持部67は、底面61からセンサ磁石23側へ凸となるように突設されており、出力軸27の軸線と垂直になるように面精度が高く設定されている。底面61全体でセンサ磁石23を支持するよりも、磁石支持部67だけの面精度を高く設定した方が、射出成形により出力軸27と一体に成形されるウォームホイール21の製造が容易である。また、底面61の中央には中央凹部73(図7参照。)が設けられ、この中にゲート跡が設定されている。これにより、ゲート跡を切除する必要が無い。
また、センサ磁石23の第2位置決め手段72を、固定ピン63の第1位置決め手段65に軽圧入して係合させて、センサ磁石23を挿入壁62内に嵌め込んでいくときには、合成樹脂により一体に形成されている固定ピン63がセンサ磁石23により削られ、樹脂の削りかすが発生する恐れがある。そこで、底面61の固定ピン63の近傍に底面凹部66を設けることにより、この樹脂の削りかすが底面凹部66に収容されるようになるので、樹脂の削りかすが飛散するのを防止することができる。しかも、センサ磁石23の挿入壁62内への組付け状態では、センサ磁石23により底面凹部66が覆われるためより一層樹脂の削りかすが飛散するのを防止できる。
加えて、センサ磁石23は厚み方向には面精度の高い磁石支持部67に支持されたうえ、磁石支持部67とプレート24とにより挟持され、径方向と周方向には第1位置決め手段65と第2位置決め手段72とが軽圧入により係合して位置決め固定されているため、精密に位置決めされ、かつ、確実に固定される。それにより、センサ磁石23がずれたり、脱落したりすることを防ぐことができる。ここで、センサ磁石23は一対の第2位置決め手段72を結ぶ直線を境に、一方の半円をN極位、他方の半円をS極に着磁されている。したがって、センサ磁石23の磁極の向きを精密に位置決めすることができる。また、センサ磁石23の周囲に凹となる円弧上の第2位置決め手段72が形成されているとセンサ磁石23の磁束を乱す恐れがあるが、第2位置決め手段72は磁束の弱いN極とS極の磁極の境界近傍に設けられているため、第2位置決め手段72を設けることにより発生する磁束の乱れの影響を小さくし、磁気センサ53によるセンサ磁石23の磁束の検出に及ぼす影響を低減することができる。
また、固定ピン63はセンサ磁石23の周方向の位置決め手段として第1位置決め手段65として機能し、プレート24の位置決め手段としても機能し、さらに、熱カシメ手段としても機能する。これにより、センサ磁石23及びプレート24を位置決め固定するための手段を、円筒形状の単純な形状である固定ピン63を用いることにより、簡単な構造により実現することができる。
さらに、センサ磁石23の厚みは、センサ磁石23を磁石支持部67に支持した状態で、頂面77とセンサ磁石23のプレート24側の面とが面一となるように設定されている。ただし、センサ磁石23の反出力軸27側の面が、挿入壁62の頂面77よりも反出力軸27側に若干突出していてもかまわない。また、プレート24のピン挿入孔71の一対の長円形状の内周側の配置及び形状は、一対の固定ピン63の位置及び形状に対応して形成されている。これにより、プレート24は、センサ磁石23の反出力軸27側の面に安定して載置されると共に、固定ピン63及びピン挿入孔71の係合により周方向及び径方向にも位置決めされる。これにより、熱カシメの工程を容易に行うことができる。また、センサ磁石23の軽圧入に伴い、固定ピン63が外周側へ倒れるように変形をした場合でも、ピン挿入孔71が長円形であるため、変形した固定ピン63をピン挿入孔71へ容易に挿入することができる。また、ピン挿入孔71が長円形であるため、寸法公差がある場合でも、固定ピン63をピン挿入孔71へ容易に挿入することができる。さらに、プレート24の直径はセンサ磁石23の直径よりも大きく設定されている。このため、プレート24の端面にバリが発生した場合でも、そのバリがセンサ磁石23に接触することはないので、プレート24を製造する際にバリ取り工程を省略することが可能である。
磁石挿入部60にセンサ磁石23を嵌め込み、次に、ピン挿入孔71を固定ピン63に挿通することによりプレート24を載置した状態で、固定ピンの先端を熱カシメ装置の加熱ヘッドを用いて熱カシメすることにより、センサ磁石23の固定を完成させる。熱カシメする際に、センサ磁石23及びプレート24はウォームホイール21に対して位置決め保持された状態にあるので、熱カシメの作業を容易に行うことができる。また、センサ磁石23はプレート24により覆われているため、熱カシメ作業の際に、加熱ヘッドがセンサ磁石23に直接接触することを避けることができる。さらに、想定外の振動が発生した場合でも、センサ磁石23が直接磁気センサ53に接触することを防ぐことにより、センサ磁石23の割れや欠けを防ぐことができる。
