JP2018135582A - Ti−Al多元系合金の脱酸方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】Al成分の揮発を抑制しつつ、酸素含有率が低いTi−Al多元系合金を作製する。【解決手段】本発明のTi−Al多元系合金の脱酸方法は、酸素を0.1質量%以上含有すると共にAlを40質量%以上含有するTi−Al多元系合金溶解原料を、真空度が5×10−2〜1×10−3Paとされた雰囲気に置き、溶解時の投入熱量が1000〜2000kW/h/m2、溶解時間が1〜10分となるように電子ビームを照射して脱酸するに際して、Ti−Al多元系合金溶解原料に、Nbを3〜10質量%、Crを1〜4質量%添加することで、Al成分の揮発を抑制しつつ、溶解後のTi−Al多元系合金中の酸素含有率を0.1質量%未満に低減するものである。【選択図】図1
Description
本発明は、酸素含有率が高いTi−Al多元系合金溶解原料を、電子ビーム溶解法によって溶解することで、Al成分の揮発を抑制しつつ、溶解後のTi−Al多元系合金中の酸素含有率を低減するTi−Al多元系合金の脱酸方法に関するものである。
近年、航空機や自動車などの輸送機用の金属素材としてTi−Al系合金が注目されている。このTi−Al系の金属間化合物は軽量高弾性、高耐熱性等の優れた特性を有したものとなっている。その中でも、Ti−Alに、第3元素、第4元素としてNbやCrなどを添加し、耐酸化性のような特性をより向上させたTi−33質量%Al−4.8質量%Nb−2.7質量%Cr合金(GE合金)等のTi−Al多元系合金の需要は特に高まりつつある。
このようなチタンを主成分とするTi−Al多元系合金等のTi−Al系合金を製造する際には、溶解中の酸素による汚染を防ぐ必要がある。そのため、Ti−Al多元系合金等は、酸素を含まない不活性雰囲気下において、真空アーク溶解法(VAR)、電子ビーム溶解法(EB)、プラズマアーク溶解法(PAM)、真空誘導溶解法(VIM)、水冷銅誘導溶解法(CCIM)などの溶解法を採用することで製造されている。
特に、Ti−Al多元系合金でも酸素含有率が低いものを溶製するためには、元々酸素含有率が低い高品位なチタン材料やニオブ材料を用いて製造することが有効である。しかし、高品位なチタン材料は、概して高価格であり、近年は更に価格が高騰する傾向にある。このことから、高品位な材料に比べると酸素含有率が高く低品位であるが、価格も安く抑えられるチタン材料(例えば、スポンジチタン、スクラップ原料、ルチル鉱石(TiO2)などの材料)やニオブ材料(低級ニオブ、酸化ニオブ鉱石(Nb2O5)、スクラップ原料などの材料)を用いて酸素含有率が少ないTi−Al多元系合金を製造したいというニーズが高まっている。
また、活性金属であるTiは、溶解する雰囲気中に存在する不純物、特に酸素との結合力が極めて強いため、上述したように溶解中に外部から取り込まれる酸素を低減し、いかに酸素による汚染を防ぐかという対策を採る必要がある。ただ、このような対策を採用しても低品位なチタン材料には酸素が取り込まれてしまうため、低品位なチタン材料から酸素だけを選択的に除去することも必要になる。
しかし、一度酸素が固溶したTi中から酸素だけを選択的に除去することは技術的に容易ではなく、酸素の選択的除去に取り組んだ例自体が従来技術に少ないのが現状である。例えば、酸素の選択的除去に取り組んだ数少ない先行技術を挙げると、以下に示すものが挙げられる。
すなわち、特許文献1には、低酸素Ti−Al系合金の製造方法および低酸素Ti−Al系合金に関する発明が開示されている。その段落0013には「1×10−2Torrよりも高い真空雰囲気下において強制的にAlを除去すると、これに伴って溶湯中の酸素量も減少するのであり、最終目標組成のAl含有量よりもAlを多く含有する組成の溶湯から強制的にAlを除去することにより、最終目標組成のTi−Al系合金を製造することができると同時に酸素を200ppm以下に低減させることができる」と記載されている。
