JP7078374B2 - 成形体及びパイプ - Google Patents
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Description
例えば、特許文献1には、化学修飾CNF及び熱可塑性樹脂を含有する繊維強化樹脂組成物が開示されている。しかしながら、特許文献1は、繊維強化樹脂組成物が射出成形によって成形されているため、化学修飾CNFの繊維配向度が高い場合での機械特性の向上等の効果の発揮を示したものであり、プレス成形等によって成形され、化学修飾CNFの繊維がランダム(無配向)の場合は機械特性の向上等の効果が充分に発揮されないという問題があった。
以下に本発明を詳述する。
以下、繊維強化樹脂組成物を構成する構成要件について説明する。
本発明の繊維強化樹脂組成物は、強化繊維として化学修飾CNFを含有する。
本発明における化学修飾CNFとは、セルロースナノファイバーの表面を特定の官能基(化学修飾基)で修飾して変性したもののことである。
なお、本明細書において、上記化学修飾CNFの平均繊維径とは、1000nm以下とする。上記平均繊維径は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察した20本の繊維の直径(幅)の平均値として求める値のことである。
また、上記CNFには、セルロースで構成されるナノファイバーだけでなく、リグノセルロースで構成されるナノファイバーも含まれる。更に、上記CNFには、ミクロフィブリル化されたセルロース繊維及びミクロフィブリル化されたリグノセルロース繊維も含まれる。
なお、上記平均繊維長とは、電子顕微鏡を用いて観察した20本の繊維の長さの平均値として求める値のことである。
なお、上記比表面積とは、ガス吸着法によって測定される比表面積の値のことである。
なお、本明細書において、上記「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル又はメタクリロイルを意味する。
上記化学修飾CNFのうち市販されているものとしては、例えば、王子ホールディングス社製の「ウェットパウダー状CNF」、日本製紙社製の「TEMPO酸化CNF」、星光PMC社製の「変性セルロース配合樹脂」及び「変性セルロースパウダー」、中越パルプ工業社製の「表面疎水化ナノセルロース」、モリマシナリー社製の「粉末セルロースナノファイバー」、大阪ガス社製の「フルオレンセルロースナノファイバー」等が挙げられる。
本発明の繊維強化樹脂組成物は、上記化学修飾CNFと複合化する熱可塑性樹脂として、重量平均分子量が10万以上50万以下である高密度ポリエチレンを含有する。上記熱可塑性樹脂として上記重量平均分子量が10万以上50万以下である高密度ポリエチレンを含有することにより、本発明の繊維強化樹脂組成物は、化学修飾CNFがランダム(無配向)の場合でも機械特性に優れる成形体を得ることができるものとなる。
なお、本明細書において上記「メルトマスフローレイト」は、溶融時の流動性を示す指標であり、JIS K 7210に準じて測定される値を意味する。
上記その他の熱可塑性樹脂としては、例えば、重量平均分子量が10万以上50万以下である高密度ポリエチレン以外のポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリアセタール、ポリ乳酸、ポリスチレン、ABS樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の繊維強化樹脂組成物は、相溶化剤を含有することが好ましい。
上記相溶化剤を含有することにより、上記化学修飾CNFと上記高密度ポリエチレンとの接着性が向上し、得られる成形体が引張強さや剛性等の機械特性により優れるものとなる。
上記相溶化剤としては、例えば、熱可塑性樹脂を、不飽和カルボン酸又はその誘導体、不飽和シラン化合物、カルボニル化合物、オキサゾリン化合物、ハロゲン化合物、アミン化合物、ヒドロキシ化合物、エポキシ化合物等で変性してなる樹脂等が挙げられる。
なお、本明細書において、上記「(メタ)アクリル」は、アクリル又はメタクリルを意味する。
