JP6950821B2 - 機械部品とその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、真空浸炭と高周波加熱による焼入れを併用し、表層組織を微細化し、疲労強度を高めた機械部品とその製造方法に関する。
自動車に使用されるトランスミッション部品には、曲げ疲労強度、ピッティング強度などを向上させるため、表面硬化処理が施される。近年、自動車の燃費改善の観点から、トランスミッション部品の小型化、軽量化が求められており、前記の各種疲労強度の向上が求められている。
例えば、歯車を製造する場合、表面硬化処理の手段としては浸炭焼入れが一般的である。ガス浸炭処理した際には、鋼材表面に粒界酸化層や不完全焼入れ層が生成し、これらは疲労強度を低下させることが知られている。そのため、酸化性元素であるSi、Mn、Crを低減した鋼が提案されているが、こうした合金元素の調整のみでは、曲げ疲労強度、ピッティング強度の大幅な改善を得ることはできない。
一方、真空浸炭では、粒界酸化が生成せず、ガス浸炭と比較し高い疲労強度を得ることができる、高温での浸炭処理が可能なため、ガス浸炭と比較し処理時間を短縮することができるなどの利点がある。しかし、高温で浸炭を行うと、オーステナイト結晶粒が粗大化し、浸炭焼入れ後の部品の疲労強度を低下させる原因となる。
そのため、疲労強度を向上させるには、高温で浸炭してもオーステナイト結晶粒の粗大化を抑制するのみならず、通常の高温浸炭時のオーステナイト結晶粒よりも微細化させる必要がある。浸炭焼入れした部品の旧オーステナイト粒を微細化する手段として、これまでに種々の方法が提案されている。
例えば特許文献1では、浸炭後に高周波加熱により鋼部品全体を10℃/秒以上の速度でオーステナイト領域に加熱することで、浸炭硬化層のオーステナイト結晶粒度を9番以上にする技術が記載されている。また、特許文献2には真空浸炭後に徐冷し、組織のマルテンサイト化を避け、その後高周波焼入れを行うことで、ひずみが小さく、表面強度を向上させる技術が開示されている。
また、特許文献3には、C:0.45〜0.75質量%及びV:0.05〜0.35質量%を含有する鋼材に対して、高周波焼入れによる2回の熱処理を行うことによって、最表面から0.3〜3.0mm深さのマルテンサイト組織の焼入領域がHV620以上且つ内部硬さが300HV以上である高周波焼入れ歯車の製造方法が開示されている。
また、特許文献4には、機械構造用鋼を部品形状に成形した後、真空浸炭焼き入れを行い、その後に1回以上の高周波焼き入れを行った後、これを焼き戻しすることにより浸炭部品を製造する浸炭部品の製造方法が開示されている。
また、特許文献5には、C:0.08%以上0.3%未満であり且つその他成分が適正化された鋼からなる部品に対し、真空浸炭処理後、マルテンサイト組織を生じさせない冷却速度で徐冷し、その後、高周波焼入処理を施す浸炭高周波焼入部品の製造方法が開示されている。
特開平8−92690号公報 特開2008−280610号公報 特開2015−175023号公報 特開2010−7120号公報 特許第5129564号公報
しかしながら、前述した従来の技術には、以下に示す問題点がある。
特許文献1では浸炭後に鋼部品全体をオーステナイト域に加熱して焼入れすることにより、結晶粒度を微細化すると述べているものの、本技術で得られる結晶粒度では、疲労強度を従来よりも大きく向上させるのに不十分である。特許文献2は浸炭後に焼入れをしておらず、焼入れは高周波焼入れ時の1回のみであるため、十分な細粒化ができる技術ではない。
また、特許文献3では、C含有量が高い鋼材が用いられるので、歯車に形状加工するための加工性又は被削性が不十分である。特許文献4、5には、高周波焼戻し工程に形成される炭窒化物の作用が開示されていないので、疲労特性の大幅な改善を得ることはできない。
本発明は、真空浸炭後に高周波焼入れを行うことで、鋼材表層部のオーステナイト粒を微細化し、硬度を上昇させることで、耐ピッティング特性、曲げ疲労特性に優れた機械部品を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記の課題を解決するために鋭意研究した結果、以下の新たな知見を見出した。図1、図2を用いて、当該知見について詳述する。
(a)所定の組成を持つ鋼材に対して、図1に示す真空浸炭工程を行うことで、表面近傍に浸炭異常層である粒界酸化層をほとんど生成せずに、部品表面から1.5mmまでの深さの領域における鋼中のC含有量を高め、さらに、図1に示す高周波焼入れ工程を行うことで、JIS G 0551(2013)に準拠して測定される部品表面から0.2mmまでの深さの領域における旧オーステナイト結晶粒度が、JIS粒度番号で12番以上の組織を得ることができる、との知見を得た。
また、前記真空浸炭工程及びその後の前記高周波焼入れ工程によって、図2に示すように、部品表面から0.2mmまでの深さの領域におけるビッカース硬さを750HV以上とし、加えて、ビッカース硬さが550HVとなる鋼材表面からの深さを示す有効硬化層深さ(JIS G 0557:2006)を0.5〜1.2mmとすることができた。その結果、耐ピッティング特性と曲げ疲労特性を向上させることができた。
(b)均一で微細な旧オーステナイト結晶粒を得るために、図1に示す高周波焼入れ工程において、520〜730℃の表面温度Tに到達するまで10〜1000℃/秒の加熱速度で高周波加熱し、その後、表面温度が300〜450℃程度になるまで放冷し、続いて、再度高周波加熱により鋼表面から0.5mmにおける領域を800〜1000℃の温度Tにした後、急冷して焼入れすることが重要である。
この工程において、再度高周波加熱がなされる前の高周波加熱工程、つまり、表面温度が300〜450℃程度になるまで放冷を行う前の高周波加熱工程は高周波焼戻しに相当する。この高周波焼戻し段階で、鋼中にセメンタイトや微細炭窒化物などの析出物を分散させることができる。微細炭窒化物を得るには鋼中へのNbまたはVのうちの少なくとも1種の添加が特に有効である。前記放冷工程に引き続く再度高周波加熱時に、セメンタイトや微細炭窒化物(Nb及び/又はVの析出物)は、オーステナイト核の生成サイトになったり、結晶粒成長を妨げるピン止め粒子となることで旧オーステナイト粒の微細化に寄与する。その結果、JIS粒度番号で12番以上の微細組織となる。この高周波焼戻しを行わない場合は、結晶粒は粗大な粒を含む混粒組織となる。
本発明は、上記知見に基づき、さらに詳細に検討した結果得られたものであり、その要旨は以下の通りである。
(1)表面からの深さが0.2mmまでの領域である表層と、
前記表面からの深さが1.5mm以上の深さの領域である芯部と、
前記表層と前記芯部との間の中間層と、を有し、
前記表面からの深さが0.05mmの位置でのビッカース硬さが750HV以上であり、
前記芯部において、ビッカース硬さが200〜450HVであり、
