本発明に係る吊持装置を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。尚、説明の都合上、図5〜図8については、吊掛部材の前面部分を省略して図示している。
実施例1に係る吊持装置につき、図1〜図7を参照して説明する。以下、図2の紙面左下側を吊持装置の正面側(前方側)とし、その前方側から見たときの上下左右方向を基準として説明する。
本実施例1の吊持装置1は、フック部材6にハンガーなどを介して物品を吊持させることができるものである。また、例えば図1に示されるように、壁部W,W’に所定間隔を置いて取り付け、二つの吊持装置1,1のフック部材6,6に物干し竿10を略水平に架設することで、物干し竿10に複数の物品Aを吊るせるようにして使用してもよい。
図2に示されるように、吊持装置1は、略板状のベース部材2と、ベース部材2の上部に取付け可能なピンカバー3と、ベース部材2に嵌挿可能な吊掛部材4と、から主に構成されている。
図2,図3に示されるように、ベース部材2は、射出成形によって略板状に成形された樹脂製のものであり、基部20と、基部20の正面視左方において下端部から上部に亘って形成された左壁部23と、基部20の正面視右方において下端部から上部に亘って形成された右壁部26と、を備え、基部20および左右の壁部23,26によって水平断面視略コ字状のガイド溝29が形成されている。
また、基部20は、左右の壁部23,26よりも上方に延出されており、該延出された部分には、上端部において下方に向け切欠かれて形成された被係止部21aと、正面部から背面部にかけて貫通する複数の挿通孔20a,20b,…と、複数の挿通孔20a,20b,…の略中央かつ下方に形成された取付孔21bと、が形成されている。さらに、基部20の左右端部には、上下方向に亘って背面側から前面側に凹む左右の段部21L,21Rが形成されている。
また、複数の挿通孔20a,20b,…は、挿通孔20a,20a,…が挿通孔20b,20b,…の上方かつ正面部から背面部にかけて右方向に傾斜して形成されており、挿通孔20b,20b,…が正面部から背面部にかけて左方向に傾斜して形成されている。
左壁部23は、上下方向に長尺かつ肉抜きされたリブ構造に形成されており、正面視左側端部の下端部から右方向にかけて形成された切欠き部24と、正面視左側端部の上端部から右方向に下降するように形成された後述する係止手段5の一部の係止部である傾斜面25と、傾斜面25の下端から鉛直方向に垂下する平坦面23aと、を備え、傾斜面25は、右壁部26に対向する弧状に形成されている。
右壁部26は、上下方向に長尺に形成されており、正面視右側端部の下端部から左方向にかけて形成された切欠き部27を備えている。尚、左壁部23と右壁部26とは肉抜きされたリブ構造に形成されていることから、構造強度が高められるとともに、軽量化が成されている。さらに尚、左壁部23と右壁部26とは、ブロック状であってもよく、肉抜きされたリブ構造に限定するものではない。
また、図2,図3に示されるように、左右の壁部23,26の切欠き部24,27が形成された位置の基部20には、前後方向に貫通する複数の挿通孔20c,20d,…が、上述の挿通孔20a,20bと同様に、切欠き部24に位置する挿通孔20cが正面部から背面部にかけて右方向に傾斜するように形成され、切欠き部27に位置する挿通孔20dが正面部から背面部にかけて左方向に傾斜するように形成されている。
ピンカバー3は、射出成形によって正面視略下向き凸字状に成形された樹脂製のものであり、基部30と、基部30の正面視左方において上端部から上下方向略中央に亘って形成された左壁部33と、基部30の正面視右方において上端部から上下方向略中央に亘って形成された右壁部36と、を備え、該ピンカバー3の中央部には、基部30および左右の壁部33,36によって上部断面視略コ字状のガイド溝39が形成されている。
また、基部30には、上端部略中央において後方に延設され下向き鉤状を成す係止片30aと、基部30の下端部略中央において後方に延設された挿嵌部30bが形成されている。