上記酸変性ポリオレフィンとしては、例えば、無水マレイン酸変性ポリオレフィン、マレイン酸変性ポリオレフィン、(メタ)アクリル酸変性ポリオレフィン等が挙げられる。
上記相溶化剤として市販されているものとしては、例えば、三菱ケミカル社製の「モディック」及び「リンクロン」、三洋化成工業社製の「ユーメックス」、三井化学社製の「ハイワックス」及び「アドマー」、日油社製の「モディパー」、日本ポリエチレン社製の「レクスパール」、デュポン社製の「FUSABOND」等が挙げられる。
上記相溶化剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
本発明の繊維強化樹脂組成物は、更に、必要に応じて、無機充填剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、難燃剤、離型剤、帯電防止剤、着色剤等の添加剤を含有してもよい。
本発明の繊維強化樹脂組成物は、上記化学修飾CNFと、上記熱可塑性樹脂と、上記相溶化剤や必要に応じて添加される添加剤とを混練することにより製造することができ、パルプ等のセルロース繊維集合体を化学修飾して得られる化学修飾パルプ等と熱可塑性樹脂とを溶融混合する工程を含む方法を行うことが好ましい。上記工程において、繊維径が数十から数百μmの化学修飾パルプ等が、混練によって繊維径が数十から数百nmの化学修飾CNFに容易に解繊されるため、本発明の繊維強化樹脂組成物を容易に製造することができる。
本発明の繊維強化樹脂組成物からなる成形体もまた、本発明の1つである。
反応容器に、パルプとしてリファイナー処理済み針葉樹由来漂白クラフトパルプ(NBKP)と、N-メチルピロリドンとを投入し、分散液を得た。得られた分散液に無水酢酸及び炭酸カリウム(モル比で無水酢酸:炭酸カリウム=19:15)を添加し、80℃で1.5時間撹拌混合し、洗浄することにより、化学修飾パルプとしてDS(セルロースの繰り返し単位に3個含まれる水酸基の置換度合)=0.4のアセチル化パルプを得た。
なお、DSは、アセチル化NBKP及びアセチル化リグノパルプにアルカリを添加し、エステル結合を加水分解することにより発生した酢酸量を滴定することにより算出した。
上記「(化学修飾パルプの作製)」で得られたアセチル化パルプと、熱可塑性樹脂として高密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、「ノバテック HE212W」、重量平均分子量20万、MFR0.05g/10min)とを、二軸押出機に投入した。次いで、140℃で溶融混練することによりアセチル化パルプを解繊し、アセチル化CNFと高密度ポリエチレンとを複合化したマスターバッチを得た(アセチル化CNFの含有量33質量%)。
得られたマスターバッチに、アセチル化CNFの含有量が10質量%となるように更にノバテック HE212Wを加え、容器内で撹拌した。その後、得られた混合物をラボプラストミル(東洋精機製作所社製)に投入し、1分間予熱した後、160℃にて溶融混練することにより繊維強化樹脂組成物を得た。更に、熱プレス機を用い、3分間予熱した後、160℃にて繊維強化樹脂組成物をプレスし、シート状の成形体を得た。
透過型電子顕微鏡(JEOL社製、「JEM-2100」)にて観察した結果、得られた繊維強化樹脂組成物におけるアセチル化CNFは、平均繊維径が100nm、平均繊維長が2.5μmであった。
また、電子顕微鏡写真よりアセチル化CNFはランダム(無配向)であった。
マスターバッチに、更にノバテック HE212Wと相溶化剤として無水マレイン酸変性高密度ポリエチレン(デュポン社製、「FUSABOND E265」)とを、アセチル化CNFの含有量が10質量%、かつ、FUSABOND E265の含有量が2質量%となるように加え、容器内で撹拌した以外は実施例1と同様にして、繊維強化樹脂組成物及びシート状の成形体を得た。
透過型電子顕微鏡(JEOL社製、「JEM-2100」)にて観察した結果、得られた繊維強化樹脂組成物におけるアセチル化CNFは、平均繊維径が100nm、平均繊維長が2.5μmであった。
