JP2018154885A - 鋼材の減圧浸炭浸窒処理方法 - Google Patents

鋼材の減圧浸炭浸窒処理方法 Download PDF

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【課題】減圧浸炭処理と浸窒処理を連続して行う場合であって、かつ、少なくとも浸窒処理を行う熱処理炉として量産炉を用いる場合の最適条件を備えた減圧浸炭浸窒処理方法を提供すること。【解決手段】0.18〜2.00質量%のCrを含有する鋼材に対して、減圧浸炭処理と浸窒処理とを連続して行い、少なくとも浸窒処理を行う熱処理炉として量産炉を用いる。浸窒処理は、900℃〜970℃の処理温度T(℃)の範囲内であって、雰囲気圧力P(Pa)が、PH1とPH2のうち低い値からなる上限PH(Pa)と、PL1とPL2のうちの低い値からなる下限PL(Pa)の範囲内の条件で行う。PH1=100000、PH2=−40500×[Cr]+205×T−30000、PL1=72000、PL2=(−65.1×T+51000)×[Cr]+T×464−356150【選択図】図1

Description

本発明は、鋼材の減圧浸炭浸窒処理方法に関する。
鋼部品の表面を浸炭処理により改質した浸炭鋼部品が広く用いられている。近年の鋼部品を用いた製品の軽量化及び小型化の要求から、鋼部品に付与される面圧が増大すると共に、回転部品として用いられる場合の回転数が増加する傾向にあり、従来以上に鋼部品に求められる耐久性が高くなってきている。
このような耐久性の高い浸炭鋼部品には、Ni、Mo、Cr等が添加された合金鋼を母材として使用し、熱軟化抵抗性を高めることが有効である。しかし、これらの合金鋼を浸炭用の母材として用いることは、添加する合金元素が高価なことによるコスト増の問題と、母材強度の必要以上の向上によって加工性が悪化するという問題が生じる場合がある。
一方、母材となる鋼への合金元素の添加を少なく抑えつつ鋼部品表面強度を高める方法として、侵入型元素であるC、Nを鋼部品の表面に強制的に固溶させ、転位の歪を形成させる浸炭浸窒処理がある。従来の浸炭浸窒処理は、900℃以上の処理温度でガス浸炭処理を施した後に、鋼材の温度を850℃程度まで降温した条件でガス浸窒処理を行うというものである。この方法では、処理時間が比較的長く、従来の浸窒を行わない浸炭処理に比べてコストが大きく増加することを避けることができない。浸炭浸窒処理の時間短縮を目的とした技術としては、たとえば浸炭時に減圧化された雰囲気内に浸炭ガスをパルス状に導入する減圧浸炭を採用して浸炭処理の時間短縮を図ったり、特許文献1に記載のものが提案されている。
特開2005−113257号公報 特開2015−010250号公報
浸炭時に減圧する浸炭処理方法の採用は、浸炭処理の時間の短縮に寄与するが、当然のごとく、浸炭処理後に別工程として行う浸窒処理の時間短縮には寄与しない。また、特許文献1は、C含有率を中炭素鋼の範囲にすると共にCr含有率を低くした鋼を用いることにより、浸炭窒化処理時間の短縮を図るというものであるが、浸炭窒化処理の処理温度条件の最適化については殆ど検討されていない。一方、浸炭処理後の浸窒処理の温度を浸炭処理温度に近づければ、浸炭処理終了から浸窒処理開始までの間の時間を短縮するとともに浸窒処理をより高温で行うことで浸窒処理自体の処理時間も短縮することが可能と考えられる。しかしながら、単純に、浸窒処理温度を浸炭処理温度に近い温度、具体的には900℃以上の温度とした場合には、浸窒処理時に雰囲気ガスとして用いるアンモニアガスの分解が進みやすくなり、鋼中に狙いとする濃度の窒素を侵入させることができないという問題がある。
このような問題を解決すべく、本発明の出願人は、既に減圧浸窒処理時において被処理材中の含有元素の中で特にNの鋼中への侵入に大きな影響を及ぼすCrの含有率の値と最適な減圧浸窒処理条件との関係を明確にする技術の提案を行っており、減圧浸炭処理と減圧浸窒処理との総合的な処理時間を従来よりも大幅に短縮することに成功した(特許文献2)。