すなわち、特許文献1には、低酸素Ti−Al系合金の製造方法および低酸素Ti−Al系合金に関する発明が開示されている。その段落0013には「1×10−2Torrよりも高い真空雰囲気下において強制的にAlを除去すると、これに伴って溶湯中の酸素量も減少するのであり、最終目標組成のAl含有量よりもAlを多く含有する組成の溶湯から強制的にAlを除去することにより、最終目標組成のTi−Al系合金を製造することができると同時に酸素を200ppm以下に低減させることができる」と記載されている。
つまり、特許文献1に記載された低酸素Ti−Al系合金の製造方法は、1.33Pa(1×10−2Torr)よりも低い圧力となるような高真空雰囲気下において低酸素Ti−Al系合金を製造する方法である。
特許文献1に示すような高真空雰囲気下での溶解は、酸素を多量に含有するTi−Al系合金スクラップから酸素を除去するという観点からすると、有効な方法であると思われる。しかし、特許文献1の方法では、Ti−Al系合金スクラップから酸素ばかりかAl成分まで揮発除去されてしまう。
つまり、特許文献1に記載されるように高真空雰囲気を用いた低酸素Ti−Al系合金の製造方法は、Al成分のロスが多い方法であり、目標のTi−Al系合金を製造するためには、Al原料を余分に準備しておかなければならず、場合によればAl原料を追加した再溶解が必要になってしまう。
つまり、特許文献1に記載されるように高真空雰囲気を用いた低酸素Ti−Al系合金の製造方法は、Al成分のロスが多い方法であり、目標のTi−Al系合金を製造するためには、Al原料を余分に準備しておかなければならず、場合によればAl原料を追加した再溶解が必要になってしまう。
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたもので、酸素含有率が高く低品位なチタン材料やニオブ材料を用いて、Al成分の揮発を抑制しつつ、酸素含有率が低いTi−Al多元系合金を作製することができるTi−Al多元系合金の脱酸方法を提供することを課題とするものである。
上記課題を解決するため、本発明のTi−Al多元系合金の脱酸方法は以下の技術的手段を講じている。
本発明のTi−Al多元系合金の脱酸方法は、酸素を0.1質量%以上含有すると共にAlを40質量%以上含有するTi−Al多元系合金溶解原料を、真空度が5×10−2〜1×10−3Paとされた雰囲気に置き、溶解時の投入熱量が1000〜2000kW/h/m2、溶解時間が1〜10分となるように電子ビームを照射して、前記Ti−Al多元系合金溶解原料を溶解しつつ脱酸するに際して、前記Ti−Al多元系合金溶解原料に、Nbを3〜10質量%、Crを1〜4質量%添加することで、Al成分の揮発を抑制しつつ、溶解後のTi−Al多元系合金中の酸素含有率を0.1質量%未満に低減することを特徴とする。
本発明のTi−Al多元系合金の脱酸方法は、酸素を0.1質量%以上含有すると共にAlを40質量%以上含有するTi−Al多元系合金溶解原料を、真空度が5×10−2〜1×10−3Paとされた雰囲気に置き、溶解時の投入熱量が1000〜2000kW/h/m2、溶解時間が1〜10分となるように電子ビームを照射して、前記Ti−Al多元系合金溶解原料を溶解しつつ脱酸するに際して、前記Ti−Al多元系合金溶解原料に、Nbを3〜10質量%、Crを1〜4質量%添加することで、Al成分の揮発を抑制しつつ、溶解後のTi−Al多元系合金中の酸素含有率を0.1質量%未満に低減することを特徴とする。
なお、好ましくは、前記Ti−Al多元系合金溶解原料に、Alが40〜50質量%含有される場合には、前記Ti−Al多元系合金溶解原料に添加するNbを3〜7質量%、Crを1〜4質量%とし、さらに前記電子ビームによる溶解時間を1〜5分の条件として溶解を行い、Alを30〜40質量%、Nbを1〜5質量%、Crを1〜4質量%含有するTi−Al多元系合金を製造し、且つ、溶解後の前記Ti−Al多元系合金中の酸素含有率を0.1質量%未満に低減するとよい。
本発明のTi−Al多元系合金の脱酸方法によると、酸素含有率が高く低品位なチタン材料やニオブ材料を用いて、Al成分の揮発を抑制しつつ、酸素含有率が低いTi−Al多元系合金を作製することができる。
