以下に、本発明の実施の形態に係る空気調和機制御装置および空気調和機制御方法を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る空気調和機制御システム10の構成例を示す図である。空気調和機制御システム10は、空調を行う空気調和機である空調ユニット8と、空調ユニット8を制御する空調コントローラ7と、空調ユニット8の空調制御管理機能を有する空気調和機制御装置9と、を備える。また、空気調和機制御システム10は、ユーザから現在の空調状態に対するユーザの評価である空調評価値を収集する評価収集端末5と、空調によるユーザの周囲の環境データおよびユーザの状態を監視するためのデータを収集する周囲センサデータ収集部6と、収集したデータを空気調和機制御装置9に送信し、空気調和機制御装置9で推定された空調評価推定値を評価収集端末5に送信する通信装置4と、を備える。
空気調和機制御装置9の構成について詳細に説明する。空気調和機制御装置9は、入出力サーバ1と、アプリケーションサーバ2と、データベースサーバ3と、を備える。入出力サーバ1は、通信装置4から送信されたデータをアプリケーションサーバ2の評価管理部21に転送し、アプリケーションサーバ2の評価管理部21から送信された空調評価推定値を通信装置4に転送する入出力部11を備える。
アプリケーションサーバ2は、空調状態に対するユーザの評価の特性を示す各ユーザの個人温冷感特性を算出する評価管理部21と、推定モデルと個人温冷感特性と周囲センサデータとを用いて、空調評価値が得られなかったユーザの空調評価推定値を推定する評価推定部22と、規定された時間経過後の居室空間の状態および規定された時間経過後の各ユーザの空調評価値を推定する将来状態推定部23と、収集した空調評価値、推定された空調評価推定値などを用いて空調ユニット8に対する空調制御内容すなわち空調設定を決定する空調制御管理部24と、を備える。なお、空気調和機制御装置9において空調評価値が得られたユーザを第一のユーザとし、空調評価値が得られなかったユーザを第二のユーザとする。
個人温冷感特性とは、ユーザの温冷感に影響を与えるが、周囲センサデータ収集部6では収集すなわち測定できない、ユーザごとに異なる温冷感に対する特性である。
周囲センサデータとは、ユーザの存在する居室空間の室温、湿度などの環境値に加えて、ユーザの活動量、仕事量などのユーザの内部状態、また、内部状態に影響を与える人口密度、居室空間の壁の色、天気の違いによる窓からの光の変化などの環境状態を表す各要素のデータである。周囲センサデータは、周囲センサデータ収集部6で収集されるデータである。図1の例では、周囲センサデータ収集部6と空調ユニット8とは異なる構成になっているが、空調ユニット8が周囲センサデータ収集部6を含む構成であってもよい。また、周囲センサデータ収集部6が複数のセンサによって構成されている場合、周囲センサデータ収集部6のうち一部のセンサを空調ユニット8が含む構成であってもよい。本実施の形態では、周囲センサデータとして、室温、湿度、およびユーザの活動量を示す心拍数の3つを用いる場合について説明する。
データベースサーバ3は、ユーザの空調に対する「暑い」「寒い」などの評価である空調評価値を格納する評価記憶部31と、周囲センサデータ収集部6で収集されたデータであって、空調評価値を収集した時のユーザの周囲の環境の状態を示す周囲センサデータを格納する周囲センサデータ記憶部32と、個人温冷感特性を格納する個人温冷感特性記憶部33と、を備える。
図2は、実施の形態1に係る空気調和機制御装置9の評価記憶部31に格納されているデータの例を示す図である。評価記憶部31は、ユーザによる空調評価値が得られた日時、およびその時の空調評価値で構成されるテーブルによって、ユーザごとに空調評価値を記憶する。評価記憶部31は、図2の例では、あるユーザについて、2016年10月18日16時におけるユーザの空調に対する評価である空調評価値は「暑い」、2016年10月18日17時におけるユーザの空調評価値は「やや涼しい」という内容でテーブルに格納、すなわち記憶している。図2では、空調評価値を「暑い」「やや涼しい」としているが、一例であり、その他の空調評価値には「暖かい」「やや暖かい」「快適」「涼しい」「寒い」などがある。
本実施の形態では、空調評価値の各温冷感を数値で表現することが可能である。例えば、暑い:+3、暖かい:+2、やや暖かい:+1、快適:0、やや涼しい:−1、涼しい:−2、寒い:−3とする。空調評価推定値、および後述する将来空調評価推定値も同様に、数値で表現することが可能である。なお、図2の例では、空調評価値を「暑い」「やや涼しい」などの温冷感としているが、「ジメジメしている」「カラっとしている」などの快適性に関わる評価値でもよいし、温冷感および快適性の複数の情報で構成されていてもよい。図2では図示していないが、テーブルの項目としてユーザを識別するためのユーザID(IDentification)の項目を設けてもよい。
図3は、実施の形態1に係る空気調和機制御装置9の周囲センサデータ記憶部32に格納されているデータの例を示す図である。周囲センサデータ記憶部32は、空調評価値が得られた日時、およびその時の周囲センサデータで構成されるテーブルによって、ユーザごとに周囲センサデータを記憶する。周囲センサデータ記憶部32は、図3の例では、あるユーザについて、2016年10月18日16時に空調評価値が得られた時の周囲センサデータとして、室温:26℃、湿度:68%、心拍数:73、継続滞在時間:1時間、というまとまりでテーブルに格納、すなわち記憶している。
