以下、本発明の好ましい実施形態が、適宜図面が参照されつつ説明される。なお、本実施形態は、本発明の一態様にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施態様が変更されてもよいことは言うまでもない。
[軌陸車10の全体構成]
図1に示されるように、本実施形態に係る軌陸車10は、走行を行う走行体20と、走行体20の上部に配置された上部作業体30とを備える。
走行体20は、道路走行用の複数対(左右一対)の車輪21と、軌道走行用の複数対(左右一対)の鉄輪23とを備える。車輪21は、タイヤ22を有する。鉄輪23は、タイヤ22の接地面よりも上方に位置する格納状態(図1に示される状態)と、タイヤ22の接地面よりも下方に位置する走行状態(不図示)とに状態変化可能である。鉄輪23は、道路走行時に格納状態とされ、軌道走行時に走行状態とされる。
走行体20は、操縦者が搭乗する走行用キャビン25を備える。走行用キャビン25は、ハンドルやクラッチやアクセルやブレーキなど、道路走行及び軌道走行に必要な運転装置を有する。操縦者は、運転装置を操作して、走行体20を走行させる。
走行体20は、複数対(左右一対)のアウトリガ24を備える。アウトリガ24は、タイヤ22の接地面よりも下方において接地する接地状態(図1に示される状態)と、タイヤ22の接地面よりも上方に位置する格納状態(不図示)とに状態変化可能である。アウトリガ24は、道路走行時及び軌道走行時に格納状態とされ、上部作業体30が操作される際に接地状態とされる。接地状態のアウトリガ24は、上部作業体30が操作される際の軌陸車10の姿勢を安定させる。
走行体20は、走行用キャビン25の後方にブームレスト26を備える。ブームレスト26は、後述する第2ブーム42を下方から支持する。これにより、後述する第1ブーム40及び第2ブーム42が安定した姿勢である初期姿勢(図9(C)に示される姿勢)に維持される。走行体20は、通常、第1ブーム40及び第2ブーム42が初期姿勢をとる状態で走行する。
上部作業体30は、第1ブーム40と、第2ブーム42と、把持機構50と、駆動装置60(図3)と、制御部34とを備える。第1ブーム40は、走行体20の上部に配置されている。第2ブーム42は、第1ブーム40の先端部に回動可能に設けられている。把持機構50は、第2ブーム42の先端部に回転可能に設けられている。駆動装置60は、上部作業体30を駆動させる。制御部34は、駆動装置60の駆動を制御する。
[第1ブーム40]
図1に示されるように、旋回体31は、走行体20上に載置され、走行体20に旋回可能に取り付けられている。旋回体31は、後述の第3アクチュエータ63(図3)により旋回される。
旋回体31は、第1ブーム40を支持する台座33と、操作用キャビン32とを備える。台座33は、第1ブーム40の一端を起伏可能に支持する。
操作用キャビン32は、箱状であり、操縦者を収容する。操縦者により操作される操作装置35(図3)が操作用キャビン32に設置されている。操作装置35は、旋回体31や、第1ブーム40や、把持機構50を動作させる不図示のレバーやスイッチやボタンを有する。また、操作装置35は、種々の情報が表示されるモニタ36を有する。
第1ブーム40は、角筒状である。なお、第1ブーム40は、角筒状に限らず、筒状であればよい。
第1ブーム40は、台座33と繋がる基端(図1における右端)を中心に起伏可能に台座33に支持されている。第1ブーム40は、旋回体31に対して伏せた伏せ状態(図7(A))と、先端が旋回体31から起き上がった起立状態(図8(A))との間で起伏する。第1ブーム40は、後述の第4アクチュエータ64(図3)により起伏される。
第1ブーム40は、入れ子状に配置された角筒状の3個のフレーム40A、40B、40Cからなる。第1ブーム40は、フレーム40A、40B、40C同士が重なった縮小状態(図1)と、フレーム40A、40B、40Cの軸方向の端同士が重なった伸長状態(図7(A))との間で伸縮する。第1ブーム40は、後述の第5アクチュエータ65(図3)により伸縮される。
[第2ブーム42]
