JP2016190486A - 感熱型平版印刷版 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐汚れ性と耐刷性が改善された感熱型平版印刷版を提供する。
【解決手段】支持体上に熱可塑性樹脂および水溶性高分子化合物を含有する画像形成層を有し、熱可塑性樹脂はコア/シェル構造を有し、コア相が塩化ビニル樹脂を含有し、シェル相がアクリル酸及びその誘導体から選ばれる少なくとも一種をモノマー成分とする重合体を含有する。
【選択図】なし
【解決手段】支持体上に熱可塑性樹脂および水溶性高分子化合物を含有する画像形成層を有し、熱可塑性樹脂はコア/シェル構造を有し、コア相が塩化ビニル樹脂を含有し、シェル相がアクリル酸及びその誘導体から選ばれる少なくとも一種をモノマー成分とする重合体を含有する。
【選択図】なし
Description
本発明は、熱により相変換する画像形成層を有する感熱型平版印刷版に関し、従来のアブレーション方式や機上現像方式などにおける層除去処理を必要としない感熱型平版印刷版に関する。
近年、コンピューター及びその周辺機器の発展により各種デジタルプリンタを用いた平版印刷版の製版方法が各種提案されている。例えば、特開平6−138719号公報、特開平6−250424号公報には、乾式電子写真法レーザープリンタにより製版するもの、特開平9−58144号公報には、熱溶融型インクを用いたオンデマンドインクジェットプリンタにより製版するもの、更に、特開昭63−166590号公報には熱転写インクリボンを用いるサーマルプリンタにより製版するもの等が知られている。
上記のようなプリンタを用いた製版方法は、従来の可視光レーザー等を用いた光モードタイプとは大別され、取り扱い上において安全光の制約を受けないことから、この点で大きな利点を有する。また従来の光モードタイプにおいて通常用いられる露光後の現像処理を全く必要としない点から、これらの製版方式で製版された印刷版はプロセスレス印刷版と総称されている。
しかし、上記プロセスレス印刷版は、何れも保水性付与層が設けられた支持体表面に、感脂性(即ち、平版印刷インク着肉性)の記録画像を転写付与することにより印刷版を形成する方式であったため、次のような問題点があった。
1)画像を形成する層が親水性であるためトナーやインク等の付着が十分ではなく、例えば転写トナー画像濃度が不足したり、転写画像に白抜けが発生するような問題。
2)転写画像の定着が十分ではなく、耐刷性が低下し、特に小ポイント文字の一部やハイライト部の網点画像に欠落が生じるような問題。
3)非画像部に少量のトナーが不規則に転写されたり、熱転写インクリボンが擦れること等によって、全体的に薄い地汚れが発生する等の問題。
2)転写画像の定着が十分ではなく、耐刷性が低下し、特に小ポイント文字の一部やハイライト部の網点画像に欠落が生じるような問題。
3)非画像部に少量のトナーが不規則に転写されたり、熱転写インクリボンが擦れること等によって、全体的に薄い地汚れが発生する等の問題。
一方、支持体上に熱可塑性樹脂あるいは熱溶融性物質を含有する画像形成層を設けて、サーマルヘッドや赤外線レーザー等により加熱印字することで親油性の画像部が得られる感熱型平版印刷版等も提案されている。
例えば、特開昭58−199153号公報(特許文献1)、あるいは特開昭59−174395号公報(特許文献2)には、画像形成層に熱転写リボン等を介さずサーマルヘッド等で直接加熱描画することにより親油性の画像部が得られる感熱型平版印刷版が記載されている。また、特開2000−190649号公報(特許文献3)、特開2000−301846号公報(特許文献4)には、赤外線レーザー等で直接加熱描画することにより親油性の画像部が得られる感熱型平版印刷版が記載されている。これらは何れも相変換型印刷版であり、元々親水性であった部分が相変換を起こし、疎水性(親油性)に変化するものである。
しかしながら、上記した相変換を利用した感熱型平版印刷版は、画像形成層の加熱部分を画像部、および画像形成層の非加熱部分を非画像部として利用するため、画像形成層自身が画像部と非画像部を兼ねている。このため同じ感熱型平版印刷版であっても、従来のアブレーション方式や機上現像方式等の所謂デブリ処理により画像部と非画像部を形成する印刷版(例えば、水や湿し水等で現像処理することで非加熱の画像形成層を除去し、画像形成層と支持体の間に設けられた親水性層を露出させる感熱型平版印刷版)とは異なり、非画像部であっても熱可塑性樹脂や熱溶融性物質を含有する。即ち、上記デブリ処理が一切行われないことから、加熱部であっても、非加熱部分であっても、塗設された塗膜はそのまま印刷に利用されることになる。このため、加熱部の感脂性(親油性)を上げると、一方で親水性が犠牲になるという、相反する傾向を持ち合わせており、耐刷性と耐汚れ性をバランスよく向上させることは極めて困難であった。
上記したような問題を改善するため、特開平11−95417号公報(特許文献5)では、画像形成層にポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース等の親水性樹脂を架橋して用いることで耐刷性や保水性が改善されると記載されているが、親水性樹脂自体の相変換を利用するものであるので、画像部の親油化のレベルが低く、親油性/親水性の差が十分ではなかった。特開2000−75471号公報(特許文献6)では、疎水性発現物質に熱可塑性樹脂、ワックス分散物、撥水剤等を用い、親水性物質にゼラチンやポリビニルアルコール等を用いることで、特に耐水性、印刷再現性等を向上させたとあるが、これも親油性/親水性の差が十分ではなかった。さらに、特開2001−96710号公報(特許文献7)には、親水材が物理的に被覆固定された熱溶融性粒子により画像形成される平版印刷版が開示され、特開2010−234724号公報(特許文献8)には、特定の熱可塑性樹脂と水溶性高分子化合物を含有する画像形成層を有する感熱型平版印刷版が開示されているが、耐刷性と耐汚れ性のバランスの更なる改善が求められている。
一方、コア/シェル構造を有する熱可塑性樹脂を用いることで、耐汚れ性と耐刷性を改善できることが、特開2002−192846号公報(特許文献9)、特開2006−240170号公報(特許文献10)に記載されている。
