本願明細書に開示された実施形態は、強固組織を破壊することはないが軟組織を差別的に分離する、ブラントジセクションするための方法及び装置を含む。特に、1つの実施形態において、複合組織を差別的に切開する差別的切開器具が開示される。差別的切開器具は、取っ手と、取っ手に接続された第1の端部と第2の端部とを有する細長部材とを備える。差別的切開器具はまた、第2の端部に回転可能に取り付けられるように構成された差別的切開部材を備え、差別的切開部材は、少なくとも1つの組織係合面を備える。差別的切開器具は、さらに、回転軸を中心に差別的切開部材を機械的に回転するように構成された機構を備え、それにより、少なくとも1つの組織係合面を複合組織に対して少なくとも一方向に移動させる。少なくとも1つの組織係合面は、差別的切開部材が複合組織内に押し込まれたときに、少なくとも1つの組織係合面が複合組織を横断し、少なくとも1つの組織係合面が複合組織における少なくとも1つの軟組織を破壊するが、複合組織における強固組織は破壊しないように、複合組織に選択的に係合するように構成されている。
他の実施形態において、複合組織を切開するための差別的切開部材が開示されている。差別的切開部材は、第1の端部から第2の端部までの中心軸を有する第1の端部と第2の端部とを有する本体を備える。第1の端部は、複合組織から離れる方向に向けられるように構成されるとともに、第2の端部が動作方向に沿って掃引するように差別的切開部材を移動させる駆動機構と係合するように構成されている。第2の端部は、複合組織に向けられるように構成された組織に面した表面を備える。組織に面した表面は、少なくとも1つの谷及び少なくとも1つの突起の交点が動作方向に対して直角なその方向の成分を有する少なくとも1つの谷エッジを定義するように、組織に面した表面上の動作方向に沿って配列された少なくとも1つの谷及び少なくとも1つの突起の交互列から構成された少なくとも1つの組織係合面を備える。1つの実施形態において、少なくとも1つの谷エッジは鋭くない。
具体的には、「差別的切開器具」が開示されている。用語「差別的」は、差別的切開器具が強固組織の破壊を回避しながら軟組織を破壊することができることから使用される。差別的切開器具のエフェクタ端部は、強固組織及び軟組織の双方から構成される組織に押圧されることができ、軟組織は、強固組織よりもはるかに容易に破壊される。それゆえに、差別的切開器具が複合組織内に押圧されたとき、差別的切開器具は、軟組織を破壊し、それによって強固組織を露出させる。この差別的動作は、自動であって、装置設計の機能である。注意は、ブラントジセクションのための伝統的な方法よりも手術者にとっての注意力は少なくてすみ、組織に対する偶発的な損傷の危険性は、大幅に低減される。
本特許出願の目的のために、「軟組織」は、ブラントジセクション中に分離され、引き裂かれ、除去され又は別の形で一般的に破壊される様々な軟らかい組織として定義される。「ターゲット組織」は、ブラントジセクション中に血管、胆嚢、尿道又は神経束など、単離されてその完全性が保存される組織として定義される。「強固組織」は、機械的に強く、通常、堅く詰まったコラーゲン又は他の細胞外繊維性基質の1つ以上の層を含む組織として定義される。強固組織の例は、血管壁、神経繊維の鞘、筋膜、腱、靭帯、胆嚢、心膜及び他の多くを含む。「複合組織」は、軟組織及び強固組織の双方から構成される組織であり、ターゲット組織を含むことができる。
図3A、図3B及び図3Cは、強固組織を破壊せずに差別的に軟組織を破壊することができる差別的切開器具300のエフェクタ端部を示している。この実施形態において、切開部材は、シュラウド330の内部の空洞331の内部に保持された軸320を中心に回転する切開ホイール310を備える。図3Aは、別個の部分を示している。図3B及び図3Cは、アセンブリの2つの異なる視点を示している。切開ホイール310は、モータ又は適切な伝達手段を有する手動で駆動されるドライブなどのいくつかの機構のいずれかによって回される。切開ホイール310は、強固組織ではなく軟組織を把持して破壊することができる組織係合面340を有する。組織係合面340及び切開ホイール310の例は、ダイヤモンド砥石車又は研磨石又は表面からの小さなオブトルージョン又は突起(さらに以下に定義される)によってそれ以外の形で覆われた表面を含む。シュラウド330は、切開ホイール310の一部のみが露出するように切開ホイール310の一部を覆い隠す。使用時には、切開ホイール310は、約60(60)から約2万5千(25,000)rpm又は約60(60)から約10万(100,000)rpmの範囲の速度で回転し、速度は手術者が選択可能である。さらに、切開ホイール310の回転方向は、手術者によって逆転させることができる。代わりに、切開ホイール310は、1つの実施形態において毎分約60から約2万(20,000)サイクルの範囲の周波数で振動(往復振動)することができる。他の実施形態において、切開ホイール310は、毎分約2,000から1,000,000サイクルの範囲の周波数で振動(往復振動)することができる。
切開ホイール310は、強固組織ではなく軟組織を差別的に破壊することができる「差別的切開部材」(以下「DDM」)の一例である。図3Dは、明確化のために差別的切開器具300の残りから分離されたDDM350の1つの実施形態の側面、正面及び斜視図を示している。DDM350は、本体360が回転する回転軸365を有する本体360から構成される。回転は、振動的(すなわち、前後)又は連続的とすることができる。本体360は、少なくとも本体360の外面361の一部にわたって分布された組織係合面370を有する外面361を有する。非組織係合面371は、組織係合面370によって覆われていない外面361の一部である。この実施形態において、組織、特に組織係合面370に接触する外面361の部分は、組織をスライスするのに十分に鋭い特徴を有するべきではなく、そのため、(メス又はハサミのような)ナイフエッジ、(のこぎりのような)鋭利に鋭い歯、鋭いコーナ及び(ドリルビット又は関節鏡シェーバのような)鋭いエッジのフルーティングがあってはならない。ここで、鋭いとは、25・m未満の曲率半径を有することを意味する。DDMの典型的な最大寸法は、約3(3)から約20(20)ミリメートル(mm)の間である。あるいは、顕微手術用の小型版は、約2(2)から約5(5)mmの間を取る。
組織係合面370は、さらに、本体360の外面361からの(図3Dの拡大詳細図に示されている)複数の突起375から構成されており、各突起375は、本体360の外面361の局所領域に対して略直角な方向において谷からピークまで測定された突起長380を有する。組織係合面370上の異なる突起375は、全て同じ突起長380を有することができ、又は、それらは、異なる突起長380を有することができる。突起375は、好ましくは、約1(1)mm未満の突起長380を有する。あるいは、いくつかの実施形態について、突起長は、約1(1)mmよりも大きいが、約5(5)mm未満とすることができる。まとめると、組織係合面370上の全ての突起375は、平均突起長(Pavg)を有する。突起375は、好ましくは約0.1mmから約10(10)mmの距離にわたる間隙385によって分離される。
図3Dの本体360は、必要に応じて、組織係合面370が回転軸365から様々な距離に位置するように成形されることができる。それゆえに、配置半径Rは、回転軸365から組織係合面370上の任意点まで回転軸365に対して直角な面内で測定されることができる。それゆえに、最短長を有する最小配置半径Rminと、最大長を有する最大配置半径Rmaxとがあり、図3D及び図3Eに示されるように、Rminは、組織係合面370がDDM350の面361を完全に覆わない場合にはいつでもゼロよりも大きい。それゆえに、組織係合面370が回転軸365から様々な距離で配置されているように本体360が成形されている場合、(Rmax−Rmin)は、ゼロよりも大きい。DDMのいくつかの実施形態において、この関係(Rmax−Rmin)は、約1(1)mmよりも大きい。他の実施形態において、この関係(Rmax−Rmin)は、Pavgよりも大きい。あるいは、図3D及び図3Eにおける例に示されているように、Rminは、一般的にRmaxよりも少なくとも5%短い。DDMについての一般的なサイズは、Rmin>約1(1)mmであり、Rmax<約50(50)mmである。しかしながら、微細切開用の小型版は、Rmin>約0.5mm且つRmax<約5(5)mmからなるより小さい寸法を有することができる。
ここで図3Eを参照すると、DDMの4つの異なる実施形態は、回転軸365がページ面に対して直角である側面図に示されている。後続の段落において記載されるように、回転軸365に対して直角な面におけるDDMの断面形状は重要である。以下は、DDMの断面形状についての4つのシナリオである。
DDMタイプI:断面形状は、円形又は円のくさび以外の任意形状とすることができる。回転軸365は、Pavg<(Rmax−Rmin)という結果を生み出す図3Dに示されるように断面内の任意点に位置している。図3Dに示されるように、DDMタイプIは、様々な非対称性、波状/起伏/スカラップ境界、カットアウト、インボリュート境界などを含む規則的な断面形状及び不規則な断面形状を含むことができる。この例において、DDMタイプIは、2つの端部位置(破線輪郭)間を往復振動する。あるいは、動作は、回転とすることができる。
DDMタイプII:断面形状は、円形又は円のくさびである。回転軸365は、Pavg<(Rmax−Rmin)という結果を生み出すように断面内の任意点に位置している(すなわち、回転軸365は、円の中心に近くない)。
DDMタイプIII:断面形状は、円形又は円のくさびである。回転軸365は、Pavg〜(Rmax−Rmin)という結果を生み出すように円の中心に十分に近い断面内の任意点に位置している(すなわち、回転軸365は、ほぼ円の中心である)。
DDMタイプIV:断面形状は、断面形状の中心を含めて回転軸365がどこに位置していようとPavg<(Rmax−Rmin)という結果を生み出すスカラップなどの外周において規則的に反復する要素を有する。タイプIのDDM及びタイプIVのDDMは、回転軸365が断面形状内のどこでも可能であり、さらにPavg<(Rmax−Rmin)という結果を生み出すことができる点で密接に関連している。
スカラップ、起伏又はDDMの任意の規則的に反復する要素は、穿孔の壁が組織に大幅に接触しないために組織係合面370において穿孔又は孔を含んでいない。例えば、米国特許第6,423,078号明細書に開示された吸引通路は、研磨部材の組織係合面として作用する研磨面において孔を含む。これらの孔は、孔が組織係合面における流体ポートとしてのみ作用し、吸引通路の壁が組織上に負担をかけないことから、DDMについて開示された特徴を備えていない。それにもかかわらず、本願明細書に開示されたDDMは、これらのような吸引通路を含むことができる。
タイプIからIVのDDMはまた、ページ面以外の任意の様々な形状を含むこともできる。先に述べたように、「回転軸365に対して直角な面におけるDDMの断面形状が重要である」。それゆえに、図3Aから図3Cにおける切開ホイール310は、DDMタイプIIIの例である。
図3Fは、図3Dに示されるDDM350に類似するDDM390を図示している。DDM390は、第1の端部及び第2の端部392を有し、第1の端部391は、複合組織399から離れるように向けられ、DDM390が機構によって回転軸365を中心に回転するように機構(図示しない)に回転可能に係合している。機構は、電動及び手動のドライブを含むことができる。第2の端部392は、複合組織399に向けられ、3つの直交半軸、長半軸A、第1の短半軸B及び第2の短半軸Cによって定義される半楕円体形状を含み、長半軸Aは、第1の端部391及び第2の端部392を接続する線の方向にあり、短半軸Cは、回転軸365に平行であり(すなわち、Aは回転軸365に対して直角である)、短半軸Bは、長半軸A及び短半軸Cの双方に対して直角である。半楕円体形状は、所定範囲の形状を有することができる(例えば、A=B=C、A≠B≠C、A>B及びA>Cを含む3つの半軸の長さ間に異なる関係があってもよい)。1つの実施形態において、A>B>CがDDMについて非常に有効である。
図4A乃至図4Cは、どのように差別的切開器具300のエフェクタ端部が複合組織の切開のために使用されることができるかを示しており、DDMは、切開ホイール310である。図4Aにおいて、手術者は、組織塊400と接触する前又は接触すると、矢印410によって示されるように切開ホイール310の回転を開始する。図4Bにおいて、次いで、手術者は、ターゲット組織420内に到達するようにブラントジセクションのために複合組織400の塊に切開ホイール310の露出した組織係合面340を押圧する。図4Bにおける矢印430及び440は、差別的切開器具300の2つの可能な手術者実行動作を示している。シュラウド330の外側に露出した切開ホイール310の組織係合面340の一部のみが組織400に接触し、それにより、組織係合面340と接触する組織400の一部を破壊する。露出された組織係合面340の移動部分が外科医によるさらなる行動なしで(例えば、組織400に対する差別的切開器具300の外科医の強制的なスクラブなしで)組織を破壊することができることから、組織は、組織400の任意部分に対して切開ホイール310の回転切開面340を加えることによって簡単に破壊されることができるが、切開ホイール310がターゲット組織420の強固組織に接触した場合、それはターゲット組織420を破壊しない。ここで留意すべきは、矢印430における矢じりによって示されたように組織400に切開ホイール310を押圧することは「プランジ」である−強固組織を破壊せず、したがってターゲット組織420を破壊しないことから、切開ホイール310が手探りで組織400に押圧されることができるということである。差別的切開器具300の他の動作は、矢印430及び440に対して直交する動作、曲線動作及び他の3D動作を含み、組織400を切開するために使用されることができる。ターゲット組織420が露出されると、図4Cに示されるように、差別的切開器具300は、ターゲット組織420を露出させ、取り出すことができる。
図4D乃至図4Fは、どのようにしてDDMの1つの実施形態、強固組織を破壊せずに軟組織を破壊するのかを示している。図4Dは、突起375を有する組織係合面340を有する切開ホイール310としてのDDMの断面図を示している。切開ホイール310は、ページ面に略平行な軸320(図示しない)によってページ面内外に移動する。それゆえに、突起375は、ページ面にわたって移動する。図4Dは、さらに、切開ホイール310、組織係合面340及び突起375がページ面にわたって移動するのにともない適所に実質的に残っている軟組織400の塊を示している。ほぼ静止した軟組織400に対する突起375の動きを考えると、切開ホイール310は、軟組織400を破壊する。詳細には、軟組織400は、繊維成分401及びゲル状物質402の双方から構成されている。(軟組織は、例えばコラーゲン繊維及び繊維の小さな束などの繊維成分401と、水膨潤ゲル状物質中に分散された例えばより薄い膜などの薄いシート成分とを有する細胞外物質から頻繁に構成されている)。突起375は、それらが(例えば、点450及び451において)個々の繊維成分401に遭遇してつかむようにゲル状物質402を掃引することが可能であり、そして、繊維成分401は、ページ面及び軟組織400にわたる切開ホイール310上の突起375の相対動作によって引き裂かれる。切開ホイール310が組織400に深く押圧されるのにともない、突起375は、繊維成分をどんどん深くつかみ、同様にそれらを引き裂く。それゆえに、分散された成分を有する軟組織400は、DDMによって切開されることができる。
