JP2008133501A - 真空浸炭歯車用鋼 - Google Patents

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Abstract

【課題】1000℃を超える高い温度で真空浸炭した場合にも面圧疲労強度及び曲げ疲労強度に優れ、異常粒成長も生じず、被削性も良好な真空浸炭歯車用鋼の提供。
【解決手段】C:0.13〜0.30%、Si:0.50%を超えて1.50%以下、Mn:0.70〜1.50%、P:0.10%以下、S:0.01〜0.05%、Cr:0.70〜1.50%、Nb:0.010〜0.050%、Al:0.010〜0.050%及びN:0.0100〜0.0250%を含有するとともに、Si、Mn及びCrの含有量が、Si+Mn:2.50%以下及び4Mn+4Cr−Si:7.2〜9.0%を満たし、残部はFe及び不純物からなり、不純物中のVが0.005%以下の化学組成を有し、かつ、真空浸炭前の組織がフェライト・パーライト組織で、そのフェライト粒径が100μm以下であることを特徴とする真空浸炭歯車用鋼。
【選択図】なし

Description

本発明は、真空浸炭歯車用鋼に関する。詳しくは、歯車に対して従来850〜980℃程度で行われていたガス浸炭処理を真空浸炭処理に変更し、1000℃を超えるような高温で浸炭して生産効率を向上させた場合にも、従来のガス浸炭処理した場合と同等以上の面圧疲労強度を確保することが可能で、しかも、低サイクル曲げ疲労強度は従来と同等以上で、異常粒成長も生じず、更に、その被削性が良好な真空浸炭歯車用鋼に関する。
自動車や産業機械などの歯車用の素材としては、一般に、炭素の含有量が0.2質量%程度、Siの含有量が0.3質量%程度、Mnの含有量が0.8質量%程度、Cr及びMoなどの合金元素を含んだSCM420鋼やSCr420鋼等の低炭素合金鋼が使用されている。
上記の鋼は、切削加工などの加工によって所定の歯車形状に成形された後、「浸炭焼入れ−焼戻し処理」が施され、この処理によって、表層に硬化層が形成され、更に、芯部硬さが確保され、最終製品である歯車に所望の耐摩耗性や強度が付与されている。
従来、上記の浸炭処理は、浸炭ガス雰囲気中で850〜980℃程度のオーステナイト領域において実施されており、十分な厚さの表層硬化層を得るためには、数時間から数十時間の長時間処理が必要であった。
このため、浸炭処理時間を短縮して生産効率を高めることができる技術が要望されている。
浸炭処理時間の短縮のためには、従来よりも高温で処理すればよいものの、従来のガス浸炭炉を用いた場合には炉壁の損傷が生じる。したがって、従来、980℃を超える温度でのガス浸炭処理はほとんど行われていない。
しかも、従来のガス浸炭処理では雰囲気に酸化性のガスが存在するため、被処理材の表層に、粒界酸化層が生成して、浸炭処理材の曲げ疲労強度や面圧疲労強度を低下させることがある。
素材鋼のSi、Mn及びCrの含有量を低減するとともに、MoやNiなどを含有させることによって、前記の粒界酸化層の生成を抑制することが可能であることが知られているが、高価な合金元素を多量に含んだ鋼を素材鋼として用いた場合には、製品コストの大幅な上昇を招いてしまう。
したがって、粒界酸化層が発生しないので曲げ疲労強度や面圧疲労強度の低下が生じず、しかも、1000℃を超える高い温度で浸炭処理することができて生産効率の向上も可能な浸炭処理として、真空浸炭処理が注目されている。
しかしながら、前記したガス浸炭処理の素材鋼として用いられる通常の低炭素合金鋼であるSCM420鋼やSCr420鋼では、これを1000℃を超えるような高温で浸炭処理すると異常粒成長を生じてしまう。
このため、1000℃を超えるような高温で真空浸炭処理した場合にも、異常粒成長を生じず、しかも、曲げ疲労強度、なかでも、低サイクル曲げ疲労強度は従来の低炭素合金鋼をガス浸炭処理した場合と同等以上で、かつ、面圧疲労強度は従来の低炭素合金鋼と同等以上で、更に、被削性が良好で所定の歯車形状に成形する場合の切削加工が容易な鋼に対する要望が極めて大きくなっている。
そこで、前記した要望に応えるべく、特許文献1〜6に、種々の技術が提案されている。
具体的には、特許文献1に、1.00〜3.0%のMnを含有させることによって残留オーステナイト量を高め、また、0.50〜3.0%のSiを含有量させることによって残留オーステナイトを安定化し、更に、Al、Nb及びNを含有させることによって旧オーステナイト粒径を微細にして疲労強度を向上させた「浸炭・ショットピーニング用鋼」が開示されている。
特許文献2に、C含有量を0.26〜0.33%とすることによって900〜930℃で浸炭処理する際の浸炭時間を短縮し、更に、芯部硬さを過大とせず、かつ、熱処理ひずみも低減できる「浸炭用鋼」が開示されている。
特許文献3に、Si含有量の増量による焼戻し硬さの向上とNiとMoを単独又は複合で含有させることによる浸炭層及び心部の破壊靭性値を向上させることで面圧強度を向上させる「浸炭および浸炭窒化用鋼」が開示されている。
特許文献4に、使用する鋼材の成分組成に応じて浸炭焼入れ条件を制御することで、適正な表面硬さと残留オーステナイト量を確保し、優れた耐面圧性を有する浸炭部品を得ることができる技術、具体的には、高温強度を高めるためのSi含有量、残留オーステナイト量を確保するためのMnやCrの含有量などを規定し、更に、表層硬度を維持するために、浸炭時の雰囲気のカーボンポテンシャルを規定した「耐高面圧浸炭部品の製法」が開示されている。