左壁部33は、正面視略下向き逆L字状に形成され、右壁部36は、正面視略下向きL字状に形成されている。また、左壁部33は、詳しくは図6に示すように、右壁部36よりも左右寸法が短尺に形成されている。尚、左右の壁部33,36は、肉抜きされたリブ構造であってもよく、ブロック状であってもよい。
吊掛部材4は、上面視略コ字状に形成されたカバー体40と、吊掛部材4に取付けられる係止手段5の一部であるピン部材50(ピン)およびコイルバネ55(付勢手段)(図3参照)と、吊掛部材4に回動可能に支持されるフック部材6と、を具備している。
カバー体40は、射出成形によって正面視略長方形状に成形された樹脂製のものであり、略長方形状の前面部41と、前面部41の左右両端部から後方に向かって屈曲されて延設された左面部42Lおよび右面部42Rと、を備え、左面部42Lおよび右面部42Rの後端部には、左右方向略中央に向かって前面部41と略平行に延設された左ガイド片43Lおよび右ガイド片43Rが形成されている。
また、カバー体40の裏面40bには、略中央において前面側に凹む凹部40aが上下方向に亘り形成されており、凹部40aの内側には、下端部に亘り取付枠部44が形成されている。このように取付枠部44は、凹部40aに形成されているため、カバー体40内に収まりながら、取付枠部44に必要な前後方向の厚み寸法を十分に確保することができる。また、取付枠部44は、上方に位置する上枠部45と、下方に位置する下枠部48と、によって形成されている。
上枠部45は、左右方向に長尺かつ肉抜きのリブ構造に形成されており、リブ構造を形成する正面視左側の側壁を説明の便宜のため左側壁46と、リブ構造を形成する正面視右側の側壁を右側壁47と、それぞれ呼称する。また、上枠部45によって左側壁46から右側壁47にかけて後方側に開口する略長方形状の収納部45aが形成されている。
また、上枠部45の上端部には、左側壁46側から略中央にかけて収納部45aに挿通する長孔45bが形成され、上枠部45の左側壁46には、貫通孔46aが形成されている。
下枠部48は、上下方向に長尺かつ肉抜きのリブ構造に形成されており、上下に平行に所定間隔を置いて三枚の係止片48b,48b,48bが設けられている。これら係止片48b,48b,48bの略中央にはラウンド形状の切欠き48a,48a,48aが形成されており、これら切欠き48a,48a,48aが上下方向に連なることで溝部49が形成されている。
図6(a)に示されるように、係止手段5は、ピン部材50と、コイルバネ55と、上述したベース部材2の左壁部23の傾斜面25と、から構成されている。図3に示されるように、ピン部材50は、鍔部52と、鍔部52より径が細く形成され、鍔部52の略軸心から左方向に突出するピン部51と、を具備し、鍔部52の上端部には上方に突出する凸部52aが形成されている。また、ピン部51は、略四角柱状に形成されており、先端部が略半球状となっている。
ピン部材50の鍔部52の凸部52aは、収納部45aを構成する上枠部45の長孔45bに挿嵌され、ピン部51は収納部45aを構成する上枠部45の左側壁46の貫通孔46aに挿通される。
コイルバネ55は、両端部をそれぞれ鍔部52と右側壁47とに圧接させた状態で収納部45aに収納される。このとき、コイルバネ55は、一端がピン部材50の鍔部52の側壁52bによって前方向への移動が規制され、他端が収納部45aを構成する左前壁47aによって前方向への移動が規制されているため、コイルバネ55が抜け落ち難く、後述する吊掛部材4の落下時のコイルバネ55の紛失を防止できる。
尚、コイルバネ55は、ピン部材50の鍔部52や上枠部45の右側壁47に、接着剤や粘着剤等により取り付けられていてもよい。さらに尚、コイルバネ55は、ピン部材50の鍔部52や上枠部45の右側壁47に形成された対向する一対の軸部に挿嵌されることで取付けられていてもよい。
また、コイルバネ55は、ピン部材50の鍔部52が左側壁46に当接することで正面視左側への移動が規制された状態でピン部材50を正面視左方向に付勢している。
