JP2018165222A - ルテニウム酸ビスマス粒子を含有するガラスとその製造方法、厚膜抵抗体組成物並びに厚膜抵抗体ペースト - Google Patents
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一般に、二酸化ルテニウムは低抵抗値から高抵抗値まで広範囲の導電物として使用され、高抵抗領域では導電物濃度に対する抵抗値の変動がより小さいルテニウム酸鉛が用いられることが多い。
すなわち、従来の導電性粉末とガラス粉末を混合し、有機ビヒクルに分散させたペーストを印刷、焼成して得る方法では、抵抗膜中の導電物粒子の均一性が十分ではなく、耐高電圧性および初期抵抗値の安定性の点で満足の行くものが得られなかったことから、二酸化ルテニウムとガラスフリット原料粉末の混合物を熔融し、冷却、粉砕して得られるルテニウム酸鉛含有ガラスフリットを使用することによって導電成分を均一に分散させる方法が示されている。
以上の状況から、厚膜抵抗体ペーストに用いるルテニウム酸鉛粉に代わる導電物として、導電粉自体に鉛を含まず、さらに、ペーストから鉛を全て排除した状態でも厚膜抵抗体として良好な電気的特性が得られる導電材料が求められている。
そして、ガラスマトリックス中にルテニウム酸ビスマス粒子が均一に分散した構造を有し、このルテニウム酸ビスマス粒子は、二酸化ルテニウムとケイ酸ビスマス系ガラスフリット原料粉末の化学反応によって得られたものである。
このルテニウム酸ビスマス粒子は、X線回折で同定される化学式が、Bi2Ru2O7、Bi2Ru2O6.92、Bi1.9Ru2O6.922、Bi1.87Ru2O6.903、Bi2Ru2O7.3、Bi3Ru3O11で表される各ルテニウム酸ビスマスの単相またはその混合相である。
ガラス粉末は、厚膜抵抗体組成物または、後述する厚膜抵抗体ペーストを焼成する過程で、軟化し、ガラス粉末を構成するそれぞれの粒子が融け合い焼成前にガラス粒子が形成していた隙間を埋めて距離を縮めて融着して、ガラスマトリックスを構成し、このガラスマトリックス中に導電性粒子による導電経路が作られた厚膜クレーズ抵抗体を形成し、さらにその厚膜を基板に密着させる働きを担っている。
100nmよりも大きいと、導電経路の形成が十分に形成されず、抵抗特性が得られなくなる。また、前述のルテニウム酸鉛系ガラスフリット中のルテニウム酸鉛は例に示す通り(特許文献2参照)、耐高電圧特性については結晶子径が小さいほど良好になる傾向があり、特に良好な耐高圧特性を得るためには40nm以下とすることであることが示されている。
すなわち、本発明に係るルテニウム酸ビスマス粒子を含有するガラスは、既にガラスマトリックスにルテニウム酸ビスマスの導電経路が形成され、しかも、結晶子径100nm以下のルテニウム酸ビスマス粒子が分散された形態で、且つガラスによる導電粒子の界面への濡れが十分に進んだ状態であり、安定した電気特性を得ることができる。
また、本発明に係る厚膜抵抗体組成物や厚膜抵抗体ペーストから得られる厚膜抵抗体の抵抗値は、本発明に係るルテニウム酸ビスマス粒子を含有するガラスに含まれるルテニウム酸ビスマス粒子の含有量を制御すればよく、より具体的には、ルテニウム酸ビスマス粒子を含有するガラスの原料のルテニウム化合物量を制御すればよい。
1)ルテニウム酸ビスマス粒子を含有するガラスの原料
ケイ酸ビスマス系ガラスの原料粉末として、ケイ酸ビスマス系ガラスのガラスを形成する為に、酸化ビスマス、酸化ケイ素、酸化ホウ素の粉末が必要である。さらに、本発明に係るルテニウム酸ビスマス粒子を含有するガラスには、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム等のガラスに添加できる酸化物の粉末を添加することができる。