ビッカース硬さが550HVとなる深さを示す有効硬化層深さが、表面から0.5〜1.2mmであり、
前記表層上に形成された粒界酸化層の厚さは0.0〜2.0μmであって、
前記芯部は、
組成が、質量%で、
C :0.10〜0.40%、
Si:0.10〜3.00%、
Mn:0.30〜3.00%、
Cr:0.10〜3.00%、
Al:0.003〜0.050%及び
N:0.0030〜0.0300%
を含有し、
さらに、Nb:0%超0.200%以下及びV:0%超0.800%以下のうち少なくとも1種と、Ti:0.100%以下とを下記式(1A)及び(1B)の範囲にて含有し、
さらに、任意元素として、
Ca:0〜0.0045%、
Mg:0〜0.0045%、
Zr:0〜0.0045%、
REM:0〜0.0045%、
Mo:0〜0.50%、
Ni:0〜1.00%、
Cu:0〜1.00%、
B:0〜0.0050%、
Te:0〜0.050%、
Bi:0〜0.050%、
Pb:0〜0.050%、
Sn:0〜0.050%、
Zn:0〜0.050%及び
Sb:0〜0.050%
からなる群から選択された1種または2種以上を含有し、
P:0.050%以下、S:0.050%以下に制限され、残部がFeおよび不純物からなり、
前記表層は、
C含有量が0.70%以上であり、
組織が焼戻しマルテンサイトおよび残留オーステナイトであり、
旧オーステナイト結晶粒径がJIS粒度番号で12番以上であり、
JIS G 0551(2013)によって規定される混粒が存在せず、
円相当径1〜50nmの析出物が、下記式(2)を満たすことを特徴とする機械部品。
0.010≦[Ti%]+[Nb%]+[V%]≦0.800・・・(1A)
0.010≦[Nb%]+[V%]・・・(1B)
ここで、式(1A)及び式(1B)中の[Ti%]、[Nb%]及び[V%]の各記号には、それぞれTi、NbおよびVの含有量(質量%)が代入され、元素が含まれないときは0が代入される。
A×B−0.67≦6000・・・(2)
ここで、式(2)において、Aは前記表層に存在する前記析出物の平均粒径(nm)、Bは前記表層に存在する前記析出物の面積分率である。
(2)前記芯部がさらに質量%で、
Ca:0.0001〜0.0045%、
Mg:0.0001〜0.0045%、
Zr:0.0001〜0.0045%、
REM:0.0001〜0.0045%、
Mo:0.01〜0.50%、
Ni:0.05〜1.00%、
Cu:0.05〜1.00%、
B:0.0003〜0.0050%、
Te:0.001〜0.050%、
Bi:0.001〜0.050%、
Pb:0.001〜0.050%、
Sn:0.001〜0.050%、
Zn:0.001〜0.050%、および
Sb:0.001〜0.050%、からなる群から選択された1種または2種以上を含有することを特徴とする(1)に記載の機械部品。
(3)(1)又は(2)に記載の前記芯部の組成を有する鋼材を機械部品の成形体に成形し、
前記成形体に対して、浸炭温度が850〜1100℃、浸炭時間と拡散時間の和を10〜500分の条件で真空浸炭処理を施し、次いで焼入れし、
引き続いて、下記式(3)を満足する条件で520〜730℃の表面温度(T)に到達するまで10〜1000℃/秒の加熱速度(K)で前記成形体を高周波加熱して、
その後放冷して450℃以下の表面温度とした後、
前記成形体の表面からの深さが0.5mmにおける領域を800〜1000℃の温度(T)に再度高周波加熱して、焼入れし、
さらに130〜200℃で30〜120分焼戻すことを特徴とする(1)又は(2)に記載の機械部品の製造方法。
1.00≦1.67×10−3×T+0.0789×LogT−0.0789×LogK≦1.37・・・(3)
本発明の機械部品では、所定の表面硬さ、硬さ分布及び旧オーステナイト粒径を得ることにより、耐ピッティング特性、曲げ疲労特性を向上させることができる。
本発明に係る機械部品の製造方法における真空浸炭工程、およびそれに引き続く高周波焼入れ工程の模式図を示す。 本発明に係る機械部品で得られる深さ方向におけるビッカース硬さ分布の一例を示すグラフ(硬さプロファイル)である。
[本発明の機械部品]
まず、本発明の機械部品の表面からの深さが1.5mm以上の領域(以下、単に「芯部」と略すことがある。)の組成を限定する理由について説明する。尚、前記「表面からの深さ」とは、前記部品表面から垂直に前記部品内部方向に測定した距離をいう。また、前記芯部は真空浸炭前後において組成が変わらない部分であるため、この部分の組成は素材である鋼の成分組成を意味する。以下、「%」は、「質量%」を意味する。
(C:0.10%以上0.40%以下)
上記のC量は、機械部品として必要な強度を得る上で適切な範囲である。Cの添加量が0.10%未満であると硬さが低いために必要な強度が得られず、一方、Cの添加量が0.40%よりも多いと、鋼の靭性が劣化し、さらに素材硬さの上昇を通じて部品の切削や鍛造等の加工を行うときの加工性が顕著に劣化する。このためC量は0.10%以上0.40%以下とする。C量の好適な範囲は0.15%以上0.25%以下である。
(Si:0.10%以上3.00%以下)
Siは焼戻し時に析出するε炭化物から比較的粗大なセメンタイトへの遷移を抑制し、低温焼戻しマルテンサイト鋼の焼戻し軟化抵抗を顕著に増加させる。これにより鋼の面疲労強度が向上する。この効果を得るために、Siを0.10%以上添加する必要がある。一方、3.00%を超えてSiを添加すると、焼戻し軟化抵抗の増加の効果が飽和するばかりでなく、素材硬さの上昇を通じて加工性が顕著に劣化する。また、Siはフェライトを安定化するため、3.0%を超えて添加すると高周波加熱時にフェライトが残留し、均一なオーステナイトが得られなくなる場合がある。その結果として、焼入れ後に均一なマルテンサイト組織が得られなくなる場合がある。従って、Si量を0.10%以上3.00%以下の範囲にする必要がある。Si量の好適な範囲は0.20%以上1.10%以下である。
(Mn:0.30%以上3.00%以下)
Mnは鋼の焼入性を高める効果があり、浸炭焼入れ時及び高周波焼入れ時にマルテンサイト組織を得るために有効である。この効果を得るために、Mnを0.30%以上添加する必要がある。一方、Mnの添加量が3.00%よりも多いと、鋼の靭性が劣化し、さらに素材硬さの上昇を通じて加工性が顕著に劣化する。このためMn量は0.30%以上3.0%以下の範囲にする必要があり、好ましくは0.50%以上2.00%以下である。
(Cr:0.10%以上3.00%以下)
Crは、焼入れ性を向上すると共に、焼戻し軟化抵抗を付与する。Cr含有量が0.10%未満だと、これらの効果が得られない。一方、Cr含有量が3.00%を超えると、焼入れ後に残留オーステナイト量が多くなり、硬さが低下する。また、Crがセメンタイト中に濃化して安定化することによって、高周波焼入れ時の炭化物のオーステナイトへの溶け込みを阻害し、焼入領域の硬さムラの原因となる。よって、Cr量を0.10%以上3.00%以下の範囲にする必要がある。Cr量の好適な範囲は0.50%以上1.70%以下である。
