JP2018162429A - ポリオレフィン系樹脂組成物、その製造方法、成形体 - Google Patents

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雅之 冨田
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裕子 泉
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Abstract

【課題】成形性に優れると共にポリオレフィンの機械的物性を改良することができるポリオレフィン系樹脂組成物、その製造方法、ポリオレフィン系樹脂組成物の成形体を提供する。【解決手段】ポリロタキサン由来の成分(A)と、官能基を有する官能基含有ポリオレフィン由来の成分(B)と、ポリオレフィン(C)と、を含有するポリオレフィン系樹脂組成物、その製造方法、ポリオレフィン系樹脂組成物からなる成形体である。成分(A)におけるシクロデキストリン(a1)のポリカプロラクトン基の末端水酸基と、成分(B)における官能基とが結合した連結部を有する。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリロタキサン由来の成分と官能基含有ポリオレフィン由来の成分とポリオレフィンとを含有するポリオレフィン系樹脂組成物、その製造方法、及びポリオレフィン系樹脂組成物の成形体に関する。
ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンは、引張強さ、衝撃強さ等の機械的特性に優れ、防水性、防湿性、耐薬品性等にも優れる。さらに、ポリオレフィンは、成形性に優れ、低コストで製造が可能である。そのため、各種包装用品、電気製品、車両用部品等に幅広く利用されている。
このようなポリオレフィンの物性をさらに高める技術が提案されている。例えば特許文献1には、不飽和カルボン酸無水物により変性されたポリオレフィンと、ポリロタキサンとを反応して得られる樹脂反応生成物が開示されている。そして、このような樹脂反応生成物よりなる成形体は、衝撃強度と靭性に優れることが示されている。
特開2013−209460号公報
しかしながら、不飽和カルボン酸無水物によって変性されたポリオレフィンと、ポリロタキサンとを反応して得られる従来の樹脂反応生成物においては、変性ポリオレフィンの材料設計の自由度が低い点と、未反応の不飽和カルボン酸が残っているために継時的な反応に伴う樹脂特性の変化が問題となる。そこで、材料設計の自由度が高く、成形性、機械物性にも優れた樹脂組成物の開発が望まれている。
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、材料設計の自由度が高く、成形性に優れると共にポリオレフィンの機械的物性を改良することができるポリオレフィン系樹脂組成物、その製造方法、及びポリオレフィン系樹脂組成物の成形体を提供しようとするものである。
本発明の一態様は、水酸基の少なくとも一部が2−ヒドロキシプロピル基によって修飾され、該2−ヒドキシプロピル基の水酸基が末端水酸基を有するポリカプロラクトン基によって修飾されたシクロデキストリン(a1)、該シクロデキストリンの開口部に串刺し状に包接されたポリエチレングリコール(a2)、及び該ポリエチレングリコールの両端に結合したアダマンタン基類(a3)からなるポリロタキサン由来の成分(A)と、
官能基を有するポリオレフィンからなる官能基含有ポリオレフィン由来の成分(B)と、
ポリオレフィン(C)と、を含有し、
上記成分(A)における上記ポリカプロラクトン基の上記末端水酸基と、上記成分(B)における上記官能基とが結合した連結部を有する、ポリオレフィン系樹脂組成物にある。
本発明の他の態様は、上記ポリオレフィン系樹脂組成物を成形してなる、成形体にある。
本発明のさらに他の態様は、水酸基の少なくとも一部が2−ヒドロキシプロピル基によって修飾され、該2−ヒドロキシプロピル基の水酸基が末端水酸基を有するポリカプロラクトン基によって修飾されたシクロデキストリンと、該シクロデキストリンの開口部に串刺し状に包接されたポリエチレングリコールと、上該ポリエチレングリコールの両端に結合したアダマンタン基類とからなるポリロタキサン、上記ポリカプロラクトン基の末端水酸基と反応して共有結合を形成することが可能な官能基を有する官能基含有ポリオレフィン、及びポリオレフィンを溶融混練する、ポリオレフィン系樹脂組成物の製造方法にある。
上記ポリオレフィン系樹脂組成物は、上述のように、ポリロタキサン由来の成分(A)と官能基含有ポリオレフィン由来の成分(B)とポリオレフィン(C)とを含有し、成分(A)における環状分子のポリカプロラクトン基の末端水酸基と成分(B)における官能基とが結合した連結部を有する。そのため、ポリロタキサンとポリオレフィンとは本来相溶性が良くないにもかわらず、官能基含有ポリオレフィンとポリオレフィンとが良好な相溶性を示すため、ポリロタキサン由来の成分と結合した官能基含有ポリオレフィン由来の成分(B)と、ポリオレフィン(C)とが良好に相溶する。結果として、ポリロタキサン由来の成分(A)とポリオレフィン(C)も良好に相溶することとなる。その結果、ポリオレフィン(C)の改質が可能になり、成形体の引張物性、曲げ物性、弾性などの機械的物性の向上が可能になる。曲げ物性、弾性などが向上する理由は次のように考えられる。