この減圧浸窒処理条件の最適化は、数多くの実験に基づいて完成されたが、前記特許文献2に明確な記載はないものの、その実験は、実験室におけるφ150mm、長さ800mm程度の管状炉といった1回の処理能力が数kg程度の小型熱処理炉を使用してなされたものである。そのため、窒化(浸窒処理)に用いるアンモニアガスを炉内に導入し、そのアンモニアガスが被処理材としての鋼材の表面に到達するまでの距離及び時間、その後炉から排出されるまでの距離及び時間は、実際に量産時に使用される大型の量産炉とは異なる状況となる。そこで、量産のための最適条件を見出すため、さらなる検討を行ったところ、特許文献2の条件は、試験片数本レベルを熱処理ができれば目的を達成できる前記管状炉等の実験室にある小型炉を使用する場合には最適な条件として利用できるが、量産時に用いられる大型処理炉で製造する場合には、小型炉とは最適条件に差異が生じ、そのままの条件での量産適用ができないことが判明した。
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、減圧浸炭処理と浸窒処理を連続して行う場合であって、かつ、少なくとも浸窒処理を行う熱処理炉として大型の量産炉を用いる場合の最適条件を備えた減圧浸炭浸窒処理方法を提供しようとするものである。
本発明の一態様は、0.18〜2.00質量%のCrを含有する鋼材に対して、減圧浸炭処理と浸窒処理とを連続して行い、かつ、少なくとも浸窒処理を行う熱処理炉として量産炉を用いる減圧浸炭浸窒処理方法であって、
上記浸窒処理は、900℃〜970℃の処理温度T(℃)の範囲内であって、雰囲気圧力P(Pa)が、下記のPH1とPH2のうち低い値からなる上限PH(Pa)と、下記のPL1とPL2のうちの低い値からなる下限PL(Pa)の範囲内の条件で行うことを特徴とする鋼材の減圧浸炭浸窒処理方法にある。
PH1=100000(Pa)
PH2=−40500×[Cr]+205×T−30000(Pa)
PL1=72000(Pa)
PL2=(−65.1×T+51000)×[Cr]+T×464−356150(Pa)
(ただし、[Cr]は鋼材におけるCr含有率(質量%))
上記減圧浸炭浸窒処理方法は、浸窒処理時において被処理材中の含有元素の中で特にNの鋼中への侵入に大きな影響を及ぼすCrの含有率の値と最適な浸窒処理条件との関係を明確にすることにより、減圧浸炭処理と浸窒処理との総合的な処理時間を従来よりも大幅に短縮するものである。特に、浸窒処理を行う熱処理炉として大型の量産炉を用いる場合の条件を明確にして、量産時の処理時間の短縮を可能とするものである。ここで言う大型の量産炉とは、明確に数値で範囲を限定するのは難しいが、あえて記載するのであれば、概ね1回の処理で少なくとも100kg以上の鋼材を処理可能な炉のことを言う。
そして、上記処理前半の減圧浸炭処理では浸炭段階での処理時間短縮に寄与する減圧浸炭処理を採用し、これまでと同様に処理温度を上記特定の高温範囲内とし、かつ、後半の処理である上記浸窒処理は、基本的な条件として、処理温度T(℃)としては比較的高温の900℃〜970℃とし、雰囲気圧力P(Pa)としては、上述した上限PH(Pa)と下限PL(Pa)の範囲内の条件とする。
上限PH及び下限PLを上記のごとく定めることによって、900〜970℃という高温条件においても、Cr含有率と処理温度Tとを加味して最適な浸窒条件(窒素ポテンシャル)が得られる雰囲気圧力Pの範囲の上限及び下限を定めることができる。この範囲に定めることによって、浸窒処理を大型の量産炉を用いて行う場合において、効率よく処理を進めることが可能となり、浸窒処理自体の短縮化を図ることができる。
さらに、これらの条件を全て具備するように処理温度T及び雰囲気圧力Pを決定することにより、浸窒処理の処理温度と、900℃以上の処理が不可欠である減圧浸炭処理の処理温度との差を極力小さくすることができ、浸炭処理温度から浸窒処理温度への降温時間の短縮と浸窒処理温度の高温化による浸窒時間の短縮の効果によって、減圧浸炭処理と浸窒処理とを連続して行う場合の総合的な処理時間を従来よりも大幅に短縮することができる。
本発明の浸窒処理時の雰囲気圧力Pと処理温度Tとの関係及び条件設定可能範囲を示す説明図。