本発明者らは、酸素含有率が高く低品位なチタン材料やTi−Al系合金スクラップなどに対してアルミ材料を加えて電子ビーム溶解を行う際に、Al成分の揮発を抑制しつつ、酸素含有率が低いTi−Al系合金(高品位なTi−Al系合金)を得ることができるTi−Al系合金の脱酸方法を見出すため、鋭意検討を行った。
その結果、Ti−Al系合金材料に、NbおよびCrを適量添加したものをTi−Al多元系合金溶解原料とし、電子ビーム溶解法を採用した上で、溶解時の密閉容器内の真空度、溶解時の投入熱量、並びに溶解時間を適正な範囲としつつ溶解を行うことで、Al成分の揮発を抑制しつつ、酸素含有率が低いTi−Al多元系合金を作製することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
その結果、Ti−Al系合金材料に、NbおよびCrを適量添加したものをTi−Al多元系合金溶解原料とし、電子ビーム溶解法を採用した上で、溶解時の密閉容器内の真空度、溶解時の投入熱量、並びに溶解時間を適正な範囲としつつ溶解を行うことで、Al成分の揮発を抑制しつつ、酸素含有率が低いTi−Al多元系合金を作製することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
以下、本発明のTi−Al多元系合金の脱酸方法を実施形態に基づいて更に詳細に説明する。
本実施形態のTi−Al多元系合金の脱酸方法は、酸素を0.1質量%以上含有すると
共にAlを40質量%以上含有するTi−Al多元系合金溶解原料を、真空度が5×10−2〜1×10−3Paとされた雰囲気に置き、溶解時の投入熱量が1000〜2000kW/h/m2、溶解時間が1〜10分となるように電子ビームを照射して、Ti−Al多元系合金溶解原料を溶解しつつ脱酸するものとなっている。そして、本実施形態の脱酸方法は、Ti−Al多元系合金溶解原料を溶解するに際しては、Nbを3〜10質量%、Crを1〜4質量%添加することで、Al成分の揮発を抑制しつつ、溶解後のTi−Al多元系合金中の酸素含有率を0.1質量%未満に低減するものである。
本実施形態のTi−Al多元系合金の脱酸方法は、酸素を0.1質量%以上含有すると
共にAlを40質量%以上含有するTi−Al多元系合金溶解原料を、真空度が5×10−2〜1×10−3Paとされた雰囲気に置き、溶解時の投入熱量が1000〜2000kW/h/m2、溶解時間が1〜10分となるように電子ビームを照射して、Ti−Al多元系合金溶解原料を溶解しつつ脱酸するものとなっている。そして、本実施形態の脱酸方法は、Ti−Al多元系合金溶解原料を溶解するに際しては、Nbを3〜10質量%、Crを1〜4質量%添加することで、Al成分の揮発を抑制しつつ、溶解後のTi−Al多元系合金中の酸素含有率を0.1質量%未満に低減するものである。
例えば、Ti−Al多元系合金溶解原料にAlが40〜50質量%含有される場合であれば、Ti−Al多元系合金溶解原料に添加するNbは3〜7質量%、Crは1〜4質量%とされ、さらに電子ビームによる溶解時間を1〜5分の条件として溶解を行う。そうすれば、Alを30〜40質量%、Nbを1〜5質量%、Crを1〜4質量%含有するTi−Al多元系合金を製造することができ、溶解後のTi−Al多元系合金中の酸素含有率を0.1質量%未満に低減することができる。
次に、本実施形態のTi−Al多元系合金の脱酸方法を構成する各要件について説明する。
(Ti−Al多元系合金溶解原料の成分組成)
・酸素:0.1質量%以上
本実施形態のTi−Al多元系合金の脱酸方法に用いられるTi−Al多元系合金溶解原料(以降、単に原料という場合がある)は、低品位なチタン材料(例えば、スクラップ原料、ルチル鉱石(TiO2)などのチタン材料)やニオブ材料(低級ニオブ、酸化ニオブ鉱石(Nb2O5)、スクラップ原料などのニオブ材料)を用いたものである。これらのチタン材料やニオブ材料は、酸素含有率が高く、少なくても0.1質量%の酸素を含有している。よって、本発明のTi−Al多元系合金の脱酸方法に用いるTi−Al多元系合金溶解原料の酸素含有率は0.1質量%以上とされている。