ポリロタキサンは、環状分子構造のシクロデキストリンと直鎖状分子構造のポリエチレングリコールと封鎖基の機能を果たすアダマンタン基類とを有するため、ポリエチレングリコールの両末端から脱落することなく、シクロデキストリンがポリエチレングリコールに沿ってスライドすることができる。なお、以下、「シクロデキストリン」のことを適宜「環状分子」といい、「ポリエチレングリコール」のことを適宜「直鎖状分子」といい、「アダマンタン基類」のことを適宜「封鎖基」という。環状分子には、官能基含有ポリオレフィン由来の成分(B)が連結しており、この官能基含有ポリオレフィン由来の成分(B)にポリオレフィン(C)が相溶している。したがって、ポリオレフィン(C)の用途に適した機械的物性の改質が可能になり、例えば樹脂組成物の成形体において、ポリオレフィンの相に荷重が加わった場合に、荷重は環状分子のスライドなどによって緩和されると考えられる。その結果、上述のように引張物性、曲げ物性、弾性などの機械的物性の向上が可能になると考えられる。
また、溶融状態におけるポリオレフィン系樹脂組成物のメルトフローレイト(つまり、MFR)をコントロールすることができる。ポリオレフィン系樹脂組成物は、相互に連結するポリロタキサン由来の成分(A)由来の成分及び官能基含有ポリオレフィン由来の成分(B)と共に、ポリオレフィン(C)を含有しているからである。例えば、これらの含有量を調整することにより、MFRを所望の値にコントロールできる。その結果、ポリオレフィン系樹脂組成物が本来保有する優れた成形性、成形プロセスの安定性を発揮できると共に、その成形体は優れた機械的物性を発揮できる。したがって、例えば射出成形やブロー成形により生産性よく成形体を製造することができる。さらに、MFRが高い場合には、溶融状態のポリオレフィン系樹脂組成物が例えば金型内の小さな隙間にも入り込みやすくなるため、複雑形状の成形体の製造も可能になる。
また、ポリオレフィン樹脂組成物における成分(A)、成分(B)、及びポリオレフィン(C)の含有量、ポリオレフィン(C)の種類を適宜調整することにより、所望の用途に適した樹脂組成物を実現できる。したがって、ポリオレフィン系樹脂組成物は、材料設計の自由度が高いのものとなる。
ポリオレフィン系樹脂組成物の製造方法においては、上述のように、ポリロタキサンと官能基含有ポリオレフィンとポリオレフィンとを溶融混練する。この溶融混練により、ポリロタキサンにおける環状分子が有するポリカプロラクトン基の末端の水酸基と、官能基含有ポリオレフィンが有する官能基とを反応させて共有結合を形成させることができる。その結果、ポリロタキサンと官能基含有ポリオレフィンとが連結する。そして、溶融混練により、ポリロタキサン由来の成分と官能基含有ポリオレフィン由来の成分とポリオレフィンとが十分に相溶し、成形性に優れ、機械的物性の改良が可能なポリオレフィン系樹脂組成物を得ることができる。
以上のように、上記態様によれば、材料設計の自由度が高く、成形性に優れると共にポリオレフィンの機械的物性を改良することができるポリオレフィン系樹脂組成物、その製造方法、ポリオレフィン系樹脂組成物の成形体を提供することができる。
実施例1における、精製前のポリオレフィン系樹脂組成物の全反射吸収の赤外吸収スペクトルの分析結果を示す図。 図1における波数1730cm-1付近の拡大図。 実施例1における、精製後のポリオレフィン系樹脂組成物の全反射吸収の赤外吸収スペクトルの分析結果を示す図。 図3における波数1730cm-1付近の拡大図。 実施例2における、各試料のMFRを示す説明図。
次に、ポリオレフィン系樹脂組成物、その製造方法、成形体の実施形態について説明する。ポリオレフィン系樹脂組成物は、上述のようにポリロタキサン由来の成分(A)と官能基含有ポリオレフィン由来の成分(B)とポリオレフィン(C)とを含有する。
ポリオレフィン系樹脂組成物は、ポリロタキサンと官能基含有ポリオレフィンとが結合した連結部を有する。つまり、ポリオレフィン系樹脂組成物は、ポリロタキサンと官能基含有ポリオレフィンとが結合した構造の高分子を有している。ポリロタキサン由来の成分(A)とは、官能基含有ポリオレフィンに結合したポリロタキサンを意味し、官能基含有ポリオレフィン由来の成分(B)とは、ポリロタキサンに結合した官能基含有ポリオレフィンを意味する。また、ポリオレフィン系樹脂組成物は、相互に結合していないポリロタキサン、官能基含有ポリオレフィンを含んでいてもよい。
[ポリロタキサン]
ポリロタキサンは、環状分子(a1)と直鎖状分子(a2)と封鎖基(a3)とを有する。環状分子(a1)は、環状であり、開口部を有する。環状分子は、直鎖状分子を串刺し状に包接する。
ポリオレフィン系樹脂組成物は、ポリロタキサンと官能基含有ポリオレフィンとポリオレフィンとの合計100質量部に対するポリロタキサンの含有量が0.1〜49.9質量部であることが好ましい。この場合には、上述の成形性、機械的物性の向上効果が十分に得られる。ここでいうポリロタキサンの量は、官能基含有ポリオレフィンに結合したポリロタキサンの量、結合していないポリロタキサンの量の合計である。
ポリロタキサンの添加効果をより十分に高めるという観点から、上記合計量100質量部に対するポリロタキサンの含有量は、0.5質量部以上であることがより好ましい。また、ポリオレフィン本来の優れた物性の一部が損なわれることより十分に回避するという観点から、上記合計量100質量部に対するポリロタキサンの含有量は40質量部以下であることがより好ましく、30質量部以下であることがより好ましく、20質量部以下であることがさらにより好ましい。
<環状分子(a1)>
環状分子(a1)は、シクロデキストリンからなり、その水酸基の少なくとも一部が2−ヒドロキシプロピル基によって修飾され、該2−ヒドロキシプロピル基の水酸基が末端水酸基を有するポリカプロラクトン基によって修飾されている。つまり、シクロデキストリンにおける一部の水酸基が2−ヒドロキシプロピルによって置換され、該2−ヒドロキシプロピル基の水酸基が末端水酸基を有するポリカプロラクトン基によって置換されている。シクロデキストリンとしては、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリンのいずれであってもよいが、ポリロタキサンの生産性という観点から、α−シクロデキストリンが好ましい。
