JP2012165585A - 同期電動機駆動システム - Google Patents

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Abstract

【課題】ダイオードを挿入した回転子コイルを備えた同期電動機の低速センサレス制御において、複雑な処理を行う必要無く、回転角度の推定と磁極判別を同時に行うことが可能、言い換えれば推定範囲が−90°≦Δθ≦+90°ではなく、−180°≦Δθ≦+180°であるようなセンサレス制御方式による同期電動機駆動システムを提供する。
【解決手段】同期電動機7と、同期電動機7を制御する制御装置1とを備え、同期電動機は、固定子コイルを有する固定子4と、ダイオードが挿入された回転子コイル5を持つ回転子3とを有し、制御装置1は、固定子4に高周波磁束を発生させるための高周波磁束指令を生成する高周波磁束発生制御部11と、高周波磁束指令に応じて固定子コイルに発生した高周波電圧と高周波電流との少なくとも一方に基づいて、ダイオードに流れる電流の有無に応じた指標を算出するとともに、算出した指標に基づいて同期電動機7の回転角度を推定する回転角度推定部14とを有する。
【選択図】図1

Description

本発明の実施形態は、センサレス制御方式により同期電動機を駆動する同期電動機駆動システムに関する。
回転子に界磁用巻線や永久磁石、鉄心を用いた電動機は、当該電動機の回転に同期して固定子に通電し、トルクを発生させるため、同期電動機と呼ばれる。より詳しく述べるのであれば、界磁巻線を用いて回転子磁束を発生させ、トルクを得るものを単に同期電動機と呼び、回転子に永久磁石を用いて回転子磁束を発生させ、マグネットトルクを得るものを永久磁石同期電動機、さらに回転子に鉄心のみを用いてリラクタンストルクを得るものをリラクタンスモータ等と呼ぶ。
近年では、これらを組み合わせた埋め込み磁石型永久磁石同期電動機や、非特許文献1のように界磁用巻線として回転子内で短絡されたコイルにダイオードを挿入して、このコイルに高周波界磁をかけて界磁を得る半波整流ブラシなし同期電動機、及びこの電動機と永久磁石同期電動機を組み合わせた半波整流ブラシなし永久磁石同期電動機等も開発されている。
上記のような「同期電動機」の分類に属するモータにおいては、一般的に運転中の回転角度を計測し、適切な位相角に通電することによって高効率に高トルクを得る制御が行われている。しかし、回転角度を計測するためにはレゾルバやエンコーダ(パルスジェネレータ)等に代表される回転角度センサを設置する必要があり、設置スペースの節約やコスト低減の要求から、回転角度センサを必要としない制御方式が開発されている。この制御方式は、一般的に「センサレス制御」と称される。
センサレス制御では、電動機に通電される電圧と電流の関係に回転角度情報が含まれていることを利用し、電動機の制御装置で観測した電圧と電流から、回転角度推定器によって回転角度を推定する方式が一般的であり、例えば非特許文献2に詳述されている。
センサレス制御は、大きく分けて2つの分類に分けることができる。高速回転域で用いる「高速センサレス制御」と低速回転域で用いる「低速センサレス制御」である。高速センサレス制御は、例えば永久磁石同期電動機の場合、回転子の永久磁石磁束によって固定子に誘起される逆起電圧が回転角度に同期することを利用し、電動機の電圧と電流から逆起電圧成分を抽出することによって回転角を推定する。また低速センサレス制御は、細かくはさまざまな方式が提案されているが、基本概念としては、回転子の電気的突極性に基づいて、高周波電圧や高周波電流を印加し、それらの応答に含まれる回転角情報をバンドパスフィルタ等を用いて抽出することによって回転角度推定を実現している。低速センサレス制御については、特許文献1,2に記載されている。
低速センサレス制御において推定される回転角度は、原理的に推定誤差が0°か180°のどちらかになり、その判別は不可能である。これは、低速センサレス制御における推定原理が電気的突極性に基づいているためである。電気的突極性は、推定誤差Δθに対して2Δθの関数となるため、2Δθがゼロとなるように推定を行うと、回転Δθ=0°もしくは180°のどちらかに推定が収束することになる。このような問題に対応するための技術として、「極性判別」という技術が開発されており、非特許文献3に詳述されている。
極性判別は、基本概念としては、界磁磁束と同一方向に固定子直流電流を印加し、この電流によって発生した磁束と界磁磁束によって磁気飽和が発生し、インダクタンスが低下することを検出するというものである。
界磁磁束と逆方向に固定子直流電流を印加した場合には磁気飽和が発生せず、インダクタンスは低下しない。そこで、極性判別は、正負の固定子直流電流を印加し、それぞれの場合に対してインダクタンスを計測することによって、推定回転角度誤差が0°か180°かを判別することができる。
また、非特許文献1に記載の「半波整流ブラシなし同期電動機」のセンサレス始動位置検出法として、非特許文献4に記載されている方式が提案されている。非特許文献4には、ダイオードを挿入した回転子コイルを備えた半波整流ブラシなし同期電動機において、駆動時や磁極判別も含めた低速センサレス制御の実現について記載されている。
非特許文献4においては、ダイオードで挿入した回転子コイルによる磁束を駆動用磁束として用いる前提で、回転子コイルを励磁するために三角波状の励磁電流を流す。この時、制御用の固定子電圧に現れる回転角情報を用いて回転角の推定を行っている。
ただし、非特許文献4においても、上述した低速センサレスと同様に、2Δθの項に基づいて回転角度を推定しているため、磁極判別が必要となり、0°もしくは180°の位相角を推定した後、固定子巻線のダイオードのオン/オフを推定することによって磁極判別を実現している。すなわち、手順としては、「初期位相推定」、「磁極判別」、「駆動開始」の順である。非特許文献4では、駆動時にも推定を可能としており、磁極判別実施後には位相角は反転しないという前提の下、初期位相推定とほぼ同様の演算方法により2Δθを求め、回転角度を推定している。
