以下、本発明の一実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
図1は車両に搭載されるリヤワイパモータの斜視図を、図2は図1のリヤワイパモータの内部構造を示す平面図を、図3はモータケースの詳細構造を示す斜視図を、図4はアーマチュアアッシーの詳細構造を示す斜視図を、図5はギヤケースの詳細構造を示す斜視図を、図6は図5の破線円A部の拡大図を、図7はギヤケースの開口部分のうちの主要部を拡大した平面図を、図8はコネクタユニットを表側から見た斜視図を、図9はコネクタユニットを裏側から見た斜視図を、図10はリヤワイパモータの組み立て手順を説明する説明図をそれぞれ示している。
図1に示されるように、リヤワイパモータ(モータ装置)10は、車両のリヤハッチに搭載されるリヤワイパ装置(図示せず)の駆動源に用いられるもので、モータ部20およびギヤ部30を備えている。これらのモータ部20およびギヤ部30は、ギヤケース31のフランジ部34c(図5参照)に、モータケース21の係合爪21f(図3参照)を引っ掛けることで、互いに強固に固定されている。なお、ギヤケース31とモータケース21とを、互いに固定ねじにより固定しても良い。
ギヤ部30は、ブラケットカバー60を備えており、当該ブラケットカバー60は、ギヤケース31に対して4つの固定ねじ11により固定されている。これによりリヤワイパモータ10は、ブラケットカバー60によりリヤハッチ内の幅狭空間に固定される。そして、リヤワイパモータ10を回転駆動することで、リヤガラス上に設けられたワイパブレード(図示せず)が、所定の角度範囲で往復払拭動作(揺動駆動)される。
図2および図3に示されるように、モータ部20は、鋼板をプレス加工等して有底筒状に形成されたモータケース21を備えている。つまり、モータケース21は、底部21aと開口部21bとを有している。
また、モータケース21は、図中Z軸方向(高さ方向)で互いに対向配置された一対の平面部21cを備え、これらの平面部21cの間には、図中Y軸方向(幅方向)で互いに対向配置された一対の円弧部21dが設けられている。すなわち、モータケース21の断面形状は、略小判形状に形成されている。これにより、モータケース21の高さ方向(Z軸方向)に沿う厚み寸法が詰められて、リヤワイパモータ10の薄型化を実現している。
さらに、モータケース21の開口部21b側には、一対のフランジ部21eが設けられている。これらのフランジ部21eは、一対の円弧部21dが設けられた部分に対応して配置され、幅方向(Y軸方向)にそれぞれ突出されている。そして、これらのフランジ部21eの先端側には、ギヤケース31のフランジ部34c(図5参照)に引っ掛けられる係合爪21fが設けられている。
また、モータケース21の幅方向に沿う一対のフランジ部21eの間には、ギヤケース31側、つまり図中X軸方向(長さ方向)に突出された一対の位置決め突起21gが設けられている。これらの位置決め突起21gのうちの一方が、ギヤケース31に設けられた位置決め凹部34d(図5参照)に入り込み、モータケース21のギヤケース31に対する位置決めがなされる。
図2に示されるように、モータケース21内には、断面が略円弧形状に形成された合計4つのマグネット22(図示では2つのみを示す)が固定されている。これらのマグネット22は、例えばフェライト磁石であって、モータケース21の周方向に沿ってそれぞれ等間隔(90度間隔)で固定されている。
図2および図4に示されるように、各マグネット22の径方向内側には、アーマチュアアッシー23が回転自在に収容されている。このアーマチュアアッシー23は、各マグネット22の径方向内側で回転されるアーマチュアコア23aを備えている。そして、アーマチュアコア23aの回転中心には、アーマチュア軸(回転軸)23bの長手方向基端側が固定されている。
アーマチュア軸23bの長手方向中央部分には、アーマチュアコア23aに近接して配置されたコンミテータ(整流子)23cが固定されている。コンミテータ23cは、合計10個のセグメントSGを備えている。これに対し、アーマチュアコア23aには、合計10個のスロットSLが設けられ、これらのスロットSLには、所定の巻き方および所定の巻数でコイル(導線)23dが巻装されている。コイル23dの端部は、各セグメントSGにそれぞれ電気的に接続されている。
