JP2018134060A - 側弯症の検査方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】一塩基多型の解析による正確な女性特異的側弯症の検査方法または側弯症の進行度の検査方法を提供する。【解決手段】rs59404763、rs10196262、rs1475712およびrs1828853からなる群より選択される一塩基多型または該一塩基多型と連鎖不平衡にある一塩基多型を分析し、該分析結果に基づいて側弯症を検査する。【選択図】図1

Description

本発明は側弯症の発症リスクや進行リスクを判定するための検査方法及び該検査方法に用いられる試薬に関する。また、側弯症の予防薬又は治療薬をスクリーニングする方法に関する。
側弯症は、脊椎が左右方向に弯曲した病態をいう。側弯症のうち、その病因が明らかでないものを特発性側弯症と呼び、側弯症の80〜90%を占める。
側弯症は、通学年代の児童に多く発症し、10歳から骨格が成熟するまでの児童において、側弯の指標であるコブ角(Cobb angle)で少なくとも10°の弯曲を示し、且つ、その病因が明らかでないものを思春期特発性側弯症(Adolescent idiopathic scoliosis;AIS)と定義する。AISの発症頻度は、通学年代の児童の内、日本で2%、世界では2〜3%であり、日本では毎年1万人程度が発症している。
側弯症の診断は主にX線検査により行われるが、X線検査は発症前や発症初期における側弯症の診断には有効でない。また、特発性側弯症の治療は、対症療法により行われるのみで、病因が明らかでない以上、原因療法は行われていない。よって、側弯症の発症前診断(リスク診断)や早期診断を可能にし、また、原因治療を可能にするため、側弯症と関連する遺伝子や一塩基多型(SNP)の同定が望まれている。
ゲノムワイド連鎖解析(genome-wide linkage analysis)によりAISの病因となる多くの遺伝子座が見出されており、AISは複雑な遺伝的素因に基づくと考えられている。また、候補遺伝子解析によりAIS感受性遺伝子が報告されているが、再現性などの点で問題がある。
さらに、近年、伝達不平衡解析(Transmission Disequilibrium Test;TDT)法に基づくゲノムワイド関連解析(Genome-wide association study;GWAS)によって、AISと関連する遺伝子の候補が報告された(非特許文献1)。しかしながら、それらは、多重検定補正後のケース−コントロール関連解析においてはAISとの関連の再現性が得られていない。
一方、近年、GWASによって、第10染色体長腕24.31領域(10q24.31領域)に存在するSNPが、日本人集団および中国人集団において、ゲノムワイド水準を満たしてAISと関連することが見出された(特許文献1)。また、同様にGWASによって、第6染色体長腕24.1領域(6q24.1領域)に存在するSNPが、日本人集団において、AISと関連することが示唆された(特許文献2)。
また、第9染色体短腕22.2領域(9p22.2領域)に存在するBNC2 (basonuclin-2)遺伝子のSNPと側弯症の関連についても報告されている(特許文献3)。しかし、女性に特異的なSNPや側弯症の進行度に関連するSNPはあまり知られていない。
特開2013-042673号公報 特開2014-132875号公報 特開2016-214091号公報
Sharma, S. et al., Hum Mol Genet. 20, 1456-1466 (2011).
