以下、本発明の実施の形態による油圧駆動装置を、建設機械(油圧ショベル)の油圧駆動装置に適用した場合を例に挙げ、添付図面に従って説明する。
図1ないし図5は、第1の実施の形態を示している。図1において、建設機械の代表例である油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、下部走行体2上に設けられた旋回装置3と、下部走行体2上に旋回装置3を介して旋回可能に搭載された上部旋回体4と、上部旋回体4の前側に設けられ掘削作業等を行う多関節構造の作業装置5とにより構成されている。
このとき、下部走行体2と上部旋回体4は、油圧ショベル1の車体を構成している。また、作業機またはフロントとも呼ばれる作業装置5は、例えば、ブーム5A、アーム5B、作業具としてのバケット5Cと、これらを駆動するブームシリンダ5D、アームシリンダ5E、作業具シリンダとしてのバケットシリンダ5Fとにより構成されている。作業装置5は、油圧シリンダであるシリンダ5D,5E,5Fを伸長または縮小することによって俯仰動する。
下部走行体2は、トラックフレーム2Aと、トラックフレーム2Aの左,右両側に設けられた駆動輪2Bと、トラックフレーム2Aの左,右両側で駆動輪2Bと前,後方向の反対側に設けられた遊動輪2Cと、駆動輪2Bと遊動輪2Cとに巻回された履帯2D(いずれも左側のみ図示)とを含んで構成されている。左,右の駆動輪2Bは、後述する左,右の走行用駆動装置32,55の走行用油圧モータ33,56(図2参照)によって駆動される。
上部旋回体4は、旋回軸受、旋回用油圧モータ、減速機構等を含んで構成される旋回装置3を介して下部走行体2上に搭載されている。上部旋回体4は、上部旋回体4の支持構造体(ベースフレーム)となる旋回フレーム6と、旋回フレーム6上に搭載されたキャブ7、カウンタウエイト8等とを含んで構成されている。この場合、旋回フレーム6上には、後述のエンジン12、油圧ポンプ13,14,20、作動油タンク15、制御弁装置22(図2参照)等が搭載されている。
旋回フレーム6は、旋回装置3を介して下部走行体2に取付けられている。旋回フレーム6の前部左側には、内部が運転室となったキャブ7が設けられている。キャブ7内には、オペレータが着席する運転席が設けられている。運転席の周囲には、油圧ショベル1を操作するための操作装置27、傾転切換スイッチ60(図2参照)等が設けられている。操作装置27は、オペレータの操作(レバー操作、ペダル操作)に応じたパイロット信号(パイロット圧)を、制御弁装置22に出力する。これにより、オペレータは、走行用駆動装置32,55の走行用油圧モータ33,56(図2参照)、作業装置5のシリンダ5D,5E,5F、旋回装置3の旋回用油圧モータを動作(駆動)させることができる。
キャブ7内には、運転席の後方の下側に位置して後述のコントローラ62(図2参照)が設けられている。一方、旋回フレーム6の後端側には、作業装置5との重量バランスをとるためのカウンタウエイト8が設けられている。
次に、油圧ショベル1を駆動するための油圧駆動装置ついて、図1に加え、図2ないし図5も参照しつつ説明する。
図2に示すように、油圧ショベル1は、油圧ポンプ13,14から供給される圧油に基づいて油圧ショベル1を動作(駆動)させる油圧回路11を備えている。油圧回路11は、エンジン12、油圧ポンプ13,14,20、作動油タンク15、センタジョイント19、制御弁装置22、操作装置27、走行用駆動装置32,55、コントローラ62等を備えている。なお、図2に示す油圧回路11は、図面が複雑になることを避けるために、下部走行体2を走行させるための回路(即ち、走行用油圧駆動装置)を主として示している。換言すれば、図2に示す油圧回路11は、作業装置5を駆動するための回路(即ち、作業用油圧駆動装置)、および、旋回装置3を駆動する(下部走行体2に対して上部旋回体4を旋回させる)ための回路(即ち、旋回用油圧駆動装置)を省略している。
エンジン12は、旋回フレーム6に搭載されている。エンジン12は、例えばディーゼルエンジン等の内燃機関によって構成されている。エンジン12の出力側には、第1の油圧ポンプ13、第2の油圧ポンプ14、および、パイロット油圧ポンプ20が取付けられている。これら油圧ポンプ13,14,20は、エンジン12によって回転駆動される。なお、油圧ポンプ13,14,20を駆動するための駆動源(動力源)は、内燃機関となるエンジン12単体で構成できる他、例えば、エンジンと電動モータ、または、電動モータ単体により構成してもよい。
第1の油圧ポンプ13および第2の油圧ポンプ14(以下、油圧ポンプ13,14ともいう)は、エンジン12に機械的に(即ち、動力伝達可能に)接続されている。油圧ポンプ13,14は、油圧回路11のメイン油圧ポンプとなるものである。油圧ポンプ13,14は、例えば、可変容量型の斜板式、斜軸式またはラジアルピストン式油圧ポンプによって構成されている。油圧ポンプ13,14は、制御弁装置22を介して油圧アクチュエータとなる走行用油圧モータ33,56、旋回用油圧モータ、シリンダ5D,5E,5F(以下、油圧アクチュエータ5D−56ともいう)に接続されている。
ここで、第1の油圧ポンプ13は、油圧ショベル1の左側の走行用駆動装置32(以下、左走行用駆動装置32ともいう)の走行用油圧モータ33(以下、左走行用油圧モータ33ともいう)に圧油を供給する。また、図示は省略するが、第1の油圧ポンプ13は、例えば、旋回用油圧モータ、ブームシリンダ5D、アームシリンダ5Eに圧油を供給する。図2に示すように、第1の油圧ポンプ13は、作動油タンク15に貯溜された作動油を圧油として第1の吐出管路16に吐出する。
第1の吐出管路16に吐出された圧油は、制御弁装置22およびセンタジョイント19を介して、左走行用油圧モータ33に供給される。左走行用油圧モータ33に供給された圧油は、センタジョイント19、制御弁装置22および戻り管路17を介して作動油タンク15に戻る。このように、第1の油圧ポンプ13は、作動油を貯留する作動油タンク15と共に、第1の油圧源を構成している。
一方、第2の油圧ポンプ14は、第1の油圧ポンプ13と同様のものである。第2の油圧ポンプ14は、油圧ショベル1の右側の走行用駆動装置55(以下、右走行用駆動装置55ともいう)の走行用油圧モータ56(以下、右走行用油圧モータ56ともいう)に圧油を供給する。また、図示は省略するが、第2の油圧ポンプ14は、例えば、ブームシリンダ5D、バケットシリンダ5Fに圧油を供給する。図2に示すように、第2の油圧ポンプ14は、作動油タンク15に貯溜された作動油を圧油として第2の吐出管路18に吐出する。第2の油圧ポンプ14は、作動油タンク15と共に第2の油圧源を構成している。
センタジョイント19は、下部走行体2と上部旋回体4との間に設けられている。センタジョイント19は、下部走行体2に対する上部旋回体4の旋回に拘わらず、上部旋回体4側と下部走行体2側との間で油液(作動油、圧油)を流通させるものである。
パイロットポンプとしてのパイロット油圧ポンプ20は、油圧ポンプ13,14と同様に、エンジン12に機械的に接続されている。パイロット油圧ポンプ20は、例えば、固定容量型の歯車ポンプによって構成されている。パイロット油圧ポンプ20は、作動油タンク15に貯溜された作動油を圧油としてパイロット吐出管路21内に吐出する。即ち、パイロット油圧ポンプ20は、作動油タンク15と共にパイロット油圧源を構成している。
パイロット油圧ポンプ20は、後述のパイロット圧制御弁58を介して走行用油圧モータ33,56の傾転切換弁51,51に圧油(以下、変速用パイロット圧ともいう)を供給する。また、後述するように、パイロット油圧ポンプ20は、パイロット圧制御弁58およびカウンタバランス弁49,49を介して走行用油圧モータ33,56に圧油(暖機用の圧油となる変速用パイロット圧)を供給する。さらに、パイロット油圧ポンプ20は、操作装置27(の走行用レバー・ペダル操作装置28,29)を介して制御弁装置22(の方向制御弁23,24)に圧油(以下、操作用パイロット圧ともいう)を供給する。
制御弁装置22は、複数の方向制御弁23,24からなる制御弁群である。なお、図2に示す制御弁装置22は、走行用の方向制御弁23,24、即ち、左走行用方向制御弁23および右走行用方向制御弁24を主として示している。換言すれば、図2に示す制御弁装置22は、作業用の方向制御弁(ブーム用方向制御弁、アーム用方向制御弁、バケット用方向制御弁)、および、旋回用の方向制御弁(旋回用方向制御弁)を省略している。同様に、図2に示す操作装置27も、走行用の操作装置28,29、即ち、左走行用レバー・ペダル操作装置28および右走行用レバー・ペダル操作装置29を主として示している。換言すれば、図2に示す操作装置27は、作業用のレバー操作装置(左レバー操作装置、右レバー操作装置)を省略している。
制御弁装置22は、油圧ポンプ13,14から吐出された圧油を、油圧アクチュエータ5D−56へ分配する。即ち、制御弁装置22は、キャブ7内に配置された操作装置27の操作(レバー操作、ペダル操作)による切換信号(操作用パイロット圧)に応じて、油圧ポンプ13,14から油圧アクチュエータ5D−56に供給される圧油の方向を制御する。これにより、油圧アクチュエータ5D−56は、油圧ポンプ13,14から供給(吐出)される圧油(作動油)によって駆動される。