本発明の目的は、耐汚れ性と耐刷性が改善された感熱型平版印刷版を提供することにある。
本発明の上記目的は、以下の発明によって達成された。
(1)支持体上に熱可塑性樹脂および水溶性高分子化合物を含有する画像形成層を有し、熱可塑性樹脂はコア/シェル構造を有し、コア相が塩化ビニル樹脂を含有し、シェル相がアクリル酸及びその誘導体から選ばれる少なくとも一種をモノマー成分とする重合体を含有することを特徴とする感熱型平版印刷版。
(2)該画像形成層がさらにチタンカップリング剤を含有する上記(1)に記載の感熱型平版印刷版。
(1)支持体上に熱可塑性樹脂および水溶性高分子化合物を含有する画像形成層を有し、熱可塑性樹脂はコア/シェル構造を有し、コア相が塩化ビニル樹脂を含有し、シェル相がアクリル酸及びその誘導体から選ばれる少なくとも一種をモノマー成分とする重合体を含有することを特徴とする感熱型平版印刷版。
(2)該画像形成層がさらにチタンカップリング剤を含有する上記(1)に記載の感熱型平版印刷版。
本発明により、耐汚れ性と耐刷性が改善された感熱型平版印刷版を提供することができる。
本発明の感熱型平版印刷版は、熱可塑性樹脂および水溶性高分子化合物を含有する画像形成層を有する。該画像形成層はサーマルヘッドや赤外線レーザーで加熱描画すると、熱が加わる部位は水溶性高分子化合物に埋もれている熱可塑性樹脂が溶融し、層の極表面に滲み出ることで疎水性を発現し、印刷時にインキを受理することが可能となる。熱が与えられない部位は熱可塑性樹脂や熱溶融性物質が水溶性高分子化合物中に埋もれたままで、画像形成層が元々有する親水性を維持する。そして、この疎水性と親水性の差を利用することで、平版印刷が可能となる。よって本発明の感熱型平版印刷板は、画像形成層の加熱部を画像部とし、非加熱部分を非画像部として利用する。
本発明の画像形成層は水溶性高分子化合物を含有する。水溶性高分子化合物としては、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、澱粉及びその誘導体、グリコーゲン、アガロース、ペクチン、デキストラン、プルラン等の多糖類、ゼラチン、カゼイン、アルギン酸ソーダ、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、スチレン・マレイン酸共重合体塩、スチレン・アクリル酸共重合体塩等が挙げられる。これらの水溶性高分子化合物は単独使用でも2種類以上を併用することもできるが、特にゼラチンを好ましく使用することができる。画像形成層における水溶性高分子化合物の含有量としては、画像形成層の全固形分量に対して5〜55質量%とすることが好ましい。
本発明において画像形成層が含有する熱可塑性樹脂はコア/シェル構造を有する微粒子状の樹脂であり、該熱可塑性樹脂は、加熱によって可塑性を示す固体状の非水溶性有機高分子化合物である。画像形成層の塗工液として水系塗工液を使用する場合には、熱可塑性樹脂は水分散体(エマルション)であることが好ましい。
上記熱可塑性樹脂のコア相が含有する塩化ビニル樹脂は、塩化ビニル単量体が100〜80質量%と塩化ビニルと共重合可能なモノマーが0〜20質量%から構成されていることが好ましい。
塩化ビニルと共重合可能なモノマーとしては、酢酸ビニル、エチレン、プロピレン、塩化ビニリデンのほか、プロピオン酸ビニル等のカルボン酸ビニル単量体類、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル単量体類、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン等の共役ジエン系単量体類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル等のエチレン性不飽和モノカルボン酸エステル類、イタコン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸モノブチル、フマル酸モノエチル、フマル酸ジブチル等のエチレン性不飽和ポリカルボン酸エステル類、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸類、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等のエチレン性不飽和ジカルボン酸類、グリシジルメタクリレートに代表されるエポキシ基含有単量体類、2−ヒドロキシエチルメタクリレートに代表されるアルコール性水酸基含有単量体類、メトキシエチルアクリレートに代表されるアルコキシル基含有単量体類、アクリロニトリルに代表されるニトリル基含有単量体類、アクリルアミドに代表されるアミド基含有単量体類、ジメチルアミノエチルメタクリレートに代表されるアミノ基含有単量体類、ジビニルベンゼン、アリルメタクリレート等の1分子中にエチレン性不飽和基を2個以上有する単量体等が挙げられ、このうちの1種または2種以上が選択されるが、酢酸ビニル、エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル類、エチレン性不飽和モノカルボン酸類が好ましい。
上記熱可塑性樹脂のシェル相は、アクリル酸およびその誘導体から選ばれる少なくとも一種をモノマー成分とする重合体を含有する。また、重合体として、該モノマー成分が100〜50質量%と該モノマー成分と共重合可能なモノマーが0〜50質量%から構成されていることが好ましい。アクリル酸およびその誘導体としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルテトラゾール、(メタ)アクリレート、エチレングリコール(メタ)アクリレートホスフェート、ホスホネート化(メタ)アクリレート、およびスルホン化(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、シェル相の占める割合が熱可塑性樹脂粒子全体の10〜60質量%であることが好ましく、より好ましくは10〜40質量%である。更に、コア/シェル構造を有する熱可塑性樹脂の平均粒径は100nm以下であることが好ましい。
