JP2018138497A - 珪石質耐火煉瓦およびその製造方法 - Google Patents

珪石質耐火煉瓦およびその製造方法 Download PDF

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【課題】コークス炉の内張りにより好適な耐火煉瓦とその製造方法とを提供すること。【解決手段】本発明の珪石質耐火煉瓦では、原料の組成が、溶融石英質材85〜95重量%と、石英質材5〜15重量%と、少なくとも半量のベントナイトを含む粘土質材3〜5重量%とであることを特徴とする。その製造方法での焼成温度は、1000〜1300℃である。製品としての耐火煉瓦は、その気孔率が20%以下であり、その圧縮強さが25MPa以上であって、20℃から1000℃まで加熱した際のその熱間線膨張は0.5%以下になる。【選択図】なし

Description

本発明は、珪石質の耐火煉瓦とその製造方法とに関する。本発明の耐火煉瓦に好適な用途は、例えばコークス炉の内張りとすることである。
(1)周知技術
コークス炉の内張には、珪石質耐火煉瓦が使用されていることが多い。周知の珪石質耐火煉瓦の主成分には、石英質材をそのまま用いる結晶質材といったん溶融した溶融石英材を用いる非晶質材との二材質が使い分けられている。
結晶質材に当たる石英質材を主原料とした珪石質耐火煉瓦は、優れた耐高熱性を有し、高温下での熱間強度にも優れている。このような特性を失わないよう石英質の珪石質耐火煉瓦の製造方法では、高温下での材質的な安定度が高いトリジマイトやクリストバライトへと結晶構造の転移を促進するために、石灰質材を材料に添加する。そして長時間の高温焼成過程を経て石英質材をトリジマイトやクリストバライトに転移させ、両結晶を主成分とする珪石質耐火煉瓦としている。
このような珪石質耐火煉瓦は、高温下での体積安定性が高い反面、600℃以下に異常熱間膨張域があり耐熱衝撃性が落ちるので、亀裂の発生頻度が高まり急な熱膨張による損傷も増えるという欠点がある。なお、高温下で体積安定性を高めるために石英をトリジマイトやクリストバライトに転移させるためには、長時間の高温焼成過程を必要とし、製造コストも高いという短所もある。
一方、非晶質材に当たる溶融石英質材を主原料とした珪石質耐火煉瓦では、主成分が緻密なガラス質であるから、耐浸透性が高く熱間膨張率が低い。その反面、1100℃以上の高温雰囲気中では、過焼結状態となり残存収縮が起きるほか、非晶質材の結晶化が起こって熱間膨張率が高くなってしまう。その結果、耐熱スポーリング性が劣化してしまうので、この耐火煉瓦を使用したコークス炉では、安定した操業が難しくなり、珪石質耐火煉瓦の耐用寿命も低下してしまい、保全作業にも環境温度が制約されるなどの不都合が生じる。なお、その製造過程で非晶質材料の焼結性を高めるため、特に原料微粒子の調整と湿式加振成形法に時間がかかるので、やはり製造に長時間を要し高い生産コストがかかる。
(2)公知文献
珪石質耐火煉瓦に関する公知文献としては、例えば以下のようなものがある。
特許文献1には、骨材が溶融石英と焼成珪石とからなる珪石れんがが開示されている。この珪石れんがでは、溶融石英の含有量が35〜50重量%であり、粒度構成で細かい粒度の範囲を指定する工夫がなされている。
特許文献2には、溶融石英を30〜70重量%含んで残部が珪石からなり、可燃性の板材を保護材として表面に貼付した珪石れんがが開示されている。
特許文献3には、粒径1mm以下の珪石40〜70重量%と粒径0.5mm以上の溶融石英60〜30重量%とからなる珪石れんがと、その製造方法とが開示されている。
特許文献4には、トリジマイトクリンカー30〜65重量%と溶融石英35〜70重量%とからなる材料を使用する珪石れんが製造方法が開示されている。また、トリジマイト、クリストバライト、非晶質層および石英からなる珪石れんがも開示されている。
特開平5−132355号公報 特開平5−139868号公報 特開2003−55035号公報 特開2007−302540号公報