上記減圧浸炭浸窒処理方法は、上述したごとく、0.18〜2.00質量%のCr(クロム)を含有する鋼材に対して行うものである。ここで、Cr含有率の下限を0.18%とするのは、鋼の強度(内部硬さ)を確保するためである。Cr含有率の上限を2.00質量%とするのは、Cr含有率が高すぎると侵入させたNが固溶せずにCrと結合して粗大なCrNが生成されやすくなり、粗大なCrNによる疲労強度低下が懸念されると共に本来狙っているN固溶による表面硬度向上効果が得られにくくなるためである。
上記減圧浸炭処理は、一般的な公知の条件で行うことができる。例えば、減圧浸炭処理は、900〜1050℃の処理温度(鋼材の温度)にて行うことができる。減圧浸炭処理を900℃以上とすることにより、浸炭処理を確実に行うことができる。一方、減圧浸炭処理の上限温度は、結晶粒が粗大化防止の観点から決めることができ、例えば、1050℃とすることができる。なお、処理時間短縮のためには、浸炭処理をより高い温度で行うことが好ましいが、高温で処理するほど、前記の通り浸炭処理後における鋼材の結晶粒が粗大化しやすくなるため、その点を考慮した処理時間の設定が必要である。
なお、上記減圧浸炭処理は、具体的には、ガスによる減圧浸炭処理であり、上記処理温度に維持した処理炉内に浸炭用ガスをパルス状に導入しながら行う。すなわち、減圧浸炭処理時の雰囲気圧力は、大気圧よりも低い圧力に減圧した状態で行う。具体的には、パルス状に導入した浸炭雰囲気の最大時圧力は、50〜3000Paの範囲とすることが好ましい。浸炭用ガスとしては、たとえば、炭化水素ガス、特に、アセチレン、プロパン等を用いることができる。
次に、上記浸窒処理は、上述したごとく、基本的な処理温度(鋼材の温度)T(℃)として、900〜970(℃)の範囲を選択し、従来の850℃程度に比べて高い範囲に限定する。これにより、処理時間の低減を図る。一方、浸窒処理温度が高すぎると、窒素源としてのアンモニアを処理炉内に導入した際の窒素と水素への分解が過度に進みすぎて浸窒効果が低下するおそれがあるため、上限値は970℃とする。
また、浸窒処理の雰囲気圧力Pの上限PH(Pa)は、PH1とPH2のうち低い値とする。
PH1=100000(Pa)、
PH2=−40500×[Cr]+205×T−30000(Pa)、
すなわち、PH2の算出値が100000未満の場合には、その値が上限PHとなり、PH2の算出値が100000以上の場合には、PH=100000となる。
PH1は、大気圧に相当し、設備の都合上大気より加圧可能にすることは難しいため、量産における浸窒処理として実現可能な上限圧力を定めたものであり、PH2は、過剰浸窒による残留オーステナイトの増加や窒化物の析出による強度への悪影響の可能性を確実に低減することができる範囲の上限圧力として、Cr含有率と処理温度Tとの関係からその限界値を導いたものである。
また、浸窒処理の雰囲気圧力Pの下限PL(Pa)は、PL1とPL2のうちの低い値とする。
PL1=72000(Pa)、
PL2=(−65.1×T+51000)×[Cr]+T×464−356150(Pa)、
すなわち、PL2の算出値が72000未満の場合には、その値が下限PLとなり、PL2の算出値が72000以上の場合には、PL=72000となる。
窒素源となるアンモニアガスは、高温になればなるほど分解しやすくなり、かつ、雰囲気圧力を低くすればするほど分解しやすくなる。多くの実験の結果、量産炉を用いる場合には、本願におけるCr含有範囲において、処理温度が900〜970℃の範囲においては、雰囲気圧力を72000Pa以上に保つことによって、炉内に生じるアンモニアガスの分解を考慮しても、浸窒に必要なNを供給可能であることがわかった。その上で、処理温度が比較的低い領域においては、Cr含有率に応じてさらに低い圧力を設定可能であることがわかり、その下限値がPL2によって示せることが判明したのである。
上記の処理温度Tと雰囲気圧力Pとの関係を図1に示す。同図は、横軸に浸窒処理時の処理温度T(℃)を、縦軸に雰囲気圧力P(Pa)をとったものである同図中上述したPH1、PH2、PL1、PL2及びT1=900℃、T2=970℃の位置を示した。量産炉を用いる場合の浸窒処理条件をこれらの基準に囲まれた範囲(条件設定範囲S)内で選定することにより、適度な浸窒処理を効率よく実施することが可能となる。