図4Eは、図4Dとは対照的に、どのようにして堅く詰まった繊維組織が切開ホイール310による切開に耐えることができるのかを示している。強固組織403は、平行に、交差して若しくは他の組織化された配列(例えば、筋膜及び血管壁)に又は堅く詰まった2D及び3Dメッシュに堅く詰まった繊維成分401から頻繁に構成されており、ゲル状物質402は、繊維成分401の配列を覆っている。図4Eにおいて、強固組織403は、堅く詰まった繊維成分401、ページ面に対して直角なそれらの長軸とともに描かれており、それゆえに繊維成分401の断面が円形として描かれているフィラメントの層を薄く被覆するゲル状材料402(点描領域)から構成されている。この画像において、切開ホイール310は、矢印405によって示されるようにページの左右に往復振動し、強固組織403の面にわたって突起375を掃引する。強固組織403における繊維成分401の堅い詰まりに起因して、突起375は、繊維成分401に別個に係合してつかむことができず、それゆえに、繊維成分401を引き裂くための十分な応力を加えることができない。さらにまた、ゲル状物質402は、潤滑剤として機能し、突起375に強固組織403の堅く詰まった繊維成分401を滑る傾向を引き起こす。最後に、切開ホイール310に露出した強固組織403の面のいかなる適合性も、強固組織403又は繊維成分401において張力発生を防止し、切開ホイール310によってかけられる任意の圧力から強固組織403の偏向をもたらす。それゆえに、強固組織403は、堅く詰まった繊維及びシート成分401、ゲル状物質402によるこれらの成分の潤滑並びに強固組織403の適合性の組み合わせによってDDMによる破壊に耐える。
上述したように、DDMの動作は、回転又は振動のいずれかとすることができる。組織の特定の領域を過ぎたDDM上の点の速度は、その組織を破壊するためのDDMの能力に強く影響を与える。図4Fは、接点470によって軟組織400にわたって(両矢印460によって示されるように)ページ面内で左右に掃引する切開ホイール310を示している。接点470の並進速度は、DDMの回転速度及び回転中心(図示しない)から接点470を分離する距離480によって決定される。回転動作について、並進速度は、2πDωに等しく、ここで、Dは距離480であり、ωは毎秒あたりの回転での回転周波数である。振動動作について、並進速度は、DΨ2Xに等しく、ここで、Dは距離480であり、Ψは毎秒あたりのサイクルでの振動周波数であり、Xはラジアンでの掃引角である。差別的切開器について、距離480は、約1(1)mmから約40(40)mmの範囲であり、回転速度は、毎秒あたり約2(2)回転から毎秒あたり約350(350)回転の範囲であり、振動周波数は、約2(2)ヘルツ(Hz)から約350(350)Hzの範囲であり、掃引角度は、2°から270°の範囲である。それゆえに、差別的切開器上の接点470の並進速度は、毎秒あたり約1(1)mmから毎秒あたり約6万(60,000)mmの範囲とすることができる。1つの実施形態において、約15(15)mmの距離480及び約45度(45°)にわたって掃引する約100(100)Hzの周波数を有し、毎秒あたり約2400(2400)mmを生み出す振動動作は、多数の軟組織にとって非常に有効である。ここで留意すべきは、これは、(図4に示されるように)手術者が実行する動作の速度が、外科医が切開中に注意を払っていることから、それらの器具がゆっくりとしか移動せず(通常は、毎秒あたり100(100)mmよりもはるかに小さい)、切開中においてDDM上の接点の速度よりも常に小さいことを意味するということである。さらに、DDMの動作は、本文書の全体にわたって回転動作から生じるものとして記載される(連続回転又は往復動、すなわち前後、振動)。しかしながら、上述したように、DDMの組織係合面が組織に適切に係合するように組織に対する直線動作を含むDDMのいかなる動作も使用可能である。
DDMは、堅く詰まった繊維組織から構成された又はそれによって覆われた血管壁、胸膜、心膜、食道、胆嚢及びほとんど全ての他の臓器又は組織に対して押し付けられることができ、DDMは、軽い圧力下でそのような強固組織を著しくは破壊しない。逆に、DDMは、腸間膜又は他の軟組織に対して押し付けられることができ、軟組織は、軽い圧力下で迅速に破壊される。本願明細書に開示された様々なDDMのいずれか1つに適合する差別的切開器具は、肺葉の平面間を迅速に切開するために、胸の内壁から離れて内側胸動脈を切開するために、肺葉の門における血管及び細気管支を分離するために、周囲の組織から食道を切開するために、繊維束を介してよりもむしろ間の大量の筋肉を貫通するために、筋繊維から離れるように筋膜及び腱を切開するために、切開された筋膜を洗浄するために、分枝状血管及びリンパ管構造を露出させるために、組織内にポケットを切開するために、及び、多くの異なる組織において組織面を分離するために、本願発明者によって見出された。差別的切開器具の有用性は広く、多くの潜在的な用途がある。重要なことに、皮膚及び手術用手袋の組成物に起因して、皮膚及び手術用手袋は、大きな圧力が印加されても、DDMによって切断されないか又は破壊されない。それゆえに、差別的切開器具は、使用するのに本質的に安全であり、特に外科医の指が切開点の近くでなければならない場合に、手術中における使用を簡便化する。
DDMは、好ましくは、軟らかいポリマ及びエラストマ(例えば、70未満のショアA)よりもむしろ、金属又は硬質ポリマなどの剛性材料(例えば、70以上のショアA)から形成されている。剛性材料の使用は、組織係合面からの突起が、軟らかい材料が使用された場合に発生する可能性があるように組織から離れて偏向するのを保持する。DDM又はそれらの構成部分は、当該技術分野において公知の任意の手段(例えば射出成形)によって又は当該技術分野において公知の任意のそのような方法によって成形された、ステレオリソグラフィによって構築されたバルク材料から加工されることができる。
DDMの組織係合面の突起は、いくつかの手段のいずれかによって製造することができる。突起は、コーティング研磨工業協会規格(the Coated Abrasive Manufacturers Institute standard)における1000よりも粗いが10よりも細かいグリットを使用したサンドペーパと同様のグリットによって組織係合面をコーティングすることによって形成されることができる。グリットは、ダイヤモンド、カーボランダム、金属、ガラス、砂又は当該技術分野において公知の他の材料からなる粒子を含むことができる。突起は、サンダー仕上げ、サンドブラスト、機械加工、化学的処理、放電加工又は当該技術分野において公知の他の方法によってDDMを構成する材料表面に形成されることができる。突起は、DDMの表面に直接成形されることができる。突起は、ステレオリソグラフィによって表面上に形成されることができる。突起は、グリットの粒子と同様に不規則に成形されることができ、又は、それらは、定義された、小平面に刻まれた、湾曲した又は傾斜した面を有して規則的に成形されることができる。突起は、細長くてもよく、これらの突起の長軸は、組織係合面に対して角度を有していてもよい。突起は、上方から組織係合面を視認したときに断面形状を有し、この形状は、円形、小平面又は複合体であってもよい。突起の断面形状は、DDMの移動方向に対して配向されてもよい。
組織の濡れを維持することは、差別的切開に役立つ。十分に濡れた強固組織は、潤滑され、DDMによる破壊を大幅に低減する。逆に、十分に濡れた軟組織は、水で膨潤して軟らかいままであり、個々の繊維の間隔を分離し、それらがDDMの組織係合面からの突起によって係合されて引き裂かれるのを促進する。組織の濡れは、切開中に生理食塩水によって組織を単に湿らすことを含むいくつかの手段のいずれかによって達成することができる。湿潤は、湿潤ラインなどの手術において既に使用された手順を用いて又は以下に開示された装置の1つによって行うことができる。さらに、組織、それゆえにDDMの組織係合面も濡らすことは、破壊された組織による組織係合面の目詰まりを低減する。
図5A及び図5Bは、円柱510として構成されたDDMタイプIIIによる差別的切開器具500のエフェクタ端部の他の実施形態を示している。図5Aは、シュラウド530とは別個の他の軸520を有する円柱510を示している。組織係合面540は、円柱510の側面を覆う。両矢印は、回転軸575を中心とする回転を示している。図5Bは、露出された組織係合面540の限られた部分のみを使用するために構成された双方の部分を示している。
図5Cは、シュラウド及びDDM、ここでは他のDDMタイプIIIについての異なる構成を有する差別的切開器具のエフェクタ端部の他の実施形態を示している。図5Cは、シュラウド580とは別個の軸570を有する切開ホイール560を有する差別的切開器具550を示している。組織係合面590は、切開ホイール560の周囲を覆う。両矢印は、回転軸575を示している。図5Dは、露出された組織係合面590の制限された部分のみによる使用のために構成された双方の部分を示している。シュラウド580が組織に対して組織係合表面590を位置決めするのを困難とし、シュラウド580が手術者の視界を遮断することから、この構成には問題がある。
図6Aは、手術者用の取っ手610を含む差別的切開器具600の1つの実施形態を示している。取っ手610は、取っ手610に接続された第1の端部621と、DDM630に接続された第2の端部622とを備える細長部材620を接続する。細長部材620は短くすることができ、直視下手術用器具におけるDDM630のより良好な手動制御を可能とするか、又は、それは長くすることができ、差別的切開器具600が腹腔鏡器具であるのを可能とする。スコッチヨーク又はクランク/スライダの回転駆動軸などのDDM630を回転させる駆動機構は、任意の細長部材620、長い若しくは短い、又はDDM630を駆動可能な任意の装置に対して容易に適合される。DDM630は、両矢印によって示されるようにDDM630がその回転軸640を中心に往復振動するように(回転軸640は、図6Aにおけるページ面に対して直交している)、第2の端部622において細長部材620に回転可能に取り付けられたタイプIIIのDDMである。第1の端部621及び第2の端部622は、細長部材620の中心線650を定義する。中心線650としての中心線650の接線651は、第2の点622に接近し、それゆえに、回転軸640は、提示角度670を定義する(図示しない−ページに対して直角)。この例において、提示角度670は、90°である(すなわち、回転軸640は、接線651に対して直角に位置合わせされている)。取っ手610よりもむしろ、細長部材620の第1の端部621は、ロボット手術用のロボットアームに取り付けることができる。DDMは、DDMを移動又は回転させることが可能な任意の他の装置に容易に適合されることができる。
図6Bは、中心線に平行な回転軸を有する同様の差別的切開器具601の他の実施形態を示している。取っ手610は、取っ手610に接続された第1の端部621と、タイプIIIのDDM631に接続された第2の端部622とを備える細長部材620に接続している。DDM631は、DDM631がその回転軸640を中心に往復振動するように第2の端部622において細長部材620に回転可能に取り付けられている。回転軸640は、図6Bにおけるページ面に平行である。第1の端部621及び第2の端部622は、中心線650が第2の端部622に接近するように接線651によって細長部材620の中心線650を定義する。それゆえに、回転軸640は、接線651に平行に位置合わせされる(すなわち、提示角度670は0°である)。(この場合もやはり、提示角度670は、提示角度が0°であることから、図6Bに提示されていない)。それゆえに、差別的切開器具601は、図5Cにおける差別的切開器具550と同様であり、それゆえに、手術者の視界を遮断することなく組織に対してDDM631の組織係合面を位置決めするのが困難であることを含む同様の制限を有する。
図6Cは、中心線650が第2の点622に接近するように湾曲した中心線650と中心線650に対する接線651とを有する湾曲した細長部材620を有する差別的切開器具603の他の実施形態を示している。回転軸640は、この例では90°である提示角度670を形成する接線651に対して直角である。細長部材620は、同様に湾曲され、接合され、関節接合され又は複数の部品から形成されてもよい。全ての場合において、提示角度670は、それが第2の点622に接近するようにDDMの回転軸及び中心線の接線によって形成される。
図6Dは、図6Bにおける差別的切開器具602に類似する差別的切開器具604の他の実施形態を示している。取っ手610は、取っ手610に接続された第1の端部621と、タイプIIIのDDM631に接続された第2の端部622とを備える細長部材620に接続している。DDM631は、DDM631がその回転軸640を中心に往復振動するように第2の端部622において細長部材620に回転可能に取り付けられている。回転軸640は、図6Bにおけるページ面に平行である。第1の端部621及び第2の端部622は、中心線650が第2の端部622に接近するように接線651によって細長部材620の中心線650を定義する。それゆえに、回転軸640は、接線651に対して非ゼロの角度で整列される(すなわち、提示角度670は、0°から90°の間である)。好ましい実施形態において、提示角度670は、図5C及び図6Bにおいて差別的切開器具603について記載された理由のために、0°に等しくない。
図7A及び図7Bは、DDMとしての切開ワイヤ710を使用する差別的切開器具700のエフェクタ端部の他の実施形態を示している。図7Aは、組み立てられた装置を示している。切開ワイヤ710は、シュラウド730のバッキング面726から距離725だけ突出しており、切開ワイヤ710は、第1のポスト720から出て、間隙722に及び、シュラウド730の端部における第2のポスト721に入る。切開ワイヤ710は、切開ワイヤ710の露出部分が図7Aにおける間隙722を横切って矢印723によって示される方向に移動するように駆動されるワイヤの連続ループである。
図7Bは、切開ワイヤ710及び駆動機構のループを描く差別的切開器具700の本実施形態の概略側面図を示している。切開ワイヤ710は、第1のポスト720に収容された第1のアイドラー軸受750を通過した後に第1のポスト720から出る連続ループである。切開ワイヤ710は、間隙722を横切って移動し、矢印723の方向に移動し、第2のアイドラー軸受751を通過する場合に第2のポスト721に入る。切開ワイヤ710のループは、例えば、湾曲矢印724の方向にモータによって回動される駆動ホイール760を通過した場合にさらにシュラウド730に戻る。それゆえに、駆動ホイール760の回転は、切開ワイヤ710を駆動する。ここで留意すべきは、切開ワイヤ710が任意の断面形状を有する可撓性線形要素とすることができ、そのため、円形断面形状のワイヤの代わりに、切開ワイヤ710が組織係合面を有する外向きの側面を有する可撓性フラットベルトとすることができるということである。同様に、切開ワイヤ710は、ワイヤがアイドラー軸受750及び751を介して回動するのを許容するよりも大径を有する可撓性コードとすることができ、可撓性コードは、組織係合面を有する。さらに、切開ワイヤ710とバッキング面726との間の距離725は、任意に大きくすることも小さくすることもでき、例えば、距離725は、切開ワイヤ710、バッキング面726並びに第1のポスト720及び第2のポスト721によって囲まれた実体領域を形成するのに十分な大きさとすることができ、それゆえに、除去対象のターゲット組織を囲むことができる。対照的に、距離725は、切開ワイヤ710がシュラウド730の表面に沿って又は後方から切開ワイヤ710を支持する細い収容溝内を動く場合にはゼロとすることができる。そのような収容溝は、半円形の断面形状を有することができ、それゆえに、切開対象の組織に対して切開ワイヤ710の断面形状の一部だけを露出する。さらに、バッキング面726の形状は、平坦とすることができるか、又は、それは微妙に又は顕著に湾曲することができ、湾曲面は、凸領域、凹領域又はそれらの組み合わせを有することができる。
図8A−図8Cは、DDMとして可撓性ベルトを使用する差別的切開器具800のエフェクタ端部を示している。図8Aは、別個の部分を示している。可撓性ベルト840は、外側組織係合面850を有する。可撓性ベルト840は、全てがシュラウド830内に収容されている軸820を中心に回転するアイドラーホイール810にわたって移動する。
