JP2018148634A - 永久磁石同期電動機駆動装置 - Google Patents

永久磁石同期電動機駆動装置 Download PDF

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Abstract

【課題】電流値によって変化し易い永久磁石同期電動機のインダクタンス値を、測定したい負荷量において正確に同定する。【解決手段】出力可能な電圧ベクトルをV1,V2,V3,V4,V5,V6と定義し,電圧供給制御部は、時間Δtuの幅を持つ通電期間毎にV1,V4,V4,V1の順に電圧ベクトルを切り替える第1通電シーケンスと、時間Δtvの幅を持つ通電期間毎にV3,V6,V6,V3の順に電圧ベクトルを切り替える第2通電シーケンスと、時間Δtwの幅を持つ通電期間毎にV5,V2,V2,V5の順に電圧ベクトルを切り替える第3通電シーケンスを順次繰り返し実行し、第1通電シーケンスの実行中に流れるU相電流,第2通電シーケンスの実行中に流れるV相電流,及び第3通電シーケンスの実行中に流れるW相電流の各大きさが、予め決められた規定電流値に等しくなるよう時間Δtu,Δtv及びΔtwを調整する。【選択図】図4

Description

本発明の実施形態は、永久磁石同期電動機のインダクタンス値を同定する永久磁石同期電動機駆動装置に関する。
インバータを用いて電動機を可変速駆動する可変速電動機駆動装置は各分野に適用されている。電動機の中でも永久磁石同期電動機は回転子に永久磁石を有することにより、誘導電動機に比較して高効率であるため広く採用されている。永久磁石同期電動機は、その回転子における永久磁石の配置によって、ロータ表面に永久磁石を張り付けた表面磁石構造の同期電動機(SPMSM:Surface Permanent Magnet Synchronous Motor)と、ロータ内部に永久磁石を埋め込んだ埋込磁石構造の同期電動機(IPMSM:Interior Permanent Magnet Synchronous Motor)に大別できる。
表面磁石構造のSPMSMは、永久磁石の存在する部分が磁気的にエアギャップとみなすことができ、磁気抵抗は回転子の位置に無関係となるので、電機子巻線のインダクタンスも位置によって変化しない非突極機となる。一方、埋込磁石構造のIPMSMは、回転子に埋め込まれた磁石の磁束方向であるD軸と同じ方向では磁気抵抗が大きいが、磁石磁束のないQ軸方向の磁束は鉄心を通るので磁気抵抗が小さくなり、Q軸インダクタンスLqがD軸インダクタンスLdよりも大きくなることで突極性を示す。
近年は、磁気抵抗の差から得られるリラクタンストルクを積極的に活用し、更なる高効率化及び低コスト化を実現する目的で、磁石トルクを減らしてリラクタンストルクの割合いを増加させたIPMSMも検討されている。このような背景から、突極性の度合いであるKs値(Ks=Lq/Ld)が大きなモータも見受けられるようになった。
高リラクタンストルク依存の永久磁石モータの特徴は、リラクタンスモータの磁気回路特性と類似することから、Q軸のインダクタンスの値が、電機子電流値の大小によって変化しやすい傾向が確認されている。このような永久磁石同期電動機を確実に制御するためのシステムやモータ基準モデルを得るために、磁石軸方向のD軸インダクタンスLdと、Q軸インダクタンスLqとを得ることは重要となる。
永久磁石同期電動機のインダクタンス値を得る手法が、例えば特許文献1において提案されている。この方法では、各相において、正方向の電圧ベクトル及び負方向の電圧ベクトルを、所定のパルス幅(Tp)の正電圧パルス、続いて2倍の所定のパルス幅(Tp)を有する負電圧パルス、続いて前記所定のパルス幅(Tp)の正電圧パルスの順に、電圧シーケンスの印加を行う。そして、その際の各相の電流の変化量や電圧印加時のインバータのような変換器内部における電圧検出値に基づいて、インダクタンタンス値を得る。
特許第5431465号公報
特許文献1の方法では、各相に印加するパルス幅を全て同じ時間にしている。そのため、インダクタンスの小さなD軸に最も近い相の電流値が所望の電流値になったとしても、Q軸に最も近い相ではインダクタンス値が大きいため電流を十分に流せず、大きな負荷が印加された際のQ軸インダクタンスを得ることができない。すると、特に速度センサレス制御を行った場合などには磁石磁束位相の推定誤差が大きくなり、十分なトルクが得られないという問題が生じる。
そこで、電流値によって変化し易い永久磁石同期電動機のインダクタンス値を、測定したい負荷量において正確に同定できる永久磁石同期電動機駆動装置を提供する。
実施形態の永久磁石同期電動機駆動装置によれば、スイッチング素子を有する上アームと下アームの対からなるブリッジ回路を3相分備え、永久磁石同期電動機の各相の巻線に電圧を供給する電圧形インバータと、
前記永久磁石同期電動機の相電流を検出する電流検出部と、
前記永久磁石同期電動機の回転駆動を開始する前に、前記永久磁石同期電動機のインダクタンス値の測定を実行する電気的定数測定部とを備え、
前記電気的定数測定部は、前記電圧形インバータの上アームのうち1つの検出相のスイッチング素子,及び下アームのうち他の少なくとも1つの相のスイッチング素子をオンする第1通電期間と、この第1通電期間でオンするスイッチング素子を有するアームに対し対をなすアームが有するスイッチング素子をオンする第2通電期間とを組み合わせて前記永久磁石同期電動機の検出相に交番電流を供給する通電処理を、前記検出相を順に変更しながら各相について実行する電圧供給制御部と、
