JP2018149695A - 感熱型平版印刷版の印刷方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】製版後の取り扱いで版面に傷が付いた場合でも、効果的に傷汚れを防止することができる感熱型平版印刷版の印刷方法を提供する。
【解決手段】支持体上に熱可塑性樹脂と親水性バインダーを含有する画像形成層を少なくとも2層有する感熱型平版印刷版を画像様に加熱して画像部を形成した後、無機微粒子とアニオン性界面活性剤を含有する版面処理液を版面に付与し、その後印刷を行う感熱型平版印刷版の印刷方法。
【選択図】なし
【解決手段】支持体上に熱可塑性樹脂と親水性バインダーを含有する画像形成層を少なくとも2層有する感熱型平版印刷版を画像様に加熱して画像部を形成した後、無機微粒子とアニオン性界面活性剤を含有する版面処理液を版面に付与し、その後印刷を行う感熱型平版印刷版の印刷方法。
【選択図】なし
Description
本発明は感熱型平版印刷版の印刷方法に関し、従来のアブレーション方式や機上現像方式等における層除去処理等、所謂デブリ処理を必要としない感熱型平版印刷版の印刷方法に関する。
近年、コンピューター及びその周辺機器の発展により各種デジタルプリンタを用いた平版印刷版の製版方法が各種提案されている。例えば、特開平6−138719号公報、特開平6−250424号公報には、乾式電子写真法レーザープリンタにより製版するもの、特開平9−58144号公報には、熱溶融型インクを用いたオンデマンドインクジェットプリンタにより製版するもの、更に、特開昭63−166590号公報には熱転写インクリボンを用いるサーマルプリンタにより製版するもの等が知られている。
上記のようなプリンタを用いた製版方法は、従来の可視光レーザー等を用いた光モードタイプとは大別され、取り扱い上において安全光の制約を受けないことから、この点で大きな利点を有する。また従来の光モードタイプにおいて通常用いられる露光後の現像処理を全く必要としない点から、これらの製版方式で製版された印刷版はプロセスレス印刷版と総称されている。
しかし上記プロセスレス印刷版は、何れも保水性付与層が設けられた支持体表面に、感脂性(即ち、平版印刷インク着肉性)の記録画像を転写付与することにより印刷版を形成する方式であったため、次のような問題点があった。
1)画像を形成する層が親水性であるためトナーやインク等の付着が十分ではなく、例えば転写トナー画像濃度が不足したり、転写画像に白抜けが発生するような問題。
2)転写画像の定着が十分ではなく、耐刷性が低下し、特に小ポイント文字の一部やハイライト部の網点画像に欠落が生じるような問題。
3)非画像部に少量のトナーが不規則に転写されたり、熱転写インクリボンが擦れること等によって、全体的に薄い地汚れが発生する等の問題。
2)転写画像の定着が十分ではなく、耐刷性が低下し、特に小ポイント文字の一部やハイライト部の網点画像に欠落が生じるような問題。
3)非画像部に少量のトナーが不規則に転写されたり、熱転写インクリボンが擦れること等によって、全体的に薄い地汚れが発生する等の問題。
一方、支持体上に熱可塑性樹脂あるいは熱溶融性粒子を含有する画像形成層を設けて、サーマルヘッドや赤外線レーザー等により加熱印字することで親油性の画像部が得られる感熱型平版印刷版等も提案されている。
例えば、特開昭58−199153号公報、あるいは特開昭59−174395号公報には、画像形成層に熱転写リボン等を介さずサーマルヘッド等で直接加熱描画することにより親油性の画像部が得られる感熱型平版印刷版が記載されている。特開2000−190649号公報、特開2000−301846号公報には、赤外線レーザー等で直接加熱描画することにより親油性の画像部が得られる感熱型平版印刷版も記載されている。これらは何れも相変換型印刷版であり、元々親水性であった部分が相変換を起こし、疎水性(親油性)に変化するものである。通常の平版印刷では、上記のようにして得られた親油性の画像部に、水とインキの両方が同時に供給され、該画像部が着色性のインキを受理、他の非画像部は親水性のために水を選択的に受け入れ、インキを受理しない。そして該画像部上に受理したインキを、例えば、紙等の被印刷体に転写させることによって印刷がなされるようになる。
しかしながら、上記した相変換を利用した感熱型平版印刷版は、画像形成層の加熱部分を画像部、および画像形成層の非加熱部分を非画像部として利用するため、画像形成層自身が画像部と非画像部を兼ねている。このため同じ感熱型平版印刷版であっても、従来のアブレーション方式や機上現像方式等の所謂デブリ処理により画像部と非画像部を形成する印刷版(例えば、水や湿し水等で現像処理することで非加熱の画像形成層を除去し、画像形成層と支持体の間に設けられた親水性層を露出させる感熱型平版印刷版)とは異なり、非画像部であっても熱可塑性樹脂や熱溶融性物質を含有する。即ち、上記デブリ処理が一切行われないことから、加熱部であっても、非加熱部分であっても、塗設された塗膜はそのまま印刷に利用されることになる。このため、加熱部の感脂性(親油性)を上げると、一方で親水性が犠牲になるという、相反する傾向を持ち合わせており、耐刷性と耐汚れ性をバランスよく向上させることは極めて困難であった。