<直鎖状分子(a2)>
直鎖状分子(a2)の形状は、環状分子(a1)の開口部に串刺し状に包接され得るものであれば特に限定されない。直鎖状分子(a2)はポリエチレングリコールからなる。
直鎖状分子(a2)の重量平均分子量は6000〜100000であることが好ましい。この場合には、環状分子が直鎖状分子に沿ってスライドできるという効果が得られる。この効果をより高めるという観点から、直鎖状分子(a2)の重量平均分子量は10000〜50000であることがより好ましい。
<封鎖基(a3)>
封鎖基(a3)は、環状分子(a1)が脱離しないように直鎖状分子(a2)の両端に結合している。封鎖基(a3)の形状は、例えば嵩高い形状であり、直鎖状分子(a2)の両端に配置され、環状分子(a1)を脱離させなければ特に限定されない。封鎖基(a3)は、アダマンタン基類からなる。アダマンタン基類としては、例えばアダマンチル基、その誘導体等がある。
[官能基含有ポリオレフィン]
官能基含有ポリオレフィンとしては、例えば変性された各種ポリオレフィン(つまり変性ポリオレフィン)を用いることができる。また、官能基含有ポリオレフィンとしては、官能基を有するオレフィンの重合体、官能基を有するオレフィンと官能基を有さないオレフィンとの共重合体等を用いることもできる。つまり、官能基含有ポリオレフィンは、構造中に官能基を有するポリオレフィンである。
官能基含有ポリオレフィンの官能基は、ポリロタキサンにおけるポリカプロラクトンの末端水酸基と結合可能な官能基である。ポリオレフィンは、オレフィンの重合体である。ポリオレフィンは、例えばエチレン単独重合体(つまり、ポリエチレン)、プロピレン単独重合体(つまり、ポリプロピレン)、エチレン及びエチレンと共重合可能な他の単量体との共重合体、プロピレン及びプロピレンと共重合可能な他の単量体との共重合体等が挙げられる。これらは、単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。
エチレン重合体としては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等が挙げられる。プロピレン重合体としては、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレン等が挙げられる。
エチレンと共重合可能な他の単量体としては、例えばプロピレン、1−ブテン、イソブチレン、1−ペンテン、3−メチル1−ブテン、1−ヘキセン、3,4−ジメチル−1−ブテン及び3−メチル−1−ヘキセン等が挙げられる。プロピレンと共重合可能な他の単量体としては、エチレン、1−ブテン、イソブチレン、1−ペンテン、3−メチル1−ブテン、1−ヘキセン、3,4−ジメチル−1−ブテン及び3−メチル−1−ヘキセン等が挙げられる。これらの単量体は、1種であっても2種以上であってもよい。共重合体は、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよい。
官能基含有ポリオレフィンは、アルコキシシリル基、ヒドロキシシリル基、エポキシ基、カーボネート基、アミノ基、カルボキシ基、水素化ホウ素基、オキサゾリン基、環状ラクトン基等の官能基を含有することができる。官能基は極性基であることが好ましい。官能基含有ポリオレフィンは、これらの官能基のうちの1種又は2種以上を含有することができる。
官能基含有ポリオレフィンは、官能基としてアルコキシシリル基を有することがより好ましい。つまり、官能基含有ポリオレフィンとして、アルコキシシラン変性ポリオレフィンを用いることがより好ましい。アルコキシシラン変性ポリオレフィンは、水酸基との反応性が特に高く、組成物中の含有割合が低くてもポリロタキサンの末端水酸基との結合反応を起こすことができる。したがって、ポリオレフィン系樹脂組成物の成形性の向上効果、成形体の機械的物性の向上効果をより高めることができる。例えば不飽和カルボン酸無水物によって変性されたポリオレフィンは、アルコキシシラン変性ポリオレフィンに比べてポリロタキサンとの反応性が低い。不飽和カルボン酸無水物によって変性されたポリオレフィンよりもポリロタキサンとの反応性が高い官能基含有ポリオレフィンとしては、官能基として、アルコキシシリル基、ヒドロキシシリル基、エポキシ基、水素化ホウ素基有するもの等が挙げられ、これらの官能基を有するものが好ましい。ポリロタキサンとの反応性、官能基含有ポリオレフィンの安定性の観点から、特に好ましい官能基は上述の通りアルコキシシリル基である。
ポリロタキサンと官能基含有ポリオレフィンとの結合反応が促進され、ポリオレフィン系樹脂組成物からなる成形体の機械的物性をより向上できるという観点から、アルコキシシリル基のSiに結合するアルコキシ基として、低級アルコキシ基を有することが好ましい。本明細書において、「低級」は炭素数が5以下であること意味する。
また、組成物中のアルコキシシリル基におけるアルコキシ基の少なくとも一部は、高級アルコキシ基からなることが好ましい。この場合には、官能基含有ポリオレフィン同士のシランカップリングが抑制される。つまり、経時的な反応を抑制することができる。その結果、ポリオレフィン系樹脂組成物のMFRの低下が抑制され、ポリオレフィン系樹脂組成物の成形性を向上させることができる。本明細書において、「高級」は炭素数が6以上であることを意味する。