また、電子顕微鏡写真よりアセチル化CNFはランダム(無配向)であった。
相溶化剤としてFUSABOND E265に代えて、別の無水マレイン酸変性高密度ポリエチレン(三井化学社製、「アドマー HE810」)を、アドマー HE810の含有量が2質量%となるように加えたこと以外は、実施例2と同様にして繊維強化樹脂組成物及びシート状の成形体を得た。
透過型電子顕微鏡(JEOL社製、「JEM-2100」)にて観察した結果、得られた繊維強化樹脂組成物におけるアセチル化CNFは、平均繊維径が100nm、平均繊維長が2.5μmであった。
また、電子顕微鏡写真よりアセチル化CNFはランダム(無配向)であった。
上記「(化学修飾パルプの作製)」で得られたアセチル化パルプと、熱可塑性樹脂として高密度ポリエチレン(プライムポリマー社製、「ハイゼックス 7800M」、重量平均分子量17万5千、MFR0.04g/10min)とを、二軸押出機に投入した。次いで、140℃で溶融混練することによりアセチル化パルプを解繊し、アセチル化CNFと高密度ポリエチレンとを複合化したマスターバッチを得た(アセチル化CNFの含有量33質量%)。
得られたマスターバッチに、アセチル化CNFの含有量が10質量%となるように更にハイゼックス 7800Mを加え、容器内で撹拌した。その後、得られた混合物をラボプラストミル(東洋精機製作所社製)に投入し、1分間予熱した後、160℃にて溶融混練することにより繊維強化樹脂組成物を得た。更に、熱プレス機を用い、3分間予熱した後、160℃にて繊維強化樹脂組成物をプレスし、シート状の成形体を得た。
透過型電子顕微鏡(JEOL社製、「JEM-2100」)にて観察した結果、得られた繊維強化樹脂組成物におけるアセチル化CNFは、平均繊維径が100nm、平均繊維長が2.5μmであった。
また、電子顕微鏡写真よりアセチル化CNFはランダム(無配向)であった。
マスターバッチに、更にハイゼックス 7800Mと相溶化剤として無水マレイン酸変性高密度ポリエチレン(デュポン社製、「FUSABOND E265」)とを、アセチル化CNFの含有量が10質量%、かつ、FUSABOND E265の含有量が2質量%となるように加え、容器内で撹拌した以外は実施例4と同様にして、繊維強化樹脂組成物及び、シート状の成形体を得た。
透過型電子顕微鏡(JEOL社製、「JEM-2100」)にて観察した結果、得られた繊維強化樹脂組成物におけるアセチル化CNFは、平均繊維径が100nm、平均繊維長が2.5μmであった。
また、電子顕微鏡写真よりアセチル化CNFはランダム(無配向)であった。
相溶化剤としてFUSABOND E265に代えて、シラン変性高密度ポリエチレン(三菱ケミカル社製、「リンクロン XHE740N」)を、リンクロン XHE740Nの含有量が2質量%となるように加えたこと以外は、実施例5と同様にして繊維強化樹脂組成物及びシート状の成形体を得た。
透過型電子顕微鏡(JEOL社製、「JEM-2100」)にて観察した結果、得られた繊維強化樹脂組成物におけるアセチル化CNFは、平均繊維径が100nm、平均繊維長が2.5μmであった。
また、電子顕微鏡写真よりアセチル化CNFはランダム(無配向)であった。
熱可塑性樹脂として高密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、「ノバテック HE212W」、重量平均分子量20万、MFR0.05g/10min)をラボプラストミル(東洋精機製作所社製)に投入し、1分間予熱した後、160℃にて溶融混練した。更に、熱プレス機を用い、3分間予熱した後、160℃にて混練物をプレスし、シート状の成形体を得た。
熱可塑性樹脂として高密度ポリエチレン(プライムポリマー社製、「ハイゼックス 7800M」、重量平均分子量17万5千、MFR0.04g/10min)をラボプラストミル(東洋精機製作所社製)に投入し、1分間予熱した後、160℃にて溶融混練した。更に、熱プレス機を用い、3分間予熱した後、160℃にて混練物をプレスし、シート状の成形体を得た。