上記したような問題を改善するため、特開平11−95417号公報では、画像形成層にポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース等の親水性樹脂を架橋して用いることで耐刷性や保水性が改善されると記載されているが、親水性樹脂自体の相変換を利用するものであるので、画像部の親油化のレベルが低く、親油性/親水性の差が十分ではなかった。特開2000−75471号公報では、疎水性発現物質に熱可塑性樹脂、ワックス分散物、撥水剤等を用い、親水性物質にゼラチンやポリビニルアルコール等を用いることで、特に耐水性、印刷再現性等を向上させたとあるが、これも親油性/親水性の差が十分ではなかった。
特開2011−88386号公報(特許文献1)には、支持体上に熱可塑性樹脂と親水性バインダーを含有する画像形成層を少なくとも2層有し、支持体から離れた画像形成層と支持体に近い画像形成層の熱可塑性樹脂と親水性バインダーを特定した感熱型平版印刷版により、十分な耐刷性を保持しながら、耐地汚れ性を改善する方法が開示されている。しかしながら、該感熱型平版印刷版に画像部を形成した製版後の取り扱いで版面に目視では判別しにくい傷が入り、その傷が汚れとなる場合があり、更なる改善が求められていた。
他方、特開2011−37226号公報(特許文献2)には、無機微粒子およびエチレンオキシ基とプロピレンオキシ基を有する化合物を含有する版面処理液が、特開2011−189718号公報(特許文献3)には、無機微粒子および多価金属塩またはカチオン性官能基を有する水溶性化合物を含有する版面処理液が、特開2011−212889号公報(特許文献4)には、無機微粒子および重合度4以下の糖類を含有する版面処理液がそれぞれ開示され、これら文献では該版面処理液を版面に付与した後、印刷を行うことで、作業者の指紋や版面の乾燥に伴う汚れ等を改善する印刷方法が開示されている。
本発明の目的は、製版後の取り扱いで版面に目視では判別しにくい傷が付いた場合でも、効果的に傷汚れを防止することができる感熱型平版印刷版の印刷方法を提供することにある。
本発明の上記目的は、支持体上に熱可塑性樹脂と親水性バインダーを含有する画像形成層を少なくとも2層有し、支持体から離れた画像形成層の熱可塑性樹脂に対する親水性バインダーの比率が、支持体に近い画像形成層の熱可塑性樹脂に対する親水性バインダーの比率よりも高い感熱型平版印刷版を画像様に加熱して画像部を形成した後、無機微粒子とアニオン性界面活性剤を含有する版面処理液を版面に付与し、その後印刷を行うことを特徴とする感熱型平版印刷版の印刷方法によって、達成することができた。
本発明により、製版後の取り扱いで版面に目視では判別しにくい傷が付いた場合でも、傷汚れが生じることがない感熱型平版印刷版の印刷方法を提供することができる。
本発明に係わる感熱型平版印刷版は、支持体上に熱可塑性樹脂と親水性バインダーを含有する画像形成層を少なくとも2層有し、支持体から離れた画像形成層の熱可塑性樹脂に対する親水性バインダーの比率が、支持体に近い画像形成層の熱可塑性樹脂に対する親水性バインダーの比率よりも高い。この感熱型平版印刷版の画像形成層を、サーマルヘッドや赤外線レーザーで加熱描画することによって、親水性バインダーに埋もれた熱可塑性樹脂および熱溶融性物質が溶融を起こし疎水性を発現する。一方、熱が加わらなかった部位の熱可塑性樹脂および熱溶融性物質は親水性バインダーに埋もれたままで疎水性を発現せず、画像形成層が元々有する親水性を維持する。本発明では、このようにして得られた感熱型平版印刷版を使用して印刷を開始する前に、無機微粒子とアニオン性界面活性剤を含有する版面処理液を版面に付与し、その後印刷することによって、非画線部の汚れ、特に製版後の取り扱いで版面に目視では判別しにくい傷が付いた場合でも、傷汚れが生じることなく良好な印刷物を得ることができる。これは、本発明で用いる版面処理液が版面に付いた傷部へのインキ付着を効果的に防止することができるためと推測している。
本発明の感熱型平版印刷版の印刷方法において用いられる版面処理液は無機微粒子とアニオン性界面活性剤を含有する。無機微粒子としては、特に水に分散安定化しやすい0.1μm以下の粒子径を有するものが好ましい。このような無機微粒子としては、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア等の微粒子が挙げられるが、印刷汚れを防止するにおいて、特にシリカ微粒子、アルミナ微粒子が好ましい。中でもコロイダルシリカが最も好ましく、例えば日産化学工業(株)からスノーテックスXS、スノーテックスXL、スノーテックスYL、スノーテックスZL、スノーテックスMP−2040、スノーテックスC等として、アルミナ微粒子としては、例えば日産化学工業(株)から、アルミナゾル100、アルミナゾル520等の商品名で各種無機微粒子の分散液として市販されている。
本発明の感熱型平版印刷版の印刷方法に用いる版面処理液に含まれる無機微粒子の含有量は、1〜50g/Lが好ましく、より好ましくは2〜30g/Lである。この範囲より多い場合は、画像部の感脂性が阻害され十分なインキ濃度が得られない場合があり、また、この範囲より少ない場合は、非画線部への親水性付与の効果が十分に得られず印刷汚れとなる場合があるため好ましくない。
また、本発明の感熱型平版印刷版の印刷方法に用いる版面処理液はアニオン性界面活性剤を含有する。アニオン性界面活性剤としては、例えばアルキルエーテルのカルボン酸塩、直鎖アルキルベンゼンのスルホン酸塩、高級アルコールや高級アルコールに酸化エチレンを付加して硫酸化した硫酸エステル塩、高級アルコールやその酸化エチレンなどのリン酸エステル塩などが挙げられ、特に高級アルコールや高級アルコールに酸化エチレンを付加して硫酸化した硫酸エステル塩が好ましい。