(Al:0.003%以上0.050%以下)
Alは、Nと結合してAlNを形成し、オーステナイト領域での結晶粒粗大化を抑制する作用がある。この効果を得るためには、Alの含有量を0.003%以上とする必要がある。しかしながら、Alを過剰に含有すると、粗大な酸化物として残存しやすくなり、疲労特性が低下する。したがって、Al量の好適な範囲は0.003%以上0.050%以下であり、好ましくは0.010%以上0.030%以下である。
(N:0.0030%以上0.0300%以下)
Nは、Alと結合してAlNを形成し、オーステナイト領域での結晶粒粗大化を抑制する作用がある。この効果を得るためにはNの含有量を0.0030%以上とする必要がある。しかしながら、Nを過剰に含有すると、1000℃以上の高温域における延性が低下し、連続鋳造、圧延時の歩留まり低下の原因になる。したがって、Nの含有量を0.0030%以上0.0300%以下とし、好ましくは0.0080%以上0.0250%以下であり、さらに好ましくは0.0100%以上0.0180%以下である。
(Nb:0%超0.200%以下及びV:0%超0.800%以下の少なくとも1種と、Ti:0.100%以下を含有)
Ti、NbおよびVは、C及び/又はNと微細な炭化物、窒化物、及び/又は、炭窒化物を形成して、オーステナイト温度域加熱時の結晶粒成長を抑制して、組織の微細均質化に寄与し、疲労特性を改善する。この効果を得るために、Ti、NbおよびVは、1種または2種以上を、それぞれ0.100%以下、0.200%以下、および0.800%以下の範囲で、NbおよびVのうち少なくとも1種を含有し、且つ合計含有量が下記の式(1A)及び(1B)を満たすように添加する。いずれも過剰に添加すると、粗大な硬質の炭化物が生成して被削性が低下する。Ti、NbおよびVの好ましい添加量はそれぞれ0.020%以上0.050%以下、0.010%以上0.050%以下および0.050%以上0.300%以下である。
0.010≦[Ti%]+[Nb%]+[V%]≦0.800・・・(1A)
0.010≦[Nb%]+[V%]・・・(1B)
ここで、(1A)式及び(1B)式中の[Ti%]、[Nb%]及び[V%]の各記号には、それぞれTi、NbおよびVの含有量(質量%)が代入され、元素が含まれないときは、0を代入する。
(1A)式の下限に関して、好ましい範囲は0.110<[Ti%]+[Nb%]+[V%]である。より好ましくは、0.140<[Ti%]+[Nb%]+[V%]である。さらに好ましくは、0.300<[Ti%]+[Nb%]+[V%]である。
(1A)式の上限に関して、好ましい範囲は[Ti%]+[Nb%]+[V%]≦0.600である。より好ましくは、[Ti%]+[Nb%]+[V%]≦0.500である。さらに好ましくは、[Ti%]+[Nb%]+[V%]≦0.400である。
(1B)式に関して、好ましい範囲は0.020%≦[Nb%]+[V%]である。より好ましくは0.100≦[Nb%]+[V%]である。
(1B)式の値の上限については、特に明示の規定はなくともよい。しかし、(1A)式との兼ね合いから、当然に、[Nb%]+[V%]≦0.800となる。より好ましくは、[Nb%]+[V%]≦0.600であり、さらに好ましくは[Nb%]+[V%]≦0.500であるが、これらの目安は本発明を限定するものではない。
[任意元素]
鋼成分として、上記の基本成分に加え、Feの一部に代えて、以下に示す元素のうちから選んだ1種又は2種以上を任意元素として含有させると特性向上に効果的である。但し、任意元素は、必ずしも含有させる必要がないため、その下限は0%である。
(Ca:0%以上0.0045%以下、Mg:0%以上0.0045%以下、Zr:0%以上0.0045%以下、及び、REM:0%以上0.0045%以下の1種又は2種以上)
Ca、Mg、Zr、及びREM(希土類元素)は、いずれも脱酸元素であり、鋼中で酸化物を生成して被削性に有害なAlの生成を低減し、被削性改善に寄与する。また、鋼中のMnSの形態を制御して疲労特性の向上に寄与する元素である。これらの効果を得るためには、本発明鋼の優れた特性を損なわない範囲で、Ca、Mg、Zr、及び、REMを、いずれも、0.0001%以上添加してもよい。一方、Ca、Mg、Zr、及び、REMが0.0045%を超えると、酸化物が粗大化し、疲労強度が低下する。従って、Ca、Mg、Zr、及び、REMは0.0045%以下とし、好ましくは0.0020%以下とする。なお、REMは希土類金属元素を示し、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、及びLuから選択される1種以上である。
(Mo:0%以上0.50%以下、Ni:0%以上1.00%以下、Cu:0%以上1.00%以下、及びB:0%以上0.0050%以下のうちの1種又は2種)
Mo、Ni、Cu及びBは、いずれも、焼入れ性向上元素である。この効果を得るためには、本発明鋼の優れた特性を損なわない範囲で、Moは0.01%以上、Ni及びCuは0.05%以上、Bは0.0003%以上添加してもよい。Moが0.50%を超えると、焼入れ性が高くなりすぎて硬さの大幅な増大を招き、加工性が低下する。このため、Mo含有量は0.50%以下とし、好ましくは0.30%以下とする。Ni及びCuは1.00%を超えると、やはり、Moと同様に、焼入れ性が高くなりすぎて、加工性が低下する。このため、NiとCuの含有量の上限は1.00%とする。Bは0.0050%を超えて添加しても効果が飽和する。従ってBを添加する場合、B量を0.0003%以上0.0050%以下の範囲にする。B量の好適な範囲は0.0010%以上0.0025%である。
本発明では上記成分の他、本発明の効果を損なわない範囲で、Te、Bi、Pb、Sn、Zn、Sb等を任意元素として添加することができる。これら元素は必須ではないが、添加すれば、被削性改善の効果が期待できる。Te、Bi、Pb、Sn、Zn、Sbのうちの少なくとも1種を添加する場合、被削性の効果を得るためには、1種類当たり0.001%以上0.050%以下とすることが好ましい。
(P:0.050%以下)
Pは、不可避的不純物であり、オーステナイト粒界に偏析して、旧オーステナイト粒界を脆化させることによって粒界割れの原因となるので、できるだけ低減することが望ましい。このため、P量を0.050%以下の範囲に制限する必要がある。本発明の課題に関して特にP量の下限は無いが、P量を0.001%以下に制限するには過剰なコストがかかる。したがって、P量の好適な範囲は0.001%以上0.050%であり、さらに好ましい上限は0.020%である。
(S:0.050%以下)
Sは、不可避的不純物であり、MnSが疲労亀裂の伝播経路となることによって疲労強度や靭性が低下する原因となるので、できるだけ低減することが望ましい。このため、S量を0.050%以下の範囲に限定する必要がある。本発明の課題に関して特にS量の下限は無いが、S量を0.001%以下に制限するには過剰なコストがかかる。したがって、S量の好適な範囲は0.001%以上0.050%であり、さらに好ましい上限は0.020%である。
