(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の実施の形態1であるワイパアーム1の側面図、図2は、ワイパアーム1の分解斜視図である。ワイパアーム1は、自動車のリアウインド用ワイパ装置に使用され、図1,2に示すように、ピボット軸2の一端部に固定されたアームヘッド3と、アームヘッド3に取り付けられたアームシャンク4とを備えている。アームヘッド3とアームシャンク4は共に合成樹脂にて形成されており、アームシャンク4の先端部には、図示しないワイパブレードが取り付けられる。ピボット軸2は、ワイパモータ(図示せず)によって往復回動(正逆転)し、ワイパアーム1は、ピボット軸2の動作に伴い、リアウインド上にて往復払拭動作を行う。
図1,2に示すように、本発明によるワイパアーム1は、従来のワイパアームにおけるアームヘッドのカバーとアームシャンクを一体化した構造となっており、アームシャンク4には、アームヘッド3を覆う被覆部5が設けられている。すなわち、従来のようなカバーを有さない構造となっており、部材のつなぎ目がなく、全体が一体感のあるスッキリとした外観となっている。また、カバーがないため、カバー端部の浮きや外れの心配がなく、全体が一部材のため色艶が不連続となることもない。このため、従来のワイパアームに比して、意匠性を高めることが可能となり、スタイリングの自由度も向上する。さらに、カバー外れにより、ナットが露出してしまうこともないため、ナットの錆も抑えられる。
アームヘッド3は直方体形状に一体成形されており、その一端側には、取付孔6が厚さ方向(上下方向)に開設されている。取付孔6にはピボット軸2が挿入され、ナット7によって、アームヘッド3はピボット軸2に締結される。アームヘッド3の両側部には一対の支持片11が突設されており、両支持片11の間には、アームシャンク4の基端部が連結されたヒンジアーム(連結部材)12が取り付けられる。ヒンジアーム12は、両支持片11の間に形成されたアーム収容部13内に収容される。ワイパアーム1では、このヒンジアーム12の作用により、アームシャンク4のロックバックと、ピボット軸2とアームヘッド3の締結部Pの露出を実現している。すなわち、アームシャンク4は、ヒンジアーム12の動作により、払拭動作を行う「通常位置(第1位置)」から、ワイパブレードを払拭面(ウインドシールドのガラス表面)から浮かした「ロックバック位置(第2位置)」と、締結部Pを露出させた「作業位置(第3位置)」の2通りの状態に変位可能となっている。
ヒンジアーム12の一端側は、第1連結部14にてアームシャンク4と回動自在に接続される。また、ヒンジアーム12の他端側は、第2連結部15にて支持片11に回動自在に支持される。第1連結部14は、ヒンジアーム12の両側面に突設されたシャンク取付軸16と、アームシャンク4の内側部に設けられたシャンク取付部17とから構成されている。シャンク取付部17には軸孔17aが形成されており、シャンク取付軸16が回動自在に挿入・支持されるようになっている。第2連結部15は、両支持片11の各内側面に突設された支軸18と、ヒンジアーム12の両側面に没設され支軸18が回動自在に挿入される軸孔19とから構成されている。
両支持片11には、その一部を切り欠く形で凹部21が形成されている。シャンク取付軸16は、「通常位置」においては、この凹部21内に収容される。一方、アームシャンク4が、「通常位置」−「ロックバック位置」間や「通常位置」−「作業位置」間で変位すると、ヒンジアーム12は第2連結部15を中心に回動し、それに伴い、シャンク取付軸16は、凹部21を出入りする形で上下方向に移動する。
ヒンジアーム12の一端側には、第1連結部14と同軸状にスプリングリテーナ(係合部材)22が回動自在に取り付けられている。スプリングリテーナ22は、ヒンジアーム12の両側面外側に配置される一対のカムリング23と、両カムリング23の間に架設されたスプリング係止軸24(係止部)とを備えている。スプリング係止軸24は、シャンク取付軸16と平行に設けられており、スプリング25(弾性部材)の一端側が係止されている。スプリング25の他端側は、アームシャンク4に設けられたスプリング係止軸26(係止部)に係止されている。スプリング係止軸26は、アームシャンク4の長手方向中央からアームヘッド3側に寄った位置に配置されている。ヒンジアーム12には、スプリング25が挿通される逃げ溝27が形成されており、スプリング25は、逃げ溝27を介して、両スプリング係止軸24,26間に張設される。アームシャンク4は、スプリング25の引張り力に起因するモーメントを受けつつ、シャンク取付軸16を中心に回動自在に配置される。
