JP6895056B2 - ルテニウム酸ビスマス粉末の製造方法 - Google Patents
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一般に、酸化ルテニウムは低抵抗値から高抵抗値まで広範囲の導電物として使用され、特に高抵抗領域では導電物濃度に対する抵抗値の変動がより小さいルテニウム酸鉛が用いられることが多い。
設定抵抗値を得るための調整は、主に導電物とガラスフリットの混合比を変えることにより行われる。
そこで、導電パスを形成して良好な抵抗特性を得るためには、導電粒子の粒子径(SEM観察などによる平均粒径)を100nm以下とすることが必要である。平均粒径が100nmを超えると、導電パスが十分に形成されず、抵抗値が異常に高くなるなど、抵抗特性が十分に得られなくなる。
先ず、ガラス性物質の内部でルテニウム酸ビスマスを粒子として析出させる第1の工程について説明する。
即ち、ルテニウム酸ビスマスの粒子の核生成と成長を、ガラスを溶融温度以上に高温化して溶融したガラス内部で進行させることを特徴とするもので、この手段により、析出粒子が高い粘度の溶融ガラス質内で保護されることで粒子同士の焼結を抑制し、単結晶単分散粉末を得るものである。
ルテニウムソースとして不定形酸化ルテニウム水和物粉末または、結晶子径が20nm以下の酸化ルテニウム粉末を使用することが望ましい。
不定形酸化ルテニウム水和物粉末は、公知の方法、例えばルテニウムイオンを含むアルカリ溶液に酸溶液を添加することで水酸化ルテニウムの沈殿物が得られ、これを水洗したのち固液分離し乾燥することで酸化ルテニウム水和物粉末が形成される。
形成された酸化ルテニウム水和物粉末が、XRD回折からは回折ピークは観察されず不定形であることを確認して、不定形酸化ルテニウム水和物粉末を得る。
得られた酸化ルテニウムのX線回折の(110)面の半価幅から結晶子径を算出すると20nm以下の微細な酸化ルテニウムであることが確認できる。
ガラス性物質なので、ガラス転移を備えることは要さない。ガラス性物質の一例としてビスマスガラスフリットを使用することが望ましい。ビスマスガラスフリットを用いることで、後述の溶融熱処理で溶融したガラスになり、ルテニウム酸ビスマス粒子を析出させることができ、さらに、その後の粒子成長の抑制が可能である。
酸化ビスマス(Bi2O3)が80質量%未満では、溶融熱処理においてルテニウムソースとの反応が進行せず、ルテニウム酸ビスマスが析出しないためである。
このようなビスマスガラスフリットの組成であれば、ルテニウム酸ビスマス粒子が析出してガラス中のビスマス原子がルテニウム酸ビスマス粒子の析出に消費されていても、次工程の第2の工程で硝酸などの酸に溶解する。
軟化点が450℃より高いとガラスが十分に軟化されずガラス中へのルテニウム酸ビスマスの析出反応が十分に進行しない。なお、軟化点は、大気雰囲気下で昇温速度10℃/分の条件による熱重量・示差熱分析(TG−DTA)で測定して評価したものである。
また、ルテニウムソースに不定形酸化ルテニウム水和物を用いる場合、不定形酸化ルテニウムから酸化ルテニウムへ変化する際の水の除去を考慮すると、ガラスの軟化点は350℃〜450℃がさらに好ましい。
ガラスフリットのレーザー回折を利用した粒度分布計の50%体積累計粒度は10μm以下、好ましくは5μm以下が望ましい。10μmよりも大きいとルテニウムソースと混合した時に均一になりにくく、その後の熱処理で生成粒子が偏析化しやすい。
ルテニウムソースの不定形ルテニウム水和物または酸化ルテニウム粉末と、ビスマスガラスフリットを、既知の方法で混合する。擂潰機等の機械式乾式混合装置を使用して混合粉末にすることができる。より均一な混合の方法としてはビスマスガラスのボールミルでの微粉砕の際に、同時に上記ルテニウム化合物を添加して混合処理しても良い。
その熔融熱処理保持時間は30分から2時間程度で良く、バッチサイズを加味し生成物の反応の終了を目安として設定すればよい。
熔融熱処理温度は、高くなるほどルテニウム酸ビスマス粒子の結晶子径が大きくなる傾向を示す。600℃未満ではルテニウム酸ビスマスは十分に生成せず、750℃を超えると結晶子径が100nm以上となる。
