以下、角速度センサーの製造方法の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、各図は、説明する部分が認識可能な状態となるように、適宜拡大又は縮小して表示している箇所や、誇張して記載している箇所もある。
<第1実施形態>
1.角速度センサー
まず、本適用例の角速度センサーの製造方法の説明に先立ち、本適用例の角速度センサーの製造方法によって製造される角速度センサーについて簡単に説明する。
図1は、第1実施形態に係る角速度センサーを示す断面図である。図2は、図1に示す角速度センサーのパッケージ内部の平面図である。なお、図1中の上側を「上」、図1中の下側を「下」と言う。また、図1および図2では、それぞれ、説明の便宜上、互いに直交する3つの軸として、X軸、Y軸およびZ軸を図示しており、各軸を示す矢印の先端側を「+」、基端側を「−」とする。また、X軸に平行な方向を「X軸方向」、Y軸に平行な方向を「Y軸方向」、Z軸に平行な方向を「Z軸方向」という。また、+Z軸方向側を「上」、−Z軸方向側を「下」ともいう。また、本実施形態では、X軸、Y軸およびZ軸は、水晶の結晶軸である電気軸、機械軸および光軸にそれぞれ対応している。
図1および図2に示す角速度センサー10(物理量センサー)は、Y軸まわりの角速度を検出する。この角速度センサー10は、パッケージ8と、パッケージ8内に収容された振動素子1と、パッケージ8内に配置されているICチップ9(回路素子)と、を有する。
〈パッケージ〉
パッケージ8は、振動素子1を収納する凹部811を有する箱状のベース81と、ベース81の凹部811の開口を塞ぐようにベース81に例えばシームリング等の接合部材(図示せず)を介して接合された板状のリッド82と、を有する。パッケージ8内の空間S1は、減圧(真空)状態となっていてもよいし、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガスが封入されていてもよい。
ベース81の凹部811は、開口側に位置する上段面811aと、底部側に位置する下段面811cと、これらの面の間に位置する中段面811bと、を有する。このベース81の構成材料としては、特に限定されず、例えば、酸化アルミニウム等の各種セラミックスや、各種ガラス材料を用いることができる。また、リッド82の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、ベース81の構成材料と線膨張係数が近似する部材であるのが好ましい。例えば、ベース81の構成材料がセラミックスである場合には、リッド82の構成材料としてはコバール等の合金であるのが好ましい。
図2に示すように、上段面811aには、振動素子1に電気的に接続される複数の端子812が設けられている。中段面811bには、ICチップ9に電気的に接続される複数の端子813が設けられている。これら複数の端子812、813は、図示はしないが、パッケージ8の裏面に設けられた複数の外部接続端子とともに、ベース81に形成された内部配線やスルーホールにより、回路配線を形成するように接続されている。なお、端子812、813は、導電性を有していれば特に限定されないが、例えば、Cr(クロム)、W(タングステン)等のメタライズ層(下地層)に、Ni(ニッケル)、Au(金)、Ag(銀)、Cu(銅)等の各被膜を積層した金属被膜で構成されている。
〈ICチップ〉
図1に示すように、ICチップ9は、ベース81の下段面811cに例えば接着剤によって固定されている。図2に示すように、ICチップ9は、複数の端子91を有し、この各端子91が導電性ワイヤー13によって、前述した中段面811bに設けられた各端子813と電気的に接続されている。このICチップ9は、振動素子1を駆動振動させるための駆動回路と、角速度が加わったときに振動素子1に生じる検出振動を検出する検出回路と、を有する。
〈振動素子〉
図3は、振動素子の振動体の平面図である。図4は、図3中のA1−A1線断面図である。図5は、図3中のA2−A2線断面図である。
振動素子1は、Y軸まわりの角速度ωを検出するセンサー素子である。この振動素子1は、振動体2と、振動体2の表面に形成された電極部3と、を有している(図3、図4および図5参照)。
(振動体)
図3に示す振動体2(振動片)は、水晶基板の結晶軸であるY軸(機械軸)およびX軸(電気軸)で規定されるXY平面に広がりを有し、Z軸(光軸)方向に厚みを有する板状をなしている。すなわち、振動体2は、Zカット水晶板で構成されている。なお、Z軸は、振動体2の厚さ方向と必ずしも一致している必要はなく、常温近傍における周波数の温度による変化を小さくする観点から、厚さ方向に対して若干傾けてもよい。具体的には、Zカット水晶板とは、Z軸に直交した面をX軸およびY軸の少なくとも一方を中心に0度〜10度の範囲で回転させた面が、主面となるようなカット角の水晶板を含む。なお、振動体2の材料としては、水晶に限定されず、例えば、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウムなどの水晶以外の圧電材料を用いることもできる。また、振動体2は、シリコン等の圧電性を有しないものであってもよく、この場合、振動体2上に圧電素子を適宜設ければよい。
振動体2は、基部21と、1対の駆動腕221、222(駆動部)と、1対の検出腕231、232(検出部)と、1対の調整腕241、242(調整部)と、支持部25と、4つの連結部261、262、263、264とを有し、これらが一体的に形成されている。
駆動腕221、222は、X軸方向に沿って並んで配置され、それぞれ、基部21から−Y軸方向に延出している。駆動腕221には、その上面および下面に開放してY軸方向に延在している1対の有底の溝2213が形成されている(図3および図5参照)。同様に、駆動腕222には、その上面および下面に開放してY軸方向に延在している1対の有底の溝2223が形成されている。溝2213、2223は、例えばウェットエッチングにより形成される。これにより、図5に示すように、溝2213、2223の形状は、それぞれ、水晶の結晶面が現れることでX軸方向で非対称となっている。
また、図5に示すように、駆動腕221は、断面視(Y軸方向から見て)で対向する2つの角部が除去加工されることで形成された面2211、2212を有する。具体的には、駆動腕221は、駆動腕221の上面(主面)と−X軸側側面とを繋ぐ面2211と、駆動腕221の下面(主面)と+X軸側側面とを繋ぐ面2212と、を有する。面2211、2212は、それぞれ、駆動腕221の上面および下面に対して角度θで傾斜している傾斜部である。
また、駆動腕222は、断面視(Y軸方向から見て)で対向する2つの角部が除去加工されることで形成された面2221、2222を有する。具体的には、駆動腕222は、駆動腕222の上面(主面)と−X軸側側面とを繋ぐ面2221(傾斜部)と、駆動腕222の下面(主面)と+X軸側側面とを繋ぐ面2222(傾斜部)と、を有する。面2221、2222は、それぞれ、駆動腕222の上面および下面に対して角度θで傾斜している傾斜部である。
なお、図示では、面2211、2212、2221、2222は、平坦であるが、例えば、外側に突出する凸面であったり、凹面であってもよい。