カムリング23の外周部には、凸部28が径方向に向かって4個突設されている。凸部28は、シャンク取付軸16が、ヒンジアーム12の回動に伴って凹部21に出入りする際、凹部21の開口角部に設けられた段部21aに当接する。凸部28と段部21aが当接すると、カムリング23と共にスプリングリテーナ22も回動し、ヒンジアーム12の位置に応じてスプリング係止軸24の回動位置、すなわち、スプリング25の係止位置が変化する。また、スプリング25は、スプリングリテーナ22のスプリング係止軸24に係止されており、ヒンジアーム12の回動中心とは異なる位置に距離を置いた状態で取り付けられている。このため、「通常位置」と「作業位置」や「ロックバック位置」との間でアームシャンク4を変位させると、ヒンジアーム12の回動位置によってスプリング25によるモーメントの方向が変化する。これにより、ワイパアーム1では、各位置に応じた押圧力や適度なクリック感を得つつ、アームシャンク4を変位させることができる。
アームシャンク4の内側面4aには、上下方向に延びるリブ29が設けられている。リブ29は、アームシャンク4の対向する両内側面4aに複数個突設されており、「通常位置」のように、アームシャンク4がアームヘッド3を覆っている状態のとき、アームヘッド3の側部3aに対し若干の隙間を空けた状態で対向する。このようなリブ29を設けることにより、アームシャンク4とアームヘッド3の間のクリアランスを確保しつつ、両者間の隙間を最小限に留めることができ、シャンク−ヘッド間のガタを抑えることができる。この場合、アームシャンク4の支点である第1連結部14を挟み、アームシャンク4の長手方向両側にリブ29を配することにより、シャンク−ヘッド間のガタが効果的に抑えられる。加えて、第1連結部14から遠い位置にもリブ29が配されているため、ガタ抑制効果の更なる向上が図られる。
また、アームヘッド3の一端側(締結部P側)の端面は、ロックバック時に、所定のロックバック位置に達する前にアームシャンク4の内端面31がアームヘッド3の端面に当接しないよう傾斜面32となっている。アームシャンク4がロックバック位置となると、その端部もロックバック角度だけ傾き、アームヘッド3の一端側端面が垂直面の場合、クリアランスを大きくとらないと、内端面31がアームヘッド端面と当接する。そこで、ワイパアーム1では、ロックバック角度に合わせてアームヘッド3の端面を傾斜させ、所定のロックバック位置に達する以前に内端面31とアームヘッド端面が当接するのを回避すると共に、余分なクリアランスを廃し、ワイパアーム1の小型化図っている。
次に、このようなワイパアーム1の動作について説明する。前述のように、ワイパアーム1は、アームヘッド3とアームシャンク4の間に介設されたヒンジアーム12の働きにより、アームシャンク4が、「通常位置」と「ロックバック位置」との間で変位するロックバック動作と、「通常位置」と「作業位置」との間で変位する締結部露出動作の2通りの動作が可能となっている。そこで、以下では、ワイパアーム1の動作をロックバック動作と締結部露出動作に分けて説明する。
(ロックバック動作)
図3は、ワイパアーム1においてロックバックを行う場合の動作を示す説明図である。ロックバック動作においては、アームシャンク4の先端部側(ワイパブレード取付側)を持ち上げ、アームシャンク4を約20°傾斜させた状態とする(ロックバック位置)。ロックバック位置では、アームシャンク4の先端部に取り付けられたワイパブレードは、払拭面から離れた状態となる。
ここで、ワイパアーム1では、ロックバックの動きを案内するため、アームヘッド3側に突起33、アームシャンク4側にガイド溝34が設けられている。突起33は、支持片11の両側部外面に突設されており、ガイド溝34は、支持片11に対向するようにアームシャンク4の内側面に凹設されている。図3(a)→(b)に示すように、アームシャンク4の先端部側が持ち上げられると、突起33はガイド溝34に対して相対的に上方に移動しガイド溝34の上端部34aに当接する。突起33が上端部34aに当接すると、アームシャンク4全体をそれ以上上方に持ち上げることができなくなり、ヒンジアーム12の回動も制限される。そして、図3(b)の状態でさらにアームシャンク4の先端部側を持ち上げると、突起33は、ガイド溝34のスロット部34bに進入する(図3(c))。
このように、ロックバック動作時には、突起33とガイド溝34により、アームシャンク4全体を持ち上げる操作が規制され、ヒンジアーム12の回動も制限される。つまり、一旦ロックバック動作を開始すると、ヒンジアーム12の回動動作が規制され、締結部Pを露出させる方向へのアームシャンク4の動作が妨げられる。このため、ロックバックさせようとしてアームシャンク4を持ち上げたとき、誤った方向にアームシャンク4が変位してしまうのを防止でき、利用者の誤操作を未然に回避することが可能となる。