本発明の感熱型平版印刷版の印刷方法に用いる版面処理液に含まれるアニオン性界面活性剤の含有量は0.1〜30g/Lであることが好ましく、より好ましくは3〜15g/Lである。この範囲より多い場合は、画像部の感脂性が阻害され十分なインキ濃度が得られない場合があり、また、この範囲より少ない場合は、非画線部への親水性付与の効果、特に傷部へのインキ付着を効果的に防止することができず汚れとなる場合があるため好ましくない。
本発明に用いられる版面処理液には、無機微粒子とアニオン性界面活性剤の他に、高沸点水溶性有機溶剤を含有することが好ましい。高沸点水溶性有機溶剤は、無機微粒子が画像部に固着することによって画像部の感脂性が阻害される現象を抑制する効果があり、また、非画線部の保湿効果を高めることにより、より効果的に傷汚れを防止することが可能となる。高沸点有機溶剤としては、ポリオール化合物またはグリコール誘導体を用いることが好ましい。ポリオール化合物の例としては、エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ヘキシレングリコール等を挙げることができる。グリコール誘導体としては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール(分子量200〜600)、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの共重合体等を挙げることができる。更にこれらの化合物のメチル、エチル、プロピル、ブチル等のアルキルエーテルを挙げることができる。これらの高沸点水溶性有機溶剤の含有量は1〜200g/Lの範囲が好ましく、より好ましくは5〜100g/Lの範囲である。
本発明に用いられる版面処理液は、多価金属塩を含有することが好ましい。これによりインキ着肉性や耐刷性を低下させることなく、非画線部へのインキ付着を防止することができる。多価金属塩は、水に溶解し多価金属イオンが生成するものであればよく、また、生成する多価金属イオンは水溶液中でキレート化されていても良い。水に対する溶解度の低い塩であっても、pHを調整したり、キレート剤と併用したりすることで溶解させて使用することができる。多価金属塩の金属イオンの例としては、Mg、Ca、Ba、Al、Mn、Fe、Co、Ni、Zn等の金属イオンを挙げることができる。上記金属イオンの対となるアニオン種については、特に制限はないが、水溶性の高い塩の形で用いた方が製造上簡便であるために好ましい。また、多価金属塩は無機酸塩あるいは有機酸塩の何れであっても良い。無機酸塩としては、塩化物塩、硝酸塩、硫酸塩、有機酸塩としては、酢酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩を挙げることができる。これら多価金属塩の含有量は0.1〜50g/Lであることが好ましく、より好ましくは3.5〜30g/Lである。
本発明に用いられる版面処理液は、多価金属塩の溶解安定性、無機微粒子の凝集防止、その他の理由でキレート剤を含有することができる。キレート剤としては、ニトリロ三酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸等のアミノポリカルボン酸類及びその塩、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、グルコン酸等のヒドロキシカルボン酸類及びその塩を使用することができ、また、アミノポリホスホン酸類及びその塩、ヒドロキシホスホン酸類及びその塩、ポリリン酸及びその塩を使用することもできる。
本発明に用いられる版面処理液は、pHの範囲が3〜8であることが好ましく、より好ましいpHの範囲は4〜7である。版面処理液は、これらのpHの範囲に調整するための緩衝剤を含有することができる。pH緩衝剤としては、リン酸、酢酸、コハク酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、グルコン酸等の弱酸およびその塩、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の弱塩基及びその塩を挙げることができる。
更に、本発明に用いられる版面処理液は、前記化合物の他にアラビアガム、デキストリン、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸のプロピレングリコールエステル、ヒドロキシエチル澱粉、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルアルコール等の保護コロイド、またはそれらの混合物を含有することができる。また、防腐剤、保存剤、着色剤、防錆剤等を含有させてもよい。
本発明の印刷方法においては、上述の版面処理液を印刷開始前に版面に付与するが、この方法としては、脱脂綿等に版面処理液を含浸させてハンドエッチングを行う方法、一定量の版面処理液をバーコーターにて版面に塗布する方法、版面処理液を貯留させた液浴に印刷版を浸漬させてロール対により余剰の版面処理液を絞液するようなエッチングコンバーターを用いる方法等が適用できる。