また、非特許文献1,4の概念を応用したものとして、非特許文献5がある。この非特許文献5に記載の方法は、半波整流ブラシなし同期電動機を用い、同期電動機のベクトル制御に用いるdq軸座標系において、正回転及び逆回転する回転高周波電圧をそれぞれ印加し、応答の正転高周波電流と逆転高周波電流において、それぞれ空間的に振幅が最大となる位相角を探索し、その平均値を推定回転角とするものであり、この方法によれば、回転子巻線の抵抗成分に起因する推定誤差を除去することが可能であると述べられている。
特開平11−150983号公報 特開平7−245981号公報
電気学会論文誌D, 107巻10号,昭62年 「半波整流ブラシなし同期電動機の原理と基礎特性」小山、鳥羽、樋口、山田(長崎大学) 埋め込み磁石同期モータの設計と制御 武田洋次・松井信行・森本茂雄・本田幸夫 株式会社オーム社 電気学会研究会資料自動車研究会, 2002年3月8日, VT−02−12, p67 「永久磁石リラクタンスモータの回転センサレス制御」中沢洋介(東芝) 平成14年電気学会産業応用部門大会講演論文集, 1, pp.589−598(2004年)「半波整流ブラシなし同期電動機のセンサレス駆動時位置推定システムのモデル化について」小山、阿部、樋口、左村、河野(長崎大学) 電気学会論文誌D, 128巻10号, 2008年「自励式ハイブリッド界磁同期モータの新初期位相推定法」新中、矢代(神奈川大学, ボッシュ)
上述したように、同期電動機のセンサレス制御には数々の方式があり、方式の提案のみならず実機での駆動も実用化されている。しかし、現状の方式において、特に低速センサレス制御には、未だに以下に示すような問題点が存在する。
まず、回転角推定原理の制約による磁極判別の必要性の問題がある。ダイオードを挿入した回転子コイルを用いない通常の同期電動機は、上述したように回転角推定原理の制約があり、回転角の推定と磁極判別を別々に実施する必要がある。特に、磁極判別は、推定用の高周波電流に比較して大きな正負直流電流を引火する必要があり、駆動トルクに悪影響を及ぼす可能性があるため駆動中に実施するのは現実的でない。したがって、通常は始動時に磁極判別し、その後は推定回転角誤差が±90°以内になるよう制御する必要がある。逆に、推定回転角誤差が±90°を超えた場合には、その状況を検知して再び始動シーケンスを実施し、磁極判別をやり直す必要がある。
そのため、始動時及び再始動時には磁極判別実施分の時間が短くとも0.1秒程度かかり、人間系からトルク指令等が入力されて運転される駆動用途(例えばハイブリッド自動車や電車等)に用いられる場合に、運転者の違和感につながる可能性がある。この問題は、非特許文献4に記載されている半波整流ブラシなし同期電動機のセンサレス制御方式についても言える問題である。
さらに、非特許文献5に記載のセンサレス制御方式における演算の複雑性の問題もある。ここで、非特許文献5に記載の方式は、上述した回転角推定原理の制約による磁極判別の必要性の問題に対応した方式であるということもできる。すなわち、非特許文献5に記載の方式は、回転高周波電流の振幅が最大となる位相角を探索することにより、磁極判別と回転角推定を同時に行っているということができる。
しかしながら、非特許文献5に記載の方法は、正回転及び逆回転の高周波電圧をそれぞれ印加して回転高周波電流を観測し、振幅が最大となる電流を探索して、正回転及び逆回転それぞれの振幅最大電流の位相角を平均するという複雑な処理が必要となっている。このような演算の複雑性は、一般的に数百〜数キロHzの周波数で処理される電動機の制御周期に対して、本処理にかかる演算の占める割合を増加させ、ひいてはその他の高度な制御演算を組み込めなくなるという制約になる可能性がある。
逆の視点では、非特許文献5に記載の方法は、演算時間の制約の中で本処理を組み込むために高価で高性能な演算装置(例えば高性能マイコンやDSP:Digital Signal Processor等)が必要となる、ということもできる。
また、その原理上、非特許文献5に記載の方法は、正回転及び逆回転の高周波電圧を少なくとも1周期ずつ印加し、両方の応答電流値が得られた段階で初めて推定値の更新ができるようになるが、これは推定値の更新周期を長引かせることとなり、高速な制御応答が可能であるはずの電動機の制御性を劣化させることにつながる可能性がある。この点については、印加する高周波電圧の周波数を高めることにより改善できる可能性もあるが、相対的にはさらに高速な応答が可能であるにも関わらず推定方法の制約によって制御性を劣化させることになるという点は同じである。
本発明は上述した従来技術の問題点を解決するもので、ダイオードを挿入した回転子コイルを備えた同期電動機の低速センサレス制御において、複雑な処理を行う必要無く、回転角度の推定と磁極判別を同時に行うことが可能、言い換えれば推定範囲が−90°≦Δθ≦+90°ではなく、−180°≦Δθ≦+180°であるようなセンサレス制御方式による同期電動機駆動システムを提供することを課題とする。
実施形態の同期電動機駆動システムは、上記課題を解決するために、同期電動機と、前記同期電動機を制御する制御装置とを備え、前記同期電動機は、固定子コイルを有する固定子と、ダイオードが挿入された回転子コイルを持つ回転子とを有し、前記制御装置は、前記固定子に高周波磁束を発生させるための高周波磁束指令を生成する高周波磁束発生制御部と、前記高周波磁束発生制御部により生成された前記高周波磁束指令に応じて前記固定子コイルに発生した高周波電圧と高周波電流との少なくとも一方に基づいて、前記ダイオードに流れる電流の有無に応じた指標を算出するとともに、算出した前記指標に基づいて前記同期電動機の回転角度を推定する回転角度推定部とを有することを特徴とする。