図3(c)の状態からアームシャンク4の先端部側をさらに持ち上げると、突起33はスロット部34bに沿って進み、それに合わせてヒンジアーム12が回動する。そして、突起33は、スロット部34bの最奥部34cに突き当たる。突起33が最奥部34cに当接すると、アームシャンク4の先端部側をこれ以上持ち上げることができなくなり、そこが「ロックバック位置」となる(図3(d))。図3(d)のロックバック位置では、スプリング25からアームシャンク4に加わる力(モーメント)の方向が図3(a)の場合とは逆になっており、アームシャンク4はロックバック位置にて保持される。なお、ロックバック位置は、突起33と最奥部34cとの当接および、アームヘッド3の傾斜面32とアームシャンク4の内端面31との当接により所定角度以上のロックバックを強固に規制している。
図4は、スプリング25による付与力(モーメント)の変化を示す説明図である。図4(a)に示すように、「通常位置」では、スプリング25は、スプリング係止軸26とシャンク取付軸16(アームシャンク4の回動中心)よりも下(払拭面側)の位置にて引張り力を付与している。つまり、スプリング係止軸24は、スプリング係止軸26と第1連結部14とを結ぶ線よりも下側に配置されている。このため、アームシャンク4には、スプリング25の引張り力Fの分力F1によって左回りのモーメントが加わる。従って、アームシャンク4には、払拭面側に向かう付勢力が作用し、ワイパブレードが払拭面に所定の付勢力にて押圧される。
これに対し、アームシャンク4の一端が持ち上げられると、ヒンジアーム12は、カムリング23の凸部28が段部21aに当接しつつ、上方に向かって回動する。すると、ヒンジアーム12の動きに伴って、カムリング23とスプリング係止軸24も回動し、図4(b)のように、スプリング係止軸26とシャンク取付軸16、スプリング係止軸24が一直線上に並んだ状態となる。この状態のとき、アームシャンク4に加わるスプリング25の引張り力によるモーメントは0となる(中立位置)。
中立位置の後、さらにアームシャンク4が持ち上げられると、今度は、スプリング25が、スプリング係止軸26とシャンク取付軸16よりも上(払拭面と反対側)の位置にて引張り力を付与する形となる(図4(c))。つまり、スプリング係止軸24は、スプリング係止軸26と第1連結部14とを結ぶ線よりも上側に配置されている。このとき、アームシャンク4には、スプリング25の引張り力Fの分力F2によって右回りのモーメントが加わり、アームシャンク4には、払拭面側から離れる方向に向かう付勢力が作用し、アームシャンク4が「ロックバック位置」にて保持される。
一方、「ロックバック位置」に変位させたアームシャンク4を「通常位置」に戻す場合は、前述の逆の過程を経て元の状態に復帰する(図3(d)→(a))。この際、アームシャンク4が戻され、ヒンジアーム12が凹部21内に収容されるとき、先程とは逆に、カムリング23の凸部28が段部21aに当接しつつ、ヒンジアーム12が下方に向かって回動する。すると、ヒンジアーム12の動きに伴って、カムリング23とスプリング係止軸24も回動し、スプリング25も図3(a)のような状態に復帰する。すなわち、ワイパアーム1では、凸部28と段部21aの当接によってカムリング23が確実に回動し、このカムリング23の動作に伴いスプリング25の係止位置が変化する。このため、ロックバック位置と通常位置におけるモーメントの方向を確実に変化させることができ、各位置に応じた押圧力を的確に得ること可能となる。
このように、本発明によるワイパアーム1は、アームヘッド3とアームシャンク4を、ヒンジアーム12を介して接続し、ヒンジアーム12の回動によってロックバックを行う。そして、ヒンジアーム12の回動に伴い、スプリング25が引張り合う位置が上下に変化するので、狭い角度範囲内にてアームシャンク4のロックバックを実現できる。しかも、カムリング23を用いて、スプリング25の係止位置を変えることにより、よりコンパクトな構成にて、低い角度でのロックバックを可能としている。このため、ロックバック位置におけるアームシャンク4の立ち上がり角度が小さくなり、洗車機での巻き込まれを抑えることができ、ワイパアームの損傷を防止することが可能となる。
(締結部露出動作)
図5は、締結部Pを露出させる場合の動作を示す説明図である。締結部露出動作においては、アームシャンク4を全体的に持ち上げつつ先端部側に移動させ、ナット7を露出させる。締結部Pを露出させるべく、アームシャンク4全体を上方に持ち上げると、図5(a)→(b)のように、前述の突起33はガイド溝34には進入せず、ヒンジアーム12は回動を妨げられることなく動作する。この場合も、ヒンジアーム12は、カムリング23の凸部28が段部21aに当接しつつ、上方に向かって回動し、図5(b)のように、スプリング係止軸26とシャンク取付軸16、スプリング係止軸24が一直線上に並んだ中立状態となる。