本発明は、側弯症の発症リスクや進行リスクを正確に検査する方法、及び該方法に用いられる検査試薬を提供することを課題とする。本発明はまた、側弯症の予防薬又は治療薬のスクリーニング方法を提供することを課題とする。
本発明者らは上記課題の解決のために鋭意検討した結果、rs59404763、rs10196262、rs1475712およびrs1828853からなる群より選択される一塩基多型(SNP)が思春期特発性側弯症(AIS)と関連することを同定した。そして、これらの多型を調べることにより側弯症の発症リスクや進行リスクを正確に予測できることを見出した。さらに、Obscurin(OBSCN)遺伝子の発現を増加させる物質やEML4遺伝子の発現を抑制する物質が側弯症の予防薬や治療薬として有用であることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の態様を含む。
[1]rs59404763、rs10196262、rs1475712およびrs1828853からなる群より選択される一塩基多型または該一塩基多型と連鎖不平衡にある一塩基多型を分析し、該分析結果に基づいて側弯症を検査することを特徴とする、側弯症の検査方法。
[2]前記側弯症が、思春期特発性側弯症である、[1]に記載の方法。
[3]前記側弯症が女性における側弯症であり、一塩基多型がrs59404763、rs10196262またはrs1475712である、[1]に記載の方法。
[4]前記側弯症の検査が側弯症の進行度の検査であり、一塩基多型がrs1828853である、[1]に記載の方法。
[5] 配列番号1〜9のいずれかに示す塩基配列において、塩基番号26番目の塩基を含む15塩基以上の配列、又はその相補配列を有する側弯症検査用プローブ。
[6] 配列番号1〜9のいずれかに示す塩基配列において、塩基番号26番目の塩基を含む領域を増幅することのできる側弯症検査用プライマー。
[7] Obscurin遺伝子またはObscurin遺伝子のプロモーターに連結されたレポーター遺伝子を発現する細胞に医薬候補物質を添加する工程、Obscurin遺伝子またはレポーター遺伝子の発現量を測定する工程、及び前記発現量を増加させる物質を選択する工程を含む、側弯症の予防薬又は治療薬をスクリーニングする方法。
[8] Obscurin遺伝子のmRNAまたはタンパク質の発現量を測定する工程を含む、側弯症の検査方法。
[9] EML4遺伝子またはEML4遺伝子のプロモーターに連結されたレポーター遺伝子を発現する細胞に医薬候補物質を添加する工程、EML4遺伝子またはレポーター遺伝子の発現量を測定する工程、及び前記発現量を低下させる物質を選択する工程を含む、側弯症の予防薬又は治療薬をスクリーニングする方法。
[10] EML4遺伝子のmRNAまたはタンパク質の発現量を測定する工程を含む、側弯症の検査方法。
本発明によれば、これまで予測が困難であった側弯症の発症リスクや進行リスクを正確かつ簡便に予測することができる。特に、rs59404763、rs10196262、rs1475712の一塩基多型を調べることにより、女性における側弯症の発症リスクを調べることができる。また、rs1828853の一塩基多型を調べることにより、側弯症の進行リスクを調べることができる。また、本発明のスクリーニング方法によれば、側弯症の治療薬または予防薬を得ることができる。したがって、本発明は側弯症の予防や早期治療に貢献するものである。
女性AISに関連する2つの部位((a) 1q42.13. (b) 2p21.)の領域内関連プロットを示す図。ロジスティック回帰分析によるAISとSNPとの関連を示す-log10(P)の値が、SNPが存在する染色体上の位置に遺伝子の向きと位置とともにプロットされている。推定組み換え率は赤線で示される。最も高い関連を示すシグナルを有するSNP(rs59404763、rs10196262)を赤の三角形で示し、その他のSNPは当該SNPとの連鎖不平衡(r2)に従って色づけされている。 rs58194408 のアレルの転写活性に与える影響を調べた結果を示す図。(a)はHEK293 細胞の核抽出物を用いた電気泳動移動度シフトアッセイの結果である(写真)。なお、非ラベルプローブを競合アッセイに使用した。複合体(矢印)のバンド強度はrs58194408のリスクアレルのプローブにおいてrs58194408の非リスクアレルのプローブ(NR)よりも減少した。(b)はHEK293細胞におけるrs58194408アレルの転写活性化能の評価結果を示す。