また、本実施形態では、駆動腕221の上面と+X軸側側面とが交差する角部2216と、駆動腕221の下面と−X軸側側面とが交差する角部2217とには、それぞれ除去加工が施されていない。同様に、駆動腕222の上面と+X軸側側面とが交差する角部2226と、駆動腕222の下面と−X軸側側面とが交差する角部2227とは、それぞれ加工が施されていない。
また、図3に示すように、検出腕231、232は、X軸方向に沿って並んで配置され、それぞれ、基部21から+Y軸方向に延出している。検出腕231には、その上面および下面に開放してY軸方向に延在している1対の有底の溝2313が形成されている(図3および図4参照)。同様に、検出腕232には、その上面および下面に開放してY軸方向に延在している1対の有底の溝2323が形成されている。溝2313、2323の形状は、前述した溝2213、2223の形状と同様に、それぞれX軸方向で非対称となっている。
調整腕241、242は、前述した1対の検出腕231、232を挟むようにしてX軸方向に沿って並んで配置され、それぞれ、基部21から+Y軸方向に延出している。
支持部25は、基部21に対して−Y軸方向側に配置されていてX軸方向に沿って延びている長尺状をなす部分251と、部分251の両端部から+Y軸方向に沿って延びている2つの部分252、253と、を有している。また、連結部261、262、263、264は、基部21と支持部25とを連結しており、それぞれ、途中に屈曲または湾曲した複数の部分を有する。
なお、図示では、前述した駆動腕221、222、検出腕231、232および調整腕241、242の先端部の幅(X軸方向での長さ)が基部21側の幅よりも広くなっているが、これに限定されない。例えば、駆動腕221、222、検出腕231、232および調整腕241、242の各幅は、一定であってもよい。
(電極部)
電極部3(電極パターン)は、振動体2の表面に設けられている。この電極部3は、駆動信号電極311および駆動接地電極312と、第1検出信号電極321、第2検出信号電極322および検出接地電極323と、を有する(図4および図5参照)。また、図3に示すように、電極部3は、振動体2の下面に設けられた駆動信号端子313、駆動接地端子314、第1検出信号端子325、第2検出信号端子326および検出接地端子327を有する。駆動信号端子313、駆動接地端子314、第1検出信号端子325、第2検出信号端子326および検出接地端子327は、前述したベース81の上段面811aに設けられた複数の端子812に導電性接着剤12を介して接続されている(図2参照。)
駆動信号電極311は、駆動腕221、222の駆動振動を励起させるための駆動信号が入力される電極である。図5に示すように、駆動信号電極311は、駆動腕221の溝2213の内壁面と、駆動腕222の両側面とに形成されている。一方、駆動接地電極312は、駆動信号電極311に対してグランドとなる電位を有する。駆動接地電極312は、駆動腕221の両側面と、駆動腕222の溝2223の内壁面とに形成されている。
第1検出信号電極321は、検出腕231、232の検出振動が励起されたときに、その検出振動によって発生する電荷を検出信号として出力するための電極である。図4に示すように、第1検出信号電極321は、検出腕231の−Z軸側に位置する溝2313の内壁面の+X軸方向側と、検出腕231の+Z軸側に位置する溝2313の内壁面の−X軸方向側と、検出腕231の−X軸方向側側面下部と、検出腕231の+X軸方向側側面上部とにそれぞれ形成されている。また、第1検出信号電極321は、検出腕232の−Z軸側に位置する溝2323の内壁面の−X軸方向側と、検出腕232の+Z軸側に位置する溝2323の内壁面の+X軸方向側と、検出腕232の−X軸方向側側面上部と、検出腕232の+X軸方向側側面下部とにそれぞれ形成されている。
同様に、第2検出信号電極322は、検出腕231、232の検出振動が励起されたときに、その検出振動によって発生する電荷を検出信号として出力するための電極である。この第2検出信号電極322は、検出腕231の−Z軸側に位置する溝2313の内壁面の−X軸方向側と、検出腕231の+Z軸側に位置する溝2313の内壁面の+X軸方向側と、検出腕231の−X軸方向側側面上部と、検出腕231の+X軸方向側側面下部とにそれぞれ形成されている。また、第2検出信号電極322は、検出腕232の−Z軸側に位置する溝2323の内壁面の+X軸方向側と、検出腕232の+Z軸側に位置する溝2323の内壁面の−X軸方向側と、検出腕232の−X軸方向側側面下部と、検出腕232の+X軸方向側側面上部とにそれぞれ形成されている。
また、検出接地電極323は、第1検出信号電極321と第2検出信号電極322とに対してグランドとなる電位を有する。図4に示すように、検出接地電極323は、調整腕241の−X軸方向側側面と、調整腕241の上面の+X軸側と、調整腕241の下面の+X軸側と、調整腕242の+X軸方向側側面と、調整腕242の上面の−X軸側と、調整腕242の下面の−X軸側とにそれぞれ形成されている。また、調整腕242の上面の+X軸側と、調整腕242の下面の+X軸側とには、第1検出信号電極321が形成されている。また、調整腕241の上面の−X軸側と、調整腕241の下面の−X軸側とには、第2検出信号電極322が形成されている。ここで、調整腕241、242に設けられている第1検出信号電極321、第2検出信号電極322および検出接地電極323は、「調整用電極」として機能している。
また、図3に示すように、駆動信号端子313は、部分251に配置されており、連結部264に形成された駆動信号配線(図示せず)を介して、駆動信号電極311と電気的に接続されている。同様に、駆動接地端子314は、部分251に配置されており、連結部263に形成された駆動接地配線(図示せず)を介して、駆動接地電極312と電気的に接続されている。第1検出信号端子325は、部分253に形成されており、連結部262の上面に形成された第1検出信号配線(図示せず)を介して、第1検出信号電極321と電気的に接続されている。同様に、第2検出信号端子326は、部分252に形成されており、連結部261の上面に形成された第2検出信号配線(図示せず)を介して、第2検出信号電極322と電気的に接続されている。検出接地端子327は、部分252および部分253のそれぞれに形成されており、連結部261、262の下面に形成された検出接地配線(図示せず)を介して検出接地電極323と電気的に接続されている。
以上のような電極部3の構成としては、導電性を有していれば特に限定されないが、例えば、Cr(クロム)、W(タングステン)などのメタライズ層(下地層)に、Ni(ニッケル)、Au(金)、Ag(銀)、Cu(銅)などの各被膜を積層した金属被膜で構成することができる。
以上説明したような構成された振動素子1では、振動素子1に角速度が加わらない状態において、駆動信号端子313に駆動信号を入力することで駆動信号電極311と駆動接地電極312との間に電界が生じると、駆動腕221、222は、図3中矢印Dで示すようにX軸方向に互いに反対方向となるように屈曲振動(駆動振動)を行う。また、この駆動振動に伴って、調整腕241、242も、X軸方向に互いに反対方向となるように屈曲振動(調整振動)を行う。