その後、アームシャンク4全体を先端部側に移動させると、ヒンジアーム12もそれと共に回動しつつ立ち上がり(図5(c))、さらにアームシャンク4を移動させると、被覆部5が前方に移動し、締結部Pが露出した「作業位置」に変位する(図5(d))。図5(c),(d)の状態では、スプリング25は、スプリング係止軸26とシャンク取付軸16よりも上の位置にて引張り力を付与する形となり、前述のように、アームシャンク4には右回りのモーメントが加わる。
図6は、スプリング25による付与力(モーメント)の変化を示す説明図であり、図6(a)→(c)に示すように、アームシャンク4に加わるモーメントは、ヒンジアーム12の回動に伴い、中立位置を(図6(b))境にして変化する(スプリング付与力:F1→中立→F2)。「作業位置」では、アームシャンク4は右回りのモーメントを受けており、その一端側端部の底面4bがアームヘッド3の上面3bに当接し、図5(d)の状態で保持される。これにより、締結部Pが露出した状態が維持され、ナット7の締結作業等を容易に行うことができるようになる。
一方、「作業位置」に変位させたアームシャンク4を「通常位置」に戻す場合は、前述の逆の過程を経て元の状態に復帰する(図5(d)→(a))。「作業位置」から「通常位置」に復帰する際も、ロックバック動作の場合と同様に、アームシャンク4が戻されヒンジアーム12が凹部21内に収容されるとき、カムリング23の凸部28が段部21aに当接する。これにより、カムリング23とスプリング係止軸24が回動し、図5(a)の状態に復帰する。すなわち、ワイパアーム1では、締結部露出動作においても、凸部28と段部21aの当接によってカムリング23を確実に回動させ、各位置に応じた押圧力を確保している。
このように、本発明によるワイパアーム1は、アームヘッドのカバーとアームシャンクを一体化した構成でありながら、アームシャンク4内に配されたヒンジアーム12の回動により、ロックバックのみならず、締結部露出動作をも容易に行うことができる。このため、従来、カバーとシャンクの2部材にて構成されていたワイパアームを、部材のつなぎ目のない一体感のあるデザインとすることができる。また、カバーを廃することが可能となるため、カバー端部の浮きや外れの心配がなく、色艶が不連続となったり、カバー外れにより、ナットが露出してしまったりすることがなく、ワイパアームの意匠性や耐久性の向上が図られる。
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2であるワイパアームについて説明する。図7は、本発明の実施の形態2であるワイパアーム41の側面図、図8は、ワイパアーム41の分解斜視図である。である。ワイパアーム41もまた、自動車のリアウインド用ワイパ装置に使用され、図7,8に示すように、ピボット軸42の一端部に固定されたアームヘッド43と、アームヘッド43に取り付けられたアームシャンク44とを備えている。実施の形態1のワイパアーム1と同様に、アームヘッド43とアームシャンク44は共に合成樹脂にて形成されており、アームシャンク44の先端部には、図示しないワイパブレードが取り付けられる。ピボット軸42は、ワイパモータ(図示せず)によって往復回動(正逆転)し、ワイパアーム41は、ピボット軸42の動作に伴い、リアウインド上にて往復払拭動作を行う。
図7,8に示すように、本発明によるワイパアーム41も、従来のワイパアームにおけるアームヘッドのカバーとアームシャンクを一体化した構造となっており、アームシャンク44には、アームヘッド43を覆う被覆部45が設けられている。このため、実施の形態1のワイパアーム1と同様に、部材のつなぎ目がなく、全体が一体感のあるスッキリとした外観となっている。また、カバーがないため、カバー端部の浮きや外れの心配がなく、全体が一部材のため色艶が不連続となることもない。このため、従来のワイパアームに比して、意匠性を高めることが可能となり、スタイリングの自由度も向上する。さらに、カバー外れにより、ナットが露出してしまうこともないため、ナットの錆も抑えられる。