前記各検出相の通電処理において、前記電流検出部により検出された電流に基づく前記各検出相に流れる電流の大きさ又は前記電流の変化分に応じてインダクタンス算出用電流値を求め、前記インダクタンス算出用電流値に基づいて前記永久磁石同期電動機のインダクタンス値を算出する電気的定数算出部とを備える。
そして、前記上アームのスイッチング素子がオンの状態を「1」,前記下アームのスイッチング素子がオンの状態を「0」として、それらをU,V,Wの相順に組合わせて表記し、前記電圧形インバータが出力可能な電圧ベクトルをV1(100),V2(110),V3(010),V4(011),V5(001),V6(101)と定義し、
前記電圧供給制御部は、時間Δtuの幅を持つ通電期間毎にV1,V4,V4,V1の順又はV4,V1,V1,V4の順に電圧ベクトルを切り替える第1通電シーケンスと、
時間Δtvの幅を持つ通電期間毎にV3,V6,V6,V3の順又はV6,V3,V3,V6の順に電圧ベクトルを切り替える第2通電シーケンスと、
時間Δtwの幅を持つ通電期間毎にV5,V2,V2,V5の順又はV2,V5,V5,V2の順に電圧ベクトルを切り替える第3通電シーケンスを順次繰り返し実行し、
前記第1通電シーケンスの実行中に流れるU相電流の大きさ,前記第2通電シーケンスの実行中に流れるV相電流の大きさ,及び前記第3通電シーケンスの実行中に流れるW相電流の大きさが、予め決められた規定電流値に等しくなるように前記時間Δtu,Δtv及びΔtwを調整する。
一実施形態であり、電動機駆動装置の構成図 電圧ベクトルを示す図 電圧ベクトルとIGBTのオンオフ状態との関係を示す図 U相を検出相とした場合の通電シーケンスを示す波形図 回転子の磁石磁束と静止座標系との関係を示す図 電流振幅調整処理のフローチャート U相の通電シーケンスに係る処理Aのフローチャート V相の通電シーケンスに係る処理Bのフローチャート W相の通電シーケンスに係る処理Cのフローチャート 調整シーケンスの実行中における相電流の波形図(その1) 調整シーケンスの実行中における相電流の波形図(その2) 調整シーケンスの実行中における相電流の波形図(その3) インダクタンス算出処理を示すフローチャート
以下、一実施形態について図面を参照して説明する。図1は、永久磁石同期電動機を駆動する電動機駆動装置の構成を示している。この電動機駆動装置1は、永久磁石同期電動機2の磁極位置を検出するセンサを備えることなく所謂センサレスで電動機2を駆動する。電動機2は、ステータ2sに三相巻線2u、2v、2wが巻回されており、ロータ2rに永久磁石を備えている。
電動機駆動装置1の主回路は、商用電源PSから入力した交流電圧を整流して直流電源線3、4間に出力するコンバータ5、平滑コンデンサ6、電圧形インバータ7、電流センサ8、9等から構成されている。電圧形インバータ7は、IGBT10upを有する上アーム11upとIGBT10unを有する下アーム11unの対からなるブリッジ回路12u、IGBT10vpを有する上アーム11vpとIGBT10vnを有する下アーム11vnの対からなるブリッジ回路12v、及びIGBT10wpを有する上アーム11wpとIGBT10wnを有する下アーム11wnの対からなるブリッジ回路12wからなる三相ブリッジの構成を備えている。これらのIGBT10up〜10wn(スイッチング素子)は、ドライブ回路13により駆動される。尚、図示はしないが、IGBT10up〜10wnには、それぞれ還流ダイオードが逆並列に接続されている。
各ブリッジ回路12u、12v、12wの出力端子には、負荷である電動機2の各相巻線端子が接続されるようになっている。電流センサ8、9は、ホール素子等から構成される電流検出手段であり、それぞれブリッジ回路12uの出力端子から巻線2uに流れる相電流Iu、ブリッジ回路12wの出力端子から巻線2wに流れる相電流Iwを検出している。
制御部14は、CPU、RAM、ROM、EEPROM15、入出力ポート、A/D変換器16、タイマ、PWM信号形成回路、通信部などを有するマイクロコンピュータを主体に構成されている。ROMには、IGBT10up〜10wnをはじめとするハードウェアの検査プログラム、電動機定数等を推定するオートチューニングプログラム、電動機2の回転駆動プログラムが格納されている。EEPROM15には加速時間、減速時間、上限周波数、下限周波数、多段速運転周波数、入出力端子選択などの多種類のパラメータ等が記憶されている。
制御部14内のEEPROM15とA/D変換器16とを除く各ブロックは、マイクロコンピュータのCPUがROMに記憶されたオートチューニングプログラムに従って実行するインダクタンス算出処理に係る処理機能を表している。回転駆動プログラムなどのその他の処理プログラムに従って実行する処理機能は図示を省略している。また、電動機駆動装置1は、運転キー、停止キー、アップキー、ダウンキー、モードキー、エンターキーなどを有する操作部17と、セグメント表示器やLEDなどを有する表示部18とを備えた操作パネル19を備えている。
A/D変換器16は、電流センサ8、9から出力された信号電圧をデジタル値であるU相、W相の検出電流Iu、Iwに変換する。電圧供給制御部20は、インダクタンスの算出に必要な交番電流を電動機2の巻線2u、2v、2wに流すため、電圧形インバータ7が出力する電圧ベクトルを決定し、その電圧ベクトルに対応した通電期間を設ける。
