JP2018154640A - 脳機能障害改善用経口組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】Met−Lys−Proからなるペプチドを有効成分として含有するアミロイド・ベータ蛋白質に起因する脳機能障害改善剤、前記アミロイド・ベータ蛋白質に起因する脳機能障害がアルツハイマー型認知症である前記改善剤、及び前記アルツハイマー型認知症が高齢者に発症する症状である前記改善剤。
【選択図】なし
Description
血圧とアルツハイマー型認知症の関係では、中年期の高血圧が晩年の認知機能低下に関与することが示唆されている一方で、高齢者においては、低血圧による不安定な循環動態が、アルツハイマー病の病態を悪化させると考えられている(非特許文献2)。
したがって、血圧が変動しやすく、かつ、高齢のアルツハイマー型認知症患者にとって、従来の血圧降下作用を有する薬剤を用いて治療をすることは、血圧のさらなる低下を引き起こす恐れがあり、かえって病状を悪化させてしまう可能性があった。
また、高齢者のアルツハイマー病患者に対しても、血圧の変動を生じさせずに、アミロイド・ベータ蛋白質による脳内の神経細胞死を抑制することができる治療薬が望まれている。
(1)Met−Lys−Proからなるペプチドを有効成分として含有する脳機能障害改善用経口組成物。
(2)前記(1)の脳機能障害が記憶障害である。
(3)前記(2)の記憶障害が記銘力の低下である。
(4)前記(1の)脳機能障害がアミロイド・ベータ蛋白質に起因する脳機能障害である。
本発明のMet−Lys−Proからなるペプチドを有効成分とするアミロイド・ベータ蛋白質に起因する脳機能障害改善剤(以下、「本発明の脳機能障害改善剤」とも記載する)は、当該Met−Lys−Proからなるペプチドを含む脳機能障害改善剤を、アミロイド・ベータ蛋白質に起因する脳機能障害の罹患者に投与する、又は摂取させることにより、アミロイド・ベータ蛋白質に起因する脳機能障害を改善する効果を有するものである。ここで、本明細書における、「改善」とは、疾患の症状・状態の好転、疾患の症状・状態の悪化の防止若しくは遅延、疾患の症状の進行の逆転、防止若しくは遅延、又は疾患の治療等を意味するものである。さらに、本発明書における「改善」は、予防の意味をも包含する。「予防」とは、適用対象における疾患の発症の防止若しくは発症の遅延、又は適用対象の疾患の発症の危険性を低下させる等を意味するものである。
アルツハイマー型認知症の原因は完全には明らかになってはいないが、このアミロイド・ベータ蛋白質が脳内に凝集・蓄積して老人班となる過程で神経毒性を生じ、神経原線維を変性させ、最終的には神経細胞死に至ることが主要因であると想定されている。
したがって、本発明のアミロイド・ベータ蛋白質に起因する脳機能障害改善剤は、アミロイド・ベータ蛋白質に起因する脳機能障害の中でも、アルツハイマー型認知症の改善に有効であると考えられる。
本発明の脳機能障害改善剤の有効成分はペプチドであり、当該ペプチドは、Met−Lys−Proで表されるアミノ酸配列(配列番号1)からなる、「ペプチドMKP」である。ここで、Met(M)はメチオニン残基、Lys(K)はリジン残基、Pro(P)はプロリン残基を示す。いずれのアミノ酸も、L−型アミノ酸であることが好ましい。
また、本発明の有効成分であるペプチドは、このペプチドの塩類であってもよい。当該塩類としては、例えば、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属類;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属類等が挙げられる。
本発明の脳機能障害改善剤の有効成分であるペプチドMKPを、加水分解により得る方法としては、例えば、乳蛋白質であるカゼインを、蛋白質加水分解酵素や、酸・アルカリ等により加水分解し、得られた加水分解物からMKPの配列を有するペプチドを分離精製する方法が挙げられる。
ここでは、乳蛋白質であるカゼインを原料として、加水分解酵素により加水分解して前記ペプチドMKPを得る方法を例示する。