ガラス性物質の中に析出したルテニウム酸ビスマス粒子を取り出す第2の工程について説明する。
焼成炉からるつぼを取り出し冷却する。るつぼごと水中に投入急冷すると、るつぼから溶融物を、例えばガラスカレットとして容易に回収することができる。
回収した溶融物を、濃度30%以下の希硝酸水溶液で溶解する。
デカンテーションで固液分離し、希硝酸水溶液で酸洗浄し、ガラス成分を除去する。
その後濾過し、洗浄を複数回繰り返して硝酸を除去し、取り出した粒子を濾過分離し、乾燥することで、結晶子径が20nm〜100nmのルテニウム酸ビスマス粉末を得ることができる。
本発明に係るルテニウム酸ビスマス粉末製造方法で得られたルテニウム酸ビスマス粉末、すなわち本発明に係るルテニウム酸ビスマス粉末は、粉末X線回折で同定される化学式がBi2Ru2O7、Bi2Ru2O6.92、Bi1.9Ru2O6.922、Bi1.87Ru2O6.903、Bi2Ru2O7.3、Bi3Ru3O11のいずれかの単相であり、FE−SEM画像(電界放出形走査電子顕微鏡)から求めたルテニウム酸ビスマス粉末を構成する各粒子の平均粒子径が20nm以上、100nm以下であり、粉末X線回折での(111)面のピークから求めた半価幅が0.16〜0.48°の範囲にあり、半価幅から求められる結晶子径が20nm〜100nmである。
すなわち、FE−SEM画像から求めた平均粒子径と結晶子径がほぼ同等であることは、ルテニウム酸ビスマス粉末が単結晶であることを意味する。
平均粒径が100nmを超えると、導電パスが十分に形成されず、抵抗値が異常に高くなるなど、抵抗特性が十分に得られなくなる。粒子径が20nmより細かい場合、抵抗特性は良好であるが、比表面積の増大による粉末活性が大きくなり、ペーストの粘度安定性に問題を生じることがある。20〜100nmの単結晶単分散粒子とすることで、分散性、安定性に優れた導電粒子を得ることができる。
特許文献2および3に開示されたルテニウム酸ビスマスの製造方法では、粒子サイズを100nm以下にするために、ボールミルやビーズミル等の機械的粉砕を加える必要があり、それに掛る長時間の粉砕、粉砕装置の摩耗による不純物の混合が避けられない。さらに、機械的粉砕でルテニウム酸ビスマス粉末の結晶にダメージを与え、多結晶のルテニウム酸ビスマス粉末となってしまう。
このように、本発明に係るルテニウム酸ビスマスの製造方法によれば、結晶子径が20nm〜100nmの単結晶のルテニウム酸ビスマス粉末が得られる。
用いたFE−SEM平均粒径、比表面積、組織及び結晶性の測定方法と結晶子径の算出方法については以下の通りである。
日立製 SEM S−4800 FE−SEM装置を用いて粒子形状を観察、十万倍の視野から粒子100個をランダムに測長し、FE−SEM平均粒径とした。
(2)比表面積:
Mounteh製 Macsorb HM Model−1208を用いてBET一点法により、比表面積を求めた。脱気条件は、温度200℃で30min間とした。
(3)焙焼物の組織の同定:
X線回折装置 X‘Pert−Pro(PANalytical)装置を用いて同定を行った。
(4)結晶性(半値幅):
X線回折装置 X‘Pert−Pro(PANalytical)装置を用いて、酸化ルテニウム(110)面、ルテニウム酸ビスマスの(111)面のピーク半価幅を求めた。
(5)結晶子径:
上記(4)で求めた回折線半値幅を元に、シェラーの式を用いて(111)面の結晶子径を算出した。算出には、標準試料として結晶質のSi粉末を用いた。
「R−1」は、金属ルテニウム粉末を次亜塩素酸ナトリウム溶液と水酸化カリウム溶液で溶解し、硝酸を添加して得られた不定形酸化ルテニウム水和物乾燥体である。
「R−2」は、上記「R−1」を400℃で焙焼した酸化ルテニウム粉末である。
「R−3」は、上記「R−1」を850℃で焙焼した酸化ルテニウム粉末である。
XRD解説(110)面にて結晶子径を確認したところ、「R−1」は不定形、「R−2」は15nm、「R−3」は22nmであった。
「G−1」から「G−5」までの組成とガラス軟化点を示す。