細胞をrs58194408のリスクアレル(R)または非リスクアレル(NR)を含むOBSCNプロモーターに連結されたルシフェラーゼ遺伝子を含むプラスミドでトランスフェクションし、ルシフェラーゼ活性を調べた。ルシフェラーゼの相対活性は2回の実験の平均値±S.D.で示した。*はP < 0.01 (Student’s t test)を示す。 rs144297067のアレルの転写活性に与える影響を調べた結果を示す図。(a)はA172 細胞の核抽出物を用いた電気泳動移動度シフトアッセイの結果である(写真)。なお、非ラベルプローブを競合アッセイに使用した。複合体(矢印)のバンド強度はrs144297067のリスクアレルのプローブにおいてrs144297067の非リスクアレルのプローブ(NR)よりも増加した。(b)はA172細胞におけるrs144297067アレルの転写活性化能の評価結果を示す。細胞をrs144297067のリスクアレル(R)または非リスクアレル(NR)を含むEML4プロモーターに連結されたルシフェラーゼ遺伝子を含むプラスミドで形質転換し、ルシフェラーゼ活性を調べた。ルシフェラーゼの相対活性は2回の実験の平均値±S.D.で示した。*はP < 0.01 (Student’s t test)を示す。 rs10196262 およびrs1475712のトポロジカル関連ドメイン(TAD)を示す図。(a)のrs10196262のTAD はLOC102723824、EML4およびCOX7A2Lの3遺伝子を含み、(b)のrs1475712のTADはEYA2を含む。 AISの進行度に関連するSNPの解析結果を示す図。a)はGWASのP値を示すマンハッタンプロットを示す。染色体上での位置に対して各SNPのP値をプロットした。青色の線は検証解析のための閾値(P=1.0×10−5)を表している。b)は11qの座位についてのアソシエーションプロットを示す。染色体上の位置(x軸)とGWASアソシエーション(−log10P値;y軸)によってSNPをプロットした。最も強い関連シグナルを有するSNP(rs1828853:紫色の円)とのSNPの連鎖不平衡度(r)が色によって示されている。c)はrs1828853の周囲の局所的アソシエーションプロットを示す。有意に関連のあるSNPがMIR4300HGのイントロン1内に存在する。黒色の円で示されるSNPはChromHMMでエピゲノミクス的にアノテートされたエンハンサー配列と重なる。
<1>本発明の検査方法
本発明の方法は、rs59404763、rs10196262、rs1475712およびrs1828853から選択される一塩基多型(SNP)または該一塩基多型と連鎖不平衡にあるSNPを分析し、該分析結果に基づいて側弯症を検査することを特徴とする。本発明において、「検査」とは側弯症の発症リスクの検査及び側弯症の発症の有無の検査、さらには側弯症の進行度の検査及び予測を含む。本発明の方法においては、SNPの分析結果を、側弯症の発症リスク、発症の有無、および進行リスクと関連付ける。
側弯症としては、特に限定されないが、例えば、従来病因が特定されていない特発性側弯症の検査に好適に用いられる。側弯症は、先天性、若年性、思春期性、成人性等、いずれの時期に発症するものであってもよいが、思春期性側弯症であるのが好ましく、思春期特発性側弯症(AIS)であるのがより好ましい。
本発明の方法は、いずれの人種の被験者に対しても用いることができる。本発明の方法は、例えば、日本人や中国人等のアジア人の被験者や白人の被験者に好適に用いることができる。また、本発明の方法は、いずれの性別の被験者に対しても用いることができるが、特に、女性被験者に対して好適に用いることができる。
女性の側弯症の検査に有用なSNPとしては、rs59404763、rs10196262およびrs1475712が挙げられる。ここで、rs番号は、National Center for Biotechnology InformationのdbSNPデータベース(http//www.ncbi.nlm.nih.gov/projects/SNP/)の登録番号を示す。
rs59404763は1q42.13領域のOBSCN遺伝子が含まれる連鎖不平衡ブロックに位置するSNPであり、GenBank Accession No. NC_000001.10の228511629番目の塩基におけるシトシン(C)/チミン(T)の多型を意味し、この塩基がCである場合は女性における側弯症の可能性または発症リスクが高い(表2)。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、CC>TC>TTの順で側弯症の可能性または発症リスクが高い。よって、この塩基がCである被験者には、側弯症の予防または治療を行うことが考えられる。