次に本発明に係わる感熱型平版印刷版について説明する。本発明に係わる感熱型平版印刷版は、支持体上に熱可塑性樹脂と親水性バインダーを含有する画像形成層を少なくとも2層有し、支持体から離れた画像形成層の熱可塑性樹脂に対する親水性バインダーの比率が、支持体に近い画像形成層の熱可塑性樹脂に対する親水性バインダーの比率よりも高い。該画像形成層が含有する熱可塑性樹脂は鎖状ポリマーからなり、加熱によって可塑性を示す固体状の非水溶性有機高分子化合物であって、画像形成層の塗工液として水系塗工液を使用する場合には水分散体(エマルジョン、ラテックス)であることが好ましい。代表例はスチレンブタジエン共重合体、アクリロニトリルブタジエン共重合体、メチルメタクリレートブタジエン共重合体、スチレンアクリロニトリルブタジエン共重合体、スチレンメチルメタクリレートブタジエン共重合体等の、その変性物を含めた合成ゴムラテックスであるが、スチレン無水マレイン酸共重合体、メチルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体、ポリアクリル酸共重合体、ポリスチレン、スチレン/アクリル酸エステル共重合体、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、アクリル酸エステル/メタアクリル酸エステル共重合体、及び低融点ポリアミド樹脂等の水分散体も使用可能である。これら熱可塑性樹脂は単独もしくは2種以上併用して用いることができる。印刷インクのビヒクル(バインダー成分)との親和性から、かかる熱可塑性樹脂としては合成ゴムラテックスが好ましく用いられる。かかる合成ゴムラテックスは耐刷性の観点から、熱により自己架橋するタイプが好ましい。自己架橋タイプとは、架橋剤の存在なしでも熱により三次元網状化することが可能であることを意味し、かかる合成ゴムラテックスを作製する際に、共重合成分として、カルボキシル基、水酸基、メチロールアミド基、エポキシ基、カルボニル基、アミノ基などの反応性官能基を存在させることにより得ることができる。また反応性官能基としては、カルボキシル基、水酸基、及びアミノ基が好ましく、特にカルボキシル基を反応性官能基として有する合成ゴムラテックスが好ましい。これにより画像部は自己架橋することで良好な耐刷性が得られると同時に、加熱されない非画像部は優れた保水性が得られるため好ましい。特に好ましい合成ゴムラテックスはカルボキシ変性スチレンブタジエン共重合体である。熱可塑性樹脂の好ましい含有量としては画像形成層の全固形分量に対して5〜50質量%が好ましく、更に20〜40質量%が好ましい。
また熱による溶融、融着効果を発現しやすくするためには、熱可塑性樹脂のガラス転移温度は50〜150℃、更に好ましくは55〜120℃のものを使用するのが良い。ガラス転移温度が50℃未満では製造工程中に液状に相変化を起こし、非画像部にも親油性が発現するため印刷地汚れの原因となる場合がある。また150℃を超える場合はポリマーの熱溶融が起こりにくく、比較的小出力のレーザーや小型サーマルプリンタでは強固な画像を形成するのが困難となる場合がある。
本発明に係わる感熱型平版印刷版の画像形成層が含有する熱溶融性物質としては、例えば、カルナバワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス等のワックス類、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、ベヘン酸、モンタン酸等の脂肪酸、およびそのエステル類、アミド類の他、2−ベンジルオキシナフタレン等のナフトール誘導体、p−ベンジルビフェニル、4−アリルオキシビフェニル、m−ターフェニル等のビフェニル誘導体、1,2−ビス(3−メチルフェノキシ)エタン、2,2′−ビス(4−メトキシフェノキシ)ジエチルエーテル、ビス(4−メトキシフェニル)エーテル等のポリエーテル化合物、炭酸ジフェニル、シュウ酸ジベンジル、シュウ酸ジ(p−クロロベンジル)エステル等の炭酸またはシュウ酸ジエステル誘導体等が挙げられる。これらは単独もしくは2種以上混合して使用することができ、融点が50〜150℃の熱溶融性物質が好ましく用いられる。融点が50℃未満では製造工程中に溶融してしまい、印刷物の地汚れの原因となる場合がある。一方、150℃を超えるとサーマルヘッド等の熱印加で溶融しにくく、親油性の発現が乏しくなる場合がある。画像形成層における熱溶融性物質の好ましい含有量としては、画像形成層の全固形分量に対して1〜50質量%であることが好ましく、より好ましくは5〜30質量%である。
また、上記熱溶融性物質のうち、ワックス類、脂肪酸及びそのエステル類、アミド類以外の化合物については、熱による反応性を高めるために、微分散処理を行って使用されることが好ましい。微分散処理の方法は、一般に塗料製造時に用いられる湿式分散法であるロールミル、コロイドミル、ボールミル、アトライター、サンドミル等のビーズミル等を使用することができる。ビーズミルでは、ジルコニア、チタニア、アルミナ等のセラミックビーズや、クロム、スチール等の金属ビーズ、ガラスビーズ等が使用できる。分散粒径はメジアン径で0.1〜1.2μmが望ましく、特に好ましくは0.3〜0.8μmである。なお、メジアン径とは、粒子体の一つの集団の全体積を100%として累積曲線を求めた時、累積曲線が50%となる点の粒子径(累積平均径)であり、粒度分布を評価するパラメータの一つとしてレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA920((株)堀場製作所製)等を用いて測定することができる。
