以下、添付図面を参照しながら実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
図1は、本発明が適用される建設機械としてのショベル(掘削機)を示す側面図である。ショベルの下部走行体1には、旋回機構2を介して上部旋回体3が搭載されている。上部旋回体3にはブーム4が取り付けられている。ブーム4の先端にはアーム5が取り付けられ、アーム5の先端にはバケット6が取り付けられている。作業要素としてのブーム4、アーム5、及びバケット6は、アタッチメントの一例である掘削アタッチメントを構成し、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9によりそれぞれ油圧駆動される。上部旋回体3には、キャビン10が設けられ、且つエンジン11等の動力源及びコントローラ30等が搭載される。
コントローラ30は、ショベルの駆動制御を行う主制御部としての制御装置である。図1の例では、コントローラ30は、CPU及び内部メモリを含む演算処理装置で構成され、内部メモリに格納された駆動制御用のプログラムをCPUに実行させて各種機能を実現する。
図2は、図1のショベルに搭載される油圧回路の構成例を示す概略図である。図2の例では、油圧回路は、主に、第1ポンプ14L、第2ポンプ14R、回生用油圧モータ14A、コントロールバルブ17、及び油圧アクチュエータを含む。油圧アクチュエータは、主に、ブームシリンダ7(油圧アクチュエータ)、アームシリンダ8、バケットシリンダ9、及び旋回用油圧モータ21を含む。また、油圧アクチュエータは、左側走行用油圧モータ(図示せず。)及び右側走行用油圧モータ(図示せず。)を含んでいてもよい。
旋回用油圧モータ21は、上部旋回体3を旋回させる油圧モータである。
リリーフ弁22Lは、旋回用油圧モータ21のポート21L側の圧力が所定のリリーフ圧に達した場合に開き、ポート21L側の作動油を管路44に排出する。また、リリーフ弁22Rは、旋回用油圧モータ21のポート21R側の圧力が所定のリリーフ圧に達した場合に開き、ポート21R側の作動油を管路44に排出する。
チェック弁23Lは、ポート21L側の圧力が反対側の圧力より低くなった場合に開き、作動油タンクTからポート21L側に作動油を補給する。チェック弁23Rは、ポート21R側の圧力が反対側の圧力より低くなった場合に開き、作動油タンクTからポート21R側に作動油を補給する。このように、チェック弁23L、23Rは、旋回用油圧モータ21の制動時に吸い込み側ポートに作動油を補給する補給機構を構成する。
第1ポンプ14Lは、作動油タンクTから作動油を吸い込んで吐出する油圧ポンプであり、図2の例では斜板式可変容量型油圧ポンプである。また、第1ポンプ14Lはレギュレータ(図示せず。)に接続される。レギュレータは、コントローラ30からの指令に応じて第1ポンプ14Lの斜板傾転角を変更して第1ポンプ14Lの押し退け容積(1回転当たりの吐出量)を制御する。第2ポンプ14Rについても同様である。
回生用油圧モータ14Aは、油圧アクチュエータから流出する作動油が有するエネルギを回生してエンジン11をアシストする油圧モータであり、図2の例では斜板式可変容量型油圧モータであり、その吐出側ポートは作動油タンクTに接続されている。そのため、回生用油圧モータ14Aが吐出した作動油はブーム下げの際に作動油タンクTへ戻される。
回生用油圧モータ14Aは、第1ポンプ14L及び第2ポンプ14Rと同様にレギュレータに接続される。レギュレータは、コントローラ30からの指令に応じて回生用油圧モータ14Aの斜板傾転角を変更して回生用油圧モータ14Aの押し退け容積(1回転当たりの吐出量)を制御する。また、レギュレータは、回生用油圧モータ14Aの押し退け容積(斜板傾転角)をゼロに設定可能であってもよい。作動油を消費(吸い込み及び吐出)することなく回転できるようにするためであり、また、回生用油圧モータ14Aを通過する作動油の流れを遮断できるようにするためである。