(O:0.0050%以下)
Oは、酸化物を生成する不可避的不純物であり、過剰な含有は靱性を著しく低下させるため、できるだけ低減することが望ましい。このため、O量を0.0050%以下の範囲に限定する必要がある。本発明の課題に関して特にO量の下限は無いが、O量を0.0005%以下に制限するには過剰なコストがかかる。したがって、O量の好適な範囲は0.0005%以上0.0030%であり、さらに好ましい上限は0.0020%である。
本実施形態に係る機械部品の素材の鋼の成分組成は以上の通りであり、残部はFe及び不純物である。なお、原料、資材、製造設備等の状況によっては、P、S及びO以外の不純物(例えばW、Ta、As、Co等)が鋼中に混入するが、本発明の優れた特性を阻害しない範囲であれば許容される。W量及びTa量はそれぞれ、0.010%以下とすることが好ましい。
次に、本実施形態に係る機械部品の硬さ、金属組織等について説明する。一般的に歯車等の機械部品には、疲労特性や耐摩耗性を与えるために、鋼素材を部品形状に加工した後、表面硬化処理が施される。本実施形態に係る機械部品では、真空浸炭およびその後の高周波焼入れ処理がこの表面硬化処理に相当する。この表面硬化処理によって、表面硬化処理として浸炭のみを採用して得られた部品(浸炭部品)よりも高い耐ピッティング特性、曲げ疲労特性を確保するためには、部品の表面硬さ、および有効硬化層深さを浸炭部品のもの以上に高める必要がある。
[粒界酸化層が0.0〜2.0μm]
本実施形態に係る機械部品では、粒界酸化層の厚さが0.0〜2.0μmである。ガス浸炭焼入れを行うと、浸炭雰囲気に存在する微量酸素と、酸素と親和性の高いSi,Mn,Crなどの合金元素が優先的に結合し、粒界酸化が生じる。粒界酸化は表面から粒界に沿い内部に向かう酸化を総称する。ここで、酸化によっては、表面から一様に生じるスケール(酸化被膜)も生成するので、スケールの厚さも粒界酸化に含まれる。
本発明において、粒界酸化層の厚さは、部品表面に生じた粒界酸化の前記部品表面から前記表面に垂直方向に部品内部側の最深地点までの最大深さである。通常、JIS規格鋼であるSCr420やSCM420にガス浸炭を施すと、表面から10〜20μm程度の深さ領域に粒界酸化層が生成する。一方、真空浸炭を施した場合には粒界酸化層がほとんど生成せず、生成したとしても2.0μm以下である。本実施形態にかかる機械部品は、真空浸炭により製造されるため、表層上に形成される粒界酸化層の厚さが薄く、2.0μm以下である。また、粒界酸化層を有さない(すなわち、粒界酸化層の厚さが0.0μmとなる)ケースも、本発明に含まれる。
[部品表面から0.2mm深さまでの領域における硬さ]
表面硬さ、すなわち表層(部品表面から0.2mmまでの深さの領域であって、粒界酸化層ではない領域)におけるビッカース硬さが750HV以上であれば、下記に示す旧オーステナイト結晶粒の微細化効果と相まって、従来の浸炭部品よりも高い耐ピッティング特性、曲げ疲労特性を得ることができる。
前記表面硬さは、表層におけるビッカース硬さを示すものである。特に本開示では、前記表面硬さの指標として、部品表面下0.05mmの深さにおけるビッカース硬さを採用した。
前記表面硬さを得るには、表層(表面からの深さが0.2mmまでの領域)におけるC含有量を0.70%以上とすることが必要である。表面からの深さが0.2mm地点におけるC含有量を測定することによって、表層におけるC含有量を測定することができる。このような測定方法は、X線マイクロアナライザー(EPMA)を用いて定量することによって行うことができる。
C含有量が0.70%以上の鋼材を焼入れた場合、表層の組織はマルテンサイトが主体で残留オーステナイトを含む組織となる。前記表層の組織のうち、残留オーステナイトは30%以下であり、それを超えると硬さが低下し、疲労強度を低下させる。なお、真空浸炭、高周波焼入れ後に低温で焼戻しが施されるため、マルテンサイトは焼戻しマルテンサイトとなる。好ましい表面硬さの上限は850HVである。
[表層における旧オーステナイト結晶粒径がJIS粒度番号で12番以上]
表層における旧オーステナイト粒に関し、旧オーステナイト結晶粒度がJIS粒度番号で12番以上とする。面疲労強度と曲げ疲労強度は旧オーステナイト結晶粒が小さいほど向上し、旧オーステナイト結晶粒度がJIS粒度番号で12番以上になると、浸炭部品よりも高い耐ピッティング特性、曲げ疲労特性を得ることができる。結晶粒径はJIS G 0551(2013)に記載の切断法により求められる。また、前記切断法は、光学顕微鏡像から得られた画像を用いて行われる。
[表層の円相当径1〜50nmの析出物が、A×B−0.67≦6000]
JIS粒度番号で12番以上の微細なオーステナイト結晶粒を得るには、表層に、NbまたはVのいずれかもしくは両方を含む炭窒化物が微細で多量に存在することが好ましい。具体的には、この領域に存在するNbまたはVのいずれかもしくは両方を含む炭窒化物の平均粒径をA(nm)、面積分率をBとすると、式(2)を満たすことによって、前記炭窒化物により、オーステナイト結晶粒の結晶粒成長を妨げるピニング効果が得られることを実験的に明らかにした。より好ましくはA×B−0.67≦4500、さらに好ましくはA×B−0.67≦3000である。
A×B−0.67≦6000・・・(2)
なお、本開示の機械部品においては、表層における円相当径1〜50nmの析出物は、ほとんどがNbまたはVのいずれかもしくは両方を含む炭窒化物である。よって、以降の説明は、表層に存在する円相当径1〜50nmの析出物は、いずれもNbまたはVのいずれかもしくは両方を含む炭窒化物であるとの前提で記載する。
炭窒化物の存在状態は、例えば当該領域から薄膜サンプルを作製し、透過電子顕微鏡観察することで確認することができる。約5μmの視野をEDSマッピングにより撮影し、撮影した炭窒化物を画像解析することにより、平均粒径と面積分率を求めることができる。
なお、ここでいう面積分率は、部品表面の表層から100〜180nmの厚さの薄膜を作製して電子線を透過させ、その時に撮影できる投影析出物の面積の撮影視野に対する比率を100nm厚さ分に換算した値とする。但し、余りに小さいものは観測が困難であり、また、投影される最大幅が50nm以上の介在物はほとんど存在しない。そのため、撮影される対象となる及び平均粒径の算出の対象となる析出物は、投影された最大幅が1〜50nm程度の範囲内のものとする。薄膜厚さは例えば透過電子顕微鏡を用いた収束電子回折や電子エネルギー損失分光法により測定することができる。