このとき、前記カゼイン蛋白質を含有する溶液に加水分解酵素を添加した後、当該溶液を、酵素の種類に応じて適当な温度、例えば30〜60℃、望ましくは45〜55℃に保持して、蛋白質の加水分解を開始することが望ましい。
前記エンドペプチダーゼとして、例えば、微生物由来や動物由来のものが挙げられる。具体的には、バチルス(Bacillus)属細菌由来のプロテアーゼ及び動物膵臓由来のプロテアーゼ等が挙げられる。前記プロテアーゼは市販されているものを利用することが可能である。市販品のプロテアーゼとして、例えば、ビオプラーゼsp−20(長瀬生化学工業社製)又はプロテアーゼN(天野エンザイム社製)等のバチルス属細菌由来のプロテアーゼ;PTN6.0S(ノボザイムズ・ジャパン社製)等の動物膵臓由来のプロテアーゼ等が好ましいものとして例示できる。
分解率(%)=(ホルモール態窒素量/全窒素量)×100
なお、前記の加熱失活処理は、加水分解物の殺菌処理として併用することも可能であり、常法による加熱処理方法等を用いることができる。
加熱処理時の加熱温度と保持時間は、充分に加熱・殺菌できる条件を適宜設定すればよく、例えば、80〜140℃で2秒間〜30分間加熱処理することができる。
加熱処理の方式としては、バッチ方式、連続方式のいずれの方式も可能であり、連続方式として、プレート熱交換方式、インフュージョン方式、インジェクション方式等の方式を用いることができる。
分離精製したペプチドの分画物は、本発明の有効成分であるペプチドMKPが含まれているかどうかを確認することを目的として、質量分析法により、ペプチドMKPの同定を行うことができる。
また、本発明の有効成分であるペプチドMKPは、化学合成によっても製造することができる。
本発明の有効成分であるペプチドMKPの化学合成は、オリゴペプチドの合成に通常用いられている液相法または固相法によって行うことができる。合成されたペプチドは必要に応じて脱保護され、未反応試薬や副生物等を除去して、本発明の有効成分であるペプチドMKPを単離することが可能である。
このようなペプチドの合成は、市販のペプチド合成装置を用いて行うことができる。
前記の通り、本発明の脳機能障害改善剤の有効成分であるペプチドMKPは、乳蛋白質であるカゼインの加水分解物から得られることから、腸管からの消化吸収性に優れている。さらに、風味がほとんど無味無臭であって、かつ、アミロイド・ベータ蛋白質に起因する脳機能障害の改善効果を有するため、アミロイド・ベータ蛋白質に起因する脳機能障害及びアルツハイマー型認知症等の改善のための医薬品として用いることができる。
したがって、従来の降圧作用を伴うアルツハイマー型認知症の治療と比較して、投与対象者の血圧を過度に低下させることなく、アルツハイマー型認知症を始めとしたアミロイド・ベータ蛋白質に起因する脳機能障害に広く用いることができる。
なお、前記「診察室血圧」とは、前記「高血圧治療ガイドライン2009」において示されている「診察室での血圧測定の指針」に基づいて測定された値を意味する。
さらに、本明細書において、「高齢者」との用語は、65歳以上の対象を示す。
また、本発明の脳機能障害改善剤を含有しているものであれば、公知の又は将来的に見出される脳機能障害に関連する疾患の改善効果を有する成分を、本発明の脳機能障害改善剤と併用することもできる。
また、当該ペプチドMKPの一日の摂取量又は投与量は、0.1mg/日〜1g/日の範囲であることが好ましい。なお、当該ペプチドMKPの摂取又は投与は、当該摂取量又は投与量が得られる範囲で、1日複数回に分けて行ってもよい。
前記の通り、本発明の脳機能障害改善剤の有効成分であるペプチドMKPは、腸管からの消化吸収性に優れている。さらに、風味がほとんど無味無臭であって、かつ、後述するようにアミロイド・ベータ蛋白質に起因する脳機能障害の改善・予防効果を有するため、アミロイド・ベータ蛋白質に起因する脳機能障害及びアルツハイマー型認知症等の疾患の改善・予防用の飲食品、飼料等の有効成分としてこれらに配合して使用することができる。