図2の例では、第1ポンプ14L、第2ポンプ14R、及び回生用油圧モータ14Aは、それぞれの駆動軸が機械的に連結される。具体的には、それぞれの駆動軸は、ポンプドライブとしての変速機13を介して所定の変速比でエンジン11の出力軸に連結される。すなわち、変速機13は、エンジン11の出力軸と回生用油圧モータ14Aの出力軸とに接続され、エンジン11の動力と回生用油圧モータ14Aの動力とを第1ポンプ14L、第2ポンプ14Rに伝達する。そのため、エンジン回転数が一定であれば、それぞれの回転数も一定となる。但し、第1ポンプ14L、第2ポンプ14R、及び回生用油圧モータ14Aは、エンジン回転数が一定であっても回転数を変更できるよう、無段変速機等を介してエンジン11に接続されてもよい。
第1ポンプ14L、第2ポンプ14Rは、センターバイパス管路40L、40R、パラレル管路42L、42R、戻り管路43L、43R、43Cを経て作動油タンクTまで作動油を循環させる。
センターバイパス管路40Lは、コントロールバルブ17内に配置された流量制御弁170、172L、及び173Lを通る作動油ラインである。センターバイパス管路40Rは、コントロールバルブ17内に配置された流量制御弁171、172R、及び173Rを通る作動油ラインである。
パラレル管路42Lは、センターバイパス管路40Lに並行する作動油ラインである。パラレル管路42Lは、流量制御弁170又は流量制御弁172Lによってセンターバイパス管路40Lを通る作動油の流れが制限或いは遮断された場合に、より下流の流量制御弁に作動油を供給する。また、パラレル管路42Rは、センターバイパス管路40Rに並行する作動油ラインである。パラレル管路42Rは、流量制御弁171又は流量制御弁172Rによってセンターバイパス管路40Rを通る作動油の流れが制限或いは遮断された場合に、より下流の流量制御弁に作動油を供給する。
戻り管路43Lは、センターバイパス管路40Lに並行する作動油ラインである。戻り管路43Lは、油圧アクチュエータから流量制御弁170、172L、173Lを通って流れる作動油を戻り管路43Cに流通させる。戻り管路43Rは、センターバイパス管路40Rに並行する作動油ラインである。戻り管路43Rは、油圧アクチュエータから流量制御弁171、172R、173Rを通って流れる作動油を戻り管路43Cに流通させる。
センターバイパス管路40L、40Rは、最も下流にある流量制御弁173L、173Rのそれぞれと作動油タンクTとの間にネガティブコントロール絞り18L、18R及びリリーフ弁19L、19Rを備える。第1ポンプ14L、第2ポンプ14Rが吐出した作動油の流れは、ネガティブコントロール絞り18L、18Rで制限される。そして、ネガティブコントロール絞り18L、18Rは、レギュレータを制御するための制御圧(ネガコン圧)を発生させる。リリーフ弁19L、19Rは、ネガコン圧が所定のリリーフ圧に達した場合に開き、センターバイパス管路40L、40Rの作動油を作動油タンクTに排出する。
戻り管路43Cの最下流にはバネ付きチェック弁20が設置されている。バネ付きチェック弁20は、旋回用油圧モータ21と戻り管路43Cとを繋ぐ管路44内の作動油の圧力を高める機能を果たす。この構成により、旋回減速時における旋回用油圧モータ21の吸い込み側ポートに確実に作動油を補給してキャビテーションの発生を防止する。
コントロールバルブ17は、ショベルにおける油圧駆動系の制御を行う油圧制御装置である。また、コントロールバルブ17は、主に、流量制御弁170、171、172L、172R、173L、及び173Rを含む。
流量制御弁170、171、172L、172R、173L、及び173Rは、油圧アクチュエータに流出入する作動油の向き及び流量を制御する弁である。図2の例では、流量制御弁170、171、172L、172R、173L、及び173Rのそれぞれは、対応する操作レバー等の操作装置(図示せず。)が生成するパイロット圧を左右何れかのパイロットポートで受けて動作する3ポート3位置のスプール弁である。操作装置は、操作量(操作角度)に応じて生成したパイロット圧を、操作方向に対応する側のパイロットポートに作用させる。