ポリロタキサンと官能基含有ポリオレフィンとポリオレフィンとの合計100質量部に対する官能基含有ポリオレフィンの含有量は0.1〜49.9質量部であることが好ましい。この場合には、上述の成形性、機械的物性の向上効果が十分に得られる。ここでいう官能基含有ポリオレフィンの量は、ポリロタキサンに結合した官能基含有ポリオレフィンの量、結合していない官能基含有ポリオレフィンの量の合計である。
官能基含有ポリオレフィンの添加効果を高めるという観点から、上記合計量100質量部に対する官能基含有ポリオレフィンの含有量は、0.1質量部以上であることがより好ましく、1質量部以上であることがさらに好ましく、2質量部以上であることがさらにより好ましい。また、ポリオレフィン本来の優れた物性の一部が損なわれることより十分に回避するという観点から、上記合計量100質量部に対する官能基含有ポリオレフィンの含有量は40質量部以下であることがより好ましく、30質量部以下であることがより好ましく、20質量部以下であることがさらにより好ましい。
さらにポリオレフィン本来の優れた機械的物性の一部を損ねることをより一層防止するという観点から、ポリロタキサンと官能基含有ポリオレフィンとポリオレフィンとの合計100質量部に対するポリロタキサンと官能基含有ポリオレフィンとの合計量は40質量部以下であることが好ましく、30質量部以下であることがより好ましく、20質量部以下であることがさらに好ましい。
[ポリオレフィン]
ポリレフィンとしては、官能基を有していない点を除き、上述の官能基含有ポリオレフィンにおいて例示したポリオレフィンを用いることができる。ポリオレフィンと官能基含有ポリオレフィンとの組合せは特に限定されるわけではないが、相溶性を高めるという観点から、ポリオレフィンと官能基含有ポリオレフィンとしては、同種のポリオレフィンを用いることが好ましい。例えば、ポリプロピレンと例えば変性ポリプロピレンのような官能基含有ポリプロピレン、ポリエチレンと例えば変性ポリエチレンのような官能基含有ポリエチレン等の組合せを用いることができる。
ポリロタキサンと官能基含有ポリオレフィンとポリオレフィンとの合計100質量部に対するポリオレフィンの含有量が50〜99質量部であることが好ましい。この場合には、ポリオレフィン本来の物性を大きく損なうことなく、機械物性を改良することができる。また、一般に、ポリオレフィンは自動車部品や生活用品などの多くの分野で用途に適した材料設計がなされており、ポリオレフィンをマトリックスとして用いた材料設計がなされる場合が多い。上記のようにポリオレフィンの含有量が50〜99質量部の場合には、このような幅広い用途に対応することが可能になる。
ポリオレフィン本来の物性の低下をより十分に抑制するという観点から、上記合計量100質量部に対するポリオレフィンの含有量は、60質量部以上であることがより好ましく、70質量部以上であることがさらに好ましく、80質量部以上であることがさらにより好ましい。また、成形性、機械的物性の向上効果をより十分に得るという観点から、上記合計量100質量部に対するポリオレフィンの含有量は95質量部以下であることがより好ましい。
[ポリオレフィン系樹脂組成物]
温度190℃、荷重2.16kgfでの上記ポリオレフィン系樹脂組成物のMFRは、例えば射出成型用途では、4g/10分以上であることが好ましい。この場合には、ポリオレフィン系樹脂組成物の成形性をより向上させることができる。射出成型用途におけるポリオレフィン系樹脂のMFRは4.5g/10分以上であることがより好ましい。また、フィルム用途ではポリオレフィン系樹脂のMFRは0.05g/10分以上、10g/10分以下であることがより好ましい。
また、ブロー成形用途では、ポリオレフィン系樹脂組成物のMFRは、0.01g/10分以上、4g/10分以下が好ましく、より好ましくは0.02g/10分以上、3.5g/10分以下である。
<その他の添加剤等>
ポリオレフィン系樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、その他の添加剤や樹脂を含有することができる。添加剤としては、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、無機充填剤、帯電防止剤、滑剤等が挙げられる。樹脂としては、ナイロン、ポリフェニレンエーテルなどのエンジニアプラスチックスや、ゴム等が挙げられる。
[ポリオレフィン系樹脂組成物の製造方法]
ポリオレフィン系樹脂組成物は、例えばポリロタキサンと官能基含有ポリオレフィンとポリオレフィンとを溶融混練することにより製造することができる。ポリロタキサンの分解を抑制するという観点から、混練温度は280℃以下であることが好ましく、250℃以下であることがより好ましく、230℃未満であることがさらに好ましい。230℃未満にすることにより、ポリロタキサンの熱分解をより確実に抑制することができる。
混練の順番は特に限定されるものではないが、相溶性をより向上させるという観点からは、ポリオレフィンと官能基含有ポリオレフィンとの混練途中にポリロタキサンを加えることが好ましい。
官能基含有ポリオレフィンとしては、混練時に、ポリロタキサンのポリカプロラクトン基の末端の水酸基と反応して共有結合を形成することが可能な官能基を有するものを用いる。このような官能基は上述の通りであるが、官能基含有ポリオレフィンは、官能基としてアルコキシシリル基を含有するアルコキシシラン変性ポリオレフィンを含有することが好ましい。
アルコキシシラン変性ポリオレフィンは低級アルコキシ基を有することが好ましい。この場合には、混練時にアルコキシシラン変性ポリオレフィンとポリロタキサンとの反応性が高まり、両者の間の連結部が形成されやすくなる。そのため、ポリオレフィン系樹脂組成物の成形性をより向上させたり、ポリオレフィン系樹脂組成物からなる成形体の引張強度等の機械的物性をより向上させたりすることができる。