本発明の脳機能障害改善剤を飲食品に利用する場合、公知の飲食品に添加して脳機能障害改善・予防効果を有する飲食品を調製することができる。また、飲食品の原料中に混合してアミロイド・ベータ蛋白質に起因する脳機能障害の改善・予防効果を有する新たな飲食品を製造することもできる。
即席食品類としては、例えば、即席めん、カップめん、レトルト・調理食品、調理缶詰め、電子レンジ食品、即席スープ・シチュー、即席みそ汁・吸い物、スープ缶詰め、フリーズ・ドライ食品、その他の即席食品等が挙げられる。
農産加工品としては、例えば、農産缶詰め、果実缶詰め、ジャム・マーマレード類、漬物、煮豆類、農産乾物類、シリアル(穀物加工品)等が挙げられる。
水産加工品としては、例えば、水産缶詰め、魚肉ハム・ソーセージ、水産練り製品、水産珍味類、つくだ煮類等が挙げられる。
畜産加工品としては、例えば、畜産缶詰め・ペースト類、畜肉ハム・ソーセージ等が挙げられる。
乳・乳製品としては、例えば、加工乳、乳飲料、ヨーグルト類、乳酸菌飲料類、チーズ、アイスクリーム類、調製粉乳類、クリーム、その他の乳製品等が挙げられる。
油脂類としては、例えば、バター、マーガリン類、植物油等が挙げられる。
基礎調味料としては、例えば、しょうゆ、みそ、ソース類、トマト加工調味料、みりん類、食酢類等が挙げられ、前記複合調味料・食品類として、調理ミックス、カレーの素類、たれ類、ドレッシング類、めんつゆ類、スパイス類、その他の複合調味料等が挙げられる。
冷凍食品としては、例えば、素材冷凍食品、半調理冷凍食品、調理済冷凍食品等が挙げられる。
菓子類としては、例えば、キャラメル、キャンディー、チューインガム、チョコレート、クッキー、ビスケット、ケーキ、パイ、スナック、クラッカー、和菓子、米菓子、豆菓子、デザート菓子、その他の菓子等が挙げられる。
飲料類としては、例えば、炭酸飲料、天然果汁、果汁飲料、果汁入り清涼飲料、果肉飲料、果粒入り果実飲料、野菜系飲料、豆乳、豆乳飲料、コーヒー飲料、お茶飲料、粉末飲料、濃縮飲料、スポーツ飲料、栄養飲料、アルコール飲料、その他の嗜好飲料等が挙げられる。
上記以外の市販食品としては、例えば、ベビーフード、ふりかけ、お茶漬けのり等が挙げられる。
「表示」行為には、需要者に対して前記用途を知らしめるための全ての行為が含まれ、前記用途を想起・類推させうるような表現であれば、表示の目的、表示の内容、表示する対象物・媒体等の如何に拘わらず、全て本技術の「表示」行為に該当する。
本発明の脳機能障害改善剤を飼料に利用する場合、公知の飼料に添加して脳機能障害の改善・予防効果を有する飼料を調製することもできるし、飼料の原料中混合して脳機能障害の改善・予防効果を有する新たな飼料を製造することもできる。
(1)カゼインの酵素分解
市販のカゼイン(フォンテラ社製)100gに水900gを加えて分散させ、水酸化ナトリウムを添加して溶液のpHを7.0に調整して、カゼインを完全に溶解した。溶解後のカゼイン水溶液の濃度は、約10質量%であった。該カゼイン水溶液を85℃で10分間加熱殺菌し、50℃に温度調整し、水酸化ナトリウムを添加してpHを9.5に調整した。
その後、pH調整したカゼイン水溶液にビオプラーゼsp−20(長瀬生化学工業社製)100,800活性単位(蛋白質1g当り1,200活性単位)、プロテアーゼN(天野エンザイム社製)168,000活性単位(蛋白質1g当り2,000活性単位)、及びPTN6.0S(ノボザイムズ・ジャパン社製)588,000活性単位(蛋白質1g当り7,000活性単位)を添加して、加水分解反応を開始させた。カゼインの分解率が24.1%に達した時点で、80℃で6分間加熱して酵素を失活させて酵素反応を停止し、10℃に冷却した。この加水分解液を分画分子量3,000の限外ろ過膜(旭化成社製)で限外ろ過し、濃縮後に凍結乾燥し、カゼイン加水分解物の凍結乾燥粉末85gを得た。
逆相HPLCで上記カゼイン加水分解物の分離精製を行った。このHPLC条件は下記HPLC条件1に示した。
〔HPLC条件1〕
カラム :カプセルパックC18(UG120、粒子径5μm) 20mmI.D.×250mm(株式会社資生堂)
検 出 :UV 215nm
流 速 :16ml/分
溶離液A:0.05% TFAを含む1%アセトニトリル水溶液