図1に示されるように、第2ブーム42は、第1ブーム40の先端部に設けられている。第2ブーム42は、角筒状である。なお、第2ブーム42は、角筒状に限らず、筒状であればよい。第2ブーム42は、その軸方向における中央部において第1ブーム40と接続されている。第2ブーム42は、第1ブーム40の軸方向に沿う状態(図1)と、第1ブーム40の軸方向に直交する状態(図7)との間で、第1ブーム40に対して俯仰(チルト)する。第2ブーム42は、後述の第6アクチュエータ66により俯仰される。
第2ブーム42は、図7(A)に示されるように、入れ子状に配置されたフレーム42Aとフレーム42Bとを備える。フレーム42A及びフレーム42Bは、角筒状である。第2ブーム42は、フレーム42Bがフレーム42Aに対してスライドすることにより、縮小状態(図1)と、伸長状態(図7(A))との間で伸縮する。第2ブーム42は、後述の第7アクチュエータ67により伸縮される。
[把持機構50]
図1及び図2に示されるように、把持機構50は、第2ブーム42の先端部に設けられている。把持機構50は、本体51と、固定爪52と、可動爪53とを備える。本体51は、第2ブーム42のフレーム42B(図7(A))の先端部に回転可能に設けられている。固定爪52は、第1方向71における本体51の一端(図2では下端)から第2ブーム42の長手方向に突出している。可動爪53は、第1方向71における本体51の他端(図2では上端)から第2ブーム42の長手方向に突出している。
また、把持機構50は、チェーンブロックなどを取り付ける取付部57と、荷を吊ることができるフック56(図10)とを備える。
本体51は、第2ブーム42の軸54周りに回転可能に第2ブーム42と接続されている。換言すると、本体51は、第2ブーム42の長手方向を回転中心軸として回転可能に第2ブーム42と接続されている。本体51は、後述の第8アクチュエータ68(図3)により、軸54周りの回転方向55に回転される。
図2に示されるように、固定爪52は、第2方向72に沿って間隔を空けて複数配置されている。
可動爪53は、第1方向71において固定爪52と対向して設けられている。可動爪53は、第2方向72に沿って間隔を空けて複数配置されている。第2ブーム42の長手方向における可動爪53の本体51からの突出長は、第2ブーム42の長手方向における固定爪52の本体51からの突出長よりも長い。可動爪53は、固定爪52との間に電柱11を挟持することで電柱11を把持する把持位置と、固定爪52との間の間隔が把持位置よりも大きくて固定爪52との間に電柱11を把持しない開放位置との間で開閉(揺動)される。可動爪53は、後述の第1アクチュエータ61(図3)により固定爪52に対して開閉される。
図2に示される取付部57は、チェーンブロックなどを取り付けるためのものである。取付部57は、貫通孔を有する板状に形成されている。なお、チェーンブロック等を取り付け可能であれば、取付部57は、他の形状であってもよい。チェーンブロックは、一端において電柱11に巻回され、他端において取付部57に繋がれる。チェーンブロックは、電柱11が把持機構50から脱落することを防止する。また、チェーンブロックは、後述する建柱動作の際に、電柱11の穴への挿入量不足を補う役割がある。詳細には、建柱動作の際に、ブーム伏せが下限となってもなお、電柱11の下端が穴の底面につかない場合などにおいて、チェーンブロックで電柱11を保持した状態に維持しつつ、可動爪53を少し開いて可動爪53による電柱11の保持を緩める。これにより、電柱11の穴への挿入量不足を補う。
図10に示されるフック56は、荷を吊るためのものである。フック56は、本体51によって回動可能に支持されている。フック56は、本体51における複数の固定爪52の間に格納された格納姿勢(図10(A)に示される姿勢)と、本体51から張り出された張出姿勢(図10(B)に示される姿勢)とに、回動することによって姿勢変化可能である。フック56は、張出姿勢において、固定爪52から張り出している。張出姿勢のフック56に、荷を吊ることが可能である。
[センサ]