また、ピン部材50は、鍔部52の凸部52aが上枠部45の長孔45bに挿嵌されて前後方向への移動が案内されるとともに、長孔45b内で移動量が規制されている。
フック部材6は、射出成形によって正面視略L字状に成形された樹脂製のものであり、上下方向に延びて形成された軸部60と、軸部60の下端部から屈曲しかつ端部が反り上がるように形成されたフック部65と、を具備している。
軸部60の上下方向の周面には、所定間隔を置いて形成された環状溝60a,60b,60cが形成されている。これら環状溝60a,60b,60cは、カバー体40の下枠部48の切欠き48a,48a,…にそれぞれ挿嵌され、フック部材6がカバー体40に対して水平方向に回動可能に支持される。これによれば、フック部材6は、物品を吊下げる際の向きを任意に変更することができ、かつ物品を吊下げない際には、壁部W側に寄せて部屋内に張り出さないようにできる。
これまで、吊持装置1の構成について説明してきたが、次いで吊持装置1を壁部Wに取付ける態様について、図4(a)〜(c)および図6(a)を用いて説明する。
まず、吊持装置1の壁部Wへの取付位置を決め、図4(a)に示されるように、ベース部材2の複数の挿通孔20a,20b,20c(図3参照),20d,…を介して取付ピン7,7,…を壁部Wに打ち込み、ベース部材2を壁部Wの取付位置に固定する。この取付ピン7は、略針状に形成された小径のものであるため、ベース部材2を取外した際に、壁部Wに目立つ穴が形成され難い。
また、挿通孔20a,20bは、前面部から背面部にかけて互いに交差する角度で形成されているため、取付ピン7,7,…が挿通孔20a,20bに案内された角度で壁部Wに打ち込まれる。これによれば、取付ピン7,7,…同士が、互いの抜け方向に交差して抜け止めするように機能するため、例えば石膏ボードのような比較的強度の低い壁材に対しても、高い固定強度でベース部材2を固定することができる。尚、挿通孔20c(図3参照),20dについては、位置が異なる以外は挿通孔20a,20bと略同一であるため、取付についての説明を省略する。
次いで、図4(b)に示されるように、壁部Wに固定したベース部材2の被係止部21a(図4(a)参照)にピンカバー3の係止片30aを係止させ、ピンカバー3の挿嵌部30bをベース部材2の取付孔21b(図4(a)参照)に挿嵌させることで、ピンカバー3をベース部材2に取付ける。これにより、壁部Wに打ち付けられた取付ピン7,7,…が振動により壁部Wから抜けることを防ぐことができる。
また、ピンカバー3の基部30は、ベース部材2に取付けられた際に、ベース部材2の挿通孔20a,20a,…(図4(a)参照)を覆い、かつ、ベース部材2の基部20と略同一面を形成している。また、ベース部材2のガイド溝29とピンカバー3のガイド溝39は、上下方向に連続した状態となる。尚、ピンカバー3の係止片30aは、ベース部材2の壁部Wに当接している背面部よりも後方に突出しない奥行寸法となっている。
次いで、ピンカバー3が取付けられたベース部材2の上方から、吊掛部材4を挿嵌させる(図4(c)参照)。このとき、図6(a)に示されるように、収納部45aから正面視左方向に突出するピン部材50のピン部51が、ベース部材2の左壁部23の傾斜面25に当接することで、吊掛部材4がピン部51と傾斜面25とを介してベース部材2に支持された状態となる。この状態が、フック部材6に物品A等を吊下げ可能な使用可能状態である。
また、吊掛部材4のカバー体40は、図4(c)に示されるように、カバー体40の前面部41および左右の面部42L,42Rの内面がベース部材2およびピンカバー3の前面部および左右側端部に略当接し、かつ左右のガイド片43L,43Rがベース部材2の左右の段部21R,21Lにそれぞれ略当接することで、カバー体40の前後方向への移動が規制される。
換言すると、カバー体40は、ベース部材2およびピンカバー3に外嵌し、これらベース部材2およびピンカバー3の外形により上下方向に案内されて係脱される。さらに、吊掛部材4の前後方向に外力が作用した際には、吊掛部材4とベース部材2との係止状態が解除されず、物品の吊持状態を維持することができる。