アームヘッド43は直方体形状に一体成形されており、その一端側には、取付孔46が厚さ方向(上下方向)に開設されている。取付孔46にはピボット軸42が挿入され、ナット47によって、アームヘッド43はピボット軸42に締結される。アームヘッド43の両側部には一対の支持片51が突設されており、両支持片51の間には、アームシャンク44の基端部が連結されたヒンジプレート(連結部材)52が取り付けられる。ヒンジプレート52は、略三角形に形成されており、両支持片51の間に形成されたプレート収容部53内に収容される。ワイパアーム41では、このヒンジプレート52の作用により、アームシャンク44のロックバックと、ピボット軸42とアームヘッド43の締結部Pの露出を実現している。すなわち、アームシャンク44は、ヒンジプレート52の動作により、払拭動作を行う「通常位置(第1位置)」から、ワイパブレードを払拭面(ガラス面)から浮かした「ロックバック位置(第2位置)」と、締結部Pを露出させた「作業位置(第3位置)」の2通りの状態に変位可能となっている。
ヒンジプレート52には、アームシャンク44と回動自在に接続された第1連結部54と、支持片51に回動自在に支持された第2連結部55を備えている。第1連結部54は、ヒンジプレート52の両側面に突設されたシャンク取付軸56と、アームシャンク44の内側部に設けられたシャンク取付部57とから構成されている。シャンク取付部57には軸孔57aが形成されており、シャンク取付軸56が回動自在に挿入・支持される。第2連結部55は、ヒンジプレート52の両側面に突設された支軸58と、支持片51の内側面に没設され、支軸58が回動自在に挿入される軸溝(溝部)59とから構成されている。軸溝59は、ワイパアーム41の長手方向に延びており、支軸58は、軸溝59内を長手方向に沿って移動できるようにもなっている。
両支持片51には、その一部を切り欠く形で凹部61が形成されている。シャンク取付軸56は、「通常位置」においては、この凹部61内に収容される。一方、アームシャンク44が、「通常位置」−「ロックバック位置」間や「通常位置」−「作業位置」間で変位すると、ヒンジプレート52は第2連結部55を中心に回動し、それに伴い、シャンク取付軸56は凹部61内を上下方向に移動する。
ヒンジプレート52の端部(略三角形状のヒンジプレート52の角部)には、スプリング係止軸62(係止部)が設けられている。スプリング係止軸62は、ヒンジプレート52上において、第2連結部55から概ね最も離れた部位(第2連結部55を中心とする回動端部)に設けられており、スプリング63の一端側が係止されている。スプリング63の他端側は、アームシャンク44に設けられたスプリング係止軸64(係止部)に係止されている。スプリング係止軸64は、アームシャンク44の長手方向中央からアームヘッド3側に寄った位置に配置されている。ヒンジプレート52には、スプリング63が挿通される逃げ溝65が形成されており、スプリング63は、逃げ溝65を介して、両スプリング係止軸62,64間に張設される。アームシャンク44は、スプリング63の引張り力に起因するモーメントを受けつつ、シャンク取付軸56を中心に回動自在に配置される。
実施の形態1のワイパアーム1と同様に、ワイパアーム41においても、アームシャンク44の内側面44aには、上下方向に延びるリブ66が設けられている。リブ66は、アームシャンク44の対向する両内側面44aに複数個突設されており、「通常位置」のように、アームシャンク44がアームヘッド43を覆っている状態のとき、アームヘッド43の側部43aに対し若干の隙間を空けた状態で対向する。このようなリブ66を設けることにより、アームシャンク44とアームヘッド43の間のクリアランスを確保しつつ、両者間の隙間を最小限に留めることができ、シャンク−ヘッド間のガタを抑えることができる。この場合、アームシャンク44の支点である第1連結部54を挟み、アームシャンク44の長手方向両側にリブ66を配することにより、シャンク−ヘッド間のガタが効果的に抑えられる。加えて、第1連結部54から遠い位置にもリブ66が配されているため、ガタ抑制効果の更なる向上が図られる。
次に、このようなワイパアーム41の動作について説明する。実施の形態2のワイパアーム41も、アームヘッド43とアームシャンク44の間に介設されたヒンジプレート52の働きにより、アームシャンク44が、「通常位置」と「ロックバック位置」との間で変位するロックバック動作と、「通常位置」と「作業位置」との間で変位する締結部露出動作の2通りの動作が可能となっている。そこで、実施の形態2においても、ワイパアーム41の動作をロックバック動作と締結部露出動作に分けて説明する。
(ロックバック動作)
図9は、ワイパアーム41においてロックバックを行う場合の動作を示す説明図、図10は、ロックバック動作におけるスプリング63による付与力(モーメント)の変化を示す説明図である。ロックバック動作においては、アームシャンク44の先端部側(ワイパブレード取付側)を持ち上げ、アームシャンク44を約10°傾斜させた状態とする(ロックバック位置)。ロックバック位置では、アームシャンク44の先端部に取り付けられたワイパブレードは、払拭面から離れた状態となる。
