JP2018165339A - コアレス基板用プリプレグ、コアレス基板用プリプレグの製造方法及び製造装置、並びにコアレス基板及びその製造方法 - Google Patents

コアレス基板用プリプレグ、コアレス基板用プリプレグの製造方法及び製造装置、並びにコアレス基板及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】作業性が良好であり、優れた厚み精度及び寸法安定性を有するコアレス基板用プリプレグが得られるコアレス基板用プリプレグの製造方法及び製造装置、該製造方法により得られるコアレス基板用プリプレグ、並びに該コアレス基板用プリプレグを用いたコアレス基板及びその製造方法を提供することである。【解決手段】シート状骨材の少なくとも一方の表面に、熱硬化性樹脂組成物を含んでなる樹脂フィルム(I)を貼付する、コアレス基板用プリプレグの製造方法であって、前記貼付を、常圧下において、前記樹脂フィルム(I)を、前記シート状骨材の少なくとも一方の表面に圧接するフィルム圧接工程により行う、コアレス基板用プリプレグの製造方法及び製造装置、該製造方法により得られるコアレス基板用プリプレグ、並びに該コアレス基板用プリプレグを用いたコアレス基板及びその製造方法である。【選択図】図1

Description

本発明はコアレス基板用プリプレグ、コアレス基板用プリプレグの製造方法及び製造装置、並びにコアレス基板及びその製造方法に関する。
FRP(Fiber Reinforced Plastics;繊維強化プラスチック)は、ファイバー等の弾性率の高い材料を骨材とし、その骨材を、プラスチック等の母材(マトリックス)の中に入れて強度を向上させた複合材料である。FRPは、耐候性、耐熱性、耐薬品性及び軽量性を生かした、安価かつ軽量で耐久性に優れる複合材料であり、特に、その絶縁性を生かして、プリント配線板用のプリプレグとして使用されている。
近年の電子機器の小型化及び高性能化により、プリント配線板には従来にも増して配線密度の高度化及び高集積化と共に、基板の薄型化が求められている。
これらの要求を踏まえたパッケージ構造として、例えば、特許文献1及び特許文献2には、コア基板を有さず、高密度配線化が可能なビルドアップ層を主体としたコアレス基板が提案されている。このコアレス基板は、金属板等の支持体(コア基板)上にビルドアップ層を形成した後、該支持体(コア基板)を除去することにより得られる、ビルドアップ層のみから構成される基板となる。
コアレス基板は、支持体(コア基板)を除去することによる薄型化によって剛性が低下するため、半導体素子を搭載してパッケージ化した際に半導体パッケージが反るという問題がより顕著になる。反りは、半導体素子とプリント配線板との接続不良を引き起こす要因の1つとされており、コアレス基板においては、より一層効果的な反りの低減が切望されている。
従来のプリント配線板用のプリプレグの多くが、ハンドレイアップ(Hand Lay-up)法で製造されている。ハンドレイアップ法は、塗工機等を用いて、樹脂を溶解したワニスを骨材に塗布した後、乾燥及び熱硬化する方法である(特許文献3)。
特開2005−72085号公報 特開2002−26171号公報 特開平01−272416号公報
基板の薄型化に伴い、骨材として従来よりも厚さが薄い繊維基材が用いられつつある。このような薄い繊維基材は、機械強度が弱いため、ハンドレイアップ法によって、ワニスを塗布、乾燥等する際に、自重が繊維基材の耐荷重を上回り、繊維基材が切れてしまう場合があった。また、繊維基材に塗布する樹脂量を調整するためにコーターのギャップを狭くした際にも、千切れてしまったりする等、作業性に劣る問題があった。
また、積層後の厚みの高精度性と、内層回路パターンへの樹脂の充填性(成型性)とを両立させるため、骨材に付着させる樹脂量が数質量%異なるもの、熱硬化性樹脂の硬化時間を変えたもの、それらを組合せたもの等、1種類の骨材で複数種類のプリプレグを製造しなければならず、煩雑である。さらに、各々塗工条件を変えて製造するために、製造に用いる材料のロスも大きい。
さらには、従来のプリプレグは、配線板を形成した際の厚みのばらつきが大きく、また、配線板と半導体装置とをはんだ接合する際の熱履歴によって発生する寸法変化も大きいため、これらに起因して反りが発生し、コアレス基板に求められる水準の反りの低減が達成されていなかった。
本発明の課題は、作業性が良好であり、優れた厚み精度及び寸法安定性を有するコアレス基板用プリプレグが得られるコアレス基板用プリプレグの製造方法及び製造装置、該製造方法により得られるコアレス基板用プリプレグ、並びに該コアレス基板用プリプレグを用いたコアレス基板及びその製造方法を提供することである。
本発明者らは、精鋭研究した結果、作業性に優れる常圧下において、熱硬化性樹脂組成物を含んでなる樹脂フィルムを骨材に圧接する製造方法により、作業性及び生産性良く厚み精度及び寸法安定性に優れるプリプレグが得られることを見出し、本発明に到達した。すなわち、本発明は、以下の[1]〜[15]に関する。
[1]シート状骨材の少なくとも一方の表面に、熱硬化性樹脂組成物を含んでなる樹脂フィルム(I)を貼付する、コアレス基板用プリプレグの製造方法であって、
前記貼付を、常圧下において、前記樹脂フィルム(I)を、前記シート状骨材の少なくとも一方の表面に圧接するフィルム圧接工程により行う、コアレス基板用プリプレグの製造方法。
[2]前記フィルム圧接工程が、前記樹脂フィルム(I)を、前記シート状骨材の両方の表面に圧接する工程である、上記[1]に記載のコアレス基板用プリプレグの製造方法。
[3]前記フィルム圧接工程が、前記樹脂フィルム(I)を、前記樹脂フィルム(I)の最低溶融粘度温度のマイナス40℃からプラス20℃の範囲に加熱しながら、前記シート状骨材の少なくとも一方の表面に圧接する工程である、上記[1]又は[2]に記載のコアレス基板用プリプレグの製造方法。
[4]前記樹脂フィルム(I)が、1分子中に少なくとも2個のN−置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(a)、1分子中に少なくとも2個の1級アミノ基を有するアミン化合物(b)、及び熱可塑性エラストマー(c)を含有する熱硬化性樹脂組成物を含んでなるものである、上記[1]〜[3]のいずれかに記載のコアレス基板用プリプレグの製造方法。
[5]前記樹脂フィルム(I)が、1分子中に少なくとも2個のN−置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(a)と、1分子中に少なくとも2個の1級アミノ基を有するアミン化合物(b)と、の反応物である変性ポリイミド(X)と、熱可塑性エラストマー(c)と、を含有する熱硬化性樹脂組成物を含んでなるものである、上記[1]〜[3]のいずれかに記載のコアレス基板用プリプレグの製造方法。
[6]前記熱硬化性樹脂組成物が、さらに、熱硬化性樹脂(d)を含有する、上記[4]又は[5]に記載のコアレス基板用プリプレグの製造方法。
[7]上記[1]〜[6]のいずれかに記載のコアレス基板用プリプレグの製造方法に用いられるコアレス基板用プリプレグの製造装置であって、
常圧下において、前記樹脂フィルム(I)を、前記シート状骨材の少なくとも一方に圧接させて貼付するフィルム圧接手段を有する、コアレス基板用プリプレグの製造装置。
[8]上記[1]〜[6]のいずれかに記載のコアレス基板用プリプレグの製造方法により製造されたコアレス基板用プリプレグ。
[9]下記測定方法に従って測定したエッチング後の寸法変化率(i)が、−8.0〜+8.0%であり、かつ170℃1時間加熱後の寸法変化率(ii)が、−4.0〜+4.0%である、上記[8]に記載のコアレス基板用プリプレグ。
<寸法変化率の測定方法>
プリプレグの両表面に厚さ12μmの電解銅箔を有する250cm角の銅張積層板を評価基板とし、その4角から縦に1cm、横に1cmの部分に基準穴を合計4つ設け、隣接する穴間同士の距離の平均値を基準寸法とし、
該評価基板を銅エッチング液に浸漬することにより銅箔を取り除いた後の、隣接する穴間同士の距離の平均値をエッチング後寸法とし、
エッチング後の評価基板を、170℃で1時間加熱した後の、隣接する穴間同士の距離の平均値を加熱後寸法として、下記式に基づき計算する。
寸法変化率(i)(%)=(エッチング後寸法−基準寸法)×100/基準寸法
寸法変化率(ii)(%)=(加熱後寸法−エッチング後寸法)×100/エッチング後寸法
[10]下記測定方法に従って測定した厚み精度の値が、10%以下である、上記[8]又は[9]に記載のコアレス基板用プリプレグ。
<厚み精度の測定方法>
プリプレグの両表面に厚さ12μmの電解銅箔を有する銅張積層板の幅方向の中心から50mm単位で幅方向に計11点、前記11点を各々起点として長さ方向に50mm単位で10点の厚さを測定し、その最大厚さ、最小厚さ及び平均厚さを求め、下記式に基づいて、平均厚さに対する最大厚さの変化率及び平均厚さに対する最小厚さの変化率を各々求め、いずれか大きい値を厚み精度の値とする。
最大厚さの変化率(%)=(最大厚さ−平均厚さ)×100/平均厚さ
最小厚さの変化率(%)=(平均厚さ−最小厚さ)×100/平均厚さ
[11]硬化物の弾性率が、10〜20GPaである、上記[8]〜[10]のいずれかに記載のコアレス基板用プリプレグ。
[12]硬化物の熱膨張率が、5.0〜6.5ppm/℃である、上記[8]〜[11]のいずれかに記載のコアレス基板用プリプレグ。
[13]上記[8]〜[12]のいずれかに記載のコアレス基板用プリプレグを用いて形成された絶縁層を含有する、コアレス基板。
[14]上記[13]に記載のコアレス基板に半導体素子を搭載してなる半導体パッケージ。
[15]支持体の上に、導体層と絶縁層とが交互に積層されてなるビルドアップ層を形成した後、該ビルドアップ層を前記支持体から分離するコアレス基板の製造方法であって、前記絶縁層の少なくとも1層を、上記[1]〜[6]に記載のコアレス基板用プリプレグの製造方法により製造したコアレス基板用プリプレグを用いて形成する、コアレス基板の製造方法。
本発明によると、作業性が良好であり、優れた厚み精度及び寸法安定性を有するコアレス基板用プリプレグが得られるコアレス基板用プリプレグの製造方法及び製造装置、該製造方法により得られるコアレス基板用プリプレグ、並びに該コアレス基板用プリプレグを用いたコアレス基板及びその製造方法を提供することができる。
本発明のプリプレグの製造方法及びプリプレグの製造装置の概念図である。 本発明のコアレス基板の製造方法の一態様を示す模式図である。
[コアレス基板用プリプレグの製造方法及び製造装置]
本発明のコアレス基板用プリプレグ(以下、単に「プリプレグ」ともいう)の製造方法は、シート状骨材(以下、単に「骨材」ともいう)の少なくとも一方の表面に、熱硬化性樹脂組成物を含んでなる樹脂フィルム(I)(以下、単に「樹脂フィルム(I)」ともいう)を貼付するコアレス基板用プリプレグの製造方法であって、前記貼付を、常圧下において、前記樹脂フィルム(I)を、前記シート状骨材の少なくとも一方の表面に圧接するフィルム圧接工程により行う、コアレス基板用プリプレグの製造方法である。
また、本発明のコアレス基板用プリプレグの製造装置は、本発明のコアレス基板用プリプレグの製造方法に用いられるコアレス基板用プリプレグの製造装置であって、常圧下において、前記樹脂フィルム(I)を、前記シート状骨材の少なくとも一方に圧接させて貼付するフィルム圧接手段を有する、コアレス基板用プリプレグの製造装置である。
ここで、「貼付」とは、樹脂フィルム(I)の熱硬化性樹脂組成物と骨材とが接している状態の他、樹脂フィルム(I)の熱硬化性樹脂組成物が骨材中の空隙部へ入り込んでいる状態も含み、特に後者の状態にあることが好ましい。
前記フィルム圧接工程は、前記樹脂フィルム(I)を、前記シート状骨材の一方の表面に圧接する工程であってもよく、前記シート状骨材の両方の表面に圧接する工程であってもよいが、生産性の観点からは、前記シート状骨材の両方の表面に圧接する工程であることが好ましい。
以下、図1を参照しながら、本発明のプリプレグの製造方法及びプリプレグの製造装置1の好ましい一実施態様について具体的に説明する。
なお、プリプレグの製造装置1は、一対の樹脂フィルム(I)54を、それぞれ、シート状骨材40の両面に溶融貼付する装置として説明するが、1つの樹脂フィルム(I)54をシート状骨材40の一方の表面にのみ貼付する装置としてもよい。この場合、図1において、骨材40より下側(又は上側)にある、一方の樹脂フィルム送出装置3、保護フィルム剥がし機構4及び保護フィルム巻取装置5は不要である。
本発明のプリプレグの製造方法は、プリプレグの製造装置1で行うことができる。
なお、プリプレグの製造装置1は、作業性の観点から、常圧下に置かれる。ここで、本明細書中、「常圧下」は「大気圧下」と同義である。当該方法によってプリプレグを製造する場合、例えば、真空ラミネーター等を採用した場合に生じ易い作業性の問題が生じない傾向にあり、優れた作業性が得られる。