そして、コンミテータ23cの周囲には、一対のブラシ24(図2では1つのみを示す)が摺接するようになっている。これらのブラシ24は、ギヤケース31のブラシホルダ収容部34(図6および図7参照)に収容された一対のブラシホルダ56(図9参照)に、それぞれ移動自在に設けられている。そして、一対のブラシ24には、車両側の電源等から駆動電流が供給され、コンミテータ23cを介してコイル23dに駆動電流が流れる。これにより、アーマチュアコア23aに電磁力が発生し、アーマチュア軸23bが所定の回転方向に所定の回転速度で回転される。
このように、本実施の形態では、モータ部20は、2ブラシ4極10スロットのDC(直流)モータとなっている。ただし、モータ部20の極数やスロット数等は、上述の実施の形態で示した数に限らず、リヤワイパモータ10に必要とされるトルク特性等(仕様等)に応じて、任意に変更することができる。
アーマチュア軸23bの長手方向基端側は、モータケース21の底部21aに設けられたラジアル軸受25のみにより回転自在に支持されている。つまり、アーマチュア軸23bの長手方向基端側と、モータケース21の底部21aとの間には、アーマチュア軸23bをその軸方向から支持するスラスト軸受が設けられていない。なお、ラジアル軸受25は、例えば、燒結材により略円筒形状に形成され、これにより低騒音かつ耐衝撃性および自己潤滑性を備え、さらには摩耗粉が発生し難くなっている。ただし、ラジアル軸受25は、焼結材に換えて耐熱性に優れたプラスチック材料等により形成しても良い。
アーマチュア軸23bの長手方向先端側には、転造加工等によりウォームギヤ(ギヤ)23eが一体に設けられ、当該ウォームギヤ23eは、アーマチュア軸23bの回転に伴いギヤケース31内で回転される。ウォームギヤ23eは螺旋状に形成され、ウォームホイール36のギヤ歯36a(図2参照)に噛み合わされている。ここで、ウォームギヤ23eおよびウォームホイール36は、減速機構を形成している。ウォームホイール36は、ウォームギヤ23e(アーマチュア軸23b)の回転に伴い、当該ウォームギヤ23eよりも減速状態で回転され、減速して高トルク化された回転力を出力軸37(図1参照)に伝達する。
アーマチュア軸23bのウォームギヤ23eとコンミテータ23cとの間には、ボールベアリング(軸受部材)26が設けられている。より具体的には、ボールベアリング26は、内輪26a,外輪26bおよび鋼球(図示せず)を備えており、内輪26aがアーマチュア軸23bに圧入により固定されている。これに対し、外輪26bは、ギヤケース31のベアリング収容部33(図6参照)に嵌合され、かつコネクタユニット50のベアリング押さえ部54(図8参照)により、その軸方向から支持されている。すなわち、ボールベアリング26の外輪26bは、ギヤケース31とコネクタユニット50との間に挟持されている。
このようにボールベアリング26を、アーマチュア軸23bに固定しつつ、ギヤケース31のベアリング収容部33に固定することで、アーマチュア軸23bは、ギヤケース31に対して軸方向および径方向への移動が規制された状態で、ギヤケース31に回転自在に支持される。よって、ボールベアリング26は、ラジアル軸受けおよびスラスト軸受としての機能を備えている。そのため、アーマチュア軸23bの先端側とギヤケース31との間においても、アーマチュア軸23bをその軸方向から支持するスラスト軸受が設けられていない。
ここで、リヤワイパモータ10は、小型の4極モータのため、例えば同じ出力の大型の2極モータに比して発熱量が多くなる。しかしながら、リヤワイパモータ10では、アーマチュア軸23bの軸方向両側にスラスト軸受を設けていない。したがって、その分、アーマチュア軸23bの摺動ロス、つまりスラスト軸受との摩擦抵抗を無くして、余計な発熱量の増大を抑えている。
ギヤ部30は、図5に示されるように、プラスチック等の樹脂材料により略バスタブ形状に形成されたギヤケース31を備えている。ギヤケース31には、底壁部(底壁)31aおよびそれを取り囲むようにして側壁部31bが設けられている。そして、ギヤケース31の深さ方向に沿う底壁部31a側とは反対側には、開口部31cが設けられている。なお、ギヤケース31の殆どの部分を、減速機構収容部32が占めている。ここで、減速機構収容部32には、ウォームホイール36や運動変換機構40等(図2参照)が、開口部31cから所定の順番で収容される。そして、開口部31cは、ブラケットカバー60(図1参照)により閉塞される。
図5ないし図7に示されるように、ギヤケース31のX軸方向に沿う減速機構収容部32とフランジ部34cとの間で、かつ減速機構収容部32寄りの部分には、ベアリング収容部33が設けられている。ベアリング収容部33は、本発明における第1収容部を構成しており、X軸方向に沿うフランジ部34c側に向けて開口されている。これにより、ベアリング収容部33には、X軸方向に沿うモータケース21側(図7中右側)から、ボールベアリング26の外輪26b(図4参照)が嵌合されるようになっている。
