JP3952222B2 - 誘導炉 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は銅および銅合金の溶解や溶湯の精錬を行う場合に用いられる誘導炉の内張り用耐火物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、銅および銅合金等の金属の溶解、精錬を行う場合、黒鉛ルツボを内装したルツボ炉が用いられていたが、最近では操業上溶解、精錬が簡便であり、溶湯の品質調整、管理がし易すく作業上の省力化が進め易く炉の内張り材の保全の機会が少なくなると共に作業環境が改善される誘導炉が用いられるようになってきている。誘導炉は外周部に電気誘導コイルを配設し、このコイルの内側に必要ならばコイル保護用のコイルセメントにより被覆層を備えさせ、その内側に湯モレセンサー、絶縁材、断熱材等を配設しその最内側に1層の耐火材壁(内張り材)を構築して使用されている。この内張り耐火壁の構築方法は一般には炉体の内側に所定の壁厚さを持たせるように設計された鋼製の内型枠(以下フォーマーと称する)を炉本体内に配設し、このフォーマーと炉本体との間隙部に乾粉状の不定形耐火物を投入した後、フォーマーの内側より振動を与えながら投入された不定形耐火物を加振充填させて施工する。この乾式不定形耐火物の施工の良否が内張り材の耐用を大きく左右し炉の寿命が決る。施工時の充填度が低く且つ充填度にバラツキが有ると異状損傷をきたし、その耐用は短命に終る。この予定外の短命寿命の場合や大きな異状損傷は内張り材の寿命のみにとどまらず、炉本体の損傷にもつながる重大事となり鋳造工場の稼動停止にもつながり大きな影響をもたらす。安定した操炉を行うためにはより確実なる施工を行うことが必要である。それには高い熟練度が必要とされる。このような施工の良否と共に長寿命化をはかり施工の省力化や、工場の稼動率を高めるためこれに用いられる耐火材は特に吟味されたハイアルミナ質材,アルミナ質材,マグネシア質材,およびスピネル質材や、これらの材料に炭化珪素質材5〜20重量%添加された炭化珪素質耐火物に必要ならば無水硼酸等の焼結助材を添加した乾式不定形耐火物が使用に供されているが、炉の操業中に生成する銅の酸化物を主な成分とするノロの付着および組織内へノロの成分が選択吸収的浸透されて異成分組織の形成や過焼結層が形成し、これが原因で使用時に、加熱冷却が繰り返されることにより内張り材に亀裂が発生し、この亀裂部に地金が侵入し全体的には炉壁の残厚を多く残しながらも耐用に耐えられなくなり、内張り材の寿命を短くしている。この間付着したノロの除去作業は高温中に行なわないと除去が困難となるため非常な高熱下での作業が要求される。このため炉壁保全の機会が多くなり炉操業率を低下させることにより炉の保全費がかさむことや解体、施工と云う極度に作業環境の悪い3Kの代表的な作業をよぎなくされる。このような現状下でも作業効率を高め製造コストの引下げ、製品の大型化等の要求により炉は大型化の道を進んでおり、ますます過酷な作業がしいられてきている。
これらの諸問題を解決し安定した操炉ができて操業率が高く、ランニングコストが低く、良い環境下での作業を目指すため炉の内張り材の補修や解体、新規施工と云う3K作業の頻度が少なく且つ簡便で快適な作業となることが強く望まれているのが現状である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
前述の如く、炉の稼働中は炉の内張り材の稼働面に銅の酸化物を主成分とするノロが多く付着する。このノロ取りは高熱場所での作業であることや亀裂の発生による地金差し等による突発的な損傷は炉の操業率の低下をまねきひいては鋳造工場の操業面にも支障を来たす。このための炉の保全費チョコ停によるロスが非常に高くなることや炉の解体、打施工と云う代表的な3K作業の機会が多くなり、操業面、炉の費用面