特許文献5に、浸炭或いは浸炭窒化工程後の温度範囲を制御することで、部品の芯部組織をフェライトとオーステナイトの二相組織とし、更にその後の焼入れで芯部組織をフェライトとマルテンサイトの二相組織とすることによって部品の焼入れひずみを低減する「熱処理歪みの少ない肌焼用鋼」が開示されている。
特許文献6に、重量比にして、C:0.10〜0.30%、Si:0.50〜1.50%、Mn:0.30〜1.00%、P:0.035%以下、S:0.035%以下、Cr:0.20〜0.50%未満、Mo:0.35〜0.80%、Al:0.020〜0.060%、N:0.0080〜0.0200%を含有し、更に、必要に応じて、特定量のNbを含有し、かつ、1.5≦3×Si(%)−Mn(%)+Cr(%)/4+Mo(%)であり、残部Fe及び不純物からなる鋼を浸炭処理し、歯車は、C濃度が0.60%以上、残留オーステナイト量が20%以下の浸炭層を有し、その外層には最大深さ5〜13μmの不完全焼入れ組織よりなる浸炭異常層を有し、更に、最大深さ位置から表面までの断面における浸炭異常層の占める面積率70%以上である「歯元曲げ強度と耐ピッチング性に優れる高強度歯車及びその製造方法」が開示されている。
特開平2−194149号公報 特開昭55−89456号公報 特開2001−192765号公報 特開平9−59756号公報 特開平9−137266号公報 特開2003−27142号公報
1000℃を超えるような高温での真空浸炭処理の前組織は、特に、旧オーステナイト粒径に大きな影響を及ぼすが、前述の特許文献1〜3で開示された技術は、いずれも高温での真空浸炭処理を対象とする技術ではなく、高温での異常粒成長対策が十分になされたものではない。このため、特許文献1〜3で開示された技術の場合、1000℃を超えるような高い温度で真空浸炭処理する場合には、異常粒成長の抑制に対して十分な効果が得られるというものではなかった。
特許文献4で開示された技術は、浸炭処理の際の雰囲気炭素濃度の制御技術が確立されているガス浸炭においては効果が発揮されるものの、1000℃を超える温度域での異常粒成長については考慮されていない。このため、従来のガス浸炭よりも高い1000℃を超えるような高い温度での真空浸炭処理に対しては必ずしも異常粒成長の抑制に対して十分であるというものではなかった。
特許文献5で開示された技術は、部品の焼入れひずみの絶対値が小さくなるという効果が得られるものの、芯部にフェライトが生成して芯部硬度が低い。このため、従来の低炭素合金鋼をガス浸炭処理した場合と同等以上の低サイクル曲げ疲労強度を確保できないものであった。更に、面圧疲労強度の向上に有効な残留オーステナイト量について配慮されていないので、必ずしも従来の低炭素合金鋼をガス浸炭処理した場合と同等以上の面圧疲労強度が得られるというものでもなかった。
特許文献6で開示された技術は、従来のガス浸炭焼入れを実施したものでは、耐ピッチング性を向上するという効果が得られるものの、真空浸炭焼入れを実施し、浸炭異常層を全く生成させない場合には、試験途中に曇り帯の生成が激しく生じ、凝着摩耗起点のピッチング破壊が生じ、面圧疲労強度が低下するというものであった。
そこで、本発明の目的は、1000℃を超えるような高温で真空浸炭処理が施される歯車の素材であって、従来850〜980℃程度で行われていたガス浸炭処理を上記1000℃を超えるような高温での真空浸炭処理に変更して生産効率を向上させた場合にも、炭素の含有量が0.2質量%程度である従来の低炭素合金鋼を用いてガス浸炭処理した場合と同等以上の面圧疲労強度を確保することが可能で、しかも、曲げ疲労強度、なかでも低サイクル曲げ疲労強度は従来と同等以上で、異常粒成長も生じず、更に、その被削性が良好な真空浸炭歯車用鋼を提供することである。
本発明者らは、前記した課題を解決するために、種々の検討を行い、その結果、先ず、下記(a)〜(i)の知見を得た。
(a)浸炭時に酸化性ガスを使用するガス浸炭処理の場合には、酸化物を形成しやすいMnやSiによって表層に粒界酸化を生じるため、浸炭層の強度が低下して、曲げ疲労強度や面圧疲労強度の低下をきたす。これに対して、酸化性ガスを使用しない真空浸炭処理の場合には、粒界酸化が生じないので、従来のガス浸炭処理の場合にはその含有量を制限する必要があったSiやMnを活用することができる。
(b)歯車の歯面では転がりすべり応力が繰り返されることにより、ピッチングと呼ばれる疲労損傷が生じることがあり、この発生要因の一つとして、歯面同士の相対すべりで生じる摩擦熱による鋼材の軟化が考えられる。したがって、粒界酸化が生じない真空浸炭処理の場合には、Siの含有量を増やして鋼の焼戻し軟化抵抗を高めることでピッチングの発生を抑制することが可能である。
(c)しかしながら、単に高Si化して焼戻し軟化抵抗を上昇させるだけでは、表面硬さが非常に高くなって凝着摩耗を起因としたピッチングが発生するので、却って面圧疲労強度の低下を生じることがある。
(d)これに対し面圧疲労強度を上昇させるためには、表面におけるいわゆる「なじみ性」を確保するために、浸炭層に残留オーステナイトを分散させればよい。
(e)Mnは、Ms点を降下させる元素である。このため、Mnの含有量を増やすことによって、浸炭層内に残留オーステナイトを分散させることが可能である。
(f)また、真空浸炭時の炭素浸入量を増加する元素であるCr含有量を増やすことによっても、浸炭層内に残留オーステナイトを分散させることが可能である。
(g)このことから、Si、Mn及びCrの含有量が、「4Mn+4Cr−Si」の値で7.2%以上となるようにすれば、真空浸炭処理後の焼入れで浸炭層内に残留オーステナイトを確保して表面の「なじみ性」を高め、良好な面圧疲労強度を確保することができる。なお、最近の歯車は非常に高面圧で使用されるため、上記の場合の残留オーステナイトは、なじみの過程で加工誘起マルテンサイト変態して硬化するので破壊の起点とはならず、面圧疲労強度の向上に有効に働くと考えられる。