また、ベアリング収容部33には、アーマチュア軸23bの軸方向と交差する方向(Z軸方向)に開口された切り欠き溝33aが設けられている。この切り欠き溝33aの開口方向は、ギヤケース31の底壁部31aに対して垂直方向とされ、開口部31cに向けられている。そして、図6に示されるように、切り欠き溝33aの幅寸法(開口幅)W1は、アーマチュア軸23bの直径寸法D(図4参照)よりも大きい寸法に設定されている(W1>D)。これにより、アーマチュア軸23bは、切り欠き溝33a内で、当該切り欠き溝33aに接触すること無く、スムーズに回転可能となっている。
また、切り欠き溝33aの開口方向を、開口部31c側に向けているので、リヤワイパモータ10の組み立て時において、アーマチュア軸23bをZ軸方向から、つまり開口部31cから組み付けられるようになっている。具体的には、リヤワイパモータ10の組み立て時において、アーマチュア軸23bの軸方向に沿うウォームギヤ23eとボールベアリング26との間の挿通部23f(図4参照)を、切り欠き溝33aに挿通させるようにする。ここで、切り欠き溝33aの幅寸法W1は、アーマチュア軸23bの直径寸法が最も大きい部分より大きく設定しても良いし、少なくとも挿通部23fの直径寸法より大きくなるように設定されていても良い。なお、リヤワイパモータ10の組み立て手順については後述する。
さらに、図5ないし図7に示されるように、ギヤケース31のモータケース21側(フランジ部34c側)には、ブラシホルダ収容部34が一体に設けられている。ブラシホルダ収容部34は、本発明における第2収容部を構成しており、アーマチュア軸23bの軸方向(X軸方向)と交差する方向(Z軸方向)に沿う断面が略U字形状に形成されている。
これにより、ブラシホルダ収容部34は、減速機構収容部32と同様に開口部31cに向けて開口されている。すなわち、ブラシホルダ収容部34の開口方向は、ギヤケース31の底壁部31aに対して垂直方向とされる。よって、リヤワイパモータ10の組み立て時において、一対のブラシホルダ56(図9参照)を、開口部31cからブラシホルダ収容部34に収容することができる。
ブラシホルダ収容部34は、アーマチュア軸23bの軸方向に、所定の長さで延在されている。より具体的には、ブラシホルダ収容部34のアーマチュア軸23bの軸方向に沿う長さ寸法は、ベアリング収容部33の軸方向に沿う長さ寸法の略3倍となっている。これにより、コネクタユニット50から軸方向に突出された一対のブラシホルダ56やその周辺に配置されたピグテールPT,サーキットブレーカCB等(図9参照)を、余裕を持って収容することができる。
また、ブラシホルダ収容部34は、互いに対向配置された一対の円弧状壁部34aと、これらの円弧状壁部34a間を連結する1つの平板状壁部34bと、を備えている。これにより、断面が略小判形状に形成されたモータケース21を、アーマチュア軸23bの軸方向から突き当てられるようにしている。
ブラシホルダ収容部34の軸方向に沿うモータケース21側には、一対のフランジ部34cが設けられている。これらのフランジ部34cは、ブラシホルダ収容部34の径方向外側に突出され、かつ一対の円弧状壁部34aが設けられた部分に対応して配置されている。そして、これらのフランジ部34cには、モータケース21の係合爪21f(図3参照)が引っ掛けられるようになっている。これにより、モータケース21とギヤケース31とが、アーマチュア軸23bの軸方向に対して、互いに相対移動不能に連結される。
さらに、ブラシホルダ収容部34の軸方向に沿うモータケース21側で、かつ一対のフランジ部34cの間には、モータケース21をギヤケース31に対して正規に位置決めする位置決め凹部34dが設けられている。位置決め凹部34dは、平板状壁部34bに設けられ、かつベアリング収容部33側に窪んでいる。これにより、一対のフランジ部34cに一対の係合爪21fをそれぞれ引っ掛けた状態において、一対の位置決め突起21g(図3参照)のうちの一方が、位置決め凹部34dに入り込む。
また、図5ないし図7に示されるように、ギヤケース31のベアリング収容部33とブラシホルダ収容部34との間には、コネクタユニット収容部35が設けられている。コネクタユニット収容部35は、本発明における第3収容部を構成しており、以下に示すように、大きく分けて3つの収容部から形成されている。