軌陸車10の各部には、複数のセンサが配置されている。図3に示されるように、複数のセンサは、少なくとも、旋回センサ81、起伏センサ82、第1伸縮センサ83、俯仰センサ84、第2伸縮センサ85、回転センサ86、把持センサ87、及びフックセンサ88を含む。
旋回センサ81は、旋回体31の旋回角度を検出するセンサである。旋回角度は、図1に示される状態(第1ブーム40及び第2ブーム42が軌陸車10の前方を向いた状態)を0度としたときの、走行体20の前後方向70に対する旋回体31の角度である。具体的には、旋回角度は、図4にθA、θBで示されている。旋回センサ81は、ポテンショメータであり、走行体20における旋回体31と対向する位置かつ回転軸上に配置されている。旋回センサ81は、旋回角度によって抵抗値が線形的に変化し、それに応じた信号を制御部34へ出力する。制御部34は、旋回センサ81の当該信号から旋回体31の旋回角度を算出する。
起伏センサ82は、第1ブーム40の対地角の角度(起伏角度)を検出するセンサである。具体的には、対地角は、図5にθCで示されている。起伏センサ82は、例えばポテンショメータであり、第1ブーム40に配置されている。起伏センサ82は、対地角に応じた信号を制御部34へ出力する。制御部34は、当該信号に基づいて対地角の角度を算出する。
第1伸縮センサ83は、第1ブーム40の伸縮状態を検出するセンサである。第1伸縮センサ83は、例えばポテンショメータであり、フレーム40Aとフレーム40Bに配置されている。第1伸縮センサ83は、第1ブーム40の伸縮状態に応じた信号を制御部に出力することでブーム長さを検出する。
俯仰センサ84は、第1ブーム40に対する第2ブーム42の俯仰角の角度(起伏角度)を検出するセンサである。具体的には、俯仰角は、図5にθDで示されている。俯仰センサ84は、例えばポテンショメータであり、第2ブーム42に配置されている。俯仰センサ84は、俯仰角に応じた信号を制御部34へ出力する。制御部34は、当該信号に基づいて俯仰角の角度を算出する。なお、俯仰センサ84は、第1ブーム40に対する第2ブーム42の俯仰角を検出するセンサに加えて、第2ブーム42の対地角を検出するセンサを備えていてもよい。
第2伸縮センサ85は、第2ブーム42の伸縮状態を検出するセンサである。第2伸縮センサ85は、例えばポテンショメータであり、フレーム42Aとフレーム42Bに配置されている。第2伸縮センサ85は、第2ブーム42の伸縮状態に応じた信号を制御部に出力することでブーム長さを検出する。
回転センサ86は、把持機構50の本体51の回転角度を検出するセンサである。回転角度は、図11(A)に示されるように、可動爪53と固定爪52とが上下方向76に対向している状態を0度としたときの角度である。図11(A)には、回転角度が0度のときの把持機構50が示されており、図11(B)には、回転角度が90度のときの把持機構50が示されている。なお、本実施形態では、可動爪53が固定爪52の上方に位置する状態を、回転角度が0度の状態としているが、固定爪52が可動爪53の上方に位置する状態を、回転角度が0度の状態としてもよい。
回転センサ86は、ポテンショメータであり、第2ブーム42における本体51と対向する位置かつ回転軸上に配置されている。回転センサ86は、回転角度によって抵抗値が線形的に変化し、それに応じた信号を制御部34へ出力する。制御部34は、回転センサ86から当該信号が入力されてからの後述する第8アクチュエータ68の駆動量に基づいて、本体51の回転角度を算出する。
把持センサ87は、把持機構50が被把持物である電柱11を把持しているか否かを検出するセンサである。把持センサ87は、把持機構50の本体51に配置されている。把持センサ87は、例えば押圧されることによってスライド移動するスライド部を有する非接触型のセンサである。把持センサ87は、電柱11が把持されたことでセンサとの距離が設定値以下となりオン信号を出力し、電柱11とセンサの距離が設定値以上となることでオフ信号を出力する。