具体的には、流量制御弁170は、旋回用油圧モータ21に流出入する作動油の向き及び流量を制御するスプール弁であり、流量制御弁171は、バケットシリンダ9に流出入する作動油の向き及び流量を制御するスプール弁である。
また、流量制御弁172L、172Rは、ブームシリンダ7に流出入する作動油の向き及び流量を制御するスプール弁であり、流量制御弁173L、173Rは、アームシリンダ8に流出入する作動油の向き及び流量を制御するスプール弁である。
ここで、図2の油圧回路におけるブーム下げ回生回路100について説明する。ブーム下げ回生回路100は、主に、管路45、管路46、比例弁70、及び切替弁71を含む。
管路45は、ブームシリンダ7のボトム側油室と回生用油圧モータ14Aの上流側(吸い込み側)とを繋ぐ管路である。管路46は、管路45から分岐する管路である。
比例弁70は、コントローラ30からの指令に応じて開口の大きさを調整して流量を制御する弁であり、管路46に設けられている。図2の例では、比例弁70は、ブームシリンダ7のボトム側油室と作動油タンクTとの間の連通・遮断を切り替え可能な1ポート2位置の電磁比例弁である。具体的には、比例弁70は、第1位置にある場合にブームシリンダ7のボトム側油室と作動油タンクTとの間を最大開口で連通させ、第2位置にある場合にその連通を遮断できる。
切替弁71は、コントローラ30からの指令に応じて動作する弁であり、管路45に設けられている。図2の例では、切替弁71は、ブームシリンダ7のボトム側油室と回生用油圧モータ14Aの上流側(吸い込み側)との間の連通・遮断を切り替え可能な1ポート2位置の比例弁である。具体的には、切替弁71は、第1位置にある場合にブームシリンダ7のボトム側油室と回生用油圧モータ14Aの上流側(吸い込み側)との間を連通させ、第2位置にある場合にその連通を遮断する。
管路45及び切替弁71が、ブームシリンダ7(ブーム用油圧アクチュエータ)と回生用油圧モータ14Aとを繋ぐ「第1操作回路101」を構成する。また、管路46及び比例弁70が、第1操作回路101から分岐する「第2操作回路102」を構成する。
コントローラ30は、各種センサの出力に基づいてブーム下げ操作が行われたことを検知すると、切替弁71に指令を出力する。指令を受けた切替弁71は第1位置に切り替わり、ブームシリンダ7のボトム側油室と回生用油圧モータ14Aの上流側(吸い込み側)との間を連通させる。
また、コントローラ30は、回生用油圧モータ14Aのレギュレータに指令を出力する。回生用油圧モータ14Aは、ブームシリンダ7のボトム側油室から流出する作動油を直接受け入れて回転し、エンジン11をアシストする。これにより第1操作回路101にブームシリンダ7のボトム側油室から流出する作動油が流れる。
このようにして、回生用油圧モータ14Aは、ブーム下げの際にブームシリンダ7から流出する作動油の油圧エネルギ(ブーム4の位置エネルギ)を直接的に回生できる。そのため、ブーム下げの際に熱(圧損)として捨てられていたエネルギを有効に利用して省エネ化を図ることができる。また、ブームシリンダ7から流出する作動油がアキュムレータに一時的に蓄圧された後でアキュムレータから流出する作動油の油圧エネルギを間接的に回生する場合に比べて効率的である。
また、コントローラ30は、ブームシリンダ7からの戻り油量が回生用油圧モータ14Aの最大吐出量より大きい、所謂オーバーフローの場合に、ブームシリンダ7が吐出した作動油を、第1操作回路101に加えて第2操作回路102も介して作動油タンクTへ戻す。
より詳細には、ブームシリンダ7のボトム側油室から流出する作動油の流量が、回生用油圧モータ14Aが受け入れ可能な流量を上回る場合、比例弁70に対して指令を出力する。指令を受けた比例弁70は第1位置に切り替わり、ブームシリンダ7のボトム側油室と作動油タンクTとの間を連通させる。これにより、第1操作回路101の他に、第2操作回路102にもブームシリンダ7のボトム側油室から流出する作動油が流れる。
そのため、ブーム下げの際にブームシリンダ7から流出する作動油のうち、回生用油圧モータ14Aで吸収しきれない作動油は、第2操作回路102の管路46を通って作動油タンクTに戻される。すなわち、回生用油圧モータ14Aが吸いきれない作動油は管路46を介して作動油タンクTに戻される。