なお、本発明でいうNbまたはVのいずれかもしくは両方を含む炭窒化物とはNb(C,N)、V(C,N)もしくは(Nb,V)(C,N)で表され、成分の構成比がNよりもCのほうが大きいものをいう。また、Tiを含む炭窒化物も存在し、炭窒化物は(Nb,Ti)(C,N)、(V,Ti)(C,N)、(Nb,V,Ti)(C,N)となる場合があるが、これらもここでいう炭窒化物に入るものとする。炭窒化物の成分組成は、例えば透過電子顕微鏡により観察し、EDS分析を行うことにより調べることができる。
[混粒が表層に存在しないこと]
真空浸炭後高周波焼入れを行う工程では、高周波加熱が急速加熱であるため、高周波加熱によるオーステナイト化時の核生成サイトが少ないと、微細粒と粗大粒が混在する、いわゆる混粒組織になりやすい。混粒は粗大粒の領域から疲労破壊が起こり、疲労強度を低下させる原因となるため、その存在は好ましくない。ここでいう「混粒」とは、JIS G 0551(2013)で規定され、1視野内(1mm)において最大頻度を持つ粒度番号の粒から3以上異なった粒度番号の粒が偏在しており、これらの粒の面積が20%以上であることを意味する。
[有効硬化層深さが0.5〜1.2mm]
表面から内部に向かう硬さプロファイルを測定した時にビッカース硬さが550HVとなる前記表面からの深さを有効硬化層深さと呼ぶ。この有効硬化層深さは浅いほど内部から破壊が起こる可能性が高まるため、0.5mm以上とする必要がある。しかし、有効硬化層深さが深くなりすぎると表面の圧縮残留応力が低下して疲労強度の低下を招く傾向があるため、1.2mm以下が適切である。
[表面から1.5mm以上の深さの領域におけるビッカース硬さが200〜450HV]
部品表面からの深さが1.5mmよりも内部の領域(芯部)の硬さはHV200〜450の範囲内とする。芯部硬さが低いと、静曲げ強度や内部起点の破壊を呈する疲労強度を低下させるため、内部硬さはHV200以上とする必要がある。一方、内部硬さが高すぎると靭性が低下する。よって内部硬さはHV200〜450が適切である。
なお、本実施形態では、上記の通り、表面から0.2mmまでの領域を表層とし、表面から1.5mm以上の深さの領域を芯部とする。また、表層と芯部との間の領域(表面から0.2mmの深さから、表面から1.5mmの深さまでの領域)を中間層とする。
[本発明の製造方法]
次に、本発明に係る製造方法について説明する。本発明に係る製造方法は、上記鋼材成分を有する鋼を素材とし、歯車等の部品形状に成形した後、前記部品形状を有する成形体に対して浸炭焼入れを行う工程と、その後成形体に対して高周波焼入れを行う工程と、130〜200℃で焼戻しを行う工程とを含む。そして、浸炭焼入れ、高周波焼入れの加熱条件を所定の範囲に設定することにより、部品の表面硬さと有効硬化層深さを高めると同時に、部品表面からの深さが0.2mmまでの位置においてJIS粒度番号で12番以上の均一で微細な旧オーステナイト結晶粒が得られる。
[浸炭焼入れ]
浸炭焼入れ工程は、鋼部品の表面を硬化させ、部品として必要な耐ピッティング特性、曲げ疲労特性を確保するために必要不可欠な処理である。浸炭は、拡散現象を利用する処理であり、浸炭温度が850℃より低い場合、部品中に十分なCを拡散させるために長時間の加熱処理を行うことが必要となり、コストが高くなる。一方、浸炭温度が1100℃よりも高い場合、著しい粗粒化や混粒化を招くことになる。そのため、浸炭は850〜1100℃の温度域で行うのが好ましい。より好ましくは、900〜1050℃である。浸炭方法は真空浸炭とする。これは、粒界酸化が生成せず、ガス浸炭と比較し高い疲労強度を得ることができること、および高温での浸炭処理が可能なため、ガス浸炭と比較し処理時間を短縮することができることによる。
前記成形体表面に炭素を導入する浸炭時間と、ガスの供給を停止し、前記成形体表面の炭素をその内部へ拡散させる拡散時間の和は10〜500分とすることができる。処理時間が10分より短い場合、前記成形体表面および内部に十分な炭素が供給されず、目標の表面硬さおよび有効硬化層深さを得ることが出来ない。一方、処理時間が500分より長い場合、前記成形体材表面の炭素濃度が過剰となることで、粗大な炭化物が生成し、これが疲労破壊の起点となる。そのため、浸炭時間と拡散時間の和は10〜500分とするのが好ましい。なお真空浸炭に使用するガス種及び流量は特に限定されるものではないが、例えばアセチレン、プロパン、エチレン等の炭化水素ガスを用い、流量は5〜10L/分で行うことができる。
真空浸炭処理では、はじめに、例えば10Pa以下に減圧した炉内で前記成形体を所定の浸炭温度まで加熱を行う。次に、浸炭温度で前記成形体を均熱する均熱工程を行う。均熱工程における炉内の圧力は、100Pa以下であってもよいし、窒素ガスの導入と真空ポンプによる真空排気を同時に行なって、1000Pa以下の窒素雰囲気としてもよい。続いて、炉内に浸炭ガスを導入し、所定の浸炭ガス圧および浸炭温度で前記成形体を浸炭処理する浸炭工程を行う。浸炭工程における浸炭ガス圧は、高すぎれば炉内に煤が発生しやすくなる。したがって、浸炭ガス圧Psは10000Pa以下である。好ましい浸炭ガス圧は1000Pa以下である。その後、浸炭温度を維持した状態で前記成形体に侵入した炭素を前記成形体中に拡散させる拡散工程を行う。拡散工程における炉内の圧力は、浸炭工程における残留ガスを取り除くため、100Pa以下であってもよいし、窒素ガスの導入と真空ポンプによる真空排気を同時に行なって、1000Pa以下の窒素雰囲気としてもよい。
浸炭処理後に焼入れするのは、次の高周波加熱工程で結晶粒をより微細化するためである。この浸炭焼入れ方法については、水焼入れ、油焼入れなどがあるが、冷却媒体によって作用は変わらないため、最適な媒体を選択する。
焼入れ時の冷却速度は特に限定されないが、A変態点以上の温度域において冷却速度が5℃/秒以上であることが好ましい。5℃/秒以上であることが好ましい理由は、冷却中にセメンタイト等の炭化物が旧オーステナイト粒界に析出するのを防止することができるためである。焼入れ方法は、冷却特性に優れる油焼入れが好ましい。小さな部品であれば高圧の不活性ガスによる焼入れも可能である。水による焼入れも可能であるが、焼割れ、冷却ムラの発生に注意が必要である。焼入れ後の温度は特に指定しないが、例えば油焼入れを行う場合には、焼入れ油の温度は50〜160℃の範囲とすることが好ましい。
[高周波加熱工程]
高周波加熱工程は、前記成形体の浸炭焼入れ後、更に、再度加熱する高周波焼戻し工程である。この工程により、マルテンサイトからの逆変態で微細化したオーステナイトを生成することで、部品として必要な耐ピッティング特性、曲げ疲労特性を向上させるために必要不可欠な処理である。焼戻し時のセメンタイトや微細炭窒化物などの析出量は一般に焼戻し温度と時間を含むパラメータである焼戻しパラメータと相関がある。本発明のように連続加熱、連続冷却を伴う熱処理では、焼戻しパラメータは以下のように表すことができる。
Λ=19×T+900LogT−900LogK+4600
ここで、Tは、高周波加熱により温度上昇した表面の最高到達温度である表面温度(℃)を示す。Kは、高周波加熱時に、表面の温度が、加熱開始前の温度からTに到達するまでの平均加熱速度である加熱速度(℃/秒)を示す。