ここで、制御弁装置22の左走行用方向制御弁23は、左走行用油圧モータ33を第1の油圧ポンプ13に接続する一対の左給排管路(左給排通路)25A,25Bの途中に設けられている。左走行用方向制御弁23は、パイロット操作式の方向制御弁、例えば、4ポート3位置(または、6ポート3位置)の油圧パイロット式方向制御弁により構成されている。左走行用方向制御弁23は、第1の油圧ポンプ13と左走行用油圧モータ33との間で左走行用油圧モータ33に対する圧油の供給と排出を切換える。
即ち、左走行用方向制御弁23は、第1の油圧ポンプ13から左走行用油圧モータ33に供給、排出する圧油の方向を切換える。これにより、左走行用方向制御弁23は、左走行用油圧モータ33を正転または逆転させる。左走行用方向制御弁23の油圧パイロット部23A,23Bには、左走行用レバー・ペダル操作装置28の操作に基づく切換信号が供給される。これにより、左走行用方向制御弁23は、中立位置(A)から切換位置(B),(C)に切換操作される。
制御弁装置22の右走行用方向制御弁24は、右走行用油圧モータ56を第2の油圧ポンプ14に接続する一対の右給排管路(右給排通路)26A,26Bの途中に設けられている。右走行用方向制御弁24は、左走行用方向制御弁23と同様のもで、第2の油圧ポンプ14から右走行用油圧モータ56に供給、排出する圧油の方向を切換える。右走行用方向制御弁24の油圧パイロット部24A,24Bには、右走行用レバー・ペダル操作装置29の操作に基づく切換信号が供給される。
操作装置27は、走行用操作装置となる走行用レバー・ペダル操作装置28,29(以下、走行用操作装置28,29ともいう)と、作業用操作装置となる作業用レバー操作装置(図示せず)とを備えている。走行用操作装置28,29は、上部旋回体4のキャブ7内、より具体的には、運転席の前方に配置されている。作業用レバー操作装置は、運転席の左,右両側に配置されている。
走行用操作装置28,29は、例えば、レバー・ペダル式の減圧弁型パイロット弁により構成されている。走行用操作装置28,29には、パイロット油圧ポンプ20からの圧油がパイロット吐出管路21を通じて供給される。走行用操作装置28,29は、オペレータによるレバー操作、ペダル操作に応じた切換信号を、制御弁装置22に出力する。
ここで、左走行用操作装置28は、左走行用方向制御弁23を切換えるものである。即ち、左走行用操作装置28は、オペレータによって操作されることにより、その操作量に比例した操作用パイロット圧(切換信号)である左走行パイロット圧を、左走行用方向制御弁23の油圧パイロット部23A,23Bに供給(出力)する。これにより、左走行用方向制御弁23の切換位置が切換わる。一方、右走行用操作装置29は、右走行用方向制御弁24を切換えるものである。
圧力センサ30は、走行用操作装置28,29と走行用方向制御弁23,24との間(の油路)にシャトル弁31A,31B,31Cを介して設けられている。圧力センサ30は、シャトル弁31A,31B,31Cを介して取り出された走行パイロット圧Pt(換言すれば、走行用方向制御弁23,24を切換駆動するための駆動圧Pt)を検出する。即ち、圧力センサ30は、左走行パイロット圧と右走行パイロット圧とのうちの高圧側の圧力を、走行パイロット圧Ptとして検出する。
圧力センサ30は、コントローラ62と接続されている。圧力センサ30は、走行パイロット圧Ptに対応する信号を、コントローラ62に出力する。コントローラ62は、圧力センサ30で検出された走行パイロット圧Ptに基づいて、例えば、走行用操作装置28,29の操作の有無を判定する。即ち、コントローラ62は、走行パイロット圧Ptが予め設定した閾値Paよりも大きいとき(Pt>Paのとき)は、走行用操作装置28,29が操作されていると判定する。なお、閾値Paは、走行用操作装置28,29が操作されているか否かを精度よく判定できるように、予め実験、計算、シミュレーション等により求めておく。
左走行用駆動装置32は、第1の油圧ポンプ13から供給される圧油に基づいて左の駆動輪2Bを回転駆動する。左走行用駆動装置32の左走行用油圧モータ33は、左給排管路25A,25Bを介して第1の油圧ポンプ13および作動油タンク15と接続されている。左給排管路25A,25Bの途中には、左走行用方向制御弁23が設けられている。
図3に示すように、左走行用駆動装置32(以下、単に走行用駆動装置32ともいう)は、左走行用油圧モータ33(以下、単に油圧モータ33ともいう)と左ブレーキバルブ44(以下、単にブレーキバルブ44ともいう)とにより構成されている。即ち、走行用駆動装置32は、圧油の流入口と流出口とを逆転させることで両方向に回転可能な油圧モータ33に、油圧モータ33の流入・流出口(モータポート47A,47B)の流れを制御するブレーキバルブ44が接続されている。
油圧モータ33は、油圧ポンプ13からの圧油により回転駆動される。ここで、油圧モータ33は、可変容量型油圧モータにより構成されている。より具体的には、図4に示すように、油圧モータ33は、容量可変部としての斜板42を有するアキシャルピストン型斜板式油圧モータにより構成されている。油圧モータ33は、モータケーシング34、出力軸35、シリンダブロック36、ピストン38、シュー39、弁板40、容量可変機構41を備えている。油圧モータ33は、油圧ポンプ13から供給される圧油により出力軸35を回転させると共に、容量可変機構41によって出力軸35の回転数を変化させることができる。
モータケーシング34は、油圧モータ33の外殻をなすもので、モータケーシング34内には、出力軸35、シリンダブロック36、弁板40、斜板42等が配置されている。出力軸35は、モータケーシング34に回転可能に設けられている。シリンダブロック36は、モータケーシング34内に位置して出力軸35の外周側に設けられている。シリンダブロック36は、出力軸35にスプライン結合され、出力軸35と一体に回転する。シリンダブロック36には、周方向に離間して軸方向に伸長する複数のシリンダ37が穿設されている。シリンダ37内にはピストン38が摺動可能に挿嵌されている。シリンダ37は、ポート37Aと連通している。
複数のピストン38は、シリンダブロック36の各シリンダ37内に軸方向の摺動を可能に挿嵌されている。ピストン38は、シリンダブロック36の回転によってシリンダ37内を往復動する。複数のシュー39は、各ピストン38の先端側(突出端側)に揺動可能に設けられている。シュー39は、ピストン38によって斜板42の表面に押圧されることにより、シリンダブロック36の回転に伴って斜板42上を環状の軌跡を描くように摺動する。
弁板40は、モータケーシング34とシリンダブロック36との間に設けられている。弁板40は、シリンダブロック36の各シリンダ37と間欠的に連通する一対の給排ポート40A,40Bを有している。各給排ポート40A,40Bは、給排管路25A,25Bに連通している。シリンダブロック36のポート37Aは、弁板40の給排ポート40A,40Bにより高圧側ポート(圧油流入側)と低圧側ポート(圧油流出側)が分離される。即ち、シリンダブロック36の回転角度に応じて、シリンダブロック36のポート37Aに作用する圧油の状態が切換わる。
容量可変機構41は、モータケーシング34内に設けられている。容量可変機構41は、容量可変部としての斜板42と、容量可変アクチュエータとしての傾転アクチュエータ43とを含んで構成されている。容量可変機構41は、斜板42の傾転角度を傾転アクチュエータ43によって変化させることにより、シリンダブロック36の各シリンダ37内に供給される圧油の容量を調整し、出力軸35の回転数、出力トルクを変化させるものである。
斜板42は、各ピストン38の突出端側に位置してモータケーシング34内に傾転可能に設けられている。斜板42は、出力軸35を取囲む円板状に形成されている。斜板42の裏面側は、モータケーシング34に傾転可能に支持され、斜板42の表面側は、シリンダブロック36の回転に伴って各シュー39が環状の軌跡を描くように摺動する摺動面となっている。
ここで、斜板42は、常時は各ピストン38から作用する押圧力の合力(押圧合力)により、図4に示す大傾転位置を保持する。これに対して、斜板42は、傾転アクチュエータ43に押圧されることにより、小傾転位置へと傾転する。この場合、斜板42が大傾転位置(図4の位置)にあるときには、ピストン38のストローク量(最大・最小ストローク差)が増大することにより出力軸35は高トルクで低速回転する。一方、斜板42が小傾転位置にあるときには、ピストン38のストローク量が減少することにより、油圧モータ33の回転に必要な供給流量(モータ押しのけ容量)が減少し、出力軸35は低トルクで高速回転する。