ここで、「回生用油圧モータ14Aの最大吐出量」とは、回生用油圧モータ14Aが吸収できる作動油の最大量である。最大吐出量は、油圧回路の他の要素の動作状態に応じて変動する。
なお、コントローラ30は、オーバーフローの場合には、第1操作回路101の切替弁71を閉じて、第2操作回路102の比例弁70を開けて、ブームシリンダ7が吐出した作動油を第2操作回路102のみに流れるよう制御してもよい。
また、コントローラ30は、ブーム下げの際に比例弁70の開度を調整することで、管路45内の作動油の圧力を調整できる。すなわち、ブームシリンダ7のボトム側油室から回生用油圧モータ14Aに向かう作動油による背圧を調整できる。そのため、回生用油圧モータ14Aの応答遅れに起因して増大する背圧を調整でき、ブーム操作の即応性及び微操作性を確保できる。
また、コントローラ30は、エンジン11をアシストする必要がない場合には、ブーム下げの際に比例弁70の開度を大きめに調整することで、ブームシリンダ7のボトム側油室から流出する作動油の大部分を、第2操作回路102を介して作動油タンクTに戻すことができる。そのため、第1操作回路101の回生用油圧モータ14Aへの作動油の供給を抑制して、過度のアシストによるエンジンの過回転を防止できる。
ブーム下げ回生回路100の流量制御について図3を参照して説明する。図3は、ブーム下げ回生回路100の排出量特性の一例を示す図である。図3の横軸はパイロット圧であり、ブーム操作レバーの下げ方向の操作量に応じて決まる。図3の縦軸は、ブーム下げ時にブームシリンダ7のボトム側油室から排出される作動油の排出量を示す。図3の実線は、ブーム下げ回生時に作動油を排出するブーム下げ回生回路100を流れる作動油の総量の目標値とパイロット圧との関係を表す。
コントローラ30は、回生用油圧モータ14Aの流量を制御する。また、コントローラ30は、比例弁70の開口面積を制御する。これらの制御により、コントローラ30は、ブームシリンダ7のボトム側油室からの作動油の排出量を制御する。コントローラ30は、ブーム操作レバーが操作されたときには、操作量に応じたパイロット圧に基づき図3に実線で示す特性から、ブーム下げ回生回路100の第1操作回路101及び第2操作回路102の流量の合計を決定する。第1操作回路101の流量は回生用油圧モータ14Aにより制御される。第2操作回路102の流量は比例弁70により制御される。コントローラ30は、決定した流量に基づき、回生用油圧モータ14Aのレギュレータへの指令値と、比例弁70への指令値とを算出する。
コントローラ30は、算出した指令値を回生用油圧モータ14A及び比例弁70へ出力する。コントローラ30は、基本的には回生用油圧モータ14Aの流量を調整して、ブームシリンダ7のボトム側油室からの作動油の排出量を制御する。また、補助的に、比例弁70の開口面積により実現される流量を調整して、ブームシリンダ7のボトム側油室からの作動油の排出量を制御する。
ところで、図2に示す油圧回路では、基本的には、ブーム操作レバーの操作量に基づくパイロット圧に応じて、流量制御弁172L、172Rのスプールの位置を調整することによって、ブームシリンダ7に流出入する作動油の向き及び流量が制御される。
図4は、図3の特性に対応する仮想的なCT(シリンダ―タンク)開口特性の一例を示す図である。仮想的なCT開口特性は、本実施形態では存在しない流量制御弁172RのCTポートの開口面積の特性を意味する。具体的には、入力であるパイロット圧と、出力であるCTポートの開口面積との関係を意味する。CTポートの開口面積は、ブームシリンダ7からの作動油の流出量と相関がある。図4の横軸はパイロット圧であり、ブーム操作レバーの下げ方向の操作量に応じて決まる。図4の縦軸は流量制御弁の172RのCTポートの開口面積を示す。
図4の実線は、仮想的なCT開口特性を用いてブームシリンダ7のボトム側油室から作動油タンクTへ作動油を排出した場合のパイロット圧とCT開口面積の関係を表す。CT開口面積は、パイロット圧が増加するのに応じて非線形で増加している。