また、同図には、予備下限圧力PL3として、70000Paの位置を破線で示してある。特許文献1に示した実験室の小型実験炉で行う場合には、このPL3が最高圧力となるが、このPL3以下の範囲においては、浸窒処理炉の大きさに関係なく、条件が成立する範囲を含むこととなる。そのため、減圧浸炭処理炉として量産炉を選択した場合、特許文献1に開示された範囲を除く範囲は、PL3=70000Paを超える範囲となる。
なお、特許文献2での評価時に用いた実験用の小型炉である管状炉(φ150mm×長さ800mm)との間で、最適条件に差異が生じた理由は以下の通りと推定される。すなわち、処理炉内に浸窒のため導入されたアンモニアガスは、処理炉内でも分解されながら、導入口から排出口に流れるが、処理鋼材が試験片数本レベルの小型炉の場合は、炉内容積が小さく、導入口と排出口の距離も短いため、雰囲気ガスの攪拌等を行う等の対策によって、導入口側と排出口側及び被処理材の挿入位置間で窒素ポテンシャルに差異がない状態で雰囲気ガスの制御をすることが可能である。
ところが、処理炉が少なくとも100kg以上の鋼材を1度に処理できる量産に使用可能な大型炉になると、処理炉内の雰囲気ガスの均一化を目的とする攪拌を積極的に行っても、導入口側と排出口側及び被処理材の挿入位置の間で窒素ポテンシャルに差異が生じ、導入口側から浸窒処理を行うのに十分な量のアンモニアガスを供給しても、処理鋼材の位置に達する前に窒素ポテンシャルが低下し、小型炉と同じ雰囲気圧に制御しても小型炉で得られた表面窒素濃度まで浸窒させることができなくなるためと考えられる。従って、量産に用いられる大型炉での処理の場合には、このような窒素ポテンシャルの低下による影響分を考慮して、特許文献2で指定された雰囲気圧に比べ、高めの圧とする必要がある。以上の検討の結果、本発明の浸窒処理では、大気圧と同じ雰囲気圧も含む圧とする必要があるため、先願で使用した減圧という言葉は用いていない。
また、上記減圧浸炭処理と浸窒処理とは連続して実施されるが、上記減圧浸炭処理の処理温度と上記浸窒処理の処理温度を実質的に同一温度とすることが好ましい。これにより、鋼材の温度変更時間を余分にとる必要がなく、浸炭処理後すぐに浸窒処理を行うことができるため、その分全体の処理時間をより短縮することができる。ここで、実質的に同一温度とは、全く同じ温度である場合だけでなく、たとえば±10℃以内の差違であって、温度変更時間を別途とる必要がない場合をも含むものである。
また、上記減圧浸炭浸窒処理方法を適用する鋼材としては、Cr含有率が上記特定の範囲内であれば、他の添加成分の含有率に大きな制限はなく、従来から浸炭処理や浸炭浸窒処理を施されてきたいわゆる肌焼鋼であれば問題なく使用できる。主要な添加成分と含有率の例を以下に示す。成分範囲は、過去に提案された開発鋼を含み、焼戻し軟化抵抗向上のための成分や、結晶粒粗大化防止のための成分を含むが、いずれにしても公知の成分であり、個々の成分の効果は、公開済公報に記載されているので、各成分毎の限定理由の説明は省略する。
C(炭素)は、必須添加成分である。C含有率は、0.10〜0.30質量%程度が好ましい。
以下に、C以外の主要成分の好ましい含有率の例を示す。
Si(ケイ素):0.10〜1.50質量%、
Mn(マンガン):0.50〜2.00質量%、
P(リン):0.035質量%以下、
S(硫黄):0.035質量%以下、
Mo(モリブデン):0〜0.80質量%(任意添加元素)、
Al(アルミニウム):0.020〜0.060質量%、
N(窒素):0.0080〜0.0250質量%、
Nb(ニオブ):0〜0.12質量%(任意添加元素)
なお、鋼材には、上記添加元素以外には、Fe(鉄)及び不可避的不純物が含まれる。
本願における減圧浸炭浸窒処理方法の実施例につき、比較例と共に説明する。
まず、表1に示すごとく、Cr含有率が異なる6グループ(G1〜G6)の18種類の鋼材を試料として準備した。G1グループの試料1〜3は、Cr含有率が約0.20%の試料である。G2グループの試料4〜6は、Cr含有率が約0.50%の試料である。G3グループの試料7〜9は、Cr含有率が約0.80%の試料である。G4グループの試料10〜12は、Cr含有率が約1.10〜1.20%の試料である。G5グループの試料13〜15は、Cr含有率が約1.60%の試料である。G6グループの試料16〜18は、Cr含有率が約2.00%の試料である。