この駆動振動を行っている状態で、Y軸方向に沿った中心軸a1周りの角速度ωが振動素子1に加わると、駆動腕221、222にコリオリ力が作用し、このコリオリ力により、駆動腕221、222がZ軸方向に互いに反対方向となるように屈曲振動する。これに伴い、検出腕231、232は、図3中矢印Eで示すようにZ軸方向に互いに反対方向となるように屈曲振動(検出振動)する。この検出振動により、検出腕231、232に発生した電荷を、第1検出信号端子325および第2検出信号端子326から検出信号として取り出し、この検出信号に基づいて角速度が求められる。
なお、このとき、調整腕241、242も、駆動腕221、222と同様に、Z軸方向に互いに反対方向となるように屈曲振動するが、この屈曲振動による電荷は出力されない。すなわち、コリオリ力の作用の有無にかかわらず、調整腕241、242から出力される電荷は、基本的に、前述した調整振動によるもののみであって一定である。
以上説明したように、角速度センサー10は、基部21と、基部21から延出し、駆動信号電極311および駆動接地電極312が設けられた駆動腕221、222と、基部21から延出し、第1検出信号電極321および第2検出信号電極322が設けられた検出腕231、232と、を備える振動素子1を有する。そして、駆動腕221は、その主面(駆動振動の方向に沿った面)に対して傾斜した面2211、2212を有する。同様に、駆動腕222は、その主面に対して傾斜した面2221、2222を有する。このような振動素子1を備える角速度センサー10によれば、加工誤差により生じる不要振動(振動漏れ)を効果的に低減することができる。
さらに、振動素子1は、調整用電極を備える調整腕241、242を有する。そのため、振動体2の製造バラツキ等に起因する不要振動(振動漏れ)をさらに調整することができる。
2.角速度センサーの製造方法
次に、本適用例の角速度センサーの製造方法について、前述した角速度センサー10を製造する場合を例に説明する。
図6は、本適用例の角速度センサーの製造方法の一例のフロー図である。
図6に示すように、振動素子1の製造方法は、[1]用意工程(ステップS11)と、[2]第1検出工程(ステップS12)と、[3]第1加工工程(ステップS13)と、[4]第2検出工程(ステップS14)と、[5]第2加工工程(ステップS15)と、[6]実装工程(ステップS16)と、[7]チューニング工程(ステップS17)と、を有する。以下、各工程を順次説明する。また、[3]工程、[4]工程、[5]工程を合わせて「加工工程(ステップS10)」とする。
[1]用意工程(ステップS11)
図7は、複数の振動体を備えるウェハーの平面図である。図8は、図7に示す振動体が有する駆動腕の断面図である。図9は、電極部を備える駆動腕の断面図である。図10は、電極部を備える検出腕および調整腕の断面図である。
まず、図7に示すように、複数の振動体2aを備えるウェハー20(基板)を用意する。複数の振動体2aは、例えば、平面視で水晶のX軸に沿った方向の1対の辺とY軸に沿った方向の1対の辺とを有する矩形をなすZカット水晶板(ウェハー)をエッチングすることにより得られる。したがって、本工程は、複数の振動体2aを形成する振動片形成工程とも言える。
ウェハー20は、複数の振動体2aと、これらの振動体2aを囲む枠体部230と、各振動体2aと枠体部230とを連結する複数の連結部240と、を有している。各振動体2aは、基部21と、1対の駆動腕221a、222aおよび1対の検出腕231、232と、1対の調整腕241、242と、支持部25と、4つの連結部261、262、263、264とを有している。なお、図7に示す1対の駆動腕221a、222aは、後の工程を経て、前述した図5に示す1対の駆動腕221、222となる。
本実施形態では、図8に示すように、本工程で形成された各振動体2aが有する駆動腕221aは、断面視で、4つの角部(稜線部、外縁部)2214、2215、2216、2217を有する。角部2214は、駆動腕221aの上面と−X軸側側面とを繋ぐ部分であり、角部2215は、駆動腕221aの下面と+X軸側側面とを繋ぐ部分である。また、角部2216は、駆動腕221aの上面と+X軸側側面とを繋ぐ部分であり、角部2217は、駆動腕221aの下面と−X軸側側面とを繋ぐ部分である。
同様に、駆動腕222aは、本実施形態では、断面視で、4つの角部(稜線部、外縁部)2224、2225、2226、2227を有する。角部2224は、駆動腕222aの上面と−X軸側側面とを繋ぐ部分であり、角部2225は、駆動腕222aの下面と+X軸側側面とを繋ぐ部分である。また、角部2226は、駆動腕222aの上面と+X軸側側面とを繋ぐ部分であり、角部2227は、駆動腕222aの下面と−X軸側側面とを繋ぐ部分である。
また、本工程では、各振動体2aを用意した後、前述した電極部3と同様の構成の電極部3aを振動体2aの表面に形成する。すなわち、図9に示すように、駆動腕221a、222aの表面に駆動信号電極311a(駆動用電極)および駆動接地電極312a(駆動用電極)を形成する。また、図10に示すように、第1検出信号電極321a(検出用電極)、第2検出信号電極322a(検出用電極)および検出接地電極323a(検出用電極)を形成する。
この電極部3aは、後述する[2]工程や[4]工程で振動漏れ量を検出するために用いる。また、電極部3aには、図示はしないが、例えば、駆動腕221a、222aを駆動振動させるための駆動回路と、検出腕231、232の振動により生じる信号(検出電流)を検出する検出回路と備える計測機器に接続する。
なお、電極部3aは、例えば、蒸着やスパッタリング等によって、Cr(クロム)などを含む被膜を形成した後、その上にAu(金)などを含む被膜を形成し、これら金属被膜に対してフォトリソグラフィー、エッチングを行うことにより得られる。また、駆動信号電極311a(駆動用電極)および駆動接地電極312aは、後述する[3]工程や[4]工程での除去加工を考慮した配置とする(図9参照)。
[2]第1検出工程(ステップS12)
次に、各振動体2aに対して角速度ωが加わらない状態における検出腕231、232の振動により生じる信号(検出電流)を検出する。すなわち、振動漏れ量を検出する。そして、結果に応じて、振動体2aごとに[3]工程での加工量(粗調整量)を決定する。
ここで、振動漏れ量とは、駆動腕221a、222aを駆動振動させた状態で、角速度が加わっていないときに、検出腕231、232上の検出用電極(第1検出信号電極321aおよび第2検出信号電極322a)から出力される信号(電流値)のことを意味する。これは、[1]工程で形成された振動体2aの加工誤差によって駆動腕221a、222aが駆動振動に対して斜めに振動し、その振動に伴って検出腕231、232も斜め振動することに起因している。
なお、本工程の後に、必要に応じて、次の[3]工程を行う前に、振動体2a上の電極部3aを除去してもよい。
[3]第1加工工程(ステップS13)
次に、[2]工程で決定した粗調整量(加工量)に基づいて、各振動体2aの駆動腕221a、222aの一部を除去加工する。すなわち、第1加工工程(ステップS13)は、振動漏れ量の粗調整を行う粗調整工程である。
本工程では、駆動腕221aの2つの角部2214、2215と、駆動腕222aの2つの角部2224、2225とを除去加工する(図8参照)。なお、[2]工程で決定した粗調整量によっては、角部2214、2215、2224、2225のうちの少なくとも1つを除去加工してもよい。
(FIB加工および照射角度)