このようなCTポートによる流量制御と同様の流量制御を実現するために、本実施形態では、上述のブーム下げ回生回路100を用いて作動油の排出量が制御される。本実施形態では、流量制御弁172RのCTポートは存在しない。
上述のとおり、本実施形態では、図3に実線で例示したブーム下げ回生回路100の排出量特性を用いて、ブーム下げ回生回路100の作動油排出量の目標値が決められる。この目標値決定に用いる排出量特性は、図4のCT開口特性によって実現される作動油排出量と同等となるように設定されたものである。
なお、本実施形態では、コントローラ30は、図3に実線で例示した特性以外のものに基づいてブームシリンダ7のボトム側油室からブーム下げ回生回路100への作動油の排出量の目標値を定めてもよい。図3に実線で例示した特性は、「操作量とブームシリンダ7(油圧アクチュエータ)からの作動油の排出量との関係を表す所定の特性」の一例である。
ここで、操作装置からの入力が微操作の場合、つまりレバー操作量が小さく操作者が望むブーム動作が低速の場合を考える。微操作時には、図3のパイロット圧−作動油排出量特性では、パイロット圧が小さくなるため作動油排出量の目標値も小さくなり、ブームシリンダ7のボトム側油室からの作動油の排出量も少なくなる。
「微操作時」とは、ブームシリンダ7から排出が必要な作動油の量(ブームシリンダ7からの戻り油量)が、回生用油圧モータ14Aの漏れ量より小さい場合と定義できる。「漏れ量」とは、回生用油圧モータ14Aで制御できる作動油の流量の最低値と定義できる。
このような微操作時において、本実施形態のブーム下げ回生回路100では、ブームシリンダ7のボトム側油室と回生用油圧モータ14Aとが連通していると、必要な排出量より多い作動油が第1操作回路101に排出される。これによりレバー操作量に見合う速度よりも速い速度でブーム4が下がっていく。このため、ブームシリンダ7からの作動油の排出量が回生用油圧モータ14Aの漏れ量より少ない微操作ができなくなる。
そこで本実施形態では、コントローラ30は、ブーム下げ時のレバー操作が微操作の場合には、第1操作回路101の切替弁71を閉じて第1操作回路101を遮断状態にして、回生用油圧モータ14Aへの作動油の供給を停止する。図3の点線は、この制御を適用したときの、回生用油圧モータ14Aを通る作動油の流量とパイロット圧との関係を表す。図4の点線は、図3の点線が表している関係を、仮想CT開口とパイロット圧の関係で表している。
図3では、パイロット圧がP0以下の区間が、レバー操作が微操作の区間である。この区間では、第1操作回路101が遮断され、回生用油圧モータ14Aへの作動油の供給量が0となるので、図3に点線で示すように、回生用油圧モータ14Aの流量は0となっている。この区間では、第2操作回路102の比例弁70のみを用いて、比例弁70の開口面積を調整することによってブームシリンダ7のボトム側油室からの作動油の排出量を制御する。この制御では、ブーム下げ回生回路100の作動油の排出量が、図3に実線で示すパイロット圧−作動油排出量特性の目標値と同等となるように、作動油排出量を制御する。
このような微操作時のブーム下げ回生回路100の制御は、例えば以下の手順で行うことができる。
まずコントローラ30により、ブーム操作レバーの下げ方向の操作が検知される。コントローラ30は、検知されたブーム下げ操作について、バケット6が空中にある状態の操作か、または、バケット6が掘削している状態の操作かを判定する。コントローラ30は、例えばブームシリンダ7のボトム側油室の油圧(ボトム圧)に基づき、ブーム下げ操作の種類を判定できる。例えば、ブームシリンダ7のボトム圧が所定の閾値以上のとき、バケット6が空中にある状態でありブーム4の自重で下がっていると判定できる。コントローラ30は、この状態と判定したとき、ブーム下げ回生中と判定できる。
このようなブーム下げ回生中において、コントローラ30によりブーム操作レバーの操作量に応じたパイロット圧が検出される。コントローラ30は、図3に一例を示す排出量特性を利用して、検出したパイロット圧に応じた作動油の流量を、ブームシリンダ7からブーム下げ回生回路100を通す作動油の排出量の目標値として取得する。