また、本発明の画像形成層は、コア/シェル構造を有する熱可塑性樹脂に加えて、スチレンブタジエン共重合体、アクリロニトリルブタジエン共重合体、メチルメタクリレートブタジエン共重合体、スチレンアクリロニトリルブタジエン共重合体、スチレンメチルメタクリレートブタジエン共重合体等の、その変性物を含めた合成ゴムラテックスであるが、スチレン無水マレイン酸共重合体、メチルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体、ポリアクリル酸共重合体、ポリスチレン、スチレン/アクリル酸エステル共重合体、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、アクリル酸エステル/メタアクリル酸エステル共重合体、及び低融点ポリアミド樹脂も併用して使用可能である。
熱可塑性樹脂の好ましい含有量としては画像形成層の全固形分量に対して5〜50質量%が好ましく、更に10〜40質量%が好ましい。また、上記に示す熱可塑性樹脂を併用する場合、コア/シェル構造を有する熱可塑性樹脂の割合としては、全熱可塑性樹脂の10質量%以上であることが好ましい。
また、熱による溶融、融着効果を発現しやすくするためには、熱可塑性樹脂のガラス転移温度は20〜150℃、更に好ましくは30〜120℃のものを使用するのが良い。150℃を超える場合は熱可塑性樹脂の熱溶融が起こりにくく、比較的小出力のレーザーや小型サーマルプリンタでは強固な画像を形成するのが困難となる場合がある。
本発明において画像形成層は、熱溶融性物質を含有することが好ましい。例えば、カルナバワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス等のワックス類、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、ベヘン酸、モンタン酸に代表される高級脂肪酸の金属塩類、エステル類、アミド類のほか、2−ベンジルオキシナフタレンに代表されるナフトール誘導体、p−ベンジルビフェニル、4−アリルオキシビフェニル、m−ターフェニル等のビフェニル誘導体、1,2−ビス(3−メチルフェノキシ)エタン、2,2′−ビス(4−メトキシフェノキシ)ジエチルエーテル、ビス(4−メトキシフェニル)エーテル等のポリエーテル化合物、炭酸ジフェニル、シュウ酸ジベンジル、シュウ酸ジ(p−クロロベンジル)エステル等の炭酸またはシュウ酸ジエステル誘導体等が挙げられる。これらは単独もしくは2種以上混合して使用することができ、融点が50〜150℃の熱溶融性物質が好ましく用いられる。融点が50℃未満では製造工程中に溶融してしまい、印刷物の地汚れの原因となる場合がある。一方、150℃を超えるとサーマルヘッド等の熱印加で溶融しにくく、親油性の発現が乏しくなる場合がある。画像形成層における熱溶融性物質の好ましい含有量としては、画像形成層の全固形分量に対して1〜50質量%であることが好ましく、より好ましくは5〜30質量%である。
また、上記熱溶融性物質のうち、ワックス類、脂肪酸及びそのエステル類、アミド類以外の化合物については、熱による反応性を高めるために、微分散処理を行って使用されることが好ましい。微分散処理の方法は、一般に塗料製造時に用いられる湿式分散法であるロールミル、コロイドミル、ボールミル、アトライター、サンドミル等のビーズミル等を使用することができる。ビーズミルでは、ジルコニア、チタニア、アルミナ等のセラミックビーズや、クロム、スチール等の金属ビーズ、ガラスビーズ等が使用できる。分散粒径はメジアン径で0.1〜1.2μmが望ましく、特に好ましくは0.3〜0.8μmである。なお、メジアン径とは、粒子体の一つの集団の全体積を100%として累積曲線を求めた時、累積曲線が50%となる点の粒子径(累積平均径)であり、粒度分布を評価するパラメータの一つとしてレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA920((株)堀場製作所製)等を用いて測定することができる。
本発明の感熱型平版印刷版が有する画像形成層には、画像形成層の膜強度や接着強度等を向上させるために、架橋剤を含有することが好ましい。架橋剤の例としては、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイソシアネート化合物、アルデヒド化合物、クロム明礬、シラン化合物、ジビニルスルホン等が好適に用いることができる。特に好ましい架橋剤はジビニルスルホンである。また必要な耐水性及び機械的強度が得られ、更に保存した際の経時での特性変動を避ける意味から、架橋剤の配合量は画像形成層が含有する水溶性高分子化合物の固形分量に対して1〜30質量%が好ましく、より好ましい配合量としては2〜20質量%の範囲である。
本発明の感熱型平版印刷版が有する画像形成層には、視認性確保のため一般的な感熱記録紙、感圧記録紙に使用されるフェノール誘導体や芳香族カルボン酸誘導体などの顕色剤や発色剤(電子供与性染料前駆体)を含有させることができる。
顕色剤の具体的な例としては、4−クミルフェノール、ヒドロキノンモノベンジルエーテル、4,4′−イソプロピリデンジフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,4′−ジヒドロキシジフェニル−2,2−ブタン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、ビス(4−ヒドロキシフェニルチオエトキシ)メタン、1,5−ビス(4−ヒドロキシフェニルチオ)−3−オキサペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,4−ビス[α−メチル−α−(4′−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン、1,3−ビス[α−メチル−α−(4′−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、ジ(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)スルフィン、4−ヒドロキシ−4′−メチルジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−イソプロポキシジフェニルスルホン、2,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