デカンテーションで固液分離し、5%硝酸水溶液で酸洗浄、濾過し、温水での洗浄を所定回繰り返して粉末を濾過分離した。これを110℃で乾燥して粉末を得た。
その後、上記に示した特性の評価を行い、その結果を表3、図1、図2に示す。
図1、図2は、実施例1で得たルテニウム酸ビスマス粒子のFE−SEM画像(図1)とXRD回折結果(図2)を示すものである。
以下、実施例1と実施条件を変えた結果について記載する。
その結果を纏めて表3に示す。
その結果を纏めて表3に示す。
その結果を纏めて表3に示す。
その結果を纏めて表3に示す。
その結果を纏めて表3に示す。
ガラスフリットを「G−3」に変えた以外は、実施例1と同じ条件で比較例1に係る供試材を得て、評価を行った。
その結果を纏めて表3に示す。
ガラスフリットを「G−4」に変えた以外は、実施例1と同じ条件で比較例2に係る供試材を得て、評価を行った。
その結果を纏めて表3に示す。
ガラスフリットを「G−5」に変えた以外は、実施例1と同じ条件で比較例3に係る供試材を得て、評価を行った。
その結果を纏めて表3に示す。
ルテニウム化合物を「R−3」に変えた以外は、実施例1と同じ条件で比較例4に係る供試材を得て、評価を行った。
その結果を纏めて表3に示す。
焙焼温度を「550℃」と低温に変えた以外は、実施例1と同じ条件で比較例5に係る供試材を得て、評価を行った。
その結果を纏めて表3に示す。
焙焼温度を「800℃」と高温に変えた以外は、実施例1と同じ条件で比較例6に係る供試材を得て、評価を行った。
その結果を纏めて表3に示す。
実施例1〜2、比較例1〜3では、ビスマス含有ガラスの組成、軟化点の影響を示している。
実施例1〜2に使用したガラスフリット「G−1」、「G−2」では、ルテニウム酸ビスマスの生成が確認されたが、比較例1〜3に使用したガラスフリット「G−3」、「G−4」、「G−5」では、酸洗浄後の回収粉末のXRD回折からいずれもRuO2が同定され、ルテニウム酸ビスマスの生成が確認されなかった。
実施例1、3、比較例4では、ルテニウム化合物を変えた時の影響を示している。
実施例1、3では、結晶子径が20〜100nmの範囲のルテニウム酸ビスマスが生成されたが、比較例4では酸化ルテニウムの結晶子径が20nmを超えたものを使用した結果、粒子サイズが大きくなり、結晶子径が100nmを超える粒子となった。
実施例1、4〜6、比較例5〜6では、熔融熱処理温度の影響について示している。
比較例5に示す通り熔融熱処理温度である焙焼温度が550℃においては、ルテニウム酸ビスマスの生成が確認されず、未反応の酸化ルテニウムが確認された。
一方比較例6に示す通り、焙焼温度が700℃を超えると急激にルテニウム酸ビスマスの粒子成長が促進され、結晶子径が329nmと大きくなり、平均粒径も約1μmと粗大化した。
Claims (4)
- ルテニウム酸ビスマス粉末製造方法であって、
ルテニウム化合物粉末とビスマス酸化物を80質量%以上含有するガラス性物質粉末を混合し、酸素を含有する雰囲気下で600℃〜750℃で熔融熱処理してガラス性物質中にルテニウム酸ビスマス粒子を析出させた溶融熱処理物を形成する第1の工程と、
前記熔融熱処理物を、酸で溶解してルテニウム酸ビスマス粒子を分離する第2の工程と、
を含むことを特徴とするルテニウム酸ビスマス粉末の製造方法。 - 前記ガラス性物質粉末が、軟化点が450℃以下のビスマスガラスフリットであることを特徴とする請求項1に記載のルテニウム酸ビスマス粉末の製造方法。
- 前記ビスマスガラスフリットが、軟化点が300℃以上、450℃以下であることを特徴とする請求項2に記載のルテニウム酸ビスマス粉末の製造方法。
- 前記ルテニウム化合物粉末が、不定形酸化ルテニウム水和物粉末、または、粉末X線回折での(110)面のピークから求めた結晶子径が20nm以下の酸化ルテニウム粉末であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のルテニウム酸ビスマス粉末の製造方法。
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