・Al:40質量%以上
航空機用のエンジン部品や自動車のタービンホイールなどには、Alが33質量%以上含有されるTi−Al系合金(例えば、通称GE合金と呼称される合金)が使用されている。本発明のTi−Al多元系合金の脱酸方法では、溶解後(脱酸後)のTi−Al多元系合金からAlの含有率が高いTi−Al多元系合金を製造するため、Ti−Al多元系合金溶解原料中のAl含有率を40質量%以上とした。なお、Al含有率を33質量%より大きい40質量%としたのは、揮発を抑制したと言っても溶解時には多少のAl成分が揮発するため、揮発で失われる分を見越して大きめの値にしたものである。
(Ti−Al多元系合金溶解原料の成分組成)
・酸素:0.1質量%以上
本実施形態のTi−Al多元系合金の脱酸方法に用いられるTi−Al多元系合金溶解原料(以降、単に原料という場合がある)は、低品位なチタン材料(例えば、スクラップ原料、ルチル鉱石(TiO2)などのチタン材料)やニオブ材料(低級ニオブ、酸化ニオブ鉱石(Nb2O5)、スクラップ原料などのニオブ材料)を用いたものである。これらのチタン材料やニオブ材料は、酸素含有率が高く、少なくても0.1質量%の酸素を含有している。よって、本発明のTi−Al多元系合金の脱酸方法に用いるTi−Al多元系合金溶解原料の酸素含有率は0.1質量%以上とされている。
・Al:40質量%以上
航空機用のエンジン部品や自動車のタービンホイールなどには、Alが33質量%以上含有されるTi−Al系合金(例えば、通称GE合金と呼称される合金)が使用されている。本発明のTi−Al多元系合金の脱酸方法では、溶解後(脱酸後)のTi−Al多元系合金からAlの含有率が高いTi−Al多元系合金を製造するため、Ti−Al多元系合金溶解原料中のAl含有率を40質量%以上とした。なお、Al含有率を33質量%より大きい40質量%としたのは、揮発を抑制したと言っても溶解時には多少のAl成分が揮発するため、揮発で失われる分を見越して大きめの値にしたものである。
なお、Ti−Al多元系合金溶解原料中のAlの含有率には、Ti−Al多元系合金としてチタンを配合しなくてはならないし、またNbやCrを所定量だけ添加する分だけAl含有量を小さくしなければならない。つまり、Ti−Al多元系合金溶解原料中でAlに許容される含有率の上限は自ずと決まっており、本実施形態の場合はAlの含有率の上限は実質70質量%程度であると考えられる。
また、本実施形態の脱酸方法で得られるTi−Al多元系合金を実際に利用する場合には、実用合金としてGE合金(Ti−33質量%Al−4.8質量%Nb−2.7質量%Cr合金)などの組成に近いTi−Al多元系合金を溶解により得るのが好ましい。具体的には、実用合金近傍の組成を有するTi−Al多元系合金を溶製できるように、Alを30〜40質量%、Nbを1〜5質量%、Crを1〜4質量%含有するTi−Al多元系合金を、本発明を適用して製造することが推奨される。このような組成のTi-Al多元系合金を、本発明を適用して製造しようとする場合、電子ビーム溶解法によるAl成分の揮発量にも限度があるため、Ti−Al多元系合金溶解原料中のAl含有率の上限を50質量%とし、Al含有率を40〜50質量%の範囲とする。
上述した組成の酸素及びAlに加えて、本実施形態の脱酸方法に用いられるTi−Al多元系合金溶解原料には、3〜10質量%のNbと、1〜4質量%のCrとが添加されている。そして、残部がTiおよび不可避的不純物となっている。なお、本発明の特徴であるNb及びCrの添加については、後ほど詳しく述べる。
(電子ビーム溶解)
次に、電子ビーム溶解について説明する。
(電子ビーム溶解)
次に、電子ビーム溶解について説明する。
電子ビーム溶解法は、密閉可能な容器内に収容されたTi−Al多元系合金溶解原料に対して、容器内に設けられた電子ビームガンから電子ビームを供給して、原料を溶解する方法となっている。一般的には、電子ビームガンで、電子を10kV程度の加速電圧で加速し、容器内に設けられた坩堝内の原料に向かって電子ビームを照射し、坩堝内の原料を溶解させる。この容器内は、真空ポンプなどを用いて低圧(真空)に排気されている。