、4−ヒドロキシフェニル−4′−ベンジルオキシフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−3′,4′−テトラメチレンビフェニルスルホン、3,4−ジヒドロキシフェニル−p−トリルスルホン、4,4′−ジヒドロキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、N,N′−ジ−m−クロロフェニルチオ尿素、N−(フェノキシエチル)−4−ヒドロキシフェニルスルホンアミドなどのフェノール性化合物、4−[3−(p−トリルスルホニル)プロピルオキシ]サリチル酸亜鉛、4−[2−(p−メトキシフェノキシ)エチルオキシ]サリチル酸亜鉛、5−[p−(2−p−メトキシフェノキシエトキシ)クミル]サリチル酸亜鉛、p−クロロ安息香酸亜鉛などの芳香族カルボン酸の亜鉛塩、さらにはチオシアン酸亜鉛のアンチピリン錯体などの有機酸性物質などが例示される。
発色剤(電子供与性染料前駆体)の具体的な例としては、(1)トリアリールメタン系化合物として3,3′−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド(クリスタル・バイオレット・ラクトン)、3,3′−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(1,2−ジメチルインドール−3−イル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−フェニルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1,2−ジメチルインドール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(1,2−ジメチルインドール−3−イル)−6−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(9−エチルカルバゾール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(2−フェニルインドール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド、3−p−ジメチルアミノフェニル−3−(1−メチルピロール−2−イル)−6−ジメチルアミノフタリドなど:(2)ジフェニルメタン系化合物として、4,4′−ビス−ジメチルアミノベンズヒドリンベンジルエーテル、N−ハロフェニルロイコオーラミン、N−2,4,5−トリクロロフェニルロイコオーラミンなど:(3)キサンテン系化合物として、ローダミンB−アニリノラクタム、ローダミンB−p−ニトロアニリノラクタム、ローダミンB−p−クロロアニリノラクタム、3−ジエチルアミノ−7−ジベンジルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−オクチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−フェニルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(3,4−ジクロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(2−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−エチル−トリルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−エチル−トリルアミノ−6−メチル−7−フェニチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(4−ニトロアニリノ)フルオランなど:(4)チアジン系化合物として、ベンゾイルロイコメチレンブルー、p−ニトロベンゾイルロイコメチレンブルーなど:(5)スピロ系化合物として、3−メチル−スピロ−ジナフトピラン、3−エチル−スピロ−ジナフトピラン、3,3′−ジクロロ−スピロ−ジナフトピラン、3−ベンジル−スピロ−ジナフトピラン、3−メチルナフト−(3−メトキシ−ベンゾ)−スピロピラン、3−プロピル−スピロ−ジベンゾピランなどが挙げられる。また、これらは単独でも2種以上を併用して用いてもよい。
さらに、本発明では画像形成層に光熱変換物質を配合することもできる。光熱変換物質を用いることで、サーマルヘッドだけでなく赤外線レーザーなどの活性光による書き込みも可能となる。光熱変換物質の例としては、効率よく光を吸収し熱に変換する材料が好ましく、使用する光源によって異なるが、例えば近赤外光を放出する半導体レーザーを光源として使用する場合には、近赤外に吸収帯を有する近赤外光吸収剤が好ましく、例えば、カーボンブラック、シアニン系色素、ポリメチン系色素、アズレニウム系色素、スクワリウム系色素、チオピリリウム系色素、ナフトキノン系色素、アントラキノン系色素などの有機化合物や、フタロシアニン系、アゾ系、チオアミド系の有機金属錯体、鉄粉、黒鉛粉末、酸化鉄粉、酸化鉛、酸化銀、酸化クロム、硫化鉄、硫化クロムなどの金属化合物類などが挙げられる。
本発明の感熱型平版印刷版が有する画像形成層は、二酸化ケイ素、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、硫酸バリウムなどの無機顔料を含有することができ、これらは併用しても良い。特に、酸化亜鉛、硫酸バリウムを用いることによってより優れた印刷適性が得られる場合があり、用いる無機顔料の総量は、画像形成層の全固形分に対して0.1〜5質量%とすることが好ましい。
その他に、本発明の画像形成層には、防腐剤、界面活性剤、消泡剤、レベリング剤、pH調節剤、その他の塗布助剤なども必要に応じて添加することができる。
また、本発明の画像形成層は単層のみならず、分割して多層構成にすることもできる。その場合、熱可塑性樹脂は、支持体に近い画像形成層の水溶性高分子化合物の質量に対する熱可塑性樹脂の質量の比が、最表層の画像形成層の比よりも高いことが好ましい。コア/シェル構造を有する熱可塑性樹脂は、支持体に近い画像形成層、最表層の画像形成層の何れか単独、あるいはその両方でも含有することができるが、最表層の画像形成層が含有することが好ましい。