電圧ベクトル選択部21は、電圧供給制御部20が決定した電圧ベクトルを選択して出力するために、各通電期間においてIGBT10up〜10wnのうち電圧ベクトルに対応したIGBTをオン駆動する。
電流検出部22は、電圧ベクトルを出力する通電期間の時間Δtを求めて記憶する。電圧供給制御部20は、時間Δtを持つ通電期間が経過するごとに電圧ベクトルを切り替える。インダクタンス算出用電流演算部23は、インダクタンス算出に使用する電流値を演算する。電気的定数算出部24は、前記電流値に基づいてインダクタンスを算出する処理を行う。すなわち、相電流Iu、Iv、Iwに基づいて、各相電流の変化量を検出し、それらの変化量に基づいてインダクタンスを算出する。電圧供給制御部20,インダクタンス算出用電流演算部23及び電気的定数算出部24は、電気的定数測定部に相当する。
次に、本実施形態の作用について説明する。制御部14は、電動機駆動装置1に電源を投入してから最初に電動機2を起動する際、または上位システム等から要求があった際、または電動機2を起動する度に毎回等、予め設定されていた条件となった場合にインダクタンス算出処理を実行する。この場合、最初にハードウェアの検査プログラムを実行し、続いてインダクタンス算出処理を実行して回転駆動プログラム等に使用する電気的定数を設定する。これらの処理では、電動機駆動装置1から電動機2に所定の通電処理;通電シーケンスで電圧を与え、流れる電流を観測する。
出力電圧ベクトルについては図2のように定義する。上アームがオンのとき「1」として記載している。それを(U相V相W相)の順に組み合わせて表記し、電圧形インバータが出力可能な電圧ベクトルをV1(100),V2(110),V3(010),V4(011),V5(001),V6(101)と定義する。上記の通電シーケンスでは、電圧ベクトルであるV1からV6を、例えばU相の電流を検出する際には、図4に示すように、V1→V4→V4→V1(+U→−U→−U→+U)の順に出力する。これが第1通電シーケンスに相当する。そして、この動作をV,W相においても同様に行う。これらがそれぞれ、第2,第3通電シーケンスに相当する。
V相電流検出:V3→V6→V6→V3(+V→−V→−V→+V)
W相電流検出:V5→V2→V2→V5(+W→−W→−W→+W)
それぞれ、予め決められた時間Δtx(x=u,v,w)間だけ出力して電圧ベクトルを切換える。このような通電パターンで各相に流れる電流は、電動機2に一定方向への回転力を生じさせないため、ロータ2rが回転することはない。したがって、ロータ2rをブレーキ等で固定する必要がない。
尚、第1通電シーケンスにおける電圧ベクトルV1,V4、第2通電シーケンスにおける電圧ベクトルV3,V6、第3通電シーケンスにおける電圧ベクトルV5,V2は、それぞれ第1,第2通電期間に相当する。
ここで、本実施形態におけるインダクタンス算出の原理の説明に先立ち、その算出に必要となる磁石磁束位置の推定について説明する。観測される正側の電流変化量と負側の電流変化量の差を利用することで、回転子位置を推定することを考える。回転子位置情報は後に述べるインダクタンス測定時に、同期軸上のインダクタンスを算出する際に利用する。具体的には、図4に示すパラメータより、以下のように算出する。「正側の電流変化量」と「負側の電流変化量」は以下のように表現できる。
Figure 2018148634
これらの電流変化量δIu+,δIu−の差ΔIu_diffを以下のように算出する。
Figure 2018148634
同様に、v,w相についても電流変化量の差ΔIv_diff,ΔIw_diffそれぞれ算出する。
Figure 2018148634
これらの電流変化量の差ΔIu,v,w_diffは、各相における磁気的飽和度の目安になり、電流変化量の差が大きい相ほど磁石磁束方向;D軸に近いことを意味する。仮に、電流を測定した相がQ軸に一致していれば磁石磁束は存在せず、電流値が正,負の何れでも同じようにQ軸インダクタンスが減少するのみとなるので、算出される差は略0となる。
一方、電流を測定した相がD軸に一致している際には、電流値が正であれば磁石磁束に加算して磁束を増加させようとするため、D軸インダクタンスが更に低下して電流振幅が更に増加する。電流値が負であれば磁石磁束を打ち消すように電流を流すことになり、磁気的飽和状態が緩和されD軸インダクタンスが増加して電流値が正の時より電流振幅が減少する。したがって、算出される差は正の最大値になる。
このように、電流変化量の差ΔIu,v,w_diffは、電流を観測した相がD軸方向,Q軸方向,D軸逆方向,Q軸逆方向である場合、それぞれ以下のような状態となる。
D軸方向:最大
Q軸方向:0
D軸逆方向:最小
Q軸逆方向:0
すなわち、電流変化量の差ΔIu,v,w_diffは磁石磁束と同様に変化すると考えられるので、全ての相で算出した電流変化量の差ΔIu,v,w_diffの分布を表す電流偏差ベクトルΔIdiff(=磁石磁束ベクトル方向と同様)を以下のように定義し、このベクトルの方向を磁石磁束方向として推定する。
Figure 2018148634
電流偏差ベクトルを2相静止座標軸上,αβ軸の成分で表すと、以下のようになる。
Figure 2018148634