傾転アクチュエータ43は、油圧モータ33の斜板42を駆動しモータ容量を変化させる。ここで、傾転アクチュエータ43は、出力軸35から径方向に離間してモータケーシング34に穿設された傾転シリンダ43Aと、基端側が傾転シリンダ43A内に摺動可能に挿嵌され先端側が斜板42の裏面に当接する傾転ピストン43B(サーボピストン)とにより構成されている。傾転アクチュエータ43は、傾転切換弁51から傾転シリンダ43A内に供給される圧油に応じて傾転ピストン43Bが斜板42の裏面側を押圧することにより、斜板42を大傾転位置と小傾転位置との間で傾転させて出力軸35の回転数を変化させる。
図3に示すように、ブレーキバルブ44は、油圧モータ33と共に、走行用駆動装置32を構成している。ブレーキバルブ44は、一対のバルブポート45A,45Bと、パイロット圧ポート46と、一対のモータポート47A,47Bと、一対のチェック弁48A,48Bと、カウンタバランス弁49と、高圧選択弁50と、容量制御弁としての傾転切換弁51と、一対のリリーフ弁53A,53Bとを有している。チェック弁48A,48B、カウンタバランス弁49、高圧選択弁50、傾転切換弁51、リリーフ弁53A,53Bは、例えば、油圧モータ33のモータケーシング34に一体的に設けられている。
バルブポート45A,45Bは、例えば、モータケーシング34に開口している。バルブポート45A,45Bは、方向制御弁23の切換位置に応じて油圧ポンプ13または作動油タンク15と接続される。パイロット圧ポート46は、例えば、モータケーシング34に開口している。パイロット圧ポート46は、パイロット圧制御弁58の切換位置に応じてパイロット油圧ポンプ20または作動油タンク15と接続される。モータポート47A,47Bは、弁板40の給排ポート40A,40Bと接続されている。
チェック弁48A,48Bは、油圧モータ33と方向制御弁23との間に位置して給排管路25A,25Bの途中に設けられている。チェック弁48A,48Bは、ポペット型の逆止弁である。チェック弁48A,48Bは、バルブポート45A,45B側からモータポート47A,47B側に流れる圧油は通す一方、モータポート47A,47B側からバルブポート45A,45B側に流れる圧油は遮断するように動作する。
カウンタバランス弁49は、各チェック弁48A,48Bと並列となるように給排管路25A,25Bの途中に設けられている。即ち、カウンタバランス弁49は、方向制御弁23と油圧モータ33との間に位置して一対の給排管路25A,25Bの途中に設けられている。カウンタバランス弁49は、給排管路25A,25B間の差圧により方向制御弁23にほぼ連動して切換わり、油圧モータ33の慣性回転時には閉弁状態となって油圧モータ33の前後で給排管路25Aまたは給排管路25B内にブレーキ圧を発生させるものである。
ここで、カウンタバランス弁49は、6ポート3位置のスプリングセンタ式スプール型切換弁により構成されている。カウンタバランス弁49は、バルブポート45A,45Bとモータポート47A,47Bとの間の油路を遮断する中立位置(a)と、モータポート47Aとバルブポート45Aとの間の油路を連通させると共にバルブポート45Bとモータポート47Bとの間の油路を遮断する駆動位置(b)と、モータポート47Bとバルブポート45Bとの間の油路を連通させると共にバルブポート45Aとモータポート47A間の油路を遮断する駆動位置(c)との間で切換えが可能となっている。
高圧選択弁50は、シャトル弁により構成されている。高圧選択弁50は、油圧モータ33とカウンタバランス弁49との間に位置して給排管路25A,25Bの間に設けられている。高圧選択弁50は、油圧モータ33に接続される給排管路25A,25Bのうち高圧側の圧油を選択し、選択した圧油を、傾転切換弁51を介して傾転アクチュエータ43に供給する。
傾転切換弁51は、高圧選択弁50と傾転アクチュエータ43との間に設置されている。即ち、傾転切換弁51は、高圧選択弁50と傾転アクチュエータ43の傾転シリンダ43Aとの間を接続する油路52の途中に設けられている。傾転切換弁51は、傾転アクチュエータ43に供給する圧油を切換えるものである。傾転切換弁51は、油圧パイロット部51Aを有する3ポート2位置の油圧パイロット切換弁(方向制御弁)として構成されている。傾転切換弁51は、油圧パイロット部51Aに供給されるパイロット信号(変速用パイロット圧)に応じて、油路52をドレンポート54に接続する中立位置(d)と油路52を高圧選択弁50に接続する駆動位置(e)とに切換えられるものである。
傾転切換弁51が中立位置(d)のときは、高圧選択弁50から傾転シリンダ43Aへの圧油の供給が遮断されると共に、傾転シリンダ43Aがドレンポート54と連通する。これにより、傾転ピストン43Bが非作動状態となって斜板42に作用する押圧力が抑えられ、斜板42は大傾転位置(モータ傾転最大)を保持する。一方、傾転切換弁51が駆動位置(e)のときは、給排管路25A,25Bのうち高圧選択弁50によって選択された高圧側の給排管路25A(25B)を流れる圧油の一部が、油路52を通じて傾転シリンダ43Aに供給される。これにより、傾転ピストン43Bが作動状態となって斜板42を押圧し、斜板42は小傾転位置(モータ傾転最小)を保持する。
傾転切換弁51の油圧パイロット部51Aには、パイロット圧制御弁58からパイロット圧ポート46を介して変速パイロット圧Pが供給される。ここで、傾転切換弁51を中立位置(d)から駆動位置(e)に切換えるために必要な最小変速パイロット圧(最小駆動圧)をP0とする。この場合、傾転切換弁51の油圧パイロット部51AにP0以上の変速パイロット圧P(≧P0)が作用すると、傾転切換弁51は中立位置(d)から駆動位置(e)に移動し、モータ傾転が最小となる。これに対して、変速パイロット圧PがP0よりも小さいとき、即ち、変速パイロット圧P<P0のときは、傾転切換弁51は駆動位置(e)に移動せず、モータ傾転も最大のままである。
リリーフ弁53A,53Bは、油圧モータ33とカウンタバランス弁49との間に位置して給排管路25A,25Bの途中に設けられている。リリーフ弁53A,53Bは、油圧モータ33の慣性回転時に給排管路25Aまたは給排管路25B内で発生したブレーキ圧が所定の設定圧まで上昇すると開弁し、このときの過剰圧をリリーフするものである。
即ち、リリーフ弁53A,53Bは、走行用駆動装置32の保護のために設置されている。リリーフ弁53A,53Bは、一対のモータポート47A,47Bのうち一方のモータポート47A(47B)のモータポート圧が規定値(設定圧)以上となると、圧油を他方(反対側)のモータポート47B(47A)に流出させることで、走行用駆動装置32が高圧によって損傷することを防止する。
ここで、例えば、バルブポート45Aが高圧側、バルブポート45Bが低圧側とする。この場合、ブレーキバルブ44内の圧油の流れは、高圧側バルブポート45Aから流入する圧油がチェック弁48Aを通り、モータポート47Aを介して油圧モータ33(弁板高圧側ポート)に流れ、油圧モータ33を駆動する。このとき、カウンタバランス弁49は、駆動位置(c)で保持されており、バルブポート45Aからモータポート47Aに流れるカウンタバランス弁49内の流路は遮断されている。油圧モータ33(弁板低圧側ポート)から流出する圧油は、カウンタバランス弁49の駆動位置(c)内の流路を通り、低圧側バルブポート45Bから流出する。モータポート47Bからバルブポート45Bに流れるチェック弁48Bの流路は遮断されている。以上のように、ブレーキバルブ44においては、油圧モータ33の流入側油路では、圧油は、チェック弁48A(48B)を通過し、流出側油路では、カウンタバランス弁49を通過する流路をとる。
ドレンポート54は、例えば、油圧モータ33のモータケーシング34に開口している。ドレンポート54は、油圧モータ33内でピストン38を含む内部部品の摺動部の隙間から漏れた油(ドレン)を、油圧モータ33内から排出するものである。ドレンポート54は、ドレン管路57を介して作動油タンク15と接続されている。
一方、図2に示すように、右走行用駆動装置55は、第2の油圧ポンプ14から供給される圧油に基づいて右の駆動輪を回転駆動する。右走行用駆動装置55の右走行用油圧モータ56は、右給排管路26A,26Bを介して油圧ポンプ14および作動油タンク15と接続されている。右給排管路26A,26Bの途中には、右走行用方向制御弁24が設けられている。右走行用駆動装置55は、左走行用駆動装置32と同様のものである。右走行用駆動装置55(以下、単に走行用駆動装置55ともいう)については、左走行用駆動装置32と同一の構成要素に同一の符号を付し、これ以上の説明は省略する。この場合、右走行用油圧モータ56(以下、単に油圧モータ56ともいう)には、左走行用油圧モータ33と異なる符号を付したが、左走行用油圧モータ33と同じ構成である。
ドレン管路57は、走行用駆動装置32,55(油圧モータ33,56)のドレンポート54と作動油タンク15との間を接続するものである。ドレン管路57は、油圧モータ33,56を含む走行用駆動装置32,55からのドレンを、作動油タンク15に排出する。即ち、走行用駆動装置32,55からのドレンは、ドレン管路57を介して作動油タンク15に還流する。