(h)しかしながら、Mn及びCrの含有量が過多の場合、或いはSiの含有量が少ない場合には、浸炭層内における残留オーステナイト量が過多となって十分な表層硬さが確保できないので、面圧疲労強度は却って低下する。
(i)真空浸炭処理後の焼入れで浸炭層内に残留オーステナイトを過多に生成させず、良好な面圧疲労強度を確保するためには、Si、Mn及びCrの含有量が、「4Mn+4Cr−Si」の値で9.0%以下となるようにすればよい。
上記(a)〜(i)の知見に基づいて真空浸炭処理する歯車の素材鋼の成分設計を行えば、面圧疲労強度を確保することが可能であるが、自動車や産業機械などの歯車用の素材鋼は、切削加工によって所定の歯車形状に成形された後、「浸炭焼入れ−焼戻し処理」が施されることが多い。このため、真空浸炭歯車用の素材鋼は、良好な被削性が得られるように成分設計する必要がある。
しかしながら、上記の面圧疲労強度を高める元素であるSiやMnは、フェライトの硬さを高める元素でもあることから、その含有量が過剰である場合には被削性の低下を招くこととなる。
そこで次に、本発明者らは、切削加工前に焼準処理を行う工程を想定して、焼準処理における冷却速度を種々に変化させて組織及び硬さが異なるように調整して、切削加工することを試みた。
その結果、下記(j)及び(k)の知見が得られた。
(j)鋼の切削加工前の硬さ、つまり、焼準後の硬さが、ビッカース硬さ(以下、「Hv硬さ」ともいう。)で240以下であれば、良好な被削性を確保することができる。
(k)焼準後の硬さをビッカース硬さで240以下とするためには、その組織をフェライトとパーライトの混合組織(以下、「フェライト・パーライト組織」という。)にすればよい。
なお、鋼の焼準後のフェライト・パーライト組織の硬さには焼準材のフェライトの量と硬さが影響するので、本発明者らは更に、フェライトを強化するSi及びMo、並びに、フェライトを強化するとともにフェライトの生成核となるMnS量に影響を及ぼすMnの含有量を種々に変えて、焼準後の硬さについて調査した。
その結果、下記(l)及び(m)の知見を得た。
(l)Mnの含有量が少ない場合にはMnSの生成量が少なくなるため、粒内フェライトの生成量が減少してHv硬さで240以下とならない。
(m)Mo非含有鋼の場合には、Si及びMnの含有量についての「Si+Mn」の値を2.50%以下に、また、特定量のMoを含有した鋼の場合には、Si、Mn及びMoの含有量についての「Si+Mn+4Mo」の値を2.80%以下にすることによって、焼準後の鋼の硬さをHv硬さで240以下とすることができる。
なお、鋼の切削加工前の硬さ、つまり、焼準後の硬さは、焼準処理における冷却速度によっても変化するので、本発明者らは次に、焼準処理における冷却速度を種々に変えて、フェライト・パーライト組織におけるフェライト粒径及び硬さを変更した鋼を用いて、従来のガス浸炭よりも高温となる1050℃で真空浸炭処理を実施した。その結果、下記の重要な知見(n)が得られた。
(n)浸炭処理前の焼準後のフェライト・パーライト組織において、フェライト粒径が大きい場合には高温での真空浸炭処理で異常粒成長が生じる。そして、異常粒成長が生じないためには、高温での浸炭処理前のフェライト・パーライト組織にけるフェライト粒径を100μm以下とする必要がある。
本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものであり、その要旨は、下記(1)及び(2)に示す真空浸炭歯車用鋼にある。
(1)質量%で、C:0.13〜0.30%、Si:0.50%を超えて1.50%以下、Mn:0.70〜1.50%、P:0.10%以下、S:0.01〜0.05%、Cr:0.70〜1.50%、Nb:0.010〜0.050%、Al:0.010〜0.050%及びN:0.0100〜0.0250%を含有するとともに、Si、Mn及びCrの含有量が、Si+Mn:2.50%以下及び4Mn+4Cr−Si:7.2〜9.0%を満たし、残部はFe及び不純物からなり、不純物中のVが0.005%以下の化学組成を有し、かつ、真空浸炭前の組織がフェライト・パーライト組織で、そのフェライト粒径が100μm以下であることを特徴とする真空浸炭歯車用鋼。
(2)質量%で、C:0.13〜0.30%、Si:0.50%を超えて1.50%以下、Mn:0.70〜1.50%、P:0.10%以下、S:0.01〜0.05%、Cr:0.70〜1.50%、Nb:0.010〜0.050%、Mo:0.10〜0.50%、Al:0.010〜0.050%及びN:0.0100〜0.0250%を含有するとともに、Si、Mn、Cr及びMoの含有量が、Si+Mn+4Mo:2.80%以下及び4Mn+4Cr−Si:7.2〜9.0%を満たし、残部はFe及び不純物中からなり、不純物中のVが0.005%以下の化学組成を有し、かつ、真空浸炭前の組織がフェライト・パーライト組織で、そのフェライト粒径が100μm以下であることを特徴とする真空浸炭歯車用鋼。
なお、「フェライト・パーライト組織」とは、フェライトとパーライトの混合組織を指す。
また、フェライト・パーライト組織における「フェライト粒径」とは、倍率200倍の光学顕微鏡写真(面積で200μm×300μmの領域に相当)を画像処理することによって求めた各フェライト粒の面積から計算したいわゆる「相当円直径」の平均値を指す。なお、上記フェライトにはパーライト中のフェライトは含まない。
以下、上記 (1)及び(2)の真空浸炭歯車用鋼に係る発明を、それぞれ、「本発明(1)」及び「本発明(2)」という。また、総称して「本発明」ということがある。