図10(a)に示すように、アームシャンク44が「通常位置」のとき、スプリング63は、スプリング係止軸64とシャンク取付軸56(アームシャンク44の回動中心)よりも下(払拭面側)の位置にて引張り力を付与している。つまり、スプリング係止軸62は、スプリング係止軸64と第1連結部54とを結ぶ線よりも下側に配置されている。このため、アームシャンク44には、スプリング63の引張り力Fの分力F1によって左回りのモーメントが加わる。従って、アームシャンク44には、払拭面側に向かう付勢力が作用し、ワイパブレードが払拭面に所定の付勢力にて押圧される。そこで、「通常位置」からアームシャンク44の先端部側を持ち上げると、アームシャンク44は、スプリング63によるモーメントに抗して持ち上げられることになる。
「通常位置」からアームシャンク44を持ち上げると、図9(a)→(b)のように、アームシャンク44が第1連結部54を中心に回動すると共に、ヒンジプレート52も第2連結部55を中心に上方に回動する。アームシャンク44をさらに持ち上げ、図9(b)の状態(傾斜角約5°)を過ぎると、図10(b)のように、スプリング係止軸64とシャンク取付軸56、スプリング係止軸62が一直線上に並んだ状態となる。この状態のとき、アームシャンク44に加わるスプリング63の引張り力によるモーメントは0となる(中立位置)。
中立位置の後、さらにアームシャンク44が持ち上げられると、今度は、スプリング63が、スプリング係止軸64とシャンク取付軸56よりも上(払拭面と反対側)の位置にて引張り力を付与する形となる(図10(c))。つまり、スプリング係止軸62は、スプリング係止軸64と第1連結部54とを結ぶ線よりも上側に配置されている。このとき、アームシャンク44には、スプリング63の引張り力Fの分力F2によって右回りのモーメントが加わる。すると、その反力により、ヒンジプレート52が第2連結部55を中心に上方に移動する形で回動する。
そして、アームシャンク44が約10°程度立ち上がると、支持片51の両側部外面に形成された段部67と、アームシャンク44のシャンク取付部57の端部57bが当接する。これにより、アームシャンク44の動作が規制され、そこが「ロックバック位置」となる(図9(c))。このときアームシャンク44には、図10(c)の場合と同様に、払拭面側から離れる方向に向かう付勢力が作用しており、アームシャンク44は「ロックバック位置」にて保持される。一方、「ロックバック位置」に変位させたアームシャンク44を「通常位置」に戻す場合は、前述の逆の過程を経て元の状態に復帰する(図9(c)→(a))。
なお、「通常位置」→「ロックバック位置」においては、シャンク取付軸56は凹部61内を上方に移動するものの、凹部61からは離脱しない。従って、後述する「締結部露出動作」におけるアームシャンク44のスライド動作は行うことができない。このため、ロックバックさせようとしてアームシャンク4を持ち上げたとき、誤った方向にアームシャンク4が変位してしまうのを防止でき、利用者の誤操作を未然に回避することが可能となる。
このように、本発明によるワイパアーム1は、アームヘッド43とアームシャンク44を、ヒンジプレート52を介して接続し、ヒンジプレート52の回動によってロックバックを行う。そして、ヒンジプレート52の回動に伴い、スプリング63が引張り合う位置が上下に変化するので、狭い角度範囲内にてアームシャンク44のロックバックを実現でき、低い角度でのロックバックが可能となる。このため、ロックバック位置におけるアームシャンク44の立ち上がり角度が小さくなり、洗車機での巻き込まれを抑えることができ、ワイパアームの損傷を防止することが可能となる。
(締結部露出動作)
図11は、締結部Pを露出させる場合の動作を示す説明図、図12は、スプリング63による付与力(モーメント)の変化を示す説明図である。締結部露出動作においては、アームシャンク44を全体的に持ち上げ、ある程度持ち上げたところで先端部側にスライド移動させ、ナット47を露出させる。ここではまず、締結部Pを露出させるべく、アームシャンク44の後方側(アームヘッド43側)を上方に持ち上げると、図11(a)→(b)のように、ヒンジプレート52が第2連結部55(支軸58)を中心に回動する。ヒンジプレート52の回動に伴い、スプリング係止軸64とシャンク取付軸56、スプリング係止軸62が、図12(b)のように一直線上に並び中立状態となる。