プリプレグの製造装置1は、骨材送出装置2と、一対の樹脂フィルム送出装置3及び3と、シート加熱加圧装置(フィルム圧接手段)6と、プリプレグ巻取装置8と、を備える。プリプレグの製造装置1は、さらに、シート加圧冷却装置7と、一対の保護フィルム剥がし機構4及び4と、一対の保護フィルム巻取装置5及び5と、を備えることが好ましい。
骨材送出装置2は、シート状の骨材40が巻かれたロールを巻き方向とは反対方向に回転させて、ロールに巻かれた骨材40を送り出す装置である。図1において、骨材送出装置2は、骨材40をローラの下側からシート加熱加圧装置6に向けて送り出している。
一対の樹脂フィルム送出装置3及び3は、保護フィルム付き樹脂フィルム(I)50が巻かれたロールと、送り出される保護フィルム付き樹脂フィルム(I)50に所定の張力を付与させながらロールを回転可能に支持する支持機構とを有し、保護フィルム付き樹脂フィルム(I)50が巻かれたロールを巻き方向とは反対方向に回転させて、ロールに巻かれた保護フィルム付き樹脂フィルム(I)50を送り出す装置である。後述するように、保護フィルム付き樹脂フィルム(I)50は、樹脂フィルム(I)54と、樹脂フィルム(I)54の片方の骨材側フィルム表面(樹脂フィルム(I)54の両表面のうち、骨材40側の表面)54aに積層された保護フィルム52とを含むシート状のフィルムである。
なお、前記保護フィルム付き樹脂フィルム(I)50において、樹脂フィルム(I)の、保護フィルム52が付いている面とは反対側の面には、通常、支持体が付いている。つまり、支持体/樹脂フィルム(I)/保護フィルムという構成になっている。なお、樹脂フィルム(I)が、支持体及び保護フィルムからなる群から構成される1つ以上を有している場合、熱硬化性樹脂組成物を層形成してなる層を「樹脂層」と称する場合がある。
一対の樹脂フィルム送出装置3及び3は、それぞれ、送り出された骨材40の表面40a側及び裏面40b側に位置する。
一方の樹脂フィルム送出装置3は、送り出された骨材40の表面40a側に位置し、保護フィルム52が、送り出された骨材40側になるように、一方の保護フィルム付き樹脂フィルム(I)50をローラの下側から一方の保護フィルム剥がし機構4に向けて送り出す装置である。
同様に、他方の樹脂フィルム送出装置3は、送り出された骨材40の裏面40b側に位置し、保護フィルム52が、送り出された骨材40側になるように、他方の保護フィルム付き樹脂フィルム(I)50をローラの上側から他方の保護フィルム剥がし機構4に向けて送り出す装置である。
一対の保護フィルム剥がし機構4及び4は、それぞれ、送り出された骨材40の表面40a側及び裏面40b側に位置する転向ローラである。
一方の保護フィルム剥がし機構4は、一方の樹脂フィルム送出装置3から送り出され、一方の保護フィルム剥がし機構4に向けて進む保護フィルム付き樹脂フィルム(I)50を、回転する転向ローラの表面で受け、一方の保護フィルム付き樹脂フィルム(I)50のうち一方の樹脂フィルム(I)54をシート加熱加圧装置6に向けて進ませると共に、一方の保護フィルム52を一方の保護フィルム巻取装置5に向けて進ませることにより、一方の保護フィルム付き樹脂フィルム(I)50から一方の保護フィルム52を剥がす機構である。これにより、一方の樹脂フィルム(I)54の骨材側フィルム表面54aが露出する。
同様に他方の保護フィルム剥がし機構4は、他方の樹脂フィルム送出装置3から送り出され、他方の保護フィルム剥がし機構4に向けて進む他方の保護フィルム付き樹脂フィルム(I)50を、回転する転向ローラの表面で受け、他方の保護フィルム付き樹脂フィルム(I)50のうち他方の樹脂フィルム(I)54をシート加熱加圧装置6に向けて進ませると共に、他方の保護フィルム52を他方の保護フィルム巻取装置5に向けて進ませることにより、他方の保護フィルム付き樹脂フィルム(I)50から他方の保護フィルム52を剥がす機構である。これにより、他方の樹脂フィルム(I)54の骨材側フィルム表面54aが露出する。
一対の保護フィルム巻取装置5及び5は、それぞれ、送り出された骨材40の表面40a側及び裏面40b側に位置し、一対の保護フィルム剥がし機構4及び4で剥がされた、保護フィルム52及び52を巻き取る巻取装置である。
シート加熱加圧装置6は、一対の加熱圧縮ローラと、一対の加熱圧縮ローラに圧縮力を付与する圧縮力付与機構(図示せず)とを有する。一対の加熱圧縮ローラは、所定の設定された温度で加熱ができるよう、内部に加熱体を有する。
シート加熱加圧装置6は、入り込んだ骨材40に樹脂フィルム(I)54及び54を回転する一対の加熱圧縮ローラで圧接させてシート状のプリプレグ60を形成する(フィルム圧接工程)と共に、プリプレグ60をシート加圧冷却装置7に向けて送り出す。具体的には、骨材送出装置2から送り出された骨材40の表面40a及び裏面40bに、それぞれ、一対の保護フィルム剥がし機構4及び4から送り出された樹脂フィルム(I)54及び54が積層するように、骨材送出装置2から送り出された骨材40と、一対の保護フィルム剥がし機構4及び4からそれぞれ送り出された樹脂フィルム(I)54及び54とが、一対の加熱圧縮ローラの間に入り込む。
このとき、一方の樹脂フィルム(I)54の骨材側フィルム表面54a側が骨材40の表面40a側に接着するように、一方の樹脂フィルム(I)54が骨材40に積層し、また、他方の樹脂フィルム(I)54の骨材側フィルム表面54a側が骨材40の裏面40b側に接着するように、他方の樹脂フィルム(I)54が骨材40に積層してプリプレグ60が形成される。シート加熱加圧装置6から送り出されたプリプレグ60は高温状態である。
シート加圧冷却装置7は、一対の冷却圧縮ローラと、一対の冷却圧縮ローラに圧縮力を付与する圧縮力付与機構(図示せず)とを有する。一対の冷却圧縮ローラは、シート加熱加圧装置6から送り出された、高温のプリプレグ60を回転する一対の冷却圧縮ローラで圧縮すると共に冷却し、プリプレグ巻取装置8に送り出す。
プリプレグ巻取装置8は、シート加圧冷却装置7から送り出されたシート状のプリプレグ60を巻き取るロールと、ロールを回転させる駆動機構(図示せず)とを有する。
ローララミネート後は冷却圧縮ローラで冷却し、不要な熱の除去と製品の平坦化を行うことが好ましい。
以上のプリプレグの製造装置1は、以下のように動作する。
まず、骨材送出装置2からシート状の骨材40を、シート加熱加圧装置6に向けて送り出す。このとき、骨材40の表面40a及び裏面40bは、露出している。
他方、保護フィルム52が、送り出された骨材40側になるように、一方の保護フィルム付き樹脂フィルム(I)50を一方の樹脂フィルム送出装置3のローラの下側から一方の保護フィルム剥がし機構4に向けて送り出している。また、保護フィルム52が、送り出された骨材40側になるように、他方の保護フィルム付き樹脂フィルム(I)50を他方の樹脂フィルム送出装置3のローラの上側から他方の保護フィルム剥がし機構4に向けて送り出している。
次に、送り出された一方の保護フィルム付き樹脂フィルム(I)50は、一方の保護フィルム剥がし機構4である転向ローラに架けられ転向する際に、骨材側フィルム表面54aが露出するように、一方の保護フィルム付き樹脂フィルム(I)50から一方の保護フィルム52を剥がして一方の樹脂フィルム(I)54をシート加熱加圧装置6に向けて進ませる。これにより、一方の樹脂フィルム(I)54の骨材側フィルム表面54aが露出する。同様に、送り出された他方の保護フィルム付き樹脂フィルム(I)50は、他方の保護フィルム剥がし機構4である転向ローラに架けられ転向する際に、骨材側フィルム表面54aが露出するように、他方の保護フィルム付き樹脂フィルム(I)50から他方の保護フィルム52を剥がして他方の樹脂フィルム(I)54をシート加熱加圧装置6に向けて進ませる。これにより、他方の樹脂フィルム(I)54の骨材側フィルム表面54aが露出する。
剥がされた一対の保護フィルム52及び52は、それぞれ、一対の保護フィルム巻取装置5及び5で巻き取られる。
骨材送出装置2から送り出され、表面40a及び裏面40bが骨材40に、それぞれ、骨材側フィルム表面54a及び54aが溶融した樹脂フィルム(I)54及び54が積層するように、骨材送出装置2から送り出された骨材40と、一対の保護フィルム剥がし機構4及び4からそれぞれ送り出された樹脂フィルム(I)54及び54とが一対の加熱圧縮ローラ6の間に入り込む。さらに、常圧下において、一対の樹脂フィルム(I)54及び54の骨材側フィルム表面54a及び54aを、それぞれ、表面40a及び裏面40bが骨材40に、シート加熱加圧装置6で圧接させてプリプレグ60を得る(フィルム圧接工程)。このとき、一対の加熱圧縮ローラの内部にある加熱体の温度制御をすることにより、一対の加熱圧縮ローラを所定の温度に維持し、フィルム圧接工程をする際に加熱しながら加圧をする。
骨材に樹脂フィルム(I)を加熱加圧接着する際、加熱圧縮ローラの温度は、樹脂フィルム(I)の形成に使用する熱硬化性樹脂組成物をレオメータで測定した最低溶融粘度温度のマイナス40℃からプラス20℃の範囲が好ましい。つまり、フィルム圧接工程は、樹脂フィルム(I)を、樹脂フィルム(I)の最低溶融粘度温度のマイナス40℃からプラス20℃の範囲に加熱しながら、前記シート状骨材の少なくとも一方の表面に圧接する工程であることが好ましい。
なお、熱硬化性樹脂組成物の最低溶融粘度温度は、プリプレグの生産性の観点から、60〜150℃が好ましく、80〜140℃がより好ましく、100〜130℃がさらに好ましい。
シート加熱加圧装置6から送り出されたプリプレグ60を、シート加圧冷却装置7により、さらに加圧し、また、冷却する。
シート加圧冷却装置7から送り出されたプリプレグ60を、プリプレグ巻取装置8により、巻き取る。
次に、本発明のプリプレグの製造方法で使用される、シート状骨材及び樹脂フィルム(I)について、順に説明をする。
<シート状骨材>
シート状骨材としては、無機繊維基材、有機繊維基材等を、単体で又は混合して使用した織布、不織布等が挙げられる。
無機繊維基材としては、Eガラス、Dガラス、Sガラス、Qガラス等のガラス、カーボンなどの繊維基材が挙げられ、有機繊維基材としては、ポリイミド、ポリエステル、テトラフルオロエチレン、アラミド、セルロール等の繊維基材が挙げられる。
骨材としては、織布、不織布、ロービンク、チョップドストランドマット、サーフェシングマット等の形状を有するものを使用できる。これらの中でも、織布又は不織布が好ましい。
骨材の材質及び形状は、目的とする成形物の用途、性能等により適宜選択され、必要により、1種の材質及び1種の形状からなる繊維基材であってもよいし、2種以上の材質からなる骨材であってもよいし、2種以上の形状を有する骨材であってもよい。
骨材の厚さは、例えば、0.002〜0.5mmであり、基板の薄型化及び高密度配線を可能にする観点からは、4〜100μmが好ましく、6〜50μmがより好ましく、8〜20μmがさらに好ましく、8〜15μmが特に好ましい。
骨材は、耐熱性、耐湿性、加工性等の観点から、シランカップリング剤等で表面処理したもの、機械的に開繊処理を施したものが好ましい。
<樹脂フィルム(I)>
樹脂フィルム(I)は、熱硬化性樹脂組成物を含んでなる樹脂フィルムである。
樹脂フィルム(I)は、該樹脂フィルム(I)の一方の表面に支持体が付いている「支持体付き樹脂フィルム(I)」の状態であることが好ましく、更に樹脂フィルム(I)の他方の面に保護フィルムが付いている「支持体及び保護フィルム付き樹脂フィルム(I)」の状態であってもよい。
樹脂フィルム(I)が含んでなる熱硬化性樹脂組成物は、耐熱性、低熱膨張性、誘電特性及び寸法安定性の観点から、1分子中に少なくとも2個のN−置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(a)(以下、「(a)成分」又は「マレイミド化合物(a)」ともいう)、1分子中に少なくとも2個の1級アミノ基を有するアミン化合物(b)(以下、「(b)成分」又は「アミン化合物(b)」ともいう)を含有することが好ましい。
また、熱硬化性樹脂組成物は、同様の観点から、1分子中に少なくとも2個のN−置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(a)と、1分子中に少なくとも2個の1級アミノ基を有するアミン化合物(b)と、の反応物である変性ポリイミド(X)を含有することが好ましい。
以下、熱硬化性樹脂組成物を構成する各成分について説明する。
(1分子中に少なくとも2個のN−置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(a))
マレイミド化合物(a)は、1分子中に少なくとも2個のN−置換マレイミド基を有するマレイミド化合物であれば特に限定されない。マレイミド化合物(a)は1種を単独で用いても2種類以上を混合して用いてもよい。
マレイミド化合物(a)としては、1分子中に2個のN−置換マレイミド基を有するマレイミド化合物が好ましく、下記一般式(a−1)で表される化合物がより好ましい。