上述した電子ビーム溶解法では、容器内の真空度、原料に供給される投入熱量(総熱量)、溶解時間(ビーム照射時間)などの条件を用いて、原料の溶解が行われている。
・真空度:5×10−2〜1×10−3Pa
本実施形態の溶解では、Ti−Al多元系合金溶解原料の溶解法としては低い真空度、具体的には溶解時の密閉容器内を5×10−2〜1×10−3Paの真空度としている。真空度を5×10−2Pa以下とした理由は、電子ビーム溶解を低真空(5×10−2Pa超)で行うことは装置上難しいからである。また、真空度を1×10−3Pa以上とした理由は、より高真空(1×10−3Pa未満)にすること自体は可能であるが、排気に長時間を要し、生産性の観点から好ましくないからである。
・投入熱量:1000〜2000kW/h/m2
また、本実施形態の溶解における投入熱量は、1000〜2000kW/h/m2の範囲とする。溶解時の投入熱量が1000kW/h/m2より低い場合は、Ti−Al多元系合金溶解原料を溶解することができない。よって、溶解時の投入熱量の下限は1000kW/h/m2とした。
・真空度:5×10−2〜1×10−3Pa
本実施形態の溶解では、Ti−Al多元系合金溶解原料の溶解法としては低い真空度、具体的には溶解時の密閉容器内を5×10−2〜1×10−3Paの真空度としている。真空度を5×10−2Pa以下とした理由は、電子ビーム溶解を低真空(5×10−2Pa超)で行うことは装置上難しいからである。また、真空度を1×10−3Pa以上とした理由は、より高真空(1×10−3Pa未満)にすること自体は可能であるが、排気に長時間を要し、生産性の観点から好ましくないからである。
・投入熱量:1000〜2000kW/h/m2
また、本実施形態の溶解における投入熱量は、1000〜2000kW/h/m2の範囲とする。溶解時の投入熱量が1000kW/h/m2より低い場合は、Ti−Al多元系合金溶解原料を溶解することができない。よって、溶解時の投入熱量の下限は1000kW/h/m2とした。
一方、溶解時の投入熱量が2000kW/h/m2より高くなると、溶湯の湯面の振動によりスプラッシュが発生し、歩留の低下を招く虞があるため、溶解時の投入熱量の上限は2000kW/h/m2とした。
・溶解時間:1〜10分
本実施形態の溶解における溶解時間は、1〜10分の範囲とする。溶解時間が1分に達しない場合は、溶解時間が短くなりすぎて溶解後のTi−Al多元系合金中の酸素含有量を0.1質量%未満に確実に低減することはできない。一方、溶解時間が10分より長くなると、溶解中に揮発するAl成分の量が無視できなくなり、Al成分の揮発を抑制することができなくなってしまい、Al成分の大幅な揮発ロスを招いてしまう。
・溶解時間:1〜10分
本実施形態の溶解における溶解時間は、1〜10分の範囲とする。溶解時間が1分に達しない場合は、溶解時間が短くなりすぎて溶解後のTi−Al多元系合金中の酸素含有量を0.1質量%未満に確実に低減することはできない。一方、溶解時間が10分より長くなると、溶解中に揮発するAl成分の量が無視できなくなり、Al成分の揮発を抑制することができなくなってしまい、Al成分の大幅な揮発ロスを招いてしまう。
ところで、本実施形態のTi−Al多元系合金の脱酸方法は、Ti−Al多元系合金溶解原料を溶解しつつ脱酸するに際して、Ti−Al多元系合金溶解原料に、Nbを3〜10質量%、Crを1〜4質量%添加することを特徴としている。この原料に添加されるNb及びCrは、原料として加えられるスクラップ原料などに合金組成として予め含有されていても良いし、チタン原料と一緒に加えられるニオブ原料やクロム原料に含有されていても良い。また、本発明における「NbやCrの添加」とは、原料に予め含有されている場合だけでなく、溶解中に別途加えられる場合も含むものとなっている。
・Nb:3〜10質量%、Cr:1〜4質量%