図8Bは、露出された可撓性ベルト840の組織係合面850の限られた部分を有する差別的切開器具800の組み立てられたエフェクタ端部を示している。
図8Cは、どのようにして可撓性ベルト840などの可撓性ベルトが駆動されることができるのかの一例の概略の平面図を示している。アイドラーホイール810及び駆動ホイール860は、シュラウド830の内部に取り付けられている。可撓性ベルト840は、アイドラーホイール810及び駆動ホイール860に巻き付いている。駆動ホイール860は、可撓性ベルト840が湾曲矢印870によって示される方向に駆動されるように回転するように給電される。そして、シュラウド830の外部に露出した組織係合面850は、組織を破壊するために使用される。駆動ホイール860は、モータ、手回しクランクなどのいくつかの機構のいずれかによって駆動されることができる。駆動ホイール860及びアイドラーホイール810は、直円柱である必要はなく、それらの回転軸が平行である必要もない。
シュラウドの外側の組織係合面の露出の程度は、前の例に示されたものよりも大きいか又は小さくすることができる。実際には、露出を変化させることは、差別的切開器具の動作のいくつかの態様を変更する。
第1に、大きな露出は、組織係合面の露出面積を増加させ、単位時間あたりに破壊される組織量を増加させ、除去された組織の表面積を増加させる。それゆえに、露出を低減させることは、組織のより正確な除去を可能とするが、それは除去される材料の総量を低減させる。第2に、露出を増加させることは、露出した組織係合面の角度を変化させる。シュラウドにおける開口900によって制御されるように組織係合面850の逐次制限された露出を有する差別的切開器具800のエフェクタ端部の概略平面図を示す図9A乃至図9Cを考える。開口900は、図9Aにおいて最大であり、図9Cにおいて最小である。露出が制限されるのにともない、組織係合面850に対して直角な矢印の角度の範囲は低減する。図9Aにおいて、組織係合面850は、前方及び両側の双方を破壊する。図9Cにおいて、組織係合面850は、前方のみ破壊する。それゆえに、組織係合面850が組織に適用される場合、露出した組織係合面の角度に応じて、異なる方向の接触が適用される。
第2に、組織係合面850の露出の角度の増加はまた、組織の接触面が歪む角度と器具におけるトルクとの双方を変化させる。組織係合面1010の適用によって形成される組織400上の摩擦を示している図10A−図10Cを考える。
図10Aにおいて、組織係合面1010は、矢印1020の方向に移動している。これは、矢印1030の方向に摩擦力を生み出す。接触面積が大きいほど、摩擦力も大きい。摩擦力は、双方とも組織400を横に(矢印1030の方向に)引っ張って組織400を剪断し、反対の矢印1020の方向に組織係合面1010を押し込む。組織係合面1010が手術者によって保持された点1040から所定距離において器具1060に取り付けられている場合には、摩擦力は、点1040を中心にトルク1050を設定する。このトルクは、器具1060の点1040の反対の端部1070に所望の適用点から離れるように引っ張らせることができ、切開の制御をより困難とする。それゆえに、組織係合面の露出の程度を制限することは、摩擦力を低減し、取っ手におけるトルクを低減することによって制御を改善する。
図10Bは、どのように円形の組織係合面850が組織係合面850に対して直角な、それゆえに円形の組織係合面850上の組織400の接触範囲に依存する異なる方向において摩擦力を生み出すのかを示している。組織400上に得られた多方向の剪断力は、組織400においてより複雑な歪みパターンを生み出す。図10Aにおけるように、摩擦力は、シュラウド830の先端において正味の上向きの力1080をさらに生み出す。しかしながら、シュラウド830の先端において正味の左/右(組織400の内外)力を生み出さない。図10Cは、開口900を狭くすることによって組織係合面850の露出を低減することは、組織上の摩擦力をより1次元的にし、組織における歪みパターンを簡略化することを示している。
組織に対する摩擦のこの議論にかかわらず、濡れた組織に関して上述したように、本願明細書に記載されたDDMは、複合組織に対して低い摩擦を有する場合に有効である独特の品質を有する。非組織係合面及び組織係合面は、DDMの全体が外科潤滑剤又はヒドロゲル潤滑剤などの潤滑剤を十分に浸した場合であっても有効である。
手術において、身体の他の部分に対して組織の意図しない移動を最小化することが好ましい。組織の破壊片は、ここで開示された差別的切開器具の組織係合面に付着することがある。意図しない移動は、2つの方法で最小化することができる。第1に、図10B及び図10Cに示されるように開口900の形状を狭くして制御することは、組織係合面850に付着した破壊された組織の断片がシュラウド上に堆積されるか又はシュラウドに入る前に短い距離運ばれるにすぎないことを意味する。同様に、それらが付着した後に慣性によって組織係合表面850から接線方向に離れるように送出された場合には、開口900を狭くすることは、付着に利用可能な表面積、付着に利用可能な時間及び材料が加速することができる距離を低減する。第2に、組織係合面850は、組織付着に対して抵抗することができる。組織係合面850の表面処理は、化学処理、蒸着、スパッタリング及びその他などの当該技術分野において公知のいくつかの技術のいずれかによって達成することができる。例えば、いくつかの公知の方法のいずれか(例えば、浸漬被覆、化学蒸着、シランなどとの化学的架橋など)によって組織係合面850をフッ素化することは、親水性材料及び炭素系疎水性組織成分の双方によって組織付着に抵抗する組織係合面850を形成することができる。1つの実施形態において、ダイヤモンド/炭化物コーティングした組織係合面が使用されてもよく、我々は、これらの表面に対する組織付着を有する可能性がはるかに低いことを発見した。
材料の移動はまた、連続的な一方向又は連続回転運動よりもむしろ、DDMの振動(往復)運動の使用によって低減することができる。振動は、数度の回転(例えば、5°から90°)のみにわたる振動の距離を超える距離にわたる移動を防止する。多数の機構のいずれかは、スコッチヨーク又はクランク/スライダなどの回転モータによる往復振動運動を駆動するために使用されることができる。
組織の付着はまた、組織係合面850の有効性を低減させるための問題である。組織係合面850の詰まりは、組織係合面850上に材料の厚いコートを形成し、軟組織を切除する際に殆ど効果を有しない。以上のように、組織による付着に対する表面耐性を形成することは、この問題を低減させる。フッ素化された組織係合面及びダイヤモンド/炭化物組織係合面は、特に脂肪組織を破壊する場合に容易に詰まらせない。
上述したように、詰まりはまた、組織が濡れている場合且つさらに組織係合面850が水で洗い流された場合に低減される。図11A及び図11Bは、3つの水出口1111の第1のアレイがシュラウド830から組織係合面850の横に放出する差別的切開器具1100を示している。3つの水出口1112の第2のアレイは、組織係合面850の反対側に放出する。水出口の他の配置は可能である。図11Aは、斜視図で実体モデルを示している。図11Bは、水管1121が内部及び水出口1111までシュラウド830の一方側に水又は生理食塩水などの他の流体を搬送し、第2の水管1122が内部及び水出口1112までシュラウド830の他方側に流体を搬送する差別的切開器具1100の概略面図を示している。水出口1111、1112は、開口900の両側から放出し、組織係合面850の両側に流体を提供する。水出口からの液体放出は、必要に応じて、生理学的活性物質を担持することができ、液体に溶解又は懸濁される。生理学的活性物質は、様々な医薬化合物(抗生物質、抗炎症剤など)と活性生体分子(例えば、サイトカイン、コラゲナーゼなど)とを含むことができる。
組織係合表面850の適切な配置は、ブラントジセクション中に有利に使用されることができる組織上の摩擦力を生成する。図12は、開口1230内に露出された2つの対向する可撓性ベルト1201及び1202を有する差別的切開器具1200を示している。各ベルトは、アイドラー部1211上を動く可撓性ベルト1201と、アイドラー部1212上を動く可撓性ベルト1202とによって図10Bにおけるように構成されているが、可撓性ベルト1201及び1202は、互いに反対に循環する。それゆえに、可撓性ベルト1201及び可撓性ベルト1202は、矢印1203及び1204によって示されるように同じ方向に並んでいるが、矢印1271及び1272によって示されるように組織1205に露出された場合には反対方向である。それゆえに、可撓性ベルト1201は、シュラウド1220上に下向きの正味力1251を形成し、可撓性ベルト1202は、上向きの正味力1252を形成し、それにより、これらの力1251及び1252は相殺してシュラウド1220上にほとんど又は全く正味力を残さない。これは、(図10Aに記載されるように)差別的切開器具1200のいかなるトルク締めも排除し、手術者にとって制御するのをより容易とする。さらに、可撓性ベルト1201及び1202の反対の動作方向1271及び1272は、切開中に組織1205上に反対の摩擦力を形成し、それにより、両矢印1260によって識別される領域において組織1205を引っ張って離す。この引っ張り動作は、両矢印1260の領域における組織の引き裂きによるブラントジセクションを容易とすることができる。ここで留意すべきは、シュラウド1220の内部の可撓性ベルト1201及び1202の間の間隙1280が変化することができ、可撓性ベルト1201及び1202が接触するようにゼロまで低減されることができる。可撓性ベルト1201及び1202の間の接触は、駆動機構が可撓性ベルト1201及び1202の走行速度と一致するのに役立つことができる。実際に、可撓性ベルト1201及び1202の間の摩擦は、一方のベルト、例えば1201が他方のベルト、この例では1202を駆動するのを可能とする。それゆえに、例えば、モータは、可撓性ベルト1201を能動的に駆動することができ、そして、可撓性ベルト1202は、可撓性ベルト1201によって駆動される。これは、2つのベルト用の駆動機構を簡略化することができる。
図13は、どのように差別的切開器具1300のシュラウド1330がより多くの機能を許容する他の要素を収容することができるのかを示している。切開ホイール810は、開口900に露出されている。吸引ライン1301及び1302は、組織係合面850の近くのシュラウド1330の前面に接続することができ、破壊からのいかなる残骸や、水出口1111及び1112を介して放出する水管1121及び1122からの流体などの余分な流体も除去するのに役立つ。発光ダイオード(LED)は、ブラントジセクションのための領域をより良好に照明するためにシュラウド1330上に配置されることができる。例えば、LED1311及び1312は、それぞれ、ケーブル1313及び1314によって電力が供給され、LED1311及び1312からの光は、破壊領域における組織を直接照明する。
図14は、どのように差別的切開器具1400の細長部材1410が、ユーザがDDM1420の配置を容易とするために細長部材1410の可変折り曲げを達成することができるように折り曲げ可能領域1430と連接されることができるのかを示している。位置1において、細長部材1410は直線である。位置2、そして位置3において、細長部材1410は、DDM1420が位置1における前向きから位置3における横向きまで移動するように、折り曲げ可能領域1430において順次折り曲げられる。折り曲げ可能領域1430は、関節接合とすることができるか又は折り曲げを可能とする任意の他の機構とすることができる。
図15A−図15Eは、DDMのいくつかの重要な寸法及び特徴を図示する異なるDDMを示している。図15Aは、回転関節1510を中心に回転するDDM1500の平面図を示している。DDM1500の作動は、組織係合面1520(粗目部分)が半径RAを有する円弧によって揺動するように、両矢印1506によって示されるように往復式に上下振動させる。DDM1500の振動が±90°の範囲にわたって揺動することができる。組織係合面は、回転面(回転面に対して直角な面−ここではページ面)において最小半径RSを有する。
図15Bは、2つの連続した拡大図による断面における側面図を示している。(それゆえに、DDM1500は、この図においてページ内外で振動する)。第1の側1530及び組織係合面1520は、曲率半径REを有する第1のマージン1540において合流し、第2の側1531及び組織係合面1520は、曲率半径REを有する第2のマージン1541において合流する。ここで、第1のマージン1540及び第2のマージン1541の曲率半径は、異なることができるが、第1のマージン1540及び第2のマージン1541が鋭くないように十分に大きくなければならない。そして、組織係合面1520は、最内側の谷から最外側のピークまでの要素の最大長として定義された最大長Lmaxを有する突起1550によって形成される。
図15Cは、表面要素1560によって形成されたスカラップ組織係合面を有する異なるDDM1501を図示している。ここで、表面要素1560は、凸状突部であるが、最小曲率半径RSを有する組織係合面1520上の任意の規則的な又は反復する要素とすることができる。さらにまた、表面要素は、図15D及び図15Eに示されるように、回転面内にない形状を有することができる。図15Dは、斜視図を示しており、図15Eは、側面図を示している。図15Eにおける挿入図は、45°の角度に沿ってとられたDDM1502の連続した拡大部を示している。DDM1502は、回転面に対して45°の面内における形状を有する表面要素1570を有する。図15CにおけるDDM1501と同様に、DDM1502の組織係合面1520は、最大長Lmaxを有する突起1550を有する。1つの実施形態において、RAは、約1(1)mmから約100(100)mmの間とすることができる。1つの実施形態において、RSは、約0.1mmから約10(10)mmの間とすることができる。1つの実施形態において、REは、スライスエッジが組織に提示されないように、約0.05mmから約10(10)mmの間とすることができる。あるいは、DDMのいくつかの実施形態について、Rs及びReは、約0.025mmと小さくすることができる。
DDMは、組織係合面が組織における所定点を通過するのにともない組織の表面に対する組織係合面の迎角が変化するように、スカラップであるか又は切り込みであるか又は波状の形状を有する組織係合面を有することができる。実際に、迎角は、例えば、タイプI、タイプII又はタイプIVのDDMなど、Pavg<(Rmax−Rmin)である任意のDDMについて変化する。様々な迎角は、切開動作をより侵襲的とし、より侵襲的なDDMは、より良好に強固組織を破壊することができ、あまり侵襲的でないDDMは、同じ組織をよく破壊することができない。
図16は、DDMが異なる侵襲性のレベルで作製されることができる、すなわち、DDMの積極性が設計されることができる代替手段を示している。DDM1600は、回転軸1610を中心に回転し、突起1620を有する組織係合面1620を有する。これらの突起は、より鋭い(スライスするのにはまだ十分鋭くない)先端を有する。DDM1640は、より丸みを帯びた先端1652を有する突起を有する組織係合面1650を有する。DDM1680は、さらにより丸みを帯びた先端1692を有する突起を有する組織係合面1690を有する。DDM1600は、DDM1680よりも侵襲的であるDDM1640よりも侵襲的である。
図17Aは、スカラップ組織係合面1710及び回転中心1720を有するDDM1700の1つの実施形態を示している。それゆえに、DDM1700は、タイプIVのDDMの一例である。各スカラップが組織上を通過するときにスカラップの縁が異なる迎角で組織係合面1710にあてるように、両矢印1730によって示されるようなDDM1700の前後振動は、組織係合面1710に組織上を移動させる。