(一般式(a−1)中、Xa1は、下記一般式(a1−1)、(a1−2)、(a1−3)又は(a1−4)で表される基である。)

(一般式(a1−1)中、Ra1は各々独立に、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子である。pは0〜4の整数である。)

(一般式(a1−2)中、Ra2及びRa3は各々独立に、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子である。Xa2は炭素数1〜5のアルキレン基、炭素数2〜5のアルキリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルホニル基、カルボニルオキシ基、ケト基、単結合又は下記一般式(a1−2−1)で表される基である。q及びrは各々独立に0〜4の整数である。)

(一般式(a1−2−1)中、Ra4及びRa5は各々独立に、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子である。Xa3は炭素数1〜5のアルキレン基、炭素数2〜5のアルキリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルホニル基、カルボニルオキシ基[−O−C(=O)−]、ケト基又は単結合である。s及びtは各々独立に0〜4の整数である。)

(一般式(a1−3)中、nは1〜10の整数である。)

(一般式(a1−4)中、Ra6及びRa7は各々独立に、水素原子又は炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基である。uは1〜8の整数である。)
前記一般式(a1−1)中、Ra1が表す脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基等が挙げられる。該脂肪族炭化水素基としては、好ましくは炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基であり、より好ましくはメチル基である。また、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
以上の中でも、Ra1としては炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基が好ましい。
pは0〜4の整数であり、入手容易性の観点から、好ましくは0〜2の整数、より好ましくは0又は1、さらに好ましくは0である。pが2以上の整数である場合、複数のRa1同士は同一であっても異なっていてもよい。
前記一般式(a1−2)中、Ra2及びRa3が表す炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子としては、前記Ra1の場合と同じものが挙げられる。該脂肪族炭化水素基としては、好ましくは炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基、より好ましくはメチル基及びエチル基、さらに好ましくはエチル基である。
a2が表す炭素数1〜5のアルキレン基としては、メチレン基、1,2−ジメチレン基、1,3−トリメチレン基、1,4−テトラメチレン基、1,5−ペンタメチレン基等が挙げられる。該アルキレン基としては、耐熱性及び低熱膨張性の観点から、好ましくは炭素数1〜3のアルキレン基であり、より好ましくはメチレン基である。
a2が表す炭素数2〜5のアルキリデン基としては、エチリデン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基、ブチリデン基、イソブチリデン基、ペンチリデン基、イソペンチリデン基等が挙げられる。これらの中でも、耐熱性及び低熱膨張性の観点から、イソプロピリデン基が好ましい。
a2としては、上記選択肢の中でも、炭素数1〜5のアルキレン基、炭素数2〜5のアルキリデン基が好ましい。より好ましいものは前述のとおりである。
q及びrは各々独立に0〜4の整数であり、入手容易性の観点から、いずれも、好ましくは0〜2の整数、より好ましくは0又は2である。q又はrが2以上の整数である場合、複数のRa2同士又はRa3同士は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
前記一般式(a1−2−1)中、Ra4及びRa5が表す炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子としては、前記Ra2及びRa3の場合と同じものが挙げられ、好ましいものも同じである。
a3が表す炭素数1〜5のアルキレン基、炭素数2〜5のアルキリデン基としては、前記Xa2が表す炭素数1〜5のアルキレン基、炭素数2〜5のアルキリデン基と同じものが挙げられ、好ましいものも同じである。
a3としては、上記選択肢の中でも、好ましくは炭素数2〜5のアルキリデン基であり、より好ましいものは前述のとおりである。
s及びtは0〜4の整数であり、入手容易性の観点から、いずれも、好ましくは0〜2の整数、より好ましくは0又は1、さらに好ましくは0である。s又はtが2以上の整数である場合、複数のRa4同士又はRa5同士は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
前記一般式(a1−2−1)は、下記一般式(a1−2−1’)で表されることが好ましい。