具体的には、図7に示されるように、ギヤケース31の幅方向(Y軸方向)に延在され、コネクタユニット50の本体部51(図8参照)収容する本体収容部35aを備えている。また、本体収容部35aの長手方向端部に設けられ、アーマチュア軸23bの軸方向(X軸方向)に沿う長さ寸法が本体収容部35aよりも長い長さ寸法とされ、かつコネクタユニット50のコネクタ接続部52を収容するコネクタ収容部35bを備えている。さらに、本体収容部35aのベアリング収容部33側に設けられ、アーマチュア軸23bの軸方向に沿う長さ寸法が本体収容部35aよりも短い長さ寸法とされ、かつコネクタユニット50のベアリング押さえ部54を収容するベアリング押さえ収容部35cを備えている。
そして、コネクタユニット収容部35においても、減速機構収容部32と同様に開口部31cに向けて開口されている。すなわち、コネクタユニット収容部35の開口方向は、ギヤケース31の底壁部31aに対して垂直方向とされる。
このように、ベアリング収容部33の一部である切り欠き溝33a,ブラシホルダ収容部34,コネクタユニット収容部35は、いずれも減速機構収容部32と同様に開口部31cに向けて開口されている。これにより、ギヤケース31内に収容される種々の部品(ウォームホイール36やコネクタユニット50等)を、同じ方向から(開口部31c側から)収容可能となっている。ここで、図7では、切り欠き溝33a,ブラシホルダ収容部34,コネクタユニット収容部35の開口状態を判り易くするために、それらの開口部分に網掛けを施している。
ここで、図2に示されるように、減速機構収容部32内には、ウォームホイール(ギヤ)36が回転自在に収容されている。ウォームホイール36は、プラスチック等の樹脂材料により略円盤状に形成されている。ウォームホイール36の外周部分にはギヤ歯36aが一体に設けられ、当該ギヤ歯36aには、ウォームギヤ23eが噛み合わされている。ウォームホイール36の回転中心には、断面が円形の鋼棒よりなるホイール軸36bの軸方向一端側が、回転自在に設けられている。ホイール軸36bの軸方向他端側は、ギヤケース31の底壁部31a(図5参照)に固定されている。
なお、ウォームホイール36の底壁部31a側には、スイッチングプレート(図示せず)が装着されており、このスイッチングプレートには、コネクタユニット50に設けられた一対のコンタクトプレートCP1,CP2(図8参照)の先端側が摺接される。これにより、各コンタクトプレートCP1,CP2の短絡状態や非短絡状態が、車載コントローラ(図示せず)に送られる。よって、車載コントローラは、ウォームホイール36の回転状態、つまりワイパブレードの揺動位置を検出して、ワイパブレードを所定の停止位置に停止させる。
ギヤケース31のウォームホイール36の近傍には、断面が円形の鋼棒よりなる出力軸37が設けられている。出力軸37は、ギヤケース31の底壁部31aに設けられたボス部31d(図10参照)に回転自在に支持されている。出力軸37の基端側はギヤケース31内に配置され、出力軸37の先端側はギヤケース31の外部に延出されている。そして、出力軸37の外部に延出された延出部分(図1参照)には、ワイパアーム(図示せず)の基端部が固定されている。
ギヤケース31内で、ウォームホイール36と出力軸37との間には、ウォームホイール36の回転運動を出力軸37の揺動運動に変換する運動変換機構40が設けられている。運動変換機構40は、ピニオンギヤ41,運動変換部材42,連結板43および摺接板44を備えている。ピニオンギヤ41は出力軸37の基端側に固定され、出力軸37とともに揺動される。
運動変換部材42は、ピニオンギヤ41と噛み合うセクタギヤ42aと、第1連結ピンP1を介してウォームホイール36の偏心位置に回転自在に連結されたアーム部42bとを備えている。セクタギヤ42aの中心部分には第2連結ピンP2が設けられ、当該第2連結ピンP2と出力軸37との間には、連結板43が設けられている。具体的には、連結板43の長手方向一側は出力軸37の基端側に回転自在に連結され、連結板43の長手方向他側は第2連結ピンP2に回転自在に連結されている。
このように、本実施の形態に係る連結板43は、出力軸37と第2連結ピンP2との距離を一定に保ち、ピニオンギヤ41とセクタギヤ42aとの噛み合いを保持している。
次に、運動変換機構40の動作について述べる。ウォームホイール36の回転に伴い第1連結ピンP1がホイール軸36bを中心に回転すると、運動変換部材42のアーム部42bもホイール軸36bを中心に回転する。これにより、セクタギヤ42aが第2連結ピンP2を中心に揺動されて、その結果、セクタギヤ42aに噛み合わされたピニオンギヤ41(出力軸37)が揺動される。