さらにヒンジプレート52が回動すると、シャンク取付軸56が凹部61内を上方に移動し、凹部61から離脱する(図11(c))。シャンク取付軸56が凹部61から離脱すると、ヒンジプレート52に形成された支軸58が軸溝59内を移動可能な状態となる。このとき、スプリング63は、スプリング係止軸64とシャンク取付軸56よりも上の位置にて引張り力を付与する形となり、図12(c)のようにアームシャンク44には右回りのモーメントが加わる。
図11(c)のように、支軸58が軸溝59内を移動可能となったところで、アームシャンク44を先端部側に移動させると(図11(d))、被覆部45が前方に移動し、アームシャンク44は、締結部Pが露出した「作業位置」に変位する(図11(e))。「作業位置」では、締結部Pが露出した状態となり、ナット7の締結作業等を容易に行うことができるようになる。一方、「作業位置」に変位させたアームシャンク44を「通常位置」に戻す場合は、前述の逆の過程を経て元の状態に復帰する(図11(e)→(a))。すなわち、「作業位置」からアームシャンク44をスライドさせて図11(c)の状態とし、その状態から、シャンク取付軸56が凹部61内に収容されるようにアームシャンク44をアームヘッド43側に下げ、「通常位置」に復帰させる。
このように、本発明によるワイパアーム41は、アームヘッドのカバーとアームシャンクを一体化した構成でありながら、アームシャンク44内に配されたヒンジプレート52の回動により、ロックバックのみならず、締結部露出動作をも容易に行うことができる。このため、従来、カバーとシャンクの2部材にて構成されていたワイパアームを、部材のつなぎ目のない一体感のあるデザインとすることができる。また、カバーを廃することが可能となるため、カバー端部の浮きや外れの心配がなく、色艶が不連続となったり、カバー外れにより、ナットが露出してしまったりすることがなく、ワイパアームの意匠性や耐久性の向上が図られる。
なお、実施の形態2のワイパアーム41は、スプリング63の係止部(スプリング係止軸62)がヒンジプレート52と一体となっているため、実施の形態1のワイパアーム1よりも部品点数を削減できると共に、アームシャンク44の幅方向(払拭方向)の寸法を小さくすることができる。その一方、実施の形態1のワイパアーム1は、カムリング23を有する分、実施の形態2のワイパアーム41よりも部品点数が増加するが、スプリング25の係止部(スプリング係止軸24)が別体であるため、ヒンジアーム12の回動角度を小さくでき、コンパクトな構造でありながら大きなアームシャンク4の動きを実現できる。このため、ワイパアーム41の高さ方向(ウインドシールド離間方向)の寸法を小さくすることできる(薄型化できる)。ワイパアームの高さが小さくなると、特に、リアワイパに当該ワイパアームを使用した場合、車両全体の長さを小さくできたり、同じ車長において車室内の空間をより広く取ったりすることが可能となる。
(実施の形態3)
図13(a)は、本発明の実施の形態3であるワイパアーム71の平面図、同図(b)はその側面図である。ワイパアーム71は、実施の形態1のワイパアーム1に、流体であるウインドウォッシャ液W(以下、ウォッシャ液Wと略記する)を送給するためのホース72を設けた構成となっている。ホース72は、合成樹脂製のチューブ状部材からなり、アームシャンク4とアームヘッド3との間に設けられている。なお、ワイパアーム71におけるホース72以外の構成は、実施の形態1のワイパアーム1と同様である。
ホース72は、アームシャンク4の内側天井面4cに、長手方向に沿って配索されている。この場合、ホース72は、アームシャンク4内にて、アームヘッド3やヒンジアーム12、スプリングリテーナ22、スプリング25等の動きを阻害しない状態で配置されている。ホース72の一端側(ワイパブレード側)は二又形状となっており、ワイパアーム71の両側面に向かって流路73が分岐している。アームシャンク4の側面には噴射口74が設けられており、流路73の両先端部73aは、噴射口74に開口している。ホース72の他端側(アームヘッド3側)は図示しないウオッシャポンプと接続されている。
このようなワイパアーム71では、運転者によってウインドウォッシャスイッチが操作されると、ウオッシャポンプが作動し、ウォッシャ液Wがホース72内に加圧供給される。ホース72に供給されたウォッシャ液Wは、流路73の両先端部73aに至り、噴射口74からウインドシールドガラスに噴射される。この際、当該ワイパアーム71では、ウォッシャ液Wが流通するホース72がアームシャンク4内に配置され、その噴射口74がワイパアーム71の先端部に設けられているため、より洗浄面(ウインドシールドガラス)に近い場所でウォッシャ液Wを噴射でき、洗浄力を高めることが可能となる。