フックセンサ88は、フック56の姿勢を検出するセンサである。フックセンサ88は、例えば近接センサであり、固定爪52における格納姿勢のフック56と対向する位置に配置されている。例えば、フックセンサ88は、フック56が格納姿勢のときにオン信号を出力し、フック56が張出姿勢のときにオフ信号を出力する。なお、フックセンサ88は、近接センサに限らず、例えばリミットスイッチなどの接触式のセンサであってもよい。
[駆動装置60]
上部作業体30を駆動させる駆動装置60は、図3に示されるように、第1アクチュエータ61、第2アクチュエータ62、第3アクチュエータ63、第4アクチュエータ64、第5アクチュエータ65、第6アクチュエータ66、第7アクチュエータ67、及び第8アクチュエータ68を備える。第1〜第8アクチュエータ61〜68は、制御部34により、駆動が制御される
第1アクチュエータ61は、可動爪53を開閉させる。第1アクチュエータ61は、例えば油圧シリンダである。
第2アクチュエータ62は、フック56を回動させる。第2アクチュエータ62は、例えば油圧モータである。
第3アクチュエータ63は、旋回体31を旋回させる。第3アクチュエータ63は、例えば油圧モータである。
第4アクチュエータ64は、第1ブーム40を起伏させる。第4アクチュエータ64は、例えば油圧シリンダである。
第5アクチュエータ65は、第1ブーム40を伸縮させる。第5アクチュエータ65は、例えば油圧シリンダである。
第6アクチュエータ66は、第2ブーム42を第1ブーム40に対して俯仰させる。第6アクチュエータ66は、例えば油圧シリンダである。
第7アクチュエータ67は、第2ブーム42を伸縮させる。第7アクチュエータ67は、例えば油圧シリンダである。
第8アクチュエータ68は、本体51を回転させる。第8アクチュエータ68は、例えば油圧モータである。
なお、第1アクチュエータ61や、第5アクチュエータ65や、第7アクチュエータ67は、伸長用のシリンダと縮小用のシリンダとで構成されていてもよい。
[動作規制]
制御部34には、各センサ81〜88から、各センサ81〜88によって検出される軌陸車10の各部の状態に応じた信号が入力される。制御部34は、これらの信号に基づき、第1ブーム40、第2ブーム42、及び把持機構50の姿勢を判断する。
例えば、制御部34は、旋回センサ81からの信号に基づいて旋回体31の旋回角度を算出する。制御部34は、起伏センサ82からの信号に基づいて第1ブーム40の対地角の角度を算出する。制御部34は、第1伸縮センサ83からの信号に基づいて第1ブーム40の伸縮状態を判断する。これらにより、制御部34は、第1ブーム40の姿勢を判断する。
また、例えば、制御部34は、俯仰センサ84からの信号に基づいて第1ブーム40に対する第2ブーム42の俯仰角の角度を算出する。制御部34は、第2伸縮センサ85からの信号に基づいて第2ブーム42の伸縮状態を判断する。これらにより、制御部34は、第2ブーム42の姿勢を判断する。
また、例えば、制御部34は、回転センサ86からの信号に基づいて本体51の回転角度を算出する。制御部34は、把持センサ87からの信号に基づいて把持機構50が電柱11を把持しているか否かを判断する。制御部34は、フックセンサ88からの信号に基づいてフック56の姿勢を判断する。これらにより、制御部34は、把持機構50の姿勢を判断する。
制御部34は、上記のように判断した第1ブーム40、第2ブーム42、及び把持機構50の姿勢に応じて、各アクチュエータ61〜68の駆動を規制する制御を実行する。つまり、制御部34は、以下に詳述するように、第1ブーム40、第2ブーム42、及び把持機構50が所定の姿勢であるときに、第1ブーム40の旋回、起伏、若しくは伸縮、第2ブーム42の俯仰若しくは伸縮、または、把持機構50の本体51の回転若しくは把持機構50の可動爪53の開閉のうちの少なくとも一つの動作を規制する。
所定の姿勢は、第1ブーム40の旋回、起伏、若しくは伸縮、第2ブーム42の俯仰若しくは伸縮、または把持機構50の本体51の回転若しくは把持機構50の可動爪53の開閉のうちの少なくとも一つの動作によって、第1ブーム40、第2ブーム42、または把持機構50の少なくとも一つが走行体20と干渉する姿勢である。例えば、所定の姿勢は、後述する(A)〜(E)の条件のうちの少なくとも一つが満たされていないときの姿勢である。