溶離液B:0.05% TFAを含む25%アセトニトリル水溶液
このときの条件を下記HPLC条件2に示した。
〔HPLC条件2〕
カラム :カプセルパックC18(UG300、粒子径5μm) 2.0mmI.D.×250mm(株式会社資生堂)
検 出 :UV 215nm
流 速 :0.2ml/分
溶離液A:0.05% TFAを含む1%アセトニトリル水溶液
溶離液B:0.05% TFAを含む10%アセトニトリル水溶液
なお、前記カゼイン加水分解物の凍結乾燥粉末85g中に、ペプチドMKPは、42.5mg含まれていた。
ペプチドシンセサイザー(Model 433A型、アプライドバイオシステムズ社)を使用し、Fmoc−L−Met(アプライドバイオシステムズ社)、Fmoc−Lys(Boc)(アプライドバイオシステムズ社)、Fmoc−Pro−TrtA−PEG Resin(渡辺化学工業株式会社製)を原料に用いて、固相合成法によりトリペプチドMet−Lys−Proを合成した。合成操作はアプライドバイオシステムズ社のマニュアルに従って行った。その後、合成物を脱保護した。
次に、前記製造例2にて合成したペプチドMKPを用いて、アミロイド・ベータ蛋白質に起因する脳機能障害に対する改善効果を確認するための試験を行った。
アミロイド・ベータ蛋白質に起因する脳機能障害に対する効果を検証するためには、その中核症状である記憶障害(記憶力、特に記銘力の低下)を適切に惹起させたモデルを用いて、学習・記憶の状態を評価することが必要である。本試験例においては、アミロイド・ベータ蛋白質(以下、「Aβ」と略記することがある)を投与したAβ injection model マウスを用いてY迷路試験を実施することで、ペプチドMKPの効果を評価した。
本試験例にて用いたAβ injection model マウスは、アミロイド・ベータ蛋白質をマウス側脳室内に投与することにより、記憶障害を惹起させたモデルマウスである。
マウスやラットの脳室内にアミロイド・ベータ蛋白質を連続投与すると、海馬アセチルコリン遊離量が低下し、八方向放射状迷路課題における空間記憶障害を発現することが報告されている(参考文献1:Iwasaki K. et al, Neurotoxicity Research, 2004, 6, pp.299-309、参考文献2:Walsh D. M. et al, Nature, 2002, 416, pp.535-539)。
また、マウスの脳室内にアミロイド・ベータ蛋白質を単回投与すると、Y迷路試験における短期記憶障害や受動回避試験における長期記憶障害を発現することが報告されている(参考文献3:Lu P, et al, British Journal of Pharmacology, 2010, 157, pp.1270-1277、参考文献4:Lu P. et al, The Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics, 2009, 331, 319-326、参考文献5:Hiramatsu M. et al, British Journal of Pharmacology, 2010, 161, pp.1899-1912、参考文献6:Mamiya T. et al, Biological and Pharmaceutical Bulletin, 2004, 27, 1041-1045)。
したがって、脳室内にアミロイド・ベータ蛋白質を投与した前記Aβ injection model マウスは、アミロイド・ベータ蛋白質に起因するアルツハイマー型認知症等の脳機能障害に対する効果を確認するために有用なモデルマウスである。
なお、陰性群として、アミロイド・ベータ蛋白質を投与しないマウスを作製した。当該マウスに対しては、前記アミロイド・ベータ溶液に変えて注射用水3μLをマイクロシリンジポンプで3分間かけて注入する「偽手術」を行った。
アミロイド・ベータ溶液又は注射用水の注入後は、ステンレスパイプを挿入したまま 3分間静置し、ステンレスパイプをゆっくりと外した。その後、ステンレスパイプを取り除き、頭蓋穴を非吸収性骨髄止血剤(商品名:ネストップ(登録商標)、アルフレッサファーマ株式会社製)で塞ぎ、頭皮を縫合した。