ルテニウム源となるルテニウム化合物粉末には、二酸化ルテニウム(RuO2)粉末や不定形二酸化ルテニウム水和物粉末を用いることができる。
得られた原料混合物に、第1の工程と第2の工程を順次行い、熱処理を行うが、ルテニウム酸ビスマスの結晶子径を20nm〜100nmにするためには、熱処理条件を考慮する必要がある。
X線回折から、この「第1の熱処理」で二酸化ルテニウムと酸化ビスマスが選択的に反応し、微細なルテニウム酸ビスマスが生成することを確認している。熱処理保持時間は30分から2時間程度でバッチサイズを加味し、生成物の反応の終了を目安として設定する。熱処理温度が600℃〜750℃の範囲内において、高くなるほどこの時点で生成するルテニウム酸ビスマスの結晶子径が大きくなる傾向を示す。600℃未満ではルテニウム酸ビスマスは生成せず、また、750℃を超えると生じるルテニウム酸ビスマスの粒成長が顕著となり、求める結晶子径を得ることができなくなる。
予め、600℃〜750℃に設定された電気炉に原料混合物を投入することで可能である。このような、昇温速度により、結晶子径が20〜100nmのルテニウム酸ビスマス粒子が析出したルテニウム酸ビスマス粒子を含有するガラスを得ることができる。
熱処理温度はガラス酸化物組成における軟化点を加味し、軟化点に150〜200℃程度加えた温度が望ましい。
望ましい昇温速度は30℃/分以上である。
熱処理保持時間は30分から2時間程度でバッチサイズを加味し、酸化物の熔融状態の終了を目安として設定する。
第2の工程での第2の熱処理後、第2の工程で得られた熔融物を金属ローラーの表面や、水中に投入するなどして急冷してガラス化する第3の工程を行い、急冷により破砕されたガラスカレットを得る。
第4の工程の粉砕は、得られたガラスカレットを、公知の粉砕方法、たとえばクラッシャーミル等で粗粉砕したのち、ボールミル等の粉砕機を用いて粉砕する。
ルテニウム酸ビスマス粒子を含有するガラスの原料の選択と、一連の第1の工程から第4の工程を経る製造方法によって、ガラスフリット中に析出したルテニウム酸ビスマス(Bi2Ru2O7−x X=−0.4〜0.5)の、X線回折で同定される化学式において、Bi2Ru2O7、Bi2Ru2O6.92、Bi1.9Ru2O6.922、Bi1.87Ru2O6.903、Bi2Ru2O7.3、Bi3Ru3O11が同定され、そのX線回折での(111)面の半価幅が0.16〜0.48°の範囲にあり、半価幅から求められる結晶子径が20nm〜100nmであることを特徴とするルテニウム酸ビスマスが析出したルテニウム酸ビスマス粒子を含有するガラスが得られる。
ルテニウム酸ビスマス粒子を含有するガラスは、ルテニウム酸ビスマス粒子とケイ酸ビスマス系ガラスで構成される。
ルテニウム酸ビスマス粒子を含有するガラスのケイ酸ビスマス系ガラスは、軟化点が600℃〜700℃を目安とし、厚膜抵抗体の焼成時に結晶化しない組成であることが望ましい。
そこで、ガラス化形成酸化物が第1の工程と第2の工程を経てガラス化するとともに、ルテニウム化合物粉末との反応でルテニウム酸ビスマス粒子が析出した後の軟化点やガラス自体の結晶化しないことを顧慮してガラス化形成酸化物の配合を検討する必要がある。さらに、ケイ酸ビスマス系ガラスには、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム等のガラスに添加できる酸化物を添加することができる。
本発明に使用するルテニウム化合物粉末の粒径はより微細であることが望ましい。