制御部34は、以下の(A)〜(E)の条件のうちの少なくとも一つが満たされていないときに、第1ブーム40の旋回体31の旋回角度が後述する所定範囲である状態での、第1ブーム40の対地角の角度が後述する所定角度以下となるような第1ブーム40の起伏を規制する。
また、制御部34は、以下の(A)〜(E)の条件のうちの少なくとも一つが満たされていないときに、第1ブーム40の対地角の角度が後述する所定角度以下である状態での、第1ブーム40の旋回体31の旋回角度が後述する所定範囲となるような旋回体31の旋回を規制する。
(A)の条件は、第2ブーム42が最も短い状態であることである。
(B)の条件は、第2ブーム42の俯仰角の角度が取り得る最も小さい角度であることである。具体的には、図5に示された角度θDが0度の状態となることである。
(C)の条件は、第1ブーム40が最も短い状態であることである。
(D)の条件は、把持機構50の本体51の回転位置が基準位置であることである。ここで、基準位置は、本体51の回転角度が0度のときの本体51の回転位置である。
(E)の条件は、フック56が格納姿勢であることである。
所定範囲は、図4に示されるような角度θA及び角度θBの範囲である。つまり、所定範囲は、軌陸車10の平面視において、旋回体31から突出した第1ブーム40、第2ブーム42、及び把持機構50と、走行体20の構成物のうち、旋回体31よりも前方に位置するもの(例えば走行用キャビン25及びアウトリガ24)とが、干渉するおそれがない角度の範囲である。角度θA及び角度θBは、第1ブーム40、第2ブーム42、把持機構50、及び当該構成物の位置や大きさに基づいて適宜設定される。具体例としては、角度θA及び角度θBはそれぞれ30度である。もちろん、30度以外であってもよい。
所定角度は、図5に示されるような角度θCである。つまり、所定角度は、軌陸車10の側面視において、第1ブーム40、第2ブーム42、及び把持機構50が走行用キャビン25に干渉するおそれのない起伏角度の範囲である。角度θCは、第1ブーム40、第2ブーム42、把持機構50、及び当該構成物の位置や大きさに基づいて適宜設定される。具体例としては、角度θCは15度である。
なお、所定範囲及び所定角度は、それぞれ複数設定されていてもよい。
例えば、図6に示されるように、所定範囲は、第1範囲R1と第2範囲R2とで構成されている。第1範囲R1は、旋回体31の旋回角度が0度以上且つ第1角度θA1以下となる範囲と、0度以上且つ第1角度θB1以下となる範囲とで構成されている。第2範囲R2は、旋回体31の旋回角度が第1角度θA1より大きく且つ第2角度θA2以下となる範囲と第1角度θB1より大きく且つ第2角度θB2以下となる範囲とで構成されている。
また、図6に示されるように、所定範囲が第1範囲R1と第2範囲R2とで構成されている場合、所定角度として、第1所定角度θC1と第2所定角度θC2とが設定される。つまり、所定角度は、旋回体31の旋回角度が第1範囲R1である場合に第1所定角度θC1であり、旋回体31の旋回角度が第2範囲R2である場合に第2所定角度θCである。
以上より、図6に示されるように、所定範囲及び所定角度が2つずつ設定された場合、(A)〜(E)の条件のうちの少なくとも一つが満たされていないときに、旋回体31の旋回角度が第1範囲R1である状態での第1ブーム40の対地角が第1所定角度θC1以下となるような第1ブーム40の起伏が規制され、旋回体31の旋回角度が第2範囲R2である状態での第1ブーム40の対地角が第2所定角度θC2以下となるような第1ブーム40の起伏が規制される。
また、図6に示されるように、所定範囲及び所定角度が2つずつ設定された場合、(A)〜(E)の条件のうちの少なくとも一つが満たされていないときに、第1ブーム40の対地角が第1所定角度θC1以下である状態での、旋回体31の旋回角度が第1範囲R1となるような旋回体31の旋回が規制され、第1ブーム40の対地角が第2所定角度θC2以下である状態での、旋回体31の旋回角度が第1範囲R1及び第2範囲R2となるような旋回体31の旋回が規制される。