熱可塑性樹脂として高密度ポリエチレン(旭化成社製、「サンテックHD J320」、重量平均分子量7万8千、MFR12g/10min)をラボプラストミル(東洋精機製作所社製)に投入し、1分間予熱した後、160℃にて溶融混練した。更に、熱プレス機を用い、3分間予熱した後、160℃にて混練物をプレスし、シート状の成形体を得た。
上記「(化学修飾パルプの作製)」で得られたアセチル化パルプと、熱可塑性樹脂として高密度ポリエチレン(旭化成社製、「サンテックHD J320」、重量平均分子量7万8千、MFR12g/10min)とを、二軸押出機に投入した。次いで、140℃で溶融混練することによりアセチル化パルプを解繊し、アセチル化CNFと高密度ポリエチレンとを複合化したマスターバッチを得た(アセチル化CNFの含有量33質量%)。
得られたマスターバッチに、アセチル化CNFの含有量が10質量%となるように更にサンテックHD J320を加え、容器内で撹拌した。その後、得られた混合物をラボプラストミル(東洋精機製作所社製)に投入し、1分間予熱した後、160℃にて溶融混練することにより繊維強化樹脂組成物を得た。更に、熱プレス機を用い、3分間予熱した後、160℃にて繊維強化樹脂組成物をプレスし、シート状の成形体を得た。
透過型電子顕微鏡(JEOL社製、「JEM-2100」)にて観察した結果、得られた繊維強化樹脂組成物におけるアセチル化CNFは、平均繊維径が100nm、平均繊維長が2.5μmであった。
また、電子顕微鏡写真よりアセチル化CNFはランダム(無配向)であった。
実施例、参照例、及び、比較例で得られた各成形体について以下の評価を行った。結果を表1に示した。
実施例、参照例、及び、比較例で得られた各成形体を、ダンベル打ち抜き機にてJIS K 6251で規定される8号形のダンベル状に打ち抜くことにより、試験片を得た。得られた試験片について、JIS K 7161-2に従い、オートグラフを用いて、23℃、引張速度100mm/min、チャック間距離25mmの条件で引張試験を行い、引張強さ及び弾性率を測定した。
また、実施例1~6及び比較例2で得られた各成形体について、実施例1~3については参照例1をブランクとし、実施例4~6については参照例2をブランクとし、比較例2については比較例1をブランクとして、以下の基準により補強効果を評価した。
即ち、補強効果は、ブランクに対して引張強さ及び弾性率がいずれも1.05倍以上であった場合を「◎」、ブランクに対して引張強さ又は弾性率が1.05倍以上であった場合を「○」、ブランクに対して引張強さ及び弾性率がいずれも1.05倍未満であった場合を「×」とした。
Claims (6)
- 化学修飾セルロースナノファイバーと、重量平均分子量が10万以上50万以下である高密度ポリエチレンとを含有する繊維強化樹脂組成物を用いてなり、
前記化学修飾セルロースナノファイバーは、化学修飾基としてアシル基を有し、
前記化学修飾セルロースナノファイバーは、無配向である
ことを特徴とする成形体。 - 前記化学修飾基は、アセチル基である請求項1記載の成形体。
- 相溶化剤を含有する請求項1又は2記載の成形体。
- 前記相溶化剤は、酸変性ポリオレフィン及びシラン変性ポリオレフィンのうちの少なくともいずれかである請求項3記載の成形体。
- 繊維強化樹脂組成物100質量部中における前記相溶化剤の含有量が0.1質量部以上50質量部以下である請求項3又は4記載の成形体。
- 請求項1、2、3、4又は5記載の成形体を用いてなるパイプ。
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平成22年度-平成24年度成果報告書 グリーン・サステイナブルケミカルプロセス基盤技術開発 化学品原料の転換・多様化を可能とする革新グリーン技術の開発 セルロースナノファイバー強化による自動車用高機能化グリーン部材の研究開発,独立行政法人 新エネルギ-・産業技術総合開発機構,2013年11月13日,p.1,2,5,8-13,16-28,管理番号 20130000000997 |
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