電流偏差ベクトルと磁石磁束ベクトルは一致するので、磁石磁束方向θrは以下のように推定できる。
Figure 2018148634
ただしθの定義を−π〜πとする場合、tan−1z(z=y/x,|z|<1)のテーブルとして、その値域を−π/4〜π/4[rad]とする際には、以下の処理を施す必要がある。if分を用いた条件式で記述すると、
if|x|>|y|の場合、

if x>0の場合
{
θ=tan−1(y/x)
}
else
{
if y>0の場合
{
θ=tan−1(y/x)+π
}
else
{
θ=tan−1(y/x)−π
}

}
else
{
if y>0の場合
{
θ=−tan−1(x/y)+π/2
}
else
{
θ=−tan−1(x/y)−π/2
}
}
次に、電流の変化量からD軸,Q軸インダクタンスLd,Lqを算出できることを説明する。埋込形永久磁石モータにおける各相のインダクタンス値は、回転子の停止位置によって変化する。各相のインダクタンス値が得られれば、どのような停止位置であってもD軸,Q軸インダクタンスLd,Lqを算出できることを示す。回転子の磁石磁束と静止座標系との関係を、図5に示すように定義する。
PMSMのDQ軸上のモデルは(1)式で示される。
Figure 2018148634
モータは停止状態を想定しているので、周波数の項は0となる。印加する電圧パルス幅が短い場合、一次抵抗の影響は無視することができ、インダクタンスLd及びLqは変化しないと考えると、電圧と電流の関係は(2)式のようになる。
Figure 2018148634
αβ静止座標系と、同期DQ軸座標系の状態量の関係は、図6より(3)式となる。
Figure 2018148634
(2)式を静止座標系の状態量で表現すると、(4)式となる。
Figure 2018148634
ここで、
Figure 2018148634
であり、さらに回転子は停止している条件なので、ωreが係る項は無視できる。
Figure 2018148634
(4)式と(6)式から、(7)式が得られる。
Figure 2018148634
整理すると、(8)式となる。
Figure 2018148634
ここで、(9)式のように定義すると、(8)式は(10)式となる。
Figure 2018148634
(10)式の左辺を電流変化量として表現すると、
Figure 2018148634
よって、(12)式のように表現できる。
Figure 2018148634
(12)式を磁石磁束位置によって変化する分と、位置に依存しない成分とに分けると、(13)式となる。
Figure 2018148634
更に、(13)式をフェーザ表現にする。
Figure 2018148634
また、(14)式において、共役複素数となる電圧を(15)式のように表現する。
Figure 2018148634
更に電圧を、以下のように大きさと位相の極座標形式で表現すると、(15)式は(16)式のように表現できる。
Figure 2018148634
また、以下のようにYとΔYとを定義すると、(16)式を(17)式のように整理できる。
Figure 2018148634
(17)式におけるγは、回転子磁束位置θrと、印加されるテスト電圧の位相θvとの差を意味する。
γ=θr−θv
この関係式は、たとえ同じ電圧値を同じ時間印加して電流の変化を測定したとしても、回転子位置と、テスト電圧を印加し電流の変化量を測定する相との関係によって、電流の挙動が異なる事を意味している。つまり、検出される電流変化が回転子の停止位置によって変わることになる。そこで、永久磁石同期電動機の電気的制御定数として得ようとしているD軸,Q軸インダクタンスの値が、停止位置によって変化しない方法を検討する。
ここで、モータに印加するテスト電圧として、大きさVs,U,V,W各相の位相θvがそれぞれ0,2π/3,−2π/3である3種類の電圧を印加することを考える。具体的には、U−VW間,V−WU間,W−UV間に直流電圧vdcを印加することとなる。
図4は、U相(U−VW間)のテストを実施する際の電圧パターン,及びその時に流れる電流値を示している。V相(V−WU間),W相(W−UV間)も同様の電圧パターンを与えてテストを実施する。この時、電流を観測する相以外の相を同電位にすれば、同電位の相の巻線は並列接続となるので、等価的に以下のような電圧が印加されたと考えることができる。
Figure 2018148634
(16)式の関係より、その時の電圧と電流変化量の関係は以下のように表現できる。印加する時間は、各相同じ時間Δt=Δtu=Δtv=Δtw,とする。
Figure 2018148634
ここで、Y及びΔYは1相分の重みである。
印加した電圧位相を基準として、電流値(スカラー量)を観測すると以下のように観測される。
Figure 2018148634
例えば(22)式は、V相に電圧を印加した際に、V相の電流がどのように観測されるかを示したものである。具体的には、V相に電圧を印加してV相の電流検出値を実数値(スカラ量)として観測することは、観測する基準を、U相から位相が2π/3進んだV相にすることであり、それは、電流ベクトルを2π/3だけ遅らせたベクトルの実部に相当することを示している。同様に考えて(21)式及び(23)式が得られる。