制御部34は、第1ブーム40の対地角が上述した所定角度以下である状態、または、旋回体31の旋回角度が上述した所定範囲である状態の少なくとも一方の状態であるときに、第2ブーム42の俯仰及び伸長を規制する。
制御部34は、第2ブーム42の長手方向が鉛直方向に沿っていないような姿勢を第2ブーム42がとっているときに、第2ブーム42の伸長を規制する。
制御部34は、第2ブーム42の長手方向が水平方向又は垂直方向以外であるような姿勢を第2ブーム42がとっているときに、把持機構50の本体51の回転を規制する。
制御部34は、フック56が張出姿勢であるときに、把持機構50の本体51の回転、及び把持機構50の可動爪53の開閉を規制する。
一方、制御部34は、把持機構50の姿勢によっては、把持機構50の本体51の回転を規制しない場合がある。
例えば、制御部34は、把持機構50が電柱11を把持していないときに、所定の条件を満たすと、把持機構50の本体51の回転を規制しない。所定の条件は、例えば、第2ブーム42の長手方向が水平方向又は垂直方向であり、且つフック56が格納姿勢であることである。
[報知処理]
制御部34は、報知処理を実行する。報知処理は、第1ブーム40の旋回、起伏、若しくは伸縮、第2ブーム42の俯仰若しくは伸縮、または、把持機構50の本体51の回転若しくは把持機構50の可動爪53の開閉のうちの少なくとも一つの動作の規制の原因となっている第1ブーム40、第2ブーム42、及び把持機構50の姿勢を、モニタ36に表示することで操縦者に報知する処理である。
また、報知処理は、把持機構50の本体51の回転位置が基準位置でない状態でフック56が格納姿勢から張出姿勢に姿勢変化したときに、フック56が張出姿勢に姿勢変化した旨を操縦者に報知する処理である。
本実施形態において、操縦者への報知は、モニタ36への表示によって行われる。
例えば、(A)の条件が満たされていないために、第1ブーム40の起伏が規制されて第1ブーム40が所定の起伏をしない場合、制御部34は、第1ブーム40の起伏の規制原因が、第2ブーム42が縮小状態でないことをある旨を、モニタ36に表示する。
また、例えば、(B)及び(E)の条件が満たされていないために、第1ブーム40の旋回体31の旋回が規制されて旋回体31が所定の旋回をせず、把持機構50の本体51が回転せず、且つ把持機構50の可動爪53が開閉しない場合において、制御部34は、旋回体31の旋回の規制原因が、第2ブーム42が第1ブーム40の軸方向に沿う状態でないこと、及びフック56が張出姿勢である(格納姿勢でない)ことである旨を、モニタ36に表示する。また、当該場合において、制御部34は、本体51の回転の規制原因及び可動爪53の開閉の規制原因がフック56が張出姿勢である(格納姿勢でない)ことである旨を、モニタ36に表示する。
また、例えば、第1ブーム40の対地角が所定角度以下であるために、第2ブーム42の俯仰が規制されて第2ブーム42の俯仰しない場合、制御部34は、第2ブーム42の俯仰の規制原因が、第1ブーム40の対地角が所定角度以下であることである旨を、モニタ36に表示する。
また、例えば、第2ブーム42の長手方向が鉛直方向と交差している姿勢を第2ブーム42がとっているために、第2ブーム42の伸長が規制されて第2ブーム42が伸長しない場合、制御部34は、第2ブーム42の伸長の規制原因が、第2ブーム42が当該姿勢をとっていることである旨を、モニタ36に表示する。
なお、操縦者への報知は、モニタ36への表示に限らず、例えばブザーによる報知であってもよい。
[建柱動作]
以下、図7及び図8を参照して、軌陸車10が電柱11を縦穴12に挿入する例が説明される。電柱11は、例えばコンクリート柱であり、事前に、縦穴12の近傍に載置されている。
操縦者は、軌陸車10を運転し、電柱11が載置された現場まで軌道13上を走行させる。このとき、第2ブーム42は、ブームレスト26(図1)に支持されている。また、このとき、第1ブーム40、第2ブーム42、及び把持機構50は、(A)〜(E)の条件を満たしている。また、このとき、フック56は格納姿勢であるとする。なお、第1ブーム40の長手方向、及び第2ブーム42の長手方向は、走行体20の前後方向(水平方向)に沿っている。