ルテニウム化合物に二酸化ルテニウムを選択するならば、その結晶子径は20nm以下であると更に望ましい。また湿式合成における二酸化ルテニウムの前駆体となる不定形二酸化ルテニウム水和物やその他ルテニウム塩を使用することも可能である。このうち、二酸化ルテニウムと不定形二酸化ルテニウム水和物がより望ましい。
この不定形二酸化ルテニウム水和物粉末は、X線回折からは回折ピークは観察されず不定形である。これを水洗したのち固液分離し乾燥することで不定形二酸化ルテニウム水和物粉末を得る。この不定形二酸化ルテニウム水和物粉末を大気雰囲気の下、温度350℃から400℃で15分から120分間焙焼すると、不定形二酸化ルテニウム水和物粉末から水が除去されてX線回折から酸化ルテニウム粒子(RuO2)のピークが確認される。
得られた二酸化ルテニウム粒子のX線回折の(110)面の半価幅から結晶子径を算出すると20nm以下の微細な二酸化ルテニウム粒子であることが確認できる。
同様に酸化ビスマス粉末についても微細であることが望ましく、1μm以下であると更に望ましい。その他ガラス化形成に供される酸化物についてもできるだけ細かい粉末を用いることが均一な混合物を得るためには望ましい。
第1の工程でのルテニウム酸ビスマス粒子の析出は、ルテニウム化合物粉末(粒子)とビスマスの接触により反応し、進行する。その為、ビスマス粉末についても微細であることが望ましい。
モル比0.5未満では、ビスマスに対しルテニウムが多すぎて反応が十分進行せず好ましくない。すなわち、ビスマスの原子の数は、ルテニウムの原子の数と等量以上必要である。
ルテニウムに対し過剰に存在するビスマスは、ガラスを構成する。その為、Bi2O3/RuO2のモル比4.0を超えてBi2O3の添加量を多くすると、ガラス化した際に軟化点が下がりすぎ、抵抗体焼成時に膜の形成状態が悪化するため好ましくない。モル比4.0を超えて組成中のRuO2の添加量を少なくすると、導電経路が十分に形成されず抵抗特性が得られなくなるため望ましくない。
ルテニウム酸ビスマス粒子を含有するガラスの粉末を用いて厚膜抵抗体組成物を製造するに際し、面積抵抗値および抵抗の温度係数(TCR)を調整する必要がある場合には、これに二酸化ルテニウムや無鉛ガラスフリット、上記TCR添加剤、TiO2、Ta2O5、Nb2O5、MnO2、CuOなどを混練し使用することができる。
本発明に係る厚膜抵抗体ペーストにおいて用いられる有機ビヒクルとしては、公知のものが使用可能であり。例えばセルロース系もしくはアクリル系の樹脂をターピネオールなどの有機溶剤に溶かしたビヒクルを使用することができる。
本実施例に使用した二酸化ルテニウム粉は、住友金属鉱山(株)製造の、結晶子径15nmのRuO2粉末を用いた。表1に示すとおり、Bi2O3/RuO2のモル比を5水準とした組成で酸化物を秤取り、擂潰機で1時間、粉砕混合した。
図1に、熱処理の温度プロファイルを示す。熱処理条件は、第一熱処理温度700℃、第二熱処理温度900℃、各1時間とした。
ルテニウム酸ビスマス粒子を含有するガラスのカレットを回収し、クラッシャーミルで粗粉砕し、擂潰機ですりつぶして粉末化した。
一方、比較例1においては、RuO2とBi2Ru2O6.92が確認された。RuO2はBi2O3との未反応物と考えられる。
次に、第一熱処理温度と第二熱処理温度を変えて熱処理を行った。
表3に熱処理条件を示す。
使用した酸化物は、実施例1で用いた、「二酸化ルテニウム11.5重量%(9.1モル%)、酸化ビスマス66.2重量%(23.9モル%)、酸化ケイ素19.6重量%(55.0モル%)、酸化アルミニウム3.0重量%(5.0モル%)、酸化ホウ素1.3重量%(3.1モル%)、酸化亜鉛0.6重量%(1.3モル%)、酸化ジルコニウム0.2重量%(0.2モル%)」で示す組成の酸化物である。