図6(a)に示されるように、ピンカバー3のガイド溝39は、その幅方向の寸法が取付枠部44と取付枠部44から突出したピン部51との幅方向の寸法より長尺に形成されているため、ピン部51がガイド溝39に引っ掛かり難く、ベース部材2への吊掛部材4の挿嵌が容易となっている。
次いで、使用可能状態にある吊持装置1に物品を吊下げる際の態様について、図5〜図7を用いて説明する。尚、説明の都合上、吊持装置1に吊下げる物品の図示は省略する。
ベース部材2の傾斜面25は、傾斜面25とピン部材50のピン部51との接線が略水平から略垂直に漸次推移するような曲率の弧状となっている。そのため、ピン部51に対して鉛直方向に力が作用すると、ピン部51、その先端部が傾斜面25に案内されて、下方側へ摺動するようになっている。ピン部51が摺動すると、その反力によりピン部材50を収納部45a側に後退させる方向に力が作用し、コイルバネ55に圧縮応力が作用する。
コイルバネ55によりピン部材50には所定の付勢力が作用しているため、水平向に作用するコイルバネ55の付勢力がピン部材50のピン部51の先端部がベース部材2の傾斜面25に対して押圧される押圧力として作用するようになっている。
図5(a),図6(a)に示されるように、吊持装置1は、使用可能状態において物品が吊下げられていない場合には、吊掛部材4の自重によりピン部材50のピン部51が正面視扇状に形成されたベース部材2の傾斜面25上の位置P1に点当接している。
図5(a)の状態は、ピン部51の先端部がベース部材2の傾斜面25に対して押圧される押圧力V1(コイルバネ55の付勢力)が、ピン部51に対して鉛直方向に作用する力S1(ここでは吊掛部材4の自重)に起因するコイルバネ55に作用する圧縮応力U1よりも大きいため、ピン部51との当接位置が位置P1にて安定している。
フック部65に物品が吊下げられると、ピン部51に対して鉛直方向に作用する力(ここでは吊掛部材4の自重+物品の荷重)に起因するコイルバネ55に作用する圧縮応力が増大し、この圧縮応力が押圧力を勝った時点から、ピン部材50が収納部45a側に後退する。そのため、ピン部51に対して鉛直方向に作用する力(ここでは吊掛部材4の自重+物品の荷重)の増大に比例してピン部材50が収納部45a側に後退する。換言すると、フック部65に吊下げられる物品の荷重が増すごとに、ピン部51が漸次傾斜面25上を摺動する。
図5(b),図6(b)の状態は、フック部65に所定荷重S2(設定された耐荷重の上限)分の物品が吊下げられた状態を示している。この状態では、圧縮応力が押圧力に抗してコイルバネ55を圧縮し、ピン部51が傾斜面25の略中央の位置P2にて、圧縮応力U2と押圧力V2とが略釣り合った状態となっており、ピン部51が傾斜面25の略中央の位置P2にて安定し、係止状態が維持されている。
図5(c),図7(a)の状態は、フック部65に所定荷重S2を超える超過荷重S3の物品が吊下げられた状態を示している。この状態では、圧縮応力が押圧力を上回っている。そのため、圧縮応力U3が押圧力V3に抗してコイルバネ55を圧縮し、ピン部51がベース部材2の傾斜面25の略中央の位置P2を超えた傾斜面25の後半側(図5において、大きいドットで示した箇所)に移動する。これにより、ピン部材50のピン部51がベース部材2の傾斜面25から離脱し平坦面23aに移動することで、ピン部51による係止状態が解除され、吊掛部材4がベース部材2のガイド溝29に案内されながら下方に落下する(図7(b)参照)。
このとき、ピン部材50のピン部51とベース部材2の傾斜面25との接線L3は、接点から水平方向に延びる仮想線γとの成す角度が45度を超えており、吊掛部材4を支持する力のピン部51の先端部と傾斜面25との間に生じる摩擦力への依存が高まり、ピン部51が傾斜面25上を摺動し易くなっている。換言すると、傾斜面25の後半側では、傾斜面25の前半側と比較して、同量に増加する荷重量に対するコイルバネ55に作用する圧縮応力の増加量が大きくなっている。