第1ブーム40、第2ブーム42、及び把持機構50が上記のような姿勢をとっているため、第1ブーム40の起伏及び旋回体31の旋回は規制されない。一方、第2ブーム42の長手方向は鉛直方向に沿っていないため、第2ブーム42の伸長は規制されている。
操縦者は、現場に到着すると、図7(A)に示されるように、アウトリガ24を格納状態から接地状態にし、車体を安定させる。次に、操縦者は、操作用キャビン32に搭乗し、操作装置35を用いて上部作業体30を操作する。
操縦者は、第3アクチュエータ63を駆動させて旋回体31を旋回させ、第5アクチュエータ65を駆動させて第1ブーム40を伸長させる。
操縦者は、第6アクチュエータ66を駆動させて、第2ブーム42の長手方向が鉛直方向に沿った姿勢を第2ブーム42がとるように、第2ブーム42を第1ブーム40に対して俯仰させる。これにより、第2ブーム42の伸長の規制は解除される。
操縦者は、第8アクチュエータ68を駆動させて把持機構50の本体51を回転させる。このとき、本体51は、固定爪52及び可動爪53が電柱11を把持可能な姿勢となるように回転される。なお、第2ブーム42の長手方向が鉛直方向であるため、電柱11の把持状態は関係なく、本体51の回転は規制されない。
操縦者は、第1アクチュエータ61を駆動させて可動爪53を開放位置まで開かせる。なお、フック56が格納姿勢であるため、可動爪53の開閉は規制されない。
操縦者は、第7アクチュエータ67を駆動させて第2ブーム42を伸長させる。
操縦者は、第1アクチュエータ61を駆動させ、可動爪53を閉じさせる。すなわち、操縦者は、把持機構50に電柱11を把持させる。なお、このとき、車外にいる作業者14は、チェーンブロックの一端を電柱11に巻き付け、他端を把持機構50の本体51の取付部57に繋ぐ。チェーンブロックにより、電柱11が把持機構50に繋がれる。
操縦者は、図7(B)に示されるように、第2ブーム42を収縮させて、電柱11を持ち上げる。その後、操縦者は、図7(C)に示されるように、旋回体31を旋回させながら第1ブーム40を縮小させ、電柱11を移動させる。
このとき、第2ブーム42の長手方向が鉛直方向であり、第8アクチュエータ68の駆動によって本体51を回転させることができる。これにより、電柱11を走行体20の前後方向70と平行に維持することができる。
操縦者は、第2ブーム42を第1ブーム40に対して俯仰させて、第2ブーム42の長手方向を水平方向とする。これにより、把持機構50の本体51の回転の規制が解除される。次に、操縦者は、図8(A)に示されるように、第1ブーム40を起こして電柱11を持ち上げる。このとき、操縦者は、第1ブーム40を起こすのに合わせて第2ブーム42を第1ブーム40に対して俯仰させて、第2ブーム42の長手方向を水平方向に維持する。これにより、電柱11は真上に持ち上がる。
操縦者は、図8(B)に示されるように、把持機構50の本体51を回転させ、電柱11を水平状態から垂直状態にする。その後、操縦者は、図8(C)に示されるように、旋回体31を旋回させ、第1ブーム40を伸長させることで、電柱11を縦穴12の真上に移動させる。
この状態において、操縦者は、可動爪53を少しだけ開く。これにより、把持機構50と電柱11との間に隙間が生じる。隙間が生じた状態において、操縦者は、第1ブーム40を倒しつつ収縮させる等の操作を行って、電柱11を下降させる。電柱11は、下降される際、作業者(不図示)により、手やロープなどを使って揺すられる。その結果、電柱11は、縦穴12の奥まで挿入される。その後、操縦者は、可動爪53を開かせ、電柱11を開放する。また、作業者14は、チェーンブロックを電柱11から外す。これにより、作業が終了する。
[ブームの収容動作]
以下、図9を参照して、第1ブーム40、第2ブーム42、及び把持機構50が、電柱11を縦穴12に挿入した直後の姿勢(図8(C)に示される姿勢)から、初期姿勢(第2ブーム42がブームレスト26に支持された姿勢)となるまでの、第1ブーム40、第2ブーム42、及び把持機構50の動作の例が説明される。