図8および図9に示されるように、コネクタユニット50は、プラスチック等の樹脂材料を射出成形することで所定形状に形成され、略板状に形成された本体部51を備えている。本体部51は、図2および図7に示されるように、ギヤケース31の本体収容部35aに収容された状態で、ギヤケース31の幅方向(Y軸方向)に延在されている。
また、本体部51の長手方向一側(図8および図9の右側)には、有底の略箱形状に形成されたコネクタ接続部52が一体に設けられている。そして、コネクタ接続部52は、ギヤケース31のコネクタ収容部35b(図7参照)に収容される。ここで、コネクタユニット50のギヤケース31への組み付け時において、コネクタ接続部52の開口方向が、ギヤケース31の開口部31cの開口方向と同じ方向を向くようにする。
コネクタ接続部52には、車両側の外部コネクタ(図示せず)が接続されるようになっている。コネクタ接続部52内には、外部コネクタのメス型端子(図示せず)に電気的に接続される3つのオス型端子TM1,TM2,TM3の一端側が配置されている(図2および図9参照)。そして、これらのオス型端子TM1,TM2,TM3の他端側は、コネクタ接続部52外に引き出され、本体部51に装着された3つのジャンパー線JP1,JP2,JP3の一端側に溶接等により電気的に接続されている。なお、各ジャンパー線JP1,JP2,JP3の他端側は、ブラシホルダ56の部分およびコンタクトプレート支持部53の部分にまで延在されている。
さらに、本体部51の長手方向他側(図8および図9の左側)には、コンタクトプレート支持部53が一体に設けられている。このコンタクトプレート支持部53は、本体部51の厚み方向(アーマチュア軸23bの軸方向)に突出されている。コンタクトプレート支持部53には、略L字形状に屈曲された一対のコンタクトプレートCP1,CP2が装着されている。なお、これらのコンタクトプレートCP1,CP2は、導電性に優れた黄銅等により板状に形成されている。なお、図8および図9では、電子部品を含む導電部材の配置関係を判り易くするために、導電部材(電流を通す部品)に網掛けを施している。
そして、各コンタクトプレートCP1,CP2の基端側は、それぞれ本体部51の短手方向一側(図8中下側,図9中上側)から、コンタクトプレート支持部53に装着される。一方、各コンタクトプレートCP1,CP2の先端側は、図2に示されるように、リヤワイパモータ10を組み立てた状態で、ウォームホイール36の底壁部31a側に装着されたスイッチングプレート(図示せず)に摺接される。
図8および図9に示されるように、本体部51の長手方向に沿う略中央部分には、アーマチュア軸23b(図2および図4参照)が貫通する貫通孔51aが設けられている。貫通孔51aは、本体部51の厚み方向(X軸方向)に貫通しており、当該貫通孔51aの内径寸法は、アーマチュア軸23bの直径寸法Dよりも十分に大きい寸法とされる。これにより、リヤワイパモータ10の作動時において、アーマチュア軸23bが本体部51に接触することが無い。
貫通孔51aの軸方向に沿う各コンタクトプレートCP1,CP2の先端側が突出された側には、図8に示されるように、ベアリング押さえ部(軸受支持部)54が一体に設けられている。ベアリング押さえ部54は、貫通孔51aの軸方向(X軸方向)に突出されており、リヤワイパモータ10を組み立てた状態で、ベアリング押さえ収容部35c(図7参照)に収容される。そして、ベアリング押さえ部54の端面54aは、ギヤケース31のベアリング収容部33(図6参照)に嵌合された外輪26b(図4参照)を、軸方向から支持するようになっている。
これにより、ベアリング収容部33からボールベアリング26が脱落することが防止される。ここで、外輪26bは、樹脂製のギヤケース31と、樹脂製のコネクタユニット50との間に保持されている。したがって、ギヤケース31内でのがたつきが抑えられて、静粛性の向上が図られる。
また、図8および図9に示されるように、本体部51およびベアリング押さえ部54には、開口55が設けられている。この開口55は、本体部51の短手方向に沿う各ジャンパー線JP1,JP2,JP3が設けられた側とは反対側に配置されている。ここで、開口55および貫通孔51aは、本発明における切り欠き部を構成し、本体部51の短手方向(Z軸方向)に延在されている。開口55および貫通孔51aよりなる切り欠き部COの長手方向に沿う開口側(開口55側)は、リヤワイパモータ10を組み立てた状態で、ギヤケース31の底壁部31aに向けられる。