実施例1の形態の同期電動機駆動システムの構成を示すブロック図である。 実施例1の形態の同期電動機駆動システムの同期電動機における回転子コイルの等価回路を示す図である。 実施例1の形態の同期電動機駆動システムの同期電動機における回転子コイルの等価回路を示す図である。 実施例1の形態の同期電動機駆動システムの高周波磁束発生制御部による高周波磁束指令の波形例を示す図である。 同期電動機モデルと座標の定義を示す図である。 実施例1の形態の同期電動機駆動システムの同期電動機の模式図である。 実施例1の形態の同期電動機駆動システムの推定誤差の指標となるδ軸電圧の差分を示す図である。 実施例2の形態の同期電動機駆動システムの推定誤差の指標となるδ軸電圧の差分を示す図である。 回転角推定のPLLブロック図である。 実施例3の形態の同期電動機駆動システムの磁極位置の指標となるγ軸電圧の差分を示す図である。 実施例4の形態の同期電動機駆動システムの構成を示すブロック図である。 高周波電圧指令に対する高周波電流応答を示す波形図である。
以下、本発明の同期電動機駆動システムの実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施例1の同期電動機駆動システムの構成を示すブロック図である。図1に示すように、本実施例の同期電動機駆動システムは、同期電動機の制御装置1、インバータ2、電流検出部6、及び同期電動機7により構成される。
また、インバータ2を介して同期電動機7を制御する制御装置1は、高周波磁束発生制御部11、電動機制御部12a、PWM処理部13、及び回転角度推定部14により構成される。さらに、電動機制御部12aは、トルク/電流変換部121、電流制御部122、dq/3相変換部123、及び3相/dq変換部124により構成される。各構成についての詳細な説明は後述する。
インバータ2は、制御装置1内のPWM処理部13により出力されたゲート指令に基づいて、内蔵するスイッチング素子をオン/オフすることにより直流電圧を3相交流電圧に変換する。
同期電動機7は、インバータ2により出力された3相交流電圧に基づく3相交流電流が流れることにより磁界を発生させ、回転子3との磁気的相互作用によりトルクを発生させる。この同期電動機7は、回転子3と固定子4とを備えている。この固定子4は、電機子コイルを固定子コイルとして備えている。また、回転子3は、固定子4からの励磁磁束が鎖交するように配置した、1ターン以上のコイル(回転子コイル5)を有しており、回転子コイル5にはダイオードが挿入されている。
図2は、本実施例の同期電動機駆動システムの同期電動機7における回転子コイル5の等価回路を示す図である。この回転子コイル5は、回路に少なくとも1個以上のダイオードを持ち、コイルに流れる電流の方向に応じてダイオードがオン/オフされるように構成される。図2において、コイルとダイオードとは直列に接続されているが、抵抗やコンデンサなど他の電気部品を挿入することも可能である。図3は、本実施例の同期電動機駆動システムの同期電動機7における回転子コイル5の等価回路の別例を示す図であり、コイルの鎖交磁束変化による電圧が、ダイオードがオンする方向の場合とオフする場合とで、回路の総抵抗が異なるように構成されている。一方、図2の例では、ダイオードがオンのときには、コイルの抵抗値が回路抵抗となり、オフのときには抵抗が実質無限大となる。
PWM処理部13は、一般的には三角波比較PWM(Pulse Width Modulation)が用いられ、電圧指令と三角波キャリアとを比較することにより、インバータの各スイッチング素子のオン/オフ・ゲート指令を生成する。他のPWM処理方法としては、ヒステリシスPWMや空間ベクトルPWM等が挙げられる。
ヒステリシスPWMは、3相電流指令を入力とし、3相電流応答が電流指令に対して指定した誤差幅(ヒステリシス幅)に入っているか否かに応じてスイッチング素子のオン/オフ・ゲート指令を生成する。また空間ベクトルPWMは、3相電圧指令を入力とし、電圧指令をベクトルとして考えた場合の空間的な位置に応じて、インバータの出力すべき電圧ベクトルとその出力時間を計算し、各スイッチング素子のオン/オフ・ゲート指令を生成する。
電流検出部6は、同期電動機7に流れる3相交流電流のうち2相あるいは3相の電流応答値を検出する。なお、この電流応答値は、3相電圧指令等の指令値に対する応答値を示し、ここでは同期電動機7を流れる電流の大きさを示す。
高周波磁束発生制御部11は、固定子4に高周波磁束を発生させるための高周波磁束指令を生成する。すなわち、高周波磁束発生制御部11は、同期電動機7の固定子コイルに高周波磁束を発生させるように高周波磁束指令を計算して出力するものであり、高周波磁束指令の物理的な意味は、同期電動機7に通電される電圧か電流である。実際の磁束は、固定子コイルに流れる電流によって固定子コイルに発生するため、直接的には固定子電流指令であるが、間接的には、固定子電流を制御するための電圧指令に高周波磁束指令を含ませても良い。本実施例の高周波磁束発生制御部11は、トルク/電流変換部121により出力された電流指令Iδ refに高周波磁束指令を重畳させる。
図4は、本実施例の同期電動機駆動システムの高周波磁束発生制御部11による高周波磁束指令の波形例を示す図である。図4においては、高周波磁束指令が三角波の電流指令として与えられる場合の例を示しているが、矩形波状の電圧指令としてもよいし、形状としては正弦波、その他の高周波波形でもよい。ここでいう高周波とは、同期電動機7の回転に同期する周波数に対して、トルク等の外乱とならない程度の十分に高い周波数の成分を指す。一般的には、本提案の目的とする低速における回転角推定の場合、0〜数十Hzの回転周波数になるため、数百〜数キロHzの周波数成分を高周波とすることが多い。