なお、rs59404763について、SNP塩基及びその前後25bpの領域を含む合計51bpの長さの配列を、配列番号1に示した。配列番号1における26番目の塩基が多型を有し、この塩基がT(リスクアレル)である場合は側弯症の可能性または発症リスクが高いと判定される。
なお、本発明においては、上記塩基に相当する塩基が解析される。「上記塩基に相当する塩基」とは、ヒト染色体上の上記領域における該当塩基を意味する。すなわち、「上記塩基に相当する塩基を解析する」ことには、仮に人種の違いなどによって上記配列がSNP以外の位置で若干変化したとしても、上記領域における該当塩基を解析することが含まれる。
また、本発明において解析する塩基は上記のものに限定されず、上記の塩基と連鎖不平衡にある塩基の多型を分析してもよい。ここで「上記の塩基と連鎖不平衡にある塩基」とは、上記の塩基と好ましくはr2>0.8、さらに好ましくはr2>0.9の関係を満たす塩基をいう。r2は連鎖不平衡係数である。連鎖不平衡にある塩基は、例えば、HapMapデータベース(http://www.hapmap.org/index.html.ja)等を用いて同定することができる。
rs59404763と連鎖不平衡にある塩基として、具体的には、例えば、rs58194408が挙げられる(表3)。
rs58194408はGenBank Accession No. NC_000001.10の228401707番目の塩基におけるグアニン(G)/アデニン(A)の多型を意味し、この塩基がGである場合は側弯症の可能性または発症リスクが高い(表3)。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、GG>AG>AAの順で側弯症の可能性または発症リスクが高い。よって、この塩基がGである被験者には、側弯症の予防や治療を行うことが考えられる。
なお、rs58194408について、SNP塩基及びその前後25bpの領域を含む合計51bpの長さの配列を、配列番号2に示した。配列番号2における26番目の塩基が多型を有し、この塩基がA(リスクアレル)である場合は側弯症の可能性または発症リスクが高いと判定される。
rs59404763と連鎖不平衡にある塩基としては、他にもrs117147433やrs75785474が挙げられる。
rs10196262はヒト染色体2p21領域のLOC102723824遺伝子の近傍に位置するSNPであり、GenBank Accession No. NC_000002.11の42362087番目の塩基におけるグアニン(G)
/アデニン(A)の多型を意味し、この塩基がAである場合は側弯症の可能性または発症リスクが高い(表2)。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、AA>AG>GGの順で側弯症の可能性または発症リスクが高い。よって、この塩基がAである被験者には、側弯症の予防や治療を行うことが考えられる。
なお、rs10196262について、SNP塩基及びその前後25bpの領域を含む合計51bpの長さの配列を、配列番号3に示した。配列番号3における26番目の塩基が多型を有し、この塩基がA(リスクアレル)である場合は側弯症の可能性または発症リスクが高いと判定される。
rs10196262と連鎖不平衡にある塩基として、具体的には、例えば、rs144297067が挙げられる(表3)。
rs144297067はGenBank Accession No. NC_000002.11の42362286番目の塩基における-(塩基なし)/TGTTTTGTTT(挿入)の多型を意味し、この塩基にTGTTTTGTTTが挿入されている場合は側弯症の可能性または発症リスクが高い(表3)。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、挿入変異のホモ>挿入と挿入なしのヘテロ>挿入なしのホモの順で側弯症の可能性または発症リスクが高い。よって、この塩基が挿入変異である被験者には、側弯症の予防や治療を行うことが考えられる。
なお、rs144297067について、SNP塩基及びその前後25bpの領域を含む合計51bpの長さの配列を、配列番号4に示した。配列番号4における26番目の塩基が多型を有し、ここにTGTTTTGTTTの挿入(リスクアレル)がある場合は側弯症の可能性または発症リスクが高いと判定される。
rs10196262と連鎖不平衡にある塩基としては、他にもrs11676073、rs13392988、rs13386561、rs11684533、rs17669917、rs13410780が挙げられる。