本発明において画像形成層はチタンカップリング剤を含有することが好ましい。これにより高温環境下で保存した際の保存性にとりわけ優れた感熱型平版印刷版を得ることができる。チタンカップリング剤は、上記した支持体に近い画像形成層、あるいは最表層の画像形成層のいずれの画像形成層も含有することができるが、支持体に近い画像形成層がチタンカップリング剤を含有することが特に好ましい。チタンカップリング剤の配合量は画像形成層が含有する水溶性高分子化合物の固形分量に対して1〜30質量%が好ましく、より好ましくは2〜20質量%である。
前述の通り、本発明において画像形成層は水溶性高分子化合物を含有することから、支持体上に画像形成層を形成するにあたり、好適に利用される塗工液は水を含有する。したがって本発明においてチタンカップリング剤は水と相溶性があることが好ましく、このようなチタンカップリング剤としては、例えば、チタンラクテート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)、チタンジエタノールアミネート、チタンアミノエチルアミノエタノレートなどが挙げられる。また、該チタンカップリング剤としては、上記したチタンカップリング剤と共に水またはイソプロパノールを含有する、所謂水系のチタンカップリング剤が好適であり、このようなチタンカップリング剤としては、例えばマツモトファインケミカル(株)よりオルガチックスTC−100、同TC−310、同TC−400、同TC−500、同TC−510等が市販されているので、これらを入手し使用することができる。
本発明の感熱型平版印刷版が有する画像形成層は、画像部の耐刷性、非画像部の耐水性および機械的強度の観点から、全体の乾燥固形分が2〜12g/m2の範囲にあることが好ましい。画像形成層を複層とする場合の塗設方法については、順次塗布して重ねていく方法や、スライドホッパー方式等で同時多層塗布する方法などがあるが、どちらの方法でもよい。
本発明の感熱型平版印刷版が有する支持体としては、プラスチックフィルム、樹脂被覆紙、耐水紙などの耐水性支持体が好ましく使用できる。具体的にはポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエーテルサルフォン、ポリエステル、ポリ(メタ)アクリレート、ポリカーボネート、ポリアミド及びポリ塩化ビニルなどのプラスチックフィルムとこれらプラスチックを表面にラミネートやコーティングした樹脂被覆紙、メラミンホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、エポキシ化ポリアミド樹脂などの湿潤紙力剤によって耐水化が施された紙を好適に用いることができる。
次に、上述した本発明の感熱型平版印刷版を用いた製版方法について説明する。本発明の感熱型平版印刷版はサーマルヘッドを使用して製版する場合に好適に使用できる。このような装置としては、厚膜または薄膜のラインヘッドを用いたラインプリンタや薄膜のシリアルヘッドを用いたシリアルプリンタなどを用いることができる。記録エネルギー密度は、10〜100mJ/mm2であることが好ましく、また比較的高品質な出力画像を得るためにはヘッドの画像記録密度が300dpi以上であることが好ましい。
以下、実施例を用いて本発明を説明するが、無論この記述により本発明が限定されるものではない。なお、以下の記述の中における%や部は、特に記載がない限りは全て質量比を示すものである。
(実施例1)
両面にラミネート加工が施された厚さ約180μmのポリエチレン樹脂被覆紙の片面に、下記画像形成層(a1)と画像形成層(b1)の塗工液をスライドホッパーコーティング法により、湿分塗布量で画像形成層(a1)を33g/m2、画像形成層(b1)を10g/m2になるように、支持体側から画像形成層(a1)、画像形成層(b1)となるように2層同時塗布を行った。
<画像形成層(a1)塗工液>
ゼラチン 0.8部
ポリビニルアルコール 0.08部
塩ビ・アクリルエマルション(Tg=51℃、31%スラリー) 4.8部
(星光PMC(株)製BE7650、コア/シェル比:65/35、粒子径30nm
コア相:塩化ビニル樹脂、シェル相:アクリル樹脂)
界面活性剤(0.5%溶液) 0.4部
ジビニルスルホン硬膜剤(5%溶液) 3.0部
発色剤混合スラリー(30%スラリー) 8.4部
水で全量を33部とした。
両面にラミネート加工が施された厚さ約180μmのポリエチレン樹脂被覆紙の片面に、下記画像形成層(a1)と画像形成層(b1)の塗工液をスライドホッパーコーティング法により、湿分塗布量で画像形成層(a1)を33g/m2、画像形成層(b1)を10g/m2になるように、支持体側から画像形成層(a1)、画像形成層(b1)となるように2層同時塗布を行った。
<画像形成層(a1)塗工液>
ゼラチン 0.8部
ポリビニルアルコール 0.08部
塩ビ・アクリルエマルション(Tg=51℃、31%スラリー) 4.8部
(星光PMC(株)製BE7650、コア/シェル比:65/35、粒子径30nm
コア相:塩化ビニル樹脂、シェル相:アクリル樹脂)
界面活性剤(0.5%溶液) 0.4部
ジビニルスルホン硬膜剤(5%溶液) 3.0部
発色剤混合スラリー(30%スラリー) 8.4部
水で全量を33部とした。
<画像形成層(b1)塗工液>
ゼラチン 0.3部
塩ビ・アクリルエマルション(Tg=51℃、31%スラリー) 1.1部
(星光PMC(株)製BE7650、コア/シェル比:65/35、粒子径30nm
コア相:塩化ビニル樹脂、シェル相:アクリル樹脂)
界面活性剤(0.5%溶液) 0.2部
熱溶融性物質:固形分として 0.03部
(モンタン酸エステルワックスエマルション)
ジビニルスルホン硬膜剤(5%溶液) 0.8部
水で全量を10部とした。
ゼラチン 0.3部
塩ビ・アクリルエマルション(Tg=51℃、31%スラリー) 1.1部
(星光PMC(株)製BE7650、コア/シェル比:65/35、粒子径30nm
コア相:塩化ビニル樹脂、シェル相:アクリル樹脂)
界面活性剤(0.5%溶液) 0.2部
熱溶融性物質:固形分として 0.03部
(モンタン酸エステルワックスエマルション)