パイロット圧制御弁58は、走行用駆動装置32,55の傾転切換弁51を切換えるものである。このために、パイロット圧制御弁58は、パイロット油圧ポンプ20からの圧油(パイロット圧)を制御する。即ち、パイロット圧制御弁58は、走行用駆動装置32,55(油圧モータ33,56)のモータ傾転を切換えるために傾転切換弁51に供給する変速パイロット圧Pを制御する。パイロット圧制御弁58は、例えば、比例電磁弁からなる3ポート2位置の電磁切換弁(電磁比例制御弁)であり、電磁パイロット部58A(ソレノイド)を有している。
パイロット圧制御弁58の入力側は、パイロット吐出管路21を介してパイロット油圧ポンプ20に接続されている。パイロット圧制御弁58の出力側は、走行用駆動装置32,55のパイロット圧ポート46を介して傾転切換弁51(の油圧パイロット部51A)に接続されている。パイロット圧制御弁58の電磁パイロット部58Aは、コントローラ62に接続されている。パイロット圧制御弁58は、コントローラ62から供給される電力Wに比例した圧力Pの圧油(変速パイロット圧P)を出力可能である。一方、パイロット圧制御弁58は、コントローラ62から電力Wが供給されていないときは、図2に示すようにパイロット圧ポート46を作動油タンク15に連通させる。
変速用パイロット管路59は、パイロット圧制御弁58と走行用駆動装置32,55の傾転切換弁51との間に設けられている。即ち、変速用パイロット管路59は、パイロット圧制御弁58と傾転切換弁51との間を接続する管路である。変速用パイロット管路59は、パイロット圧制御弁58からのパイロット圧Pを傾転切換弁51に供給する。また、後述するように、変速用パイロット管路59の途中には、後述の暖機用パイロット管路64が接続されている。この場合、変速用パイロット管路59は、パイロット圧制御弁58からの圧油(変速パイロット圧P)を、カウンタバランス弁49を介して暖機用パイロット管路64に供給する。
容量切換スイッチ(速度切換スイッチ)としての傾転切換スイッチ60は、キャブ7内に設置されている。傾転切換スイッチ60は、コントローラ62に接続されている。傾転切換スイッチ60は、走行用駆動装置32,55(油圧モータ33,56)のモータ容量(モータ傾転状態)を切換える。即ち、オペレータは、傾転切換スイッチ60を操作することで、走行用駆動装置32,55の駆動速度(回転速度)を調整可能である。
この場合、傾転切換スイッチ60は、例えば、油圧ショベル1(下部走行体2)を低速走行させる低速位置(低速モード)と高速走行させる高速位置(高速モード)との2つの選択位置(走行モード)を有している。傾転切換スイッチ60が低速位置に切換えられている(設定されている)ときは、モータ容量が大容量(傾転大)となり、油圧モータ33,56を低速で回転させることができる。一方、傾転切換スイッチ60が高速位置に切換えられている(設定されている)ときは、モータ容量が小容量(傾転小)となり、油圧モータ33,56を高速で回転させることができる。
油温センサ61は、作動油タンク15に設置されている。油温センサ61は、作動油タンク15の作動油の温度T(以下、油温Tともいう)を検出(測定)する。油温センサ61は、コントローラ62に接続されている。油温センサ61は、油温Tに対応する信号をコントローラ62に出力する。後述するように、コントローラ62は、油温センサ61で検出される油温Tに基づいて、油圧モータ33,56の暖機を行う。
コントローラ62は、パイロット圧制御弁58を制御(電子制御)する制御装置である。コントローラ62は、マイクロコンピュータ、駆動回路、電源回路等を含んで構成されている。即ち、コントローラ62は、RAM、ROM等のメモリおよびCPUを含んで構成された演算処理部を有し、コンピュータプログラムに従って動作する。コントローラ62の入力側は、傾転切換スイッチ60、油温センサ61、圧力センサ30に接続されている。コントローラ62の出力側は、パイロット圧制御弁58に接続されている。さらに、コントローラ62には、上部旋回体4に搭載された電源となるバッテリ(図示せず)から電力が供給される。
コントローラ62には、圧力センサ30で検出される走行パイロット圧Pt、即ち、走行用操作装置28,29の操作による方向制御弁23,24の駆動圧Ptが入力される。コントローラ62には、油温センサ61で検出される作動油タンク15の温度T、即ち、作動油タンク15の油温Tが入力される。コントローラ62には、傾転切換スイッチ60の状態、即ち、走行モード(選択位置)が低速モード(低速位置)であるか高速モード(高速位置)であるかが入力される。
コントローラ62は、パイロット圧制御弁58に駆動電力Wを供給し、走行用駆動装置32,55のパイロット圧ポート46に作用する変速パイロット圧Pを制御する。例えば、コントローラ62は、走行用駆動装置32,55が駆動中であると判定し(即ち、駆動圧Ptを検知し)、かつ、傾転切換スイッチ60がモータ傾転小傾(高速、低トルク)に対応する高速位置に設定されていると判定したときは、パイロット圧制御弁58に電力Wを供給する。
このように、コントローラ62は、走行用操作装置28,29の操作の有無(圧力センサ30が検出する駆動圧Ptが閾値Pa以上であるか否か)と傾転切換スイッチ60の選択位置とに応じて、パイロット圧制御弁58を制御する。これにより、コントローラ62は、走行用駆動装置32,55のモータ容量(モータ傾転状態)を制御する。具体的には、コントローラ62は、傾転切換スイッチ60が高速位置のときは、走行用操作装置28,29が操作されると、油圧モータ33,56が小容量(高速、低トルク)となるようにパイロット圧制御弁58(の電磁パイロット部58A)に電力Wを供給する。一方、コントローラ62は、傾転切換スイッチ60が低速位置のときは、パイロット圧制御弁58(の電磁パイロット部58A)に電力Wを供給しない。この場合は、油圧モータ33,56が大容量(低速、高トルク)となる。
ところで、前述の特許文献1には、パイロットポンプからの圧油を、固定容量型油圧モータの2つのドレンポートのうちの一方のドレンポートに供給し他方のドレンポートから排出することにより、走行用の油圧モータの暖機を行う技術が記載されている。これに対して、可変容量型油圧モータの変速用パイロット管路とドレン管路との間にこれらを連通する回路を設け、変速用パイロット圧を変速用パイロット管路からドレン回路に向けて供給することにより、可変容量型油圧モータの暖機を行うことが考えられる。しかし、この場合、変速用パイロット管路とドレン管路との間を単に連通させるだけでは、例えば、走行中に可変容量型油圧モータを変速すると、変速用パイロット圧がドレン管路に常にリークすることになり、効率が低下する。これに加えて、変速用パイロット圧のリークは、走行時の変速制御の応答性を低下させるおそれがある。
一方、コントローラによって暖機の開始、終了の判断を含む暖機制御を行うために、油圧モータに新たなセンサを追加することが考えられる。しかし、この場合は、新たなセンサを追加する分、コストの上昇を招くことになる。これに対して、暖機の開始、終了にオペレータの操作を必要とする構成、例えば、暖機用スイッチのON・OFF操作を必要とする構成は、オペレータの利便性が低下する。これに加えて、例えば、暖機の必要がないときに、暖機用スイッチがOFFにされずに暖機が継続し、効率が低下する可能性もある。
さらに、油圧モータの駆動中は、油圧モータを駆動するための圧油がメイン管路から供給されるが、このメイン管路から供給される圧油は、温かい作動油である。このため、油圧モータの駆動中に、変速用パイロット管路からの変速用パイロット圧の供給による暖機を行う(継続する)ことは、効率の面から好ましくない。さらに、変速用パイロット圧の供給により暖機を行っているときに、可変容量型油圧モータの駆動を開始すると、傾転角が小傾の状態で駆動が開始される可能性がある。この場合、可変容量型油圧モータの駆動力が小さくなる可能性がある。
これに対して、実施の形態では、可変容量型油圧モータである走行用油圧モータ33,56の暖機を行うために、走行用駆動装置32,55には、暖機用パイロット管路64が設けられている。以下、走行用油圧モータ33,56の暖機を行うための暖機回路装置63について説明する。
暖機回路装置63は、油圧モータ用暖機装置である。暖機回路装置63は、前述のカウンタバランス弁49と、ドレン管路57と、変速用パイロット管路59と、パイロット圧制御弁58とに加えて、暖機用パイロット管路64を備えている。また、暖機回路装置63は、コントローラ62、油温センサ61、圧力センサ30も備えている。暖機用パイロット管路64は、パイロット圧ポート46とドレンポート54とを接続する管路(油路)である。即ち、暖機用パイロット管路64は、変速用パイロット管路59とドレン管路57との間を、カウンタバランス弁49を経由して接続している。