しかしながら、前述の背景技術の項で述べた周知技術ならびに公知文献では、以下に述べる特性の全てを同時に満たす珪石質耐火煉瓦とその製造方法とは開示されていない。
・気孔率:20%以下
・圧縮強さ:25MPa 以上
・熱間線膨張:0.5%以下(20℃から1000℃まで加熱して)
そこで本発明は、以上の各特性を同時に満たす珪石質耐火煉瓦を提供することと、この珪石質耐火煉瓦をより短時間かつ安価に製造することができる製造方法を提供することとを課題とする。
表面に貼付した保護材などを使うことなく、上記課題に記載した各特性を同時に満たす珪石質耐火煉瓦とその製造方法とを提供するため、本発明は以下の構成を有する。
本発明の珪石質耐火煉瓦は、原材料に占める溶融石英質材の含有量が85〜92重量%であり、石英質材の含有量が5〜12重量%であり、少なくとも半量のベントナイトを含む粘土質材の含有量が3〜5重量%であって、製品に占める石英質のうち非晶質材が65〜85重量%であることを特徴とする。ここで、前記石英質のうちに前記非晶質材が占める割合は68〜82重量%であるとなおよい。
本発明の珪石質耐火煉瓦の製造方法は、混練工程、成形工程および焼成工程を有する。この混練工程は、溶融石英質材の含有量が85〜92重量%であり、石英質材の含有量が5〜12重量%であり、少なくとも半量のベントナイトを含む粘土質材の含有量が3〜5重量%である耐火材料を混練する工程である。また、成形工程は、混練されたこの耐火材料を所定の形状に成形して成形材とする工程であり、焼成工程は、この成形材を乾燥させた後に1000〜1300℃で焼成する工程である。
前述の珪石質耐火煉瓦とその製造方法とにおいて、前記溶融石英質材の前記含有量は85〜90重量%であるとなおよい。また、前記石英質材の前記含有量が5〜10重量%であるとなおよい。また、前記粘土質材は前記ベントナイトであるとなおよい。さらに、前記石英質材が粒度1mm以下の天然材料であるといっそう良い。
本発明の珪石質耐火煉瓦では、その気孔率が20%以下であり、その圧縮強さが25MPa以上であって、20℃から1000℃まで加熱した際のその熱間線膨張は0.5%以下になる。一方、本発明の製造方法によれば、上記珪石質耐火煉瓦が得られ、その製造工程が短時間で済み生産コストも安価になる。
なお、このような効果は、製品において石英質のうち非晶質材の割合が高くなるから得られるものと推察される。それゆえ、原材料中の溶融石英質材には、シリカ成分が99.5重量%以上の高純度品を使用することが望ましい。一方、石英質材には、リサイクル原料ではなく粒度1mm以下の天然原料を使用することが望ましく、これにより製品たる珪石質耐火煉瓦の品質が安定する。
本発明の珪石質耐火煉瓦によれば、その気孔率が20%以下になって組織の劣化が抑制され、その圧縮強さは25MPa以上と頑丈になるうえに、20℃から1000℃まで加熱した際のその熱間線膨張は0.5%以下に抑制されるという効果がある。そして、この珪石質耐火煉瓦を内張りに用いたコークス炉では、操業時に内張り耐火煉瓦の亀裂発生や組織劣化が少なくなり、高い保全性と保守作業の安全性および容易さとが得られる。
また、本発明の製造方法によれば、上記の珪石質耐火煉瓦を短時間で安価に製造できるという効果がある。
(本発明に至る経緯)
背景技術の項に記したように、周知技術の珪石質耐火煉瓦には色々な不都合があり、その製造方法にはコストや時間の面で不都合がある。このような現状に鑑み、発明者らはコークス炉の内張り材として使用する耐火煉瓦として好適な特性を三現主義(現場・現実・現物)に基づいて列挙してみた。
まず、コークス炉操業時の炉内温度は900℃〜1200℃程度であり、このような温度環境下で操業条件に耐えるとともに耐熱衝撃特性が高いことが要求される。次に、炉内雰囲気は高濃度のカーボン還元雰囲気と酸化雰囲気とが交互に繰り返されるので、気孔率が小さいことが必要条件になる。小さな気孔率は通気性が低いことに通じ、酸化還元の雰囲気変化の影響が小さくなって組織の劣化が抑制される。トリジマイトやクリストバライトの結晶を主成分とする珪石質耐火煉瓦では、600℃以下で異常熱間膨張域に入り亀裂が新たに生じる危惧があるので、高温下での炉内修理作業を強いられる。