図4は、実施の形態1に係る空気調和機制御装置9の個人温冷感特性記憶部33に格納されている第一のデータの例を示す図である。また、図5は、実施の形態1に係る空気調和機制御装置9の個人温冷感特性記憶部33に格納されている第二のデータの例を示す図である。個人温冷感特性記憶部33は、評価管理部21によって算出された個人温冷感特性を、ユーザID、および居住環境順応期間で構成されるテーブルと、ユーザID、および周囲センサデータから算出される重回帰モデルの各説明変数の係数で構成されるテーブルと、によってユーザごとに記憶する。個人温冷感特性は、図4のテーブルで示される第一のデータと、図5のテーブルで示される第二のデータと、から構成される。個人温冷感特性記憶部33は、図4の例では、ユーザIDが「1」のユーザについて、居住環境順応期間が1時間であった場合、ユーザIDおよび1時間の内容をテーブルに格納、すなわち記憶している。また、個人温冷感特性記憶部33は、図5の例では、ユーザIDが「1」のユーザについて、重回帰モデルの各説明変数の係数として、室温係数:0.67、湿度係数:0.22、心拍数係数:0.15、というまとまりでテーブルに格納、すなわち記憶している。
居住環境順応期間とは、ユーザが連続して居室空間に滞在しているときの空調評価値の変化の特性、すなわち継続滞在時間の個人温冷感特性への影響を示すものである。例えば、夏の時期、ユーザが外部から居室空間に移動してきた際、外部温度の方が高くユーザにとって室温が快適温である場合、室温の高低に関わらずユーザは空調の効いた居室空間の方が涼しいと感じる。一方で、空調の効いた居室空間の室温にユーザが順応するにつれて、ユーザの涼しいという温冷感は薄まる傾向にある。この居室空間の滞在時間による温冷感への影響度合はユーザごとに異なる。評価管理部21は、ユーザの在否を計測する赤外線センサなどの人感センサから得られるユーザの継続滞在時間などを用いて、個人温冷感特性を算出する。人感センサは、周囲センサデータ収集部6の1つであって、空調ユニット8に取り付けられたセンサである。
図6は、実施の形態1に係る空気調和機制御装置9の評価管理部21が継続滞在時間から居住環境順応期間を算出する中間過程のイメージを示す図である。評価管理部21は、あるユーザについて、連続して居室空間に滞在している期間すなわち同一滞在期間ごとに、空調評価値が「暑い」「やや暖かい」などの状態から「快適」になるまでの時間を算出し、各同一滞在期間において「快適」になるまでの時間を用いて、居住環境順応期間を算出する。同一滞在期間とは、ユーザが入室してから外部に移動するまでの期間である。図6の例では、同一滞在期間ごとに、各同一滞在期間を識別するためのIDを付与している。評価管理部21による個人温冷感特性の算出方法については後述する。
継続滞在時間とは、ユーザが居室空間に継続して在席している時間である。評価管理部21は、前述の人感センサによって得られたデータから、ユーザが居室空間に在席しているか否かを判定し、継続して在席している時間をカウントする。評価管理部21は、例えば、10分以上ユーザの不在状態が続いたときに継続滞在時間を0にし、ユーザが居室空間に再入場した時に継続滞在時間のカウントを再スタートする。なお、継続滞在時間を0にする判定時間については10分に限定するものではなく、居室空間ごとの特性に合わせて時間を変更してもよい。
つづいて、空気調和機制御装置9において、ユーザの空調評価値を用いて空調制御を行う動作について説明する。図7は、実施の形態1に係る空気調和機制御装置9の空調制御動作を示すフローチャートである。
まず、評価管理部21は、通信装置4および入出力部11を介して評価収集端末5から、現在の空調状態に対するユーザの空調評価値を取得、すなわち収集し、収集した空調評価値を評価記憶部31に格納する(ステップS1)。また、評価管理部21は、通信装置4および入出力部11を介して周囲センサデータ収集部6から、空調評価値を収集した時のユーザ周辺の周囲センサデータを取得、すなわち収集し、収集した周囲センサデータを周囲センサデータ記憶部32に格納する(ステップS2)。
評価管理部21は、全てのユーザから空調評価値を収集できたか否かを確認する(ステップS3)。ここで、評価管理部21は、前提として、空調評価値を収集する対象のユーザを予め登録しておくこととする。すなわち、評価管理部21は、登録された全てのユーザから空調評価値を収集できたか否かを確認する。評価管理部21は、例えば、ユーザの空調評価値の収集の有無の判定では、空調評価値を収集した段階でそのユーザのフラグを立て、規定された時間が経過した時点でフラグが立っていないユーザを、空調評価値が収集できていないユーザとみなす。評価管理部21は、規定された期間が終了した時点で全てのユーザのフラグを下ろし、以降、同様の処理を繰り返すことで空調評価値の収集の有無を判定する。なお、評価管理部21は、定期的に規定された時間ごとに空調評価値の収集の有無を判定してもよいし、最初にあるユーザから空調評価値を収集してから規定された時間経過した段階で空調評価値の収集の有無を判定してもよい。
空調評価値を収集できていないユーザがいる場合(ステップS3:No)、評価管理部21は、空調評価値を収集できていないユーザが在席しているか否かを確認する(ステップS4)。評価管理部21は、例えば、対象のユーザの周囲センサデータを周囲センサデータ記憶部32から取得し、人感センサによって得られたユーザ情報を用いて居室空間にユーザが在席しているか否かを判定する。
空調評価値を収集できていないユーザのうち在席しているユーザがいる場合(ステップS4:Yes)、評価推定部22は、在席しているユーザについての現在の空調状態に対する評価である空調評価推定値を推定する(ステップS5)。評価管理部21は、空調評価値推定対象のユーザについて、評価記憶部31に格納されている過去の空調評価値、および、周囲センサデータ記憶部32に格納されている過去の空調評価値を収集した時のユーザの周囲センサデータを用いて、空調評価値を推定するための推定モデルとして重回帰モデルを生成する。評価管理部21は、生成した重回帰モデル、個人温冷感特性記憶部33に格納されている空調評価値推定対象のユーザの個人温冷感特性、および空調評価値推定対象のユーザの継続滞在時間を含む現在の周囲センサデータを評価推定部22に受け渡す。そして、評価推定部22は、空調評価値推定対象のユーザについて、取得した重回帰モデル、個人温冷感特性、および現在の周囲センサデータを用いて、空調評価値を推定する。評価推定部22は、空調評価値推定対象のユーザについて推定した空調評価推定値を評価管理部21に受け渡す。評価推定部22の空調評価値を推定する処理の詳細については後述する。