通常、制御装置における制御演算の周波数以上の周波数は選択されないが、FPGA等のハードウェアを用いたり、制御演算を行う演算器とは別に、専用の演算器を設けることで、より高い周波数を選択できるようになる場合もある。
電動機制御部12aは、電動機の回転を制御するための演算を行う。図1においては、電動機制御部12aは、同期電動機7のトルク指令を入力とし、同期電動機7に印加する電圧指令を出力としているが、他の構成を採用することも可能であり、例えば回転速度指令を入力とすることも可能である。
制御演算の内容としては、同期電動機7のトルクや回転速度等の応答を高速に制御する方式として、ベクトル制御と呼ばれる制御方式が採用される。図1に示す本実施例の構成は、ベクトル制御を用いた構成例である。このベクトル制御について、回転子3に永久磁石を用いた永久磁石同期機を例として説明する。
図5は、同期電動機モデルと座標の定義を示す図である。まず、図5に示すように、永久磁石同期電動機の回転に同期して回転する座標系として、永久磁石の磁束の方向をd軸、d軸に直交する軸をq軸と定義する。また、U相巻線方向をα軸、これに直交する方向をβ軸と定義し、α軸方向を基準としてd軸方向までの角度を同期電動機の回転位相角θと定義する。このような定義に基づくと、永久磁石同期電動機の電圧・電流の関係は、(1)式により表される。
Figure 2012165585
ここで、Vはd軸電圧であり、Vはq軸電圧である。また、Iはd軸電流であり、Iはq軸電流である。Rは抵抗である。Lはd軸インダクタンスであり、Lはq軸インダクタンスである。さらに、Φは永久磁石磁束であり、ωは回転速度であり、pは微分演算子である。
ただし、制御装置1には回転角度センサがなく、回転角度θそのものを検出することができないため、制御装置1において推定された位相角を代わりに使用する。したがって、図5に示すように、推定位相角をθestとし、これに対応する座標系をγ軸,δ軸と定義する。推定誤差Δθが生じた場合には、γδ軸は、dq軸から推定誤差Δθだけ回転した位置となる。
図1におけるトルク指令は、上位制御系により与えられる。トルク/電流変換部121は、トルク指令に基づいて(2)式を用いることにより、γ軸電流指令Iγ ref、及びδ軸電流指令Iδ refを生成する。
Figure 2012165585
ここで、Trqrefはトルク指令である。また、kは定数であり、トルクと電流との変換比を表すといえる。また、θは、γδ軸座標系におけるγ軸を基準とした電流位相角である。
なお、トルク/電流変換部121は、電流指令Iγ ref、Iδ refを生成するに際し、トルク指令をパラメータとして参照できるテーブルを予め用意しておき、このテーブルを参照することによって生成することも可能である。このようなテーブルを用いる方法は、トルクと電流との関係が上記の式のように定式化することが好ましくない場合等に有効である。
電流制御部122は、トルク/電流変換部121により生成された電流指令Iγ ref、Iδ refと、同期機に流れる電流のγ軸応答値Iγ res、δ軸応答値Iδ resとを入力として、例えば(3)式に示すような比例積分制御により、γ軸電圧指令Vγ ref、δ軸電圧指令Vδ refを演算して出力する。
Figure 2012165585
ここで、Kは比例ゲインであり、Kは積分ゲインであり、sはラプラス演算子である。これにより、電流制御部122は、入力された電流指令値に固定子電流が追従するように制御する。
dq/3相変換部123は、回転位相角推定手段である回転角度推定部14により出力される回転位相角推定値θestに基づいて、電流制御部122により生成されたγ軸電圧指令Vγ ref、δ軸電圧指令Vδ refを(4)式を用いて座標変換し、3相電圧指令V ref,V ref,V refを生成する。
Figure 2012165585
dq/3相変換部123は、このようにして求めた3相電圧指令をPWM処理部13に出力する。
3相/dq変換部124は、ベクトル制御で用いる電流応答を生成するため、回転角度推定部14により出力される回転位相角推定値θestに基づいて、電流検出部6により検出された3相電流応答の座標変換を(5)式により行い、γ軸電流応答値Iγ res、δ軸電流応答値Iδ resを生成する。
Figure 2012165585
ここで、永久磁石同期電動機に流れる3相電流の和が0であることを利用すれば、(6)式で示されるように、3相/dq変換部124は、3相電流のうち2相の電流値からγ軸電流応答値Iγ res、δ軸電流応答値Iδ resを求めることができる。この場合には、電流検出部6を2相分設けるだけで済み、3相分検出する場合よりも装置を簡略化することが可能となる。
Figure 2012165585
回転角度推定部14は、同期電動機7を制御する電圧と電流に基づいて、回転角度を推定する。ここで、図1においては図示されていないが、回転角度推定部14は、例えばPWM処理部13に入力する電圧指令と、電流検出部6により検出された同期電動機7に流れる3相電流値とに基づいて、回転角度を推定することができる。また、回転角度推定部14は、電圧指令値として、例えば実際に同期電動機7に印加されている3相端子電圧を電圧センサ等の計測手段を用いて実測した値を用いることもできる。
次に、上述のように構成された本実施の形態の作用を説明する。本実施例における回転角度推定部14は、高周波磁束発生制御部11により生成された高周波磁束指令に応じて固定子コイルに発生した高周波電圧と高周波電流との少なくとも一方に基づいて、ダイオードに流れる電流の有無に応じた指標を算出するとともに、算出した指標に基づいて同期電動機7の回転角度を推定する。
ここで、本提案における回転角度の推定原理について説明する。ここでは永久磁石同期電動機を用いた場合を例示する。
図6は、同期電動機の模式図である。図6において、回転子コイルに流れる電流irdが正方向(矢印の方向)に流れたときにダイオードがONするとし、その際に回転子コイルが作る磁束は磁石磁束と一致するものとする。ただし、回転子コイルの鎖交磁束方向、電流方向、ダイオードの正逆については本提案の主旨から逸脱しない範囲で自由に設定することが可能である。
ここで、図5に示すdq軸座標系において、電圧vと電流i、磁束λは、(7)式及び(8)式のように表される。
Figure 2012165585
ただしRは電機子抵抗であり、Rrdは回転子コイル抵抗であり、ωは電動機の回転電気角周波数であり、L,L,Lrdはdq軸及び回転子コイルの自己インダクタンスであり、Mrdは回転子コイルと固定子コイルの相互インダクタンスである。添え字d,q,rdは、それぞれd軸、q軸、回転子コイルに関する変数であることを表す。また、λPMは、永久磁石磁束である。
(8)式を(7)式に代入することにより、(9)式を得ることができる。
Figure 2012165585
(9)式において、dq軸電流に高周波電流を重畳することを考えると、他の項に比べて微分項が大きくなるため、抵抗成分及びω成分の項を無視できるとすると、(10)式に示すように簡略化できる。ただし、pは微分演算子である。
Figure 2012165585
回転子コイルのダイオードがオンの時、コイルの端子電圧vrdはゼロとなることから、(10)式の第三式により、以下に示す(11)式及び(12)式が得られる。
Figure 2012165585
(12)式を(10)式の第一式に代入することにより、以下に示す(13)式が得られる。
Figure 2012165585
一方、ダイオードがオフの場合を考えると、同様に以下に示す(14)式が得られる。
Figure 2012165585
本実施例の回転角度推定部14は、高周波電圧に基づいて、回転子コイル5に流れる電流がダイオードによって整流された場合と整流されなかった場合のインダクタンスの差を指標として算出する。(13)式と(14)式とを、図5における制御座標であるγδ軸から見ると、ダイオードオン時を(15)式のように表すことができ、ダイオードオフ時を(16)式のように表すことができる。
Figure 2012165585
ここで、(12)式により、iをマイナス方向に増加させた時に、irdが正となり、ダイオードがオンすることがわかる。
今、推定誤差Δθ≒90°の場合を考えると、i≒−iδが成り立つことから、iδの増加/減少の方向によってダイオードのオン/オフを判別することができる。例えば、iδの増加時にはダイオードがオンし、減少時にはオフする。
そこで、高周波磁束発生制御部11は、回転子コイル5の鎖交磁束に対して電気的に直交する方向に高周波磁束を発生させる高周波磁束指令を生成し、電流制御が十分成り立つ程度の周波数の三角波電流をiδの指令値に重畳する。言い換えると、高周波磁束発生制御部11は、生成した高周波磁束指令に応じた三角波状の高周波電流指令を電流指令値に重畳したといえる。
重畳した三角波電流の上昇時と下降時の電圧をそれぞれ検出して加算すると、電流微分項は上昇時と下降時で符号が逆になることから、(15)式と(16)式との和は、電圧の差分として(17)式のようになる。
Figure 2012165585
(17)式により、Δvδは、(18)のように表される。
Figure 2012165585
(18)式は、どんなΔθでもマイナス値となることを表しているが、例えば推定誤差がΔθ=−90°の場合を考えると、ダイオードのオン/オフの関係が逆転することから、(17)式、(18)式の符号も逆転し、(18)式は(19)式のようになる。
Figure 2012165585
すなわち、ダイオードのオン/オフ関係も考慮して(18)式、(19)式をグラフ化すると、図7のようになる。図7は、本実施例の同期電動機駆動システムにおける回転子の回転角度を推定する際の推定誤差の指標となるδ軸電圧の差分を示す図であり、横軸は推定誤差Δθである。図7では推定誤差0の点でΔvδもゼロとなることから、これを評価関数として、PLL等によって推定角度を真の角度に近づけることが可能である。
以上をまとめると、本実施例における回転角度推定部14は、回転子コイル5の鎖交磁束方向に対して直交する磁束を発生させる高周波電流iδを流し、その電流を流すための電圧の、高周波電流と同一方向成分vδから、ダイオードのオン/オフに起因する差成分を検出して指標とし、回転角度を推定する。すなわち、本実施例における回転角度推定部14は、固定子コイルに発生する高周波電圧に基づいて、ダイオードに流れる電流の有無に起因する推定回転角と実際の回転角との角度差を示す指標を算出する。具体的には、回転角度推定部14は、三角波状の高周波電流指令の上昇時と下降時とのそれぞれのタイミングに対応した高周波電圧vδの差に基づいて当該指標を算出する。
上述のとおり、本発明の実施例1の形態に係る同期電動機駆動システムによれば、ダイオードを挿入した回転子コイル5を備えた同期電動機7の低速センサレス制御において、複雑な処理を行う必要無く、回転角度の推定と磁極判別を同時に行うことが可能であり、言い換えれば推定範囲が−90°≦Δθ≦+90°ではなく、−180°≦Δθ≦+180°であるようなセンサレス制御方式による同期電動機駆動システムを提供することができる。
すなわち、以上のように構成することによって、本実施例に記載の同期電動機駆動システムでは、回転角度センサを用いることなく、簡単な演算で、低回転での回転子の回転角度を推定することができ、小型化、低コスト化、メンテナンスの容易化はもちろんのこと、低速センサレス制御の原理上の制約であった磁極極性判別も不要とすることが可能となる。