この場合、暖機用パイロット管路64は、一端側が変速用パイロット管路59の途中に接続されると共に他端側がカウンタバランス弁49(の暖機用ポート49A)に接続された一側暖機用パイロット管路64Aと、一端側がカウンタバランス弁49(の暖機用ポート49B)に接続されると共に他端側がドレンポート54(ドレン管路57)に接続された他側暖機用パイロット管路64Bとにより構成されている。
一方、カウンタバランス弁49は、6ポート3位置の油圧パイロット式方向制御弁により構成されている。この場合、カウンタバランス弁49は、センタバイパスポートとなる暖機用ポート49A,49Bを備えている。一方の暖機用ポート49Aには、一側暖機用パイロット管路64Aの他端側が接続されている。他方の暖機用ポート49Bには、他側暖機用パイロット管路64Bの一端側が接続されている。
カウンタバランス弁49が中立位置(a)のときは、暖機用ポート49A,49Bが連通する。即ち、中立位置(a)のときは、一側暖機用パイロット管路64Aと他側暖機用パイロット管路64Bとが連通することにより、パイロット圧ポート46とドレンポート54との間が連通する。これに対して、カウンタバランス弁49が駆動位置(b),(c)のときは、暖機用ポート49A,49Bが遮断される。即ち、駆動位置(b),(c)のときは、一側暖機用パイロット管路64Aと他側暖機用パイロット管路64Bとが遮断されることにより、パイロット圧ポート46とドレンポート54との間が遮断される。
このように、カウンタバランス弁49の中立位置(a)には、暖機用パイロット管路64を通じて変速用パイロット管路59とドレン管路57とを連通させる油路49Cが設けられている。これにより、カウンタバランス弁49は、油圧モータ33,56が停止しているときは、変速用パイロット管路59とドレン管路57とを暖機用パイロット管路64を介して連通する。これに対して、カウンタバランス弁49は、油圧モータ33,56が駆動されているときは、暖機用パイロット管路64を遮断する。
一方、コントローラ62は、油圧モータ33,56の暖機が必要と判定したときに、パイロット圧制御弁58を通じて変速用パイロット管路59に圧油(パイロット圧P)を供給することにより、油圧モータ33,56の暖機を行う。即ち、コントローラ62は、暖機が必要と判定したときは、パイロット圧制御弁58を通じて変速用パイロット管路59に暖機用のパイロット圧Pを供給する。このとき、カウンタバランス弁49が中立位置(a)のときは、パイロット圧制御弁58から変速用パイロット管路59に供給された圧油が、暖機のための圧油(暖機圧油)となって、変速用パイロット管路59から暖機用パイロット管路64を介してドレン管路57に流れる。これにより、暖機のための圧油が、油圧モータ33,56(のモータケーシング34)を通過し、油圧モータ33,56を暖機することができる。
ここで、コントローラ62は、暖機(即ち、パイロット圧制御弁58を通じた暖機のための圧油の供給)の開始と中断の判定を、次のように行う。例えば、コントローラ62は、暖機の開始を、「油温センサ61で検出される作動油の温度Ts」と「走行用操作装置28,29の操作の程度(累計操作回数Nまたは累計操作時間M)」とに基づいて判定する。具体的には、コントローラ62は、エンジン始動時点の油温Tsが所定値T0未満であり、かつ、エンジン始動時点から所定時間t0が経過する間に走行用操作装置28,29が所定回数NF以上操作されていない場合、暖機を開始する(暖機が必要と判定する)。また、コントローラ62は、走行用操作装置28,29が操作されているときは、暖機を中断する。
このように、第1の実施の形態では、コントローラ62は、次の2つの条件の両方を満たすか否かに基づいて、油圧モータ33,56の暖機が必要か否かを判定する。第1の条件は、エンジン12を始動したときに油温センサ61により検出された温度Tsが一定値T0以下(または、一定値T0未満)であること。第2の条件は、エンジン12の始動から所定時間t0が経過する間の走行用操作装置28,29の累計操作回数Nが所定回数NF未満(または、所定回数NF以下)であること。
コントローラ62は、暖機が必要と判定したときは、パイロット圧制御弁58の電磁パイロット部58Aに駆動電力Wを供給する。この場合、コントローラ62は、パイロット圧制御弁58を通じて供給されるパイロット圧Pが傾転切換弁51を切換えるために必要な最小変速パイロット圧(最小駆動圧)P0よりも小さくなるような暖機用の駆動電力Wを出力する。即ち、油圧モータ33,56の暖機を行っているときに、パイロット圧制御弁58を通じて変速用パイロット管路59に供給されるパイロット圧Pは、傾転切換弁51が切換わる切換必要圧P0よりも低い圧力(P<P0)とする。
一方、コントローラ62は、油圧モータ33,56の暖機を終了すると判定すると、変速用パイロット管路59に暖機用の圧油(パイロット圧P)を供給することを停止する。即ち、コントローラ62は、パイロット圧制御弁58の電磁パイロット部58Aに対する暖機用の駆動電力Wの供給を停止する。この場合、コントローラ62は、暖機を行っているときに、暖機を終了するか否かを、「暖機を開始してからの経過時間tH」と、「走行用操作装置28,29の操作の程度(累計操作回数Nまたは累計操作時間M)」とに基づいて判定する。具体的には、コントローラ62は、暖機を開始してから所定時間tFが経過したとき、または、エンジン始動時点から走行用操作装置28,29が所定回数NF以上操作されたとき、暖機を終了する。なお、このようなコントローラ62で行われる暖機の制御、即ち、図5に示すコントローラ62の制御処理に関しては、後で詳しく述べる。
第1の実施の形態による油圧ショベル1は、上述の如き構成を有するもので、次に、その動作について説明する。
キャブ7に搭乗したオペレータがエンジン12を始動させると、エンジン12によって油圧ポンプ13,14,20が駆動される。これにより、油圧ポンプ13,14から吐出した圧油は、キャブ7内に設けられた走行用操作装置28,29、作業用レバー操作装置のレバー操作、ペダル操作に応じて、走行油圧モータ33,56、旋回油圧モータ、作業装置5のブームシリンダ5D、アームシリンダ5E、バケットシリンダ5Fに向けて吐出する。これにより、油圧ショベル1は、下部走行体2による走行動作、上部旋回体4の旋回動作、作業装置5による掘削作業等を行うことができる。
ここで、コントローラ62は、エンジン12を始動したときに、必要に応じて走行用駆動装置32,55(油圧モータ33,56)の暖機を行う。そこで、コントローラ62による暖機の制御処理について、図5を参照しつつ説明する。なお、図5(および後述する図6ないし図8)に示す流れ図の各ステップは、それぞれ「S」という表記を用いる(例えば、ステップ1=「S1」とする)。
例えば、コントローラ62に電力供給が開始されると、コントローラ62は、図5の制御処理を開始する。コントローラ62は、S1で、エンジン12の始動を検知すると、S2に進む。S2では、コントローラ62は、エンジン始動直後の作動油の温度TS(以下、油温TSともいう)を読込む。油温TSは、油温センサ61により検出することができる。
続くS3では、S2で読込んだ油温Tsが所定値T0以上であるか否かを判定する。所定値T0は、ヒートショックや応答遅れの影響が少ない油温範囲の一定値として設定する。例えば、所定値T0は、走行用駆動装置32,55の暖機を行う必要がない最も低い温度(例えば、0℃程度)として設定することができる。所定値T0は、暖機が必要であるか否かの切り分けを適切に行うことができるように、予め実験、計算、シミュレーション等により求めておく。
S3で「YES」、即ち、油温Tsが所定値T0以上であると判定された場合は、S4の暖機制御終了の処理に進む。S4では、暖機制御実施中であれば暖機制御を終了してからリターンに進み、暖機中でなければなにもせずにリターンに進む。そして、リターンを介してスタートに戻り、S1以降の処理を繰り返す。
一方、S3で「NO」、即ち、油温Tsが所定の値T0未満であると判定された場合は、S5に進む。S5では、S1のエンジン始動後からの経過時間tEを読込む。続くS6では、S5で読込まれた経過時間tEが所定時間t0以上であるか否かを判定する。所定時間t0は、上部旋回体4側の作動油と走行用駆動装置32,55側の作動油とにヒートショックや応答遅れの発生する温度差が生じるまでの運転時間として設定することができる。
即ち、所定時間t0は、エンジン始動後の油圧ポンプ13,14や作業装置5のシリンダ5D,5E,5Fの駆動に基づいて、上部旋回体4側の作動油の温度がヒートショック等の発生する温度差となるまで上昇すると予測される運転時間の範囲の一定値として設定する。例えば、所定時間t0は、作動油の温度がエンジン始動時点の油温TSから50℃程度上昇するまでの時間(例えば、10分程度)として設定することができる。所定時間t0は、ヒートショックや応答遅れが発生する温度差となったか否かの切り分けを適切に行うことができるように、予め実験、計算、シミュレーション等により求めておく。