本発明に係わる感熱型平版印刷の画像形成層は親水性バインダーを含有する。親水性バインダーとしては、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、澱粉及びその誘導体、グリコーゲン、アガロース、ペクチン、デキストラン、プルラン等の多糖類、ゼラチン、カゼイン、アルギン酸ソーダ、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、スチレン・マレイン酸共重合体塩、スチレン・アクリル酸共重合体塩等が挙げられる。これらの親水性バインダーは単独使用でも2種類以上を併用することもできるが、特にゼラチンを好ましく使用することができる。本発明の画像形成層が含有する親水性バインダーの好ましい含有量としては、画像形成層の全固形分量に対して5〜55質量%とすることが好ましい。また支持体に近い画像形成層の熱可塑性樹脂に対する親水性バインダーの比率を0.04〜1.6の範囲とし、支持体から離れた画像形成層の熱可塑性樹脂に対する親水性バインダーの比率を0.2〜20の範囲とし、且つ、支持体から離れた画像形成層の熱可塑性樹脂に対する親水性バインダーの比率を、支持体に近い画像形成層の熱可塑性樹脂に対する親水性バインダーの比率よりも、0.2以上高くすることが好ましい。
本発明に係わる感熱型平版印刷版の画像形成層は、該画像形成層の膜強度や接着強度等を向上させるために、架橋剤を含有することが好ましい。架橋剤の例としては、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイソシアネート化合物、アルデヒド化合物、シラン化合物、クロム明礬、ジビニルスルホン等が好適に用いることができる。特に好ましい架橋剤はジビニルスルホンである。また必要な耐水性及び機械的強度が得られ、更に保存した際の経時での特性変動を避ける意味から、架橋剤の含有量は画像形成層が含有する親水性バインダーの固形分量に対して1〜30質量%が好ましく、より好ましくは2〜20質量%の範囲である。
本発明に係わる感熱型平版印刷版には、視認性確保のため一般的な感熱記録紙、感圧記録紙に使用されるフェノール誘導体や芳香族カルボン酸誘導体等の顕色剤や発色剤(電子供与性染料前駆体)を含有させることができる。
顕色剤の具体的な例としては、4−クミルフェノール、ヒドロキノンモノベンジルエーテル、4,4′−イソプロピリデンジフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,4′−ジヒドロキシジフェニル−2,2−ブタン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、ビス(4−ヒドロキシフェニルチオエトキシ)メタン、1,5−ジ(4−ヒドロキシフェニルチオ)−3−オキサペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,4−ビス〔α−メチル−α−(4′−ヒドロキシフェニル)エチル〕ベンゼン、1,3−ビス〔α−メチル−α−(4′−ヒドロキシフェニル)エチル〕ベンゼン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、ジ(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)スルフィン、4−ヒドロキシ−4′−メチルジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−イソプロポキシジフェニルスルホン、2,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、4−ヒドロキシフェニル−4′−ベンジルオキシフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−3′,4′−テトラメチレンビフェニルスルホン、3,4−ジヒドロキシフェニル−p−トリルスルホン、4,4′−ジヒドロキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、N,N′−ジ−m−クロロフェニルチオ尿素、N−(フェノキシエチル)−4−ヒドロキシフェニルスルホンアミド等のフェノール性化合物、4−〔3−(p−トリルスルホニル)プロピルオキシ〕サリチル酸亜鉛、4−〔2−(p−メトキシフェノキシ)エチルオキシ〕サリチル酸亜鉛、5−〔p−(2−p−メトキシフェノキシエトキシ)クミル〕サリチル酸亜鉛、p−クロロ安息香酸亜鉛等の芳香族カルボン酸の亜鉛塩、更にはチオシアン酸亜鉛のアンチピリン錯体等の有機酸性物質等が例示される。
また、発色剤(電子供与性染料前駆体)の具体的な例としては、(1)トリアリールメタン系化合物として3,3′−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド(クリスタル・バイオレット・ラクトン)、3,3′−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(1,2−ジメチルインドール−3−イル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−フェニルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1,2−ジメチルインドール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(1,2−ジメチルインドール−3−イル)−6−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(9−エチルカルバゾール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(2−フェニルインドール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド、3−p−ジメチルアミノフェニル−3−(1−メチルピロール−2−イル)−6−ジメチル−アミノフタリド等:(2)ジフェニルメタン系化合物として、4,4′−ビス−ジメチルアミノベンズヒドリンベンジルエーテル、N−ハロフェニルロイコオーラミン、N−2,4,5−トリクロロフェニルロイコオーラミン等:(3)キサンテン系化合物として、ローダミンB−アニリノラクタム、ローダミンB−p−ニトロアニリノラクタム、ローダミンB−p−クロロアニリノラクタム、3−ジエチルアミノ−7−ジベンジルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−オクチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−フェニルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(3,4−ジクロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(2−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−エチル−トリルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−エチル−トリルアミノ−6−メチル−7−フェニチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(4−ニトロアニリノ)フルオラン等:(4)チアジン系化合物として、ベンゾイルロイコメチレンブルー、p−ニトロベンゾイルロイコメチレンブルー等:(5)スピロ系化合物として、3−メチル−スピロ−ジナフトピラン、3−エチル−スピロ−ジナフトピラン、3,3′−ジクロロ−スピロ−ジナフトピラン、3−ベンジル−スピロ−ジナフトピラン、3−メチルナフト−(3−メトキシ−ベンゾ)−スピロピラン、3−プロピル−スピロ−ジベンゾピラン等が挙げられる。また、これらは単独でも2種以上を併用して用いても良い。
更に、本発明に係わる感熱型平版印刷版には、光熱変換物質を配合することもできる。光熱変換剤を用いることによって、サーマルヘッドだけでなく赤外線レーザー等の活性光による描き込みも可能となる。光熱変換物質の例としては、効率よく光を吸収し熱に変換する材料が好ましく、使用する光源によって異なるが、例えば、近赤外光を放出する半導体レーザーを光源として使用する場合には、近赤外に吸収帯を有する近赤外光吸収剤が好ましく、例えば、カーボンブラック、シアニン系色素、ポリメチン系色素、アズレニウム系色素、スクワリウム系色素、チオピリリウム系色素、ナフトキノン系色素、アントラキノン系色素等の有機化合物や、フタロシアニン系、アゾ系、チオアミド系の有機金属錯体、鉄粉、黒鉛粉末、酸化鉄粉、酸化鉛、酸化銀、酸化クロム、硫化鉄、硫化クロム等の金属化合物類等が挙げられる。
本発明に係わる感熱型平版印刷版の画像形成層は、二酸化ケイ素、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、硫酸バリウムなどの無機顔料を含有することができ、これらは併用しても良い。特に、酸化亜鉛、硫酸バリウムを用いることによってより優れた印刷適性が得られる場合があり、用いる無機顔料の総量は、画像形成層の全固形分に対して0.1〜5質量%とすることが好ましい。
他、本発明に係わる感熱型平版印刷の画像形成層は、防腐剤、界面活性剤、消泡剤、レベリング剤、pH調節剤、その他の塗布助剤なども必要に応じて含有することができる。
本発明に係わる感熱型平版印刷版の画像形成層は、画像部の耐刷性、非画像部の耐水性および機械的強度の観点から、乾燥固形分が2〜12g/m2の範囲にあることが好ましい。画像形成層を複層とする場合の塗設方法については、順次塗布して重ねていく方法や、スライドホッパー方式等で重層塗布する方法などがあるが、どちらの方法でもよい。
本発明に係わる感熱型平版印刷版は、支持体と画像形成層の間に、画像形成層と支持体との接着性を改善したり、帯電防止性を改善する等の目的に応じ適宜下塗り層を設けることもできる。例えば、支持体と画像形成層の間に二酸化チタンとバインダー樹脂、および架橋剤からなる下塗り層を設けることによって、製版性・印刷性を低下させることなく、印刷時の版圧変化に伴う汚れを改善することが可能となる。
本発明に係わる感熱型平版印刷版の支持体としては、プラスチックフィルム、樹脂被覆紙、耐水紙等の耐水性支持体が好ましく使用できる。具体的にはポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエーテルサルフォン、ポリエステル、ポリ(メタ)アクリレート、ポリカーボネート、ポリアミド及びポリ塩化ビニル等のプラスチックフィルムとこれらプラスチックを表面にラミネートやコーティングした樹脂被覆紙、メラミンホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、エポキシ化ポリアミド樹脂等の湿潤紙力剤によって耐水化された紙を好適に用いることができる。
次に、上述した本発明に係わる感熱型平版印刷版の製版方法について説明する。本発明に係わる感熱型平版印刷版は、感熱型の画像形成層を有するため、画像形成層中に光熱変換物質を配合することにより、例えば、760nmから1200nmの赤外光を含む光を照射することで画像部を形成することが可能であり、更に赤外線を放射する固体レーザー及び半導体レーザーにより画像部を形成することが好ましい。特にレーザー露光によれば、コンピューターのデジタル情報から直接所望の画像様の記録が可能となる。またサーマルヘッドやヒートブロック等により画像形成層を直接熱により描画し画像部を形成することも可能であるが、サーマルヘッドによればコンピューターのデジタル情報から直接所望の画像様の記録が可能となる。