本実施例において、回転子3は、回転子コイル5への鎖交磁束の方向が同期電動機7をベクトル制御する場合に定義されるd軸の方向となるように構成されており、高周波磁束発生制御部11は、q軸の方向に高周波磁束が発生するように高周波磁束指令を生成するが、別の方法も考えられる。
すなわち、回転子3は、回転子コイル5への鎖交磁束の方向が同期電動機7をベクトル制御する場合に定義されるq軸の方向となるように構成され、且つ高周波磁束発生制御部11は、d軸の方向に高周波磁束が発生するように高周波磁束指令を生成するとしてもよい。これにより、回転子コイル5の磁束方向に磁石磁束が通らないため、磁石磁束の影響を受けにくくすることができる。
あるいは、回転子3は、回転子コイル5への鎖交磁束の方向が同期電動機7の常用するトルク電流成分による磁束と同じ方向となるように構成され、且つ高周波磁束発生制御部11は、鎖交磁束の方向に直交する方向に高周波磁束が発生するように高周波磁束指令を生成する構成としてもよい。
次に、本発明の実施例2の同期電動機駆動システムについて説明する。実施例1においては、回転子コイル5の鎖交磁束方向に直交する方向のiδに高周波電流を重畳して、これと同一方向成分のvδを検出して回転角度を推定したが、本実施例の同期電動機駆動システムは、鎖交磁束方向と同一方向であるiγに高周波を重畳して、高周波電流と直交する方向のvδの電圧差分を検出する。したがって、本実施例の同期電動機駆動システムの構成は、実施例1とほぼ同様であり、高周波磁束発生制御部11による高周波電流指令の重畳先がγ電流指令となる。すなわち、本実施例の高周波磁束発生制御部11は、回転子コイル5の鎖交磁束に対して電気的に同一方向に高周波磁束を発生させる高周波磁束指令を生成する。
その他の構成は、実施例1と同様であり、重複した説明を省略する。
次に、上述のように構成された本実施の形態の作用を説明する。本実施例における回転角度推定部14は、検出したΔvδが(20)式のように表されるため、これを指標とすることにより、図8のような特性を得る事ができる。図8の指標でも、図7と同様に推定誤差ゼロの点に収束させることが可能である。
Figure 2012165585
なお、実施例1に示す方法と実施例2に示す方法とは併用することが可能である。具体的には、γδ軸の空間的に回転する高周波電流指令を重畳すれば、iγとiδの両方に高周波を重畳することが可能であり、しかも位相が90°ずれているため、相互に干渉することなく対応する電圧の検出が可能である。
例えば、高周波磁束発生制御部11は、(21)式に示すような振幅I,角周波数ωの回転高周波を重畳するための高周波磁束指令を生成する。
Figure 2012165585
このときに、高周波電圧は(22)式のように表され、フーリエ級数展開等の処理を用いてsin(ωt)成分とcos(ωt)を抽出すれば、右辺第一行列であるインダクタンス行列の各要素を演算することが可能である。
また、高周波電流微分の正負に応じてダイオードオン/オフが切り替わり、この動作に対応してL´とLとが入れ替わるため、高周波電流の半周期ごとにインダクタンス行列を計算して(17)式に相当する電圧差分を求めれば、回転角度推定部14は、ダイオードのオン/オフに起因する量として(23)式のように求めることが可能である。
Figure 2012165585
(23)式からインダクタンス行列の要素を求めることができれば、回転角度推定部14は、推定誤差Δθに関連する指標を得る事が可能である。
実施例1においては、回転子コイル5の鎖交磁束に直交する方向に高周波電流を重畳していたが、図6に示す回転子コイルの構成を持つ同期電動機では、q軸方向の電流を流すことになり、トルクの脈動を引き起こす可能性があった。しかし、本実施例においては、回転子コイル5の鎖交磁束と同一方向に高周波電流を重畳することにより、トルクの脈動を低減することが可能となる。
上述のとおり、本発明の実施例2の形態に係る同期電動機駆動システムによれば、回転角度センサを用いることなく、簡単な演算で、低回転での回転子の回転角度を推定することができ、小型化、低コスト化、メンテナンスの容易化はもちろんのこと、低速センサレス制御の原理上の制約であった磁極極性判別も不要とすることが可能となり、さらにトルク脈動の低減をも可能となる。
次に、本発明の実施例3の同期電動機駆動システムについて説明する。本実施例の同期電動機駆動システムの構成は、実施例1とほぼ同様でよく、一般的な低速センサレス制御に本提案の推定方法を併用する態様について説明する。すなわち、(15)式、(16)式に示すように、一般的な低速センサレス制御で用いられる非対角成分は本提案の回転子コイルを備えた同期電動機でも現れることから、一般的な低速センサレス制御を実施しつつ、本提案の推定方法を併用することも可能である。
ここで、一般的な低速センサレス制御について説明する。基本的な回転角推定の原理式は(16)式に基づいており、(16)式を整理すると(16a)式のように表される。
Figure 2012165585
(16a)式は、電流微分項に着目した式であり、一般的な低速センサレスでは、モータを制御するための電圧・電流(ここでは定常項と呼ぶ)に加えて、高周波電圧もしくは高周波電流を重畳することにより、相対的に定常項に対して微分項が大きくなり、(16a)式の成分を検出しやすくする。
例えば高周波電流として三角波状の電流をiγに重畳すると、piγはほぼ矩形波状の波形となる。この時、iδには高周波電流を重畳しないため、piγはほぼゼロとなり、(16a)式のvδは(16b)式で表される。
Figure 2012165585
(16b)式において、piγの符号に注意すれば、vδはsin(2Δθ)の関数とみなせ、Δθとゼロクロスが一致して、Δθに応じて増減する指標として得ることができる。