具体的には、Nb及びCrは、溶解の際にAl成分が揮発することを抑制するために添加される。NbやCrの添加量が少なすぎると、合金元素添加によるAl成分の揮発抑制効果を得ることができない。しかし、高融点金属であるNbやCrを多量に添加すると、融点上昇により局所的な溶融部が形成され、製造するTi−Al多元系合金の均質性が低下してしまう。よって、Nbは3〜10質量%、Crは1〜4質量%とした。
・Nb:3〜10質量%、Cr:1〜4質量%
具体的には、Nb及びCrは、溶解の際にAl成分が揮発することを抑制するために添加される。NbやCrの添加量が少なすぎると、合金元素添加によるAl成分の揮発抑制効果を得ることができない。しかし、高融点金属であるNbやCrを多量に添加すると、融点上昇により局所的な溶融部が形成され、製造するTi−Al多元系合金の均質性が低下してしまう。よって、Nbは3〜10質量%、Crは1〜4質量%とした。
例えば、上述したように実用合金などの組成に近いTi−Al多元系合金を溶解する場合、具体的にはAlを30〜40質量%、Nbを1〜5質量%、Crを1〜4質量%含有するTi−Al多元系合金を製造する場合を考える。この場合、Crの含有率については1〜4質量%と特に変わりはないが、Nbについては上限を7質量%とする。Nbの含有率を1〜5質量%の範囲に制御するためには、溶解による揮発などによる減少を考慮しても溶解原料中のNbの含有率の上限は7質量%が限界である。よって、上述した組成のTi−Al多元系合金を溶解する場合、NbについてはTi−Al多元系合金溶解原料に対
して3〜7質量%添加するのが好ましい。
して3〜7質量%添加するのが好ましい。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で適宜変更を加えて実施することも可能であり、それらは何れも本発明の技術的範囲に含まれる。
実施例は、質量150gで、成分組成が異なる4種のTi−Al系合金溶解原料およびTi−Al多元系合金溶解原料を作製した。つまり、4つの実施例のうち、「Ti-60Al-0.5O」及び「Ti-40Al-0.5O」はNbやCrが添加されていない2元系の原料(言い換えれば、Ti−Al系合金溶解原料)、また「Ti-60Al-5Nb-2.5Cr-0.5O」及び「Ti-40Al-5Nb-2.5Cr-0.5O」はNbやCrが添加されている4元系の原料(言い換えれば、Ti−Al多元系合金溶解原料)となっている。これら4つのサンプルは、いずれも直径φ80mmの水冷銅るつぼ(密閉容器)内に投入し、容器内を密閉後に真空まで排気してから、電子ビーム溶解によって溶解したものである。溶解時の密閉容器内の真空度は1×10−2Paであり、溶解時の電子ビーム出力は8kW/h(投入熱量が1600kW/h/m2に相当)である。また、電子ビーム溶解による溶解時間は5分及び20分の2水準とした。
実施例は、質量150gで、成分組成が異なる4種のTi−Al系合金溶解原料およびTi−Al多元系合金溶解原料を作製した。つまり、4つの実施例のうち、「Ti-60Al-0.5O」及び「Ti-40Al-0.5O」はNbやCrが添加されていない2元系の原料(言い換えれば、Ti−Al系合金溶解原料)、また「Ti-60Al-5Nb-2.5Cr-0.5O」及び「Ti-40Al-5Nb-2.5Cr-0.5O」はNbやCrが添加されている4元系の原料(言い換えれば、Ti−Al多元系合金溶解原料)となっている。これら4つのサンプルは、いずれも直径φ80mmの水冷銅るつぼ(密閉容器)内に投入し、容器内を密閉後に真空まで排気してから、電子ビーム溶解によって溶解したものである。溶解時の密閉容器内の真空度は1×10−2Paであり、溶解時の電子ビーム出力は8kW/h(投入熱量が1600kW/h/m2に相当)である。また、電子ビーム溶解による溶解時間は5分及び20分の2水準とした。