(一般式(a1−2−1’)中のXa3、Ra4、Ra5、s及びtは、一般式(a1−2−1)中のものと同じであり、好ましいものも同じである。)
前記一般式(a1−2)で表される基は、下記一般式(a1−2’)で表される基であることが好ましく、下記(a1−i)〜(a1−iii)のいずれかで表される基であることがより好ましく、下記(a1−i)又は(a1−iii)で表される基であることがさらに好ましい。

(一般式(a1−2’)中のXa2、Ra2、Ra3、q及びrは、一般式(a1−2)中のものと同じであり、好ましいものも同じである。)
前記一般式(a1−3)中、nは、1〜10の整数であり、入手容易性の観点から、好ましくは1〜5の整数、より好ましくは1〜3の整数である。
前記一般式(a1−4)中、Ra6及びRa7が表す炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子としては、前記一般式(a1−1)中のRa1の場合と同じものが挙げられ、好ましいものも同じである。uは1〜8の整数であり、好ましくは1〜3の整数、より好ましくは1である。
前記一般式(a−1)中、Xa1は、前記一般式(a1−1)、(a1−2)、(a1−3)又は(a1−4)で表される基のいずれであってもよく、これらの中でも、低反り性、寸法安定性、耐熱性及び入手容易性の観点から、(a1−2)で表される基であることが好ましい。
マレイミド化合物(a)の具体例としては、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン、ポリフェニルメタンマレイミド、ビス(4−マレイミドフェニル)エーテル、ビス(4−マレイミドフェニル)スルホン、3,3’−ジメチル−5,5’−ジエチル−4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、4−メチル−1,3−フェニレンビスマレイミド、m−フェニレンビスマレイミド、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン等が挙げられる。
これらの中でも、反応性が高く、より高耐熱性化できるという観点から、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(4−マレイミドフェニル)スルホン、3,3’−ジメチル−5,5’−ジエチル−4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパンが好ましく、溶媒への溶解性の観点から、3,3’−ジメチル−5,5’−ジエチル−4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、ビス(4−マレイミドフェニル)メタンがより好ましく、製造コストの観点から、ビス(4−マレイミドフェニル)メタンがさらに好ましい。
熱硬化性樹脂組成物がマレイミド化合物(a)を含有する場合、その含有量は、低反り性、寸法安定性、厚み精度、低熱膨張性及び低弾性の観点から、熱硬化性樹脂組成物中の樹脂成分の固形分100質量部に対して、20〜90質量部が好ましく、30〜85質量部がより好ましく、40〜80質量部がさらに好ましい。
ここで、本実施形態における固形分とは、水分、後述する溶媒等の揮発する物質以外の熱硬化性樹脂組成物中の成分を意味する。すなわち、固形分は、25℃付近の室温で液状、水飴状又はワックス状のものも含み、必ずしも固体であることを意味するものではない。
熱硬化性樹脂組成物中の樹脂成分の固形分は、例えば、熱硬化性樹脂組成物が、マレイミド化合物(a)、アミン化合物(b)、後述する熱可塑性エラストマー(c)、後述する熱硬化性樹脂(d)からなる群から選ばれる1種以上を含有する場合、これらの総量に相当する。なお、後述する硬化促進剤(e)は、樹脂成分には含めないものとする。
(1分子中に少なくとも2個の1級アミノ基を有するアミン化合物(b))
アミン化合物(b)は、1分子中に少なくとも2個の1級アミノ基を有するアミン化合物であれば特に限定されない。アミン化合物(b)は1種を単独で用いても2種類以上を混合して用いてもよい。
アミン化合物(b)としては、1分子中に2個の1級アミノ基を有するアミン化合物が好ましく、下記一般式(b−1)で表されるジアミン化合物がより好ましい。

(一般式(b−1)中、Xb1は、下記一般式(b1−1)又は(b1−2)で表される基である。)

(一般式(b1−1)中、Rb1は各々独立に、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子である。pは0〜4の整数である。)

(一般式(b1−2)中、Rb2及びRb3は各々独立に、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子である。Xb2は炭素数1〜5のアルキレン基、炭素数2〜5のアルキリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルホニル基、カルボオキシ基、ケト基、単結合又は下記一般式(b1−2−1)で表される基である。q及びrは各々独立に0〜4の整数である。)

(一般式(b1−2−1)中、Rb4及びRb5は各々独立に、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子である。Xb3は炭素数1〜5のアルキレン基、炭素数2〜5のアルキリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルホニル基、カルボオキシ基、ケト基又は単結合である。s及びtは各々独立に0〜4の整数である。)
前記一般式(b1−1)中、Rb1が表す脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基等が挙げられる。該脂肪族炭化水素基としては、好ましくは炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基であり、より好ましくはメチル基である。また、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
以上の中でも、Rb1としては炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基が好ましい。
pは0〜4の整数であり、入手容易性の観点から、好ましくは0〜2の整数、より好ましくは2である。pが2以上の整数である場合、複数のRb1同士は同一であっても異なっていてもよい。
前記一般式(b1−2)中、Rb2及びRb3が表す炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子としては、前記Rb1の場合と同じものが挙げられる。該脂肪族炭化水素基としては、好ましくは炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基、より好ましくはメチル基及びエチル基、さらに好ましくはエチル基である。
b2が表す炭素数1〜5のアルキレン基としては、メチレン基、1,2−ジメチレン基、1,3−トリメチレン基、1,4−テトラメチレン基、1,5−ペンタメチレン基等が挙げられる。該アルキレン基としては、耐熱性及び低熱膨張性の観点から、好ましくは炭素数1〜3のアルキレン基であり、より好ましくはメチレン基である。
b2が表す炭素数2〜5のアルキリデン基としては、エチリデン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基、ブチリデン基、イソブチリデン基、ペンチリデン基、イソペンチリデン基等が挙げられる。これらの中でも、耐熱性及び低熱膨張性の観点から、イソプロピリデン基が好ましい。
b2としては、上記選択肢の中でも、炭素数1〜5のアルキレン基、炭素数2〜5のアルキリデン基が好ましい。より好ましいものは前述のとおりである。
q及びrは各々独立に0〜4の整数であり、入手容易性の観点から、いずれも、好ましくは0〜2の整数、より好ましくは0又は2である。q又はrが2以上の整数である場合、複数のRb2同士又はRb3同士は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
前記一般式(b1−2−1)中、Rb4及びRb5が表す炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子としては、前記Rb2及びRb3の場合と同じものが挙げられ、好ましいものも同じである。
b3が表す炭素数1〜5のアルキレン基、炭素数2〜5のアルキリデン基としては、前記Xb2が表す炭素数1〜5のアルキレン基、炭素数2〜5のアルキリデン基と同じものが挙げられ、好ましいものも同じである。
b3としては、上記選択肢の中でも、好ましくは炭素数2〜5のアルキリデン基であり、より好ましいものは前述のとおりである。
s及びtは0〜4の整数であり、入手容易性の観点から、いずれも、好ましくは0〜2の整数、より好ましくは0又は1、さらに好ましくは0である。s又はtが2以上の整数である場合、複数のRb4同士又はRb5同士は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
前記一般式(b1−2−1)は、下記一般式(b1−2−1’)で表されることが好ましい。

(一般式(b1−2−1’)中のXb3、Rb4、Rb5、s及びtは、一般式(b1−2−1)中のものと同じであり、好ましいものも同じである。)
前記一般式(b1−2)で表される基は、下記一般式(b1−2’)で表される基であることが好ましく、下記式(b1−i)〜(b1−iii)のいずれかで表される基であることがより好ましく、(b1−ii)で表される基であることがさらに好ましい。

(一般式(b1−2’)中のXb2、Rb2、Rb3、q及びrは、一般式(b1−2)中のものと同じであり、好ましいものも同じである。)
アミン化合物(b)としては、ジアミノベンジジン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル−6,6’−ジスルホン酸、2,2’,5,5’−テトラクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、1,3’−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、1,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ビフェニルジオール、9,9’−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、o‐トリジンスルホン等が挙げられる。
また、アミン化合物(b)は、低熱膨張性及び弾性率の観点から、1分子中に少なくとも2個の1級アミノ基を有するシロキサン化合物であることが好ましく、1分子中に2個の1級アミノ基を有するシロキサン化合物であることがより好ましく、両末端に1級アミノ基を有するシロキサン化合物であることがさらに好ましい。
アミン化合物(b)としては、1分子中に2個の1級アミノ基を有するアミン化合物が好ましく、下記一般式(b−1)で表されるジアミン化合物がより好ましい。

(式中、Rb6及びRb7は、各々独立に、アルキル基、フェニル基又は置換フェニル基を示し、mは、1〜100の整数を示す。)