コントローラ30は、この目標値に応じて、ブーム下げ回生回路100の第1操作回路101及び第2操作回路102への作動油の流し方を切り替える。
作動油排出量の目標値が、回生用油圧モータ14Aの最大吐出量以下のとき、ブームシリンダ7からの作動油のすべてを回生用油圧モータ14Aで吸収できる。したがって、コントローラ30は、第1操作回路101の切替弁71を開き、かつ、第2操作回路102の比例弁70を閉じる。これにより、第1操作回路101のみに作動油が流れて回生が行われる。なお、最大吐出量は、油圧回路の他の要素の動作状態に応じて変動する。
作動油の排出量の目標値が、回生用油圧モータ14Aの最大吐出量を超えるとき、回生用油圧モータ14Aのみでは作動油を使いきれない。したがって、コントローラ30は、第1操作回路101の切替弁71を開き、かつ、第2操作回路102に作動油の余剰分が流れるように比例弁70の開口面積を調整する。これにより、第1操作回路101及び第2操作回路102の両方に作動油が流れる。第2操作回路102は、回生用油圧モータ14Aでは消費できない分の作動油を作動油タンクTに排出する。
作動油の排出量の目標値が、回生用油圧モータ14Aの漏れ量より少ないとき(図3に示すように、レバー操作によるパイロット圧がP0以下のとき)、第1操作回路101の回生用油圧モータ14Aを用いると作動油の排出量の精度を出せない。したがって、コントローラ30は、第1操作回路101の切替弁71を閉じ、かつ、第2操作回路102の比例弁70を開く。これにより、第1操作回路101の作動油の流れが遮断され、回生用油圧モータ14Aへの作動油の供給が停止する。このとき、第2操作回路102の比例弁70の開口面積を制御することにより、作動油の排出量が制御される。
このように、本実施形態に係るショベルは、第1操作回路101及び第2操作回路102の2つの油路を有するブーム下げ回生回路100を用いて、ブーム下げ時にブームシリンダ7から作動油の排出を行う。この構成により、作動油の排出量が、第1操作回路101が有する回生用油圧モータ14Aの漏れ量より少ない場合や、最大吐出量より多い場合には、第2操作回路102を用いて作動油を排出できる。これにより、回生用油圧モータ14Aの特性による制約を受けることなく、所望量の作動油をブームシリンダ7から排出することが可能となる。この結果、操作レバーの操作量に対して、ブーム動作が大き過ぎ、または小さ過ぎて操作量に応じた動作とならないことを回避でき、ブーム4の操作性を向上できる。したがって、本実施形態のショベルは、ブームシリンダ7から流出する作動油を回生用油圧モータ14Aで効率的に利用でき、且つ、ブーム4の操作性を向上できる。
また、本実施形態では、コントローラ30は、操作量とブームシリンダ7からの作動油の排出量との関係を表す所定の特性(例えば図3に実線で示すパイロット圧−作動油排出量特性)に基づいて、回生用油圧モータ14Aの流量と比例弁70の開口面積の指令値を算出する。この構成により、ブーム操作レバーの操作量に応じたブーム4の動作が操作者のイメージと合うものにでき、ブーム4の操作性を向上できる。
また、本実施形態では、微操作時には切替弁71によって第1操作回路101を遮断状態にすることにより、回生用油圧モータ14Aへの作動油の供給を確実に防止でき、微操作時の操作性をさらに向上できる。
次に図4を参照し、図1のショベルに搭載される油圧回路の別の構成例について説明する。図4は、図1のショベルに搭載される油圧回路の別の構成例を示す概略図である。図4の油圧回路は、主に、コントロールバルブ17が可変ロードチェック弁51〜53、合流弁55、及び統一ブリードオフ弁56L、56Rを含む点で図2の油圧回路と異なるが、その他の点で共通する。そのため、共通部分の説明を省略し、相違部分を詳細に説明する。なお、図4は、再生弁7a、8a、9aと、保持弁7b、8bとを明示している。