使用した酸化ルテニウム粉、熱処理方法、ガラス粉末化条件は前述と同様である。
この回折線幅からシェラーの式を用いて(111)面の結晶子径を算出した。算出に際し、標準試料として結晶質のSi粉末を用いた。結果を表3に合わせて示す。
一方、比較例2〜6に示す通り、本請求項範囲外の条件では求める析出物は得られなかった。
さらに、実施例1に係るルテニウム酸ビスマス粒子を含有するガラスをボールミルでレーザー回折を利用した粒度分布計の50%体積累計粒度が3μmとなるルテニウム酸ビスマス粒子を含有するガラスの粉末を得た。得られたガラスの粉末70質量%とエチルセルロースを有機溶剤のターピネオールに溶解したビヒクル30質量%を3ロールミルで混練して実施例13に係る厚膜抵抗体ペーストを得た。
実施例13に係る厚膜抵抗体の25個の抵抗値を、「ケースレー社製デジタルマルチメータMODEL2001 Multimeter」で測定し、その平均値を求めた。平均抵抗値は、1,800Ωであった。
実施例5で得られたルテニウム酸ビスマス粒子を含有するガラス粉末を用いた以外は、実施例13と同様にして実施例14に係る厚膜抵抗体ペーストを得て、最終的に実施例14に係る厚膜抵抗体を得た。
得られた厚膜抵抗体の大きさは幅1mm、長さ1mm、厚さ7μmであった。
得られた厚膜抵抗体の平均抵抗値は2,820,000Ωであった。
Claims (9)
- ルテニウム酸ビスマス粒子を含有するガラスであって、
前記ルテニウム酸ビスマス粒子が、一般式(Bi2+XRu2O7+Y、X=−0.13〜0、Y=−0.5〜+0.4)で表される粒子で、
前記ガラスのX線回折測定で、前記ルテニウム酸ビスマス粒子の(111)面の半価幅が、0.16〜0.48°の範囲にあり、前記半価幅から求められる結晶子径が、20nm〜100nmであることを特徴とするルテニウム酸ビスマス粒子を含有するガラス。 - 前記ガラスが、鉛成分を含まないことを特徴とする請求項1に記載のルテニウム酸ビスマス粒子を含有するガラス。
- 前記ルテニウム酸ビスマス粒子を含有するガラスに含まれるルテニウムの全原子の数量をRuO2分子に換算した配合割合のmolRuO2%が、5mol%以上であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のルテニウム酸ビスマス粒子を含有するガラス。
- ルテニウム源となるルテニウム化合物と、酸化ビスマス、酸化ケイ素、酸化ホウ素の混合物を、大気中600℃〜750℃で熱処理する第1の工程、
次いで、850℃〜950℃の温度で熱処理して前記混合物に含まれる酸化物を熔融する第2の工程、
次いで、急冷却する第3の工程を経た後、
粉砕工程が行われることを特徴とするルテニウム酸ビスマス粒子を含有するガラス粉末の製造方法。 - 前記ルテニウム化合物が、二酸化ルテニウム(以下、RuO2とも称す)または不定形二酸化ルテニウムの水和物であることを特徴とする請求項5に記載のルテニウム酸ビスマス粒子を含有するガラス粉末の製造方法。
- 酸化ビスマス(Bi2O3)に対する前記ルテニウム化合物を、二酸化ルテニウム(RuO2)に換算したモル比(Bi2O3/RuO2)が、0.5以上であることを特徴とする請求項5または6に記載のルテニウム酸ビスマス粒子を含有するガラス粉末の製造方法。
- 請求項1から4のいずれか1項に記載のルテニウム酸ビスマス粒子を含有するガラスの粉末を含む厚膜抵抗体組成物。
- 請求項8に記載の厚膜抵抗体組成物と、有機ビヒクルを含有することを特徴とする厚膜抵抗体ペースト。
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