図17Bは、組織1750に対するDDM1700の動作を図示している。迎角(接点における動作方向との組織係合面1710に対する接線との間の角度θ)は、組織係合面1710上において2つの点P1及びP2で示されている。θ1は、θ2よりも小さい。同様の動作は、図18に示されるように、組織係合面1810を有する円形組織係合要素1805と、円形組織係合要素1805の中心ではない回転中心1820とを使用することにより(例えば、タイプIIのDDM)、DDM1800を用いて達成することができる。両矢印1830によって示されるように組織係合要素1805の前後振動は、迎角が円形組織係合要素1805の周囲における組織係合面1810上の各点において変化するように組織係合面1810が移動するように、組織係合面1810に組織上を移動させる。
図18は、特に組織1850に対してDDMの動作を加速するための他の重要な点を図示しており、加速は、DDMの振動が一方向掃引後に減速して反対方向に掃引するように加速するたびにDDMがロード又はアンロードされるときにいつでも生じる。DDM1800は、回転中心1820からずれたその重心1870に取り付けられる。実線の両矢印1830は、回転中心1820を中心とする回転を示しており、破線の両矢印1840は、重心1870の動作を示している。DDM1800の質量を加速する力と、重心1870と回転中心1820との間の距離は、差別的切開器具を振動させる回転中心1820を中心とするモーメントを形成する。このモーメントは、DDM1800が取り付けられた差別的切開器具取っ手を揺らす。より密度の高い材料から構成されたDDMは、揺れをより極端にする。それゆえに、それは、取っ手の揺れを低減させるように金属よりも硬質ポリマのようなより低密度の材料からDDMを作製するのに有利とすることができる。逆に、回転軸に重心を配置するようにDDM内の質量の適切な分布によって反対のモーメントを配置してもよい。
DDMの表面の全体は、組織係合とすることができる。あるいは、表面の選択された部分は、組織係合とすることができる。これは、DDMの面、例えば前向きの面の1つの領域に対して切開効果を制限するのに有利とすることができる。図19A乃至図19Dは、図3A乃至図3Cに示されたものと同様の切開ホイール1910であるDDMを有する差別的切開器具1900を示している。しかしながら、組織係合面は、回転軸365を中心に回転する切開ホイール1910の外周まわりの薄い組織係合ストリップ1920に制限される。残りは、切開ホイール1910の露出された表面の組織係合ストリップ1920のいずれかの側に対して横方向に配設された非組織係合面1930を備え、任意にはガラスが滑らかであるか、突起がないか又は組織における繊維に係合することができない非常に滑らかな表面を有する。図19Bは、どのように切開ホイール1910がシュラウド1940に嵌合して方向367において手術者によって押圧されるのかを図示している。図19Cが図示しているように、組織係合ストリップ1920よりも滑らかな非組織係合面1930は、組織係合ストリップ1920によって分離された後に組織1950の破壊を低減する。シュラウド1940は、さらに、切開器具が押圧方向367において組織1950内にさらに侵入することから、切開ホイール1910による破壊から組織1950を保護する。
図19Dは、非組織係合面1930の及びシュラウド1940の追加の重要な操作を図示している。組織1950への差別的切開器具1900の押圧方向367(ここでは図示しない)における動作の要素1901がある場合、これらの差別的切開器具1900の広い部分(非組織係合面1930及びシュラウド1940)は、最近分離された組織1950の部分を押し開くか又は押し込み、組織1950の繊維成分1980を整列させて歪ませ、それらを緊張状態とし、それらを組織係合ストリップ1920の動作に対して直角に整列させる。この繊維成分1980における歪みは、個々の繊維をつかんで引き裂くために組織係合ストリップ1920における組織係合材料の突起の能力を促進とする。
組織係合ストリップ1920が組織1950を通り過ぎてページ面に対して直角な方向に(そこを通して)移動するのにともない、その中の組織係合ストリップ1920上の突起は、組織1950の個々の繊維成分1980(例えば、コラーゲン又はエラスチン繊維)を引き裂くことを含み、組織1950を破壊する。そのような繊維成分1980は、軟組織における不規則な整列(すなわち、不規則な配向)を頻繁に有する。しかしながら、組織1950が破壊されるのにともない、差別的切開器具1900は、動作要素1901の方向において組織1950に入り込み、したがって、残りの組織係合面1930及びシュラウド1940が分離された組織1950に入り込むのにともない、矢印1960及び1961の方向からはずれてそれらが切断された繊維成分1990を含む組織1950を押圧し、前に不規則に配向された繊維を整列し、組織係合ストリップ1920の接点において材料を歪ませる。この歪みの局所領域は、両矢印1970によって示されるように、組織係合ストリップ1920の動作方向に対して直角な方向において切断されていない繊維成分1980を整列させて歪ませ(そのため、予応力をかける)、それらが捕捉されるのを容易とし、それらが組織係合ストリップ1920からの突起によって切断される可能性を増加させる。非組織係合面1930及びシュラウド1940は、図19C及び図19Dに示されるように、それらが互いに対して傾斜している場合、又は、それらが組織係合面1910よりも広い幅を有する場合であっても、くさびとして作用する。1つの実施形態において、図3Fに記載されたように、第2の短半軸Cが第1の短半軸Bのかなりの割合である(例えば、1つの実施形態において、0.2B<C<0.8B)半楕円体形状は、くさびにとって有効な形状である。
前段落において記載されたように、繊維の整列は、DDMが実行する方法を大幅に変更することができる。整列は、手又は別個の器具によって適切な方向に組織を歪ませる外科医によって達成することができる。前段落において記載されたように、整列は、図19C乃至図19Dにおける非組織係合面1930などの組織係合ホイール上の滑らかな部分により、図19A乃至図19Dにおけるシュラウド1940などの滑らかなシュラウドにより、又は、DDMにおける別個の機構により、DDMによって達成することができる。
図20は、ヒト患者における組織セグメントの破壊の1つのバージョンの詳細を示している。患者の当該領域2000は、2つ並置されたボリューム、すなわち、組織セグメントBに並置された組織セグメントAを通る断面図を示す円形窓内に示されており、並置は、間質繊維2012及び緊張した間質繊維2015の双方によってブリッジングされ且つさらに壊れた間質繊維2020に結合された領域2010において生じる。また、円形窓に描かれているものは、突起2032をさらに有する組織係合面2034及び滑らかな非組織係合面2033を有するDDM2030である。この図において、DDM2030は、繊維−係合突起2032の動作がページ面の内外にある(すなわち、観察者から前後に反復して)ように軸2036を中心に反復する。
さらに、組織セグメントA及び組織セグメントBのそれぞれは、組織セグメントA及び組織セグメントB上を覆う膜を形成する(例えば、組織セグメントA及びBは、強固組織を含む)組織セグメント面2005及び組織セグメント面2006に平行に整列された比較的堅く詰まった繊維からそれぞれ構成された組織セグメント面2005及び組織セグメント面2006を有する。組織セグメントAの表面2005及び組織セグメントBの表面2006はまた、3次元的に曲線状である。これらの組織セグメント面2005及び2006は、各点で互いに接触しないことがある一方で、組織表面2005及び組織セグメント面2006は、組織セグメント面2005及び組織セグメント面2006が局所的に並置され、ほぼ平行であり且つ互いに頻繁に略接触する領域2010において交差する。
その領域2010において、組織セグメント面2005及び組織セグメント面2006は、2つの並置された組織セグメント面2005及び2006に対して略直角にある比較的緩い間質性繊維2012の集団によって互いに固定されている。この間質繊維2012のまばらな集団はまた、組織セグメント面2005及び2006のより堅く詰まった織物面を含む繊維の集団から得られてもよく又は得られなくてもよい(又はその部材であってもよい)。例えば、組織セグメント面2005の部分を含む所定の繊維は、向きを変えて領域2010を横切って継続する前に若干の距離だけその表面に沿ってあってもよく、それにより、間質繊維2012の集団の部材となり、さらに、その中で回転して織り交ぜることができる場合には、組織係合面2006まで領域2010を横切って継続してもよく、それにより、組織係合面2006を含む繊維の集団の部材となる。それゆえに、間質繊維2012の定義は、組織係合面2005及び組織係合面2006が並置状態である場合に、領域2010を交差する、ブリッジングする、横断する又は接続する(又は密接に結合する)任意の繊維を含む。間質繊維2012は、1つの実施形態において、組織セグメントA及び組織セグメントBの組織セグメント面2005及び組織セグメント面2006を含むものと同じ種類の繊維であってもよい。他の実施形態において、間質繊維2012は、異なる種類であってもよく、間質繊維2012は、組織セグメント面2005及び組織セグメント面2006に対して直接的又は間接的に強く又は弱く結合してもよい。
各場合において、関係する全ての繊維は、2つの組織セグメント間に、各個々の組織セグメントの表面に沿って又は間質間のいずれか又は双方において(張力を介して)力を伝達することが機械的に可能である。例えば、間質繊維2010並びに組織セグメント面2005及び組織セグメント面2006を備える繊維の緊張状態は、例えば、滑らかな非組織係合面2033がこれらの組織セグメントを押し込んで方向1960及び1961において強制的に離すときに、組織セグメントA及び組織セグメントBに作用する力に依存する。例えば、繊維2010は、互いに方向1960における組織セグメント面2005の動作と方向1961における組織セグメント面2006の動作から生じる引っ張り歪みに抵抗し、さらに、この抵抗は、繊維の機械的特性に応じて変化する。例えば、歪みのない間質繊維2012が2つの並置された組織セグメント面2005及び2006に対して直角に整列されている場合には、組織セグメントAと組織セグメントBとの間の距離は、間質繊維2010がまず緊張した間質繊維2015のようにまっすぐになり、壊れた間質繊維2020によって示されるように最後に繊維が機能しなくなるまで、(矢印2030によって示されるように)増加してもよい。ヒトにおける最も一般的な繊維種類は、応力を受けていない通常の長さを超えて約5%の破断歪みを有するコラーゲンである。矢印2030によって示されるように組織セグメントA及び組織セグメントBが離れるように移動した場合には、コラーゲン繊維(ここでは、歪みのない間質繊維2012)は、まず(緊張した繊維2015のように)緊張するようになる。2つの組織セグメントA及びBがさらに離れるように移動した場合には、コラーゲン繊維は、約5%伸びる。決定的に、この時点において、組織セグメントAが組織セグメントBから緊張を超えて5%よりも遠くに移動した場合には、緊張した間質繊維2015は壊れるか、又は、緊張した繊維2012が壊れない場合には、組織セグメント自体が破裂するかのいずれかとなり、患者にとって有害な結果をもたらす。
外科医は、非常に頻繁に互いに組織セグメントを分離、切り離す又は移動し、患者体内の様々な領域にアクセスすることから、外科医は、患者の体全体にわたって間質繊維2010と同等の繊維集団を常に歪ませている。現在の実務は、一方の組織セグメントを他方から自由にするように間質繊維をスライスするか又は(ジョーを開き、組織セグメントを強制的に離し、そのため間質繊維を引き裂くことによって)鉗子で鈍力を加えることによって大規模に間質繊維を引き裂く必要がある。共通する複雑さは、シャープジセクションを介して間質繊維のみを切断しようとするときに組織セグメントにスライスすることか、又は、間質繊維のブラントジセクションをしようとするときに組織セグメントの小さい又は大きい部分を引き剥がすことである。いずれのアプローチも、間質繊維2010を緊張させるように最初に歪ませた後、それらを伸ばし、それらを引き裂く。上述した組織セグメント面2005及び2006との間質繊維2010の密接な接続の結果(例えば、空気漏れや肺のセグメントの出血)は、ここで明らかになる。一体化された組織セグメント自体同じ力にもさらすことなく間質繊維を機能させなくするのに必要とされる力を分離しなければならない。
本願明細書に開示された差別的切開器具の実施形態は、滑らかな表面2033の衝撃によって並置された組織セグメントA及びBの初期分離動作を発生させることによって繊維集団への力を分離するように特に設計されており、それゆえに個々の間質繊維2010を露出して引っ張り(予応力をかける)、これらの繊維をはるかに破壊しそうにし、これらの現在緊張している間質繊維2015によって提供される機会を利用し、さらに差別的切開器具2030の組織係合面2034の突起2032の局所衝撃によって破壊された間質繊維2020に慎重に引き起こされ、係合され且つ変換されるのを可能とする。このように、滑らかな面の非組織係合面及び/又はシュラウドを有するDDMは、強固組織の隣接領域を接続し且つそれらの強固組織をさらに保護する軟組織内のまさにそれらの繊維に対するその切開効果の程度を制限しながら、組織の切開の速度及び有効性の双方を大幅に増加させることができる。
図21A乃至図21Cは、DDMとして非常に薄い切開ホイール2110を使用する他の差別的切開器具2100を図示している。切開ホイール2110は、図19Dに示されるように、切開対象の組織を保護し、分離し及び予応力をかけるためのシュラウド2120の動作によって非常に薄い組織係合面2009を達成するために、シュラウド2120にほぼ完全に包まれている。
図21Aは、側面図を示しており、図21Bは、正面図を示している。切開ホイール2110は、回転軸2135を介して、第1のポスト2130及び第2のポスト2131の2つのポストに取り付けられている(図21Bの側面図においてみられる)。回転軸2135は、第1のポスト2130及び第2のポスト2131内で自由に回転するが、切開ホイール2110に対してしっかりと固定されている。スプロケット2140はまた、軸2135に対してしっかりと固定されている。スプロケット2140は、駆動ベルト2150によって回動される。それゆえに、駆動機構2160は、矢印2161の方向においてシュラウド2120の内部で切開ホイール2110を回動させるように、第1のポスト2130及び第2のポスト2131、軸2135、スプロケット2140及び駆動ベルト2150によって形成されている。他の駆動機構は使用可能であり、動作は、回転又は振動のいずれかとすることができる。図21Bの拡大部分に示されるように、切開ホイール2110の第1のマージン2111及び第2のマージン2112は、好ましくは鋭くない。(第1及び第2のマージン2111及び2112は、図15Bにおける第1及び第2のマージン1540及び1541と同様である)。鋭いマージンは、丸みを帯びたマージンよりも侵襲的に破壊することができる。それにもかかわらず、より侵襲的な破壊又はさらなる破壊が望まれる場合に、より鋭いマージンが使用可能である。さらにまた、一方のマージンは、差別的破壊又は破壊が望まれる場合には他方よりも鋭くすることができる。例えば、第1のマージン2111は、正方形又はさらに鋭くすることができる一方で、第2のマージン2112は、第1のマージン2111の側におけるより侵襲的な破壊又は破壊を達成するために丸くすることができる。