本発明の真空浸炭歯車用鋼を用いれば、従来850〜980℃程度で行われていたガス浸炭処理を1000℃を超えるような高温での真空浸炭処理に変更して生産効率を向上させた場合にも、炭素の含有量が0.2質量%程度である低炭素合金鋼を用いてガス浸炭処理した従来の場合と同等以上の面圧疲労強度及び従来と同等以上の曲げ疲労強度、なかでも低サイクル曲げ疲労強度が得られ、しかも、異常粒成長が抑止できるので、浸炭時間の短縮による製造コストの合理化が行える。なお、この真空浸炭歯車用鋼は被削性にも優れているので、切削加工によって容易に所定の歯車形状に成形することができる。
以下、本発明の各要件について詳しく説明する。なお、化学成分の含有量の「%」は「質量%」を意味する。
(A)化学組成
C:0.13〜0.30%
Cは、鋼の強度に大きな影響を及ぼす元素であるが、強度と被削性には強い相関があって、強度が高い場合には被削性が低下し、特に、Cの含有量が0.30%を超えると、強度が高くなりすぎて被削性が著しく低下する。一方、Cの含有量が少なすぎると強度が低くなって、切削時に「むしれ」等の悪影響を生じ、更に、部品強度の確保もできなくなり、特に、Cの含有量が0.13%を下回ると、強度の低下が著しくなる。したがって、Cの含有量を、0.13〜0.30%とした。なお、C含有量の望ましい範囲は0.13〜0.27%であり、更に望ましい範囲は0.15〜0.25%である。
Si:0.50%を超えて1.50%以下
Siは、300℃付近の焼戻し軟化抵抗を高め、ピッチングの発生を抑制する作用を有する。この効果を得るためには、Siは0.50%を超える含有量が必要である。しかしながら、Siの含有量が過剰になると、浸炭焼入れ時に芯部がフェライトとマルテンサイトの二相組織となるので芯部硬さが確保できず静的曲げ強度が低下し、特に、1.50%を超えると、静的曲げ強度の低下が著しくなる。したがって、Siの含有量を0.50%を超えて1.50%以下とした。更に望ましいSiの含有量は、0.55〜1.00%である。
なお、Siの含有量は上記の範囲において、後述する「4Mn+4Cr−Si:7.2〜9.0%」を満たすとともに、本発明例(1)の場合には「Si+Mn:2.50%以下」を、また、本発明(2)の場合には「Si+Mn+4Mo:2.80%以下」をも満たす必要がある。
Mn:0.70〜1.50%
Mnは、焼準時に粒内フェライトの核となるMnSを形成するための必須元素であるとともに、浸炭層に残留オーステナイトを生成して真空浸炭処理した場合の表面における「なじみ性」を高めて十分な面圧疲労強度を確保するために有効な元素である。これらの効果を十分に得るためには、Mnは0.70%以上含有させる必要がある。しかしながら、Mnの含有量が過剰になると、残留オーステナイト量が過多となって表層硬さが低下するため面圧疲労強度が低下し、更に、焼準後の硬さが高くなりすぎて被削性が低下し、特に、その含有量が1.50%を超えると、面圧疲労強度と被削性の低下が著しくなる。したがって、Mnの含有量を0.70〜1.50%とした。Mnの含有量は0.80〜1.30%とすることが好ましい。
なお、Mnの含有量は上記の範囲において、後述する「4Mn+4Cr−Si:7.2〜9.0%」を満たすとともに、本発明例(1)の場合には「Si+Mn:2.50%以下」を、また、本発明(2)の場合には「Si+Mn+4Mo:2.80%以下」をも満たす必要がある。
P:0.10%以下
Pは、脆化元素であり被削性を向上させる効果がある。しかしながら、Pの含有量が過剰になると熱間延性が低下し、特に、0.10%を超えると、熱間延性の低下が著しくなる。したがって、Pの含有量を0.10%以下とした。なお、Pの被削性向上作用は、その含有量が0.01%以上の場合に大きくなる。したがって、Pの含有量は0.01〜0.10%とすることが好ましく、0.01〜0.02%とすれば一層好ましい。
S:0.01〜0.05%
Sは、MnとともにMnSを形成するための必須元素である。一定量のMnを含有させた状態で形成されるMnSは被削性を確保するために必要であるばかりか、焼準時に粒内フェライトの核として働く。これらの効果を得るためには、Sの含有量は0.01%以上とする必要がある。しかしながら、Sの含有量が過剰になると熱間延性が低下し、特に、その含有量が0.05%を超えると、熱間延性の低下が著しくなる。したがって、Sの含有量を0.01〜0.05%とした。なお、Sの含有量は0.01〜0.03%とすることが好ましい。
Cr:0.70〜1.50%
Crは、真空浸炭時に浸炭性を促進するとともに焼入れ性を向上させ、また、浸炭焼入れ後の内部硬さを高める元素である。Crは、浸炭層内に残留オーステナイトを分散させることによって表面の「なじみ性」を高め、十分な面圧疲労強度を確保する作用も有する。こうした効果を得るためには、Crを0.70%以上含有させる必要がある。しかしながら、Crの含有量が過度になると、残留オーステナイト量が過多となって十分な表層硬さが確保できず、面圧疲労強度が低下するし、表層の粒界にセメンタイトを生成して浸炭層の粒界強度の低下をきたし、特に、Crの含有量が1.50%を超えると、面圧疲労強度の低下及び浸炭層の粒界強度の低下が著しくなる。したがって、Crの含有量を0.70〜1.50%とした。
なお、Crの含有量は上記の範囲において、後述する「4Mn+4Cr−Si:7.2〜9.0%」を満たす必要がある。
Nb:0.010〜0.050%