ステップS3:Yesの場合、ステップS4:Noの場合、またはステップS5の処理の後、将来状態推定部23は、将来の居室空間の状態および各ユーザの空調評価値、すなわち将来居室空間状態および将来空調評価値を推定する(ステップS6)。評価管理部21は、ユーザから取得した空調評価値、評価推定部22で推定された空調評価推定値、個人温冷感特性記憶部33に格納されているユーザの個人温冷感特性、および周囲センサデータ記憶部32に格納されている周囲センサデータを将来状態推定部23に受け渡す。将来状態推定部23は、過去の周囲センサデータを用いて、規定された時間経過後、例えば1時間後の居室空間の状態である将来居室空間状態を推定する。居室空間の状態は、ここでは、周囲センサデータ記憶部32に格納されている周囲センサデータで示される室温、湿度、および心拍数とする。また、将来状態推定部23は、各ユーザの空調評価値、空調評価推定値、および個人温冷感特性を用いて、規定された期間経過後、例えば1時間後の各ユーザの空調評価値である将来空調評価値を推定する。将来状態推定部23は、複数の将来居室空間状態を推定し、将来居室空間状態ごとに各ユーザの将来空調評価値を推定してもよい。将来状態推定部23は、推定した将来居室空間状態および各ユーザの将来空調評価値を評価管理部21に受け渡す。なお、ユーザから収集された空調評価値、評価推定部22で推定された空調評価推定値、および将来状態推定部23で推定された将来空調評価値をまとめて、空調評価値と称することがある。
評価管理部21は、ユーザから取得した現在の空調評価値、評価推定部22で推定された現在の空調評価推定値、将来状態推定部23で推定された将来空調評価値、および将来状態推定部23で推定された将来居室空間状態を空調制御管理部24に受け渡す。空調制御管理部24は、評価管理部21から取得した情報、および空調ユニット8から取得した現在の空調制御状態を示すユニットデータを用いて、空調ユニット8に対する空調制御内容、すなわち空調設定を決定する(ステップS7)。空調制御管理部24の空調設定を決定する処理の詳細については後述する。
空調制御管理部24は、決定した空調設定を空調制御命令に含めて空調コントローラ7に送信する(ステップS8)。空調コントローラ7は、空調制御命令を空調ユニット8に送信し、空調ユニット8を制御する(ステップS9)。空調ユニット8は、空調制御命令に含まれる空調設定に従って制御運転を行う。なお、空調ユニット8および空調コントローラ7はそれぞれ1台以上で構成されてもよいし、1つの空調コントローラ7が複数台の空調ユニット8を制御する構成であってもよい。空調コントローラ7については、壁に設置されたタイプでもよいし、持ち運び可能なタイプであってもよい。
評価管理部21は、評価推定部22で推定された空調評価推定値が正しいか否か、すなわち空調評価推定値がユーザによって適切と判定されたか否かを判定する。評価管理部21は、判定結果に応じて評価記憶部31に格納されている空調評価値および周囲センサデータ記憶部32に格納されている周囲センサデータを管理するフィードバック処理を行う(ステップS10)。評価管理部21のフィードバック処理の詳細については後述する。
また、評価管理部21は、ステップS10でのフィードバック処理の結果をふまえて、評価記憶部31に格納されている空調評価値および周囲センサデータ記憶部32に格納されている周囲センサデータを用いて、個人温冷感特性を算出する(ステップS11)。評価管理部21の個人温冷感特性を算出する処理の詳細については後述する。
つぎに、評価推定部22による空調評価値を推定する処理の詳細について説明する。図8は、実施の形態1に係る空気調和機制御装置9の評価推定部22の空調評価値を推定する処理を示すフローチャートである。
評価推定部22は、評価管理部21から、空調評価値推定対象のユーザの情報、具体的には、重回帰モデル、空調評価値推定対象のユーザの個人温冷感特性、および空調評価値推定対象のユーザの継続滞在時間を含む現在の周囲センサデータを取得する(ステップS21)。評価推定部22は、現在の周囲センサデータを重回帰モデルに代入し、空調評価推定値を推定する(ステップS22)。評価推定部22は、個人温冷感特性の居住環境順応期間、および継続滞在時間を用いて、居住環境順応期間よりも継続滞在時間が短いユーザについて、継続滞在時間に基づいて空調評価推定値を補正する(ステップS23)。評価推定部22は、例えば、室温よりも外部の温度の方が高い場合、居住環境順応期間が1時間のユーザについて、継続滞在時間が30分のときは通常時の温冷感よりも暑く感じると判断し、空調評価推定値を「暑い」側にシフトする。評価推定部22は、補正後の空調評価推定値を評価管理部21に受け渡す。
つぎに、空調制御管理部24による空調設定を決定する処理の詳細について説明する。図9は、実施の形態1に係る空気調和機制御装置9の空調制御管理部24の空調設定を決定する処理を示すフローチャートである。
空調制御管理部24は、評価管理部21から、空調評価値および居室空間の状態、具体的には、全ユーザの現在の空調評価値または空調評価推定値、全ユーザの将来空調評価値、および将来居室空間状態を取得する(ステップS31)。また、空調制御管理部24は、空調ユニット8から、ユニットデータを取得する(ステップS32)。空調制御管理部24は、空調評価値、居室空間の状態、およびユニットデータを用いて、1時間後の全ユーザの将来空調評価値を表す数値の絶対値が最小となる空調制御内容すなわち空調設定を決定する(ステップS33)。ここで、空調評価値は、前述のように数値で表すことができる。将来空調評価値を表す数値の絶対値が最小となる場合とは、将来空調評価値を表す数値が「0」すなわち「快適」のときである。
空調制御管理部24は、空調設定の選択方法について、例えば、将来居室空間状態をふまえて、ユーザの空調に対する不快度数が規定された値を超えない範囲で、空調ユニット8の発停数が最小となる制御を選択する。空調制御管理部24は、将来空調評価値を数値で表したときの数値の総和、現在から規定された時間までの空調ユニット8の消費電力、のうち少なくとも1つを用いて空調ユニット8の空調制御内容を決定する。規定された時間は、空調制御管理部24が前述の総和を用いて空調制御内容を決定した場合に、空調制御内容が居室空間に反映されるまでの時間である。