(式中、Rb6、Rb7、Rb8及びRb9は、各々独立に、アルキル基、フェニル基又は置換フェニル基を示し、Xb4及びXb5は、各々独立に、2価の有機基を示す。m’は1〜100の整数を示す。)
前記一般式(b−2)及び(b−3)中、Rb6、Rb7、Rb8及びRb9が表すアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基等が挙げられる。該アルキル基としては、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、炭素数1〜3のアルキル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。
置換フェニル基におけるフェニル基が有する置換基としては、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数2〜5のアルケニル基、炭素数2〜5のアルキニル基等が挙げられる。該炭素数1〜5のアルキル基としては、前記したものと同じものが挙げられる。該炭素数2〜5のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基等が挙げられる。炭素数2〜5のアルキニル基としては、エチニル基、プロパルギル基等が挙げられる。
b6、Rb7、Rb8及びRb9は、いずれも炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
m及びm’は、低熱膨張性の観点から、1〜100の整数であり、相溶性及び高弾性化の観点から、5〜50の整数が好ましく。10〜40の整数がさらに好ましい。
前記一般式(b−3)中、Xb4及びXb5が表す2価の有機基としては、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、−O−又はこれらが組み合わされた2価の連結基等が挙げられる。該アルキレン基としては、メチレン基、1,2−ジメチレン基、1,3−トリメチレン基、1,4−テトラメチレン基、1,5−ペンタメチレン基等の炭素数1〜10のアルキレン基が挙げられる。該アルケニレン基としては、炭素数2〜10のアルケニレン基が挙げられる。該アルキニレン基としては、炭素数2〜10のアルキニレン基が挙げられる。該アリーレン基としては、フェニレン基、ナフチレン基等の炭素数6〜20のアリーレン基が挙げられる。これらの中でも、Xb4及びXb5が表す2価の有機基は、アルキレン基が好ましく、1,3−トリメチレン基がより好ましい。
アミン化合物(b)は、市販品を用いることができる。アミン化合物(b)の市販品としては、例えば、両末端にアミノ基を有するシロキサン化合物である「PAM−E」(アミノ基の官能基当量130)、「KF−8010」(アミノ基の官能基当量430)、「X−22−161A」(アミノ基の官能基当量800)、「X−22−161B」(アミノ基の官能基当量1,500)、「KF−8012」(アミノ基の官能基当量2,200)、「KF−8008」(アミノ基の官能基当量5,700)〔以上、信越化学工業株式会社製〕、「BY16−871」(アミノ基の官能基当量130)、「BY16−853U」(アミノ基の官能基当量460)〔以上、東レダウコーニング株式会社製〕等が挙げられる(アミノ基の官能基当量の単位はg/molである。)。
熱硬化性樹脂組成物がアミン化合物(b)を含有する場合、その含有量は、低反り性、寸法安定性、厚み精度、低熱膨張性及び低弾性の観点から、熱硬化性樹脂組成物中の樹脂成分の固形分100質量部に対して、5〜50質量部が好ましく、10〜40質量部がより好ましく、12〜30質量部がさらに好ましい。
(変性ポリイミド(X))
変性ポリイミド(X)は、(a)成分と(b)成分とを反応させて得られるものであり、(a)成分由来の構造単位(a’)と、(b)成分由来の構造単位(b’)と、を含有するものである。
変性ポリイミド(X)は1種を単独で用いても2種類以上を混合して用いてもよい。
(a)成分と(b)成分との反応方法に特に制限はない。反応温度は、生産性及び十分に反応を進行させる観点から、70〜200℃が好ましく、100〜130℃がより好ましい。また、反応時間は、0.5〜10時間が好ましく、1〜6時間がより好ましい。
(a)成分と(b)成分との反応は、有機溶媒中で行うことが好ましい。有機溶媒としては、エタノール、プロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;酢酸エチルエステル、γ−ブチロラクトン等のエステル系溶媒;テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の窒素原子含有溶媒;ジメチルスルホキシド等の硫黄原子含有溶媒などが挙げられる。
これらの中でも、溶解性の観点から、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルセロソルブ、γ−ブチロラクトンが好ましく、低毒性であるという観点及び揮発性が高く残溶媒として残り難いという観点から、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジメチルアセトアミドが好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルがより好ましい。
前記反応における、(a)成分由来のマレイミド基の当量と、(b)成分由来の1級アミノ基の当量との比[(a)/(b)]は、ゲル化の防止及び耐熱性の観点から、1を超えることが好ましく、5〜35がより好ましく、12〜30がさらに好ましい。
変性ポリイミド(X)中における構造単位(a’)の含有量は、低反り性、寸法安定性、厚み精度、低熱膨張性及び低弾性の観点から、30〜95質量%が好ましく、40〜90質量%がより好ましく、60〜85質量%がさらに好ましい。
変性ポリイミド(X)中における構造単位(b’)の含有量は、低反り性、寸法安定性、厚み精度、低熱膨張性及び低弾性の観点から、5〜70質量%が好ましく、10〜60質量%がより好ましく、15〜40質量%がさらに好ましい。
熱硬化性樹脂組成物中の樹脂成分の固形分100質量部を基準とした場合における、熱硬化性樹脂組成物中の構造単位(a’)、構造単位(b’)の好適な含有量は、各々、前記熱硬化性樹脂組成物中における(a)成分、(b)成分の含有量の好適な態様と同じである。
但し、熱硬化性樹脂組成物が、変性ポリイミド(X)とは別に、さらに(a)成分及び(b)成分からなる群から選ばれる1種以上を含有する場合、各成分と各成分由来の構造単位との合計含有量が、前記した熱硬化性樹脂組成物中における(a)成分、(b)成分の含有量の好適な態様となることが好ましい。
熱硬化性樹脂組成物が変性ポリイミド(X)を含有する場合、その含有量は、低反り性、寸法安定性、厚み精度、低熱膨張性及び低弾性の観点から、熱硬化性樹脂組成物中の樹脂成分の固形分100質量部に対して、40〜100質量部が好ましく、50〜95質量部がより好ましく、60〜92質量部がさらに好ましい。
(熱可塑性エラストマー(c))
熱硬化性樹脂組成物は、さらに、熱可塑性エラストマー(c)を含有することが好ましい。つまり、樹脂フィルム(I)は、(a)成分、(b)成分及び熱可塑性エラストマー(c)を含有する熱硬化性樹脂組成物を含んでなるもの、又は(a)成分と(b)成分との反応物である変性ポリイミド(X)と、熱可塑性エラストマー(c)と、を含有する熱硬化性樹脂組成物を含んでなるものであることが好ましい。
熱可塑性エラストマー(c)は1種を単独で用いても2種類以上を混合して用いてもよい。
熱可塑性エラストマー(c)としては、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、アクリル系熱可塑性エラストマー、シリコーン系熱可塑性エラストマー、これらのエラストマーの誘導体等が挙げられる。これらは、通常、ハードセグメント成分とソフトセグメント成分とからなり立っており、一般に前者が耐熱性及び強度に、後者が柔軟性及び強靭性に寄与している。
これらの中でも、耐熱性及び絶縁信頼性の観点からは、スチレン系熱可塑性エラストマーが好ましく、銅箔との接着性を良好に保ちながら熱硬化性樹脂組成物の弾性率を低減することができるという観点からは、アクリル系熱可塑性エラストマーが好ましい。
スチレン系熱可塑性エラストマーは、少なくともスチレンに由来する構造単位を含む分子で形成される重合体である。スチレン系熱可塑性エラストマーが有するスチレン由来の構造単位以外の構造単位としては、ブタジエン由来の構造単位、イソプレン由来の構造単位、マレイン酸由来の構造単位、無水マレイン酸由来の構造単位等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上含まれていてもよい。
前記ブタジエン由来の構造単位及び前記イソプレン由来の構造単位は、水素添加されていることが好ましい。水素添加されている場合、ブタジエン由来の構造単位はエチレン単位とブチレン単位とが混合した構造単位となり、イソプレン由来の構造単位はエチレン単位とプロピレン単位とが混合した構造単位となる。
スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、低熱膨張性、金属回路との接着強度、耐熱性、弾性率及び高周波特性の観点から、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体の水素添加物、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の水素添加物が好ましく、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体の水素添加物がより好ましい。
なお、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体の水素添加物としては、炭素−炭素二重結合の水素添加率が通常90%以上(好ましくは95%以上)であるSEBSと、ブタジエンブロック中の1,2−結合部位の炭素−炭素二重結合が部分的に水素添加されたSBBS(全体の炭素−炭素二重結合に対する水素添加率はおよそ60〜85%)とがある。これらの中でも、SEBSがより好ましい。
アクリル系熱可塑性エラストマーは、少なくともアクリル酸エステルに由来する構造単位を含む分子で形成される重合体である。アクリル酸エステルに由来する構造単位とは、アクリル酸エステル単量体を重合させたときに形成される構造単位のことを意味する。
アクリル系熱可塑性エラストマーは、分子中に異なる複数種のアクリル酸エステルに由来する繰り返し構造単位を含み、さらに、1種又は2種以上のアクリル酸エステル以外の単量体に由来する繰り返し構造単位を含んでもよい。あるいは、アクリル系熱可塑性エラストマーは、分子中に異なる複数種のアクリル酸エステルに由来する繰り返し構造単位からなるものであってもよい。
アクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸デシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ベンジル等が挙げられる。
アクリル酸エステル以外の単量体としては、アクリロニトリル、アクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、スチレン、エチレン、プロピレン、ブタジエン等のビニル系単量体が挙げられる。
アクリル系熱可塑性エラストマーの重量平均分子量(Mw)は、1,000〜200,000が好ましく、2,000〜150,000がより好ましい。重量平均分子量(Mw)が前記下限値以上であると、低弾性性に優れ、前記上限値以下であると、相溶性、及び流動性に優れる。
なお、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定を行い、標準ポリスチレンを用いて作製した検量線により換算したものである。
熱可塑性エラストマー(c)は、分子末端及び分子鎖中のうち少なくとも一方に反応性官能基を有していてもよい。反応性官能基としては、エポキシ基、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、アミド基、イソシアナト基、アクリル基、(メタ)アクリル基、ビニル基等が挙げられる。反応性官能基を有することにより、他の樹脂成分との相溶性が向上し、熱硬化性樹脂組成物の硬化時に発生する内部応力をより効果的に低減することができ、結果として、コアレス基板の反りを顕著に低減することが可能となる。特に、低熱膨張性及び金属回路との接着強度の観点からは、エポキシ基、水酸基、カルボキシ基、アミノ基及びアミド基からなる群から選ばれる1種以上を有することが好ましく、耐熱性及び絶縁信頼性の観点から、エポキシ基、水酸基及びカルボキシ基からなる群から選ばれる1種以上を有することがより好ましい。
熱硬化性樹脂組成物が熱可塑性エラストマー(c)を含有する場合、その含有量は、他の樹脂成分との相溶性を良好にし、硬化物の低硬化収縮性及び低熱膨張性を効果的に発現させる観点から、熱硬化性樹脂組成物中の樹脂成分の固形分100質量部に対して、1〜60質量部が好ましく、2〜50質量部がより好ましく、4〜25質量部がさらに好ましい。
(熱硬化性樹脂(d))
熱硬化性樹脂組成物は、さらに、熱硬化性樹脂(d)を含有することが好ましい。但し、該熱硬化性樹脂(d)は、(a)成分及び(b)成分を含まない。