低級アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などの炭素数5以下のアルコキシ基を用いることができるが、メトキシ基及びエトキシ基の少なくとも一方が好ましく、メトキシ基がより好ましい。異なる種類のアルコキシシリル基が混在していてもよい。
また、ポリロタキサンと官能基含有ポリオレフィンとの混練途中、或いはポリロタキサンと官能基含有ポリオレフィンとポリオレフィンとの混練途中には、官能基含有ポリオレフィンの未反応の官能基と反応して共有結合を形成することが可能な化合物を添加して混練を行うことが好ましい。この場合には、経時的な架橋反応の進行を抑制することができ、MFRの低下を抑制できる。このような化合物のことを本明細書ではクエンチャーという。混練途中でのクエンチャーの添加により、例えば官能基含有ポリオレフィンとポリロタキサンとの連結部の形成反応に使用されなかった未反応の官能基等をクエンチャーにより修飾できる。これにより、例えば官能基含有ポリオレフィン同士の架橋が過度に進行することを抑制し、MFRの経時的な低下を抑制することができる。さらに、硬化させ再溶融させたときのMFRの変化を抑制し、初期のMFRを維持し易くなる。これは、上述の連結部を有するポリオレフィン系樹脂組成物は、ポリロタキサン由来の成分がポリオレフィン内に均一に分散し、シクロデキストリン上の連結部が移動できること、及び、官能基含有ポリオレフィンの官能基がクエンチャーにより修飾され、混練終了後のさらなる反応が抑制されていることが原因と考えられる。これにより、成形の自由度の高い樹脂組成物の実現が可能になる。また、繰り返し成形を可能にし、リサイクル性の高い成形体の製造が可能になる。クエンチャーは、ポリロタキサンと変性ポリオレフィンとポリオレフィンとの混練終了後に、添加することも可能である。この場合には、ポリロタキサンと変性ポリオレフィンとポリオレフィンとの混練終了後にクエンチャーを加えて再度溶融混練を行えばよい。
クエンチャーの種類は、官能基含有ポリオレフィンの官能基に応じて決定できる。官能基含有ポリオレフィンの官能基がポリカプロラクトンの末端水酸基と結合可能な官能基であるという観点から、クエンチャーとしては、高級アルコール、トリエタノールアミン等を用いることができる。
官能基含有ポリオレフィンがアルコキシシリル基を有する場合には、クエンチャーとしては高級アルコールを用いることが好ましい。そして、ポリロタキサンとアルコキシシラン変性ポリオレフィンとポリオレフィンとの混練途中に、高級アルコールを添加して混練を行うことが好ましい。この場合には、高級アルコールが上述のクエンチャーの役割を果たし、混練中にアルコキシシラン変性ポリオレフィンのアルコキシシリル基における例えば低級アルコキシ基を高級アルコキシ基に置換することができる。その結果、立体障害によりアルコキシシラン変性ポリオレフィンのシランカップリング反応が抑制され、変性ポリオレフィン同士の架橋の進行を抑制することができる。その結果、ポリオレフィン系樹脂組成物のMFRの低下をより抑制することができ、ポリオレフィン系樹脂組成物の成形性をより向上させることができる。特に、Siに低級アルコキシ基が結合したアルコキシシリル基を有する官能基含有ポリオレフィンは、ポリロタキサンに対する反応性だけでなく、官能基含有ポリオレフィン同士間のシランカップリング反応による架橋の反応性も高い傾向がある。したがって、官能基含有ポリオレフィンが反応性の高いアルコキシシリル基を有する場合には、クエンチャーを用い、クエンチャーとして高級アルコールを用いると、上述のMFRの低下抑制効果がより顕著になる。
高級アルコールの炭素数は、6以上であり、シランカップリング反応をより抑制するという観点から、8以上であることが好ましく、9以上であることがより好ましい。アルコキシシリル基におけるアルコキシ基との置換容易性という観点から、高級アルコールの炭素数は、20以下であることが好ましく、15以下であることがより好ましい。高級アルコールは、直鎖状であっても、分岐鎖を有していても、環状鎖を有していてもよいが、直鎖状であることが好ましい。
少なくとも反応のモル当量にして経時的な架橋反応をより確実に抑制するという観点から、高級アルコールの配合量は、官能基含有ポリオレフィンのアルコキシシリル基のモル当量の3倍以上であることが好ましい。具体的には、アルコキシシリル基1モルに対して、高級アルコールは3モル以上であることが好ましく、3.1モル以上であることがより好ましく、3.2モル以上であることがさらに好ましい。高級アルコールの使用量の増大によるコストの増大を防止するという観点からは、アルコキシシリル基1モルに対する高級アルコールの配合量は6モル以下が好ましい。
高級アルコールを添加するタイミングは、例えば全混練時間をTとすると、T/3以降であることが好ましい。この場合には、上述の連結部の十分な形成と、MFRの低下抑制を高いレベルで両立させることができる。高級アルコールを添加するタイミングは、T/2以降であることがより好ましい。
[成形体]
ポリオレフィン系樹脂組成物は、射出成形、ブロー成形、押出成形等の成形方法によって成形される。成形方法は特に限定されるわけではないが、生産性や、ポリオレフィン系樹脂の上述の優れた成形性を生かせるという観点から、射出成形が好ましい。成形体は、例えば各種包装用品、電気製品、車両用部品等に用いることができる。
(実施例1)
次に、ポリオレフィン系樹脂組成物の実施例について説明する。本例のポリオレフィン系樹脂組成物は、ポリプロピレンを主成分とするポリプロピレン系樹脂組成物である。なお、「ポリプロピレン」ことを以下適宜「PP」という。