ジビニルスルホン硬膜剤(5%溶液) 0.8部
水で全量を10部とした。
上記画像形成層塗工液に用いる発色剤混合スラリーは、下記調製方法で予め製造したものを使用した。
<発色剤混合スラリーの調製>
材料a(熱溶融性物質):1,2−ビス(3−メチルフェノキシ)エタン
(三光(株)製:KS−232、融点:98℃)
材料b:4−ヒドロキシ−4′−イソプロポキシジフェニルスルホン
(日本曹達(株)製:D−8、融点:128℃)
材料c:3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン
(山本化成(株)製:ODB2、融点:182℃)
<発色剤混合スラリーの調製>
材料a(熱溶融性物質):1,2−ビス(3−メチルフェノキシ)エタン
(三光(株)製:KS−232、融点:98℃)
材料b:4−ヒドロキシ−4′−イソプロポキシジフェニルスルホン
(日本曹達(株)製:D−8、融点:128℃)
材料c:3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン
(山本化成(株)製:ODB2、融点:182℃)
上記の材料a、b、cを予め、個々に小型ダイノーミル(ビーズミル)でジルコニアビーズを用いて0.7μmまで微分散処理を施し、固形分濃度約30%に調製された分散液をそれぞれ作製し、分散液a、分散液b、分散液cとした。分散液a、bを各々3部に対し、分散液cを1部常温下で混合することで発色剤混合スラリーを調製した。
上記湿分塗布量にて塗布を行った後、直ちに3℃の冷風にて塗膜をゲル化させ、その後30℃の温風にて乾燥を行った。乾燥後、温度40℃/湿度40%に調整された恒温恒湿器を用いて7日間の加温を行うことにより、実施例1の感熱型平版印刷版を得た。
(実施例2)
実施例1の画像形成層(a1)塗工液の作製に用いる塩ビ・アクリルエマルションBE7650をカルボキシル化SBRエマルションであるDIC(株)製ラックスター7132C(45%スラリー、Tg=60℃、粒子径200nm)3.2部に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例2の感熱型平版印刷版を得た。
実施例1の画像形成層(a1)塗工液の作製に用いる塩ビ・アクリルエマルションBE7650をカルボキシル化SBRエマルションであるDIC(株)製ラックスター7132C(45%スラリー、Tg=60℃、粒子径200nm)3.2部に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例2の感熱型平版印刷版を得た。
(実施例3)
実施例1の画像形成層(a1)塗工液、画像形成層(b1)塗工液の作製に用いる塩ビ・アクリルエマルションBE7650を星光PMC(株)製BE7500(Tg=38℃ コア/シェル比:50/50、粒子径70nm、コア相:塩化ビニル樹脂、シェル相:アクリル樹脂)に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例3の感熱型平版印刷版を得た。
実施例1の画像形成層(a1)塗工液、画像形成層(b1)塗工液の作製に用いる塩ビ・アクリルエマルションBE7650を星光PMC(株)製BE7500(Tg=38℃ コア/シェル比:50/50、粒子径70nm、コア相:塩化ビニル樹脂、シェル相:アクリル樹脂)に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例3の感熱型平版印刷版を得た。
(実施例4)
実施例1の画像形成層(a1)塗工液の作製に用いる塩ビ・アクリルエマルションBE7650を添加量2.0部に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例4の感熱型平版印刷版を得た。
実施例1の画像形成層(a1)塗工液の作製に用いる塩ビ・アクリルエマルションBE7650を添加量2.0部に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例4の感熱型平版印刷版を得た。
(実施例5)
実施例1の画像形成層(a1)塗工液、画像形成層(b1)塗工液の作製に用いる塩ビ・アクリルエマルションBE7650を星光PMC(株)製BE7350(Tg=38℃ コア/シェル比:35/65、粒子径50nm、コア相:塩化ビニル樹脂、シェル相:アクリル樹脂)に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例5の感熱型平版印刷版を得た。
実施例1の画像形成層(a1)塗工液、画像形成層(b1)塗工液の作製に用いる塩ビ・アクリルエマルションBE7650を星光PMC(株)製BE7350(Tg=38℃ コア/シェル比:35/65、粒子径50nm、コア相:塩化ビニル樹脂、シェル相:アクリル樹脂)に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例5の感熱型平版印刷版を得た。
(比較例1)
実施例1の画像形成層(a1)塗工液、画像形成層(b1)塗工液の作製に用いる塩ビ・アクリルエマルションBE7650を日信化学工業(株)製塩化ビニルエマルションビニブラン985(Tg=80℃、粒子径70nm)に変更した以外は実施例1と同様にして、比較例1の感熱型平版印刷版を得た。
実施例1の画像形成層(a1)塗工液、画像形成層(b1)塗工液の作製に用いる塩ビ・アクリルエマルションBE7650を日信化学工業(株)製塩化ビニルエマルションビニブラン985(Tg=80℃、粒子径70nm)に変更した以外は実施例1と同様にして、比較例1の感熱型平版印刷版を得た。
(比較例2)
実施例1の画像形成層(a1)塗工液、画像形成層(b1)塗工液の作製に用いる塩ビ・アクリルエマルションBE7650をカルボキシル化SBRエマルションであるDIC(株)製ラックスター7132Cに変更し、それぞれの添加量を画像形成層(a1)塗工液へ3.2部、画像形成層(b1)塗工液へ0.7部に変更した以外は実施例1と同様にして、比較例2の感熱型平版印刷版を得た。
実施例1の画像形成層(a1)塗工液、画像形成層(b1)塗工液の作製に用いる塩ビ・アクリルエマルションBE7650をカルボキシル化SBRエマルションであるDIC(株)製ラックスター7132Cに変更し、それぞれの添加量を画像形成層(a1)塗工液へ3.2部、画像形成層(b1)塗工液へ0.7部に変更した以外は実施例1と同様にして、比較例2の感熱型平版印刷版を得た。