前述した本発明の組成範囲の鋼材から丸棒試験片を作製して真空浸炭を行い、それにTとKを種々に変化させた高周波加熱を実施し、処理終了後のセメンタイトや炭窒化物、及び、高周波焼入れ後の旧オーステナイト粒を調べたところ、Λが16000以上となる場合に、多くの析出物を生成して、微細な旧オーステナイト粒を得られることがわかった。
16000≦Λ=19×T+900LogT−900LogK+4600
表面温度(T)が520℃より低いと、あるいは加熱速度(K)が1000℃/秒よりも大きいと、十分な析出量が得られないため、微細化効果を得ることはできない。表面温度(T)が730℃より高いと、浸炭焼入れで生成したマルテンサイトがA変態点を超えて再び変態してしまうため、高周波焼入れでの微細化の効果が小さくなってしまう。加熱速度(K)が10℃/秒より小さいと、加熱開始から、表面温度がTに到達するまでの時間が長くなるため、コストが高くなる。これより、適当な高周波焼戻しの条件として式(3)を得た。
1.00≦1.67×10−3×T+0.0789×LogT−0.0789LogK≦1.37・・・(3)
ここで式(3)の上限(1.37)は、Tが730℃、Kが10℃/秒としたときのものとした。
前記高周波焼戻しは、式(3)を満たし、かつ表面温度(T)を520〜730℃まで10〜1000℃/秒の加熱速度(K)で加熱する処理である。この工程で、セメンタイトや微細な炭窒化物を析出させて、再度の高周波加熱を伴う高周波焼入れ工程後の旧オーステナイト粒の微細化に寄与する。
成形体表面が前記温度Tに到達後、後述する放冷工程を行う。放冷工程は、成形体への高周波加熱を停止することにより開始される。
[放冷工程]
前記高周波加熱工程後、放冷する処理は温度分布の均質化に寄与するため必要である。高周波加熱は表面側の温度が高くなる傾向があるが、この放冷中に温度勾配を低減し、表面付近の組織を均質化できる。放冷は表面温度が450℃以下になるまで行い、好ましくは、表面温度が300〜450℃になるまで行う。放冷後の温度が高すぎると温度勾配の低減が十分ではなく、また温度が低すぎるとそれに引き続く高周波加熱時に温度むらができやすい場合があるためである。尚、温度勾配の低減には450℃以下になるまで放冷すればよく、その時の冷却速度は特に限定されない。
[放冷後の高周波焼入れ工程]
放冷後の高周波焼入れ工程における最高加熱温度(T)は、表面が800〜1000℃の範囲となるようにする。これによって、前記成形体の表面からの深さが0.5mmにおける領域は、T付近まで再加熱され、のちの焼入れによってビッカース硬度が550HV以上となる。表面温度が低すぎると、加熱時のオーステナイト化が不十分になり、焼入れ後にフェライトやセメンタイトが残存する恐れがある。一方、表面温度が高すぎると、オーステナイト粒径が粗大化してしまう。この時の加熱速度は特に指定しないが、100〜2000℃/秒の範囲が好ましい。加熱速度が遅すぎると結晶粒が微細化せず、早すぎると混粒になりやすいためである。なおここでいう加熱速度とは、前記放冷工程終了時から前記最高加熱温度(T)に達する点までの平均加熱速度を意味する。
前述した高周波焼戻し工程及び放冷後の高周波焼入れ工程における高周波加熱時の周波数は特に限定されるものではないが、例えば1〜500KHzの範囲であれば、問題なく処理が可能である。
また、高周波加熱後の焼入れは水冷、あるいはポリアルキレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコールなどの高分子化合物系の水溶性焼入冷却材を使用して行う。液温は20〜40℃の範囲とするのが好ましい。
[高周波焼入れ後の焼戻し工程]
高周波焼入れ後の低温での焼戻し工程は、高周波焼入れ後のマルテンサイトの靭性を向上させることで、部品として必要な耐ピッティング特性、曲げ疲労特性を向上させるために必要不可欠な処理である。例えば、一般的な低温焼戻しの条件である130〜200℃程度の温度で、30〜120分の加熱処理を行う。なお、最後の低温焼戻しの加熱は大気炉、雰囲気加熱炉、真空加熱炉などを使用することができる。
次に、本発明の実施例について説明するが、実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
表1に示す鋼No.A〜Zの成分組成を有する鋼をそれぞれ溶製し、熱間鍛造により、40φの棒鋼に成形した。表1で各元素の欄内の数値の単位は質量%であり、空欄は、該当する元素の成分が意図的に添加しないことを意味する。表1中の下線部分は数値が本発明の範囲外であることを示す。項目「式(1A)」は、Ti、Nb及びVの含有量(質量%)の合計であり、項目「式(1B)」は、Nb及びVの含有量(質量%)の合計である。尚、得られた前記棒鋼はいずれも、O含有量が0.0005〜0.0030%の範囲であった。
Figure 0006950821
次に、得られた棒鋼を900℃に加熱して30分保持した後に放冷する焼ならし処理を行い、続いて、機械加工により、大径部(試験部)26φのローラーピッティング試験片を作製した。また、φ12mm×80mmで中心に10mmRの半円の切欠を有する小野式回転曲げ試験片を作製した。さらに、φ26mm×50mmの丸棒試験片を作製した。
上記のローラーピッティング試験片、小野式回転曲げ試験片に対して、表2−1又は表2−2に記載の製造条件で浸炭処理、高周波加熱及び高周波焼入れを行うことによって、製造No.1〜46の試験片を得た。浸炭処理後、75℃〜85℃に維持された油槽内に試験片を浸漬することによって油焼入れを行った。
前記油焼入れされた試験片のそれぞれに対して、表2−1又は表2−2の条件にて高周波加熱を行った。試験片の表面温度が加熱温度T(℃)に達した直後に、前記試験片を大気中に放冷した。尚、表2−1及び表2−2の項目「式(3)」に対応する欄内の数値は、対応する製造No.の前記式(3)の数値を示す。
放冷工程において、前記試験片の表面温度が表2−1又は表2−2に示す放冷温度に到達後、すみやかに、前記試験片の表面温度が表2−1又は表2−2の再加熱温度Tに達するまで高周波加熱した。
試験片の表面温度が加熱温度T(℃)に達した直後に、5〜15%の希釈濃度の水溶性焼入冷却材を試験片に噴射することによって、前記高周波加熱後の試験片を焼入れした。その後、製造No.1〜46の試験片のそれぞれに対して、150℃×60分の条件で焼戻し処理を行った。焼戻し後の製造No.1〜46の試験片はいずれも、表層組織が焼戻しマルテンサイトと残留γであった。
Figure 0006950821
Figure 0006950821
[試験及び測定結果]
高周波焼入れ、焼戻し後、試験精度を向上するため、ローラーピッティング試験片、および小野式回転曲げ試験片のつかみ部に仕上げ加工を施した。