実施例に用いたサンプルは、いずれもAl含有量、Nb含有量、Cr含有量のいずれかがサンプル間で異なっている。すなわち、NbやCrを含まない2サンプルが、Alを60質量%含有したTi−Al合金である「Ti-60Al-0.5O」、及びAlを40質量%含有したTi−Al合金である「Ti-40Al-0.5O」である。また、NbやCrを含む2サンプルが、Alを60質量%含有すると共に、Nbを5質量%、Crを2.5質量%含有したTi−Al合金である「Ti-60Al-5Nb-2.5Cr-0.5O」、及び、Alを40質量%含有すると共に、Nbを5質量%、Crを2.5質量%含有したTi−Al合金である「Ti-40Al-5Nb-2.5Cr-0.5O」である。これら4つのサンプルは、いずれもO(酸素)を0.5質量%含有している。
Ti−Al系合金溶解原料およびTi−Al多元系合金に含まれるAl、Nb、Cr、O(酸素)の濃度(含有率)については、溶解前と溶解後のそれぞれで分析により求めた。なお、上述した元素の中で、Al、Nb、CrについてはICP発光分光分析法により、またO(酸素)については不活性ガス融解赤外線吸収法により、それぞれ求めた。
溶解前後における酸素濃度の変化の結果を表1に示す。また、分析により求められたAl濃度が、溶解時間の経過に伴いどのように変化するかをグラフにまとめて図1に示す。
溶解前後における酸素濃度の変化の結果を表1に示す。また、分析により求められたAl濃度が、溶解時間の経過に伴いどのように変化するかをグラフにまとめて図1に示す。
図1の結果を見ると、NbおよびCrを添加していない2元系のTi−Al系合金の実験例(「Ti-60Al-0.5O」及び「Ti-40Al-0.5O」)においても、またNbおよびCrを添加したTi−Al多元系合金の実験例(「Ti-60Al-5Nb-2.5Cr-0.5O」及び「Ti-40Al-5Nb-2.5Cr-0.5O」)においても、電子ビーム溶解開始後すぐにAl濃度が急激に低下しており、溶解開始後すぐにAl成分が揮発し始めていることがわかる。
但し、溶解時間が5分の段階で比較すると、NbおよびCrを添加していない2元系のTi−Al系合金では直線的且つ急激にAl濃度が低下しているのに対し、NbおよびCrを添加したTi−Al多元系合金ではAl濃度の低下曲線の傾きが緩やかになっており、NbおよびCrの添加によりAl成分の揮発が抑制されていることが分かる。
なお、Ti−40質量%Al−5質量%Nb−2.5質量%Cr合金(「Ti-40Al-5Nb-2.5Cr-0.5O」)をTi−Al系合金溶解原料とする場合は、溶解開始後3分でAlの含有量が33質量%になっており、成分組成を詳しく分析すると、この時点でGE合金とほぼ同等のTi−Al多元系合金(Ti−33質量%Al−4.8質量%Nb−2.7質量%Cr合金)が得られていることが確認された。
なお、Ti−40質量%Al−5質量%Nb−2.5質量%Cr合金(「Ti-40Al-5Nb-2.5Cr-0.5O」)をTi−Al系合金溶解原料とする場合は、溶解開始後3分でAlの含有量が33質量%になっており、成分組成を詳しく分析すると、この時点でGE合金とほぼ同等のTi−Al多元系合金(Ti−33質量%Al−4.8質量%Nb−2.7質量%Cr合金)が得られていることが確認された。
表1は溶解開始前と溶解開始した5分後との双方で、それぞれの実験例のサンプルに対して、酸素濃度(含有率)を計測した結果をまとめたものである。表1によると、NbおよびCrを添加していない2元系のTi−Al系合金(「Ti-60Al-0.5O」及び「Ti-40Al-0.5O」)が溶解5分後で0.087質量%や0.056質量%であるのに対して、NbおよびCrを添加したTi−Al多元系合金(「Ti-60Al-5Nb-2.5Cr-0.5O」及び「Ti-40Al-5Nb-2.5Cr-0.5O」)では、溶解開始5分後の酸素含有率が0.027質量%や0.017質量%とより低下していることが分かり、NbおよびCrを添加すれば無添加の場合に比べてより脱酸が進行しやすくなっていることがわかる。
以上の結果により、Ti−Al多元系合金溶解原料を所望のAl含有率に下がるまで電子ビーム溶解法により脱酸溶解を行うに際しては、Ti−Al多元系合金溶解原料にNbを3〜10質量%、Crを1〜4質量%添加することで、Al成分の揮発を抑制しつつ、酸素含有率を0.1質量%未満に低減できると判断される。