本例のPP系樹脂組成物は、ポリロタキサン由来の成分と変性PPとPPとを含有する。以下、PP系樹脂組成物の製造方法について説明する。
まず、ポリロタキサンを作製した。ポリロタキサンは既存の方法で作製することができる。具体的には、環状分子としてのα-シクロデキストリン(a1)と、該環状分子の開口部に串刺し状に包接された直鎖状分子としてのポリエチレングリコール(a2)と、上記環状分子が脱離しないように上記直鎖状分子の両端に結合した封鎖基としてのアダマンタン基類(a3)からなるポリロタキサンは、例えば、国際公開第2005/052026号に記載された方法で作製できる。さらに、環状分子であるシクロデキストリン(a1)の水酸基の一部をヒドロキシプロピル基に置換した後、該ヒドロキシプロピル基の水酸基をポリカプロラクトン基に置換したポリロタキサンは、例えば、国際公開2010/024431号に記載された方法で作製することができる。このようなポリロタキサンは、例えば、アドバンスト・ソフトマテリアルズ(株)製のセルムスーパーポリマーSH3400Pとして入手することができる。
次に、変性PPとして、トリメトキシシラン変性PPを準備した。具体的には、三菱化学株式会社製の「リンクロンXPM800HM」を準備した。また、PPとして、三菱化学株式会社製の「MA3」を準備した。
株式会社東洋精機製作所製のラボプラストミルを用いて、温度200℃、回転数70rpmの条件でPP、変性PP、ポリロタキサンを順次加えて溶融混練を行った。混練時間は6分間である。配合割合は、質量比で、ポリロタキサン:変性PP:PP=6:4:90である。このようにして、PP系樹脂組成物を得た。
次に、PP系樹脂組成物の全反射吸収赤外分光分析を行った。分析は、精製前及び精製後の試料について行った。精製は以下のようにして行った。
まず、正確に秤量した0.5gのPP系樹脂組成物を容積1000mlのセパラブルフラスコに入れた。フラスコ内にさらにキシレン150mlを加えて加熱し、PP系樹脂組成物をキシレンに溶解させた。冷却後、フラスコ内を撹拌しながら、フラスコ内にアセトン450mlを添加した後、静置した。
四フッ化エチレン樹脂(つまり、PTFE)フィルタを用いた吸引濾過により、フラスコ内の沈殿物を回収した。フィルタのポアサイズは0.2μmである。沈殿物を風乾後、真空乾燥機内にて温度100℃で減圧乾燥した。このようにして精製試料を得た。なお、精製試料は、未反応のポリロタキサンが除去されている。精製前後の重量を下記の表1に示す。
Figure 2018162429
表1より知られるように、溶媒への可溶分は2.1質量%であり、ポリロタキサンは3.9%程度(65%)が反応していると考えられる。
次いで、サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製のフーリエ変換赤外分光光度計「NicoletTM iSTM 50」を用いて、全反射吸収赤外分光分析(つまり、ATR法)により、測定試料の赤外スペクトルを測定した。測定条件は、プリズム:ダイヤモンド、入射角:45°とした。精製前の試料の結果を図1に示し、図1における波数1730cm-1付近の拡大図を図2に示す。また、精製試料の結果を図3に示し、図3における波数1730cm-1付近の拡大図を図4に示す。
図1〜図4より知られるように、ポリロタキサン構造の起因する波数1730cm-1付近のピークが精製前の試料だけでなく、精製試料においても認められている。したがって、変性PPとポリロタキサンとが反応し、両者が連結していることがわかる。精製前後におけるエステルのピーク面積比を表2に示す。
Figure 2018162429
表2より知られるように、波数1730cm-1付近のエステル由来のピーク面積から、ポリロタキサンの約40%が変性PPと反応していることとなる。
また、図1〜図4に示すように、波数1730cm-1付近のエステル由来のピーク形状について、精製試料はガウス分布に近い形状であるのに対し、精製前の試料はブロードで低波数側にある。この低端数側のピークは、ポリカプロラクトン鎖の結晶に由来すると推察される。なお、重量測定結果と赤外測定結果とが一致しない理由は明確ではないが、カプロラクトン鎖の結晶と非晶の吸光係数の差、未グラフトのポリカプロラクトンの存在、直鎖状分子及び環状分子の組成分布などが原因として考えられる。
本例によれば、ポリロタキサン由来の成分(A)と、官能基含有ポリオレフィン由来の成分(B)と、ポリオレフィン(C)とを含有し、成分(A)における環状分子のポリカプロラクトン基の末端水酸基と、成分(B)における官能基とが結合した連結部を有するポリオレフィン系樹脂組成物を提供することができる。このようなポリオレフィン系樹脂組成物においては、ポリオレフィン(C)の機械的物性の改質が可能になり、例えば樹脂組成物の成形体において、ポリオレフィンの相に荷重が加わった場合に、荷重は環状分子のスライドなどによって緩和されると考えられる。その結果、引張特性、曲げ物性、弾性などの機械的物性の向上が可能になると考えられる。
(実施例2)
本例においては、組成の異なる複数のポリオレフィン系樹脂組成物の試料を作製し、各試料のMFRを比較評価する。本例においては、試料E1〜試料E3、及び試料C1の4種類のポリオレフィン系樹脂組成物を作製する。
試料E1は、配合割合を、質量比で、ポリロタキサン:変性PP:PP=3:7:90とした点を除いては、実施例1と同様にして作製したポリオレフィン系樹脂組成物である。
試料E2は、配合割合を、質量比で、ポリロタキサン:変性PP:PP=6:4:90とした点を除いては、実施例1と同様にして作製したポリオレフィン系樹脂組成物である。