操縦者は、第1ブーム40の起伏や、第1ブーム40の旋回体31の旋回が規制されることのないように、第1ブーム40、第2ブーム42、及び把持機構50を(A)〜(E)の条件を満たすように姿勢変化させる。
図8(C)に示される状態では、第2ブーム42が縮小状態であるため、(A)は満たされている。操縦者は、第2ブーム42が第1ブーム40の軸方向に沿う状態となるように、つまり俯仰角の角度が0度となるように第2ブーム42を俯仰させる。これにより、(B)が満たされる。操縦者は、第1ブーム40が縮小状態となるように、第1ブーム40を収縮させる。これにより、(C)が満たされる。操縦者は、把持機構50の本体51の回転位置が基準位置(図11(A))となるように、本体51を回転させる。これにより、(D)が満たされる。図8(C)に示される状態では、フック56が格納姿勢であるため、(E)は満たされている。以上より、図9(A)に示されるように、第1ブーム40、第2ブーム42、及び把持機構50は、(A)〜(E)の条件が満たされた姿勢となる。なお、上記の操作の順序は、記載された順序に限らない。
次に、操縦者は、第1ブーム40の長手方向が走行体20の前後方向70に沿うように、旋回体31を旋回させる(図9(B))。つまり、操縦者は、旋回体31の旋回角度が0度となるように旋回体31を旋回させる。なお、(A)〜(E)の条件が満たされているため、このような旋回は規制されない。
次に、操縦者は、第2ブーム42がブームレスト26(図1)と当接してブームレスト26に支持された状態となるまで、第1ブーム40の対地角の角度が小さくなる方向へ、第1ブーム40を起伏させる(図9(C))。なお、(A)〜(E)の条件が満たされているため、このような起伏は規制されない。以上により、第1ブーム40、第2ブーム42、及び把持機構50が初期姿勢となる。
[本実施形態の作用効果]
本実施形態によれば、第2ブーム42及び把持機構50が所定の姿勢であるときに、制御部34が把持機構50の回転を規制する。これにより、把持機構50が走行体20と干渉する可能性を低くできる。
第2ブーム42の長手方向が水平方向又は垂直方向以外であるときに、第2ブーム42に設けられた把持機構50が回転すると、把持機構50が電柱11を把持している場合に、電柱11が走行体20と干渉する可能性が高い。本実施形態によれば、第2ブーム42の長手方向が水平方向又は垂直方向以外であるときに、把持機構50の回転が規制される。これにより、上記のような電柱11と走行体20との干渉の可能性を低くできる。
フック56が張出姿勢のときに把持機構50が回転した場合、フック56が走行体20と干渉するおそれがある。また、この場合に、フック56に荷が吊られていると、当該荷が走行体20と干渉するおそれがある。本実施形態によれば、フック56が張出姿勢のときに、把持機構50の回転が規制される。そのため、上記のようなフック56や荷と走行体20との干渉を防止できる。
本実施形態によれば、把持機構50の回転の規制の原因となっている第2ブーム及び把持機構の姿勢が報知されるため、軌陸車10の操縦者は、当該原因を迅速に知ることができる。これにより、操縦者は、当該原因を素早く解消して規制を解除させることで、把持機構50を迅速に回転させることができる。
通常、フック56は、下方へ突出した状態において、その突出先端部に荷を吊る。フック56が下方以外へ張り出した状態では、荷を吊ることができなかったり、吊った荷が落下したりというような問題が生じるおそれがある。本実施形態では、把持機構50の回転位置がフック56が下方へ突出するような回転位置でない状態でフック56が張出姿勢に姿勢変化したときに、その旨が報知される。これにより、軌陸車10の操縦者は、フック56が正常な状態で張り出していないことを迅速に知って、上記問題が生じないように対処することができる。
[変形例]
上記実施形態では、軌陸車10が走行用キャビン25及び操作用キャビン32の2つのキャビンを備える例が説明されたが、軌陸車10は、運転装置及び操作装置35の両方が設置された1つのキャビンを有するものであってもよい。