また、物品の荷重により吊掛部材4のピン部材50のピン部51がベース部材2の傾斜面25を摺動するほどに、ピン部51と傾斜面25との接線の傾斜角度が略垂直に推移していくため、物品の荷重による作用も比例して増加するようになっている。
吊掛部材4の落下時には、ピン部51がベース部材2の左壁部23の平坦面23aに摺動するため、吊掛部材4がベース部材2のガイド溝29より完全に離脱するまで、ピン部51は左壁部23に押圧力を作用させており、吊掛部材4の落下スピードが減退されている。
上記したように、吊持装置1は、所定荷重を超える物品がフック部65,65に吊下げられた際に、吊掛部材4が所定荷重を超える物品とともにベース部材2から脱落するため、ベース部材2が固定されている壁部Wの破損を防止することができる。
また、所定荷重を超える物品がフック部65,65に吊下げられたことでベース部材2から脱落した吊掛部材4は、上述したように、ベース部材2の上方から挿嵌させることで、使用可能状態に復帰させることができる。
また、傾斜面25の前半側では、図5(b)に示すように、ピン部材50のピン部51とベース部材2の傾斜面25との接線L2と、略中央の位置P2から水平方向に延びる仮想線βとの傾斜角度が最大で略45度(最小の傾斜角度は、図5(a)に示す位置P1における仮想線αに対する接線L1の傾斜角度)となっており、傾斜面25の後半側に比べて傾斜角が寝ており、ピン部51が傾斜面25上を摺動し難くなっている。すなわち、フック部65,65に作用する物品の荷重の合計が所定以下である場合にはピン部51が傾斜面25の前半側と接しており、安定して物品を吊持することができるとともに、フック部65,65に作用する物品の荷重の合計が所定荷重を超えた場合にはピン部51が傾斜面25の後半側を摺動し係止状態が速やかに解除される。
また、図5(b),図6(b)に示されるように、物品の荷重の合計が所定以下である場合、ピン部51が位置P1から略中央の位置P2に移動するまでのピン部51が移動する上下方向の高低差T1が小さいことから、フック部65の高さ位置の移動量が少なく、使用感が良い。
尚、本実施例1では、物品の荷重が所定荷重S2である際に、圧縮応力U2と押圧力V2とが略釣り合った状態となるように構成されている形態を例示したが、ベース部材2の傾斜面25の形状、コイルバネ55の付勢力等により、圧縮応力U2と押圧力V2とが釣り合う位置が略中央の位置P2でなくともよい。
これまで説明してきたように、本実施例1における吊持装置1は、ピン部材50のピン部51は、カバー体40の上枠部45の左側壁46からの突出寸法内における小さい動作でベース部材2の傾斜面25との係止状態を解除することができることから、迅速にベース部材2と吊掛部材4との係止状態を解除することができる。
また、ピン部材50のピン部51とベース部材2の傾斜面25との当接部分に作用する荷重が、コイルバネ55の押圧力を上回ることでピン部51が後退され、ベース部材2の傾斜面25との係止状態が解除されるため、ベース部材2と吊掛部材4との係止状態が解除される所定の荷重をコイルバネ55の付勢力の調整により適宜変更することができる。
次に、実施例2に係る吊持装置101につき、図8(a),(b)を参照して説明する。尚、前記実施例と同一構成で重複する構成を省略する。
吊持装置101は、ベース部材102の左壁部123において、正面視左側端部の上端部から右方向に下降するように形成された上傾斜面125aと、正面視左側端部の下端部から右方向に上昇するように形成された下傾斜面125bと、が形成されている。これにより、前記実施例1のように、ベース部材102の上方から吊掛部材4を挿嵌させるだけでなく、ベース部材102の下方から吊掛部材4を挿嵌させることができる。
また、ベース部材102は、図8(b)に示されるように、上方に後方に向かって延出する側面視略下向き逆L字状に形成された接続部材102aを介すことで、複数の取付ピン7,7,…により天井部Cに取付けることもできる。この場合、上記した構成から吊持装置101が天井部Cに取付けられた場合であっても、ベース部材102の下方から吊掛部材4を装着可能である。尚、接続部材102aは、ベース部材102と一体に形成されていてもよい。