つぎに、評価管理部21によるフィードバック処理の詳細について説明する。図10は、実施の形態1に係る空気調和機制御装置9の評価管理部21のフィードバック処理を示すフローチャートである。
評価管理部21は、空調評価値を推定したユーザに対して、空調評価推定値を、入出力部11および通信装置4を介して、評価収集端末5に送信する(ステップS41)。評価収集端末5は、受信した空調評価推定値に基づいて、空気調和機制御装置9で推定された空調評価推定値および推定日時の情報をリストで表示する。ユーザは、評価収集端末5に表示された空調評価推定値を確認し、空調評価推定値の正誤を判定する。評価収集端末5は、ユーザから受け付けた空調評価推定値に対する正誤評価を推定日時の情報とともに、通信装置4および入出力部11を介して、評価管理部21に送信する。正誤評価は、例えば、「正しい」「間違い」の2つから選択可能な形式とする。
評価管理部21は、ユーザから空調評価推定値に対する正誤評価を取得したか否かを判定する(ステップS42)。評価管理部21は、例えば、空調評価推定値を送信してから規定された期間内に正誤評価を取得できたか否かによって判定を行う。評価管理部21は、ユーザから正誤評価を取得できなかった場合(ステップS42:No)、空調評価推定値に対して、空調評価推定値が正しかったものとして扱うか否かを判定するためのバッファフラグを付与する(ステップS43)。評価管理部21は、ユーザから収集できた空調評価値と同様、空調評価推定値を評価記憶部31に格納して管理しているものとする。評価管理部21は、空調評価値および空調評価推定値をリストで管理している場合、空調評価推定値に対応するリストを別に設けてバッファフラグを付与することで、バッファ状態か否かを判定する。別に設けたリストは、評価収集端末5に表示されるリストと同様であってもよい。評価管理部21は、空調評価値および空調評価推定値に対応する周囲センサデータであって、周囲センサデータ記憶部32に格納されている周囲センサデータについても同様、リストで管理しているものとする。
評価管理部21は、ユーザから正誤評価を取得した場合(ステップS42:Yes)、空調評価推定値が正しかったか否かを確認する(ステップS44)。空調評価推定値が誤りであった場合(ステップS44:No)、評価管理部21は、誤っていると判定された空調評価推定値を評価記憶部31から削除し、空調評価推定値が推定された際に使用された周囲センサデータを周囲センサデータ記憶部32から削除する(ステップS45)。評価管理部21は、例えば、評価収集端末5から誤っていると判定された空調評価推定値のリスト番号を取得した場合、評価記憶部31から対応するリスト番号の空調評価推定値を削除し、周囲センサデータ記憶部32から対応するリスト番号の周囲センサデータを削除する。
空調評価推定値が正しい場合(ステップS44:Yes)、評価管理部21は、評価記憶部31および周囲センサデータ記憶部32に格納されているデータについて、規定されたバッファ期間経過したデータが存在するか否か判定する(ステップS46)。評価管理部21は、例えば、データにバッファフラグを付与してからカウントを開始し、3時間経過しているものがある場合、バッファ期間経過したデータが存在すると判定する。評価管理部21は、バッファ期間経過したデータが存在しない場合(ステップS46:No)、処理を終了する。評価管理部21は、バッファ期間経過したデータが存在する場合(ステップS46:Yes)、バッファ期間経過した空調評価推定値を評価記憶部31から削除し、空調評価推定値が推定された際に使用された周囲センサデータを周囲センサデータ記憶部32から削除する(ステップS47)。
つぎに、評価管理部21による個人温冷感特性を算出する処理の詳細について説明する。図11は、実施の形態1に係る空気調和機制御装置9の評価管理部21の個人温冷感特性を算出する処理を示すフローチャートである。
評価管理部21は、日付ごとに、評価記憶部31から空調評価値を取得し、周囲センサデータ記憶部32から継続滞在時間を含む周囲センサデータを取得し、取得した各データを同一滞在期間ごとに分割する(ステップS51)。評価管理部21は、例えば、継続滞在時間が増加している期間を同一滞在期間とする。図6はこのときのイメージを示すものである。
評価管理部21は、各同一滞在期間について回帰曲線、具体的に2次の多項式近似式を算出する(ステップS52)。評価管理部21は、2次の多項式近似式を「Y0=A0*X0(A0:a1,a2,b、X0:x1,x2)」とし、実際の空調評価値をYとし、実際の空調評価値Yと多項式近似式による空調評価推定値Y0との距離をL0としたとき、「L0=Y0−Y」の2乗が最小となる係数A0を算出する。
評価管理部21は、全ての同一滞在期間について、回帰曲線すなわち2次の多項式近似式を用いて最初の極値までの期間を算出し、全ての同一滞在期間で算出した極値までの期間の平均を取り、算出した平均値を居住環境順応期間とする(ステップS53)。
評価管理部21は、全てのユーザの居住環境順応期間を算出し、算出した居住環境順応期間を個人温冷感特性記憶部33に格納する(ステップS54)。
評価管理部21は、評価記憶部31から過去の空調評価値を取得し、周囲センサデータ記憶部32から過去の周囲センサデータを取得し、周囲センサデータである室温、湿度、心拍数を説明変数とし、空調評価値を目的変数とする重回帰モデルを生成し、生成した重回帰モデルを個人温冷感特性記憶部33に格納する(ステップS55)。評価管理部21は、重回帰モデルの生成において、空調評価値の重回帰式を「Y1=A1*X1(A1:a1,a2,a3、X1:x1,x2,x3)」とし、実際の空調評価値をYとし、実際の空調評価値Yと重回帰による空調評価推定値Y1との距離をL1としたとき、「L1=Y1−Y」の2乗が最小となる係数A1を算出する。