Nbは、真空浸炭後の結晶粒を微細化することにより浸炭層の靱性を向上させるとともに、面圧疲労強度を向上させる作用を有する。これらの効果を得るためには、Nbは少なくとも0.010%の含有量が必要である。しかしながら、Nbの含有量が多くなって0.050%を超えると、これらの効果が飽和してコストが嵩むばかりでなく、粗大な析出物を生成して異常粒成長が生じやすくなる。したがって、Nbの含有量を0.010〜0.050%とした。
Al:0.010〜0.050%
Alは、鋼中のNと結合しAlNを形成し、真空浸炭後の結晶粒を微細化することにより、浸炭層の靱性を向上させる作用がある。この効果を得るためには、Alは少なくとも0.010%の含有量が必要である。しかしながら、Alの含有量が0.050%を超えると、硬質のAl23形成による切削性の低下をきたす。したがって、Alの含有量を0.010〜0.050%とした。なお、Alの含有量は0.010〜0.040%とすることが好ましい。
N:0.0100〜0.0250%
Nは、Alと結合してAlNを形成し、真空浸炭後の結晶粒を微細化することにより、浸炭層の靱性を向上させる作用がある。この効果を得るためには、Nは少なくとも0.0100%の含有量が必要である。しかしながら、0.0250%を超えて含有させても、上記の効果が飽和するとともに、溶製の際、内部にいわゆる「巣」ができやすくなる。したがって、Nの含有量を、0.0100〜0.0250%とした。
4Mn+4Cr−Si:7.2〜9.0%
既に述べたように、Mn及びCrは、浸炭層内の残留オーステナイトの生成に有効な元素であり、また、Siは、浸炭層内の残留オーステナイトの生成を抑制する作用を有する。しかしながら、Si、Mn及びCrの含有量が、「4Mn+4Cr−Si」の値で9.0%を上回ると、浸炭層内における残留オーステナイト量が過多となって表層硬さが低下するため面圧疲労強度が低下する。一方、Si、Mn及びCrの含有量が、「4Mn+4Cr−Si」の値で7.2%を下回ると、残留オーステナイト量が少なくなり、真空浸炭処理の場合における表面の「なじみ性」が低下するので、十分な面圧疲労強度を得ることができない。したがって、Si、Mn及びCrは、それぞれ、前述の含有量範囲で、しかも、「4Mn+4Cr−Si」の値で7.2〜9.0%を満たすこととした。
Si+Mn:2.50%以下
既に述べたように、Siは、300℃付近の焼戻し軟化抵抗を高め、ピッチングの発生を抑制する作用を有し、また、Mnは、浸炭層に残留オーステナイトを生成して真空浸炭処理した場合の表面における「なじみ性」を高めて十分な面圧疲労強度を確保するする作用を有する。
しかしながら、Si及びMnの含有量が、「Si+Mn」の値で2.50%を超えると、焼準後の鋼の硬さがHv硬さで240を超えるので被削性が低下する。
したがって、Mo非含有の本発明(1)の場合には、Si及びMnは、それぞれ、前述の含有量範囲で、しかも、「Si+Mn」の値で2.50%以下を満たすこととした。
V:0.005%以下
本発明においては、Vは不純物として、その含有量は0.005%以下に抑えなければならない。すなわち、Vは、CやNと結合しVCやVCNを形成し、これらの炭化物や炭窒化物は真空浸炭処理の昇温過程の初期にはオーステナイト粒を微細化するのに有効であるものの、温度上昇が進んだ段階、また、浸炭処理温度に保持される段階では、マトリックス(素地)に固溶して異常粒成長の要因となる。更に、Vは、焼準後のフェライトを硬化するため、被削性の低下を招く。特に、Vの含有量が0.005%を超えると、異常粒成長及び被削性の低下が顕著になる。したがって、本発明においては、不純物中のVの含有量を0.005%以下とした。
上記の理由から、本発明(1)に係る真空浸炭歯車用鋼の化学組成を、C:0.13〜0.30%、Si:0.50%を超えて1.50%以下、Mn:0.70〜1.50%、P:0.10%以下、S:0.01〜0.05%、Cr:0.70〜1.50%、Nb:0.010〜0.050%、Al:0.010〜0.050%及びN:0.0100〜0.0250%を含有するとともに、Si、Mn及びCrの含有量が、Si+Mn:2.50%以下及び4Mn+4Cr−Si:7.2〜9.0%を満たし、残部はFe及び不純物からなり、不純物中のVが0.005%以下を満たすことと規定した。
なお、本発明に係る真空浸炭歯車用鋼の化学組成は、0.10〜0.50%のMoを含み、Si、Mn及びMoの含有量が、Si+Mn+4Mo:2.80%以下であってもよい。以下、このことについて説明する。
Mo:0.10〜0.50%
Moは、フェライトを強化する作用及び浸炭層の焼戻し軟化抵抗を高める作用を有する。これらの効果を得るためには、Moは0.10%以上の含有量が必要である。しかしながら、Moの含有量が0.50%を超えると真空浸炭前の組織中にベイナイト組織の生成が認められ、被削性の低下をきたす。したがって、本発明(2)においては、Moの含有量を0.10〜0.50%とした。なお、Moを含有する場合、その含有量は、0.10〜0.40%とすることが好ましい。
Si+Mn+4Mo:2.80%以下
Mo含有の場合には、Si、Mn及びMoの含有量が、「Si+Mn+4Mo」の値で2.80%を超えると、焼準後の鋼の硬さがHv硬さで240を超えるので被削性が低下する。
したがって、Mo含有の本発明(2)の場合には、Si、Mn及びMoは、それぞれ、前述の含有量範囲で、しかも、「Si+Mn+4Mo」の値で2.80%以下を満たすこととした。
上記の理由から、本発明(2)に係る真空浸炭歯車用鋼の化学組成をC:0.13〜0.30%、Si:0.50%を超えて1.50%以下、Mn:0.70〜1.50%、P:0.10%以下、S:0.01〜0.05%、Cr:0.70〜1.50%、Nb:0.010〜0.050%、Mo:0.10〜0.50%、Al:0.010〜0.050%及びN:0.0100〜0.0250%を含有するとともに、Si、Mn、Cr及びMoの含有量が、Si+Mn+4Mo:2.80%以下及び4Mn+4Cr−Si:7.2〜9.0%を満たし、残部はFe及び不純物中からなり、不純物中のVが0.005%以下を満たすことと規定した。