旋回用油圧モータ21は、ポート21L、21Rがそれぞれリリーフ弁22L、22Rを介して作動油タンクTに接続され、且つ、チェック弁23L、23Rを介して作動油タンクTに接続される。
リリーフ弁22Lは、ポート21L側の圧力が所定のリリーフ圧に達した場合に開き、ポート21L側の作動油を作動油タンクTに排出する。また、リリーフ弁22Rは、ポート21R側の圧力が所定のリリーフ圧に達した場合に開き、ポート21R側の作動油を作動油タンクTに排出する。
チェック弁23Lは、ポート21L側の圧力が反対側の圧力より低くなった場合に開き、作動油タンクTからポート21L側に作動油を補給する。チェック弁23Rは、ポート21R側の圧力が反対側の圧力より低くなった場合に開き、作動油タンクTからポート21R側に作動油を補給する。このように、チェック弁23L、23Rは、旋回用油圧モータ21の制動時に吸い込み側ポートに作動油を補給する補給機構を構成する。
可変ロードチェック弁51〜53は、コントローラ30からの指令に応じて動作する弁である。図4の例では、可変ロードチェック弁51〜53は、流量制御弁171〜173のそれぞれと第1ポンプ14L及び第2ポンプ14Rのうちの少なくとも一方との間の連通・遮断を切り替え可能な1ポート2位置の電磁弁である。なお、可変ロードチェック弁51〜53は、第1位置において、ポンプ側に戻る作動油の流れを遮断するチェック弁を有する。具体的には、可変ロードチェック弁51は、第1位置にある場合に流量制御弁171と第1ポンプ14L及び第2ポンプ14Rのうちの少なくとも一方との間を連通させ、第2位置にある場合にその連通を遮断する。可変ロードチェック弁52及び可変ロードチェック弁53についても同様である。
合流弁55は、合流切替部の一例であり、コントローラ30からの指令に応じて動作する弁である。図4の例では、合流弁55は、第1ポンプ14Lが吐出する作動油(以下、「第1作動油」とする。)と第2ポンプ14Rが吐出する作動油(以下、「第2作動油」とする。)とを合流させるか否かを切り替え可能な1ポート2位置の電磁弁である。具体的には、合流弁55は、第1位置にある場合に第1作動油と第2作動油とを合流させ、第2位置にある場合に第1作動油と第2作動油とを合流させないようにする。
統一ブリードオフ弁56L、56Rは、コントローラ30からの指令に応じて動作する弁である。図4の例では、統一ブリードオフ弁56Lは、第1作動油の作動油タンクTへの排出量を制御可能な1ポート2位置の電磁弁である。統一ブリードオフ弁56Rについても同様である。この構成により、統一ブリードオフ弁56L、56Rは、流量制御弁170〜173のうちの関連する流量制御弁の合成開口を実現できる。具体的には、合流弁55が第2位置にある場合に、統一ブリードオフ弁56Lは流量制御弁170及び流量制御弁173の合成開口を実現でき、統一ブリードオフ弁56Rは流量制御弁171及び流量制御弁172の合成開口を実現できる。また、統一ブリードオフ弁56Lは、第1位置にある場合にコントローラ30からの指令に応じてその合成開口の開口面積を調整する可変絞りとして機能し、第2位置にある場合にその合成開口を遮断する。統一ブリードオフ弁56Rについても同様である。
なお、可変ロードチェック弁51〜53、合流弁55、及び統一ブリードオフ弁56L、56Rのそれぞれは、パイロット圧駆動のスプール弁であってもよい。
チェック弁89は作動油タンクTに流出する作動油の流れを遮断する。図4の例では、チェック弁89は回生用油圧モータ14Aへ流れる作動油の一部が作動油タンクTに流出するのを防止する。なお、チェック弁89は、回生用油圧モータ14Aが第3ポンプとして機能する場合には、作動油タンクTから第3ポンプへの作動油の流れを遮断しない。
ここで、図4の油圧回路におけるブーム下げ回生回路100について説明する。ブーム下げ回生回路100は、主に、管路45、管路46、比例弁70、及び切替弁71を含む。
管路45は、ブームシリンダ7のボトム側油室と回生用油圧モータ14Aの上流側(吸い込み側)とを繋ぐ管路である。管路46は、管路45から分岐する管路である。