図11は、駆動腕に対してFIBを照射する状態を示す図である。図12は、FIB加工におけるステージの傾斜状態を示す模式図である。図13は、FIB加工が施された駆動腕の断面図である。
除去加工は、集束イオンビームLL(FIB:Focused Ion Beam)を用いたFIB加工により行う。FIB加工を用いることで、微細な加工を所望通りに行うことが容易である。また、加工の際に生じ得るドロスを低減または削除することができる。また、マスクを用いる必要がなく、よって、微細な加工に特に有効である。
図11に示すように、駆動腕221aの角部2214、2215に対して集束イオンビームLLを照射する。また、図示はしないが、同様に、駆動腕222aの2224、2225に対して集束イオンビームLLを照射する。この際、例えば、図12に示すように、FIB加工において複数の振動体2aを備えるウェハー20を支持しているステージS100を集束イオンビームLLの照射方向(図12の上下方向に沿った軸方向)に対して傾斜させる。
このように、加工工程(ステップS10)、特に本実施形態では第1加工工程(ステップS13)において、集束イオンビームLLの照射方向は、主面(上面および下面)に対して傾斜している。これにより、駆動腕221aの一方の主面(上面)側に位置する角部2214とともに、駆動腕221aの他方の主面(下面)側に位置する角部2215とを同工程で効率よく加工できる(図11および図12参照)。駆動腕222aについても同様である。このように2箇所を同工程で除去加工できるので、同工程で迅速に除去加工を行うことができ、よって、生産性を高めることができる。
このようにFIB加工を施すことで、図13に示すように、駆動腕221aには、面2211a、2212aが形成され、駆動腕222aには、面2221a、2222aが形成される。具体的には、駆動腕221aの角部2214に対してFIB加工を施すことで、駆動腕221aの上面(主面)に対して角度θで傾斜した面2211aが形成される(図9および図13参照)。また、駆動腕221aの角部2215に対してFIB加工を施すことで、駆動腕221aの下面(主面)に対して角度θで傾斜した面2212aが形成される。また、駆動腕222aの角部2224に対してFIB加工を施すことで、駆動腕222aの上面(主面)に対して角度θで傾斜した面2221aが形成される。また、駆動腕222aの角部2225に対してFIB加工を施すことで、駆動腕222aの下面(主面)に対して角度θで傾斜した面2222aが形成される。
図14は、傾斜角度の検証結果を示すグラフである。
図14に示すように、角度θが10°以上であると、角度が10°未満である場合に比べ、少ない加工量でも振動漏れ量を大きく低減することができる。角度θが45°以上であると、その傾向は特に大きい。そのため、上記の角度θ以上であることで少ない加工量で振動漏れの補正をより迅速に行うことができる。
なお、角度θの具体的な数値は、面2211a、2212a、2221a、2222aで異なっていてもよいし、同じであってもよい。
(加工する領域)
また、本工程では、駆動腕221a、222aの基部側の領域を加工する。
図15は、FIB加工が施された駆動腕の斜視図である。
本工程では、図15に示すように、駆動腕221a、222aの基部21側から先端に向かってFIB加工を施す。また、本実施形態では、駆動腕221a、222aの基部21側、特に基部21から駆動腕221a、222aの長手方向における中心までの領域(基部側の領域)を除去加工する。
図16は、加工距離と振動漏れの変化量との関係を示すグラフである。
図16中の線分L1は、駆動腕221a、222aの基部21側(根本)から先端側に向かって除去加工した場合の結果であり、線分L2は、駆動腕221a、222aの先端側から基部21側に向かって除去加工した結果である。
図16に示すように、基部21側(根本)から除去加工した方が、少ない加工量で振動漏れの変化量が大きい。これに対し、先端側から除去加工すると、基部21側を加工するよりも加工量に対する振動漏れの変化量が小さい。
したがって、加工工程(ステップS10)、特に本実施形態では第1加工工程(ステップS13)において、駆動腕221a、222aの基部21側の稜線部(本実施形態では、角部2214、2215、2224、2225)の少なくとも一部を加工することが好ましい。図16からも分かるように、駆動腕221a、222aの先端側より基部21側を除去加工した方が、少ない加工量で振動漏れ量を大きく低減することができる。そのため、基部21側の領域を加工することで、加工をより迅速に行うことができ、よって、生産性を高めることができる。また、歩留りを高めることができコストを低減できる。
また、FIB加工における加速電圧としては、30[KeV]程度以下であることが好ましい。これにより、高精細に加工を行うことが可能であり、高精度な角速度センサー10を実現できる。また、別の観点から、加速電圧としては、360[KeV]程度以下であることが好ましい。これにより、加工レートを早めることが可能となり、製造のタクトタイムを上げることができる。よって、高精度な角速度センサー10を安価に製造することが可能となる。このように、FIB加工時の加速電圧や電流を適宜設定することにより、高精細な加工やタクトタイムの向上を図ることができる。
また、FIB加工で用いるイオンの種類は、扱い易さ等の観点から、Ga(ガリウム)であることが好ましい。ただし、Xe(キセノン)、Ne(ネオン)、Ar(アルゴン)、He(ヘリウム)等のGa以外のイオンを用いることもできる。これにより、FIB加工に伴うデポ物(堆積物)が帯電せず、デポ物が電極部3aに付着した際の静電破壊等の不具合を低減または防止することができる。また、FIB加工では、アシストガスとしてXeF(二フッ化キセノン)やCF4(四フッ化メタン)、I(ヨウ素)等のガスを用いることもできる。これにより、加工レートを早めることができる。
以上のようにして、[2]工程で決定した粗調整量(加工量)に基づいて粗調整を行うことができる。
[4]第2検出工程(ステップS14)
次に、[2]工程と同様に、振動漏れ量を検出する。そして、結果に応じて、振動体2aごとに[5]工程での加工量(微調整量)を決定する。
なお、本工程の前に、電極部3aを除去している場合には再度電極部3aを設けて振動漏れ量を検出した後、次の[5]工程の前に電極部3aを再度除去してもよい。
[5]第2加工工程(ステップS15)
図17は、FIB加工が施された駆動腕の斜視図である。
次に、[4]工程で決定した微調整量(加工量)に基づいて、駆動腕221a、222aの一部を除去加工する(図17参照)。すなわち、第2加工工程(ステップS15)は、振動漏れ量の微調整を行う微調整工程である。
本工程では、前述した[2]工程と同様に駆動腕221aの2つの角部2214、2215と駆動腕222aの2つの角部2224、2225とにFIB加工を施す(図9、図15および図17参照)。この際、駆動腕221aの角部2214、2215の先端側の領域と、駆動腕222aの角部2224、2225の先端側の領域とにFIB加工を施す。これにより、図17に示すように、駆動腕221aには、面2211aに連続した面2211bが形成されて、面2211aおよび面2211bで構成された面2211が形成される。同様に、駆動腕222aには、面2221aに連続した面2221bが形成されて、面2221aおよび面2221bで構成された面2221が形成される。また、図示はしないが、駆動腕221aに面2212が形成され、駆動腕222aには面2222が形成される。