なお、固定ピン63でプレート24を固定する手段として、熱カシメを用いる例を説明したが、この固定手段は熱カシメに限定されるものではない。例えば、超音波カシメ、圧入、スナップ結合、凹凸嵌合、ネジ留め、接着、溶着等、如何なる固着手段でも構わない。
[第2実施形態]
図9を参照して本発明の第2実施形態に係るワイパモータ1を説明する。なお、図1〜図8に共通する構成については同一の符号を付し、その説明は省略する。図9(A)は第2実施形態のプレート24Aの平面図であり、図9(B)は第2実施形態のウォームホイール21Aの平面図である。
第2実施形態が第1実施形態と異なるのは、プレート24の一対のピン挿入孔71Aの形状を長円形ではなく、円形とした点である。ピン挿入孔71Aの形状を固定ピン63の形状に対応した円形とすると、プレート24の位置決めをより正確にできるようになる。さらに、これにより、固定ピン63を熱カシメした後に、ピン挿入孔71Aの形状が固定ピン63の形状に対応しているため、プレート24がずれることを防止することができる。
[第3実施形態]
図10〜図12を参照して本発明の第3実施形態に係るワイパモータ1を説明する。なお、図1〜図9に共通する構成については同一の符号を付し、その説明は省略する。図10は、第3実施形態に係るプレート24Bの斜視図であり、図11は図10の部分断面図であり、図12は第3実施形態に係る磁石挿入部60の断面斜視図である。
第3実施形態が、第1実施形態及び第2実施形態と異なる点は、板状のプレート24Bの形状が平面視略円形でない点である。プレート24Bは平面視で、長辺が一対の固定ピン63の間隔よりも長い帯形状(略矩形状)である。プレート24Bは非磁性材であり、かつ、発錆性の無い材質であることが好ましく、例えば、ステンレス鋼をプレス加工することにより成形されている。プレート24Bの長辺方向の両端部近傍には、一対の固定ピン63の位置及び形状に対応するよう一対の円形のピン挿入孔71Bが設けられている。また、板状のプレート24Bの表面には複数のディンプルが設けられている。複数のディンプルの配置及び数は、図10の例においては、長辺方向に2列に、各列に6個ずつ設けられている。なお、このディンプルの列の数個数はこれに特定されるものではなく、例えば3列でも4列でもよく、構わない。また、列数が奇数の場合には、長辺方向に1/2ピッチずらした千鳥状にディンプルを配置することもできる。各列のディンプルの数は任意である。
ディンプル81は凸状ディンプル82及び凹状ディンプル83の二種類からなり、図10及び図11に示されているように、凸状ディンプル82及び凹状ディンプル83は交互に千鳥状に配置されている。このように配置することにより、プレート24Bは表裏の方向性が無く、どちらの面をセンサ磁石23に対向するように設けてもよい。ディンプル81はプレス成形により形成されており、凸状ディンプル82はセンサ磁石23に対向する面が凸となり、反対面が凹となるように形成され、凹状ディンプル83はセンサ磁石23に対向する面が凹となり、反対面が凸となるように形成されている。このため、プレート24Bの端面にバリが発生した場合でも、凸状ディンプル82の高さ寸法が想定されるバリ高さ寸法以上に設定されるので、バリがセンサ磁石23に接触することが防止され、プレート24Bを製造する際にバリ取り工程を省略することが可能である。
ピン挿入孔71Bは固定ピン63の位置及び形状に対応するように形成されているので、ピン挿入孔71Bに固定ピン63を挿入することにより、プレート24Bは周方向及び径方向に位置決めされ、固定ピン63を熱カシメ装置の加熱ヘッドで熱カシメした状態においてプレート24Bがずれることを防ぐことができる。また、第3実施形態の頂面77Bは、第1実施形態の頂面77と比較するとディンプル81の高さの分だけ、出力軸27と反対側に向かって高く形成されている。すなわち、磁石支持部67から頂面77Bまでの距離は、センサ磁石23の厚みにディンプル81の高さを加えた長さに相当する。これにより、挿入壁62に嵌め込まれたセンサ磁石23の上からプレート24Bを固定ピン63がピン挿入孔71Bに挿入されるように載置した状態において、プレート24Bのセンサ磁石23側の面が頂面77Bに面接触し、凸状ディンプル82の頂点がセンサ磁石23のプレート24B側の面に当接することにより、プレート24Bは厚さ方向にも安定して位置決めされる。プレート24Bが安定して位置決めされているので、熱カシメの工程を容易に行うことができる。