以上、本発明の実施例1,2を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例1,2に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
例えば、前記実施例1では、ベース部材2は、複数の取付ピン7,7,…により取り付けられる態様として説明したが、これに限らず、釘やボルト、粘着テープや接着剤等で取付けられてもよく、複数の取付ピン7,7,…に限定するものではない。
また、ベース部材2には、ピンカバー3が装着される態様として説明したが、これに限らず、ピンカバー3が装着されない態様であってもよく、ピンカバー3のガイド溝39がベース部材2に直接形成されていてもよい。この態様であれば、部材点数を減らすことができる。
また、左壁部23や右壁部26は、全体が略半円状の円弧状に形成されていてもよく、本実施例1,2における形状に限定するものではない。
また、ベース部材2の左右の壁部23,26と吊掛部材4の上枠部45並びにピン部材50およびコイルバネ55とが、互いに入れ替えられかつ略上下反転された態様であってもよい。詳しくは、カバー体の裏面に左右の壁部が形成され、左壁部の正面視左側端部の下端部から右方向に上昇するように傾斜面が形成され、この傾斜面と係止可能にベース部材の下部に上枠部45と略同一に形成された枠部並びにピン部材およびコイルバネを備える態様とすることで、壁部Wに固定されるベース部材にピン部材およびコイルバネが備えられることから、ピン部材およびコイルバネが落下し難くなる。
係止手段5の一部である係止部は、傾斜面25である態様として説明したが、これに限らず、係止部は、傾斜面25だけに限定するものではなく、例えば傾斜面と水平面との組み合わせでもよく、少なくともピン部材50が係止可能な傾斜面を有する態様であればよい。
傾斜面25は、接線が略水平から略垂直に漸次推移するような曲率の弧状である態様として説明したが、これに限らず、接線が略垂直から略水平に漸次推移するような曲率の弧状であってもよく、略楕円形状の一部であるような曲率の弧状であってもよく、略直線状の傾斜面であってもよく、限定するものではない。この態様であれば、付勢手段だけでなく、傾斜面の形状でも所定の荷重を変更することができる。
また、傾斜面25は、ベース部材2の左壁部23に形成されている態様として説明したが、これに限らず、右壁部26に形成されていてもよく、ピン部材50のピン部51に形成されていてもよく、左壁部23および/または右壁部26とピン部材50にそれぞれ形成されていてもよい。
また、ベース部材2の挿通孔20a,20b,20c,20dは、傾斜をつけて形成されている態様として説明したが、これに限らず、傾斜が形成されていなくともよく、上下方向に傾斜するように形成されていてもよく、その形状を限定するものではない。さらに、挿通孔20a,20b,…のみを介して取付ピン7,7,…が壁部Wに打ち付けられることでベース部材2が壁部Wに固定されてもよい。
上枠部45は、筒状に形成されていてもよい。この態様であれば、コイルバネ55の落下を防止しやすい。
係止手段5は、コイルバネ55により付勢されるピン部材50を備える態様として説明したが、これに限らず、所定の荷重を超える荷重により破断する使い捨てのピン部材を用いてもよい。この態様であれば、係止手段5の係止部は、傾斜面25を有していなくともよい。
フック部材6は、略L字状に形成された態様として説明したが、これに限らず、軸部60の先端にリングが形成されていてもよく、その形状を限定するものではない。また、軸部60の端部に軸部60の直径よりも大径な球体が形成されており、これによって吊掛部材4に回動可能に軸支されていてもよい。さらに、カバー体40に回動不能に一体形成されていてもよい。
ベース部材2、ピンカバー3、カバー体40、ピン部材50およびフック部材6は、金属の折曲成形や押出成形等で形成されていてもよく、樹脂材の射出成形に限定するものではない。