上記各試料は、いずれも、表1に示された化学成分組成に調整して得られた鋼塊に対して、鍛伸、焼き鈍し処理を施し、機械加工によりφ26mm×40mmの円柱状の試験片に加工したものである。これらの試料に対して、次のような減圧浸炭浸窒処理を実施した。
<減圧浸炭浸窒処理>
上記各試料を量産用の大型バッチ炉(炉内の内寸法:1200mm×1300mm×800mm、処理能力:200kg)に装入し、各試料の温度を減圧浸炭処理温度まで昇温する。本例では、表2に示すごとく、減圧浸炭処理温度として、900℃、930℃、950℃及び970℃の4種類の温度を用いた。そして、浸炭ガスとしてアセチレンを処理炉内にパルス状に導入し、導入時の最大雰囲気圧力を150Paに設定して、900秒保持し、減圧浸炭処理を行う。
次に、この減圧浸炭処理に連続して浸窒処理を行う。浸窒処理の処理温度T(℃)は、直前の減圧浸炭処理温度と同じ温度(表2〜表5中の「処理温度」)に設定する。そして、アンモニアを処理炉内に導入しながら、所定の雰囲気圧力Pの値に設定して、900秒保持し、その後油焼き入れを行う。本例では、浸窒処理の雰囲気圧力Pとして、50000Pa、60000Pa、70000Pa、72000Pa、80000Pa、90000Pa及び100000Paの7種類の圧力を用いた。
<浸窒性評価>
浸窒処理が効果的になされたか否かについては、上記の減圧浸炭浸窒処理後の各試料表面の窒素濃度を測定することにより評価した。なお、測定した窒素濃度の結果から、処理後の窒素濃度の傾向は、表2〜5の結果に示すように、ほぼCr含有率で決定されることがわかった。測定は、同じ条件について3本ずつ試験片を準備し、3本の試験片それぞれの表面窒素濃度を測定し、その平均値を用いて評価した。窒素濃度の測定は、EPMAを用いて行った。表面窒素濃度が0.30質量%以上の場合を、窒素濃度の点からは浸窒処理が適切に行われていると判断した。
また、本発明の浸炭浸窒処理については、前記特許文献2に比べ浸窒処理時の雰囲気圧を高めており、その影響から、前記特許文献2の処理後の鋼材に比べると、鋼中に粗大なCrNが生成されやすい条件となっており、その点も考慮した条件の最適化が重要である。そこで、処理後の断面を光学顕微鏡を用いて撮像した断面組織画像を用いて、0.04mm2の視野中での、円相当径3μm以上の窒化物が確認されるか否かを調べた。円相当径3μm以上の窒化物が1つでもあれば浸窒処理が適切でないと判断することができる。なお、CrNが生成すると、Nが鋼中のCrを消費し、マトリックスのCr含有率が低下して焼入性の低下により表面硬化層の硬さが低下する。その結果狙いの強度向上効果が得られなくなるおそれがあるため、本来は、全く生成されないことが理想である。しかしながら、円相当直径で3μm未満のCrNについては、比較的影響が小さく、後述のローラピッチング試験等によりその存在による悪影響がほぼ無視できることを確認しているため、上記の通りの判断基準とした。
表2〜表5においては、上述した窒素濃度が0.30質量%未満の場合を不適切条件として「−」で表し、窒素濃度が0.30質量%以上であって、上述した円相当径3μm以上の窒化物が確認されなかった場合を適切条件として「○」で表示し、浸窒が過剰に進み、表面に侵入させたNの一部がCrと結合して窒化物を形成した結果、円相当径3μm以上の窒化物が1つでも存在した場合は、測定した窒素濃度の値に関係なく、不適切条件として「×」で表した。
また、表2〜表5には、各条件ごとに前述した浸窒処理の雰囲気圧力Pの上限PH(Pa)及び下限PL(Pa)の算出手法に基づいて算出し、その値をそれぞれ「上限圧」及び「下限圧」として記載した。