なお、本工程でも、[3]工程と同様にステージS100を傾斜させて加工を行う(図12参照)。また、[4]工程で決定した微調整量によっては、角部2214、2215、2224、2225のうちの少なくとも1つを除去加工してもよい。
ここで、前述したように、駆動腕221a、222aの先端側に向かうにつれて加工量に対する振動漏れの変化量(補正量)が減る(図16参照)。そのため、本工程で、先端側を除去加工することで、微量な振動漏れを調整することができる。よって、振動漏れをゼロ付近に調整することが可能となり、高精度・高安定な角速度センサー10を提供することができる。
以上のようにして、[4]工程で決定した微調整量(加工量)に基づいて微調整を行うことができる。これにより、面2211、2212を備える駆動腕221と、面2221、2222を備える駆動腕222を備える複数の振動体2が形成される。
なお、本工程では、電極部3aを振動体2の表面に設けられた電極部3として用いることができる。また、本工程において電極部3aが除去されている場合には、前述した微調整を行って形成された振動体2の表面に電極部3を形成してもよい。したがって、本工程を経て、振動体2および電極部3を備える複数の振動素子1が得られる。
[6]実装工程(ステップS16)
次に、複数の連結部240を切断して、複数の振動素子1(振動体2)を枠体部230から切り離し、振動素子1を前述したパッケージ8のベース81に実装する(図2および図7参照)。なお、本工程では、リッド82は、ベース81に接合していない。
[7]チューニング工程(ステップS17)
図18は、チューニング工程を説明するための図である。
次に、調整腕241に設けられた調整用電極としての第2検出信号電極322および検出接地電極323と、調整腕242に設けられた調整用電極としての第1検出信号電極321および検出接地電極323とを加工して、振動漏れの更なる調整を行う(図4および図18参照)。
具体的には、駆動腕221、222を駆動振動させ、検出信号を検出する。駆動腕221、222を駆動振動させた際に、角速度ωが加わっていなければ、コリオリ力は生成されず、検出信号は検出されないか、または所定値以下である。これに対し、駆動腕221、222を駆動振動させて、検出信号が検出された場合、その検出した検出信号(電流値)を振動漏れ量として、その振動漏れ量に応じて調整腕241、242に設けられた調整用電極(第1検出信号電極321、第2検出信号電極322および検出接地電極323)を加工する。なお、検出信号が検出されていない場合には、調整用電極の加工は省略してよい。
この調整用電極の加工では、レーザーや集束イオンビーム等のイオンビームを用いることが好ましい。特に、集束イオンビームを用いたFIB加工であることが好ましい。これにより、加工の際に生じ得るドロスを低減または削除することができる。そのため第1検出信号電極321、第2検出信号電極322および検出接地電極323間でのドロスによる電極パスを低減または防止することができる。そのため、ノイズを低減でき、より高精度な角速度センサー10を実現できる。
以上のようにして、チューニングを行った後、リッド82をベース81に接合し、パッケージ8内に振動素子1を封止する(図1参照)。
以上のようにして角速度センサー10を形成することができる。
以上説明したように、角速度センサー10の製造方法は、基部21と、基部21から延出し、駆動信号電極311a(駆動用電極)および駆動接地電極312a(駆動用電極)が形成されており、延出する方向に垂直な断面の形状が多角形からなる部分を有する駆動腕221a、222a(駆動部)と、基部21から延出し、第1検出信号電極321a(検出用電極)および第2検出信号電極322a(検出用電極)が形成されている検出腕231、232(検出部)と、を備える振動体2a(振動片)を用意する用意工程(ステップS11)を有する。また、角速度センサー10の製造方法は、駆動信号電極311aおよび駆動接地電極312aに通電して駆動腕221a、222aを駆動振動させ、第1検出信号電極321aおよび第2検出信号電極322aにより出力された振動漏れ量を検出する「検出工程」である第1検出工程(ステップS12)を有する。また、角速度センサー10の製造方法は、振動漏れ量に基づいて駆動腕221a、222aの延出する方向に垂直な断面の形状が多角形からなる部分の稜線部(本実施形態では、角部2214、2215、2224、2225)の少なくとも一部を集束イオンビームLLにより加工する加工工程(ステップS10)を含む。
このような角速度センサー10の製造方法によれば、駆動腕221a、222aの漏れ振動に大きな影響を有する稜線部である角部2214、2215、2224、2225を集束イオンビームLLで加工するため、少しの加工量で漏れ振動を抑制でき加工時間を短くできる。また、駆動信号電極311aおよび駆動接地電極312aを加工せずに駆動腕221a、222aを加工するため、従来のように、駆動信号電極311aおよび駆動接地電極312aを過剰に厚くする必要がない。よって、角速度センサー10の製造方法によれば、不要振動(振動漏れ)が低減されるとともに温度特性に優れた角速度センサー10を迅速かつ適切に製造することができる。
また、前述したように、駆動腕221a、222a(駆動部)は、駆動振動の方向に沿った2つの主面(上面および下面)を有し、加工工程(ステップS10)、特に本実施形態では第1加工工程(ステップS13)において、集束イオンビームLLを照射して稜線部(本実施形態では、角部2214、2215、2224、2225)の少なくとも一部を除去する加工により主面(上面および下面)に対して傾斜した面2211a、2212a、2221a、2222a(傾斜面)を形成する。そして、面2211a、2212a、2221a、2222aの角度θ(傾斜角度)は、10°以上であることが好ましく、45°以上であることがより好ましい。角度θが大きい方が、少ない加工量で振動漏れを補正できる効果が大きい。そのため、上記角度θ以上であることで少ない加工量で振動漏れの補正をより迅速に行うことができる。また、上記角度θ以上であることで、前述したステージS100を過剰に傾斜させる必要がないため、ステージS100の回転に要する時間を短くでき、効率が良い。また、上記角度θ以上であることで、隣接する駆動腕221a、222aへ集束イオンビームLLが当たるおそれも低減することができる。
また、前述したように駆動腕221a、222a(駆動部)は、駆動振動の方向に沿った2つの主面(上面および下面)を有し、加工工程(ステップS10)において、稜線部の少なくとも一部として駆動腕221a、222aの一方の主面(上面)の外縁部と、駆動腕221a、222aの他方の主面(下面)の外縁部とをそれぞれ加工する。本実施形態では、駆動腕221aの上面側に位置する角部2214(外縁部)と駆動腕221aの下面側に位置する角部2215(外縁部)とを加工する。同様に、駆動腕222aの上面側に位置する角部2224(外縁部)と駆動腕222aの下面側に位置する角部2225(外縁部)とを加工する。これにより、不要振動をより効果的に低減することができる。