(B)真空浸炭処理前の組織
本発明においては、真空浸炭処理前の組織がフェライト・パーライト組織で、そのフェライト粒径が100μm以下であることが必要である。以下、このことについて説明する。
先ず、真空浸炭処理前の組織をフェライト・パーライト組織と規定するのは、切削加工前の組織である真空浸炭処理前の組織をフェライト・パーライト組織にすることによって、切削加工前の硬さが安定してビッカース硬さで240以下となって、良好な被削性を確保することができるからである。
なお、「フェライト・パーライト組織」とは、フェライトとパーライトの混合組織を指す。
次に、真空浸炭処理前のフェライト・パーライト組織におけるフェライト粒径を100μm以下と規定するのは、前記フェライト粒径を100μm以下とすることによって、1000℃を超えるような高温で真空浸炭処理での異常粒成長を抑止できるからである。
なお、上記フェライト粒径は小さいほど好ましく、望ましくは50μm以下、更に望ましくは30μm以下とする。
上記フェライト・パーライト組織における「フェライト粒径」が、倍率200倍の光学顕微鏡写真(面積で200μm×300μmの領域に相当)を画像処理することによって求めた各フェライト粒の面積から計算したいわゆる「相当円直径」の平均値を指すこと、また、上記フェライトにはパーライト中のフェライトは含まないことは、既に述べたとおりである。
なお、前記(A)項に記載の化学組成を有する鋼は、例えば、これに1250℃以上に昇温後、30分以上保持の後、放冷し、更に900〜950℃に昇温後、30〜180分保持し、10〜30℃/分の速度で冷却する処理を行うことで、容易にその真空浸炭処理前の組織を、「フェライト・パーライト組織で、そのフェライト粒径が100μm以下であるもの」とすることができ、1100℃程度までの高温での真空浸炭における異常粒成長を抑止できる。
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明する。
〔実施例1〕
表1に示す化学組成を有する鋼1を180kg真空溶解炉によって溶解し、インゴットを作製した。
なお、上記の鋼1は、化学組成が本発明で規定する範囲内にある鋼である。
Figure 2008133501
上記のインゴットに、1250℃で30分保持の処理を施した後、熱間鍛造を行って直径35mmの丸棒とした。なお、熱間鍛造の仕上げ温度は1000℃を下回らないようにし、熱間鍛造後の冷却は大気中での放冷とした。
次いで、上記の直径35mmの丸棒を1250℃に加熱し、60分保持した後、室温まで大気中放冷する熱処理を行った。
このようにして得た直径35mmの丸棒の横断面中心から10mmの位置を基準にして、直径が8mmで長さが30mmの試験片を5本切り出した。
上記の直径が8mmで長さが30mmの各試験片を真空熱処理炉で925℃に加熱し、120分保持してから、組織が変わるように600〜5℃/分の冷却速度で室温まで冷却した。
上記冷却後の各試験片を長さ10mmと長さ20mmに分割し、このうち長さ10mmの各試験片を樹脂に埋め込み、鏡面研磨してからナイタールで腐食し、組織及びフェライト粒径を調査した。
なお、「フェライト粒径」は、倍率200倍の光学顕微鏡写真(面積で200μm×300μmの領域に相当)を画像処理することによって求めた各フェライト粒の面積から計算したいわゆる「相当円直径」の平均値から求めた。
また、分割した残りの長さ20mmの各試験片は、真空浸炭炉に装入後、1時間で1050℃まで昇温し、浸炭時間を7分、拡散時間を20分の浸炭処理を行った後、30分で850℃まで降温し、更に30分間保持した後に油温60℃の油中に焼入れした。なお、この時の浸炭深さの目標は1.0mmとした。
次いで、上記のようにして得た各試験片の横断面を鏡面研磨し、界面活性剤を添加したピクリン酸飽和水溶液で腐食して、オーステナイト結晶粒径を測定し、異常粒成長の有無を調査した。
なお、「オーステナイト粒径」も上記「フェライト粒径」と同様に、倍率200倍の光学顕微鏡写真(面積で200μm×300μmの領域に相当)を画像処理することによって求めた各オーステナイト粒の面積から計算したいわゆる「相当円直径」の平均値から求めた。そして、上記のようにして得た「オーステナイト粒径」の3倍以上の粒径のオーステナイト粒が存在する場合に、異常粒成長していると判定した。
表2に、上記の各調査結果を示す。
Figure 2008133501
表2から、化学組成が本発明で規定する範囲内にある鋼であっても、真空浸炭前の組織におけるフェライト粒径が100μm以上の場合には、異常粒成長が生じることが明らかである。
〔実施例2〕
表3に示す化学組成を有する鋼1〜20を180kg真空溶解炉によって溶解し、インゴットを作製した。
表3中の鋼1〜8は、化学組成が本発明で規定する範囲内にある鋼である。一方、鋼9〜20は、化学組成が本発明で規定する条件から外れた比較例の鋼である。
なお、鋼1は前記表1に示した鋼そのもので、表3に再掲したものである。
Figure 2008133501
上記の各インゴットに、1250℃で30分保持の処理を施した後、熱間鍛造を行って直径35mmの丸棒とした。なお、熱間鍛造の仕上げ温度は1000℃を下回らないようにし、熱間鍛造後の冷却は大気中での放冷とした。
このようにして得た各鋼の直径35mmの丸棒を1250℃に加熱し、60分保持した後、室温まで大気中放冷する熱処理を行った。この後更に、925℃に加熱し、120分保持してから、10〜30℃/分の冷却速度で室温まで冷却した。