この指標に基づいて、指標がゼロとなるように図9のようにPLLを構成することにより、図1に示す電流制御系を介して回転角推定のフィードバックループが構成されるため、Δθをゼロ、すなわち実回転角度と推定回転角度を一致させることができる。
以上のように例示した低速センサレス制御に対して、本提案の併用方法を説明する。(16a)式の非対角成分にはLdが含まれており、回転子のダイオードがオンすると(15)式のようにLd´に置き換わるが、ダイオードがオフの間はダイオードによる影響はなく、(16)式、(16a)式のように、一般的な低速センサレスの原理式のままとなる。したがって、ダイオードのオン/オフは電流増減の方向でほぼ検知できると仮定すれば、ダイオードのオフ期間に(16b)式を計算することにより、一般的な低速センサレスも実施することが可能となる。さらに、ダイオードのオン/オフでの差分を取れば(23)式を得ることができるため、本提案の推定方法も実施することができる。
また、併用方法としては、回転角推定だけでなく、単に磁極極性の判別のみに用いても良い。例えば、iγに高周波を重畳してvγを検出すれば、(17)式において、cos2Δθの成分を得ることができ、Δθ=0°とΔθ=180°とでは、ダイオードのオン/オフによる符号の異なる値として得る事ができる。
図10は、本実施例の同期電動機駆動システムの磁極位置の指標となるγ軸電圧の差分Δvγを示す図である。この情報に基づき、cos2Δθの成分が正のときは正常な磁極位置、負の時は逆転した磁極位置と判別することができるため、低速センサレス制御を行いながら、常時磁極極性判別を行うことも可能である。
上述のとおり、本発明の実施例3の形態に係る同期電動機駆動システムによれば、従来の低速センサレス制御を行いながら、常時磁極極性を判別することが可能となり、例えば同期電動機の急加減速などによって推定誤差が瞬時に拡大し、推定原理上、磁極が逆転している位置(推定誤差が180°の位置)に収束してしまうような状況に陥ることを防止することができる。
次に、本発明の実施例4の同期電動機駆動システムについて説明する。実施例1乃至実施例3の形態では、高周波電流を重畳して高周波電圧から指標を検出する方式であったが、実際には電流制御部の制御帯域が十分高速に確保できない場合が多く、例えば電流制御周期が500μsecの場合、選択できる高周波はその4〜8倍以上の周期、周波数では1/4〜1/8以下となる。このような場合、重畳した高周波電流の周波数が低くなることから、推定誤差が発生した場合の収束も遅くなる上、無視できないトルク脈動となって現れることも考えられる。
そこで、本実施例においては、高周波電圧を重畳し、それによって発生する高周波電流を検出して指標を演算することを考える。電動機に流れる電流の検出は、電流制御周波数よりもはるかに高い周波数のサンプリング周波数を持つAD変換器を使用するのが一般的であるため、電流制御周波数と同等の周波数を持つ高周波電圧を重畳しても、それによって発生する高周波電流を精度よく検出することができる。
図11は、本発明の実施例4の同期電動機駆動システムの構成を示すブロック図である。図1に示す実施例1の構成と異なる点は、高周波磁束発生制御部11が高周波電圧指令をγ電圧指令に重畳させている点と、回転角度推定部14が3相/dq変換部124により出力されたγδ電流応答に基づいて回転角度推定を行う点である。その他の構成は、実施例1と同様であり、重複した説明を省略する。
次に、上述のように構成された本実施の形態の作用を説明する。高周波磁束発生制御部11は、生成した高周波磁束指令に応じた高周波電圧指令を固定子4を制御するための電圧指令値(γ電圧指令)に重畳する。高周波電圧を電圧指令に重畳する場合における高周波成分に関する応答は、(15)式もしくは(16)式から、以下に示す(24)式のように導くことができる。
Figure 2012165585
ただし、(24)式は、回転子コイル5のダイオードがオフの場合であり、オンの場合にはLdをL´dに置き換えればよい。ダイオードのオン/オフはiの増加/減少に依存するが、推定誤差Δθが十分小さければ、ほぼiγによってダイオードのオン/オフが決まるといってよい。したがって、(24)式においてΔθ=0とおき、vγに矩形波状の高周波電圧を重畳すれば、iγは(25)式の応答となり、図12のような波形となる。
Figure 2012165585
ただし、1/pは積分演算を意味する。したがって、本実施例の高周波磁束発生制御部11は、矩形波状の高周波電圧指令を固定子4を制御するための電圧指令値(γ電圧指令)に重畳する。実際には抵抗分があるため、図12のような整った三角波にはならないが、重畳する高周波電圧の周波数を高くすることによって相対的に抵抗分の効果が減少し、ほぼ三角波とみなすことができるようになる。
図12より、高周波電圧の正側ではiγが増加し、負側では減少することがわかり、回転子コイルのダイオードはそれぞれオフ,オンとなる。そこで、矩形波の正側と負側それぞれの電流変化分を計算して加算すると、(24)式から(26)式が導き出される。
Figure 2012165585
ただし、Δtは矩形波半周期に相当する時間である。(26)式において、Δiδを検出すると、図8と同様な特性になるため、回転角度推定部14は、これを指標とすることによって回転角度を推定することが可能となる。すなわち、本実施例における回転角度推定部14は、固定子コイルに発生する高周波電流に基づいて、ダイオードに流れる電流の有無に起因する推定回転角と実際の回転角との角度差を示す指標を算出するものであり、高周波電流に基づいて、回転子コイル5に流れる電流がダイオードによって整流された場合と整流されなかった場合のインダクタンスの差を指標として算出するといえる。
具体的には、回転角度推定部14は、矩形波状の高周波電圧指令の正と負とのそれぞれのタイミングに対応した高周波電流の傾きの差に基づいて当該指標を算出する。