さらに前述したように、駆動腕221a、222a(駆動部)は、2つの主面(上面および下面)と交差する2つの側面を有し、加工工程(ステップS10)において、稜線部の少なくとも一部として駆動腕221a、222aの一方の側面側と、駆動腕221a、222aの他方の側面側とをそれぞれ加工する。本実施形態では、駆動腕221aの−X軸側側面に位置する角部2214(稜線部)と駆動腕221aの+X軸側側面に位置する角部2215(稜線部)とを加工する。同様に、駆動腕222aの−X軸側側面に位置する角部2224(稜線部)と駆動腕222aの+X軸側側面に位置する角部2225(稜線部)とを加工する。これにより、振動漏れをより効果的に低減することができる。
このように、本実施形態では、駆動腕221aが有する面2211、2212は、断面視で(Y軸方向から見て)、対角にある2つの角部2214、2215が除去加工されることで形成されている。同様に、駆動腕222aが有する面2221、2222は、断面視で、対角にある2つの角部2224、2225が除去加工されることで形成されている。このように、1つの角部を加工するよりも2つの角部を加工することで、振動漏れの調整範囲が倍となり、さらに大きな振動漏れも調整できる。これにより、より歩留りを上げてコストを下げることができる。また、振動素子1の感度をより高めることができる。このようなことから、安価で高精度な角速度センサー10を実現できる。
また、前述したように、加工工程(ステップS10)は、駆動腕221a、222a(駆動部)の基部21側の稜線部(本実施形態では、角部2214、2215、2224、2225)の少なくとも一部を集束イオンビームLLにより加工する第1加工工程(ステップS13)と、第1加工工程(ステップS13)の後、駆動腕221a、222aの先端側の稜線部(本実施形態では、角部2214、2215、2224、2225)の少なくとも一部を集束イオンビームLLにより加工する第2加工工程(ステップS15)とを有し、加工工程(ステップS10)では、第1加工工程(ステップS13)と第2加工工程(ステップS15)との間で振動漏れ量を検出する。すなわち、角速度センサー10の製造方法は、第2検出工程(ステップS14)を有する。これにより、第1加工工程(ステップS13)で振動漏れ量の粗調整を行い、第2加工工程(ステップS15)で振動漏れ量の微調整を行うことができる。さらに、第1加工工程(ステップS13)と第2加工工程(ステップS15)との間に振動漏れ量を測定することで、第2加工工程(ステップS15)における微調整をより高精度に行うことができる。
さらに、前述したように、振動体2は、基部21に接続され、調整用電極(第1検出信号電極321、第2検出信号電極322および検出接地電極323)が形成されている調整腕241、242を有し、角速度センサー10の製造方法は、調整用電極を加工するチューニング工程(ステップS17)を有する。これにより、振動漏れをさらに効果的に低減することができる。特に、実装工程(ステップS16)の後に、チューニング工程(ステップS17)を行うことで振動漏れをさらに効果的に低減することができる。
なお、本実施形態では、[4]第2検出工程(ステップS14)および[5]微調整工程(ステップS15)を有しているが、例えば振動漏れの程度によっては、これら[4]工程および[5]工程を省略してもよい。また、[3]工程および[4]工程を省略してもよい。また、本実施形態では、[7]チューニング工程(ステップS17)を有していたが、例えば振動漏れの程度によっては、これら[7]工程は、省略してもよい。
また、本実施形態では、[3]工程および[5]工程において、ステージS100を傾斜させたが、ステージS100は傾斜させなくてもよい。また、[1]工程の後に[6]工程を行い、その後に、[2]工程〜[5]工程を行うこともできる。また、[1]工程〜[3]工程の後に[6]工程を行い、その後に、[4]工程および[5]工程を行うこともできる。
<第1変形例>
図19は、駆動腕の第1変形例を示す斜視図である。
図19に示す駆動腕221、222は、面2211、面2221の長さ(駆動腕221、222の延出方向に沿った長さ)が互いに異なっている。前述した[2]工程および[4]工程の結果を基にして、面2211、面2221の長さ、すなわち、加工量を決定するため、駆動腕221、222で加工量が異なっていてもよい。また、図示はしないが、面2212、2222の長さについても同様である。
また、図示はしないが、面2211、2212、2221、2222の深さ(Z軸方向に沿った長さ)は、互いに異なっていても良いし、同じであってもよい。また、振動体2(振動体2a)ごとに加工量が異なっていてもよい。
<第2変形例>
図20は、駆動腕の第2変形例を示す斜視図である。
図20に示す駆動腕221では、面2211aと面2211bとが繋がっていない。同様に、図20に示す駆動腕222では、面2221aと面2221bとが繋がっていない。なお、図示はしないが、面2212、2222についても同様である。
例えば、[3]工程では、駆動腕221a、222aの基部21側からFIB加工を施し、[5]工程では、駆動腕221a、222aの先端側からFIB加工を施す。これにより、[3]工程では、少ない加工量で振動漏れの大まかな補正を迅速に行い、[5]工程では、振動漏れをより高精度に補正することができる。
<第3変形例>
図21は、駆動腕の第3変形例を示す斜視図である。
図21に示す駆動腕221の面2211は、基部21側から先端側に向かって、X軸方向における幅(駆動腕221の延出方向に交差する方向の長さ)が、変化している。特に、本実施形態では、面2211の幅が、基部21側から先端側に向かって漸減している。同様に、駆動腕222の面2221は、基部21側から先端側に向かって、X軸方向における幅(駆動腕221の延出方向に交差する方向の長さ)が、変化している。特に、本実施形態では、面2221の幅が、基部21側から先端側に向かって漸減している。なお、図示はしないが、面2212、2222についても同様である。
例えば、加工工程(ステップS10)において、稜線部(本実施形態では、角部2214、2215、2224、2225)の少なくとも一部に対して駆動腕221a、222a(駆動部)の基部21側から先端側に向かって加工量を変化させる。これにより、面2211、2212、2221、2222のX軸方向における幅を基部21側から先端側に向かって変化させることができる。
特に、加工工程(ステップS10)において、駆動腕221a、222a(駆動部)の基部21側から先端側に向かって加工量を漸減させる。これにより、図21に示すような面2211、2221を形成することができる。例えば、図21に示すような面2211、2221は、[3]工程および[5]工程において、集束イオンビームLLの照射時間や出力強度を調整することにより形成できる。
このようにX軸方向における幅を変化させることで、振動漏れ量の粗調整や微調整を容易に行うことができる。そのため、迅速に加工を行うことができるとともに、振動漏れをより効果的に低減することができる。特に、基部21側の幅を先端側の幅よりも大きくすることで、粗調整を迅速に行い、かつ、微調整をより高精度に行うことができる。
なお、図21では、面2211、2221の幅は、基部21から先端側に向かって連続的に変化していたが、不連続に変化していてもよい。また、面2211、2221の幅は、基部21から先端側に向かって増加していてもよい。
<第4変形例>
図22は、駆動腕の第4変形例を示す断面図である。