このようにして得た直径35mmの丸棒を端から100mmの位置で切断し、切断面の組織及びフェライト粒径を測定するとともにビッカース硬さを測定した。なお、鋼1については、実施例1で直径が8mmで長さが30mmの試験片を5本切り出したのとは反対側の端から100mmの位置で切断した。
組織、フェライト粒径及びビッカース硬さの測定は、前記の切断面が被検面となるように樹脂埋めし、鏡面研磨してから実施した。
すなわち、組織とフェライト粒径については、鏡面研磨した面をナイタールで腐食して調査した。
なお、「フェライト粒径」は、倍率200倍の光学顕微鏡写真(面積で200μm×300μmの領域に相当)を画像処理することによって求めた各フェライト粒の面積から計算したいわゆる「相当円直径」の平均値から求めた。
一方、ビッカース硬さの測定は、JIS Z 2244(2003)における「ビッカース硬さ試験−試験方法」に準拠して、鏡面研磨した断面の中心から直径の1/4の位置にある4点について、試験力を98Nとして実施し、上記4点における平均値をもってビッカース硬さとした。
なお、上記のビッカース硬さは240以下であることを目標とした。これは、既に述べたように、ビッカース硬さが240以下であれば、良好な被削性を確保することができるためである。
また、前記のようにして得た直径35mmの丸棒の中心部から、図1に示す形状の二円筒転がり疲労試験に用いる小ローラ試験片及び図2に示す形状の四点曲げ試験片を切り出した。
上記の試験片は、いずれも、試験面を研削した後、真空浸炭処理した。具体的には、真空浸炭炉に装入後、1時間で1020℃まで昇温し、浸炭時間を6分、拡散時間を12分の浸炭処理を行った後、30分で850℃まで降温し、更に30分保持した後に油温60℃の油中に焼入れした。なお、この時の浸炭深さの目標は0.8mmとした。
焼入れ後、各試験片は170℃の無酸化焼戻し炉で120分保持した後、窒素ガスを吹き付けて冷却した。
以上のようにして、試験番号1〜20の試験片を作製した。
また、比較のため、鋼19を用いてガス浸炭処理を行った上記の小ローラ試験片及び四点曲げ試験片を、試験番号21として作製した。すなわち、真空浸炭処理品と同様に試験面を研削した後、930℃でガス浸炭処理し、油温60℃の油中に焼入れした。なお、処理時間は180分であり、浸炭深さの目標は0.8mmとした。
焼入れ後、各試験片は170℃の大気中で120分保持した後、空冷の焼戻しを行った。
上記の「浸炭焼入れ−焼戻し」を施した小ローラ試験片を用いて、浸炭焼入れ−焼戻し後の浸炭層における残留オーステナイト量を測定した。すなわち、小ローラ試験片の表面から10μmを電解研磨により除去した後、X線回折を用いて、マルテンサイト相による回折線の積分強度とオーステナイト相による回折線の積分強度を比較することにより残留オーステナイト量を求め、浸炭焼入れ−焼戻し後の浸炭層における残留オーステナイト量を決定した。
二円筒転がり疲労試験に用いる小ローラ試験片は、上記の焼戻し後に、その掴み部を仕上げ、表4に示す条件で二円筒転がり疲労試験を実施し、面圧疲労強度を調査した。
Figure 2008133501
なお、二円筒転がり疲労試験に用いる大ローラ試験片には、JIS G 4053(2003)で規定されたSCM822を機械加工後、ガス浸炭焼入れし、更に表層を50ミクロン研削したものを使用した。
具体的には、素材を直径150mmに熱間鍛造後、1250℃に加熱し、60分間保持した後、室温まで大気中放冷する熱処理を行った。この後更に、925℃に加熱し、120分間保持した後、10℃/分の冷却速度で室温まで冷却した。
次いで、上記の処理を施した素材を機械加工し、半径150mmのクラウニングをもつ直径が130mmで幅が20mmの形状のローラに加工した。上記ローラには、全浸炭深さの目標を1.5mmとして、930℃でガス浸炭処理を施した後、油温60℃の油中に焼入れした。焼入れ後、ローラは170℃の大気中で120分保持した後、空冷の焼戻しを行った。その後、クラウニング面を50ミクロン研磨して、大ローラ試験片に仕上げた。
なお、面圧疲労強度は、前記表4に示すように、小ローラの回転数を1000rpmとし、大ローラのすべり率が80%となる条件で試験中の荷重が一定となる条件で、二円筒転がり疲労試験を実施した。この際、市販のATF(オートマティックトランスミッション油)を、油温40℃、2リットル/分の条件で接触部に試験片の回転逆方向から吐出した。
各試験荷重において、疲労剥離が生じるまで、或いは、疲労剥離が生じない場合には2×107回に至るまで、二円筒転がり疲労試験を継続し、2×107回まで疲労剥離が生じなかった条件のうち、最大の荷重となった場合の計算ヘルツ応力を面圧疲労強度とした。なお、この面圧疲労強度の目標は3000MPa以上とし、面圧疲労強度が目標とする3000MPa以上の場合に、面圧疲労強度に優れるものとした。
また、前記の「浸炭焼入れ−焼戻し」を施した四点曲げ試験片を用いて、切欠部に常に引張応力がかかるように、応力比0.1、繰返し速度5Hzの条件で四点曲げ疲労試験を実施して低サイクル曲げ疲労特性を調査し、S−N線図から1000回曲げ疲労強度を求めた。なお、この1000回曲げ疲労強度の目標は1000MPa以上とし、1000回曲げ疲労強度が目標とする1000MPa以上の場合に、低サイクル曲げ疲労強度に優れるものとした。
更に、前記の「浸炭焼入れ−焼戻し」を施した小ローラ試験片の横断面を鏡面研磨し、界面活性剤を添加したピクリン酸飽和水溶液で腐食して、オーステナイト結晶粒径を測定し、異常粒成長の有無を調査した。