ローラーピッティング試験は、大ローラー:SCM420浸炭品、クラウニング:150R、回転数:1500rpm、潤滑油:トランスミッション油、油温:80℃、すべり率:−40%で最大1000万回の条件で行い、S−N線図を作成してローラーピッティング疲労限を求めた。SCM420浸炭品のローラーピッティング疲労限は2500MPaである。本発明のローラーピッティング疲労限の目標値は、これを約20%向上させた3000MPa以上とし、3000MPaに達しないものは面疲労強度が劣ると判断した。
小野式回転曲げ疲労試験は、回転数300rpmで最大1000万回の条件で行い、S−N線図を作成して回転曲げ疲労限を求めた。SCM420浸炭品の回転曲げ疲労限は450MPaである。本発明の回転曲げ疲労限の目標値は、これを約20%向上させた540MPa以上とし、540MPaに達しないものは曲げ疲労強度が劣ると判断した。
各製造No.につき、真空浸炭、高周波焼入れ、焼戻し処理を行った各試験水準の丸棒試験片の中央部を切断し、測定荷重を200gとしてビッカース硬度計を用いて、断面において表面から0.05mmの部位のビッカース硬さ測定を行うことで、表面硬さを求めた。
さらに、測定荷重を200gとしてビッカース硬度計を用いて、以下の測定ピッチにて、断面において表面から2.0mm内側までの位置のビッカース硬さ測定を行い、有効硬化層深さを求めた。ここでいう有効硬化層深さとはビッカース硬さが550HVになる深さのことである。
測定ピッチ:表面から0.1〜1.0mmまでの深さ:0.1mm間隔
表面から1.0〜3.0mmまでの深さ:0.2mm間隔
方面から3.0〜5.0mmまでの深さ:0.5mm間隔
この測定により得られた、各測定点におけるビッカース硬度の値を線分近似し、ビッカース硬度が550HVとなる深さを特定した。
また、断面を研磨後、オーステナイト粒界腐食液で腐食し、最表面を含むように光学顕微鏡で1000倍の写真を撮影し、切断法により平均旧オーステナイト結晶粒度を算出した。なお、前述した表層組織についても、ここで撮影された写真を用いて確認した。
さらに、粒界酸化層の測定は、断面を研磨後、ナイタール溶液(硝酸3gをエタノール100mlで溶解し、必要に応じて界面活性剤を加えた溶液)を用いて、5〜30秒腐食した後、水洗した。その後、光学顕微鏡で1000倍の写真を撮影した。撮影した写真において表面から試験片内部に連続する黒い部分を粒界酸化とした。前記連続する黒い部分のうち、前記表面からの最深点を測定し、前記表面から前記最深点までの深さを粒界酸化層深さとした。
各製造No.につき、表層における円相当径1〜50nmの析出物の平均粒径Aと面積分率Bを測定した。各製造No.につき、表面から0.2mmまでの深さの領域から100〜180nmの厚さの薄膜サンプルを作製し、前記薄膜サンプルに電子線を透過させ、約5μmの視野をEDSマッピングにより撮影し、撮影した析出物を画像解析することにより、平均粒径Aと面積分率Bを求めた。
尚、面積分率Bは、前記薄膜サンプルに電子線を透過させた時に撮影できる投影析出物の面積分率を100nm厚さ分に換算した値とすることにより測定した。但し、投影される最大幅が1〜50nmの範囲内のものを前記平均粒径A及び面積分率Bの測定対象とした。また、前記薄膜サンプルの正確な厚さは、透過電子顕微鏡を用いた集束電子回折法により測定した。
これらの評価結果を表3−1及び表3−2に示す。表3−1及び表3−2中の下線部分は数値が本発明の範囲外であることを示す。また、表3の項目「式(2)」に対応する欄内の数値は、対応する製造No.の前記式(2)の数値であり、項目「表層のC含有量」に対応する欄内の数値は、対応する製造No.の表面からの深さが0.2mm地点におけるC含有量である。各試験片の表層のC含有量は、X線マイクロアナライザー(EPMA)を用いて定量した。
Figure 0006950821
Figure 0006950821
製造No.1〜25の本発明例は表層のC含有量、表面硬さ、有効硬化層深さ、芯部硬さ、旧オーステナイト粒結晶粒度、ローラーピッティング疲労限、回転曲げ疲労限のいずれも目標を達成した。
一方、製造No.26は、部品の鋼成分のC量が不足しており、芯部硬さが目標未達であり、その結果、ローラーピッティング疲労限、回転曲げ疲労限が目標未達であった。
製造No.27は、部品の鋼成分のC量が過剰であり、芯部硬さが目標の範囲でないために鋼の靭性が劣化し、その結果、ローラーピッティング疲労限、回転曲げ疲労限が目標未達であった。
製造No.28は、部品の鋼成分のSi量が不足しており、焼戻し軟化抵抗が低下したため、ローラーピッティング疲労限が目標未達であった。
製造No.29は、部品の鋼成分のSi量が過剰であり、フェライトが安定化され、焼入れ後に均一なマルテンサイト組織が得られなかったため、表面硬さが低下し、ローラーピッティング疲労限、回転曲げ疲労限が目標未達であった。
製造No.30は、部品の鋼成分のMn量が不足しており、焼入れ性が低下したため、表面硬さが低下し、ローラーピッティング疲労限、回転曲げ疲労限が目標未達であった。
製造No.31は、部品の鋼成分のMn量が過剰であり、芯部硬さが目標の範囲でないために鋼の靭性が劣化し、その結果、ローラーピッティング疲労限、回転曲げ疲労限が目標未達であった。
製造No.32は、部品の鋼成分のCr量が不足しており、焼入れ性が低下したため、表面硬さが低下し、ローラーピッティング疲労限、回転曲げ疲労限が目標未達であった。
製造No.33は、部品の鋼成分のCr量が過剰であり、部品表面から0.2mm深さまでの領域において残留オーステナイト量が増えたために表面硬さが低下し、その結果、ローラーピッティング疲労限、回転曲げ疲労限が目標未達であった。
製造No.34は、部品の鋼成分としてTi、NbおよびVのいずれも添加されていないため、微細化効果が得られず、且つ混粒化を招いたため、ローラーピッティング疲労限、回転曲げ疲労限が目標未達であった。
製造No.35は、浸炭温度が高すぎるため、粗粒化と混粒化を招いたことで、ローラーピッティング疲労限、回転曲げ疲労限が目標未達であった。
製造No.36は、真空浸炭時の浸炭時間と拡散時間の和が10分より短いため、表面硬さ、有効硬化層深さ、表面から0.2mm位置でのC量が目標未達であり、その結果、ローラーピッティング疲労限、回転曲げ疲労限が目標未達であった。
製造No.37は、高周波加熱工程の高周波焼戻し時の温度Tが低すぎるため、十分な量の析出物が得られず、微細化効果が得られず、且つ混粒化を招いたため、ローラーピッティング疲労限、回転曲げ疲労限が目標未達であった。
製造No.38は、高周波加熱工程の高周波焼戻し時の温度Tが高すぎるため、浸炭焼入れで生成したマルテンサイトがA変態点を超えて再び変態してしまい、引き続く高周波焼入れ後のγ粒が微細にならなかったため、ローラーピッティング疲労限、回転曲げ疲労限が目標未達であった。
製造No.39は、高周波加熱工程の高周波焼戻し時の加熱速度Kが高すぎるため、十分な量の析出物が得られず、微細化効果が得られず、且つ混粒化を招いたため、ローラーピッティング疲労限、回転曲げ疲労限が目標未達であった。