表2〜表5に示されているように、浸窒処理については、被処理材中のCrの含有率の値と処理温度Tとの関係から、上述した手法に基づいて適切な雰囲気圧力Pを導くことにより、900℃〜970℃という高温域の処理温度Tの範囲内においても良好な浸窒処理を実施できることがわかる。そして、このような高温域での浸窒処理を実施できることにより、上述し実施例で示したように減圧浸炭処理と浸窒処理の処理温度を一致させることも可能となる。そのため、実際の量産においても、浸窒処理の処理温度と減圧浸炭処理の処理温度との差を極力小さくすることができ、浸炭処理温度から浸窒処理温度への降温時間の短縮と浸窒処理温度の高温化による浸窒時間の短縮の効果によって、減圧浸炭処理と浸窒処理とを連続して行う場合の総合的な処理時間を従来よりも大幅に短縮することができる。
次に、CrNの生成がピッチング強度に及ぼすことを確認した別の実施例を示す。
<ローラピッチング試験>
本発明により処理した部品を歯車部品とすることを想定して、減圧浸炭浸窒処理を950℃にて実施し、かつ、浸窒処理の雰囲気圧力Pを100000Paとした試料No.6、10、14に対してローラピッチング試験を実施した。評価基準材として、ガス浸炭を950℃にて実施して、浸窒処理を行わなかった試料No.10に対しても同じローラピッチング試験を実施した。
ローラピッチング試験は、外径130mm、厚みが18mmの円盤からなる大ローラをSCM420浸炭材で準備し、外径26mm、幅が28mmからなる小ローラを前記試料No.6、10、14の鋼材で機械加工により製造し、上記の浸炭処理又は減圧浸炭浸窒処理を行った後、大ローラと小ローラを、40%の周速差をつけた状態で互いに当接させて一定の面圧をかけた状態で回転(小ローラの回転数が2000rpm)させることにより行った。そして、前記試料No.6、10、14を減圧浸炭浸窒処理してなる小ローラについて、107回転させてもピッチングが発生しない限界の面圧を測定し、基準となる浸窒処理を行わなかった試料No.10と比較して、求めた限界面圧が優れる場合を良好(○)、基準よりも低い場合を不良(△)として示した。また、上述した粗大なCrNの有無についても表6に示した。
表6から明らかなように、適切な減圧浸炭浸窒処理を行うことによって、強度低下の原因となる粗大なCrNの生成を抑制しつつ、表面に窒素を所定量侵入させることができ、その結果、従来の浸炭処理で強化を図った場合に比べても、面疲労強度のさらなる向上を実現できることがわかる。
<CrN生成による表面硬度への影響>
なお、CrNの生成により面疲労強度低下の生じた原因を確認するため、試料No.14について、浸窒処理を950℃で雰囲気圧が90000Paと100000Paの条件で行った試験片の表面硬度を確認したところ、CrNの析出が認められなかった前者の試験片が813HVであったのに対し、CrNの析出が認められた後者の試験片は757HVと、CrNの析出により、大きな硬度低下が起きることを確認できた。従って、この硬度低下の影響により面疲労強度が低下したものと推定される。
Figure 2018154885
Figure 2018154885
Figure 2018154885
Figure 2018154885
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Figure 2018154885
S 条件設定範囲

Claims (2)

  1. 0.18〜2.00質量%のCrを含有する鋼材に対して、減圧浸炭処理と浸窒処理とを連続して行い、かつ、少なくとも浸窒処理を行う熱処理炉として量産炉を用いる減圧浸炭浸窒処理方法であって、
    上記浸窒処理は、900℃〜970℃の処理温度T(℃)の範囲内であって、雰囲気圧力P(Pa)が、下記のPH1とPH2のうち低い値からなる上限PH(Pa)と、下記のPL1とPL2のうちの低い値からなる下限PL(Pa)の範囲内の条件で行うことを特徴とする鋼材の減圧浸炭浸窒処理方法。
    PH1=100000(Pa)
    PH2=−40500×[Cr]+205×T−30000(Pa)
    PL1=72000(Pa)
    PL2=(−65.1×T+51000)×[Cr]+T×464−356150(Pa)
    (ただし、[Cr]は鋼材におけるCr含有率(質量%))
  2. 上記浸窒処理は、雰囲気圧力Pが70000(Pa)を超える条件で行うことを特徴とする請求項1記載の鋼材の減圧浸炭浸窒処理方法。
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