(21)〜(23)式に示される各相の検出電流から各相のアドミッタンスを算出し、それらが、以下の(24)〜(26)式のように表現できることを用いてインダクタンスLd及びLqを算出できる。(21)〜(23)式を整理して再記すると、
Figure 2018148634
各相で算出されるアドミッタンスは、(27)〜(29)式のように表現される。
Figure 2018148634
これらの平均Yを計算する。尚、cosの項の和は3相量となるので0となる。
Y=(Yu+Yv+Yw)/3 …(30)
(27)〜(29)式の両辺に、それぞれcos(2θr),cos(2θr+2π/3),cos(2θr−2π/3)をかけると(31)〜(33)式のようになる。
Figure 2018148634
(31)〜(33)式の辺々を加算すると、
Figure 2018148634
となる。これより、以下の(35)式の関係が得られる。
Figure 2018148634
ここで、LとΔLの定義より、
L=(Ld+Lq)/2
ΔL=(Ld−Lq)/2
YとΔYの定義より、
Y=L/(LdLq)
ΔY=ΔL/(LdLq)
これらの関係から、
Y+ΔY=L/(LdLq)+ΔL/(LdLq)
=(Ld+Lq)/2/(LdLq)+(Ld−Lq)/2/(LdLq)
=1/Lq …(36)
Y−ΔY=L/(LdLq)−ΔL/(LdLq)
=(Ld+Lq)/2/(LdLq)−(Ld−Lq)/2/(LdLq)
=1/Ld …(37)
よって、D軸インダクタンスLd,Q軸インダクタンスLqは、それぞれ(38)式,(39)式で求められる。
Ld=1/(Y−ΔY) …(38)
Lq=1/(Y+ΔY) …(39)
(30)式のYの値や、(35)式のΔYの算出に必要な各相アドミッタンスYu,Yv,Ywは、(24)〜(26)式に示すように、各相毎に測定された、電流変化量Δi,印加電圧値vdc,印加時間Δtを用いて求められる。以下に整理して再記する。
Figure 2018148634
突極比が大きい永久磁石同期電動機の場合、全ての相に対して同じ印加時間Δtを与えても、インダクタンスが大きくなるQ軸に近い相では、電流値が所望の値まで増加しないことになる。電流値が小さい場合の電流変化量を基にQ軸インダクタンスを算出しても、電流値によって飽和が進んだ場合のインダクタンス値とならない。すなわち、実際のインダクタンス値よりも大きな値が算出されてしまう。そのような値を用いて電動機を制御すると、重負荷時においてインダクタンスの設定値が実際の値よりも大きくなるため、定常的に位置推定誤差が大きくなる。そして、トルクを維持できない状態となった場合には脱調するおそれがある。
そのような状況に至ることを防止するため、印加する電圧パルスの時間Δtx(x=u,v,w)を各相によって調整し、例えば流す電流値のピーク値を同レベルになるように調整する。これにより、インダクタンスが大きくなるQ軸の近傍においても、大きな電流が流れた際のインダクタンス値を求めることができる。
電流ピーク値が同レベルになるように印加時間を相ごとに調整したとすれば、以下のように表現できる。
Figure 2018148634
上記の算出式によれば、相電流の変化量と、各相の電圧印加時間とから、各相のアドミッタンスを算出できることが確認できる。そして、アドミッタンスの逆数であるインダクタンスも算出できる。
重負荷時のインダクタンスを得たい場合には、電流ピーク値を、重負荷時の電流ピーク相当値に設定して測定すればよい。また、電流レベルを徐々に上昇させながら、各電流レベルでのインダクタンス値を測定することで、電流値に応じたインダクタンスの変化を測定することも可能である。
また、磁気的飽和特性が顕著なモータについては、極力電流値が高い時のインダクタンス値を求めることが望ましい。そのためには、電流を検出するタイミングを、電圧の印加開始直後からでなく、図4に示すように、印加開始よりある程度の時間が経過した時点で電流変化を観測した方が、磁気的飽和の影響をより大きく受けた状態でのインダクタンス値を算出できる。例えば図4では、電圧印加時間Δtuの開始時点から、例えば時間Δtuの半分程度の時間が経過した後に電流変化量観測区間Δtumを設けている。
さらには、主磁束の影響によるインダクタンスの変化をなるべく除去するため、正の電圧が印加され正の方向へ増加している際の電流変化量と、負の電圧が印加され負の方向に変化している際の電流変化量の平均を各相ごとに算出し、この値を電流変化量として扱うことが望ましい。
Figure 2018148634
以上の考慮を加えた場合の各相におけるアドミッタンスは以下のように算出できる。
Figure 2018148634
次に、上記の測定原理に基づく実際のインダクタンスの算出処理について説明する。本実施形態では、電圧供給制御部20が、各相電流の計測に先立って、各相電流の正又は負のピーク値が規定電流値Iampに等しくなるように、時間Δtu、Δtv、Δtwを調整する調整シーケンスを実行する。図6は、電流振幅調整処理全体のフローチャートであり、図7〜図9は、各相の電圧ベクトルの切り替えと相電流の正負のピーク値を検出するU,V,W各相の通電シーケンスを示すフローチャートである。図10〜図12は、電流振幅調整処理を実行中の相電流Iu、Iv、Iwの波形を連続して示している。