試料E3は、次のようにして作製した。具体的には、実施例1と同様に、温度200℃、回転数70rpmの条件でPP、変性PP、ポリロタキサンを順に加えて6分間混練を行った。このとき、混練開始から3分経過時点において、1−ドデカノールを添加して混練を行った。このようにして、試料E3のポリオレフィン系樹脂組成物を得た。
試料C1は、配合割合を、質量比で、ポリロタキサン:変性PP:PP=0:10:90とした点を除いては、実施例1と同様にして作製したポリオレフィン系樹脂組成物である。ポリロタキサンを用いていないため、混練の開始時から、変性PPとPPとの混練を行った。
次に、各試料のMFRを測定した。測定は、JIS K7210−1:2014に準拠して行った。測定装置としては、東洋精機株式会社製の「F−B01」を用いた。MFRは、温度190℃、荷重2.16kgfの条件における値である。その結果を図5に示す。なお、試料E2及び試料E3については、作製後24時間以内のMFRと、3ヶ月後のMFRを測定し、試料E1及び試料C1については、作製後24時間以内のMFRを測定した。「24時間以内」及び「3ヶ月後」のMFRは、それぞれほぼ同じタイミングで測定した値である。
図5より知られるように、ポリロタキサンと変性PPとPPとを配合した試料E1〜試料E3は、ポリロタキサンを配合していない試料C1に比べてMFRが高いことがわかる。これは、ポリロタキサンの環状分子と変性PPとの間に連結部があり、変性PPとPPとが相溶していることに起因して、流動性が高くなっているためであると考えられる。つまり、環状分子を介した架橋点が流動性を高めていると考えられる。また、試料E1と試料E2との比較から、ポリロタキサンの量を増やすことにより、MFRをより高めることができることがわかる。MFRの向上は、ポリオレフィン系樹脂組成物の成形性の向上につながる。
また、図5より知られるように、高級アルコールを配合した試料E3は、高級アルコールが配合されていない試料E2に比べて、経時的なMFRの低下が抑制されている。
これは、高級アルコールとして1−ドデカノールが配合された試料E3においては、トリメトキシシラン変性PPのメトキシ基が少なくとも部分的に1−ドデカキシ基によって置換され、立体障害によりシランカップリングによる架橋が抑制されているためであると考えられる。したがって、高級アルコールを配合することにより、初期の高いMFRを長期間維持することができ、成形性の低下を抑制できることがわかる。
(実施例3)
本例は、ポリオレフィン系樹脂組成物を成形してなる成形体を作製し、その引張強さを評価する例である。まず、以下のようにして、ポリオレフィン系樹脂組成物の成形体を作製した。
具体的には、まず、株式会社日本製鋼所製の二軸押出機TEX30αに、PP、変性PP、ポリロタキサンを順次加え、溶融混練を行った。配合割合は、質量比で、ポリロタキサン:変性PP:PP=6:4:90である。この二軸押出機のスクリュ径Dに対するスクリュ長さLの比L/Dは52.5である。混練温度は180℃であり、スクリュの回転数は200rpmであり、突出速度(押出量)は20kg/hである。このようにして、PP系樹脂組成物を得た。PP、変性PP、ポリロタキサンとしては、実施例1と同様のものを用いた。
次いで、PP系樹脂組成物を温度80℃で2時間予備乾燥した後、射出成形し、成形体を作製した。成形体としては、JIS K6121−2:2010に準拠して試験片を作製した。射出成形機としては、日精樹脂工業株式会社製の射出成形機FE80S 12ASE型を用いた。このようにして得られた成形体を試料E4とする。
次に、PP、変性PP、ポリロタキサンを順次混練する際に、さらに1−ドデカノールを添加した樹脂組成物を作製した。1−ドデカノールの添加量は、変性PPのトリメトキシシリル基に対して3mol当量である。1−ドデカノールは、サイドフィーダーを用いて二軸押出機に投入した。配合量の1/18の重量のPPをあらかじめ取り分けて、この取り分けたPPに1−ドデカノールを含浸させ、突出速度(押出量)1kg/hで添加した。サイドフィード位置は押出機に2か所ある混練部の中間であり、二軸押出機内での樹脂の滞留時間をTとすると、T/2に相当するタイミングで1−ドデカノールを投入した。このようにして得られた組成物を上述の試料E4と同様にして成形し、成形体を得た。この成形体を試料E5とする。
また、変性PP、ポリロタキサンを使用せずにPPだけを用い、その他は試料E4と同様にして、成形体を作製した。このようにして得られた成形体を試料C2とする。
<引張試験>
試料E4、試料E5、試料C2について、JIS K7161−1、2:2014に準拠して引張試験をそれぞれ行い、引張降伏応力及び引張破壊応力を測定した。試験片形状としては1A型を採用した。測定条件は温度:120℃、変位速度:50mm/minである。測定は、5つの試験片についてそれぞれ行い、これらの平均値を算出した。その結果を表3に示す。
Figure 2018162429
表3より知られるように、PPと変性PPとポリロタキサンとを含有する試料E4及び試料E5は、PPからなる試料C2に比べてより条件の厳しい高温条件下でも引張降伏応力が向上している。したがって、試料E4及び試料E5のように、ポリオレフィンと官能基含有ポリオレフィンとポリロタキサンとを含有する成形体は、変形に対する強度が強く、より厳しい高温環境下でも変形しづらい材料となりうることがわかる。
また、試料E4、試料E5のように、ポリオレフィンと官能基含有ポリオレフィンとポリロタキサンとを含有する成形体は、射出成形による成形が可能である。したがって、生産性良く、成形体の製造が可能になる。

Claims (18)