熱硬化性樹脂(d)としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和イミド樹脂(但し、前記(b)成分を含まない)、シアネート樹脂、イソシアネート樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、オキセタン樹脂、アミノ樹脂(但し、前記(a)成分を含まない)、不飽和ポリエステル樹脂、アリル樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、シリコーン樹脂、トリアジン樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。これらの中でも、成形性及び電気絶縁性の観点、並びに金属回路との接着強度の観点から、エポキシ樹脂及びシアネート樹脂からなる群から選ばれる1種以上が好ましく、エポキシ樹脂がより好ましい。
熱硬化性樹脂(d)は1種を単独で用いても2種類以上を混合して用いてもよい。
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、α−ナフトール/クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、アラルキルノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;スチルベン型エポキシ樹脂、トリアジン骨格含有エポキシ樹脂、フルオレン骨格含有エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、キシリレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、多官能フェノール類及びアントラセン等の多環芳香族類のジグリシジルエーテル化合物、これらにリン化合物を導入したリン含有エポキシ樹脂などが挙げられる。これらの中でも、低反り性、寸法安定性、厚み精度、低熱膨張性及び低弾性の観点から、アラルキルノボラック型エポキシ樹脂、α−ナフトール/クレゾールノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。アラルキルノボラック型エポキシ樹脂としては、ビフェニル骨格を有するアラルキルノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。
熱硬化性樹脂組成物が熱硬化性樹脂(d)を含有する場合、その含有量は、低反り性、寸法安定性、厚み精度、低熱膨張性及び低弾性の観点から、熱硬化性樹脂組成物中の樹脂成分の固形分100質量部に対して、1〜45質量部が好ましく、2〜40質量部がより好ましく、3〜35質量部がさらに好ましい。
(硬化促進剤(e))
熱硬化性樹脂組成物は、さらに、硬化促進剤(e)を含有することが好ましい。
硬化促進剤(e)としては、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸スズ、オクチル酸コバルト、ビスアセチルアセトナートコバルト(II)、トリスアセチルアセトナートコバルト(III)等の有機金属塩;イミダゾール類及びその誘導体;有機リン系化合物;第二級アミン類;第三級アミン類;第四級アンモニウム塩などが挙げられる。これらの中でも、耐熱性、難燃性及び金属回路との接着強度の観点からは、イミダゾール類及びその誘導体が好ましく、低熱膨張性の観点からは、有機リン系化合物が好ましい。
硬化促進剤(e)は1種を単独で用いても2種類以上を混合して用いてもよい。
熱硬化性樹脂組成物が硬化促進剤(e)を含有する場合、その含有量は、熱硬化性樹脂組成物中の樹脂成分の固形分100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましく、0.3〜5質量部がより好ましく、0.7〜1.5質量部がさらに好ましい。硬化促進剤(e)の含有量が0.1質量部以上であると、耐熱性、難燃性及び銅箔接着性に優れる傾向にあり、10質量部以下であると、耐熱性、経日安定性及びプレス成形性に優れる傾向にある。
(無機充填材(f))
熱硬化性樹脂組成物は、さらに、無機充填材(f)を含有することが好ましい。
無機充填材(f)としては、シリカ、アルミナ、タルク、マイカ、カオリン、水酸化アルミニウム、ベーマイト、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化チタン、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム、ガラス粉、中空ガラスビーズが好ましく挙げられる。ガラス粉としては、Eガラス、Tガラス、Dガラス等が挙げられる。
無機充填材(f)は1種を単独で用いても2種類以上を混合して用いてもよい。
これらの中でも、誘電特性、耐熱性及び低熱膨張性の観点から、シリカが好ましい。シリカとしては、例えば、湿式法で製造され含水率の高い沈降シリカと、乾式法で製造され結合水等をほとんど含まない乾式法シリカが挙げられる。乾式法シリカは、さらに、製造法の違いにより、破砕シリカ、フュームドシリカ、溶融球状シリカ等に分類される。これらの中でも、低熱膨張性及び樹脂に充填した際の流動性の観点から、溶融球状シリカが好ましい。
無機充填材(f)の平均粒子径は、0.1〜10μmが好ましく、0.3〜8μmがより好ましく、0.3〜3μmがさらに好ましい。平均粒子径が0.1μm以上であると、樹脂に高充填した際の流動性を良好に保てる傾向にあり、10μm以下であると、粗大粒子の混入確率を低減し、粗大粒子起因の不良の発生を抑えることができる傾向にある。ここで、平均粒子径とは、粒子の全体積を100%として粒子径による累積度数分布曲線を求めたとき、体積50%に相当する点の粒子径のことであり、レーザ回折散乱法を用いた粒度分布測定装置等で測定することができる。
無機充填材(f)は、カップリング剤で表面処理されたものであってもよい。カップリング剤による表面処理の方式は、配合前の無機充填材(f)に対して乾式又は湿式で表面処理する方式であってもよく、表面未処理の無機充填材(f)を、他の成分に配合して組成物とした後、該組成物にシランカップリング剤を添加する、いわゆるインテグラルブレンド処理方式であってもよい。
カップリング剤としては、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、シリコーンオリゴマー等が挙げられる。
熱硬化性樹脂組成物が無機充填材(f)を含有する場合、その含有量は、成形性及び低熱膨張性の観点から、熱硬化性樹脂組成物中の樹脂成分の固形分100質量部に対して、20〜300質量部が好ましく、50〜200質量部がより好ましく、70〜200質量部がさらに好ましい。
(その他の成分)
熱硬化性樹脂組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、難燃剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光重合開始剤、蛍光増白剤、接着性向上剤等を含有していてもよい。
難燃剤としては、臭素、塩素等を含有する含ハロゲン系難燃剤;トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリスジクロロプロピルホスフェート、リン酸エステル系化合物、赤リン等のリン系難燃剤;スルファミン酸グアニジン、硫酸メラミン、ポリリン酸メラミン、メラミンシアヌレート等の窒素系難燃剤;シクロホスファゼン、ポリホスファゼン等のホスファゼン系難燃剤;三酸化アンチモン等の無機系難燃剤などが挙げられる。
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等が挙げられる。
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤等が挙げられる。
光重合開始剤としては、ベンゾフェノン類、ベンジルケタール類、チオキサントン系等の光重合開始剤が挙げられる。
蛍光増白剤としては、スチルベン誘導体の蛍光増白剤等が挙げられる。
接着性向上剤としては、尿素シラン等の尿素化合物、シラン系、チタネート系、アルミネート系等のカップリング剤が挙げられる。
熱硬化性樹脂組成物は、樹脂フィルム(I)の製造に用い易いように、希釈溶剤として有機溶剤を使用し、各成分が有機溶媒中に溶解又は分散されたワニスの状態としてもよい。
有機溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;メチルセロソルブ等のアルコール系溶剤;テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤;トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族系溶剤などが挙げられる。有機溶剤は1種を単独で用いても2種類以上を混合して用いてもよい。
ワニスの固形分濃度は、40〜90質量%が好ましく、50〜80質量%がより好ましい。ワニスの固形分濃度が前記範囲内であると、塗工性を良好に保ち、樹脂フィルム(I)の厚さ等を適切な範囲に調整し易くなる。
(樹脂フィルム(I)の製造方法)
樹脂フィルム(I)は、例えば、前記熱硬化性樹脂組成物を支持体に塗布した後、乾燥及び半硬化(Bステージ化)させることで得ることができる。なお、半硬化(Bステージ化)は、熱硬化性樹脂組成物の粘度がラミネートの作業性が良い粘度になるように行うことが好ましい。乾燥条件としては、例えば、90〜130℃で1〜10分間である。
支持体としては、ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」ともいう)、二軸延伸ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリビニルフルオレート、ポリイミド等の有機フィルム;銅、アルミニウム、これら金属の合金のフィルム;これらの有機フィルム又は金属フィルムの表面に離型剤で離型処理を行ったフィルムなどが挙げられる。これらの中でも、価格及び取り扱い性の観点から、PETフィルムが好ましい。
支持体の厚さは、取扱い性の観点から、10〜120μmが好ましく、15〜80μmがより好ましく、15〜70μmがさらに好ましい。
また、熱硬化性樹脂組成物を塗布し半硬化させた面に保護フィルムを積層して熱硬化性樹脂組成物を挟んで巻き取ると作業性が良い。保護フィルムは、支持体と同様の材料を使用することができる。
樹脂フィルム(I)の厚さ(支持体及び保護フィルムの厚さを除く)は、骨材等の厚さ等に応じて適宜決定すればよく、骨材の厚さより薄い樹脂フィルム(I)を用いる場合は、樹脂フィルム(I)を骨材にラミネートしたものに対して、再度、別の樹脂フィルム(I)をラミネートしてもよい。
なお、樹脂フィルム(I)を複数枚使用する場合、フィルム(I)の熱硬化度、配合組成等が異なるものを組み合わせて使用してもよい。
また、プリプレグ中における熱硬化性樹脂組成物の固形分含有量は、20〜90質量%が好ましく、30〜85質量%がより好ましく、40〜80質量%がさらに好ましい。
[コアレス基板用プリプレグ]
本発明のコアレス基板用プリプレグは、本発明のコアレス基板用プリプレグの製造方法により製造されたコアレス基板用プリプレグである。
本発明のプリプレグは、パッケージ形成時の信頼性の観点から、下記測定方法に従って測定したエッチング後の寸法変化率(i)が、−8.0〜+8.0%であり、かつ170℃1時間加熱後の寸法変化率(ii)が、−4.0〜+4.0%であることが好ましく、エッチング後の寸法変化率(i)が、−5.0〜+5.0%であり、かつ170℃1時間加熱後の寸法変化率(ii)が、−2.5〜+2.5%であることがより好ましい。
<寸法変化率の測定方法>
プリプレグの両表面に厚さ12μmの電解銅箔を有する250cm角の銅張積層板を評価基板とし、その4角から縦に1cm、横に1cmの部分に基準穴を合計4つ設け、隣接する穴間同士の距離の平均値を基準寸法とし、
該評価基板を銅エッチング液に浸漬することにより銅箔を取り除いた後の、隣接する穴間同士の距離の平均値をエッチング後寸法とし、
エッチング後の評価基板を、170℃で1時間加熱した後の、隣接する穴間同士の距離の平均値を加熱後寸法とし、
下記式に基づいて、エッチング後の寸法変化率(i)と、170℃1時間加熱後の寸法変化率(ii)を各々計算する。
寸法変化率(i)(%)=(エッチング後寸法−基準寸法)×100/基準寸法
寸法変化率(ii)(%)=(加熱後寸法−エッチング後寸法)×100/エッチング後寸法
本発明のプリプレグは、歩留まり向上等の生産性の向上、及びパッケージの反り量低減の観点から、下記測定方法に従って測定した厚み精度の値が、10%以下であることが好ましく、7.5%であることがより好ましい。
<厚み精度の測定方法>
プリプレグの両表面に厚さ12μmの電解銅箔を有する銅張積層板の幅方向の中心から50mm単位で幅方向に計11点、前記11点を各々起点として長さ方向に50mm単位で10点の厚さを測定し、その最大厚さ、最小厚さ及び平均厚さを求め、下記式に基づいて、平均厚さに対する最大厚さの変化率及び平均厚さに対する最小厚さの変化率を各々求め、いずれか大きい方を、厚み精度の値とする。
最大厚さの変化率(%)=(最大厚さ−平均厚さ)×100/平均厚さ
最小厚さの変化率(%)=(平均厚さ−最小厚さ)×100/平均厚さ
なお、厚み精度は、より具体的には、実施例の記載の方法により測定することができる。
本発明のプリプレグは、パッケージの反り量低減の観点から、硬化物の弾性率が、8〜35GPaであることが好ましく、10〜20GPaであることがより好ましい。
ここで、プリプレグの熱膨張率は、下記式(1)で示される、Scapery式に従うことが一般的に知られている。
A≒(ArErFr+AgEgFg)/(ErFr+EgFg) (1)
(上記(1)式において、Aはプリプレグの熱膨張率、Arは樹脂組成物の熱膨張率、Erは樹脂組成物の弾性率、Frは樹脂組成物の体積分率、Agはガラスクロスの熱膨張率、Egはガラスクロスの弾性率、Fgはガラスクロスの体積分率を表す。)