ここで、空気調和機制御装置9のハードウェア構成について説明する。入出力サーバ1はインタフェース回路である。データベースサーバ3はメモリである。アプリケーションサーバ2は処理回路により実現される。処理回路は、専用のハードウェアであってもよいし、メモリに格納されるプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)およびメモリであってもよい。
処理回路が専用のハードウェアである場合、処理回路は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、またはこれらを組み合わせたものが該当する。
処理回路がCPUおよびメモリで構成される場合、アプリケーションサーバ2の各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェアまたはファームウェアはプログラムとして記述され、メモリに格納される。処理回路では、メモリに記憶されたプログラムをCPUが読み出して実行することにより、各機能を実現する。ここで、CPUは、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサ、またはDSP(Digital Signal Processor)などであってもよい。また、メモリは、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(登録商標)(Electrically EPROM)などの、不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、またはDVD(Digital Versatile Disc)などが該当する。
空気調和機制御装置9の各機能について、一部を専用のハードウェアで実現し、一部をソフトウェアまたはファームウェアで実現するようにしてもよい。このように、処理回路は、専用のハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの組み合わせによって、上述の各機能を実現することができる。空気調和機制御装置9は、実際には計算機であり、1つの計算機で構成されてもよいし、複数の計算機で構成されてもよい。
以上説明したように、本実施の形態によれば、空気調和機制御装置9は、居室空間に在席しているが空調評価値を収集できなかったユーザについて、過去に収集した空調評価値などを用いて、現在の空調評価値を推定することとした。これにより、空気調和機制御装置9は、全てのユーザの空調評価値に基づいて空調ユニット8の空調設定を決定でき、居室空間全体において、ユーザの快適性を向上することができる。
また、空気調和機制御装置9は、取得にコストがかかる気流、着衣量などのデータを利用することなく、ユーザの空調評価値を推定することができる。
また、空気調和機制御装置9は、同一環境条件となる空調運転におけるユーザごとの空調評価値の差異と、同一環境条件の定義に用いないデータ群との関係性を算出して、同一環境条件の定義に用いるデータからでは推定できない個人温冷感特性を修正し、ユーザの正確な温冷感の情報に基づいて、省エネ性およびユーザの快適性を考慮しつつ、最適な空調設定を実現することができる。
なお、空気調和機制御装置9において、空調制御管理部24は、空調設定の決定に用いる目的関数として、規定された時間経過後までの空調ユニット8の消費電力の総和と、規定された時間経過後での最も大きい空調評価値と空調設定との差と、を用いてもよい。これにより、空気調和機制御装置9は、居室環境の時間的変化を空調制御に考慮することができ、無駄な運転制御によるロスを防ぎ、空調ユニット8の消費電力を削減することができる。
例えば、空調制御管理部24において、現在の空調制御を続けたときに、規定された快適性を下回らない場合は現在の空調制御を継続し、規定された快適性を下回る場合は規定された快適性を満たすように空調制御内容を修正する制御を第一の制御とし、将来空調評価値に追従する制御を第二の制御とする。また、空調制御管理部24において、第一の制御を続けたときの空調ユニット8の消費電力を基準としたときにおける第二の制御を続けたときの空調ユニット8の消費電力の増加率を第一の増加率とし、第一の制御を続けたときの空調評価値を基準としたときにおける第二の制御を続けたときの空調評価値の増加率を第二の増加率とする。空調制御管理部24は、第一の増加率に対して第二の増加率が規定された第一の値より大きい場合、または、第一の制御を続けたときの空調ユニット8の消費電力と第二制御を続けたときの空調ユニット8の消費電力との差が規定された第二の値よりも小さい場合、第二の制御を選択する。
また、空気調和機制御装置9は、空調評価値の推定モデルとして回帰モデルを用いたが、他の一般的統計手法を適用してもよい。空気調和機制御装置9は、例えば、室温、湿度、心拍数を特徴量とするマージン最大化超平面を算出し、空調評価値が収集できなかったユーザの周囲センサデータを入力することによる空調評価値の推定、収集した過去の周囲センサデータに現在の周囲センサデータを取り込み、個体間の類似度に応じたクラス分類により空調評価値を推定してもよい。
また、空気調和機制御装置9は、ユーザが在席しているか否かを判定する方法として、スケジュール管理システムを用いてもよいし、GPS(Global Positioning System)、ビーコンなどから得られる位置情報を用いてもよい。
また、空気調和機制御装置9は、空調評価値の推定方法として、回帰モデルに限定せず、時系列推定、パターン分類などのような一般的学習手法を用いてもよい。
また、空気調和機制御装置9は、実際の空調評価値と重回帰による空調評価推定値との距離をノルムの2乗で算出したが、ユークリッド距離などの一般的に用いられる別の距離を利用してもよい。
空調コントローラ7は、空調ユニット8に含まれる室内機に搭載されていてもよく、移動型などの形態を問わない。また、空調コントローラ7は、一般的に利用されるリモコンの他、集中リモコンでもよく、複数台あってもよい。
実施の形態2.