シュラウド2120は、組織係合面2111として露出された切開ホイール2110の細い部分のみを残し、切開ホイール2110の破壊点における組織上の歪みを決定するくさび角ωを形成して切開ホイール2110をほぼ囲む。より大きいくさび角ωは、DDM2100が組織内に押し込まれるのにともない、組織をより歪ませる。図21Cは、4つの異なる位置におけるシュラウド2120を有するDDM2100を示している。シュラウド2120は、駆動機構2160及び切開ホイール2110から独立して移動させることができ、シュラウド2120は、両矢印2190の方向に移動することができる。それゆえに、位置1において、切開ホイール2110の薄い部分のみが露出される。位置2において、シュラウド2120は、露出された切開ホイール2110のより薄い部分を残し、また、より大きなくさび角ωを形成して矢印2191の方向に移動される。位置3において、シュラウド2120は、シュラウド2120が完全に切開ホイール2110を囲むように矢印2192の方向に移動される。それゆえに、切開ホイール2110は、もはや組織を破壊することはできない。この位置において、切開ホイール2110は、滑らかで平坦なブラントプローブとして有効に作用する。位置4において、シュラウド2120は、矢印2193の方向に移動され、切開ホイール2110の位置1又は位置2においてみられる露出を増加させ、くさび角ωを減少させる。
図22は、往復動機構、ここではスコッチヨークの1つの実施形態を含む差別的切開器具2210の遠位端を示している。差別的切開器具2210の遠位端は、枢動軸受2214、モータ軸軸受2216及び軸ドラム軸受2218をさらに含むハウジング2212を含む。図22はまた、モータ軸2220、モータ軸2220と同軸であって固定されている軸ドラム2222、及び、モータ軸2220と平行であるが同軸ではなくてもよく且つ軸ドラム2222にそれ自体が固定されているドライバピン2224を示している。さらに、差別的切開ハウジング差別的切開ハウジング2212に結合された差別的切開部材であるDDM2230があり、DDM2230の本体を画定する外面2231と、外面2231の少なくとも一部を形成する組織係合面2232と、枢動軸受2214に嵌合するDDM枢動軸2234とを備え、ドライバピン2224を有効に捕捉する中空DDMピンフォロワ2236をさらに備える。中空DDMピンフォロワ2236の内部の3次元形状は、図22に示された図において、断面形状が砂時計と似ている一方で、その図に対して直角では断面形状が直線的であるように、ここではプリズムとして示されている。
図23A、図23B及び図23Cは、砂時計状の中空DDMピンフォロワ2236の腰の最も狭い部分を通り且つ軸ドラム2222の回転軸に対して直角な図22のDDM2230の一部の断面図を示している。DDMピンフォロワ2236の形状は、この図においては矩形であり、さらに、2236の腰を通る寸法を示すこの図において、矩形の高さは、その円形経路2237に沿ってドライバピン2224の外径によって記載される径以上である。この図における矩形の幅は、ドライバピン2224の外径に対応している。中空DDMピンフォロワ2236を含むDDM2230は、シャフト2234の軸2233を中心に回転する。それゆえに、中空DDMピンフォロワ2236の位置、したがってDDM2230の回転位置は、ドライバピン2224の回転位置によって決定される。
動作において、図23A−図23Cとともに図22を参照すると、モータ(図示しない)は、その回転軸を中心にドラム2222を回すモータ軸2220を回し、ドライバピン2224に円形経路2237のまわりを移動させ、その面は、ここではドラム2222の回転軸に対して直角である。スコッチヨークにおけるように、矩形の中空DDMピンフォロワ2236は、ドライバピン2224の回転経路2237を中空DDMピンフォロワ2236の直線移動2238に変換する。ピンフォロワ2236が軸2233から若干の距離離れて配置されることを考えると、DDM2230は、軸2233を中心にてこ作用を受け、したがって回転経路2237を直線移動2238、したがって枢動軸受2214によって保持されたDDM枢動軸2234を中心に回転するDDM2230の往復動作に変換する。DDM2230の往復動作のパターンは、中空DDMピンフォロア2236の形状、ドライバピン2224、そのまわりを軸2234が回転する軸2233の3D角度、ドライバピン2224から軸2233までの距離を変えることにより、また、モータの回転速度を変えることにより制御されることができる。
図22のDDM2230は、図24A及び図24Bにおける側面図に示されるように、往復動作2250及び2251を有してもよい。示された振動シーケンスは、モータ(図示しない)からの回転動作2299が提供された場合にドライバピン2224が円形経路2237のまわりを移動するときのDDM2230の極端な位置を示している。切開対象の組織の表面上のDDM2230の組織係合面2232の動作は、図20における側面図に最も良好に示されている。
患者の体内を手術する外科医は、処置の焦点ではない又は単にターゲット組織の方法で組織に対して起こり得る外傷を最小に形成することを望む。この目的のために、図25A乃至図25Cは、殆ど包まれたDDMアセンブリ2500の実施形態の外形図を描いており、さらに、ページ(すなわち、観察者において)に対して直角に突出する包まれた枢動軸2510と、内部モータ軸2550と、内部ドライバドラム2522と、ドライバピン2524と、DDIハウジング2512と、包まれた枢動軸2510のを中心に(そのためページ面内で)往復するDDM2520と、組織係合DDM面2534と、滑らかなDDM面2518と、略円形のDDM領域2516と、シュラウドマージン2517と、シュラウド−DDM間隙2514とを備える。全体として考えると、1つとして含まれるDDMアセンブリ2500の全ての外面により、包まれたDDMアセンブリ2500は、患者の組織に対してほぼ連続的な滑らかな表面を提供する。この点で、組織係合DDM面2534の制限された範囲以外において、DDMアセンブリ2500が取り付けられた差別的切開器具の全体は、磨かれたプローブと同様に作用するにすぎない。
いったん起動すると、DDM2520は、ハウジング2512の内部及びそれに対して往復する。DDM2520に最も近いハウジング2512のエッジは、シュラウドマージン2517である。シュラウドマージン2517とDDM2520との間は、シュラウド−DDM間隙2514がみられる。1つの実施形態において、DDMアセンブリ2500が取り付けられた差別的切開器具は、差別的切開器具の外側に滑らかな特性を維持するように提供される。それゆえに、シュラウド−DDM間隙2514は、組織に鋭いエッジを提示するハウジング2512に関するDDM2520の任意の相対動作がシュラウド−DDM間隙2514を拡大することができた点で、課題を提示する。あるいは、DDM2520の一部は、ハウジング2512に影響を与えることがある。また、1つの実施形態において、シュラウド−DDM間隙2514は、常に可能な限り小さく保たれる。これを容易とするために、DDM2520は、シュラウド枢動軸2510の軸と一致するその中心を有する円形断面を有するDDM2520の塊の一部としてこの観点で定義された円形のDDM領域2516を有する。この円形のDDM領域2516は、DDM2520の往復動作中にシュラウドマージン2517を通過するDDM2520の外面の部分をシュラウド−DDM間隙2514を定義する距離で定義して占有する。円形のDDM領域2516がDDM2520の同じ半径を回転角度にわたって維持することから、これは、一定値にシュラウド−DDM間隙2514を維持する(すなわち、シュラウド−DDM間隙2514は、DDM2520の動作にかかわらず変化しない)。それゆえに、このDDMアセンブリが取り付けられた差別的切開器具は、時間にわたってどこでも組織に対して連続的に滑らかな表面を提示する。
図25Dは、ハウジング2512と、包まれた枢動軸2510を中心に往復するDDM2520(図25A乃至図25Cを参照)と、組織係合DDM表面2534と、滑らかなDDM表面2518と、略円形のDDM領域2516と、シュラウドマージン2517と、シュラウド−DDM間隙2514とを示す殆ど包まれたDDMアセンブリ2500の斜視図を示している。
シャープジセクションは、ターゲット組織を露出するとき、頻繁にブラントジセクションと交互に行われる。これは、ブラントジセクションに抵抗する膜又は大きい繊維成分が遭遇されて外科医が組織内にさらに侵入するために切断されなければならないときはいつでも生じる。現在の実務は、外科医がブラントジセクション(例えば、非活性電気外科メス)についての次善の器具を使用するか又はターゲット組織を露出させながら器具を交換することが必要である。次善の器具の使用は、ブラントジセクションの容易さを低減させ、ターゲット組織への潜在的リスクを増加させる。交換は、時間を消費し、特に腹腔鏡検査及び胸腔鏡検査などの器具が体壁内の狭い開口を通過した後に穏やかに患部に誘導されることができる多くの最小侵襲性処置にとって悩ましい。差別的切開器具は、外科医によって選択的に作動されることができる鋭い切開要素を備えることができ、さらに最適な器具を外科医に提供しながら器具の交換の必要性を排除する。
図26Aは、図20に示されるような差別的切開器具2000と同様の差別的切開器具2600の1つの実施形態の平面図及び側面図を示しているが、ここでもブラントジセクション中に覆われる格納式外科用メス刃を備える。格納式外科用メス刃は、シャープジセクションのために外科医によって外側に突出されることができ、さらにブラントジセクションを進める前に後退させることができる。差別的切開器具2600は、DDM2610が回転軸2635を介して回転可能に取り付けられるシュラウド2620からなる細長部材を有する。DDM2610の一側は、格納式外科用メス刃2262がシュラウド2620によって完全に覆われるように格納式外科用メス刃2622が下方にあるスロット2612である。格納式外科用メス刃2622は、外科医によって制御される格納機構(図示しない)によって作動される。格納式外科用メス刃2622の作動は、スライダを介して手動で、電気的作動(ソレノイドなど)により、又は、手術者によって制御可能な任意の適切な機構により制御されることができる。
図26Bは、シャープジセクションのために伸長された格納式外科用メス刃2622を有する差解切開器具2600を示している。格納式外科用メス2622は、シャープジセクションツールの一例である。他の実施形態において、差別的切開器具2600は、電気外科用刃、超音波カッタ又は破壊フックなどの他のシャープジセクションツールを含むことができた。他の実施形態において、差別的切開器具2600は、エネルギ破壊用ツール、例えば電気焼灼刃又は電気外科ヘッドを含むことができた。さらに、格納の代わりに、格納式外科用メス刃2622又は他の適切なツールは、ポップアウトによる、展開による又は当該技術分野において公知の他の機構などのいくつかの機構の1つによる使用のために選択的に露出させることができた。
図27は、図26A及び図26Bに示される差別的切開器具2600と同様の差別的切開器具2700の他の実施形態の平面図及び側面図を示しているが、ここでは鉗子としても機能するように差別的切開器具2700を許容するように把持部材2710を有する。差別的切開器具2700は、器具軸2720に回転可能に取り付けられたDDM2710を有し、電動機構(図示しない)によって回転される。プッシュロッド2730は、器具軸2720の内側にあり、取っ手(図示しない)内にある機構によって作動され、手術者によって手動で起動される。DDM2710がアクティブであるとき、それは矢印2740によって示されるように前後に振動する。手術者がDDM2710の動作をオフにすると、手術者は、鉗子ジョー2750を枢動点2770を中心に回転させて開かせる制御ホーン2760を有する鉗子ジョー2750上のプッシュロッド2730を押圧することができる。鉗子用の対向するジョーは、DDM2710である。そして、手術者は、プッシュロッド2730を押圧するか又は引っ張ることによって鉗子ジョー2750とDDM2710との間に物体をつかんで放すことができる。
図28及び図29A乃至図29Dは、DDMの他の実施形態を示している。実際に、この実施形態は、複合組織を介した大きな差別的動作及び迅速な切開を提供している。DDMのこの実施形態について、組織係合面の突起は、DDMの表面にカットされた谷によって形成される。図28を参照すると、DDM2800は、第1の端部2810及び第2の端部2820を接続する中心軸2825を有する第1の端部2810及び第2の端部2820を有する。第1の端部2810は、切開対象の複合組織(図示しない)から離れるように向けられ、第2の端部2820が動作方向に沿って掃引するようにDDM2800を移動する駆動機構(図示しない)と係合される。ここでは、機構は、動作方向2840が回転軸2830に対して直角な面内にある動作円弧であるように、中心軸2825に対して直角な回転軸2830を中心にDDM2800を振動する。第2の端部2820は、少なくとも1つの組織係合面2860及び少なくとも1つの側面2870を含む複合組織に向けられた組織に面した面2850を有する。
この例では、DDM2800の動作は、往復(前後)振動であるが、他のDDMは、連続回転又は直線運動を有することができる。回転は、好ましくは、毎分あたり2,000から25,000サイクルであるが、その全てが超音波よりかなり低い毎分あたり60サイクルから毎分あたり900,000サイクルまでの範囲とすることができる。所定の実施形態において、毎分あたり300から25,000サイクルの速度が非常に有効であることがわかっている。
図29A乃至図29Eは、図28からのDDM2800の組織に面した面2850の拡大図を示している。図29Aは、確認し得る要素を有する組織に面した表面2850の斜視図を示している。図29B−Dは、特に組織に面した表面2850の要素に関してより良好に記載された形状の幾何学的形状を有する組織に面した表面2850の異なる図を示している。最後に、図29Eは、これらの要素のいくつかの異なる実施形態を示している。組織に面した表面2850は、組織係合面2860と、側方及び組織係合面2860の一方側に配設された第1の側面2871と、側方及び組織係合面の反対側に配設された第2の側面2872との2つの側面を有する。図29A及び図29Cを参照すると、組織係合面2860は、少なくとも1つの谷2910及び少なくとも1つの突起2920の交点が動作方向2840に対して直角な方向の要素を有するように配向された少なくとも1つの谷エッジ2930を定義するように、組織に面した表面2850上の円弧運動である動作方向2840に沿って配列された少なくとも1つの谷2910及び1つの突起2920の交互列から構成されている。
谷エッジ2930は、鋭くあるべきではならず、例えば、複合組織、特に強固組織にスライスすることができないはずである。例えば、谷エッジ2930上の点は、約0.025mmよりも小さい曲率半径Rcを有するべきではない(図29C、拡大図を参照)。この曲率半径Rcは、図15に示されたような面Rs及びエッジReの曲率半径と同様である。我々は、約0.050mmよりも小さくない曲率半径Rcを有するエッジも有効であることをテストを通じて示している。さらに、曲率半径Rcは、谷エッジ2930の長さに沿って変化することができる。図29A乃至図29Dに示される実施形態において、曲率半径Rcは、谷エッジ2930が回転軸2830から最も遠く且つ第1の側面2871及び第2の側面2872により近くで増加する場合に最小である。さらにまた、谷エッジ2930についての最小曲率半径Rcは、同じDDMにおける異なる谷エッジについて及び同じ谷の反対側における谷エッジについても異なることができる。
DDM2800における突起2920は、1つの実施形態において、サブトラクティブ製造することによって形成されることができる。実際に、図29B−Cに示されるように、谷2910は、回転速度2830に対して直角に整列され且つ中心軸2825に平行な長半軸A(図28を参照)(すなわち、複合組織を向いている)と、第1の短半軸Bと、回転速度2830に平行な第2の短半軸Cとを有する半楕円体の表面から切り出される。それゆえに、突起2920は、残りの半楕円体面であって側面2971及び2972と連続している突起先端2940を有する。それゆえに、組織係合面2860は、この実施形態においては谷2910の横方向の制限によって形成され、突起2920を形成する谷2910の間の組織に面した表面にブリッジングされる。他の実施形態において、突起は、他の手段によって形成されることができ、それゆえに、表面の残りとして形成されない突起先端を含むより異なって成形された突起先端を有することができる。例えば、1つの実施形態において、突起は、表面から有効に構築されることができ、より複雑な突起先端を可能とする。