サーマルヘッドを使用する場合は、厚膜または薄膜のラインヘッドを用いたラインプリンタや薄膜のシリアルヘッドを用いたシリアルプリンタ等が使用できる。記録エネルギー密度は、10〜100mJ/mm2であることが好ましく、また比較的高品質な出力画像を得るためにはヘッドの画像記録密度が300dpi以上であることが好ましい。
以下、実施例を用いて本発明を説明するが、無論この記述により本発明が限定されるものではない。なお、以下の記述の中における%や部は、特に記載がない限りは全て質量比を示すものである。
(実施例1)
両面にラミネート加工が施された厚さ約180μmのポリエチレン被覆紙の片面に、先ず下記画像形成層A塗工液を湿分塗布量が30g/m2になるように塗布し、直ちに3℃の冷風にて塗膜をゲル化させ、その後30℃の温風にて乾燥を行った。続いて、下記画像形成層B塗工液を湿分塗布量で10g/m2になるように画像形成層Aの上に塗布し、同じように3℃の冷風にて塗膜をゲル化させ、その後30℃の温風にて乾燥を行った。
両面にラミネート加工が施された厚さ約180μmのポリエチレン被覆紙の片面に、先ず下記画像形成層A塗工液を湿分塗布量が30g/m2になるように塗布し、直ちに3℃の冷風にて塗膜をゲル化させ、その後30℃の温風にて乾燥を行った。続いて、下記画像形成層B塗工液を湿分塗布量で10g/m2になるように画像形成層Aの上に塗布し、同じように3℃の冷風にて塗膜をゲル化させ、その後30℃の温風にて乾燥を行った。
<画像形成層A塗工液>
ゼラチン 0.7部
熱可塑性樹脂:固形分として 1.35部
(DIC(株)製ラックスター7132C、カルボキシル化SBRラテックス、Tg60℃)
界面活性剤(0.5%溶液) 0.4部
ジビニルスルホン硬膜剤(5%溶液) 2.0部
発色剤混合スラリー 7.0部
水で全量を30部とした。
ゼラチン 0.7部
熱可塑性樹脂:固形分として 1.35部
(DIC(株)製ラックスター7132C、カルボキシル化SBRラテックス、Tg60℃)
界面活性剤(0.5%溶液) 0.4部
ジビニルスルホン硬膜剤(5%溶液) 2.0部
発色剤混合スラリー 7.0部
水で全量を30部とした。
<画像形成層B塗工液>
ゼラチン 0.3部
熱可塑性樹脂:固形分として 0.27部
(DIC(株)製ラックスター7132C、カルボキシル化SBRラテックス、Tg60℃)
界面活性剤(0.5%溶液) 0.2部
熱溶融性物質:固形分として 0.03部
(モンタン酸エステルワックスエマルジョン)
ジビニルスルホン硬膜剤(5%溶液) 0.8部
発色剤混合スラリー 0.3部
水で全量を10部とした。
ゼラチン 0.3部
熱可塑性樹脂:固形分として 0.27部
(DIC(株)製ラックスター7132C、カルボキシル化SBRラテックス、Tg60℃)
界面活性剤(0.5%溶液) 0.2部
熱溶融性物質:固形分として 0.03部
(モンタン酸エステルワックスエマルジョン)
ジビニルスルホン硬膜剤(5%溶液) 0.8部
発色剤混合スラリー 0.3部
水で全量を10部とした。
上記画像形成層A塗工液及び画像形成層B塗工液に用いる発色剤混合スラリーは、下記調製方法で予め製造したものを使用した。
<発色剤混合スラリーの調製>
材料a(熱溶融性物質):1,2−ビス(3−メチルフェノキシ)エタン
(三光(株)製:KS−232)
材料b:4−ヒドロキシ−4′−イソプロポキシジフェニルスルホン
(日本曹達(株)製:D−8)
材料c:3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン
(山本化成(株)製:ODB2)
<発色剤混合スラリーの調製>
材料a(熱溶融性物質):1,2−ビス(3−メチルフェノキシ)エタン
(三光(株)製:KS−232)
材料b:4−ヒドロキシ−4′−イソプロポキシジフェニルスルホン
(日本曹達(株)製:D−8)
材料c:3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン
(山本化成(株)製:ODB2)
上記の材料a、b、cを予め、個々に小型ダイノーミル(ビーズミル)でジルコニアビーズを用いて0.7μmまで微分散処理を施し、固形分濃度約30%に調製された分散液をそれぞれ作製し、分散液a、分散液b、分散液cとした。分散液a、bを各々3部に対し、分散液cを1部常温下で混合することで発色剤混合スラリーを調製した。
上記のように作製した感熱型平版印刷版を、CTP用サーマルデジタルプリンター(三菱製紙(株)製Thermal Digiplater TDP−459:1200dpi/120lpi)を用いて画像出力(記録エネルギー密度70〜100mJ/mm2、電気容量330W)を行い、印刷刷版を作製した。
このようにして画像形成を行った感熱型平版印刷版を、画像印字面を下にして机上においてから画像印字面を上にして置き直す動作を10回繰り返してから、以下に示す版面処理液(a)〜(f)をそれぞれ版面に付与した後に印刷を行い、傷汚れの評価を行った。版面処理液を版面に付与する方法としては、エッチングコンバーターHP−420e(岩崎通信機社製)を使用した。これは、版面処理液を貯留させた液浴に印刷刷版を浸漬させてロール対により余剰の版面処理液を絞液することによって、版面処理液を版面に付与する装置である。
版面処理液は下記(a)〜(f)を使用した。
<版面処理液(a)>
・水酸化ナトリウム 3g/L
・コハク酸 5g/L