実施の形態2では、個人温冷感特性として、ユーザの冷温感の変動時間帯の情報を用いる。実施の形態1と異なる部分について説明する。
図12は、実施の形態2に係る空気調和機制御システム10aの構成例を示す図である。空気調和機制御システム10aは、実施の形態1の空気調和機制御システム10に対して、空気調和機制御装置9を空気調和機制御装置9aに置き換えたものである。空気調和機制御装置9aは、実施の形態1のアプリケーションサーバ2およびデータベースサーバ3を、アプリケーションサーバ2aおよびデータベースサーバ3aに置き換えたものである。アプリケーションサーバ2aは、実施の形態1の評価管理部21および評価推定部22を、評価管理部21aおよび評価推定部22aに置き換えたものである。データベースサーバ3aは、実施の形態1のデータベースサーバ3の周囲センサデータ記憶部32および個人温冷感特性記憶部33を、周囲センサデータ記憶部32aおよび個人温冷感特性記憶部33aに置き換えたものである。
評価管理部21aは、計測時間帯に基づいて個人温冷感特性を算出する。評価推定部22aは、推定モデルと計測時間帯に基づく個人温冷感特性と周囲センサデータとを用いて、空調評価値が得られなかったユーザの空調評価値を推定する。
周囲センサデータ記憶部32aは、実施の形態1の周囲センサデータ記憶部32が格納していた周囲センサデータに対して、継続滞在時間のデータに替えて計測時間帯のデータを格納している。個人温冷感特性記憶部33aは、実施の形態1の個人温冷感特性記憶部33が格納していた個人温冷感特性に対して、第一のデータとして居住環境順応期間のデータに替えて温冷感変動時間帯のデータを格納している。
図13は、実施の形態2に係る空気調和機制御装置9aの周囲センサデータ記憶部32aに格納されているデータの例を示す図である。周囲センサデータ記憶部32aは、空調評価値が得られた日時、およびその時の周囲センサデータで構成されるテーブルによって、ユーザごとに周囲センサデータを記憶する。周囲センサデータ記憶部32aは、図13の例では、あるユーザについて、2016年10月18日16時に空調評価値が得られた時の周囲センサデータとして、室温:26℃、湿度:68%、心拍数:73、計測時間帯:16時、というまとまりでテーブルに格納している。
図14は、実施の形態2に係る空気調和機制御装置9aの個人温冷感特性記憶部33aに格納されている第一のデータの例を示す図である。なお、個人温冷感特性記憶部33aに格納されている第二のデータは、図5に示す実施の形態1と同様である。個人温冷感特性記憶部33aは、評価管理部21aによって算出された個人温冷感特性を、ユーザID、および温冷感変動時間帯で構成されるテーブルと、ユーザID、および周囲センサデータから算出される重回帰モデルの各説明変数の係数で構成されるテーブルと、によってユーザごとに個人温冷感特性を記憶する。個人温冷感特性記憶部33aは、第一のデータとして、例えば、あるユーザの温冷感が変化する時間帯を示す温冷感変動時間帯が11時から12時であった場合、ユーザIDとともに11時から12時の内容をテーブルに格納している。
つづいて、空気調和機制御装置9aにおいて、ユーザの空調評価値を用いて空調制御を行う動作について説明する。図15は、実施の形態2に係る空気調和機制御装置9aの空調制御動作を示すフローチャートである。図15に示すフローチャートは図7に示す実施の形態1のフローチャートと同様であるが、ステップS5aおよびステップS11aの内容が、図7のフローチャートのステップS5およびステップS11と異なる。
評価管理部21aは、生成した重回帰モデル、個人温冷感特性記憶部33aに格納されている空調評価値推定対象のユーザの個人温冷感特性、および空調評価値推定対象のユーザの計測時間帯を含む現在の周囲センサデータを評価推定部22aに受け渡す。そして、評価推定部22aは、空調評価値推定対象のユーザについて、取得した重回帰モデル、個人温冷感特性、および計測時間帯を含む現在の周囲センサデータを用いて、在席しているユーザについての空調評価推定値を推定する(ステップS5a)。
評価管理部21aは、ステップS10でのフィードバック処理の結果をふまえて、評価記憶部31に格納されている空調評価値および周囲センサデータ記憶部32aに格納されている計測時間帯を含む周囲センサデータを用いて、計測時間帯に基づく個人温冷感特性を算出する(ステップS11a)。
つぎに、評価推定部22aによる空調評価値を推定する処理の詳細について説明する。図16は、実施の形態2に係る空気調和機制御装置9aの評価推定部22aの空調評価値を推定する処理を示すフローチャートである。
評価推定部22aは、評価管理部21aから、空調評価値推定対象のユーザの情報、具体的には、重回帰モデル、空調評価値推定対象のユーザの個人温冷感特性、および空調評価値推定対象のユーザの計測時間帯を含む現在の周囲センサデータを取得する(ステップS61)。評価推定部22aは、現在の周囲センサデータを重回帰モデルに代入し、空調評価推定値を推定する(ステップS62)。評価推定部22aは、温冷感変動時間帯を含む個人温冷感特性および現在の周囲センサデータを取得した計測時間帯を用いて、計測時間帯におけるユーザの温冷感の変化特性に基づいて、空調評価推定値を補正する(ステップS63)。評価推定部22aは、例えば、室温よりも外部の温度の方が高く、計測時間帯が9時から10時の間である場合、9時から10時が温冷感変動時間帯のユーザに対して、全時間帯の平均温冷感と9時から10時の平均温冷感との差分をシフトする。評価推定部22aは、補正後の空調評価推定値を評価管理部21aに受け渡す。