S6で「NO」、即ち、経過時間tEが所定時間t0未満である(tE<t0)と判定された場合は、S5の前に戻り、S5以降の処理を繰り返す。一方、S6で「YES」、即ち、経過時間tEが所定時間t0以上(tE≧t0)と判定された場合は、S7に進む。S7では、走行用操作装置28,29が操作中であるか否を判定する。この判定は、圧力センサ30により走行パイロット圧Ptが検出されているか否かにより判定することができる。より具体的には、コントローラ62は、圧力センサ30により検出される走行パイロット圧Ptが予め設定した閾値Paよりも大きい(Pt>Pa)ときに、走行用操作装置28,29が操作中であると判定することができる。
S7で「YES」、即ち、走行用操作装置28,29が操作中であると判定された場合は、S8に進む。この場合は、油圧モータ33,56に対して油圧ポンプ13,14からの圧油(温度上昇した圧油)が供給されている。このため、この場合は、S8の暖機制御中断の処理に進み、暖機制御実施中であれば暖機制御を中断する。即ち、S8の暖機制御中断の処理では、コントローラ62は、傾転切換スイッチ60が高速位置(モータ傾転小傾)に設定されている場合のみ、パイロット圧制御弁58に駆動電力Wを供給する。この場合、コントローラ62は、パイロット圧制御弁58を通じて供給されるパイロット圧Pが傾転切換弁51を切換えるために必要な最小変速パイロット圧(最小駆動圧)P0よりも大きくなるような駆動電力Wを出力する。S8で暖機制御中断の処理を行ったら、S5の前に戻り、S5以降の処理を繰り返す。
一方、S7で「NO」、即ち、走行用操作装置28,29が操作中でないと判定された場合は、S9に進む。S9では、暖機制御が実施された累計時間である暖機制御時間tH、および、走行用操作装置28,29の操作回数N(Pt検知回数N)を読込む。暖機制御時間tHは、例えば、S11で最初にYESと判定されてS12の暖機制御の実施が開始されてからの経過時間とすることができる。また、操作回数Nは、例えば、S1でエンジン始動を検知してから現在までの累計操作回数とすることができる。この場合、操作回数Nは、圧力センサ30により走行パイロット圧Ptを検出した累計回数、換言すれば、走行パイロット圧Ptが予め設定した閾値Paよりも大きくなった累計回数とすることができる。
続くS10では、S9で読込まれた暖機制御時間tHが所定時間tF未満であるか否かを判定する。所定時間tFは、暖機制御の実施により走行用駆動装置32,55の内部の油温がヒートショックや応答遅れの影響が少ない油温まで上昇すると予測される時間の範囲の値として設定する。例えば、所定時間tFは、パイロット圧制御弁58から変速用パイロット管路59に暖機のための圧油(暖機圧油)を供給することにより走行用駆動装置32,55(油圧モータ33,56)の内部の油温が0℃程度に上昇するまでの時間(例えば、10分程度)とすることができる。また、所定時間tFは、S2で読込まれたエンジン始動時の油温Tsや外気温等に基づいて可変に調整することができる。例えば、外気温が−20℃等の極低温時には、例えば、tFを20分程度とすることもできる。いずれにしても、所定時間tFは、暖機制御の終了の判定を適切に行うことができるように、予め実験、計算、シミュレーション等により求めておく。
S10で「YES」、即ち、暖機制御時間tHが所定時間tF未満である(tH<tF)と判定された場合は、S11に進む。S11では、S9で読込まれた走行用操作装置28,29の操作回数Nが所定回数NF未満であるか否かを判定する。所定回数NFは、油圧モータ33,56の駆動により走行用駆動装置32,55の内部の油温がヒートショックや応答遅れの影響が少ない油温まで上昇すると予測される操作回数の範囲の値として設定する。例えば、所定回数NFは、油圧モータ33,56の駆動により走行用駆動装置32,55の内部の油温が0℃程度に上昇するまでの時間(例えば、5回程度)とすることができる。また、所定回数NFは、S2で読込まれたエンジン始動時の油温Tsや外気温等に基づいて可変に調整してもよい。いずれにしても、所定回数NFは、暖機制御の終了の判定(および、暖機制御を開始すべきか否かの判定)を適切に行うことができるように、予め実験、計算、シミュレーション等により求めておく。
S11で「YES」、即ち、走行用操作装置28,29の操作回数Nが所定回数NF未満(N<NF)であると判定された場合は、S12に進む。S12では、暖機処理制御を実施する。即ち、コントローラ62は、パイロット圧制御弁58に駆動電力Wを供給することにより、走行用駆動装置32,55のパイロット圧ポート46に変速パイロット圧Pを作用させる。この場合、コントローラ62は、パイロット圧制御弁58を通じて供給されるパイロット圧Pが傾転切換弁51を切換えるために必要な最小変速パイロット圧(最小駆動圧)P0よりも小さくなるような駆動電力Wを出力する。即ち、暖機のときの駆動電力Wは、傾転切換弁51を切換えるときの駆動電力Wよりも小さい。S11で暖機制御実施の処理を行ったら、S7の前に戻り、S7以降の処理を繰り返す。
一方、S10で「NO」、即ち、暖機制御時間tHが所定時間tF以上である(tH≧tF)と判定された場合、および、S11で「NO」、即ち、走行用操作装置28,29の操作回数Nが所定回数NF以上(N≧NF)であると判定された場合は、S4に進む。S4では、暖機制御終了処理を行う。即ち、この場合は、暖機制御実施の処理をしていれば、その制御を終了する。具体的には、コントローラ62は、走行用操作装置28,29の操作(駆動圧Pt)を検知し、かつ、傾転切換スイッチ60が高速位置(モータ傾転小傾)に設定されている場合のみ、パイロット圧制御弁58に駆動電力Wを供給する。この場合、コントローラ62は、パイロット圧制御弁58を通じて供給されるパイロット圧Pが傾転切換弁51を切換えるために必要な最小変速パイロット圧(最小駆動圧)P0よりも大きくなるような駆動電力Wを出力する。
図5に示すように、第1の実施の形態では、エンジン始動時の油温Tsが所定値T0未満であり、かつ、エンジン始動から所定時間t0が経過する間に、走行用操作装置28,29の操作回数Nが所定回数NF以上操作されていない場合、走行用駆動装置32,55(油圧モータ33,56)の暖機制御を実施する。即ち、エンジン始動後の時間経過により上部旋回体4の作動油タンク15内の作動油の油温が上昇するのに対して、下部走行体2の走行用駆動装置32,55および内部の作動油がエンジン始動前の低温のままであると判断される場合、走行用駆動装置32,55の暖機制御を実施する。
この暖機制御は、油圧モータ33,56が停止している(走行用操作装置28,29が操作されていない)ときに、コントローラ62がパイロット圧制御弁58に電力Wを供給することにより行われる。即ち、コントローラ62は、パイロット圧制御弁58を通じて(暖機用の)変速パイロット圧P(<P0)を、走行用駆動装置32,55のパイロット圧ポート46に作用させることにより、油圧モータ33,56の暖機制御を実施する。
パイロット圧ポート46に流入した作動油、即ち、作動油タンク15内で暖められた作動油は、一側暖機用パイロット管路64A、カウンタバランス弁49、他側暖機用パイロット管路64Bを通過し、ドレンポート54から排出され、再び作動油タンク15に戻る。このとき、作動油は、ブレーキバルブ44や油圧モータ33,56を収納するケース(モータケーシング34)内を通るため、走行用駆動装置32,55内部の作動油および部品が暖められ暖機される。
ここで、暖機制御実施中に走行を意図して走行用操作装置28,29を操作した場合、油圧モータ33,56の暖機制御を中断する。即ち、走行用駆動装置32,55が駆動されているときは、暖機のための変速パイロット圧Pを走行用駆動装置32,55のパイロット圧ポート46に作用させる制御を中断する。この場合は、コントローラ62は、走行用操作装置28,29の操作(駆動圧Pt)を検知し、かつ、傾転切換スイッチ60が高速位置(モータ傾転小傾)に設定されている場合のみ、パイロット圧制御弁58に駆動電力Wを供給する。また、走行用駆動装置32,55が駆動されているときは、カウンタバランス弁49のスプールが駆動位置(b),(c)に移動するため、パイロット圧ポート46とドレンポート54は遮断される。
油圧モータ33,56の暖機制御開始から所定時間tFが経過するか、走行用操作装置28,29が所定回数NF以上操作されると、油圧モータ33,56の暖機制御を終了する。即ち、走行用駆動装置32,55の内部の油温がヒートショックや応答遅れの影響が少ない油温まで上昇したと判断される場合は、油圧モータ33,56の暖機制御を終了する。即ち、この場合は、油圧モータ33,56の停止時に変速パイロット圧Pを走行用駆動装置32,55のパイロット圧ポート46に作用させる制御を実施しない。
このように、実施の形態の暖機回路装置63は、モータ傾転機能とモータ暖機機能を両立しており、モータ暖機機能を付加しても、他の機能・利便性が損なわれることを抑制できる。また、実施の形態では、暖機機能の追加のための新たな制御弁や配管を追加する必要がない。このため、コストアップを抑えることができる。また、実施の形態では、油圧モータ33,56の停止時のみ変速パイロット(パイロット圧ポート46)とモータドレン(ドレンポート54)を連通する。このため、通常走行時に変速パイロット圧(即ち、作動油)がドレン側にリークすることが阻止される。このため、効率的であり、しかも、リークが走行時の変速制御応答性に悪影響を与えることを阻止できる。