電圧供給制御部20は、上述した各相の通電シーケンスを順次繰り返して実行する。調整シーケンスを開始する時のインダクタンス値は不明であるため、初期の時間Δtu、Δtv、Δtwには、ピーク電流値が十分に小さくなる短い通電時間Δt1を設定する。ステップS1のU相シーケンスでは、タイマ時間tを0に初期化し(ステップS21)、タイマ時間tがΔtu以上になるまで、制御周期Tcごとに電圧ベクトルV1の出力とタイマ時間tの加算を実行する(ステップS22、S23)。タイマ時間tが(Δtu−Δtum)以上になると、その時のU相電流Iuを電流値Iu1+とする(ステップS24)。
次に、タイマ時間tがΔtu以上になるまで、制御周期Tcごとに電圧ベクトルV1の出力とタイマ時間tの加算を実行する(ステップS25、S26)。タイマ時間tがΔtu以上になると、その時のU相電流Iuをピーク電流値Iu2+とする(ステップS27)。
次に、タイマ時間tが(3Δtu−Δtum)以上になるまで、制御周期Tcごとに電圧ベクトルV4の出力とタイマ時間tの加算を実行する(ステップS28、S29)。タイマ時間tが(3Δtu−Δtum)以上になると、その時のU相電流Iuを電流値Iu1-とする(ステップS30)。
次に、タイマ時間tが3Δtu以上になるまで、制御周期Tcごとに電圧ベクトルV4の出力とタイマ時間tの加算を実行する(ステップS31、S32)。タイマ時間tが3Δtu以上になると、その時のU相電流Iuをピーク電流値Iu2-とする(ステップS33)。その後、再び制御周期Tcごとに電圧ベクトルV1の出力とタイマ時間tの加算を実行する(ステップS34、S35)。そして、タイマ時間tが4Δtu以上になると、電圧ベクトルの出力を終了してタイマ時間tを0にクリアする(ステップS36)。最後に、ピーク電流値Iu2+の絶対値と電流値Iu1+の絶対値との差δIu+と、ピーク電流値Iu2-の絶対値と電流値Iu1-の絶対値との差δIu−とを求める(S37)。
電圧供給制御部20は、ステップS2において、ピーク電流値の絶対値|Iu2+|、|Iu2-|の少なくとも一方が規定電流値Iampを超えたか否か(条件A)を判断する。超えたと判断した場合には、FlagUに「調整完了」を意味する「1」を設定する(ステップS3)。超えていないと判断した場合には、FlagUに「調整未完」を意味する「0」を設定し、時間Δtuを調整幅Δtadjだけ増やす。また、観測区間Δtumを、時間Δtuの1/2に設定する(ステップS4)。
続いて、電圧供給制御部20は、ステップS5でV相シーケンスを実行し、ステップS6においてピーク電流値の絶対値|Iv2+|、|Iv2-|の少なくとも一方が規定電流値Iampを超えたか否か(条件B)を判断する。超えた場合にはFlagVに「1」を設定し(ステップS7)、超えていない場合にはFlagVに「0」を設定して時間Δtvを調整幅Δtadjだけ増やす。また、観測区間Δtvmを、時間Δtvの1/2に設定する(ステップS8)。
さらに、電圧供給制御部20は、ステップS9でW相シーケンスを実行し、ステップS10においてピーク電流値の絶対値|Iw2+|、|Iw2-|の少なくとも一方が規定電流値Iampを超えたか否か(条件C)を判断する。超えた場合にはFlagWに「1」を設定し(ステップS11)、超えていない場合にはFlagWに「0」を設定して時間Δtwを調整幅Δtadjだけ増やす。また、観測区間Δtwmを、時間Δtwの1/2に設定する(ステップS12)。
次に、電圧供給制御部20は、ステップS13において、FlagU、FlagV、FlagWの何れかが「0」でなく、且つFlagposが「0」か否か(条件D)を判断し、条件Dが成立すれば(YES)ステップS15に移行する。一方、条件Dが成立していなければ(NO)回転位置θrを推定してFlagposを「1」にセットしてからステップS15に移行する。
電圧供給制御部20は、ステップS15において、FlagU、FlagV、FlagWが全て「1」か否か(条件E)を判断する。ここで、何れかの相の時間Δtu、Δtv、Δtwの調整が未完である(NO)と判断すると、ステップS1に移行して上述した処理を繰り返す。全相の時間Δtu、Δtv、Δtwの調整が完了した(YES)と判断すると、ステップS16に移行してその時間Δtu、Δtv、Δtwを、Δtu_save,Δtv_save,Δtw_saveとしてRAMに記憶する。電圧供給制御部20は、各相ごとに記憶した通電時間Δtu_save,Δtv_save,Δtw_save,を用いて通電シーケンスを実行する。
図10〜図12に示すように、時間Δtu、Δtv、Δtwの初期値をΔt1とし、各相の通電シーケンスが終了する毎にΔtadjを加算し、Δt3まで増やした後の通電シーケンスでU相のピーク電流値|Iu2+|、|Iu2-|が規定電流値Iampを超えたので、時間ΔtuをΔt3に固定している。その後は、時間ΔtvとΔtwを増やしながら各相の通電シーケンスを実行する。
Δt5まで増やした後の通電シーケンスでW相のピーク電流値|Iw2+|、|Iw2-|が規定電流値Iampを超えたので、時間ΔtwをΔt5に固定し、その後は時間Δtvだけを増やしながら各相の通電シーケンスを実行する。Δt7まで増やした後の通電シーケンスでV相のピーク電流値|Iv2+|、|Iv2-|が規定電流値Iampを超えたので、時間ΔtvをΔt7に固定して調整シーケンスを終了している。