製造No.40は、高周波加熱工程の高周波焼戻し時の加熱温度Tと加熱速度Kは適切であるが、式(3)の値が小さすぎるため、十分な量の析出物が得られず、微細化効果が得られず、且つ混粒化を招いたため、ローラーピッティング疲労限、回転曲げ疲労限が目標未達であった。
製造No.41は、高周波焼入れ工程の再加熱時の温度Tが低すぎるため、焼入れ後に均一なマルテンサイト組織が得られなかったため、表面硬さが低下し、ローラーピッティング疲労限、回転曲げ疲労限が目標未達であった。
製造No.42は、高周波焼入れ工程の再加熱時の温度Tが高すぎるため、粗粒化を招いたことで、ローラーピッティング疲労限、回転曲げ疲労限が目標未達であった。
製造No.43は、高周波加熱工程の高周波焼戻し時の温度Tが発明の範囲を大きく超えたため、浸炭焼入れで生成したマルテンサイトがA変態点を超えて再び変態したことに加え、析出物の多くが加熱時に溶けてしまい、引き続く高周波焼入れ後のγ粒が微細にならず、且つ混粒になったため、ローラーピッティング疲労限、回転曲げ疲労限が目標未達であった。
製造No.44は高周波加熱工程に引き続く放冷後の温度が高すぎるため、表面付近の温度勾配の低減が十分でなく、表層内での炭窒化物が少ない領域が生じて混粒を招いたことで、ローラーピッティング疲労限、回転曲げ疲労限が目標未達であった。
製造No.45は、部品の鋼成分としてTi、NbおよびVの添加量が不足するため、微細化効果が得られず、且つ混粒化を招いたため、ローラーピッティング疲労限、回転曲げ疲労限が目標未達であった。
製造No.46は、カーボンポテンシャルC=0.8の条件にてガス浸炭を行った。そのため、部品表面に粒界酸化が生成し、これが疲労試験時の破壊起点となったため、ローラーピッティング疲労限、回転曲げ疲労限が目標未達であった。
本発明によれば、表面硬さ、有効硬化層深さが高く、表層組織が微細で、疲労強度に優れる機械部品を提供することができる。よって、本発明は機械製造産業において利用可能性が高いものである。

Claims (3)

  1. 表面からの深さが0.2mmまでの領域である表層と、
    前記表面からの深さが1.5mm以上の領域である芯部と、
    前記表層と前記芯部との間の中間層と、を有し、
    前記表面からの深さが0.05mmの位置でのビッカース硬さが750HV以上であり、
    前記芯部において、ビッカース硬さが200〜450HVであり、
    ビッカース硬さが550HVとなる深さを示す有効硬化層深さが、表面から0.5〜1.2mmであり、
    前記表層上に形成された粒界酸化層の厚さは0.0〜2.0μmであって、
    前記芯部は、
    組成が、質量%で、
    C :0.10〜0.40%、
    Si:0.10〜3.00%、
    Mn:0.30〜3.00%、
    Cr:0.10〜3.00%、
    Al:0.003〜0.050%及び
    N:0.0030〜0.0300%
    を含有し、
    さらに、Nb:0%超0.200%以下及びV:0%超0.800%以下のうち少なくとも1種と、Ti:0.100%以下とを下記式(1A)及び(1B)の範囲にて含有し、
    さらに、任意元素として、
    Ca:0〜0.0045%、
    Mg:0〜0.0045%、
    Zr:0〜0.0045%、
    REM:0〜0.0045%、
    Mo:0〜0.50%、
    Ni:0〜1.00%、
    Cu:0〜1.00%、
    B:0〜0.0050%、
    Te:0〜0.050%、
    Bi:0〜0.050%、
    Pb:0〜0.050%、
    Sn:0〜0.050%、
    Zn:0〜0.050%及び
    Sb:0〜0.050%
    からなる群から選択された1種または2種以上を含有し、
    P:0.050%以下、S:0.050%以下に制限され、残部がFeおよび不純物からなり、
    前記表層は、
    C含有量が0.70%以上であり、
    組織が焼戻しマルテンサイトおよび残留オーステナイトであり、
    旧オーステナイト結晶粒径がJIS粒度番号で12番以上であり、
    JIS G 0551(2013)によって規定される混粒が存在せず、
    円相当径1〜50nmの析出物が、下記式(2)を満たすことを特徴とする機械部品。
    0.010≦[Ti%]+[Nb%]+[V%]≦0.800・・・(1A)
    0.010≦[Nb%]+[V%]・・・(1B)
    ここで、式(1A)及び式(1B)中の[Ti%]、[Nb%]及び[V%]の各記号には、それぞれTi、NbおよびVの含有量(質量%)が代入され、元素が含まれないときは0が代入される。
    A×B−0.67≦6000・・・(2)
    ここで、式(2)において、Aは前記表層に存在する前記析出物の平均粒径(nm)、Bは前記表層に存在する前記析出物の面積分率である。
  2. 前記芯部がさらに質量%で、
    Ca:0.0001〜0.0045%、
    Mg:0.0001〜0.0045%、
    Zr:0.0001〜0.0045%、
    REM:0.0001〜0.0045%、
    Mo:0.01〜0.50%、
    Ni:0.05〜1.00%、
    Cu:0.05〜1.00%、
    B:0.0003〜0.0050%、
    Te:0.001〜0.050%、
    Bi:0.001〜0.050%、
    Pb:0.001〜0.050%、
    Sn:0.001〜0.050%、
    Zn:0.001〜0.050%、および
    Sb:0.001〜0.050%、からなる群から選択された1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の機械部品。
  3. 請求項1又は2に記載の前記芯部の組成を有する鋼材を機械部品の成形体に成形し、
    前記成形体に対して、浸炭温度が850〜1100℃、浸炭時間と拡散時間の和を10〜500分の条件で真空浸炭処理を施し、次いで焼入れし、
    引き続いて、下記式(3)を満足する条件で520〜730℃の表面温度(T)に到達するまで10〜1000℃/秒の加熱速度(K)で前記成形体を高周波加熱して、
    その後放冷して450℃以下の表面温度とした後、
    前記成形体の表面からの深さが0.5mmにおける領域を800〜1000℃の温度(T)に再度高周波加熱して、焼入れし、
    さらに130〜200℃で30〜120分焼戻すことを特徴とする請求項1又は2に記載の機械部品の製造方法。
    1.00≦1.67×10−3×T+0.0789×LogT−0.0789×LogK≦1.37・・・(3)
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