つぎに、評価管理部21aによる個人温冷感特性を算出する処理の詳細について説明する。図17は、実施の形態2に係る空気調和機制御装置9aの評価管理部21aの個人温冷感特性を算出する処理を示すフローチャートである。
評価管理部21aは、評価記憶部31から過去の空調評価値を取得し、周囲センサデータ記憶部32aから過去の周囲センサデータを取得し、周囲センサデータである室温、湿度、心拍数を説明変数とし、空調評価値を目的変数とする重回帰モデルを生成し、生成した重回帰モデルを個人温冷感特性記憶部33aに格納する(ステップS71)。評価管理部21aにおけるステップS71の処理は、評価管理部21における実施の形態1の図11のフローチャートにおけるステップS55の処理と同様である。
評価管理部21aは、評価記憶部31から過去の空調評価値を取得し、周囲センサデータ記憶部32aから過去の周囲センサデータを取得し、全時間帯における平均温冷感、および時間帯別の平均温冷感を算出する(ステップS72)。時間帯別の平均温冷感とは、例えば、9時〜10時、10時〜11時のように1時間の範囲での平均温冷感である。
評価管理部21aは、全時間帯における平均温冷感と時間帯別の平均温冷感との差が閾値以上離れている場合、時間帯別の平均温冷感に対応するその時間帯を温冷感変動時間帯として抽出し、個人温冷感特性記憶部33aに格納する(ステップS73)。前述のように温冷感は+3〜−3の範囲の数値で表すことができるため、例えば、閾値を「1」とする。評価管理部21aは、例えば、全時間帯の平均温冷感が1であるユーザの11時から12時の平均温冷感が3である場合、11時から12時の時間帯をユーザの温冷感変動時間帯として個人温冷感特性記憶部33aに格納する。
なお、空気調和機制御装置9aのハードウェア構成は、実施の形態1の空気調和機制御装置9のハードウェア構成と同様である。
以上説明したように、本実施の形態によれば、空気調和機制御装置9aは、居室空間に在席しているが空調評価値を収集できなかったユーザについて現在の空調評価値を推定する場合、通勤後、集中力の揺らぎなどによるユーザごとの温冷感変動特性によって空調評価推定値を補正することとした。これにより、空気調和機制御装置9aは、ユーザごとの温冷感の差異を考慮して空調ユニット8の空調設定を決定でき、居室空間全体において、ユーザの快適性を向上することができる。
実施の形態3.
実施の形態3では、個人温冷感特性として、ユーザが空調評価値の回答をしたことがある時間帯である推定可能領域の変動時間帯の情報を用いる。実施の形態1と異なる部分について説明する。
図18は、実施の形態3に係る空気調和機制御システム10bの構成例を示す図である。空気調和機制御システム10bは、実施の形態1の空気調和機制御システム10に対して、空気調和機制御装置9を空気調和機制御装置9bに置き換えたものである。空気調和機制御装置9bは、実施の形態1のアプリケーションサーバ2およびデータベースサーバ3を、アプリケーションサーバ2bおよびデータベースサーバ3bに置き換えたものである。アプリケーションサーバ2bは、実施の形態1の評価管理部21および評価推定部22を、評価管理部21bおよび評価推定部22bに置き換えたものである。データベースサーバ3bは、実施の形態1のデータベースサーバ3の周囲センサデータ記憶部32および個人温冷感特性記憶部33を、周囲センサデータ記憶部32bおよび個人温冷感特性記憶部33bに置き換えたものである。
評価管理部21bは、計測時間帯に基づいて個人温冷感特性を算出する。評価推定部22bは、推定モデルと計測時間帯に基づく個人温冷感特性と周囲センサデータとを用いて、空調評価値が得られなかったユーザの空調評価値を推定する。
周囲センサデータ記憶部32bは、実施の形態2の周囲センサデータ記憶部32aが格納している周囲センサデータと同様の周囲センサデータを格納している。
図19は、実施の形態3に係る空気調和機制御装置9bの個人温冷感特性記憶部33bに格納されている第一のデータの例を示す図である。なお、個人温冷感特性記憶部33bに格納されている第二のデータは、図5に示す実施の形態1と同様である。個人温冷感特性記憶部33bは、評価管理部21bによって算出された個人温冷感特性を、ユーザID、および推定可能領域で構成されるテーブルと、ユーザID、および周囲センサデータから算出される重回帰モデルの各説明変数の係数で構成されるテーブルと、によってユーザごとに個人温冷感特性を記憶する。個人温冷感特性記憶部33bは、第一のデータとして、例えば、あるユーザの推定可能領域が11時から17時であった場合、ユーザIDとともに11時から17時の内容をテーブルに格納している。
つづいて、空気調和機制御装置9bにおいて、ユーザの空調評価値を用いて空調制御を行う動作について説明する。図20は、実施の形態3に係る空気調和機制御装置9bの空調制御動作を示すフローチャートである。図20に示すフローチャートは図7に示す実施の形態1のフローチャートと同様であるが、ステップS5bおよびステップS11bの内容が、図7のフローチャートのステップS5およびステップS11と異なる。