したがって、任意の体積分率において同一の物性のガラスクロスを使用した場合、樹脂組成物の弾性率及び熱膨張率を低減することが好ましい。
硬化物の弾性率は、実施例に記載の方法により測定することができる。
本発明のプリプレグは、パッケージの反り量低減の観点から、硬化物の熱膨張率が、3.0〜6.7ppm/℃であることが好ましく、4.0〜6.5ppm/℃であることがより好ましく、5.0〜6.0ppm/℃であることがさらに好ましい。
硬化物の熱膨張率は、実施例に記載の方法により測定することができる。
本発明のプリプレグ全体の厚さは、内層回路の厚さ等に応じて適宜調整すればよいが、基板の薄型化、成形性及び作業性の観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上であり、そして、好ましくは700μm以下、より好ましくは500μm以下、さらに好ましくは200μm以下、よりさらに好ましくは100μm以下、よりさらに好ましくは80μm以下、特に好ましくは50μm以下、最も好ましくは40μm以下である。
[コアレス基板及びその製造方法]
本発明のコアレス基板は、本発明のコアレス基板用プリプレグを用いて形成された絶縁層を含有するものである。
本発明のコアレス基板は、例えば、支持体(コア基板)上に、本発明のプリプレグを用いて導体層と絶縁層とが交互に積層されてなるビルドアップ層を形成した後、前記支持体を分離する方法により製造することができる。ビルドアップ層の形成方法に特に制限はなく、公知の方法を採用できる。例えば、ビルドアップ層は次の方法によって形成できる(図2参照)。
まず、支持体(コア基板)1上に本発明のプリプレグ2を配置する。なお、前記支持体(コア基板)1上には接着層を配置した上で、プリプレグ2を配置してもよい。その後、プリプレグ2を加熱硬化して絶縁層とする。次いで、ドリル切削方法、又はYAGレーザー、COレーザー等を用いるレーザー加工方法などによってビアホール3を形成した後、必要に応じて表面粗化処理及びデスミア処理を行なう。続いて、サブトラクティブ法、フルアディティブ法、セミアディティブ法(SAP:Semi Additive Process)、モディファイドセミアディティブ法(m−SAP:modified Semi Additive Process)等によって回路パターン4を形成する。以上の過程を繰り返すことによって、ビルドアップ層5が形成される。形成したビルドアップ層5を、支持体(コア基板)1から分離することによって、コアレス基板が得られる。なお、ビスドアップ層5は、支持体(コア基板)1の片面に形成してもよいし、両面に形成してもよい。
本発明のコアレス基板は、本発明のプリプレグを硬化してなる絶縁層を1層以上含むものであり、本発明のプリプレグ以外のプリプレグ、樹脂フィルム等を硬化してなる絶縁層を含んでいてもよい。
本発明のコアレス基板の厚さは、コア基板を有していないために通常は小さく、具体的には、15〜200mmが好ましく、30〜150mmがより好ましく、35〜100mmがさらに好ましい。
[半導体パッケージ]
本発明の半導体パッケージは、本発明のコアレス基板に半導体素子を搭載してなるものであり、例えば、前記コアレス基板の所定の位置に半導体チップ、メモリ等の半導体素子を搭載し製造される。
次に、下記の実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、これらの実施例は本発明を制限するものではない。
[変性ポリイミド(X)の製造]
製造例X1:変性ポリイミド(X−1)の合成
温度計、攪拌装置及び還流冷却管付き水分定量器の付いた加熱及び冷却可能な容積2リットルの反応容器に、両末端ジアミン変性シロキサン(信越化学工業株式会社製、商品名:X−22−161A)を72gと、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン(日本化薬株式会社製、商品名:BMI)を252gと、プロピレングリコールモノメチルエーテルを270.0g入れ、110℃で3時間反応させて、変性ポリイミド(X−1)含有溶液を得た。
製造例X2:変性ポリイミド(X−2)の合成
温度計、攪拌装置及び還流冷却管付き水分定量器の付いた加熱及び冷却可能な容積2リットルの反応容器に、両末端ジアミン変性シロキサン(信越化学工業株式会社製、商品名:X−22−161B)を85gと、2,2−ビス〔4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕プロパン(日本化薬株式会社製、商品名:BMI−4000)を289gと、プロピレングリコールモノメチルエーテルを270.0g入れ、110℃で3時間反応させて、変性ポリイミド(X−2)含有溶液を得た。
[ワニスの作製]
製造例1〜12
以下に示す各成分を、第1表に示す配合割合(表中の数値は固形分の質量部であり、溶液又は分散液の場合は固形分換算量である。)で混合し、有機溶剤としてメチルエチルケトンを用いて、固形分濃度が65質量%の均一なワニス状の熱硬化性樹脂組成物(以下、単に「ワニス」ともいう)を作製した。なお、各例で使用した成分の詳細は下記の通りである。
〔変性ポリイミド(X)〕
・X−1:製造例X1で合成した変性ポリイミド(X−1)
・X−2:製造例X2で合成した変性ポリイミド(X−2)
〔マレイミド化合物(a)〕
・BMI:ビス(4−マレイミドフェニル)メタン〔ケイ・アイ化成株式会社製、商品名〕
・BMI−4000:2,2−ビス〔4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕プロパン〔大和化成工業株式会社製、商品名〕
〔アミン化合物(b)〕
・X−22−161A:両末端ジアミン変性シロキサン〔信越化学工業株式会社製、商品名、アミノ基の官能基当量:800g/mol〕
・X−22−161B:両末端ジアミン変性シロキサン〔信越化学工業株式会社製、商品名,アミノ基の官能基当量:1,500g/mol〕
〔熱可塑性エラストマー(c)〕
・エポフレンド(登録商標)CT−310:エポキシ変性スチレン−ブタジエン共重合樹脂〔株式会社ダイセル製、商品名〕
・タフテック(登録商標)M1913:カルボン酸変性水添スチレン−ブタジエン共重合樹脂〔旭化成ケミカルズ株式会社製、商品名〕
・SG−P3:エポキシ基含有アクリル系熱可塑性エラストマー〔ナガセケムテックス株式会社製、商品名〕
〔熱硬化性樹脂(d)〕
・NC−7000−L:ナフタレン骨格含有型エポキシ樹脂(より詳細には、α−ナフトール/クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)〔日本化薬株式会社製、商品名〕
・NC−3000−H:ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂〔日本化薬株式会社製、商品名〕
〔硬化促進剤(e)〕
・G−8009L:イソシアネートマスクイミダゾール〔第一工業製薬株式会社製、商品名〕
・TPP−S:トリフェニルホスフィントリフェニルボラン〔北興化学株式会社製、商品名〕
〔無機充填材(f)〕
・SC2050−KNK:溶融シリカ(株式会社アドマテックス製、商品名、平均粒子径:0.5μm)
[プリプレグの作製:方法(A)]
実施例1〜6
上記で得られたワニスを、580mm幅のPETフィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製、商品名:G2)に、塗布幅を525mm、乾燥後の樹脂層が所定の厚さになるように塗布量を調整して塗布し、120℃で3分間乾燥して、支持体付き樹脂フィルムを作製した。
次に、支持体付き樹脂フィルムを、骨材であるガラスクロスの両方の表面に、樹脂層がガラスクロスと対向するよう配置し、加圧ロールに挟み込むことにより、ガラスクロスの両方の表面に支持体付き樹脂フィルムを圧接して貼付し、ガラスクロス中に熱硬化性樹脂組成物を含浸させてなるプリプレグを作製した。その後、冷却ロールで冷却して、巻取りを行った。
加圧ロール条件は、ロール温度100℃、線圧0.2MPa、速度2.0m/分とした。
得られたプリプレグ中の熱硬化性樹脂組成物の含有量、ガラスクロスの厚さ、ガラスクロスの種類は、後述する測定方法の項に示す。
[プリプレグの作製:方法(B)]
比較例1〜6
上記で得られたワニスを、骨材であるガラスクロスに塗工機を用いて塗布した後、130℃で10分間乾燥して、溶剤を除去すると共に熱硬化性樹脂組成物を半硬化させて、プリプレグを作製した。なお、塗布量の調整はスクイズロール法で行った。
得られたプリプレグ中の熱硬化性樹脂組成物の含有量、ガラスクロスの厚さ、ガラスクロスの種類は、後述する測定方法の項に示す。
[銅張積層板の作製]
上記で得られたプリプレグを用いて、銅張積層板を作製した。銅張積層板は、後述する評価項目に応じて決定される所定枚数のプリプレグと、その上下に電解銅箔(厚さ:12μm)を配置し、圧力2.5MPa、温度240℃で60分間プレスを行って作製した。
[測定方法]
以下に示す測定方法でプリプレグを評価した。評価結果を第1表に示す。
(1)寸法変化率
上記の銅張積層板の作製において、プリプレグとして、各例で得られたプリプレグ(樹脂組成物の含有量78質量%、ガラスクロスの厚さ:9.6μm、ガラスクロスの種類:Eガラスクロス、プリプレグ全体の厚さ:25μm)2枚を使用して、銅張積層板を得た。該銅張積層板を250cm角に切り出したものを評価基板とし、4角から縦に1cm、横に1cmの部分に基準穴を合計4つ設け、CNC画像測定機(株式会社ミツトヨ製、商品名:QV−H606T1L−D)を使用して、隣接する穴間同士の距離を測定し、その平均値を基準寸法とした。
次に、該評価基板を銅エッチング液(薬液の種類:過硫酸アンモニウム、温度:40℃処理時間:5分間)に浸漬することにより銅箔を取り除いた後、同様の方法により、隣接する穴間同士の距離を測定し、その平均値をエッチング後寸法とした。
続いて、エッチングにより銅箔を取り除いた評価基板を、170℃で1時間、空気中で加熱した後、同様の方法により、隣接する穴間同士の距離を測定し、その平均値を加熱後寸法とした。
上記で得られた各寸法より、下記式に基づいて、エッチング後の寸法変化率(i)と、170℃1時間加熱後の寸法変化率(ii)を各々計算した。
寸法変化率(i)=(エッチング後寸法−基準寸法)×100/基準寸法
寸法変化率(ii)=(加熱後寸法−エッチング後寸法)×100/エッチング後寸法
(2)厚み精度
上記の銅張積層板の作製において、プリプレグとして、各例で得られたプリプレグ(樹脂組成物の含有量78質量%、ガラスクロスの厚さ:9.6μm、ガラスクロスの種類:Eガラスクロス、プリプレグ全体の厚さ:25μm)1枚を使用して、銅張積層板を得た。
得られた銅張積層板の幅方向の中心から50mm単位で幅方向に計11点、前記11点を各々起点として長さ方向に50mm単位で10点(すなわち、11点×10点=110点)の厚さを、アップライトゲージを用いて0.001mm単位で測定し、その最大厚さ、最小厚さ及び平均厚さを求め、下記式に基づいて、平均厚さに対する最大厚さの変化率及び平均厚さに対する最小厚さの変化率を各々求め、いずれか大きい方を、厚み精度の値とする。
最大厚さの変化率(%)=(最大厚さ−平均厚さ)×100/平均厚さ
最小厚さの変化率(%)=(平均厚さ−最小厚さ)×100/平均厚さ
(3)熱膨張率
上記の銅張積層板の作製において、プリプレグとして、各例で得られたプリプレグ(樹脂組成物の含有量48質量%、ガラスクロスの厚さ:0.10mm、ガラスクロスの種類:Eガラスクロス、プリプレグ全体の厚さ:0.11mm)4枚を使用して、銅張積層板を得た。該銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより銅箔を取り除いた5mm角の評価基板を作製し、TMA試験装置(デュポン社製、TMA2940)を用いて圧縮法で熱機械分析を行った。評価基板を前記装置にX方向に装着後、荷重5g、昇温速度10℃/分の測定条件にて連続して2回測定した。2回目の測定における30℃から100℃までの平均熱膨張率を算出し、これを熱膨張率の値とした。
(4)曲げ弾性率
上記の銅張積層板の作製において、プリプレグとして、各例で得られたプリプレグ(樹脂組成物の含有量48質量%、ガラスクロスの厚さ:0.10mm、ガラスクロスの種類:Eガラスクロス、プリプレグ全体の厚さ:0.11mm)4枚を使用して、銅張積層板を得た。該銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより銅箔を取り除いた50mm×25mmの評価基板を作製し、株式会社オリエンテック製の5トンテンシロンを用い、クロスヘッド速度1mm/min、スパン間距離20mmの条件で曲げ弾性率を測定した。
第1表から、本発明の製造方法により得られた実施例1〜6のプリプレグは寸法変化率が小さく、厚さばらつきが小さいことが分かる。また、曲げ弾性率を低減した場合における寸法変化率の増加の度合いが、本発明の製造方法により得られた実施例1〜6のプリプレグは、従来の製造方法で製造した比較例1〜6のプリプレグよりも、大幅に低減されていることが分かる。
以上の結果から、本発明の製造方法は作業性が良好であり、本発明の製造方法によって、優れた厚み精度及び寸法安定性を有するコアレス基板用プリプレグが得られることが分かる。
1 プリプレグの製造装置
2 骨材送出装置
3 樹脂フィルム送出装置
4 保護フィルム剥がし機構
5 保護フィルム巻取装置
6 シート加熱加圧装置(フィルム圧接手段)
7 シート加圧冷却装置
8 プリプレグ巻取装置
40 骨材
40a 骨材の表面(骨材の一方の表面、骨材両表面の一方)
40b 骨材の裏面(骨材の他方の表面、骨材両表面の他方)
50 保護フィルム付き樹脂フィルム(I)
52 保護フィルム
54 樹脂フィルム(I)
54a 樹脂フィルム(I)の骨材側の表面(骨材側フィルム表面)
60 プリプレグ