そして、開口55の幅寸法(開口幅)W2は、アーマチュア軸23bの直径寸法Dよりも大きい幅寸法に設定されている(W2>D)。これにより、開口55および貫通孔51aよりなる切り欠き部COには、アーマチュア軸23b(図2および図4参照)が、その軸方向と交差する方向(径方向)から挿通可能となっている。
貫通孔51aの軸方向に沿う各コンタクトプレートCP1,CP2の先端側が突出された側とは反対側には、図9に示されるように、一対のブラシホルダ56が設けられている。これらのブラシホルダ56には、コンミテータ23cに摺接されるブラシ24が移動自在に設けられ、各ブラシホルダ56は、コネクタユニット50を射出成形する際に一体成形される。すなわち、各ブラシホルダ56およびコネクタユニット50は一体成形品となっている。
各ブラシホルダ56は、コネクタユニット50の開口55とアーマチュア軸23bに対して反対側に配置されている。つまり、各ブラシホルダ56は、本体部51の短手方向に沿う各ジャンパー線JP1,JP2,JP3が設けられた側(図8中上側)に配置されている。各ブラシホルダ56は、切り欠き部COの底側(図9中下側)でかつ貫通孔51aの周囲に90度間隔でそれぞれ配置されている。これにより、一対のブラシ24は、コンミテータ23c(図4参照)の周囲に90度間隔でそれぞれ配置されることになる。
また、本体部51の各ブラシホルダ56の近傍には、平板状に形成されたサーキットブレーカCBが配置されている。サーキットブレーカCBは、例えば、リヤワイパモータ10への負荷が大きくなって、コイル23d(図2参照)が焼損する等の不具合を無くすものである。つまり、リヤワイパモータ10の電気回路を保護する電子部品として機能する。そして、一方のブラシ24とサーキットブレーカCBとの間に、一方のピグテールPTが設けられ、他方のブラシ24とジャンパー線JP3の他端側との間に、他方のピグテールPTが設けられている。
ここで、ピグテールPTは、柔軟性に優れた導電部材よりなり、各ブラシ24の移動(摩耗)に対して容易に追従可能としている。また、図8および図9の網掛け部分に示された3つのオス型端子TM1,TM2,TM3,3つのジャンパー線JP1,JP2,JP3,一対のコンタクトプレートCP1,CP2,一対のブラシ24,一対のピグテールPT,サーキットブレーカCBは、本発明における導電部材を構成している。
ここで、ブラケットカバー60は、図1に示されるように、鋼板をプレス加工等することで所定形状に形成され、カバー本体61と3つの固定脚62とを備えている。カバー本体61は、ギヤケース31の開口部31c(図2参照)を閉塞するものである。具体的には、カバー本体61は、減速機構収容部32,ベアリング収容部33,ブラシホルダ収容部34,コネクタユニット収容部35(図7参照)の全てを閉塞する。また、カバー本体61は、ギヤケース31の底壁部31a(図7参照)との間で、コネクタユニット50を挟持する。さらに、カバー本体61の内側には、運動変換機構40の摺接板44(図2参照)が摺接するようになっている。
3つの固定脚62は、カバー本体61の周囲からその外周側に突出されており、各固定脚62には、略C字形状に形成されたボルト装着部62aがそれぞれ設けられている。これらのボルト装着部62aには、リヤワイパモータ10をリヤハッチ等に固定するための固定ボルト(図示せず)が、ゴムブッシュ(図示せず)を介して装着される。これにより、リヤワイパモータ10の振動が車両に伝わり難くなっている。
次に、以上のように形成したリヤワイパモータ10の組立手順、特に、アーマチュアアッシー23(図4参照)およびコネクタユニット50(図8,図9参照)のギヤケース31への組み付け手順について、図面を用いて詳細に説明する。
まず、図10に示されるように、別の製造工程でそれぞれ製造された、ギヤケース31,アーマチュアアッシー23,コネクタユニット50およびその他の部品(ウォームホイール36や運動変換機構40等)を準備する。
[第1工程]
次に、アーマチュアアッシー23を、ギヤケース31における開口部31cの上方に臨ませる。このとき、アーマチュア軸23bの軸方向(X軸方向)に沿うウォームギヤ23e側を、減速機構収容部32の上方に配置させるようにする。その後、アーマチュアアッシー23を、ギヤケース31の開口部31cに向けて移動させる。つまり、図10の破線矢印(1)に示されるように、ギヤケース31の底壁部31aに向けて、アーマチュアアッシー23を真っ直ぐに下降させる。