図13は、各相のインダクタンスを算出する処理を示すフローチャートである。ステップS81における「電流振幅調整処理」は、図6に示す処理に対応する。ここで、ステップS16で得られて記憶された各相の通電時間Δtu_save,Δtv_save,Δtw_saveから、各相のパルス幅Δtu,Δtv,Δtwを設定する。Δtum,Δtvm,Δtwmについては、Δtu_save,Δtv_save,Δtw_saveそれぞれの1/2で設定する。
そして、設定したパルス幅に基づいて、U,V,Wの各相通電シーケンスを実行し(S83〜S85)、各相の電流変化量ΔIu_ave,ΔIv_ave,ΔIw_aveを求め、各相のアドミッタンスYu,Yv,YwよりインダクタンスLd,Lqを求める(S86)。
以上のように本実施形態によれば、電圧供給制御部20は、電圧形インバータ7の上アーム11pのうち1つの検出相のIGBT10,及び下アーム11nのうち他の少なくとも1つの相のIGBT10をオンする第1通電期間と、この第1通電期間でオンするIGBT10を有するアーム11に対し対をなすアーム11が有するIGBT10をオンする第2通電期間とを組み合わせて電動機2の検出相に交番電流を供給する通電処理を、前記検出相を順に変更しながら各相について実行する。
電機的定数算出部24は、各検出相の通電処理において、電流検出部22により検出された電流に基づく各検出相に流れる電流の大きさ又は電流の変化分に応じてインダクタンス算出用電流値を求め、前記電流値に基づいて電動機2のインダクタンス値を算出する。
また、電圧供給制御部20は、通電期間Δtu毎に電圧ベクトルを切り替える第1通電シーケンスと、通電期間Δtv毎に電圧ベクトルを切り替える第2通電シーケンスと、通電期間Δtw毎に電圧ベクトルを切り替える第3通電シーケンスとを順次繰り返し実行し、各通電シーケンスの実行中にそれぞれ流れるU相,V相,W相電流の大きさが、予め決められた規定電流値Iampに等しくなるように時間Δtu,Δtv及びΔtwを調整する。このように構成すれば、インダクタンスLd,Lqが大きな値を示すQ軸近傍においても、大きな電流が流れた際のインダクタンス値を求めることができる。
更に、電機的定数算出部24は、第1,第2及び第3通電シーケンスの実行中に流れる各相電流を、各相シーケンスにおいて電圧ベクトルが変化する時点から時間Δtu,Δtv,Δtwよりも短い時間だけ前の時点で前記電流検出部により検出された電流値と、当該電圧ベクトルが変化する直前の時点で電流検出部22により検出された電流値との変化分の絶対値を算出し、電流値が正側に増加している時の値と、負側に増加している時の値の各相における平均値ΔIu_ave,ΔIv_ave,ΔIu_aveをインダクタンス算出用電流値とする。これにより、これにより、例えば電動機2が、Q軸インダクタンスとD軸インダクタンスの差が大きいIPM(Interior Permanent Magnet)型であっても、各相電流のピーク値が等しくなるように調整できる。したがって、インダクタンスの算出精度を向上させることができる。
より具体的には、時間Δtu,Δtv,Δtwよりも短い時間として時間Δtum,Δtvm,Δtwmを決定し、各相通電シーケンスにおいて電圧ベクトルが変化する時点から、前記時間Δtum,Δtvm,Δtwmだけ前の時点で前記電流検出部により検出された電流値と、当該電圧ベクトルが変化する直前の時点で前記電流検出部により検出された電流値との変化分の絶対値を電流値が正側に増加している時の値と、負側に増加している時の値と平均値ΔIu_ave,ΔIv_ave,ΔIu_aveを前記インダクタンス算出用電流値とする。
そして、電気的定数算出部24は、各相アドミッタンスYu,Yv,Ywを、前記平均値ΔIu_ave,ΔIv_ave,ΔIu_aveと、前記時間Δtum,Δtvm,Δtwmと、印加電圧vdcとから求めると、各相アドミッタンスYu,Yv,Ywの平均値Yを算出し、回転子位置によって変化する分の振幅ΔYを(35)式により算出し、D軸インダクタンスLd,Q軸インダクタンスLqを、(38)式,(39)式より算出する。
(35)式中、回転子位置θrの情報が必要になるが、回転子位置θrは、以下のように算出できる。電気的定数算出部24は、各相における正側の電流変化量と負側の電流変化量との差をそれぞれΔIu_diff,ΔIv_diff,ΔIw_diffとし、前記差の分布を表す電流偏差ベクトルΔIdiffを、2相静止座標軸上の成分で表したものを、それぞれΔIα_diff,ΔIβ_diffとすると、回転子位置θrを(0)式で算出できる。このようにアドミッタンスアプローチを用いて、インダクタンスLd,Lqを得ることができる。
(その他の実施形態)
時間Δtum,Δtvm,Δtwmは、時間Δtu,Δtv,Δtwよりも短い時間であれば良い。また、要求される精度によっては、時間Δtum,Δtvm,Δtwmを設定する必要は無い。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
図面中、1は電動機駆動装置(永久磁石同期電動機駆動装置)、2は永久磁石同期電動機、2u、2v、2wは巻線、7は電圧形インバータ、8、9は電流センサ(電流検出部)、10up〜10wnはIGBT(スイッチング素子)、11up〜11wpは上アーム、11un〜11wnは下アーム、12u、12v、12wはブリッジ回路、14は制御部(欠相検出部、インダクタンス算出部)、15はEEPROM(メモリ)、20は電圧供給制御部、22は電流検出部、23はインダクタンス算出用電流値演算部、24は電気的定数算出部である。