図22に示す駆動腕221A、222Aは、断面視で、4つの角部が加工されている。具体的には、駆動腕221Aは、面2211、2212に加え、駆動腕221Aの上面と+X軸側側面とを繋ぐ面2218と、駆動腕221Aの下面と−X軸側側面とを繋ぐ面2219と、を有する。同様に、駆動腕222Aは、面2221、2222に加え、駆動腕222Aの上面と+X軸側側面とを繋ぐ面2228と、駆動腕222Aの下面と−X軸側側面とを繋ぐ面2229と、を有する。なお、図示では、面2218、2219、2228、2229は、平坦であるが、例えば、外側に突出する凸面であったり、凹面であってもよい。
このような面2218、2219、2228、2229を有することで、振動漏れをさらに効果的に低減することができる。例えば、面2211、2212、2221、2222を形成する際に加工量が過剰となり、再び振動漏れの増大が生じた場合、面2218、2219、2228、2229を形成することで、その増大した振動漏れを低減して、振動漏れをゼロ付近に再調整することができる。
なお、面2218、2219、2228、2229の傾斜角度は、面2211、2212、2221、2222の角度θと同じであってもよいし、異なっていてもよい。
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。
図23は、第2実施形態に係る角速度センサーが備える振動体を示す平面図である。
本実施形態は、振動素子の構成が異なる以外は、上述した実施形態と同様である。なお、以下の説明では、第2実施形態に関し、上述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。
図23に示す振動素子6が有する振動体60(振動片)は、Zカット水晶板をフォトリソグラフィー技法およびエッチング技法(特に、ウエットエッチング技法)を用いてパターニングして形成されている。この振動体60は、基部61と、基部61から延出する1対の振動腕621、622と、を有している。
基部61は、振動腕621、622が延出している第1基部611と、第1基部611に対して振動腕621、622とは反対側に設けられた第2基部613と、第1基部611と第2基部613とを連結する連結部612と、を含んでいる。連結部612は、第1基部611と第2基部613との間に位置していて、第1基部611および第2基部613よりも幅(X軸方向の長さ)が小さい。これにより、基部61のY軸方向に沿った長さを小さくしつつ、振動漏れを小さくすることができる。
振動腕621、622は、X軸方向に並び、かつ、互いに平行となるように、それぞれ、第1基部611から−Y軸方向に延出している。なお、振動腕621、622は、それぞれ、「駆動腕」および「検出腕」として機能する。
また、振動腕621は、上面に対して傾斜し、上面側に位置する面6211(傾斜面)を有し、振動腕622は、上面に対して傾斜し、上面側に位置する面6221(傾斜面)を有している。なお、図示はしないが、振動腕621、622は、それぞれ、その下面に対して傾斜し、下面側に位置する傾斜面を有している。これら傾斜面(面6211、6221を含む)は、FIB加工が施されることで形成されている。
なお、振動腕621、622には、それぞれ、その上面および下面に開放してY軸方向に延在している1対の有底の溝が形成されていてもよい。また、図示では、振動腕621、622の先端部の幅(X軸方向での長さ)が基端部よりも広くなっているが、これに限定されない。
また、振動素子6は、図示はしないが、振動腕621、622の表面に設けられた駆動用電極および検出用電極を有する。
以上説明したような第2実施形態によっても、前述した実施形態と同様の効果が得られる。
<第3実施形態>
次に、第3実施形態について説明する。
図24は、第3実施形態に係る角速度センサーが備える振動体を示す平面図である。
本実施形態は、振動素子の構成が異なる以外は、上述した実施形態と同様である。なお、以下の説明では、第3実施形態に関し、上述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。
図24に示す振動素子5が有する振動体50(振動片)は、Zカット水晶板をフォトリソグラフィー技法およびエッチング技法(特に、ウエットエッチング技法)を用いてパターニングして形成されている。図24に示すように、このような振動体50は、基部51と、基部51から−Y軸方向に延びている3本の振動腕52、53、54と、を有している。
基部51は、振動腕52、53、54が延出している第1基部511と、第1基部511に対して振動腕52、53、54とは反対側に設けられた第2基部513と、第1基部511と第2基部513とを連結する連結部512と、を含んでいる。
振動腕52、53、54は、X軸方向に並び、かつ、互いに平行となるように、それぞれ、第1基部511から−Y軸方向に延出している。なお、振動腕52、53、54は、それぞれ、「駆動腕」および「検出腕」として機能する。
また、振動腕52は、上面に対して傾斜し、上面側に位置する面5211(傾斜面)を有し、振動腕53は、上面に対して傾斜し、上面側に位置する面5311(傾斜面)を有し、振動腕54は、上面に対して傾斜し、上面側に位置する面5411(傾斜面)を有している。なお、図示はしないが、振動腕52、53、54は、それぞれ、その下面に対して傾斜し、下面側に位置する傾斜面を有している。これら傾斜面(面5211、5311、5411を含む)は、FIB加工が施されることで形成されている。
なお、振動腕52、53、54には、それぞれ、その上面および下面に開放してY軸方向に延在している1対の有底の溝が形成されていてもよい。また、振動腕52、53、54の先端部の幅(X軸方向での長さ)が基端部よりも広くなっていてもよい。
また、振動素子5は、図示はしないが、振動腕52、53、54の表面に設けられた駆動用電極および検出用電極を有する。
以上説明したような第3実施形態によっても、前述した実施形態と同様の効果が得られる。
<第4実施形態>
次に、第4実施形態について説明する。
図25は、第4実施形態に係る角速度センサーが備える振動素子を示す平面図である。
本実施形態は、振動素子の構成が異なる以外は、上述した実施形態と同様である。なお、以下の説明では、第4実施形態に関し、上述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。
図25に示す振動素子4は、Z軸まわりの角速度を検出するための角速度センサー素子である。このような振動素子4は、図25に示すように、構造体41を有している。このような振動素子4は、例えば、リン、ボロン等の不純物がドープされたシリコン基板から形成されている。
構造体41は、2つの振動体41’、41”と、複数の駆動用固定電極47と、複数の検出用固定電極48とを有しており、振動体41’、41”は、X軸方向に沿って互いに連結されている。また、振動体41’、41”は、それぞれの境界線B(Y軸方向に沿った直線)に対して対称に設けられている。以下、振動体41’、41”の構成について具体的に説明するが、振動体41’、41”の構成は、互いに同じであるため、以下では、振動体41’の構成について代表して説明し、振動体41”の構成の説明については、その説明を省略する。
振動体41’は、図25に示すように、固定部424(基部)と、駆動体42(駆動部)と、検出部43と、を有している。