さらに、油圧モータ33,56に新たなセンサを追加する必要がないため、この面からも、コストアップを抑制できる。また、オペレータが暖機のためにスイッチを操作する必要がなく、利便性を向上できる。また、油圧モータ33,56の油温が上がると暖機制御を終了するため、この面からも効率的である。また、走行中は暖機制御を中断し、油圧モータ33,56を駆動するためのメイン油路(即ち、走行用の給排管路25A,25B,26A,26B)による暖機が行われる。このため、この面からも効率的である。また、暖機制御を実施しているときの(暖機用の)変速パイロット圧Pを、傾転切換弁51の切換必要圧P0未満としている。このため、変速パイロット圧Pを作用させた状態で油圧モータ33,56を駆動しても、モータ傾転が小傾とならず、走行始動時の十分な駆動力を確保できる。
以上のように、第1の実施の形態によれば、油圧モータ33,56が停止しているときは、カウンタバランス弁49によって、変速用パイロット管路59とドレン管路57とが暖機用パイロット管路64を介して連通される。この状態で、パイロット油圧ポンプ20からの圧油がパイロット圧制御弁58を通じて変速用パイロット管路59に供給されると、この圧油は、暖機のための圧油(暖機圧油)となって、変速用パイロット管路59から暖機用パイロット管路64を介してドレン管路57に流れる。このとき、この圧油(暖機圧油)が、油圧モータ33,56のケース(モータケーシング34)内を通過することにより、油圧モータ33,56を暖機することができる。この場合、特許文献1のような暖機のための新たな制御弁および専用の管路を追加する必要がないため、構造の複雑化、コストの上昇を抑制することができる。
一方、カウンタバランス弁49は、油圧モータ33,56が駆動されているときは、暖機用パイロット管路64を遮断する。これにより、油圧モータ33,56が駆動されているときは、パイロット油圧ポンプ20からの圧油がパイロット圧制御弁58を通じて変速用パイロット管路59に供給されても、この圧油が変速用パイロット管路59から暖機用パイロット管路64を介してドレン管路57に供給されることが阻止される。このため、油圧モータ33,56を駆動しているときに、油圧モータ33,56を変速するための変速用パイロット圧Pがドレン管路57にリークすることを防止できる。この結果、効率が低下すること、および、変速の応答性が低下することを抑制できる。しかも、油圧モータ33,56が駆動されているときは、油圧モータ33,56を駆動するための圧油が油圧モータ33,56に供給されることにより暖機が行われるため、この面からも、暖機を効率よく行うことができる。
第1の実施の形態によれば、コントローラ62は、「エンジン始動時の油温Ts」と「走行用操作装置28,29の操作回数N」とに基づいて、油圧モータ33,56の暖機が必要か否かを判定する。具体的には、コントローラ62は、油温Tsが所定値T0未満であり、かつ、エンジン始動から所定時間t0経過する間に走行用操作装置28,29が所定回数NF以上操作されていない場合、暖機が必要と判定する。そして、コントローラ62は、油圧モータ33,56の暖機が必要と判定したときは、パイロット圧制御弁58を通じて変速用パイロット管路59に暖機用の圧油となるパイロット圧P(<P0)を供給することにより、油圧モータ33,56の暖機を行う。
このように、コントローラ62は、自動的に暖機を開始することができる。即ち、暖機を開始するときに、オペレータの操作(例えば、暖機用スイッチをONにする操作)が不要になり、オペレータの利便性を向上できる。しかも、油温センサ61および走行用操作装置28,29の操作を検出する圧力センサ30は、例えば、元々設けられているものを用いることができる。このため、新たなセンサを追加する必要がなく、この面からも、コストを抑制できる。
第1の実施の形態によれば、コントローラ62は、「油圧モータ33,56の暖機を開始してからの経過時間tH」と「走行用操作装置28,29の操作回数N」とに基づいて、油圧モータ33,56の暖機を終了するか否かを判定する。具体的には、コントローラ62は、暖機を開始してから所定時間tFが経過した場合、または、エンジン始動時点から走行用操作装置28,29が所定回数NF以上操作された場合は、暖機を終了すると判定する。そして、コントローラ62は、油圧モータ33,56の暖機を終了すると判定したときは、パイロット圧制御弁58を通じて変速用パイロット管路59に暖機用の圧油となるパイロット圧Pを供給することを停止する。これにより、油圧モータ33,56の暖機を停止することができる。
このように、コントローラ62は、自動的に暖機を終了(停止)することができる。即ち、暖機を終了するときに、オペレータの操作(例えば、暖機用スイッチをOFFにする操作)が不要になり、この面からも、オペレータの利便性を向上できる。しかも、暖機の必要がないときに、暖機用スイッチがOFFにされずに暖機が継続することを阻止できる。これにより、この面からも、効率の低下を抑制できる。
第1の実施の形態によれば、油圧モータ33,56の暖機を行っているときに、パイロット圧制御弁58を通じて変速用パイロット管路59に供給するパイロット圧Pは、傾転切換弁51が切換わる切換必要圧P0よりも低い圧力としている。このため、油圧モータ33,56の暖機を行っているときに、油圧モータ33,56の傾転角を大傾に維持できる。これにより、油圧モータ33,56の暖機中に、油圧モータ33,56を駆動しても、油圧モータ33,56の駆動力を確保できる。
第1の実施の形態によれば、カウンタバランス弁49の中立位置(a)に、暖機用パイロット管路64を通じて変速用パイロット管路59とドレン管路57とを連通させる油路49Cが設けられている。このため、カウンタバランス弁49によって、油圧モータ33,56が停止しているときに変速用パイロット管路59とドレン管路57とを連通させること、および、油圧モータ33,56が駆動されているときに変速用パイロット管路59とドレン管路57とを遮断することを、安定して行うことができる。
次に、図6は、第2の実施の形態を示している。第2の実施の形態の特徴は、エンジンの始動から油温が一定値に上昇するまでの間の走行用操作装置の操作時間に基づいて暖機を開始するか否かを判定すると共に、操作時間に基づいて暖機を終了するか否かを判定する構成としたことにある。なお、第2の実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
第2の実施の形態のコントローラ62は、次の2つの条件の両方を満たすか否かに基づいて、油圧モータ33,56の暖機が必要か否かを判定する。第1の条件は、エンジン12を始動したときに油温センサ61により検出された温度Tsが一定値T0以下(または、一定値T0未満)であるか否か。第2の条件は、エンジン12の始動から油温Tが所定温度TH以上まで上昇する間の走行用操作装置28,29の累計操作時間Mが所定時間MF未満(または、所定時間MF以下)であるか否か。
また、第2の実施の形態では、コントローラ62は、暖機を行っているときに、暖機を終了するか否かを、「暖機を開始してからの経過時間tH」と、「走行用操作装置28,29の累計操作時間M」とに基づいて判定する。
図6は、コントローラ62が行う制御処理を示している。図6の制御処理は、前述した第1の実施の形態の図5の制御処理に代えて、第2の実施の形態で用いられるものである。なお、図6の制御処理のうちS1−4,7,8,10,12は、図5のS1−4,7,8,10,12の制御処理と同様であるため、その説明は省略し、以下、図6のS21−24の処理を説明する。
第2の実施形態では、S3で「NO」と判定されると、S21に進む。S21では、作動油タンク15の作動油の温度、即ち、油温センサ61の検出する油温Tを読込む。続くS22では、S21で読込まれた油温Tが所定温度TH以上であるか否かを判定する。所定温度THは、上部旋回体4側の作動油が油圧モータ33,56に供給されたときにヒートショックや応答遅れが発生するおそれのある温度として設定することができる。
即ち、所定温度THは、エンジン始動時の油温Tsが上部旋回体4の油圧ポンプ13,14や作業装置5のシリンダ5D,5E,5Fの駆動に基づいて上昇し、その上昇した作動油が低温の油圧モータ33,56に流入したときに、ヒートショック等が発生するおそれがある温度の範囲の一定値として設定する。例えば、所定温度THは、50℃、または、Ts+50℃として設定することができる。所定温度THは、ヒートショックや応答遅のおそれがある温度(温度差)となったか否かの切り分けを適切に行うことができるように、予め実験、計算、シミュレーション等により求めておく。
S21で「NO」、即ち、油温Tが所定温度TH未満である(T<TH)と判定された場合は、S21の前に戻り、S21以降の処理を繰り返す。一方、S21で「YES」、即ち、油温Tsが所定温度TH以上である(T≧TH)と判定された場合は、S7に進む。