なお、「オーステナイト粒径」も前記「フェライト粒径」と同様に、倍率200倍の光学顕微鏡写真(面積で200μm×300μmの領域に相当)を画像処理することによって求めた各オーステナイト粒の面積から計算したいわゆる「相当円直径」の平均値から求めた。そして、上記のようにして得た「オーステナイト粒径」の3倍以上の粒径のオーステナイト粒が存在する場合に、異常粒成長していると判定した。
表5に、上記の各調査結果を示す。
Figure 2008133501
表5から、本発明の条件を満たす試験番号1〜8の場合、従来のガス浸炭用鋼である試験番号21と同等以上の3000MPa以上の面圧疲労強度と1000MPa以上の1000回曲げ疲労強度を有し、面圧疲労強度と曲げ疲労強度、なかでも低サイクル曲げ疲労強度に優れており、しかも、異常粒成長も生じていないことが明らかである。
これに対して、本発明で規定する条件から外れた比較例の試験番号9〜20の場合、本発明の目標に達していない。
試験番号9の場合、鋼9の「Si+Mn」の値が本発明で規定する範囲を超えるため、Hv硬さが240を超え、被削性が低下する。更に、「4Mn+4Cr−Si」の値も本発明で規定する範囲を超えるため浸炭層における残留オーステナイト量が過多となり、面圧疲労強度は3000MPaに達していない。
試験番号10の場合も、鋼10の「Si+Mn」の値が本発明で規定する範囲を超えるため、Hv硬さが240を超え、被削性が低下する。
試験番号11の場合、鋼11の「4Mn+4Cr−Si」の値が本発明で規定する範囲を下回るため、浸炭層における残留オーステナイト量の生成が少なく、いわゆる「なじみ性」が確保されないので、面圧疲労強度は3000MPaに達していない。
試験番号12の場合、鋼12の「4Mn+4Cr−Si」の範囲が本発明で規定する範囲を超えるため浸炭層における残留オーステナイト量が過多となり、面圧疲労強度は3000MPaに達していない。
試験番号13の場合、鋼13のSiの含有量が本発明で規定する範囲を下回るため、焼戻し軟化抵抗が低く、面圧疲労強度が3000MPaに達していない。
試験番号14〜17の場合、鋼14〜17のMn含有量が、いずれも本発明で規定する範囲を下回るため、浸炭層における残留オーステナイト量が少なく、いわゆる「なじみ性」が確保できず凝着摩耗起因のピッチングが生じるため、面圧疲労強度は3000MPaに達していない。
試験番号18の場合、鋼18のCr含有量が本発明で規定する範囲を上回るため、真空浸炭焼入れ後の浸炭層の粒界に網目状のセメンタイトが生成して、低サイクル曲げ疲労強度(1000回曲げ疲労強度)が低く、曲げ疲労強度は目標に達していない。
試験番号19の場合、鋼19はSiの含有量が本発明で規定する範囲を下回るため、焼戻し軟化抵抗が低く、面圧疲労強度は3000MPaに達していない。
試験番号20の場合、鋼20のSi含有量が本発明で規定する範囲を下回るため、焼戻し軟化抵抗が低く、面圧疲労強度は3000MPaに達しておらず、また、V含有量が本発明で規定する範囲を上回るため、真空浸炭処理時に異常粒成長が生じるため、低サイクル曲げ疲労強度(1000回曲げ疲労強度)が低く、曲げ疲労強度は目標に達していない。
なお、既に述べたように、試験番号21は、鋼19をガス浸炭処理した比較材である。
本発明の真空浸炭歯車用鋼を用いれば、従来850〜980℃程度で行われていたガス浸炭処理を1000℃を超えるような高温での真空浸炭処理に変更して生産効率を向上させた場合にも、炭素の含有量が0.2質量%程度である低炭素合金鋼を用いてガス浸炭処理した従来の場合と同等以上の面圧疲労強度及び従来と同等以上の曲げ疲労強度、なかでも低サイクル曲げ疲労強度が得られ、しかも、異常粒成長が抑止できるので、浸炭時間の短縮による製造コストの合理化が行える。なお、この真空浸炭歯車用鋼は被削性にも優れているので、切削加工によって容易に所定の歯車形状に成形することができる。
実施例の二円筒転がり疲労試験に用いた小ローラ試験片の形状を示す図である。 実施例の四点曲げ試験に用いた四点曲げ試験片の形状を示す図である。

Claims (2)

  1. 質量%で、C:0.13〜0.30%、Si:0.50%を超えて1.50%以下、Mn:0.70〜1.50%、P:0.10%以下、S:0.01〜0.05%、Cr:0.70〜1.50%、Nb:0.010〜0.050%、Al:0.010〜0.050%及びN:0.0100〜0.0250%を含有するとともに、Si、Mn及びCrの含有量が、Si+Mn:2.50%以下及び4Mn+4Cr−Si:7.2〜9.0%を満たし、残部はFe及び不純物からなり、不純物中のVが0.005%以下の化学組成を有し、かつ、真空浸炭前の組織がフェライト・パーライト組織で、そのフェライト粒径が100μm以下であることを特徴とする真空浸炭歯車用鋼。
  2. 質量%で、C:0.13〜0.30%、Si:0.50%を超えて1.50%以下、Mn:0.70〜1.50%、P:0.10%以下、S:0.01〜0.05%、Cr:0.70〜1.50%、Nb:0.010〜0.050%、Mo:0.10〜0.50%、Al:0.010〜0.050%及びN:0.0100〜0.0250%を含有するとともに、Si、Mn、Cr及びMoの含有量が、Si+Mn+4Mo:2.80%以下及び4Mn+4Cr−Si:7.2〜9.0%を満たし、残部はFe及び不純物中からなり、不純物中のVが0.005%以下の化学組成を有し、かつ、真空浸炭前の組織がフェライト・パーライト組織で、そのフェライト粒径が100μm以下であることを特徴とする真空浸炭歯車用鋼。
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