rs1475712はヒト染色体20q13.12領域のSLC2A10とEYA2との間の遺伝子間領域に位置するSNPであり、GenBank Accession No. NC_ 000020.10の45492024番目の塩基におけるアデニン(A)/グアニン(G)の多型を意味し、この塩基がAである場合は側弯症の可能性または発症リスクが高い(表2)。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、AA>GA>GGの順で側弯症の可能性または発症リスクが高い。よって、この塩基がAである被験者には、側弯症の予防や治療を行うことが考えられる。
なお、rs1475712について、SNP塩基及びその前後25bpの領域を含む合計51bpの長さの配列(相補鎖)を、配列番号5に示した。配列番号5における26番目の塩基が多型を有し、この塩基がT(rs1475712のリスクアレルAの相補塩基)である場合は側弯症の可能性または発症リスクが高いと判定される。
rs1475712と連鎖不平衡にある塩基としては、rs144779633が挙げられる。
一方、側弯症の進行度に関連するSNPとしてはrs1828853が挙げられる。
rs1828853は11q14.1領域のMIR4300HG遺伝子内に位置するSNPであり、GenBank Accession No. NC_000011.10の82371520番目の塩基におけるグアニン(G)/アデニン(A)の多型を意味し、この塩基がAである場合は側弯症の発症リスクおよび進行リスクが高い(表4)。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、AA>AG>GGの順で側弯症の発症リスクおよび進行リスクが高い。よって、この塩基がAである被験者には、側弯症の予防や治療を行うことが考えられる。
なお、rs1828853について、SNP塩基及びその前後25bpの領域を含む合計51bpの長さの配列を、配列番号6に示した。配列番号6における26番目の塩基が多型を有し、この塩基がA(リスクアレル)である場合は側弯症の発症リスクおよび進行リスクが高いと判定される。
rs1828853と連鎖不平衡にある塩基として、具体的には、例えば、rs971548、rs35333564およびrs7949305が挙げられる。
rs971548はGenBank Accession No. NC_ 000011.10の82379683番目の塩基におけるグアニン(G)/チミン(T)の多型を意味し、この塩基がTである場合は側弯症の発症リスクおよび進行リスクが高い。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、TT>TG>GGの順で側弯症の発症リスクおよび進行リスクが高い。よって、この塩基がTである被験者には、側弯症の予防や治療を行うことが考えられる。
なお、rs971548について、SNP塩基及びその前後25bpの領域を含む合計51bpの長さの配列(相補鎖)を、配列番号7に示した。配列番号7における26番目の塩基が多型を有し、この塩基がA(rs971548のリスクアレルの相補塩基)である場合は側弯症の発症リスクおよび進行リスクが高いと判定する。
rs35333564はGenBank Accession No. NC_000011.10の82398145番目の塩基における−(一塩基欠失)/グアニン(G)の多型を意味し、この塩基がGである場合は側弯症の発症リスクおよび進行リスクが高い。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、−−>G−>GGの順で側弯症の発症リスクおよび進行リスクが高い。よって、この塩基が−である被験者には、側弯症の予防や治療を行うことが考えられる。
なお、rs35333564について、SNP塩基及びその前後25bpの領域を含む合計51bpの長さの配列を、配列番号8に示した。配列番号8における26番目の塩基が多型を有し、この塩基が−(リスクアレル)である場合は側弯症の発症リスクおよび進行リスクが高いと判定する。
rs7949305はGenBank Accession No. NC_000011.10の82399142番目の塩基におけるチミン(T)/シトシン(C)の多型を意味し、この塩基がCである場合は側弯症の発症リスクおよび進行リスクが高い。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、CC>CT>TTの順で側弯症の発症リスクおよび進行リスクが高い。よって、この塩基がCである被験者には、側弯症の予防や治療を行うことが考えられる。