比例弁70は、コントローラ30からの指令に応じて動作する弁であり、管路46に設けられている。図4の例では、比例弁70は、ブームシリンダ7のボトム側油室と作動油タンクTとの間の連通・遮断を切り替え可能な1ポート2位置の電磁比例弁である。具体的には、比例弁70は、第1位置にある場合にブームシリンダ7のボトム側油室と作動油タンクTとの間を連通させ、第2位置にある場合にその連通を遮断する。
切替弁71は、コントローラ30からの指令に応じて動作する弁であり、管路45に設けられている。図4の例では、切替弁71は、ブームシリンダ7のボトム側油室と回生用油圧モータ14Aの上流側(吸い込み側)との間の連通・遮断を切り替え可能な1ポート2位置の比例弁である。具体的には、比例弁70は、第1位置にある場合にブームシリンダ7のボトム側油室と回生用油圧モータ14Aの上流側(吸い込み側)との間を連通させ、第2位置にある場合にその連通を遮断する。
管路45及び切替弁71が、ブームシリンダ7(ブーム用油圧アクチュエータ)と回生用油圧モータ14Aとを繋ぐ「第1操作回路101」を構成する。また、管路46及び比例弁70が、第1操作回路101から分岐する「第2操作回路102」を構成する。
コントローラ30は、各種センサの出力に基づいてブーム下げ操作が行われたことを検知すると、切替弁71に指令を出力する。指令を受けた切替弁71は第1位置に切り替わり、ブームシリンダ7のボトム側油室と回生用油圧モータ14Aの上流側(吸い込み側)との間を連通させる。
また、コントローラ30は、回生用油圧モータ14Aのレギュレータに指令を出力する。回生用油圧モータ14Aは、ブームシリンダ7のボトム側油室から流出する作動油を直接受け入れて回転し、エンジン11をアシストする。これにより第1操作回路101にブームシリンダ7のボトム側油室から流出する作動油が流れる。
このようにして、回生用油圧モータ14Aは、ブーム下げの際にブームシリンダ7から流出する作動油の油圧エネルギ(ブーム4の位置エネルギ)を直接的に回生できる。そのため、ブーム下げの際に熱(圧損)として捨てられていたエネルギを有効に利用して省エネ化を図ることができる。また、ブームシリンダ7から流出する作動油がアキュムレータに一時的に蓄圧された後でアキュムレータから流出する作動油の油圧エネルギを間接的に回生する場合に比べて効率的である。
また、コントローラ30は、ブームシリンダ7のボトム側油室から流出する作動油の流量が、回生用油圧モータ14Aが受け入れ可能な流量を上回る場合、比例弁70に対して指令を出力する。指令を受けた比例弁70は第1位置に切り替わり、ブームシリンダ7のボトム側油室と作動油タンクTとの間を連通させる。そのため、ブーム下げの際にブームシリンダ7から流出する作動油のうち、回生用油圧モータ14Aで吸収しきれない作動油は、第2操作回路102の管路46を通って作動油タンクTに戻される。
また、コントローラ30は、ブーム下げ時のレバー操作が微操作の場合には、第1操作回路101の切替弁71を閉じて第1操作回路101を遮断状態にして、回生用油圧モータ14Aへの作動油の供給を停止する。図3では、パイロット圧がP0以下の区間が、レバー操作が微操作の区間である。この区間では、第1操作回路101が遮断され、回生用油圧モータ14Aへの作動油の供給量が0となるので、図3に点線で示すように、回生用油圧モータ14Aの流量は0となっている。この区間では、第2操作回路102の比例弁70のみを用いて、比例弁70の開口面積を調整することによってブームシリンダ7のボトム側油室からの作動油の排出量を制御する。この制御では、ブーム下げ回生回路100の作動油の排出量が、図3に実線で示すパイロット圧−作動油排出量特性の目標値と同等の特性となるように、作動油排出量を制御する。
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
上記実施形態では、ブーム下げ回生回路100により作動油を排出する油圧アクチュエータとしてブームシリンダ7を例示したが、アームシリンダ8またはバケットシリンダ9においても、バケット6が空中にある状態でありブーム4の自重で下がっていると判定されている場合に適用することもできる。