(比較例3)
実施例1の画像形成層(a1)塗工液、画像形成層(b1)塗工液の作製に用いる塩ビ・アクリルエマルションBE7650をコア/シェルエマルションである大成ファインケミカル(株)製SE−953A−2(コア相、シェル相ともにアクリルポリマー、39%スラリー、Tg=75℃、)に変更し、それぞれの添加量を画像形成層(a1)塗工液へ3.2部、画像形成層(b1)塗工液へ0.7部に変更した以外は実施例1と同様にして、比較例3の感熱型平版印刷版を得た。
実施例1の画像形成層(a1)塗工液、画像形成層(b1)塗工液の作製に用いる塩ビ・アクリルエマルションBE7650をコア/シェルエマルションである大成ファインケミカル(株)製SE−953A−2(コア相、シェル相ともにアクリルポリマー、39%スラリー、Tg=75℃、)に変更し、それぞれの添加量を画像形成層(a1)塗工液へ3.2部、画像形成層(b1)塗工液へ0.7部に変更した以外は実施例1と同様にして、比較例3の感熱型平版印刷版を得た。
上記のように作製した実施例1〜5および比較例1〜3の感熱型平版印刷版を、CTP用サーマルデジタルプリンター(三菱製紙(株)製Thermal Digiplater TDP−459:1200dpi/120lpi)を用いて画像出力(記録エネルギー密度70〜100mJ/mm2、電気容量330W)を行い、印刷刷版を作製した。この印刷刷版を用いて以下の方法にて印刷適性の評価を行った。
<耐刷性評価>
印刷機にはリョービイマジクス(株)製のオフセット印刷機RYOBI3200CCDを用い、インキにはDIC(株)製ニューチャンピオン Fグロス墨H、給湿液には三菱製紙(株)製SLM−ODの10%希釈液、給湿液添加剤として三菱製紙(株)製SLM−OA2の2%希釈液を用い、50μm厚みのPETフィルムをプレートと版シリンダーの間に挟み込んだ状態でプレートを装着し印刷を行った。なお印刷は印刷開始直前に三菱製紙(株)製SLM−OD30の25%希釈液を用いてエッチング処理を施し、開始した。耐刷性評価は、印刷物の画像に欠落を生じ印刷できなくなった枚数を以下の評価基準を用いて判定した。この結果を表1に示す。
<耐刷性評価基準>
◎:4,000枚以上
○:3,000枚以上4,000枚未満
△:2,000枚以上3,000枚未満
×:2,000枚未満
印刷機にはリョービイマジクス(株)製のオフセット印刷機RYOBI3200CCDを用い、インキにはDIC(株)製ニューチャンピオン Fグロス墨H、給湿液には三菱製紙(株)製SLM−ODの10%希釈液、給湿液添加剤として三菱製紙(株)製SLM−OA2の2%希釈液を用い、50μm厚みのPETフィルムをプレートと版シリンダーの間に挟み込んだ状態でプレートを装着し印刷を行った。なお印刷は印刷開始直前に三菱製紙(株)製SLM−OD30の25%希釈液を用いてエッチング処理を施し、開始した。耐刷性評価は、印刷物の画像に欠落を生じ印刷できなくなった枚数を以下の評価基準を用いて判定した。この結果を表1に示す。
<耐刷性評価基準>
◎:4,000枚以上
○:3,000枚以上4,000枚未満
△:2,000枚以上3,000枚未満
×:2,000枚未満
<耐汚れ性評価>
インキをDIC(株)製ニューチャンピオンFグロス墨Sに、給湿液とエッチング処理に使用する液を三菱製紙(株)製SLM−ODの0.2%希釈液に変更した以外は、上記耐刷性評価と同様にして3,000枚の印刷を行った。耐汚れ性評価としては、地汚れまたは網絡みが発生し良好な印刷物が得られなくなった枚数を下記の評価基準を用いて判定した。この結果を表1に示す。
<耐汚れ性評価基準>
◎:3,000枚良好
○:2,000枚以上3,000枚未満
△:1,000枚以上2,000枚未満
×:1,000未満
インキをDIC(株)製ニューチャンピオンFグロス墨Sに、給湿液とエッチング処理に使用する液を三菱製紙(株)製SLM−ODの0.2%希釈液に変更した以外は、上記耐刷性評価と同様にして3,000枚の印刷を行った。耐汚れ性評価としては、地汚れまたは網絡みが発生し良好な印刷物が得られなくなった枚数を下記の評価基準を用いて判定した。この結果を表1に示す。
<耐汚れ性評価基準>
◎:3,000枚良好
○:2,000枚以上3,000枚未満
△:1,000枚以上2,000枚未満
×:1,000未満
(実施例6)
両面にラミネート加工が施された厚さ約180μmのポリエチレン樹脂被覆紙の片面に、下記画像形成層(a2)と画像形成層(b2)の塗工液をスライドホッパーコーティング法により、湿分塗布量で画像形成層(a2)を33g/m2、画像形成層(b2)を10g/m2になるように、支持体側から画像形成層(a2)、画像形成層(b2)となるように2層同時塗布を行った。
<画像形成層(a2)塗工液>
ゼラチン 0.8部
ポリビニルアルコール 0.08部
カルボキシル変性スチレン−ブタジエン系共重合体のラテックス 3.2部
(DIC(株)製ラックスター7132C、45%スラリー、Tg=60℃)
界面活性剤(0.5%溶液) 0.4部
ジビニルスルホン硬膜剤(5%溶液) 2.0部
チタンカップリング剤チタンジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)
(マツモトファインケミカル(株)製TC400 80%溶液)
0.1部
発色剤混合スラリー(30%スラリー) 8.4部
水で全量を33部とした。
両面にラミネート加工が施された厚さ約180μmのポリエチレン樹脂被覆紙の片面に、下記画像形成層(a2)と画像形成層(b2)の塗工液をスライドホッパーコーティング法により、湿分塗布量で画像形成層(a2)を33g/m2、画像形成層(b2)を10g/m2になるように、支持体側から画像形成層(a2)、画像形成層(b2)となるように2層同時塗布を行った。
<画像形成層(a2)塗工液>
ゼラチン 0.8部
ポリビニルアルコール 0.08部
カルボキシル変性スチレン−ブタジエン系共重合体のラテックス 3.2部
(DIC(株)製ラックスター7132C、45%スラリー、Tg=60℃)
界面活性剤(0.5%溶液) 0.4部
ジビニルスルホン硬膜剤(5%溶液) 2.0部