  1. 水酸基の少なくとも一部が2−ヒドロキシプロピル基によって修飾され、該2−ヒドキシプロピル基の水酸基が末端水酸基を有するポリカプロラクトン基によって修飾されたシクロデキストリン(a1)、該シクロデキストリンの開口部に串刺し状に包接されたポリエチレングリコール(a2)、及び該ポリエチレングリコールの両端に結合したアダマンタン基類(a3)からなるポリロタキサン由来の成分(A)と、
    官能基を有するポリオレフィンからなる官能基含有ポリオレフィン由来の成分(B)と、
    ポリオレフィン(C)と、を含有し、
    上記成分(A)における上記ポリカプロラクトン基の上記末端水酸基と、上記成分(B)における上記官能基とが結合した連結部を有する、ポリオレフィン系樹脂組成物。
  2. 上記ポリロタキサンと上記官能基含有ポリオレフィンと上記ポリオレフィンとの合計100質量部に対する上記ポリロタキサンの含有量が0.1〜49.9質量部である、請求項1に記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
  3. 上記ポリロタキサンと上記官能基含有ポリオレフィンと上記ポリオレフィンとの合計100質量部に対する上記官能基含有ポリオレフィンの含有量が0.1〜49.9質量部である、請求項1又は2に記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
  4. 上記ポリロタキサンと上記官能基含有ポリオレフィンと上記ポリオレフィンとの合計100質量部に対する上記ポリオレフィンの含有量が50〜99質量部である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
  5. 上記官能基含有ポリオレフィンが上記官能基としてアルコキシシリル基を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
  6. 上記アルコキシシリル基におけるアルコキシ基の少なくとも一部が、高級アルコキシ基からなる、請求項5に記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
  7. 温度190℃、荷重2.16kgfでの上記ポリオレフィン系樹脂組成物のメルトフローレイトが0.01g/10分以上である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂組成物を成形してなる、成形体。
  9. 水酸基の少なくとも一部が2−ヒドロキシプロピル基によって修飾され、該2−ヒドロキシプロピル基の水酸基が末端水酸基を有するポリカプロラクトン基によって修飾されたシクロデキストリンと、該シクロデキストリンの開口部に串刺し状に包接されたポリエチレングリコールと、該ポリエチレングリコールの両端に結合したアダマンタン基類とからなるポリロタキサン、上記ポリカプロラクトン基の上記末端水酸基と反応して共有結合を形成することが可能な官能基を有する官能基含有ポリオレフィン、及びポリオレフィンを溶融混練する、ポリオレフィン系樹脂組成物の製造方法。
  10. 混練温度が280℃未満である、請求項9に記載のポリオレフィン系樹脂組成物の製造方法。
  11. 上記ポリオレフィンと上記官能基含有ポリオレフィンとの混練途中に上記ポリロタキサンを加える、請求項9又は10に記載のポリオレフィン系樹脂組成物の製造方法。
  12. 上記ポリロタキサンと上記官能基含有ポリオレフィンとの混練途中、或いは上記ポリロタキサンと上記官能基含有ポリオレフィンと上記ポリオレフィンとの混練途中に、上記官能基含有ポリオレフィンの未反応の官能基と反応して共有結合を形成することが可能な化合物を添加して混練を行う、請求項9〜11のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂組成物の製造方法。
  13. 上記官能基含有ポリオレフィンがアルコキシシラン変性ポリオレフィンを含有する、請求項9〜12のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂組成物の製造方法。
  14. 上記アルコキシシシラン変性ポリオレフィンが低級アルコキシ基を有する、請求項13に記載のポリオレフィン系樹脂組成物の製造方法。
  15. 上記ポリロタキサンと上記官能基含有ポリオレフィンとの混練途中、或いは上記ポリロタキサンと上記官能基含有ポリオレフィンと上記ポリオレフィンとの混練途中に、高級アルコールを添加して混練を行う、請求項13又は14に記載のポリオレフィン系樹脂組成物の製造方法。
  16. 上記ポリロタキサンと上記官能基含有ポリオレフィンと上記ポリオレフィンとの合計100質量部に対する上記ポリロタキサンの混合割合が0.1〜49.9質量部である、請求項9〜15のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂組成物の製造方法。
  17. 上記ポリロタキサンと上記官能基含有ポリオレフィンと上記ポリオレフィンとの合計100質量部に対する上記官能基含有ポリオレフィンの混合割合が0.1〜49.9質量部である、請求項9〜16のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂組成物の製造方法。
  18. 上記ポリロタキサンと上記官能基含有ポリオレフィンと上記ポリオレフィンとの合計100質量部に対する上記ポリオレフィンの混合割合が50〜99質量部である、請求項9〜16のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂組成物の製造方法。
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