評価管理部21bは、生成した重回帰モデル、個人温冷感特性記憶部33bに格納されている空調評価値推定対象のユーザの個人温冷感特性、および空調評価値推定対象のユーザの計測時間帯を含む現在の周囲センサデータを評価推定部22bに受け渡す。そして、評価推定部22bは、空調評価値推定対象のユーザについて、取得した重回帰モデル、個人温冷感特性、および計測時間帯を含む現在の周囲センサデータを用いて、周囲センサデータの計測時間帯が推定可能領域内か否かを判定し、在席しているユーザについての空調評価推定値を推定する(ステップS5b)。評価管理部21bは、空調評価値推定対象のユーザについて、過去に空調評価値を取得した時間帯から、空調評価推定値を推定可能な時間帯を示す推定可能領域を抽出、すなわち推定する。
評価管理部21bは、ステップS10でのフィードバック処理の結果をふまえて、評価記憶部31に格納されている空調評価値および周囲センサデータ記憶部32bに格納されている計測時間帯を含む周囲センサデータを用いて、推定可能領域を含む個人温冷感特性を算出する(ステップS11b)。
つぎに、評価推定部22bによる空調評価値を推定する処理の詳細について説明する。図21は、実施の形態3に係る空気調和機制御装置9bの評価推定部22bの空調評価値を推定する処理を示すフローチャートである。
評価推定部22bは、評価管理部21bから、空調評価値推定対象のユーザの情報、具体的には、重回帰モデル、空調評価値推定対象のユーザの推定可能領域を含む個人温冷感特性、および空調評価値推定対象のユーザの計測時間帯を含む現在の周囲センサデータを取得する(ステップS81)。評価推定部22bは、空調評価値推定対象のユーザの現在の周囲センサデータを取得した時間帯、すなわち計測時間帯が推定可能領域内か否かを判定する(ステップS82)。現在の周囲センサデータの計測時間帯が推定可能領域内の場合(ステップS82:Yes)、評価推定部22bは、現在の周囲センサデータを重回帰モデルに代入し、空調評価推定値を推定する(ステップS83)。現在の周囲センサデータの計測時間帯が推定可能領域外の場合(ステップS82:No)、評価推定部22bは、空調評価推定値を規定された空調評価値、例えば「快適」と推定する(ステップS84)。評価推定部22bは、空調評価推定値を評価管理部21bに受け渡す。
つぎに、評価管理部21bによる個人温冷感特性を算出する処理の詳細について説明する。図22は、実施の形態3に係る空気調和機制御装置9bの評価管理部21bの個人温冷感特性を算出する処理を示すフローチャートである。
評価管理部21bは、評価記憶部31から過去の空調評価値を取得し、周囲センサデータ記憶部32bから過去の周囲センサデータを取得し、周囲センサデータである室温、湿度、心拍数を説明変数とし、空調評価値を目的変数とする重回帰モデルを生成し、生成した重回帰モデルを個人温冷感特性記憶部33bに格納する(ステップS91)。評価管理部21bにおけるステップS91の処理は、評価管理部21における実施の形態1の図11のフローチャートにおけるステップS55の処理と同様である。
評価管理部21bは、評価記憶部31から過去の空調評価値を取得し、空調評価値が1回以上出現する推定可能領域を抽出し、個人温冷感特性記憶部33bに格納する(ステップS92)。具体的に、評価管理部21bは、空調評価値を1回以上取得した時間帯を抽出し、抽出した時間帯を推定可能領域とする。評価管理部21bは、空調評価値を取得した際の間隔が予め設定された時間の範囲内、例えば30分以内であれば、空調評価値を取得した時間帯が連続していると判定してもよい。評価管理部21bは、空調評価値を1回以上取得した時間帯として、推定された空調評価推定値がユーザによって正しいすなわち適切と判定された場合に空調評価推定値が推定されたときの時間帯を含めてもよい。
なお、空気調和機制御装置9bのハードウェア構成は、実施の形態1の空気調和機制御装置9のハードウェア構成と同様である。
以上説明したように、本実施の形態によれば、空気調和機制御装置9bは、居室空間に在席しているが空調評価値を収集できなかったユーザについて現在の空調評価値を推定する場合、過去に空調評価値を取得した時間帯である推定可能領域において、空調評価値を推定することとした。これにより、空気調和機制御装置9bは、空調評価値の推定精度を向上でき、ユーザごとの温冷感の差異を考慮して空調ユニット8の空調設定を決定でき、居室空間全体において、ユーザの快適性を向上することができる。
本発明による空気調和機制御装置9〜9bは、過去の空調評価値の傾向と、温冷感に影響を与えるが周囲センサデータ収集部6では収集することのできない個人温冷感特性による差異量を算出し、居室空間においてユーザから十分な空調評価値が得られない場合でも、居室空間全体の評価に基づいて空調設定を算出することができる。これにより、空気調和機制御装置9〜9bは、ユーザ全体の快適性を向上し、無駄な空調負荷の増大を防ぐことができる。また、空気調和機制御装置9〜9bは、ユーザの快適性を保った状態で省エネ制御を行うことができ、消費電力を低減することができる。
以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。