駆動体42は、駆動用支持部421と、駆動用バネ部422と、駆動用可動電極423と、を有している。このように、駆動体42には、駆動用可動電極423(駆動用電極)が形成されている。駆動用支持部421は、枠状をなし、駆動用バネ部422を介して、固定部424に連結(接続)されている。したがって、駆動体42は、固定部424に対して接続されている(から延出している)。駆動用バネ部422は、X軸方向に弾性変形可能に構成され、これにより、駆動用支持部421が固定部424に対してX軸方向に変位可能(振動可能)となる。また、駆動用可動電極423(駆動用電極)は、駆動用支持部421に接続されて駆動用支持部421の外側に位置している。そして、駆動用可動電極423を介して対向するように、駆動用固定電極47が位置している。そのため、駆動用固定電極47および駆動用可動電極423間に電圧を印加すると、駆動用固定電極47と駆動用可動電極423との間に静電力が発生し、この静電力によって、駆動用バネ部422を弾性変形させつつ駆動用支持部421をX軸方向に沿って振動させることができる。
検出部43は、駆動用支持部421の内側に配置され、検出用支持部431と、検出用バネ部432と、検出用可動電極433と、を有している。このように、検出部43には、検出用可動電極433(検出用電極)が形成されている。検出用支持部431は、枠状をなし、検出用バネ部432を介して、駆動用支持部421に連結(接続)されている。したがって、検出部43は、固定部424に対して駆動体42の一部を介して間接的に接続されている(固定部424から延出している)。検出用バネ部432は、Y軸方向に弾性変形可能に構成され、これにより、検出用支持部431が駆動用支持部421に対してY軸方向に変位可能となる。また、検出用可動電極433は、検出用支持部431の内側でX軸方向に延びて設けられており、その両端部が検出用支持部431に接続されている。そして、検出用可動電極433(検出用電極)を介して対向するように、検出用固定電極48が位置している。そのため、検出用バネ部432を弾性変形させつつ検出用支持部431がY軸方向に振動すると、検出用固定電極48および検出用可動電極433間のギャップが変化し、この変化に伴って検出用固定電極48および検出用可動電極433間の静電容量が変化する。
このような振動素子4では、駆動用バネ部422の少なくとも一部に駆動振動の方向に交差した面4221(傾斜面)が形成されている。この面4221は、FIB加工が施されることで形成されている。
以上、振動素子4の構成について説明した。このような構成の振動素子4は、次のようにしてZ軸まわりの角速度を検出することができる。まず、前述したように、駆動用固定電極47および駆動用可動電極423の間に電圧を印加して、駆動用支持部421をX軸方向に沿って振動させる。この際、振動体41’、41”の駆動用支持部421同士を互いに逆位相(X軸逆相モード)で振動させる。このように、振動体41’、41”の駆動用支持部421を振動させている状態で振動素子4にZ軸回りの角速度が加わると、コリオリの力が働き、振動体41’、41”の検出用支持部431が駆動用支持部421に対してY軸方向に変位する。なお、この際、振動体41’、41”の検出用支持部431同士は、互いに逆位相(Y軸逆相モード)で変位する。このように、検出用支持部431が駆動用支持部421に対してY軸方向に変位することで、検出用可動電極433と検出用固定電極48との間のギャップが変化し、このギャップ変化に応じて、検出用可動電極433と検出用固定電極48との間の静電容量が変化する。そのため、振動素子4は、検出用可動電極433および検出用固定電極48の間に電圧を印加して、これらの間の静電容量の変化量を検出し、この静電容量の変化量に基づいて、Z軸回りの角速度を求めることができる。
以上説明したような第4実施形態によっても、前述した実施形態と同様の効果が得られる。
<第5実施形態>
次に、第5実施形態について説明する。
図26は、第5実施形態に係る角速度センサーを示す斜視図である。
本実施形態は、振動素子の構成が異なる以外は、上述した実施形態と同様である。なお、以下の説明では、第5実施形態に関し、上述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。
図26に示す角速度センサー70は、X軸、Y軸およびZ軸のそれぞれの軸まわりの角速度ωx、ωy、ωzを検出可能なジャイロセンサーである。この角速度センサー70は、X軸周りの角速度ωxを検出する振動素子7Xと、Y軸周りの角速度ωyを検出する振動素子7Yと、Z軸周りの角速度ωzを検出する振動素子7Zと、ICチップ90と、パッケージ8と、を有している。
〈ICチップ〉
ICチップ90は、複数の端子91を有しており、各端子91が導電性ワイヤー101によってベース81の底面に形成された各接続端子841と電気的に接続されている。このICチップ90は、振動素子7X、7Y、7Z(センサー素子)を駆動振動させるための駆動回路と、角速度が加わったときに振動素子7X、7Y、7Zに生じる検出振動を検出する検出回路と、を有する。
〈振動素子〉
振動素子7X、7Y、7Zは、ICチップ90上に応力緩和層95上に導電性接着剤等を介して固定されている。なお、応力緩和層95は、ベース81およびICチップ90の変形等による応力が振動素子7X、7Y、7Zに対して伝達することを緩和する機能を有する。
振動素子7X、7Yは、それぞれ、例えば、いわゆる面内検出型の角速度検出素子であり、第1実施形態における振動素子1と同様の構成である。また、これら振動素子7X、7Yは、互いに同様の構成であるが、X軸およびY軸のそれぞれの軸まわりの角速度を検出するように互いに配置が異なっている。一方、振動素子7Zは、いわゆる面外検出型の角速度検出素子である。振動素子7Zは、例えば、水晶等の圧電基板をエッチングにより所定形状に加工して得られる素子片上に、Cr(クロム)、Ni(ニッケル)、Au(金)等で構成された電極を適宜形成して構成されている。
また、図示では、平面視で、振動素子7X、7Yが有する駆動腕221、222がICチップ90と重なり、検出腕231、232がICチップ90からはみ出しているが、検出腕231、232がICチップ90と重なり、駆動腕221、222がICチップ90からはみ出していてもよい。この場合、振動素子7X、7Yを実装した後に[2]〜[5]工程を行っても、集束イオンビームが振動素子7X、7Y以外(例えばICチップ90)に誤って照射されることを低減でき、ICチップ90がダメージを受けることがない。
なお、振動素子7X、7Y、7Zの構成は、図示のものに限定されない。また振動素子7X、7Y、7Zのうちの1つまたは2つを省略してもよい。
以上説明したような第5実施形態によっても、前述した実施形態と同様の効果が得られる。そのため、X軸、Y軸およびZ軸のそれぞれの軸まわりの角速度ωx、ωy、ωzを検出可能な高精度な角速度センサー70を実現できる。
以上、本発明の角速度センサーの製造方法を添付図面を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。また、各実施形態を適宜組み合わせてもよい。
本実施形態では、振動素子が有する振動体の構成材料としては、水晶のような圧電体材料に限定されず、非圧電体材料を用いてもよい。この非圧電体材料としては、例えば、シリコン、石英等が挙げられる。