図29A及び図29Cを参照すると、各谷2910は、第1の谷側2911、第2の谷側2912及び谷底2913を有することができ、それにより、第1の谷側2911及び第2の谷側2912は、谷2910の両側にある。谷底2913は、直線又は曲線であり、2次元又は3次元とすることができる。例えば、DDM2800における谷底は、回転速度2830に平行に整列された直線である。第1の谷側2911及び第2の谷側2912は、谷底2913から谷エッジ2930まで立ち上がる。谷底からの遷移は、DDM2800における谷2910におけるように段階的で不確定とすることができ、又は、遷移は面刻みとすることができる。谷2910は、谷底2913に平行な方向において直線である2次元状に湾曲していてもよい(それゆえに、回転軸2830に平行)。しかしながら、谷側は、3次元状に湾曲した表面を含む任意の形状とすることができる。
谷エッジは、突起先端との谷壁の交差によって形成される。それゆえに、谷エッジは、突起先端及び谷エッジの形状に応じて異なる形状を有することができる。DDM2800における谷エッジ2930は、3次元曲線をトレースし、それゆえに、ゼロでなく且つ谷エッジに沿って変化する(幾何学的に数学的に定義されるように)曲率及びねじれの双方を有する。谷エッジは、滑らかに変化する曲率及びねじれを有することができ(谷エッジ2930のように)、又は、谷エッジは、湾曲することができる。
図29Cは、谷エッジに対して直角な面内における谷エッジの拡大図を示している。突起先端2920及び谷側(ここでは2911又は2912)は、交点で丸められたこの面内において上述した曲率半径Rcを有する面角Γを形成する(すなわち、それは、機械工がそれを表現するように「半径を付ける」)。面角Γは、第1の検査において鋭くみえる90°未満の角度を形成することができるが、鋭さは、エッジの曲率半径Rcによって決定される。面角Γは、面角Γが回転軸2830から最も遠い谷エッジ上の点において最小である場合にDDM2800について行うように谷エッジの長さに沿って変化することができる。1つの実施形態において、約30度(30°)から約150度(150°)の面角が有効であり得る。
谷は、長さ、幅及び深さを有し、谷の長さは、谷底の長さであり、谷の幅は、それらの分離の最長距離において測定された1つの谷の谷エッジを分離する距離であり、谷の深さは、谷エッジから谷底までの最大直角距離(例えば、ピークからトラフの高さ)である。谷についての典型的な寸法は、0.25mmから10mmの谷の長さ、0.1mmから10mmの谷の幅及び0.1mmから10mmの谷の深さを含む。1つの実施形態において、約3(3)mmの谷の長さ、約3(3)mmの谷の深さ及び約2(2)mmの谷の幅が非常に有効であることが見出されている。
DDMがDDM2800のように複数の谷を有する場合、谷は、DDM2800の谷2910のように全て平行な谷底2913に平行とすることができ、又は、それらは、互いに対して非ゼロの角度で若しくは互いに対して可変角度で位置する谷底に非平行とすることができる。
DDM2800の谷2910は、単一チャネル(谷側及び谷底によって囲まれた空間)を有する。しかしながら、谷は、谷底が分岐することができるか又は分岐を増やすことができるか又は組織係合面にネットワークを形成することができるように複数の交差するチャネルを有することができる。図29Eは、2つのDDMの平面図を示しており、左のDDM2980は、回転速度に平行でない谷底を有する平行な谷2981を有する一方で、右のDDM2990は、回転速度に対して且つ互いに対して全て異なる角度で交差する複数の谷のネットワーク2991を有する。
上述したように、DDM2800の組織に面した表面2850は、回転軸2830に対して直角に整列され且つ中心軸2825に平行な長半軸Aと、第1の短半軸Bと、回転速度2830に平行な第2の短半軸Cとを有する半楕円体の表面を有する。組織に面した表面2850は、1つの実施形態においてA>B>Cの楕円形状を有することができる。しかしながら、半軸の長さの間で任意の関係が可能である。例えば、他の実施形態において、DDMは、A=B=Cのために製造されてもよい(例えば、組織に面した表面は、半球状である)。
DDM2800の第1の側面2871及び第2の側面2872は、半楕円体形状の連続である。そのため、それらは、互いに対してある角度で位置し、突起が繊維成分を引っ掛けて破壊するのを可能とする複合組織の繊維成分を整列して歪ませる先に図19D及び図20に示されているようなくさびを形成する。
図30は、第1の膜3016に包まれた第1の組織領域3011及び第2の膜3017に包まれた第2の組織領域3012の状況を提示している。第1の膜3016及び第2の膜3017は、組織面3020に当接する。第1の膜3016及び第2の膜3017は、堅く詰まった繊維成分から形成され、それゆえに強固組織を含む。第1の膜3016から第2の膜3017までの組織面に及ぶ間質材料は、繊維成分3030を含む。これらの繊維成分3030は、あまり詰まってておらず、そのため、間質材料は軟組織を含む。組織に面した表面2850は、2つの組織領域3011及び3012を分離するように組織面3020内に矢印3050の方向に押圧されることから、第1の側面2871及び第2の側面2872は、突起先端2940において繊維成分3030を整列して歪ませる第1の拡散力3041及び第2の拡散力3042を組織領域3011及び3012上にそれぞれ加える(図29Cを参照)。これは、繊維成分3030が谷2910に入るのを可能とし、それゆえに、組織に面した表面2850が回転軸2830を中心に回転してページ面から(観察者に向かって)移動するときに突起2920によって引っ掛けられて引き裂かれるのを可能とする。さらに、突起先端2940は、側面と連続していることから、突起先端2940のより多くの横方向領域はまた、同様に組織領域3011及び3012に押し込む追加の拡散力3043及び3044を加え、さらに繊維成分3030への歪みを増加させる。
図30はまた、DDMの重要な態様を図示している。DDMは、自動的に組織面にしたがう。組織面が強固組織(例えば、膜、管など)によって境界がつけられる傾向があり、軟組織がまたがることから、DDMは、その差別的動作のために、強固組織内に移動せず、軟組織内に移動し、それゆえに、組織面に続き分離することは、手術者からの案内がほとんどないか又は全くない。これは、現在の実務によって必要とされるように手術者が生体構造を詳細に理解する必要がないか、又は、逆に、例えば組織面が腫瘍によって破壊されたとき又は組織が腫れや炎症を起こしているときに、熟練した外科医がより自信を持って不確かな生体構造を切開するのをDDMが可能とすることを意味する。
図31は、図30に示される繊維成分3030を破壊するように引っ掛けて伸びたときの組織に面した表面2850の側面図を示している。3つの繊維成分(第1の繊維成分3031、第2の繊維成分3032及び第3の繊維成分3033)は、3つの突起(それぞれ、第1の突起2921、第2の突起2922及び第3の突起2923)によって引っ掛けられている。組織に面した表面2850は回転し、矢印3100によって示されるような円弧運動である動作方向2840を生成する。第1の繊維成分3031は、単に第1の谷2911に入り、第1の突起2921によってはまだ引っ掛けられていない。第2の繊維成分3032は、時間的に前の時点で第2の谷2912に入り、第2の突起2922によって引っ掛けられて歪んでいる。第3の繊維成分3033は、時間的にさらに前の時点で第3の谷2913に入り、第3の突起2923によって引っ掛けられてさらに歪んでいる。最終的に、3つの繊維成分3031、3032及び3033の全ては、破壊するように歪まされる。
図31は、DDM2800の設計の重要な態様を図示している。谷が1つの側面2871から反対の側面2872までブリッジングされることから、各谷は、歪まされた繊維成分が入ることができるDDM2800の端部を横切って及ぶ開いた空間を形成し、それゆえに、それらが突起によって引っ掛けられるのを容易とする。
DDM2800が、上述したように、その表面組織の任意の部分を与える小突起の配列を有していないことに留意することが重要である。むしろ、DDM2800の全ての表面は、滑らかであり、好ましくは、低摩擦面を有する。DDM2800の表面要素の形状及び構成は、複合組織を差別的に切開する能力に関与している。実際に、DDM2800は、組織と接触しているその表面の全てが例えば外科潤滑油によって良好に潤滑されているときに最も良好に動作する。
図32は、完全な差別的切開器具の1つの実施形態の分解図を示している。差別的切開器具3200は、器具取っ手3212に取り付けられた第1の端部3291及びDDM3292に回転可能に装着された第2の端部3293を有する器具挿入チューブ3290を突出する器具取っ手3212から全体的に構成されている。器具取っ手3212は、上側バッテリカバー3222を含む上側ハウジング3220と、器具ハウジングボルト3236によって一体に保持される下側ハウジング3230とから組み立てられる。上側ハウジング3220及び下側ハウジング3230に含まれるものは、モータ3260及びバッテリパック3270である。上側ハウジング3220内は、バッテリパック3270からモータ3260に電力を提供するために(瞬時スイッチ又はオン−オフスイッチとすることができる)スイッチ3282にアクセスすることができるスイッチポート3224である。(任意の好都合な要素とすることができるが、ここではリニアポテンショメータとして示されている)電力レベル調節部3281をさらに含む印刷回路基板3280が設けられ、上側ハウジング3220の表面に装着された可撓性スイッチカバー3284を介してアクセスすることができる。また、含まれるものは、バッテリパック3270から電力を中継する前方スプリングバッテリコネクタ3272及び後方スプリングバッテリコネクタ3274である。上側ハウジング3220は、さらに、モータ3260の近傍且つそれと同軸に器具挿入チューブ3290を固定して配向するために器具挿入チューブ支持部3226を含む。
下側ハウジング3230は、さらに、バッテリパック3270へのアクセスを提供し、一体の下側バッテリカバー3232をモータハウジング部3234と共に固定し、3つの器具ハウジングボルト3236を使用して上側ハウジング3220にさらに保持される。モータハウジング部3234は、器具挿入チューブ支持部3226を通過する器具挿入チューブ3290と同軸にモータ3260を保持して固定する。モータ3260は、内径がモータ軸カプラ3262に対して余地を残すモータカラー3264に対してモータハウジング部3234によって前方に押圧される。モータ軸カプラ3262は、モータ軸カプラボルト3266の助けにより、モータ3260の軸の端部上にしっかりと取り付け、さらに、駆動軸3294の第1の端部3295を把持する。駆動軸3294は、器具挿入チューブ3290の内側に且つそれと同心にモータ3260によって回転される。駆動軸3294はまた、器具挿入チューブ3290の第2の端部3293上に装着された軸受3296によって同心に支持された駆動軸3294の第2の端部3297を有する。DDM3292は、駆動軸3294がDDM3292を回転させるように軸受3296上に回転可能に装着される。DDM3292、軸受3296、駆動軸3294及び器具挿入チューブ3290は、次に記載されるDDMアセンブリ3299を共同で形成する。
図33A,図33B及び図33Cは、モータ3260がDDM3292の振動を駆動するように、どのようにDDM3292が他の要素と組み立てられるのかを含むDDMアセンブリ3299の詳細を示している。
ここで図33Aを参照すると、この実施形態におけるDDM3292は、第1の端部3321上の組織に面した表面3322と、第2の端部3323上の軸受把持部3324とを備える。軸受把持部3324は、さらに、2つの枢動ピン3325に嵌合する。DDM3292は、軸受3296が内側に収まるのを許容する軸受空洞3326を有して部分的に中空であってもよい。軸受空洞3326は、さらに、カム従動空洞3328を付ける。カム従動空洞3328の形状は、一方向に非常に狭い点で楕円形であってもよく、スロットを形成する。軸受3296は、孔3336と、軸受先端3332と、ネジ軸受端3338と、2つの枢動ピンホール3334とを有する。ネジ軸受端3338は、器具挿入チューブ3290の第2の端部3293におけるネジ軸受マウント3342をネジ留めする。孔3336は、軸受先端3332を除き、その長さに沿ってどこでも駆動軸3294の径3385よりも大きい径を有することができ、それにより、軸受3296と駆動軸3294との間の接触面を低減させる。駆動軸3294の第2の端部3297は、主軸部3352及びカム軸部3354を含むように変更される。これらの要素の様々なサブ要素は、図33B及び図33Cにみることができるように、それらのアセンブリ及び動作を可能とする。
図33Bを参照すると、駆動軸3294は、軸受3296及びDDMアセンブリ3299の器具挿入チューブ3290内に同軸に収まるように示されている。これは、器具挿入チューブ3290の第2の端部3293に位置するネジ軸受マウント3342をネジ留めするために軸受3296のネジ軸端3338を整列する。軸受先端3332は、駆動軸3294を収容し、DDM3292に対する不整合を防止する。駆動軸3294の第2の端部3293は、カム軸部3354が完全に露出されるように軸受先端3332から出る。器具挿入チューブ3290、軸受3296及び駆動軸3294が組み立てられると、DDM3292は、図33Cに示されるように、(a)枢動点ピン3325が枢動ピンホール3334内に挿入し、(b)カム軸部3354がカム従動空洞3328内に挿入するように軸受3296上に装着する。
図33Cは、組み立てられたDDMアセンブリ3299を示している。DDM3292は、器具挿入チューブ3290のネジ軸受マウント3342にネジ留めされた軸受3296上に収まり、その全てが駆動軸3294を同軸に囲む。軸受把持部3324上の枢動ピン3325が軸受3296の枢動ピンホール3334に嵌合することは注目すべきである。軸受空洞3326と組み合わせたこの構造は、中空DDM3292が枢動ピン3325上を自由に回転するのを可能とする。駆動軸3294の回転は、カム従動空洞3328の内部でカム軸部3354を回転させ、枢動ピンホール3334を中心に振動するようにDDM3292を駆動し、両方向矢印3377によって示されるように左右に組織に面した表面3322を掃引する。
動作において、図32及び図33A乃至図33Cを参照すると、外科医は、器具取っ手3212によって差別的切開器具3210を保持し、切開対象の複合組織に向けてDDM3292を付ける遠位端を配向する。外科医は、電力レベル調整部3281を所望の位置にスライドすることによって電力レベルを選択した後、スイッチ3282上に自身の親指を置き、スイッチを閉じるためにそれを押圧する。スイッチ3282が閉じると、モータ3260は、オンになり、順次、モータ軸カプラ3262、駆動軸3294を回転させる。駆動軸3294は、駆動軸3294のカム軸部3354がDDM3292の軸受空洞3326のカム従動空洞3328の内部で回転振動するように、軸受3296、特に軸受先端3332によって適所に同軸且つ非常に正確に保持される。カム従動空洞3328は、楕円形であり、図33A乃至図33Cに示された実施形態においては、枢動ピン3325及び枢動ピンホール3334によって形成された回転接合軸に対して直角な方向に生じるその最も狭い寸法を有する。この実施形態において、カム従動空洞3328の最も狭い寸法は、回転駆動軸3294のカム軸部3354の通過をかろうじて許容する。したがって、カム軸部3354の回転振動は、カム従動空洞3328の長壁に影響し、枢動ピン3325及び枢動ピンホール3334によって形成された回転接合軸に対して直角な面内にある振動円弧3377を介してDDM3292の全体を強制的に回転させる。この実施形態において、差別的切開部材3292の組織に面した表面3322が揺動する振動円弧3377の振幅は、カム軸部3354が切断される駆動軸3294の径3385と、組織に面した表面3322及び枢動ピンホール3334を分離する距離3379との関数である。振動の周波数は、モータ3260の回転振動の周波数と一致する。手術者は、電力レベル調整部3281の位置を変化させることによって組織に面した表面3322の振動周波数を制御することができる。ここで留意すべきは、モータ3260の回転、それゆえに駆動軸3294の回転をDDM3292の振動に変換するための機構は、図22乃至図25Cに示されたスコッチヨークと同様であるということである。