それゆえ、コークス炉の内張り材に好適でこれらの操業条件に対応でき耐久性に優れ、より安全かつ確実な保全が可能な珪石質耐火煉瓦を短時間で安価に製造するために、発明者らは次のように考えた。
石英材質は結晶質であるが溶融石英質材は非晶質であり、石英質材を主原料とする耐火煉瓦と溶融石英質材を原料とする耐火煉瓦とは、おおむね互いに逆の長所短所を有している。それゆえ、石英質材と溶融石英質材との両者を適正な比率で混ぜて複合化した主成分とし、粘土質材を加えることで混練性や成形性、可塑性、焼結性などを改善すれば、熱間膨張および残存膨張収縮の振れ幅をより小さく抑えることができるはずである。そうすれば、耐久性や保全性に優れコークス炉の内張り材に適した耐火煉瓦ができる可能性が高いであろう。
そこで発明者らは試行錯誤を繰り返した後、以下のような原材料の配合で混練成形した中間製品を所定の温度範囲で焼成することにより、所望の特性を持つ珪石質耐火煉瓦を製造できることを発見した。
まず、溶融石英質材の含有量を85〜92重量%に限定した。これは、非晶質がもつ熱間膨張率が低いという特性を生かして熱衝撃に対する耐性を高めるためである。もし溶融石英材が85重量%未満であれば、このような特性が十分でなくなり好ましくない。逆に92重量%を越えてしまうと、コークス炉の内張りとして使用時に過焼結状態となり残存収縮現象を生じて不都合である。溶融石英質材にはシリカ成分が99.5重量%以上の高純度品を使用して、製品における非晶質材の割合を高くするようにした。
次に、石英質材の含有量を5〜12重量%に限定した。これは、5重量%未満では使用時に過焼結による残存膨張性を改善することができず、逆に12重量%を越えると石英質材による熱間異常膨張現象が現れて耐熱衝撃性が劣化し損傷しやすくなるからである。また石英質材には、純度の不安定なリサイクル原料ではなく、粒度1mm以下の天然原料を用い、安定した品質の製品を提供できるようにした。
そして、粘土質材の含有量を3〜5重量%に限定した。これは、3重量%未満では成形時に十分な可塑性が得られず成形性に難が生じるほか、焼成時の焼結能力が劣化するからある。逆に粘土質材が5重量%ないし10重量%を越えると、耐熱衝撃性が劣化して使用時に亀裂や剥落が発生しやすくなり、やはり不都合である。
なお、粘土質材には高い可塑性および焼結性が要求されるので、主にベントナイトを用いた。以下の実施例では、ベントナイトの含有量を3〜5重量%とした。また、混練時工程および成形工程のために原材料に適量の水分および有機バインダーなどを混ぜ込むが、これら水分および有機バインダーは焼成工程において消失し製品にはほとんど含まれなくなる。
本発明の製造方法の実施例としては、以上の配合比率の範囲内で調整した溶融石英質材および石英質材と粘土質材とをウェットパンで混練し、成形した後に乾燥させて焼成した。ここで、焼成温度を1000〜1300℃に限定したが、これは製品における石英質に占める非晶質材の割合を65〜85%程度にまで高め、十分な耐久性および耐熱衝撃性を得るためである。
(実施例および比較例)
以上の考察に基づいて発明者らは組成だけを変えた実施例1−4と比較例1−2および比較例3−7とを試作し、各種評価試験を施して表1に示す結果を得た。「配合」とあるは原材料に占める各材料成分の重量%である。同表の下段に示す「組成」の単位は重量%であり、実施例1−4では、製品の組成に占める石英質の結晶(SiO2結晶)は18〜32重量%である。逆に各実施例で非晶質材が石英質に占める割合は、65〜85重量%程度と見てとれ、より好ましくは68〜82重量%である。
Figure 2018138497
表1において、配合とあるは混練にかける各原材料(順に溶融石英材、石英質材、ベントナイトおよび本山水簸粘土)の含有量を示し、石灰のみは外掛けの比率である。実施例1,2は、溶融石英材の含有量について降順に並んでおり、逆に石英質材の含有量について昇順に並んでいる。なお、組成においてSiO2結晶と非結晶(非晶質)成分との割合を判別するには、X線回折によるリートベルト法を用いた。