第3実施形態ではプレート24Bが略矩形状であるが、少なくとも固定ピン63の近傍にはプレートが配置されているので、熱カシメの工程において、加熱ヘッドが直接永久磁石に接触することを防ぐことができる。また、センサ磁石23の中央部にはプレート24Bが配置されているので、磁気センサ53がセンサ磁石23の中央部に対向して設けられている場合には、想定外の振動が加わったとしても、センサ磁石23が磁気センサ53に直接接触することを避けることができ、センサ磁石の割れ、欠けを防ぐことができる。
ここでは、ピン挿入孔71Bは固定ピン63の形状に対応した円形であるとして説明したが、ピン挿入孔71Bの形状を長円形としてもよい。プレート24Bは、ピン挿入孔71Bの一対の長円形の内周側が固定ピン63の位置に対応するように形成されることにより、周方向及び径方向の位置決めされる。また、センサ磁石23を挿入壁62内に嵌め込む際に固定ピン63が外側に倒れるように変形した場合にも、ピン挿入孔71Bが長円形であるため、ピン挿入孔71Bを固定ピン63に容易に挿入することができる。さらに、寸法公差がある場合でも、ピン挿入孔71Bに固定ピン63を容易に挿入することができる。
[第4実施形態]
図13(A)及び(B)を参照して本発明の第4実施形態に係るワイパモータ1を説明する。なお、図1〜図12に共通する構成については同一の符号を付し、その説明は省略する。図13(A)は第4実施形態に係るプレート24Cを用いたウォームホイール21Cの分解斜視図であり、図13(B)は図13(A)の組立後の斜視図である。
第4実施形態のウォームホイール21C、21D、21Eでは、第1位置決め手段85の高さは挿入壁62の高さと一致しており、固定ピン84は挿入壁62の外周側に一対設けられている。第4実施形態は、固定ピン84が第1位置決め手段85と別体に設けられている点で、第1〜第3実施形態とは異なる。センサ磁石23の反出力軸27側の面と、第1位置決め手段85の反出力軸27側の面及び挿入壁62の頂面77とは、面一となっている。ただし、センサ磁石23の反出力軸27側の面が、挿入壁62の頂面77よりも反出力軸27側に若干突出していてもかまわない。第1位置決め手段85と固定ピン84とは周方向で同じ位置に設けられているが、この配置に特定するものではなく、第1位置決め手段85と固定ピン84とが周方向に異なる位置に設けられていてもよい。したがって、第1位置決め手段85及び固定ピン84の配置の自由度を高めることができるので、ウォームホイール21C、21D、21Eの設計上の自由度を高めることが可能である。
プレート24Cは、長辺が一対の固定ピン84の間隔よりも長い略矩形状であり、センサ磁石23の反出力軸27側に対向する平板部86、平板部86の両端部から挿入壁62の外周に沿って略垂直に屈曲した屈曲部87、及び、屈曲部87の先端で外周側に略垂直に屈曲し、ピン挿入孔71Cが形成されている固定部88により形成されている。ピン挿入孔71Cの形状は、固定ピン84の位置及び形状に対応した円形又は長円形とすることが好ましい。
平板部86には第3実施形態と同様の複数のディンプル81を設けてもよい。プレート24Cは非磁性材であり、かつ、発錆性の無い材質であることが好ましく、例えば、ステンレス鋼をプレス加工することにより成形されている。プレス加工によりプレート24Cを形成すると、端部にバリが生じることがある。プレート24Cの端面にバリが生じた場合でも、プレート24Cにディンプル81を設けておくと、そのバリが直接センサ磁石23に接触することが無いので、プレート24Cのバリ取り加工を省略することができる。この場合には、ディンプルの高さの分だけ、屈曲部87の長さ寸法を長めに調整することが望ましい。屈曲部87の寸法を適切に設定することにより、プレート24Cのセンサ磁石23対向面がセンサ磁石23に面接触すると共に、ピン挿入孔71C形成部が固定ピン84の周囲に面接触することにより、プレート24Cを安定して載置することができるので、固定ピン84の先端を熱カシメする工程を簡略化することができる。センサ磁石23は挿入壁62を含む磁石挿入部60とプレート24Cとの間に挟持された状態で熱カシメされており、確実に固定されているため、センサ磁石の脱落やずれを防ぐことができる。また、プレート24Cがセンサ磁石23の反出力軸27側に介在するため、熱カシメする際に、加熱ヘッドが直接センサ磁石23に接触することを防ぐことができると共に、想定外の振動が加えられた場合にもセンサ磁石23が直接磁気センサ53に接触することがなく、センサ磁石の割れや欠けを防ぐことができる。