差別的切開器具3200は、DDMの実装の一例であり、多くの変形が可能である。例えば、DDMの振動は、器具挿入チューブの内部において長手方向に前後移動するスライダを用いるクランク及びスライダ機構によって駆動されることができる。あるいは、モータは、DDMに隣接して配置することができ、モータ軸がDDMを直接駆動し、モータに給電するための電気配線のみが器具挿入チューブを進む。さらに、DDMがチューブの端部に良好に適合することから、器具挿入チューブを大幅に長くすることは、例えば、差別的切開器具3200などの差別的切開器具が腹腔鏡器具であるのを可能とする。より長い又は短いチューブが設計において容易に収容されるものの、36cmと同じ長さの器具挿入チューブを有する差別的切開器具が使用されてもよい。本願明細書に開示されるようなDDMは、Intuitive Surgical社(サニーベール、カリフォルニア州)からのDa Vinci手術ロボットなどの手術用ロボットのアームに容易に適合させることができる。DDMは、非常に小さくすることができる。例えば、DDM及び器具挿入チューブが外科用ポートなどの5(5)mmの孔に収まる有効な差別的切開器具が構築可能であり、低侵襲手術を可能とする。これらの小型の装置は、容易に構築される。
さらに、差別的切開器具は、駆動軸が可撓性駆動軸によって置き換えられて使用可能であり、器具挿入チューブは、湾曲している。これは、図6Cに示されたものと同様に、湾曲した器具挿入チューブを有する差別的切開器具を形成する。器具挿入チューブの関節もまた、例えば、関節においてユニバーサルジョイント又は他の屈曲可能なカプラを有する駆動軸を使用して可能である。
先に開示されたように、追加の機能は、差別的切開器具の端部に付加されることができる。例えば、
・図11B及び図13は、どのようにDDMの設計が注水のために流体がDDMに送達されるのを許容するのか、又は、どのように吸引が手術フィールドを明確にするために適用されることができるのか、又は、どのように光源が手術フィールドを照明するためにDDM上又はその近くに配置されることができるのかを示している。
・図26A乃至図26Dは、切断のために鋭く形成されることができる又は電気外科用の電気外科発電機(ユニポーラ又はバイポーラ)によって通電されることができる格納式切断刃を有する差別的切開器具を開示している。
・図27は、どのようにDDMの設計が、DDMが鉗子として機能するように適合されるのを許容するのかを示している。
付加的な機能は、差別的切開器具に容易に付加されることができる。例えば、DDM又はDDMを保持するシュラウドの側の任意のサイズのパッチは、パッチが電気焼灼のために使用可能であるように通電されることができる。製造を簡略化するために、駆動軸は、取っ手からDDMまで電気を伝導するために使用されることができる。DDMの設計は、図27に示される鉗子が鋏として代わりに使用されるのを許容する。DDMの改良された設計は、これらの追加機能の多くが1つの差別的切開器具に一体に組み合わせられるのを許容する。差別的切開器具の作業端におけるDDMによる機能の組み合わせから実現される利点は以下を含む。外科医が処置のために必要とする器具の数を低減すること;サポートスタッフのために病院や物流の在庫を簡略化すること;及び、最も重要なのは、手術を遅くさせ且つ外科的合併症の主要源である手術中の器具の変更を低減すること。これは、頻繁には気密ポートによる小さな切開を通して体内に器具を位置決めするのを必要とする腹腔鏡及びロボット手術において特に当てはまる。
図34は、組み立てられた差別的切開器具の1つの実施形態の斜視図を示している。差別的切開器具3400は、器具取っ手3412に取り付けられた第1の端部3491と、DDM3492に回転可能に装着された第2の端部3493とを有する器具挿入チューブ3490を突出させる器具取っ手3412から全体的に構成されている。器具取っ手3412は、上側バッテリカバー3422を含む上側ハウジング3420及び下側バッテリカバー3432を含む下側ハウジング3430から組み立てられる。上側ハウジング3420及び下側ハウジング3430内に封入されるものは、モータ3460と、必要に応じてバッテリパックに組み立てられることができるバッテリ3470である。上側ハウジング3420内は、バッテリパック3470からモータ3460に電力を提供するために(瞬時スイッチ又はオン−オフスイッチとすることができる)スイッチ3482である。上側ハウジング3420の表面に装着された可撓性スイッチカバー3484は、電力レベル調整部3581(図35A)の内部に対するアクセスを可能とする。上側ハウジング3420は、さらに、(制御ボタンボルト3498によって固定された)格納式刃フック制御ボタン3499とともに、モータ3460の近くに且つこれと同軸に器具挿入チューブ3490を配向するための器具挿入チューブ支持部3426を備える。
図35Aは、差別的切開器具3400の分解図を示している。差別的切開器具3400は、器具取っ手3412に取り付けられた第1の端部3491と、DDM3492に回転可能に装着された第2の端部3493とを有する器具挿入チューブ3490を突出させる器具取っ手3412から全体的に構成されている。器具取っ手3412は、器具ハウジングボルト3536によって一体に保持される、上側バッテリカバー3422を含む上側ハウジング3420及び下側バッテリカバー3432を含む下側ハウジング3430から組み立てられる。上側ハウジング3420及び下側ハウジング3430内に含まれるものは、モータ3460と、バッテリタイプCR123A(それぞれ3V、6つのバッテリ3470の全てについて18V)として示されているバッテリ3470であるが、他のバッテリタイプ及び電圧が使用可能である。我々は、いくつかの実施形態において、合計で3V程度の低いバッテリを使用している。上側ハウジング3420内は、バッテリパック3470からモータ3460に電力を提供するために(瞬時スイッチ又はオン−オフスイッチとすることができる)スイッチ3482がアクセスされることができるスイッチポート3524である。(任意の好都合な要素とすることができるが、ここではリニアポテンショメータとして示されている)電力レベル調節部3581をさらに含む印刷回路基板3580が設けられ、上側ハウジング3420の表面に装着された可撓性スイッチカバー3484を介してアクセスすることができる。また、含まれるものは、バッテリ3470から電力を中継する前方スプリングバッテリコネクタ3572及び後方スプリングバッテリコネクタ3574である。上側ハウジング3420は、さらに、モータ3460の近傍且つそれと同軸に器具挿入チューブ3490を固定して配向するために器具挿入チューブ支持部3426を含む。器具挿入チューブ保持ボルト3527は、器具挿入チューブ支持部3426において器具挿入チューブ3490をしっかりと保持する。
下側ハウジング3430は、さらに、バッテリ3470へのアクセスを提供し、一体の下側バッテリカバー3432をモータハウジング部3534と共に固定し、3つの器具ハウジングボルト3536を使用して上側ハウジング3420にさらに保持される。モータハウジング部3534は、器具挿入チューブ支持部3426を通過する器具挿入チューブ3490と同軸にモータ3460を保持して固定する。モータ3460は、内径がモータ軸カプラ3562に対して余地を残すモータスプリング3562に対してモータハウジング部3534によって前方に押圧される。モータ軸カプラ3562は、モータ軸カプラボルト3566の助けにより、モータ3460の軸の端部上にしっかりと取り付け、さらに、駆動軸3494の第1の端部3595を把持する。モータ3460は、格納式刃フック制御ボタン3499の制御のもとにモータハウジング部3534内で長手方向において前後にスライドすることができる。モータ3460は、さらに、回路基板3580に装着されたバネモータ電力接点3563に対して作動可能に摺動する電力接点板3569を備える。また、回路基板3580に搭載されるものは、調整可能電力接触圧力制御ボルト3561である。通常、バネ3567は、モータ3460の後方に保持する。その位置において、印刷回路基板3580上に搭載されたバネモータ電力接点3563は、モータ3460における電力接点板3569と整列されてそれに対して押圧され、したがって、バッテリパック3470からの電力は、モータの回転を駆動することができる。格納式刃フック制御ボタン3499を前方に押圧すると、モータ3460を前方にスライドさせる。電力接点板3569は、バネモータ電力接点3563との接触を中断するためにモータ3460が挿入チューブの第2の端部3493に向かって十分に遠く前方にスライドされると、バッテリパック3470からの電力が自動的に遮断されるように、格納式刃フック制御ボタン3499の影響下でモータ3460の移動の全範囲よりも短い。
駆動軸3494はまた、通過して器具挿入チューブ3490の第2の端部3493上に装着された軸受3496によって同心状に支持される第2の端部3597を有する。図35Bもまた参照すると、駆動軸3494の第2の端部3597は、さらに、(3597の第2の端部の先端から及び内側に作動する)カム受けリテーナ3555と、カム受けドライバ3554と、軸受間隙部3552とを備える。DDM3492は、駆動軸3494がDDM3492を往復振動によって回転させるように、軸受3496上に回転可能に取り付けられる。DDM3492、軸受3496、カム受け3596、カム受けリテーナ3555、駆動軸3494及び器具挿入チューブ3490は、次に記載されるDDMアセンブリ3598を共同で形成する。
図35Bは、モータ3460がDDM3492の往復振動を駆動するようにどのようにDDM3492が他の要素と組み立てられるのかを含むDDMアセンブリ3598の詳細を示している。この実施形態におけるDDM3492は、第1の端部3521上の組織に面した表面3522と、第2の端部3543上の軸受把持部3524とを備える。軸受把持部3524は、さらに、2つの枢動ピン孔3525に嵌合されている。DDM3492は、内部に収まるように軸受3496を許容する軸受空洞3526を有して部分的に中空であってもよい。軸受空洞3526は、さらに、カム受け3596がその中に容易にスライドさせるのを許容するように成形されたカム受け空洞3548を装着する。この実施形態において、DDM3492の組織に面した表面3522は、さらに、格納式刃スロット3506を備える。軸受3496は、孔3536と、軸受先端3532と、ネジ軸受端3538と、ネジ孔3534に嵌合する2つの挿入枢動ピン3535とを有する。ネジ軸受端3538は、器具挿入チューブ3490の第2の端部3493のネジ軸受マウント3542にネジ留めする。孔3536は、軸受先端3532を除き、どこでもその長さに沿って駆動軸3494の径3585よりも大きい径を有することができ、それにより、軸受3496と駆動軸3493との間の接触面を低減させる。駆動軸3494の第2の端部3497は、主軸部3552と、カム軸部3554と、カム受けリテーナ3555とを含むように変更される。カム受け3596は、さらに、カム受け本体3502と、カム受けチャンバ3505と、格納式刃3501とを備える。格納式刃は、さらに、フック3504と、組織係合面3503とを備えることができる。これらの要素の様々なサブ要素は、本文書における他の場所で開示されているように、それらのアセンブリ及び動作を可能とする。
DDM3492は、器具挿入チューブ3490のネジ軸受マウント3542にネジ留めされた軸受3496上に収まり、その全てが駆動軸3494を同軸に囲む。軸受把持部3524上の枢動ピンホール3525が軸受3496の枢動ピン3535上に収まることは注目すべきである。軸受空洞3526と組み合わせたこの構造は、DDM3492が枢動ピン3535上を自由に回転するのを可能とする。駆動軸3494の回転は、カム受け3396の内部でカム軸部3554を回転させ、枢動ピンホール3525を中心に往復振動するようにDDM3492を駆動し、左右に組織に面した表面3522を掃引する。
動作において、外科医は、器具取っ手3412によって差別的切開器具3400を保持し、切開対象の複合組織に向けてDDM3492を装着する遠位端を配向する。外科医は、電力レベル調整部3581を所望の設定にスライドすることによって電力レベルを選択した後、スイッチ3482上に自身の親指を置き、スイッチを閉じるためにそれを押圧する。スイッチ3482が閉じると、モータ3460は、オンになり、順次、モータ軸カプラ3562、駆動軸3494を回転させる。駆動軸3494は、駆動軸3494のカム軸部3554がDDM3492の内部に捕捉されたカム受け3502のカム受けチャンバ3505の内部で回転振動するように、軸受3496、特に軸受先端3532によって適所に同軸且つ非常に正確に保持される。カム軸部3554の回転振動は、上述したようにスコッチヨークとして構成されたカム受け3502のカム受けチャンバ3505の壁に作用し、DDM3492の全体を枢動ピン3535及び枢動ピンホール3525によって形成された回転接合軸に対して直角な面内にある振動円弧を介して強制的に回転させる。外科医は、格納式刃フック制御ボタン3499を前方に押圧することによって格納式刃3501を伸長することができる。格納式刃フック制御ボタン3499の前進は、モータ3460及び電力接点板3569を前進させ、バネモータ電力接点3563から電力接点板3569を分離し、上述したように、モータへの電力を切断し、DDM3492の振動を防止する。同時に、モータ3460の前進動作は、器具挿入チューブ3490の第2の端部3493に向かって駆動軸3494を前方に押圧する。駆動軸3494の前進動作は順次/、カム受け本体3502の内部のカム受けチャンバ3505の上部に対してカム受けリテーナ3555を押圧し、それにより、さらにカム受け空洞3548までカム受け本体3502を押圧し、格納式刃スロット3506から格納式刃3501を伸長させる。それゆえに、格納式刃フック制御ボタン3499の前進動作は、モータ3460を停止させ、格納式刃3501をDDM3492から伸長させる。格納式刃フック制御ボタン3499が解放されたとき、モータスプリング3562は、モータ3460を後方に押圧し、格納式刃3501を格納し、モータについての電気的接触を回復する。
この実施形態において、差別的切開部材3492の組織に面した表面3522が揺動する振動の振幅は、カム軸部3554が切断される駆動軸3494の径3585と、組織に面した表面3522及び枢動ピンホール3525を分離する距離3579との関数である。複合組織に対するDDM3492の往復振動の周波数(毎分あたりのサイクル)は、モータ3460の回転の周波数(毎分あたりの回転)と一致する。手術者は、電力レベル調整部3581の位置を変化させることによって組織に面した表面3342の振動周波数を制御することができる。ここで留意すべきは、モータ3460の回転、それゆえに駆動軸3494の回転をDDM3492の振動に変換するための機構は、図22乃至図25Cに示されたスコッチヨークと同様であるということである。