表1で実施例1−4の各種試験結果(物性値および熱間特性の欄)を見ると、原材料の種類とその配合比率とが前述の本発明の範囲にあり、上記所定の温度範囲で焼成した珪石質耐火煉瓦によれば、以下のような好ましい特性が得られることが分かった。
・気孔率:20%以下
・圧縮強さ:25MPa 以上
・熱間線膨張:0.5%以下(20℃から1000℃まで加熱して)
・熱間荷重軟化点:1500℃以上
・耐スポーリング性:良(600℃で)
また、本実施例の製造方法によれば、乾式プレスによる成形性も良好であり、上記特性を持った珪石質耐火煉瓦を短時間で安価に製造することができる。
一方、各比較例については、それぞれ以下のようなものであると解せる。
・比較例1:広く用いられている珪石質耐火煉瓦であり、焼成に高温で長時間を要す。
・比較例2:比較例1とは逆に石英質材(珪石)を含まない耐火煉瓦である。
・比較例3−5:溶融石英質材と石英質材との配合比率が本発明とは異なる。
・比較例6:ベントナイトが多すぎて本発明とは異なる。
・比較例7:実施例2のベントナイトに代えて水簸粘土を使用。
以上のいずれの比較例でも、気孔率、圧縮強さ、熱間線膨張、耐スポーリング性、価格や工数のうちいずれか一つまたは複数の点で、本発明の各実施例が解決している課題を解決していない。
参考までに、上記の各実施例および各比較例に使用した原材料から採取したサンプルの化学成分を分析した値を表2に示す。
Figure 2018138497

Claims (11)

  1. 原材料に占める溶融石英質材の含有量が85〜92重量%であり、石英質材の含有量が5〜12重量%であり、少なくとも半量のベントナイトを含む粘土質材の含有量が3〜5重量%であって、
    製品に占める石英質のうち非晶質材が65〜85重量%であることを特徴とする、
    珪石質耐火煉瓦。
  2. 前記溶融石英質材の前記含有量は85〜90重量%である、
    請求項1に記載された珪石質耐火煉瓦。
  3. 前記石英質材の前記含有量が5〜10重量%である、
    請求項1ないし請求項2のうちいずれか一項に記載された珪石質耐火煉瓦。
  4. 前記粘土質材は前記ベントナイトである、
    請求項1ないし請求項3のうちいずれか一項に記載された珪石質耐火煉瓦。
  5. 前記石英質材は、粒度1mm以下の天然原料である、
    請求項1ないし請求項4のうちいずれか一項に記載された珪石質耐火煉瓦。
  6. 前記石英質のうちに前記非晶質材が占める割合は68〜82重量%である、
    請求項1ないし請求項5のうちいずれか一項に記載された珪石質耐火煉瓦。
  7. 溶融石英質材の含有量が85〜92重量%であり、石英質材の含有量が5〜12重量%であり、少なくとも半量のベントナイトを含む粘土質材の含有量が3〜5重量%である耐火材料を混練する混練工程と、
    混練されたこの耐火材料を所定の形状に成形して成形材とする成形工程と、
    この成形材を乾燥させた後に1000〜1300℃で焼成する焼成工程とを有することを特徴とする、
    珪石質耐火煉瓦の製造方法。
  8. 前記溶融石英質材の前記含有量は85〜90重量%である、
    請求項7に記載された珪石質耐火煉瓦の製造方法。
  9. 前記石英質材の前記含有量が5〜10重量%である、
    請求項7ないし請求項8のうちいずれか一項に記載された珪石質耐火煉瓦の製造方法。
  10. 前記粘土質材は前記ベントナイトである、
    請求項7ないし請求項9のうちいずれか一項に記載された珪石質耐火煉瓦の製造方法。
  11. 前記石英質材は、粒度1mm以下の天然原料である、
    請求項7ないし請求項10のうちいずれか一項に記載された珪石質耐火煉瓦の製造方法。
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