そして、アーマチュア軸23bの挿通部23f(図4参照)を、ベアリング収容部33の切り欠き溝33aに臨ませる。具体的には、アーマチュア軸23bの挿通部23fを、切り欠き溝33aに対して、アーマチュア軸23bの軸方向と交差する方向(Z軸方向)から通過させる。
その後、アーマチュアアッシー23の軸心と、ベアリング収容部33の軸心とが一致したところで、図10の破線矢印(2)に示されるように、アーマチュアアッシー23を軸方向に移動させる。具体的には、アーマチュアアッシー23を減速機構収容部32に向けて所定圧で押し付ける。これにより、アーマチュアアッシー23に装着されたボールベアリング26の外輪26bが、ベアリング収容部33に嵌合される。
これにより、アーマチュア軸23bの軸方向(X軸方向)から、ボールベアリング26がベアリング収容部33に収容されて「第1工程」が完了する。
[第2工程]
次に、コネクタユニット50を、ギヤケース31における開口部31cの上方に臨ませる。このとき、コネクタユニット50の厚み方向に沿うベアリング押さえ部54がある側(図10中奥側)を減速機構収容部32側に向け、ブラシホルダ56がある側(図10中手前側)を減速機構収容部32側とは反対側に向ける。
また、コネクタユニット50に設けられた切り欠き部COの開口側、つまり開口55がある側を、アーマチュアアッシー23の上方に対向させるようにする。より具体的には、コネクタユニット50の開口55を、アーマチュア軸23bのコンミテータ23cとボールベアリング26との間に配置されるようにする。
その後、コネクタユニット50を、ギヤケース31の開口部31cに向けて移動させる。すなわち、図10の破線矢印(3)に示されるように、ギヤケース31の底壁部31aに向けて、コネクタユニット50を真っ直ぐに下降させる。このとき、各ブラシホルダ56はコネクタユニット50の開口55とアーマチュア軸23bに対して反対側に設けられている。より具体的には、各ブラシホルダ56は、アーマチュア軸23bの軸中心よりもブラケットカバー60側に設けられている。このため、ブラシホルダ56およびブラシ24とコンミテータ23cとの接触によりコネクタユニット50の組み付けが妨げられることがない。なお、各ブラシホルダ56のうちの少なくとも1つが開口55と反対側に設けられていれば、コネクタユニット50の下降時にコンミテータ23cと接触する虞のあるブラシホルダ56およびブラシ24の数が減るため、組み付け性が向上する。
すると、コネクタユニット50の、本体部51がギヤケース31の本体収容部35a(図7参照)に収容され、コネクタ接続部52がコネクタ収容部35b(図7参照)に収容され、ベアリング押さえ部54がベアリング押さえ収容部35c(図7参照)に収容され、一対のブラシホルダ56やサーキットブレーカCB等がブラシホルダ収容部34(図7参照)に収容される。このように、コネクタユニット50のそれぞれの部分の所定箇所への収容動作は、1回の動作で一度に行われる。
そして、コネクタユニット50をギヤケース31に装着することで、アーマチュアアッシー23におけるボールベアリング26の外輪26bが、ギヤケース31とコネクタユニット50との間に挟持され、ひいてはアーマチュアアッシー23のギヤケース31に対する軸方向への移動が規制される(固定される)。また、一対のブラシ24(図9参照)が、アーマチュアアッシー23のコンミテータ23cの周囲に当接される。
これにより、アーマチュア軸23bの軸方向(X軸方向)と交差する方向(Z軸方向)から、ブラシホルダ56およびコネクタユニット50がブラシホルダ収容部34およびコネクタユニット収容部35にそれぞれ収容されて「第2工程」が完了する。
その後、減速機構収容部32内に、ウォームホイール36や運動変換機構40等の他の部品(図2参照)を収容し、ブラケットカバー60(図1参照)を装着する。さらに、内部にマグネット22が装着されたモータケース21(図2参照)を準備するとともに、モータケース21の係合爪21f(図3参照)を、ギヤケース31のフランジ部34c(図5参照)に引っ掛ける。これにより、リヤワイパモータ10の組み立てが完了する。
以上詳述したように、本実施の形態によれば、ギヤケース31に、ボールベアリング26を収容するベアリング収容部33,一対のブラシホルダ56を収容するブラシホルダ収容部34,コネクタユニット50を収容するコネクタユニット収容部35と、が設けられ、これらの収容部33,34,35を、アーマチュア軸23bの軸方向(X軸方向)と交差する方向(Z軸方向)に開口させた。