また、NbやCrは、Alと比較して、揮発によるロスが少ない合金元素であるため、NbとCrを適量添加するだけで、酸素含有率の低いTi−Al多元系合金を効率良く作製することができると判断される。
また、NbやCrは、Alと比較して、揮発によるロスが少ない合金元素であるため、NbとCrを適量添加するだけで、酸素含有率の低いTi−Al多元系合金を効率良く作製することができると判断される。
すなわち、本発明は、酸素含有率が高いTi−Al多元系合金溶解原料を、電子ビーム溶解法によって溶解することで、Al成分の揮発を抑制しつつ、溶解後のTi−Al多元系合金中の酸素含有率を低減するものとなっている。
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特に、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特に、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。
Claims (2)
- 酸素を0.1質量%以上含有すると共にAlを40質量%以上含有するTi−Al多元系合金溶解原料を、真空度が5×10−2〜1×10−3Paとされた雰囲気に置き、溶解時の投入熱量が1000〜2000kW/h/m2、溶解時間が1〜10分となるように電子ビームを照射して、前記Ti−Al多元系合金溶解原料を溶解しつつ脱酸するに際して、
前記Ti−Al多元系合金溶解原料に、Nbを3〜10質量%、Crを1〜4質量%添加することで、Al成分の揮発を抑制しつつ、溶解後のTi−Al多元系合金中の酸素含有率を0.1質量%未満に低減する
ことを特徴とするTi−Al多元系合金の脱酸方法。 - 前記Ti−Al多元系合金溶解原料に、Alが40〜50質量%含有される場合には、
前記Ti−Al多元系合金溶解原料に添加するNbを3〜7質量%、Crを1〜4質量%とし、さらに前記電子ビームによる溶解時間を1〜5分の条件として溶解を行い、
Alを30〜40質量%、Nbを1〜5質量%、Crを1〜4質量%含有するTi−Al多元系合金を製造し、且つ、溶解後の前記Ti−Al多元系合金中の酸素含有率を0.1質量%未満に低減する
ことを特徴とする請求項1に記載のTi−Al多元系合金の脱酸方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2017032275A JP2018135582A (ja) | 2017-02-23 | 2017-02-23 | Ti−Al多元系合金の脱酸方法 |
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JP2017032275A JP2018135582A (ja) | 2017-02-23 | 2017-02-23 | Ti−Al多元系合金の脱酸方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2018135582A true JP2018135582A (ja) | 2018-08-30 |
Family
ID=63366032
Family Applications (1)
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JP2017032275A Pending JP2018135582A (ja) | 2017-02-23 | 2017-02-23 | Ti−Al多元系合金の脱酸方法 |
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Country | Link |
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JP (1) | JP2018135582A (ja) |
-
2017
- 2017-02-23 JP JP2017032275A patent/JP2018135582A/ja active Pending
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