一方、これに対して通常のワイパアームでは、ウォッシャ液の噴射口は車体側に設けられており、洗浄面と噴射口の距離が大きく、ウォッシャ液が飛散しやすい。また、従来のワイパアームも、ウォッシャ液用のホースを配索することも可能ではあるが、その場合、アームシャンクの内壁に沿ってホースを配置すると、ピボット軸とアームヘッドの締結部周辺にてホースが外界に露出する。このため、露出部分ではホースの保護部材などを設ける必要が生じ、部品点数が増加すると共に、別部材の付加によりデザイン性を損なうおそれもある。この点、本発明によるワイパアーム71では、アームシャンク4が、締結部Pを覆う被覆部5を有しているため、ホース72の外界への露出を抑えられ、ホースの保護部材は不要であり、外観上の問題も生じない。ホース72の外界への露出を抑えられ、
また、ロックバック機構が設けられたワイパアームの場合、締結部周辺にホースが露出していると、ロックバック時に、アームシャンクとアームヘッドとの間でホースが過剰に引っ張られたり、撓んだりするおそれがある。このため、従来のワイパアームにホースを取り付ける場合、ホースの変形を避けるような配管上の工夫が必要となる。この点においても、本発明のワイパアーム71では、アームシャンク4がアームカバーを兼ねた形態となっているため、ワイパアーム内にホース72をレイアウトしやすく、ホース72を被覆部5に固定することにより、ホース72が過剰に引っ張られたり、撓んだりすることがなく、製品信頼性の向上が図られる。
(実施の形態4)
図14(a)は、本発明の実施の形態4であるワイパアーム75の平面図、同図(b)はその側面図である。ワイパアーム75は、実施の形態2のワイパアーム41に、ウォッシャ液Wを送給するためのホース76を設けた構成となっている。ホース76もまた、合成樹脂製のチューブ状部材からなり、アームシャンク44とアームヘッド43との間に設けられている。なお、ワイパアーム75におけるホース76以外の構成は、実施の形態2のワイパアーム41と同様である。
ホース76は、アームシャンク44の内側天井面44bに、長手方向に沿って配索されている。この場合、ホース76は、アームシャンク44内にて、アームヘッド43やヒンジプレート52、スプリング63等の動きを阻害しない状態で配置されている。ホース76の一端側(ワイパブレード側)は二又形状となっており、ワイパアーム75の両側面に向かって流路77が分岐している。アームシャンク44の側面には噴射口78が設けられており、流路77の両先端部77aは、噴射口78に開口している。ホース76の他端側(アームヘッド43側)は図示しないウオッシャポンプと接続されている。
このようなワイパアーム75もまた、運転者によってウインドウォッシャスイッチが操作されると、ウオッシャポンプが作動し、ウォッシャ液Wがホース76内に加圧供給される。ホース76に供給されたウォッシャ液Wは、流路77の両先端部77aに至り、噴射口78からウインドシールドガラスに噴射される。実施の形態3のワイパアーム71と同様、当該ワイパアーム75も、ウォッシャ液Wが流通するホース76がアームシャンク44内に配置され、その噴射口78がワイパアーム75の先端部に設けられている。このため、より洗浄面(ウインドシールドガラス)に近い場所でウォッシャ液Wを噴射でき、洗浄力の向上が図られる。
また、前述同様、本発明によるワイパアーム75は、通常のワイパアームと異なり、アームシャンク44に締結部Pを覆う被覆部5が設けられているため、ホース76の外界への露出を抑えられる。このため、ホースの保護部材は不要であり、外観上の問題も生じない。さらに、ロックバック機構が設けられたワイパアームにおいても、本発明のワイパアーム75では、ホース76を被覆部45に固定することにより、ホース76が過剰に引っ張られたり、撓んだりすることがなく、製品信頼性の向上が図られる。
なお、実施の形態3,4において、ホース72,76の一端側をワイパブレードまで延長しても良い。この場合、ワイパブレードに流体流路と噴射口を設け、この流体流路にホース72,76を接続することも可能である。また、流体の流路としては、ホースのみならず、一体成形等によりアームシャンク4,44に直接空洞を設け、その中を流体が流通するようにしても良い。さらに、1本のホース72,76を二又に分岐させる代わりに、ホース72,76を2本ずつ設け、それぞれのホース72,76の一端側(ワイパブレード側)をワイパアーム75の両側面に向かって配置するようにしても良い。
本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
例えば、実施の形態におけるロックバック角度は一例であり、前述の値には限定されない。また、実施の形態1のワイパアーム1では、カムリング23の凸部28が4個突設されているが、これは、一対のカムリング23について、左右勝手違いの部品を避けるためのものであり、凸部23の個数は左右各2個ずつであっても良い。