これにより、ギヤケース31に対して、ウォームホイール36等の装着方向と同じ方向から、アーマチュアアッシー23,一対のブラシホルダ56およびコネクタユニット50を装着することができる。したがって、組み立て工程の簡素化を図ることができ、自動組み立て装置でも容易に組み立てられるようになる。
また、複数の収容部33,34,35を、アーマチュア軸23bの軸方向と交差する方向に開口させたので、リヤワイパモータ10の組み立て時において、アーマチュアアッシー23の軸方向への移動量を、従前に比して大幅に少なくすることができる。より具体的には、ボールベアリング26をベアリング収容部33に収容させるだけの移動量、つまりボールベアリング26の軸方向に沿う厚み寸法のみの移動量で済む(図10の破線矢印(2)参照)。よって、リヤワイパモータ10の組み立て性が大幅に向上する。
さらに、複数の収容部33,34,35を、アーマチュア軸23bの軸方向と交差する方向に開口させたので、ギヤケース31を樹脂製としても、一対のブラシホルダ56等の放熱性を十分に確保することができる。よって、リヤワイパモータ10をより軽量化することが可能となる。
また、本実施の形態によれば、複数の収容部33,34,35の開口方向を、ギヤケース31の底壁部31aに対して垂直方向としたので、ギヤケース31の比較的大きい開口部31cの上方から、アーマチュアアッシー23,一対のブラシホルダ56,コネクタユニット50を組み付けることができる。よって、自動組み立て装置で、より容易に組み立てることができる。
さらに、本実施の形態によれば、一対のブラシホルダ56およびコネクタユニット50を一体成形品としたので、これらのギヤケース31に対する収容動作を、1回の動作で一度に行うことができる。よって、さらに組み付け性を向上させることができる。
また、本実施の形態によれば、コネクタユニット50に、ベアリング収容部33に収容されたボールベアリング26の外輪26bを、軸方向から支持するベアリング押さえ部54を設けたので、ギヤケース31とコネクタユニット50との間に外輪26bを挟持することができる。これにより、従前のようなストッパ(ボールベアリングを固定する部品)が不要になり、部品点数の削減はもちろんのこと、リヤワイパモータ10をさらに軽量化することができる。
さらに、本実施の形態によれば、コネクタユニット50に、アーマチュア軸23bの直径寸法Dよりも大きい幅寸法W2の切り欠き部COが設けられ、切り欠き部COの長手方向に沿う開口55側が、ギヤケース31の底壁部31aに向けられ、切り欠き部COの長手方向に沿う底側に、一対のブラシ24が配置されている。これにより、ギヤケース31の開口部31cからアーマチュアアッシー23を組み付けた後に、それと同じ方向からコネクタユニット50を組み付けることができ、さらに組み付け性を向上させることができる。
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上記実施の形態では、第1収容部としてのベアリング収容部33に、切り欠き溝33aを設けたものを示したが、本発明はこれに限らず、切り欠き溝33aを設けなくても良い。この場合においても、リヤワイパモータ10の組み立て時において、アーマチュアアッシー23の軸方向への移動量を、従前よりは少なくすることができる。また、切り欠き溝33aが無い分、ボールベアリング26の固定強度を向上させることができる。
また、上記実施の形態では、コネクタユニット50に一対のブラシホルダ56を一体に設けたもの(一体成形品)を示したが、本発明はこれに限らず、それぞれを別体として、ギヤケース31内で両者を連結させても良いし、ギヤケース31外で予め両者を連結させておいても良い。
さらに、上記実施の形態では、ウォームギヤ23eおよびウォームホイール36からなる減速機構(ウォーム減速機)を採用したものを示したが、本発明はこれに限らず、例えば遊星歯車減速機を採用することもできる。この場合、サンギヤを入力側のギヤとし、リングギヤを出力側のギヤとする。つまり、これらのサンギヤおよびリングギヤ等が、本発明のギヤを構成する。
また、上記実施の形態では、モータ装置としてリヤワイパモータ10であるものを示したが、本発明はこれに限らず、自動車等の車両に搭載されるパワーウィンド装置,電動サンルーフ装置,電動シート装置等の駆動源として用いられるモータ装置にも適用することができる。
その他、上記実施の形態における各構成要素の材質,形状,寸法,数,設置箇所等は、本発明を達成できるものであれば任意であり、上記実施の形態に限定されない。