、および3K作業面等々の多くの問題をかかえている。これらの諸問題を解決して工場の稼動率面、製造コスト面、および作業面の改善することのできる誘導炉の内張り用耐火物を提供することを技術的な課題とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者等はこのような現状に鑑み炉が安定して操業ができ、且つノロ取り等の高熱場所での作業頻度を少なくし、3K作業の軽減が計られ、しかも亀裂の発生、発達により地金差しを生じ、突発的に内張り材の張替えのための解体や施工作業を少なくし、より高い安全で安定した操業が維持することのできる手段として内張り用耐火物の材料構成を溶融石英質材20〜85重量%、炭化珪素質材5〜40重量%、天然珪石質材10〜40重量%でこの3者の合量が90重量%以上である耐火材料で構成し、必要ならば適宜の焼結助材を添加した乾粉状の不定形耐火物とすることにより解決の道を見い出したものである。即ち溶融石英質材を主体として低熱膨脹性と易焼結性能を充分に活用しこれに炭化珪素質材を加えて耐食性、金属スラグ等の組織内への異成分の浸透を抑える。更に天然珪石質材を添加することにより残存膨脹性能を付与して耐火物の受熱による焼結時の体積収縮を抑制して体積収縮に伴う亀裂の発生、発達現象の出ないように耐火物自体を残存膨脹性とすると共に耐食性をも改善する等の3者が持つ特性をそれぞれ活用して焼結性に富み、残存膨脹性があり、しかも耐食性の高い材質とすることができることにより溶損が少なく、且つ割れ、亀裂が小さく、ノロの付着が少なくなることにより現在の諸問題を大きく改善することができて、安全且つ安定した操業ができ、チョコ停を改善した高能率な作業ができることおよび高熱下でのノロ除去作業も大巾に軽減することができた。更に前記耐火材料より耐用度を向上させるために改善策としてあらかじめ側壁を1体成形体となし、この成形体が組織的に均一性が高く且つ1000℃以下の温度で熱処理を施し、気孔率15%以下の高密度化成形体とする。これを誘導炉の最内側壁材として、この定形耐火物を炉本体内に配設して炉本体との間隙に乾式不定形耐火物を投入して直接加振充填する2層構体とすることにより作業環境の悪いなかでの築炉作業即ち3K作業が大きく軽減されて改善され、又高い熟練度を必要とせず確実なる施が容易にかつ簡単にできるようになった。尚炉の立ちあがりにさいしても1体成形体としているため従来のように10〜15時間と長時間を要する低温での焼結工程を全く必要とせず築炉後直し正規の稼働が可能となった。このように材質及び耐火物の形態を改善した方法での施工方法の開発により、より安定した操業ができ、長寿命化施工の簡略化と3K作業の軽減化及び操炉時の前工程を省くことができる等、大きな効果をあげることができて、現在かかえている諸問題を解決し得る方法をここに提供するものである。
【0005】
(限定理由)
▲1▼炭化珪素質材の添加量5〜40重量%
a 5重量%以下ではノロの付着性、ノロの浸透性および耐食性の改善効果が小さい
b 40重量%以上であると、導電材であるためエネルギー効率が小さくなること、耐食性および耐熱衝撃性の改善効果が認められないことおよび原料コストが高くなるためである。
▲2▼溶融石英質材の添加量20〜85重量%
a 20重量%以下となると、溶融石英の諸特性を引き出すことができない。
b 85重量%以上となると耐熱衝撃性能、異成分の組織内への浸透等の面では改善は認められるが反面使用時の受熱による焼結が進み体積収縮を生じ亀裂の発生を促進されるためである。
▲3▼天然珪石質材の添加量10〜40重量%
a 10重量%以下では耐食性および使用時の体積収縮性を改善するに至らない。
b 40重量%以上となると残存膨脹率が高くなると共に焼結性能が低下して耐食性の低下および組織内へのスラグ成分が浸透し易くなり変質層の生成に伴いノロ付着度が高くなると共に構造的な損傷度を高めるためである。
▲4▼炭化珪素質材,溶融石英質材,天然珪石質材の3者の合量が90重量%以上この3者以外にアルカリ等を含有する材料が混入すると耐熱性をそこない体積の収縮を生じたり亀裂の炉構状の損傷現象を起し溶損量、異状損傷度を高める可能性が出てくるためである。
▲5▼気孔率15%以下とする
耐火物の気孔率が15%以上となると組織が粗くなり溶融異物が容易に浸透できるようになりこれが溶損を増加させるとか変質層を形成して内部亀裂を生じせしめ剥落現象となり構造的損傷を多発させる。
▲6▼熱処理温度1000℃以下
1000℃以上となると耐火物の硬さが進み熱衝撃抵抗性が低下すると共に亀裂が成形体の厚み全部に入り損傷を早めることとなるためである。
【0006】
【実施例】
誘導炉用内張り耐火物としての必要特性は
1 使用中の受熱により残存膨脹性を示すこと
2 使用中のノロの付着が少ないこと
3 耐食性に富む
等を具備していることが求められる。この条件に適合する内張り用耐火物を得るため基礎試験として
1 第1次基礎試験
溶融石英質材と、天然珪石質材の適応範囲(表3)
2 第2次基礎試験
第1次基礎試験を基にしての炭化珪素質材の適応範囲(表4)
を確認して実炉にて実用試験を行う。
1 供試体の製作方法