次に、電圧供給制御部20は、ステップS13において、FlagU、FlagV、FlagWの何れかが「0」でなく、且つFlagPosが「0」か否か(条件D)を判断し、条件Dが成立していなければ(NO)ステップS15に移行する。一方、条件Dが成立すれば(YES)回転位置θrを推定してFlagPosを「1」にセットしてから(S14)ステップS15に移行する。

Claims (4)

  1. スイッチング素子を有する上アームと下アームの対からなるブリッジ回路を3相分備え、永久磁石同期電動機の各相の巻線に電圧を供給する電圧形インバータと、
    前記永久磁石同期電動機の相電流を検出する電流検出部と、
    前記永久磁石同期電動機の回転駆動を開始する前に、前記永久磁石同期電動機のインダクタンス値の測定を実行する電気的定数測定部とを備え、
    前記電気的定数測定部は、前記電圧形インバータの上アームのうち1つの検出相のスイッチング素子,及び下アームのうち他の少なくとも1つの相のスイッチング素子をオンする第1通電期間と、この第1通電期間でオンするスイッチング素子を有するアームに対し対をなすアームが有するスイッチング素子をオンする第2通電期間とを組み合わせて前記永久磁石同期電動機の検出相に交番電流を供給する通電処理を、前記検出相を順に変更しながら各相について実行する電圧供給制御部と、
    前記各検出相の通電処理において、前記電流検出部により検出された電流に基づく前記各検出相に流れる電流の大きさ又は前記電流の変化分に応じてインダクタンス算出用電流値を求め、前記インダクタンス算出用電流値に基づいて前記永久磁石同期電動機のインダクタンス値を算出する電気的定数算出部とを備え、
    前記上アームのスイッチング素子がオンの状態を「1」,前記下アームのスイッチング素子がオンの状態を「0」として、それらをU,V,Wの相順に組合わせて表記し、前記電圧形インバータが出力可能な電圧ベクトルをV1(100),V2(110),V3(010),V4(011),V5(001),V6(101)と定義し、
    前記電圧供給制御部は、時間Δtuの幅を持つ通電期間毎にV1,V4,V4,V1の順又はV4,V1,V1,V4の順に電圧ベクトルを切り替える第1通電シーケンスと、
    時間Δtvの幅を持つ通電期間毎にV3,V6,V6,V3の順又はV6,V3,V3,V6の順に電圧ベクトルを切り替える第2通電シーケンスと、
    時間Δtwの幅を持つ通電期間毎にV5,V2,V2,V5の順又はV2,V5,V5,V2の順に電圧ベクトルを切り替える第3通電シーケンスを順次繰り返し実行し、
    前記第1通電シーケンスの実行中に流れるU相電流の大きさ,前記第2通電シーケンスの実行中に流れるV相電流の大きさ,及び前記第3通電シーケンスの実行中に流れるW相電流の大きさが、予め決められた規定電流値に等しくなるように前記時間Δtu,Δtv及びΔtwを調整することを特徴とする永久磁石同期電動機駆動装置。
  2. 前記電気的定数算出部は、前記第1,第2及び第3通電シーケンスの実行中に流れる各相電流を、各相シーケンスにおいて電圧ベクトルが変化する時点から前記時間Δtu,Δtv,Δtwよりも短い時間だけ前の時点で前記電流検出部により検出された電流値と、当該電圧ベクトルが変化する直前の時点で前記電流検出部により検出された電流値との変化分の絶対値を、電流値が正側に増加している時の値と、負側に増加している時の値の平均値として取得し、前記インダクタンス算出用電流値とする請求項1記載の永久磁石同期電動機駆動装置。
  3. 前記時間Δtu,Δtv,Δtwよりも短い時間として時間Δtum,Δtvm,Δtwmを決定し、
    各相通電シーケンスにおいて電圧ベクトルが変化する時点から、前記時間Δtum,Δtvm,Δtwmだけ前の時点で前記電流検出部により検出された電流値と、当該電圧ベクトルが変化する直前の時点で前記電流検出部により検出された電流値との変化分の絶対値を算出し、電流値が正側に増加している時の値と、負側に増加している時の値の各相における平均値ΔIu_ave,ΔIv_ave,ΔIu_aveを前記インダクタンス算出用電流値とし、
    前記電気的定数算出部は、各相アドミッタンスYu,Yv,Ywを、前記平均値ΔIu_ave,ΔIv_ave,ΔIu_aveと、前記時間Δtum,Δtvm,Δtwmと、印加電圧vdcとから求め、各相アドミッタンスYu,Yv,Ywの平均値Yを算出し、
    D軸インダクタンスLd,Q軸インダクタンスLqを、
    Ld=1/(Y−ΔY)
    Lq=1/(Y+ΔY)
    Figure 2018148634
    ただし、θrは回転子停止位置
    として算出する請求項2記載の永久磁石同期電動機駆動装置。
  4. 前記電気的定数算出部は、各相における正側の電流変化量と負側の電流変化量との差をそれぞれΔIu_diff,ΔIv_diff,ΔIw_diffとし、
    前記差の分布を表す電流偏差ベクトルΔIdiffを、2相静止座標軸上の成分で表したものを、それぞれΔIα_diff,ΔIβ_diffとすると、前記ロータ位置θrを以下の式で算出する請求項3記載の永久磁石同期電動機駆動装置。
    Figure 2018148634
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