前記手術後6日目(試料投与開始後9日目)のマウスを用いて、Y迷路試験により記憶障害を評価した。
Y迷路試験では、Y字型を構成する3本の同じ大きさのアームを、アーム間の角度を120度としたY迷路において、マウスの自発的交替行動を評価するために実施した。自発的交替行動とは、マウスが探索行動で自発的に異なるアームに入る性質を利用した試験において、既に入ったアームを記憶していることにより可能となる行動である。マウス(実験動物)に、報酬や罰刺激を与えずに起こる自発的行動で測定することができる。
装置の設置後、装置の床面の照明が、10〜40ルクス(lx)になるように照度を調節した。当該試験は、最後の試料の投与から約1時間経過後に行なった。
マウスをY字型迷路のいずれかのアームに置き、8分間迷路内を自由に探索させた。マウスが測定時間内に移動したアームの順番を記録し、アームに移動した回数を数え、総エントリー数とした。次に、この中で連続して異なる3つのアームを選択した組み合わせを調べ、この数を自発的交替行動数とした。下記の式を用いて自発的交替行動率を算出した。
自発的交替行動率(%)=[自発的交替行動数/(総エントリー数−2)]×100
試験の結果は、下記の表2のとおりとなった。総エントリー数、自発的交替行動数及び自発的交替行動率は、全ての群においてn=10の平均値として表した。
自発的交替行動率において、アミロイド・ベータ蛋白質投与手術を行った陽性群では、アミロイド・ベータ蛋白質を投与せずに偽手術を行った陰性群と比較して、自発的交替行動率の有意な低下が認められた(t検定において、P<0.01)。すなわち、陽性群においては、陰性群に比べて、Y迷路において既に入ったアームを記憶する能力が有意に低下していたことから、記憶障害の発生が示唆された。
一方、ペプチドMKP(試料)を投与した試験群(5mg/kg体重/日、経口投与)では、陽性群に対して自発的交替行動率が有意に増加した(t検定において、P<0.01)。
すなわち、ペプチドMKPを投与した試験群のマウスは、Y迷路において既に入ったアームを記憶する能力が、陽性群よりも向上したことが判明した。したがって、ペプチドMKPを投与した試験群では、陽性群よりも記憶障害の程度が改善していること明らかとなった。
このことから、ペプチドMKPは、アミロイド・ベータ蛋白質に起因する脳機能の障害やアルツハイマー型認知症に対して顕著な改善効果を有することが示唆された。
前記ペプチドMKPは、本出願人によりすでに、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害活性を有するものであることを開示している。このような事実を鑑みれば、本試験の実施により、本発明の脳機能障害改善剤を投与した対象において血圧低下等の変動が予想されるが、意外にも血圧への影響は確認されなかった。
すなわち、低血圧等による不安定な循環動態に起因してアルツハイマー病の病態が悪化している高齢者に、本発明の脳機能障害改善剤を投与することにより、血圧等の循環動態に変化を与えることなくアルツハイマー型認知症の症状を改善することが可能であると考えられることから、高齢者等に発症するアルツハイマー型認知症を始めとしたアミロイド・ベータ蛋白質に起因する脳機能障害の治療において、従来のアルツハイマー型認知症治療薬よりも有利な効果を有するものである。
Claims (4)
- Met−Lys−Proからなるペプチドを有効成分として含有する脳機能障害改善用経口組成物。
- 前記脳機能障害が記憶障害である、請求項1に記載の脳機能障害改善用経口組成物。
- 前記記憶障害が記銘力の低下である、請求項2に記載の脳機能障害改善用経口組成物。
- 前記脳機能障害がアミロイド・ベータ蛋白質に起因する脳機能障害である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の脳機能障害改善用経口組成物。
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