<第1変形例>
図13(C)は第1変形例に係るプレート24Dを用いたウォームホイール21Dの分解斜視図であり、図13(D)は図13(C)の組立後の斜視図である。第1変形例は第4実施形態とはプレート24Dの形状が異なっており、挿入壁62、第1位置決め手段85及び固定ピン84の構造は第4実施形態と同様である。プレート24Dはセンサ磁石23の反出力軸27側に対向する略円形の円板部89、円板部から挿入壁62の外周に沿って略円筒状に延在する周壁部90、及び、周壁部90から外周側に略垂直に屈曲し、一対の固定ピン84が挿通されるピン挿入孔71Dが設けられた固定部91から形成されている。円板部89の直径は、一対の挿入壁62の外径間の距離と略等しく形成され、周壁部90の内周に挿入壁62の外周が嵌合するように構成されている。ピン挿入孔71Dの形状は、固定ピン84の位置及び形状に対応した円形又は長円形とすることが好ましい。プレート24Dは非磁性材であり、かつ、発錆性の無い材質であることが好ましく、例えば、ステンレス鋼をプレス加工することにより成形されている。プレート24Dのプレス加工時に端部にバリが生じたとしても、そのバリが直接センサ磁石23に接触することはないので、プレート24Dのバリ取り加工の工程を省略することができる。
周壁部の高さ寸法を適切に設定することにより、円板部89がセンサ磁石23の反出力軸27側に面接触すると共に、固定部91が固定ピン84の周囲に面接触することにより、プレート24Dを安定して載置することができるので、固定ピン84の先端を熱カシメする工程を簡略化することができる。プレート24Dは、センサ磁石23の反出力軸27側の面だけでなく、センサ磁石23の外周も覆うように形成されているので、熱カシメ装置の加熱ヘッドがセンサ磁石23に直接接触することをより確実に防止することができる。センサ磁石23は挿入壁62を含む磁石挿入部60とプレート24Dとの間に挟持された状態で熱カシメされており、確実に固定されているため、センサ磁石23の脱落やずれを防ぐことができる。また、想定外の振動が加えられた場合にもセンサ磁石23が直接磁気センサ53に接触することがなく、センサ磁石の割れや欠けを防ぐことができる。
<第2変形例>
図13(E)は第2変形例に係るプレート24Eを用いたウォームホイール21Eの分解斜視図であり、図13(F)は図13(E)の組立後の斜視図である。第2変形例は第4実施形態とはプレート24Eの形状が異なっており、挿入壁62、第1位置決め手段85及び固定ピン84の構造は第4実施形態と同様である。プレート24Eは、センサ磁石23の反出力軸27側に対向する略円形の円板部92、円板部92から一対の固定ピン84の方向へ延出する一対の屈曲部93、及び、一対の屈曲部93の先端でそれぞれ固定ピン84が挿通されるピン挿入孔71Dが設けられた一対の固定部94から形成されている。ピン挿入孔71Eの形状は、固定ピン84の位置及び形状に対応した円形又は長円形とすることが好ましい。プレート24Eは非磁性材であり、かつ、発錆性の無い材質であることが好ましく、例えば、ステンレス鋼をプレス加工することにより成形されている。円板部92の直径はセンサ磁石23の直径よりも大きく設定されている。このため、プレート24Eのプレス加工時に端部にバリが生じたとしても、そのバリが直接センサ磁石23に接触することはないので、プレート24Eのバリ取り加工の工程を省略することができる。
屈曲部93の高さ寸法を適切に設定することにより、円板部92がセンサ磁石23の反出力軸27側に面接触すると共に、固定部94が固定ピン84の周囲に面接触することにより、プレート24Eを安定して載置することができるので、固定ピン84の先端を熱カシメする工程を簡略化することができる。センサ磁石23は挿入壁62を含む磁石挿入部60とプレート24Eとの間に挟持された状態で熱カシメされており、確実に固定されているため、センサ磁石23の脱落やずれを防ぐことができる。また、センサ磁石23の反出力軸27側は、プレート24Eの円板部92により覆われているので、熱カシメ装置の加熱ヘッドがセンサ磁石23に直接接触することを防ぐことができる。さらに、想定外の振動が加えられた場合にもセンサ磁石23が直接磁気センサ53に接触することがなく、センサ磁石の割れや欠けを防ぐことができる。