チタンカップリング剤チタンジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)
(マツモトファインケミカル(株)製TC400 80%溶液)
0.1部
発色剤混合スラリー(30%スラリー) 8.4部
水で全量を33部とした。
<画像形成層(b2)塗工液>
ゼラチン 0.3部
塩ビ・アクリルエマルション(Tg=51℃、31%スラリー) 1.1部
(星光PMC(株)製BE7650、コア/シェル比:65/35、粒子径30nm
コア相:塩化ビニル樹脂、シェル相:アクリル樹脂)
界面活性剤(0.5%溶液) 0.2部
熱溶融性物質:固形分として 0.03部
(モンタン酸エステルワックスエマルション)
ジビニルスルホン硬膜剤(5%溶液) 0.8部
水で全量を10部とした。
ゼラチン 0.3部
塩ビ・アクリルエマルション(Tg=51℃、31%スラリー) 1.1部
(星光PMC(株)製BE7650、コア/シェル比:65/35、粒子径30nm
コア相:塩化ビニル樹脂、シェル相:アクリル樹脂)
界面活性剤(0.5%溶液) 0.2部
熱溶融性物質:固形分として 0.03部
(モンタン酸エステルワックスエマルション)
ジビニルスルホン硬膜剤(5%溶液) 0.8部
水で全量を10部とした。
上記画像形成層塗工液に用いる発色剤混合スラリーは、下記調製方法で予め製造したものを使用した。
<発色剤混合スラリーの調製>
材料a(熱溶融性物質):1,2−ビス(3−メチルフェノキシ)エタン
(三光(株)製:KS−232、融点:98℃)
材料b:4−ヒドロキシ−4′−イソプロポキシジフェニルスルホン
(日本曹達(株)製:D−8、融点:128℃)
材料c:3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン
(山本化成(株)製:ODB2、融点:182℃)
<発色剤混合スラリーの調製>
材料a(熱溶融性物質):1,2−ビス(3−メチルフェノキシ)エタン
(三光(株)製:KS−232、融点:98℃)
材料b:4−ヒドロキシ−4′−イソプロポキシジフェニルスルホン
(日本曹達(株)製:D−8、融点:128℃)
材料c:3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン
(山本化成(株)製:ODB2、融点:182℃)
上記の材料a、b、cを予め、個々に小型ダイノーミル(ビーズミル)でジルコニアビーズを用いて0.7μmまで微分散処理を施し、固形分濃度約30%に調製された分散液をそれぞれ作製し、分散液a、分散液b、分散液cとした。分散液a、bを各々3部に対し、分散液cを1部常温下で混合することで発色剤混合スラリーを調製した。
上記湿分塗布量にて塗布を行った後、直ちに3℃の冷風にて塗膜をゲル化させ、その後30℃の温風にて乾燥を行った。乾燥後、温度40℃/湿度40%に調整された恒温恒湿器を用いて7日間の加温を行うことにより、実施例6の感熱型平版印刷版を得た。
(実施例7)
実施例6の画像形成層(a2)塗工液の作製に用いるカルボキシル変性スチレン−ブタジエン系共重合体ラックスター7132Cを塩ビ・アクリルエマルションBE7650 4.8部に変更した以外は実施例6と同様にして、実施例7の感熱型平版印刷版を得た。
実施例6の画像形成層(a2)塗工液の作製に用いるカルボキシル変性スチレン−ブタジエン系共重合体ラックスター7132Cを塩ビ・アクリルエマルションBE7650 4.8部に変更した以外は実施例6と同様にして、実施例7の感熱型平版印刷版を得た。
(実施例8)
実施例7の画像形成層(a2)塗工液、画像形成層(b2)塗工液の作製に用いる塩ビ・アクリルエマルションBE7650を星光PMC(株)製BE7500(Tg=38℃ コア/シェル比:50/50、粒子径70nm、コア相:塩化ビニル樹脂、シェル相:アクリル樹脂)に変更した以外は実施例7と同様にして、実施例8の感熱型平版印刷版を得た。
実施例7の画像形成層(a2)塗工液、画像形成層(b2)塗工液の作製に用いる塩ビ・アクリルエマルションBE7650を星光PMC(株)製BE7500(Tg=38℃ コア/シェル比:50/50、粒子径70nm、コア相:塩化ビニル樹脂、シェル相:アクリル樹脂)に変更した以外は実施例7と同様にして、実施例8の感熱型平版印刷版を得た。
上記のように作製した実施例6〜8の感熱型平版印刷版を、CTP用サーマルデジタルプリンター(三菱製紙(株)製Thermal Digiplater TDP−459:1200dpi/120lpi)を用いて画像出力(記録エネルギー密度70〜100mJ/mm2、電気容量330W)を行い、印刷刷版を作製した。この印刷刷版を用いて、先に示した耐刷性評価および耐汚れ性評価と同様の方法にて、耐刷性と耐汚れ性について評価した。この結果を表2に示す。
<保存性評価>
実施例6〜8の感熱型平版印刷版を、それぞれ50℃の加温条件下で10日間保管した後、前記したCTP用サーマルデジタルプリンターを用いて同様に画像出力を行い、印刷刷版を作製した。この印刷刷版を用いて、先に示した耐汚れ性評価と同様の方法にて耐汚れ性を評価した。この結果を表2に示す。
実施例6〜8の感熱型平版印刷版を、それぞれ50℃の加温条件下で10日間保管した後、前記したCTP用サーマルデジタルプリンターを用いて同様に画像出力を行い、印刷刷版を作製した。この印刷刷版を用いて、先に示した耐汚れ性評価と同様の方法にて耐汚れ性を評価した。この結果を表2に示す。
表2に示す結果から判るように、画像形成層がさらにチタンカップリング剤を含有することによって、耐刷性と耐汚れ性に加え、高温環境下で保存した際の保存性にとりわけ優れた感熱型平版印刷版が得られることが判る。
Claims (2)
- 支持体上に熱可塑性樹脂および水溶性高分子化合物を含有する画像形成層を有し、熱可塑性樹脂はコア/シェル構造を有し、コア相が塩化ビニル樹脂を含有し、シェル相がアクリル酸及びその誘導体から選ばれる少なくとも一種をモノマー成分とする重合体を含有することを特徴とする感熱型平版印刷版。
- 該画像形成層がさらにチタンカップリング剤を含有する前記請求項1に記載の感熱型平版印刷版。
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