Claims (15)

  1. シート状骨材の少なくとも一方の表面に、熱硬化性樹脂組成物を含んでなる樹脂フィルム(I)を貼付する、コアレス基板用プリプレグの製造方法であって、
    前記貼付を、常圧下において、前記樹脂フィルム(I)を、前記シート状骨材の少なくとも一方の表面に圧接するフィルム圧接工程により行う、コアレス基板用プリプレグの製造方法。
  2. 前記フィルム圧接工程が、前記樹脂フィルム(I)を、前記シート状骨材の両方の表面に圧接する工程である、請求項1に記載のコアレス基板用プリプレグの製造方法。
  3. 前記フィルム圧接工程が、前記樹脂フィルム(I)を、前記樹脂フィルム(I)の最低溶融粘度温度のマイナス40℃からプラス20℃の範囲に加熱しながら、前記シート状骨材の少なくとも一方の表面に圧接する工程である、請求項1又は2に記載のコアレス基板用プリプレグの製造方法。
  4. 前記樹脂フィルム(I)が、1分子中に少なくとも2個のN−置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(a)、1分子中に少なくとも2個の1級アミノ基を有するアミン化合物(b)、及び熱可塑性エラストマー(c)を含有する熱硬化性樹脂組成物を含んでなるものである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のコアレス基板用プリプレグの製造方法。
  5. 前記樹脂フィルム(I)が、1分子中に少なくとも2個のN−置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(a)と、1分子中に少なくとも2個の1級アミノ基を有するアミン化合物(b)と、の反応物である変性ポリイミド(X)と、熱可塑性エラストマー(c)と、を含有する熱硬化性樹脂組成物を含んでなるものである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のコアレス基板用プリプレグの製造方法。
  6. 前記熱硬化性樹脂組成物が、さらに、熱硬化性樹脂(d)を含有する、請求項4又は5に記載のコアレス基板用プリプレグの製造方法。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載のコアレス基板用プリプレグの製造方法に用いられるコアレス基板用プリプレグの製造装置であって、
    常圧下において、前記樹脂フィルム(I)を、前記シート状骨材の少なくとも一方に圧接させて貼付するフィルム圧接手段を有する、コアレス基板用プリプレグの製造装置。
  8. 請求項1〜6のいずれか1項に記載のコアレス基板用プリプレグの製造方法により製造されたコアレス基板用プリプレグ。
  9. 下記測定方法に従って測定したエッチング後の寸法変化率(i)が、−8.0〜+8.0%であり、かつ170℃1時間加熱後の寸法変化率(ii)が、−4.0〜+4.0%である、請求項8に記載のコアレス基板用プリプレグ。
    <寸法変化率の測定方法>
    プリプレグの両表面に厚さ12μmの電解銅箔を有する250cm角の銅張積層板を評価基板とし、その4角から縦に1cm、横に1cmの部分に基準穴を合計4つ設け、隣接する穴間同士の距離の平均値を基準寸法とし、
    該評価基板を銅エッチング液に浸漬することにより銅箔を取り除いた後の、隣接する穴間同士の距離の平均値をエッチング後寸法とし、
    エッチング後の評価基板を、170℃で1時間加熱した後の、隣接する穴間同士の距離の平均値を加熱後寸法として、下記式に基づき計算する。
    寸法変化率(i)(%)=(エッチング後寸法−基準寸法)×100/基準寸法
    寸法変化率(ii)(%)=(加熱後寸法−エッチング後寸法)×100/エッチング後寸法
  10. 下記測定方法に従って測定した厚み精度の値が、10%以下である、請求項8又は9に記載のコアレス基板用プリプレグ。
    <厚み精度の測定方法>
    プリプレグの両表面に厚さ12μmの電解銅箔を有する銅張積層板の幅方向の中心から50mm単位で幅方向に計11点、前記11点を各々起点として長さ方向に50mm単位で10点の厚さを測定し、その最大厚さ、最小厚さ及び平均厚さを求め、下記式に基づいて、平均厚さに対する最大厚さの変化率及び平均厚さに対する最小厚さの変化率を各々求め、いずれか大きい値を厚み精度の値とする。
    最大厚さの変化率(%)=(最大厚さ−平均厚さ)×100/平均厚さ
    最小厚さの変化率(%)=(平均厚さ−最小厚さ)×100/平均厚さ
  11. 硬化物の弾性率が、10〜20GPaである、請求項8〜10のいずれか1項に記載のコアレス基板用プリプレグ。
  12. 硬化物の熱膨張率が、5.0〜6.5ppm/℃である、請求項8〜11のいずれか1項に記載のコアレス基板用プリプレグ。
  13. 請求項8〜12のいずれか1項に記載のコアレス基板用プリプレグを用いて形成された絶縁層を含有する、コアレス基板。
  14. 請求項13に記載のコアレス基板に半導体素子を搭載してなる半導体パッケージ。
  15. 支持体の上に、導体層と絶縁層とが交互に積層されてなるビルドアップ層を形成した後、該ビルドアップ層を前記支持体から分離するコアレス基板の製造方法であって、前記絶縁層の少なくとも1層を、請求項1〜6に記載のコアレス基板用プリプレグの製造方法により製造したコアレス基板用プリプレグを用いて形成する、コアレス基板の製造方法。
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