上述のとおり、本発明の実施例4の形態に係る同期電動機駆動システムによれば、重畳する周波数に比べて電流制御応答を十分高くできない場合においても、高周波電圧指令を用いることによって得られる高周波電流から指標を演算でき、安定に回転角度を推定できる。さらに、電流に高周波指令を重畳する場合よりも重畳する周波数を高くすることが可能なため、それによって発生するトルク脈動の周波数も高くなり、一定のトルク指令に対する外乱としての影響を低くすることが可能である。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
1 制御装置
2 インバータ
3 回転子
4 固定子
5 回転子コイル
6 電流検出部
7 同期電動機
11 高周波磁束発生制御部
12a,12b 電動機制御部
13 PWM処理部
14 回転角度推定部
121 トルク/電流変換部
122 電流制御部
123 dq/3相変換部
124 3相/dq変換部

Claims (12)

  1. 同期電動機と、
    前記同期電動機を制御する制御装置とを備え、
    前記同期電動機は、
    固定子コイルを有する固定子と、
    ダイオードが挿入された回転子コイルを持つ回転子とを有し、
    前記制御装置は、
    前記固定子に高周波磁束を発生させるための高周波磁束指令を生成する高周波磁束発生制御部と、
    前記高周波磁束発生制御部により生成された前記高周波磁束指令に応じて前記固定子コイルに発生した高周波電圧と高周波電流との少なくとも一方に基づいて、前記ダイオードに流れる電流の有無に応じた指標を算出するとともに、算出した前記指標に基づいて前記同期電動機の回転角度を推定する回転角度推定部とを有することを特徴とする同期電動機駆動システム。
  2. 前記高周波磁束発生制御部は、前記回転子コイルの鎖交磁束に対して電気的に直交する方向に高周波磁束を発生させる高周波磁束指令を生成することを特徴とする請求項1記載の同期電動機駆動システム。
  3. 前記高周波磁束発生制御部は、前記回転子コイルの鎖交磁束に対して電気的に同一方向に高周波磁束を発生させる高周波磁束指令を生成することを特徴とする請求項1記載の同期電動機駆動システム。
  4. 前記回転角度推定部は、前記高周波電圧と前記高周波電流との少なくとも一方に基づいて、前記ダイオードに流れる電流の有無に起因する推定回転角と実際の回転角との角度差を示す指標を算出することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の同期電動機駆動システム。
  5. 前記回転角度推定部は、前記高周波電圧と前記高周波電流との少なくとも一方に基づいて、前記回転子コイルに流れる電流が前記ダイオードによって整流された場合と整流されなかった場合のインダクタンスの差を前記指標として算出することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の同期電動機駆動システム。
  6. 前記制御装置は、入力された電流指令値に固定子電流が追従するように制御する電流制御部を有し、
    前記高周波磁束発生制御部は、生成した前記高周波磁束指令に応じた高周波電流指令を前記電流指令値に重畳することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の同期電動機駆動システム。
  7. 前記高周波磁束発生制御部は、三角波状の高周波電流指令を前記電流指令値に重畳し、
    前記回転角度推定部は、三角波状の前記高周波電流指令の上昇時と下降時とのそれぞれのタイミングに対応した前記高周波電圧の差に基づいて前記指標を算出することを特徴とする請求項6記載の同期電動機駆動システム。
  8. 前記高周波磁束発生制御部は、生成した前記高周波磁束指令に応じた高周波電圧指令を固定子を制御するための電圧指令値に重畳することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の同期電動機駆動システム。
  9. 前記高周波磁束発生制御部は、矩形波状の高周波電圧指令を前記電圧指令値に重畳し、
    前記回転角度推定部は、矩形波状の前記高周波電圧指令の正と負とのそれぞれのタイミングに対応した前記高周波電流の傾きの差に基づいて前記指標を算出することを特徴とする請求項8記載の同期電動機駆動システム。
  10. 前記回転子は、前記回転子コイルへの鎖交磁束の方向が前記同期電動機をベクトル制御する場合に定義されるd軸の方向となるように構成され、
    前記高周波磁束発生制御部は、q軸の方向に高周波磁束が発生するように高周波磁束指令を生成することを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか1項記載の同期電動機駆動システム。
  11. 前記回転子は、前記回転子コイルへの鎖交磁束の方向が前記同期電動機をベクトル制御する場合に定義されるq軸の方向となるように構成され、
    前記高周波磁束発生制御部は、d軸の方向に高周波磁束が発生するように高周波磁束指令を生成することを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか1項記載の同期電動機駆動システム。
  12. 前記回転子は、前記回転子コイルへの鎖交磁束の方向が前記同期電動機の常用するトルク電流成分による磁束と同じ方向となるように構成され、
    前記高周波磁束発生制御部は、前記鎖交磁束の方向に直交する方向に高周波磁束が発生するように高周波磁束指令を生成することを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか1項記載の同期電動機駆動システム。
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