・プロピレングリコール 20g/L
・コロイダルシリカ水分散液(日産化学工業(株)製スノーテックスC、酸化物として20%分散液、粒径10〜20nm)
20g/L
・硝酸マグネシウム六水和物 5g/L
・ノニオン性界面活性剤(ポリオキシエチレンラウリルエーテル、花王(株)製エマルゲン108)
3g/L
<版面処理液(a)>
・水酸化ナトリウム 3g/L
・コハク酸 5g/L
・プロピレングリコール 20g/L
・コロイダルシリカ水分散液(日産化学工業(株)製スノーテックスC、酸化物として20%分散液、粒径10〜20nm)
20g/L
・硝酸マグネシウム六水和物 5g/L
・ノニオン性界面活性剤(ポリオキシエチレンラウリルエーテル、花王(株)製エマルゲン108)
3g/L
<版面処理液(b)>
上記版面処理液(a)のノニオン性界面活性剤をアニオン性界面活性剤(ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、花王(株)製エマール20C)とした以外は同様にして版面処理液(b)とした。
<版面処理液(c)>
上記版面処理液(b)のアニオン性界面活性剤を10g/Lとした以外は同様にして版面処理液(c)とした。
<版面処理液(d)>
上記版面処理液(b)のアニオン性界面活性剤を15g/Lとした以外は同様にして版面処理液(d)とした。
<版面処理液(e)>
上記版面処理液(c)のアニオン性界面活性剤をラウリル硫酸ナトリウム(花王(株)製エマールO)に変更した以外は同様にして版面処理液(e)とした。
<版面処理液(f)>
上記版面処理液(c)のアニオン性界面活性剤を高級アルコール硫酸ナトリウム(花王(株)製エマール40ペースト)に変更した以外は同様にして版面処理液(f)とした。
上記版面処理液(a)のノニオン性界面活性剤をアニオン性界面活性剤(ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、花王(株)製エマール20C)とした以外は同様にして版面処理液(b)とした。
<版面処理液(c)>
上記版面処理液(b)のアニオン性界面活性剤を10g/Lとした以外は同様にして版面処理液(c)とした。
<版面処理液(d)>
上記版面処理液(b)のアニオン性界面活性剤を15g/Lとした以外は同様にして版面処理液(d)とした。
<版面処理液(e)>
上記版面処理液(c)のアニオン性界面活性剤をラウリル硫酸ナトリウム(花王(株)製エマールO)に変更した以外は同様にして版面処理液(e)とした。
<版面処理液(f)>
上記版面処理液(c)のアニオン性界面活性剤を高級アルコール硫酸ナトリウム(花王(株)製エマール40ペースト)に変更した以外は同様にして版面処理液(f)とした。
<印刷評価>
印刷機はオフセット枚葉印刷機RYOBI3200CCD、インキはDIC(株)製ニューチャンピオン Fグロス墨N、給湿液は三菱製紙(株)製TDP−DL3 3%希釈液を用いて印刷を行った。印刷開始後に印刷物のベタ画像部の反射濃度が1.0以上となる印刷枚数をインキ着肉性として評価し、また、非画線部の傷汚れの有無について評価した。ベタ部の反射濃度は大日本スクリーン製造(株)製DM−620を使用して測定した。傷汚れの有無については、ベタ画像部の濃度が1.0となった時点において上質紙(60g/m2)およびコート紙(120g/m2)の印刷物を目視にて観察し、以下の評価基準にて判別した。
印刷機はオフセット枚葉印刷機RYOBI3200CCD、インキはDIC(株)製ニューチャンピオン Fグロス墨N、給湿液は三菱製紙(株)製TDP−DL3 3%希釈液を用いて印刷を行った。印刷開始後に印刷物のベタ画像部の反射濃度が1.0以上となる印刷枚数をインキ着肉性として評価し、また、非画線部の傷汚れの有無について評価した。ベタ部の反射濃度は大日本スクリーン製造(株)製DM−620を使用して測定した。傷汚れの有無については、ベタ画像部の濃度が1.0となった時点において上質紙(60g/m2)およびコート紙(120g/m2)の印刷物を目視にて観察し、以下の評価基準にて判別した。
<傷汚れ評価基準>
×=上質紙、コート紙共に傷汚れが確認できる
△=コート紙のみ傷汚れが確認できる
○=上質紙、コート紙共に傷汚れなし
×=上質紙、コート紙共に傷汚れが確認できる
△=コート紙のみ傷汚れが確認できる
○=上質紙、コート紙共に傷汚れなし
表1に示す結果から判るように、本発明によって、製版後の取り扱いによって印刷版の表面に目視では判別しにくい傷が付いた場合でも、傷汚れが発生することなく良好な印刷物を得ることができる。
Claims (1)
- 支持体上に熱可塑性樹脂と親水性バインダーを含有する画像形成層を少なくとも2層有し、支持体から離れた画像形成層の熱可塑性樹脂に対する親水性バインダーの比率が、支持体に近い画像形成層の熱可塑性樹脂に対する親水性バインダーの比率よりも高く、該画像形成層の加熱部分を画像部、および該画像形成層の非加熱部分を非画像部として利用する感熱型平版印刷版を画像様に加熱して画像部を形成した後、無機微粒子とアニオン性界面活性剤を含有する版面処理液を版面に付与し、その後印刷を行うことを特徴とする感熱型平版印刷版の印刷方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2017045790A JP2018149695A (ja) | 2017-03-10 | 2017-03-10 | 感熱型平版印刷版の印刷方法 |
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