S7で「NO」と判定されると、S23に進む。S23では、暖機制御が実施された累計時間である暖機制御時間tH、および、走行用操作装置28,29の累計操作時間M(Pt検知時間M)を読込む。累計操作時間Mは、例えば、S1でエンジン始動を検知してから現在までの走行用操作装置28,29が操作された累計時間とすることができる。この場合、累計操作時間Mは、圧力センサ30により走行パイロット圧Ptを検出した累計時間、換言すれば、走行パイロット圧Ptが予め設定した閾値Paよりも大きくなった累計時間とすることができる。
S10で「YES」と判定されると、S24に進む。S24では、S23で読込まれた走行用操作装置28,29の累計操作時間Mが所定時間MF未満であるか否かを判定する。所定時間MFは、油圧モータ33,56の駆動により走行用駆動装置32,55の内部の油温がヒートショックや応答遅れの影響が少ない油温まで上昇すると予測される累計操作時間の範囲の値として設定する。例えば、所定時間MFは、油圧モータ33,56の駆動により走行用駆動装置32,55の内部の油温が0℃程度に上昇するまでの時間(例えば、10分程度)とすることができる。また、所定時間MFは、S2で読込まれたエンジン始動時の油温Tsや外気温等に基づいて可変に調整することができる。いずれにしても、所定時間MFは、暖機制御の終了の判定(および、暖機制御を開始すべきか否かの判定)を適切に行うことができるように、予め実験、計算、シミュレーション等により求めておく。
S24で「YES」、即ち、走行用操作装置28,29の累計操作時間Mが所定時間MF未満(M<MF)であると判定された場合は、S12に進む。一方、S24で「NO」、即ち、走行用操作装置28,29の累計操作時間Mが所定時間MF以上(M≧MF)であると判定された場合は、S4に進む。
このような第2の実施の形態では、エンジン始動時の油温Tsが所定値T0未満であり、かつ、作動油の温度が所定温度THに上昇する間に、走行用操作装置28,29が所定時間MF以上操作されていない場合、走行用駆動装置32,55(油圧モータ33,56)の暖機制御を実施する。また、暖機制御実施中に走行を意図して走行用操作装置28,29が操作された場合は、油圧モータ33,56の暖機制御を中断する。そして、油圧モータ33,56の暖機制御開始から所定時間tF経過するか、走行用操作装置28,29が所定時間MF以上操作されると、油圧モータ33,56の暖機制御を終了する。
第2の実施の形態は、上述のような図6の制御処理をコントローラ62で行うもので、その基本的作用については、上述した第1の実施の形態によるものと格別差異はない。即ち、第2の実施の形態も、第1の実施の形態と同様に、油圧モータ33,56の暖機を行うことができ、かつ、構造の複雑化、コストの上昇、効率の低下、変速の応答性の低下を抑制することができる。
なお、第1の実施の形態(図5)では、S3で「NO」と判定されると、S5およびS6に進み、エンジン始動後からの経過時間tEを判定する構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、図7に示す第1の変形例のように、S3とS5との間に、S31およびS32の処理を設けてもよい。S31では、走行用操作装置28,29の操作回数N(Pt検知回数N)を読込む。続くS32では、S31で読込まれた操作回数Nが所定回数NF未満であるか否かを判定する。所定回数NFは、S11の所定回数NFと同様である。そして、S32で「YES」と判定された場合はS5に進み、S32で「NO」と判定された場合はS4に進む。
第2の実施の形態(図6)では、S3で「NO」と判定されると、S21およびS22に進み、エンジン始動後に検出される油温Tを判定する構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、図8に示す第2の変形例のように、S3とS21との間に、S41およびS42の処理を設けてもよい。S41では、走行用操作装置28,29の累計操作時間M(Pt検知時間M)を読込む。続くS42では、S41で読込まれた累計操作時間Mが所定時間MF未満であるか否かを判定する。所定時間MFは、S24の所定時間MFと同様である。そして、S42で「YES」と判定された場合はS21に進み、S42で「NO」と判定された場合はS4に進む。
第1の実施の形態では、走行用操作装置28,29の累計操作回数Nを用いて暖機の開始、終了の判定を行う構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、暖機の開始、終了の判定を、走行用操作装置28,29の累計操作時間Mを用いて行ってもよい。また、第1の実施の形態では、暖機の開始を、エンジン12の始動から所定時間t0が経過する間の走行用操作装置28,29の累計操作回数Nに基づいて判定する構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、エンジン12の始動から油温Tが所定温度THに上昇する間の走行用操作装置28,29の累計操作回数Nに基づいて判定する構成としてもよい。
第2の実施の形態では、走行用操作装置28,29の累計操作時間Mを用いて暖機の開始、終了の判定を行う構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、暖機の開始、終了の判定を、走行用操作装置28,29の累計操作回数Nを用いて行ってもよい。また、第2の実施の形態では、暖機の開始を、エンジン12の始動から油温Tが所定温度THに上昇する間の走行用操作装置28,29の累計操作時間Mに基づいて判定する構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、エンジン12の始動から所定時間t0が経過する間の走行用操作装置28,29の累計操作時間Mに基づいて判定する構成としてもよい。
第1の実施の形態では、S1でエンジン始動を検知することにより、エンジン始動時に暖機を行う構成とした場合を例に挙げて説明した。換言すれば、第1の実施の形態では、S3でエンジン始動時の油温Tsに基づいて暖機を行うか否かを判断する構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、エンジン始動時を条件とせずに、作業中に必要に応じて暖機を行う構成としてもよい。即ち、寒冷地での作業中に、例えば、長時間停車した状態のまま上部旋回体側のみで作業(例えば、作業装置の駆動、旋回駆動)が継続された場合は、走行用駆動装置の作動油の温度が低下する。
このような場合、上部旋回体側の作動油の温度と走行用駆動装置側の作動油の温度との温度差が、ヒートショック等が発生する温度差になる可能性がある。そこで、コントローラは、作業中に、例えば、走行用駆動装置(油圧モータ)が駆動されない時間(累計時間)を計測すると共に、この時間から、ヒートショック等が発生する温度差になるまで走行用駆動装置の温度が低下したか否かを判定する。そして、コントローラは、ヒートショック等が発生する温度にまで低下したと判定されたときに、暖機を行うように構成してもよい。このことは、第2の実施の形態、各変形例についても同様である。
第1の実施の形態では、可変容量型油圧モータとしての油圧モータ33,56をアキシャルピストン型斜板式油圧モータにより構成した場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、油圧モータは、例えば、斜軸式油圧モータやラジアルピストン型油圧モータ等、他の形式の可変容量型油圧モータを用いてもよい。このことは、第2の実施の形態、各変形例についても同様である。
各実施の形態および各変形例では、可変容量型油圧モータとして、履帯4Dの駆動輪2Bを駆動させるための走行用の油圧モータを例に挙げて説明した。即ち、各実施の形態および各変形例では、油圧駆動装置として、下部走行体2を走行させるための走行用油圧駆動装置を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、可変容量型油圧モータは、駆動輪2B以外の駆動対象を駆動する油圧モータとしてもよい。即ち、油圧駆動装置は、建設機械の走行用油圧駆動装置に限定されず、例えば、産業機械や一般機械に組み込まれる各種の油圧駆動装置として広く適用できるものである。
さらに、各実施の形態は例示であり、異なる実施の形態で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもない。各実施の形態および各変形例では、油温センサ61を作動油タンク15に設置したが、例えば、油圧ポンプ13,14や第1の吐出管路16、戻り管路17、第2の吐出管路18に設置してもよい。また、走行用レバー・ペダル操作装置28,29の操作による駆動圧Ptを圧力センサ30で検知することにより走行操作を検出しているが、これに限らず、例えば、走行用レバー・ペダル操作装置28,29の変位を電気的に検知するセンサを用いて、そのセンサからの検知信号により走行操作を検出してもよい。