図35Cは、駆動軸3494の、それゆえにカム受け本体3502の前/後動作を図示しており、また、DDM3492の往復振動の振幅を変化させている。駆動軸3494は、図35Cの左枠における(矢印3595の方向に移動した)後方位置及び右枠における(矢印3597の方向に移動した)前方位置に描かれている。それゆえに、カム受け本体3502がカム受け空洞3548の内側において前方に移動すると、カム受け本体3548及び枢動ピンホール3525からの距離Dは、D’に増加する一方で、(上述したように、駆動軸3494の径3585によって決定されることから)受け3599の横方向の変位は一定のままである。D’が増加するのにともない、左枠におけるDDM3596の大きな角度振幅は、右枠におけるDDM2598の小さい角度振幅に低減する。この効果は、格納式刃が伸長されたときに振動の振幅を低減させるために使用されることができる。また、例えば、外科医がより正確な切開のために狭い振動を欲する場合には、DDMによるブラントジセクション中の振動の振幅を変化させるために使用されることができる。
図36A及び図36Bは、回転接合3630を介して器具挿入チューブ3620に回転可能に取り付けられたDDM3610を有する差別的切開器具3600の端部を示している。差別的切開器具3600はまた、両矢印3650によって示される方向における動作によって伸長又は格納させることができる格納式フック3640を有する。格納式フック3640は、例えば、図34、図35A及び図35Bに記載された機構を使用して格納又は伸長されることができる。図36Aは、どのように格納式フック3640が2つの構成に配置されることができるのかを示している。構成1は、伸長位置における格納式フック3640を示しており、構成2は、格納位置における格納式フック3640を示している。格納式フック3640は、尖らされる又は丸みを帯びることができる先端3670と、DDM3610の組織係合面3690よりも侵襲的とすることができるか又は侵襲的でないとすることができる組織係合面3660とを有することができる。格納式フック3640は、ここで示されているように、スライスするために鋭くすることができるか又は鈍くすることができるエルボ3680を有する。さらにまた、それは、鋸歯状とすることができ、鋭くした領域は、エルボ内のどこにも配置されることができる。構成2において、格納式フックは、DDM3610の内部に隠されており、DDM3610は、単独で組織と相互作用する。構成1において、格納式フック3640は露出され、組織係合面3690が組織と相互作用するように(例えば、軟組織を破壊するため)、又は、先端3670が組織と相互作用するように(例えば、組織を貫通するため)、組織と相互作用するために使用されることができ、又は、エルボ3680は、どのように手術者が組織に対して格納式フック3640を位置決めするのかに応じて、組織と相互作用する(例えば、組織をスライスする)。さらに、格納式フック3640は、手術者によって可変に伸長されることができるのを含む構成1と構成2との間の任意の中間位置に保持されることができる。
図36Bは、差別的切開器具3600の端部を示しており、DDM3610が伸長構成(構成1)又は格納構成(構成2)における格納式フックによって振動することができること、及び、格納式フック3640がDDM3610の振動の起動前又はDDM3610の振動中に格納又は伸長されることができることを図示している。矢印3601は、DDM3610が振動していないときに格納構成(左下枠)と伸長構成(左上枠)との間を移動する格納式フックを示している。矢印3602は、格納式フック3640が伸長構成におけるときに、DDM3610が静止(左上枠)から振動(右上枠)へと切り替えられることができることを示している。矢印3603は、DDM3610が振動しているときに、格納式フック3640が伸長構成(右上枠)から格納構成(右下枠)へと移動されることができることを示している。矢印3604は、格納式フック3640が格納構成におけるときに、DDM3610が静止(左下枠)から振動(右下枠)へと変化することができることを示している。格納式フック3640は、必要に応じて、格納式フック3640が電気外科フックとして作用するのを可能とするために、ステンレス鋼のような導電性材料から形成され且つ外部の手術用電気外科発電機に電気的に接続されることができる。
切開対象の多くの組織は、外科医がその組織に対するアクセスを得るために分割する必要がある膜又は被膜に包まれている。その膜又は被膜が分割されると、外科医は、その組織を通る切開を進める。図37は、4つの図において、胆嚢や肝臓の周囲の被膜を覆う腹膜などの組織3700を覆う膜3710を安全且つ迅速に分割するために差別的切開器具3600が使用可能である方法を図示している。左上図において、差別的切開器具は、伸長構成における格納式フック3640によって膜3710への接近が見てとれる。右上図において、格納式フック3640の組織係合面3660は、膜3710に対して外科医によって押圧され、組織係合面3660が膜3710を侵食させるようにDDM3610は振動される。(あるいは、格納式フック3640は、格納構成に保持されることができ、DDM3610の組織係合面3690は、膜3710を侵食させるために使用可能である。2つの組織係合面3660及び3690が異なるレベルの積極性を有する場合には、外科医は、膜3710を侵食させるためにより侵襲的な又はあまり侵襲的でない組織係合面のいずれかを選択する柔軟性を有する)。小さな開口3720が膜3710に形成されるまで、組織は侵食される。次に、左下図に示されるように、外科医は、開口3720を介して及び膜3710の下方で格納式フック3640の先端3670を押しあけ、組織3700から離れるように膜3710のフラップ3730を持ち上げるか又は「テンティングする」。そして、外科医は、矢印3740の方向にDDM3600を移動させ、それによって格納式フック3640のエルボ3680にフラップ3730を押しやり、エルボ3680は、組織をスライスするために鋭くされる。最後に、右下図に示されるように、外科医は、DDM3610を振動させ、格納式フック3640を振動させ、それゆえに、矢印3740の方向において外科医がDDM3600を移動し続けるのにともない、格納式フック3640のエルボ3680の鋭いエッジを迅速に膜3710に移動させる。これは、下にある構造体(例えば、胆嚢、胆管又は肝臓)を損傷することなく、胆嚢及び胆管を覆う腹膜などの膜を分割するための簡単で迅速で安全な方法であることが新しい組織によって実証されている。格納式フック3640の先端3680は、膜3710又は下にある構造体を容易に貫通しないように十分に鈍くすることができる。さらにまた、エルボ3680のみにおける鋭いエッジの配置は、重要な構造体が鋭いエッジ3680に露出するのを防止し、それゆえに、そのような重要な構造体が切断される可能性を低減する。重要な構造体の上にある膜又は被膜の例は、肝臓の上にある腹膜、胆嚢、胆嚢管及び胆嚢動脈、並びに、肺の上にある胸膜、肺動脈、肺静脈、気管支を含む。
格納式フックは、腎動脈又は静脈及び瘢痕組織の周囲の癒着のような厳しい繊維構造、繊維組織を切開するために図37に示されたものと同様の方法で使用可能である。例えば、外科医は、繊維構造体の全て又は一部をつかむために格納式フックの先端を使用することができ、そして、フックの鋭いエルボに組織を押圧することができる。そして、外科医は、組織を切断するためにフックの内側の鋭いエッジを使用するようにDDM及びフックを振動することができる。このアプローチの利点は、分割対象の組織のその位置における応力を印加するということである。現在の実務において、外科医は、単にそのような組織の側面又は両端をつかみ、それらが破壊するまでそれらを引っ張ることを含む様々な技術によってそのような組織を分割する。これは、時々、腸の壁などの引っ張られる組織に大きな応力がかかることがあり、腸の壁などの重要な組織の偶発的な引き裂きをもたらす(それによって腸を穿孔する)。(具体的にはフックの鋭いエルボにおいて)分割対象の組織に対してより局所的且つ直接的に、また、(例えば、鉗子の2対の間において)大きな広がりの組織にわたらず、応力を印加することにより、外科医は、腸の壁のようなより遠くの組織が無傷であるというより大きな確実性を有することができる。
電気的外科を使用した現在の実務から生じる極端な加熱とは全く対照的に、振動されるフックを使用することによるこれらの組織を分割する方法が組織を加熱しないことに留意することが重要である。電気的外科からの加熱は、周囲の組織の不慮の熱損傷につながる主要なリスクとして広く認識されている。超音波アブレーション(例えば、Ethicon Endosurgeryの「ハーモニック鋏」)などのシャープジセクション用の競合する技術は、熱を減少させ、それによって組織に対する熱損傷のリスクを低減させるために開発されてきた。それにもかかわらず、局所的な加熱は、依然として重大であり、熱損傷のリスクが依然として存在する。対照的に、ここで記載されたように振動フックによって膜を分割すること又は繊維構造を切開することは、組織の加熱を生じず、この医原性外傷の主要源を排除する。
図38は、腹腔鏡手術用の差別的切開器具3800の1つの実施形態を示している。それは、格納式刃(それは格納構成におけることから、この図ではみえない)を含む、図34、図35A及び図35Bに示されているDDM3810の振動についての機構を使用している。差別的切開器具3800は、DDM3810の振動を開始/停止するためのトリガ3830と、振動の速度を制御するための速度制御部3840とを有するピストルスタイルの取っ手3820を使用する。親指起動押圧ボタン3850は、取っ手3820の内部のバネ機構によって通常は格納構成で保持される格納式刃を伸長するために使用される。回転ホイール3860は、人差し指によって到達して回されることができ、回転ホイール3860の回転は、DDM3810の振動面3880が360°にわたって容易に回されることができるように、器具挿入チューブ3870及び取り付けられたDDM3810を回転させ、それにより、外科医が取っ手3820についての良好な人間工学性を維持しながら体内の組織面を振動面3880に配向するのを可能とする。回転ホイール3860上のインジケータ3862は、振動面3880の向きに関して体外の視覚的合図を外科医に提供し、同様に、エンボスストライプなどの視覚的合図は、器具挿入チューブ3870又はDDM3810上に配置されることができ、それにより、腹腔鏡の視認中にカメラにおける視覚的合図を提供する。電気プラグ3890は、電気手術及び電気焼灼用の外部の電気外科発電機に対するケーブルを介した任意の取り付けを可能とする(電気外科発電機の制御のために電気外科発電機に取り付けられた外付けフットペダルによって制御されるか、又は、押圧ボタン(図示しない)は、取っ手3820上に配置されることができ、電気外科発電機の制御のために使用されることができる)。したがって、差別的切開器具3800は、外科医が、単一の器具により、(差別的切開による)ブラントジセクション、(格納式フック又は電気外科手術による)シャープジセクション、(電気焼灼による)凝固を行うのを可能とし、それにより、腹腔鏡手術のために複雑化された器具の変更を低減する。
図39は、Intuitive Surgical社からのda Vinci Robotなどの手術用ロボットのアームに取り付けられるツールとして構成された差別的切開器具3900を示している。DDM3610は、回転接合3630を介して器具挿入チューブ3910に回転可能に取り付けられる。格納式フック3640は、両矢印3650によって示されたように、格納及び伸長構成の間を移動することができる。格納式フック3640は、組織係合面3660と、先端3670と、シャープジセクション用の鋭いエッジを有するエルボ3680とを有する。格納式フック3640は、必要に応じて、導電性であり、外部電気外科発電機に対して電気的に接続されることができる。同様に、DDM3610又はDDM3610上の小さな導電性パッチ3925は、電気メスのために使用されることができる。(ここで留意すべきは、導電性パッチは、組織係合面3690を含むDDM3610におけるどこにでも配置されることができるということである)。器具挿入チューブ3910は、上述したようにDDM3610及び格納式フック3640の振動を駆動するモータを含むハウジング3920に取り付ける。ハウジング3920は、手術用ロボットのアームに接続するための電気的及び機械的接続部を有するソケット3930を有して構成されている。器具挿入チューブ3910は、ハウジング3920が患者の体外に配置されるように長く形成されることができる。逆に、器具挿入チューブ3910は、ハウジング3920が患者の体内における差別的切開器具3900の関節動作を許容するためにロボットアーム及び患者の体内に配置された関節によって患者の体内に配置されるように短く形成されることができる。
ハウジングから取っ手又はハウジングへの、したがって、関節を介した全ての接続が、関節を介した機械的駆動の伝達を必要とする設計よりもはるかに単純とすることができる電気的とすることができることから、DDM及び患者の体内に近いハウジング内の小型モータの配置は、差別的切開器具の器具挿入チューブの関節動作を容易とする。これは、手術ロボット及び腹腔鏡検査の双方のために設計された差別的切開器具についても同様である。図40は、腹腔鏡差別的切開器具4000の端部としてのそのような器具の1つの実施形態を示している。DDM3610は、格納式フック3640及び導電性パッチ3625に取り付けられている。DDM3610は、近位の器具挿通チューブ4020に対する回転接合4030において関節動作される遠位の器具挿入チューブ4010に回転可能に取り付けられる。遠位の器具挿入チューブ4010の内側に搭載されるものは、モータ軸4050を有するモータ4040と、ソレノイドプランジャ4070を有するソレノイド4060である。モータ4040によるモータ軸4050の回転は、DDM4010、それゆえに、上述したように、格納式フック3640の振動を駆動する。ソレノイド4060は、遠位の器具挿入チューブ4010に堅く取り付けられており、ソレノイドプランジャ4070は、遠位の挿入チューブ4010の内側を自由に摺動するモータ4040に取り付けられている。それゆえに、ソレノイド4060が起動されると、ソレノイドプランジャは、(矢印4080によって示される方向において)上/下に移動し、それにより、モータ4040、モータ軸4050及び格納式フック3640を(矢印4080によって示されるように)上/下に駆動する。可撓性導体リボン4090は、モータ4040及びソレノイド4060を駆動するのに必要な電力及び信号を供給する。回転接合4030における腹腔鏡差別的切開器具4000の関節動作は、右図に示されるように、遠位の器具挿入チューブ4010が近位の器具挿入チューブ4020に対して曲がるのを可能とする。近位の器具挿入チューブ4020に対する遠位の器具挿入チューブ4010の動作は、腹腔鏡差分切開器具4000の取っ手における手動機構によって作動されるプッシュプルロッドによって駆動される制御ホーンなどのいくつかの機構のいずれかによって駆動されることができる。このアクチュエータ(すなわち、モータ4040及びソレノイド4060)及び可撓性導体リボン4090の構成は、回転接合4030における関節動作を超えた複雑な動作の伝達と、高価な複雑な機械部品を必要とし、大量を追加し、失敗する傾向があるであろう伝達を容易とする。
本願明細書に記載された実施形態は、例示であり、本発明の全体を包含することを意図するものではない。本願明細書に記載された本発明の多くの変更例及び実施形態は、これらの発明が上述した説明及び関連する図面に提示された教示の利益を有して関連する当該技術分野における当業者が思い浮かぶであろう。したがって、本発明は、開示された特定の実施形態に限定されるべきではなく、変更例及び他の実施形態は添付された特許請求の範囲に含まれることが意図されていると理解されるべきである。特定の用語が本願明細書において使用されているが、それらは、限定の目的ではなく、一般的且つ説明的な意味でのみ使用されているにすぎない。