試験体は表1、2に示す定められた材料を用いて表3に示された配合比率に調整して、微粉部に解膠材としてリン酸ソーダー1重量%、水4重量%を添加し、混練後、粗、中粒子部材を混合、混練後、振動台上で、加振脱泡を5分間行い、30〜50mm厚みの成形用原料を作成し、振動台上に250×114×65mmの成形用石膏型を固定し、振動させながら石膏型内へこの成形用原料を順次投入して成形する。脱型後予備乾燥として30〜50℃24時間乾燥後、500℃10時間の熱処理を行ない製出する。この試験体を1300℃×5hrの熱処理をほどこし物性値として
第1次基礎試験では線変化率、物性値、強度の3点を測定し、
第2次基礎試験では線変化率、物性値、強度、浸食試験の4点を測定した。
浸食試験は高周波誘導炉を用いて側壁張り分け法での浸食試験を行う。
実施例に用いる耐火材料の化学成分値を表1に示し、
基本粒度構成を表2に示す。
【0007】
【表1】
【0008】
【表2】
【0009】
【表3】
【0010】
以上の試験結果より溶融石英質材と天然珪石質材の複合化材において焼結性能が高く、且つ残存膨脹性を示す適応範囲は溶融石英質材50〜90重量%、天然珪石材質10〜50重量%の良い結果が得られたので、この試験結果より溶融石英質材65重量%、天然珪石質材35重量%を基礎材として炭化珪素質材の配合量の適応等について第2次基礎試験を行った。
第2次基礎試験結果を表4に示す。
【0011】
【表4】
【0012】
この第2次基礎試験の結果より炭化珪素質材の添加量は5重量%より焼結性能も改善され異成分の浸透深さおよび耐溶損、耐スラグ性の効果が認められ、添加量の増量にともない35重量%まではその改善効果が高くなるが40重量%まではほぼ同じ位の平行値を示すが50重量%となると焼結性能も低下する傾向を示し添加の結果がマイナス傾向となる。
本発明の実用実施品として第2次基礎試験のNo2およびNo4の本発明品を用いた。比較例としてNo1、No6およびNo4と同材質の不定形耐火材No4Aを用いた。本発明品のNo2、No4および比較例のNo1、No6は第1次基礎試験で行ったのと同様の製造方法を用いて誘導炉用の所定の形状の気孔率15%以下の1体成形体の定形耐火物を作成する。これを誘導炉本体内に配設し、炉本体との間隙に1体の成形体を拘束させるためにハイアルミナ質の乾式不定形耐火物を加振充填し固定施工する。尚比較例のNo4Aは従来法であるフォーマーを炉本体内に配設し、所定の厚みになる様この間隙にNo4A材を投入振動充填して築造して使用に供した。
実炉試験に用いた誘導炉の使用条件を下記に示す。
炉の大きさ 2T
溶解物 銅
溶湯温度 1300℃
【0013】
【表5】
【0014】
【発明の効果】
以上の実用実施例の結果表5にも示されるように実施比較例No1およびNo6、No4Aに比べ本発明品No2、No4は亀裂の発生およびこれに起因する溝状の耐用寿命上有害な異状損傷を小さくし安全且つ安定した耐用寿命を示すので耐用寿命の改善と共に炉の計画保全作業の組込みできること等炉の操業が円滑に行える。なお内張り材の総損傷量は1ch当りの総損傷量比は本発明品No2、No4は比較例品No1に対してそれぞれ39.3%,32%、比較例品No6に対して66.7%,54.3%そして比較例品No4Aの乾式不定形材に対して65.6%,53.4%にとどまり材質および乾式不定形材を気孔率15%以下の定形耐物にすることにより施工体の物理的特性値の向上により大巾な耐用寿命の向上が得られた。このように操業の円滑度が高くなると共に内張り材の耐用寿命の向上は炉内張り材の解体、施工と云う3Kの代表的な作業機会を少なくする等の幾多の改善ができ絶大なる効果を修めることができた。
Claims (1)
- 銅および銅合金を溶解、精錬する誘導炉において炉の最内側を構成する耐火物を炭化珪素質材5〜40重量%、溶融石英質材を20〜85重量%、天然珪石質材を10〜40重量%でこの3者の合量が90重量%以上である耐火材料に適宜の解膠材を添加し混練後、一体成型体とし、1000℃以下の熱処理を施し気孔率を15%以下とした定形耐火物で築造したことを特徴とする誘導炉。
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JP04468397A JP3952222B2 (ja) | 1997-02-12 | 1997-02-12 | 誘導炉 |
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