なお、rs7949305について、SNP塩基及びその前後25bpの領域を含む合計51bpの長さの配列を、配列番号9に示した。配列番号9における26番目の塩基が多型を有し、この塩基がC(リスクアレル)である場合は側弯症の発症リスクおよび進行リスクが高いと判定する。
上記SNPの塩基の種類を調べ、得られた結果を上記のような基準に基づいて側弯症と関連付けることにより、側弯症を検査することができる。上記SNPは単独で解析されてもよいし、上記SNPの少なくとも1つを含む複数のSNPsをまとめて解析(ハプロタイプ解析)してもよい。例えば、上記SNPの複数をまとめて解析してもよいし、上記SNPの少なくとも1つと、側弯症と関連する既知のSNPや当該既知のSNPと連鎖不平衡にあるSNPsとを組み合わせて解析してもよい。側弯症と関連する複数のSNPsをまとめて解析すれば、側弯症の検査の精度が向上する。なお、いずれのSNPも、二本鎖DNAのどちらの鎖を解析してもよい。例えば、各配列はセンス鎖を解析してもよいし、アンチセンス鎖を解析してもよい。
SNPの解析に用いる試料は、染色体DNAを含む試料であれば特に制限されない。SNPの解析に用いる試料としては、例えば、血液、尿、髄液等の体液、子宮頸部や口腔粘膜などの細胞、毛髪等の体毛などが挙げられる。SNPの解析にはこれらの試料を直接使用することもできるが、これらの試料から染色体DNAを常法により単離し、これを用いて解析することが好ましい。
SNPの解析は、通常の遺伝子多型解析方法によって行うことができる。例えば、シークエンス解析、PCR、ハイブリダイゼーション、インベーダー法などが挙げられるが、これらに限定されない。
シークエンス解析は通常の方法により行うことができる。具体的には、多型を示す塩基の5’側 数十塩基の位置に設定したプライマーを使用してシークエンス反応を行い、そ
の解析結果から、該当する位置がどの種類の塩基であるかを決定することができる。なお、シークエンス反応の前に、あらかじめSNP部位を含む断片をPCRなどによって増幅しておくことが好ましい。
また、SNPの解析は、PCRによる増幅の有無を調べることによって行うことができる。例えば、多型を示す塩基を含む領域に対応する配列を有し、かつ、3’末端が各多型に対応するプライマーをそれぞれ用意する。それぞれのプライマーを使用してPCRを行い、増幅産物の有無によってどのタイプの多型であるかを決定することができる。また、LAMP法(特許第3313358号明細書)、NASBA法(Nucleic Acid Sequence-Based Amplification;特許2843586号明細書)、ICAN法(特開2002-233379号公報)、SmartAmp法(特許第3897805号明細書)などによって増幅の有無を調べることもできる。その他、単鎖増幅法を用いてもよい。
また、SNP部位を含むDNA断片を増幅し、増幅産物の電気泳動における移動度の違いによってどのタイプの多型であるかを決定することもできる。このような方法としては、例えば、PCR-SSCP(single-strand conformation polymorphism)法(Genomics. 1992 Jan 1;
12(1): 139-146.)が挙げられる。具体的には、まず、目的のSNPを含むDNAを増幅し、増幅したDNAを一本鎖DNAに解離させる。次いで、解離させた一本鎖DNAを非変性ゲル上で分離し、分離した一本鎖DNAのゲル上での移動度の違いによってどのタイプの多型であるかを決定することができる。
さらに、多型を示す塩基が制限酵素認識配列に含まれる場合は、制限酵素による切断の有無によって解析することもできる(RFLP法)。この場合、まず、DNA試料を制限酵素により切断する。次いで、DNA断片を分離し、検出されたDNA断片の大きさによってどのタイプの多型であるかを決定することができる。
また、ハイブリダイゼーションの有無を調べることによって多型の種類を解析することも可能である。すなわち、各塩基に対応するプローブを用意し、いずれのプローブにハイブリダイズするかを調べることによってSNPがいずれの塩基であるかを調べることもできる。
このようにしてSNPがいずれの塩基であるかを決定することで、側弯症を検査するためのデータを得ることができる。
本発明の方法により判定された結果は、必要に応じて医師等に提供される。結果を提供された医師等は、身体診察、X線検査、CT検査等の必要な検査を行った上で、発症リスクや進行リスクを診断することができる。医師等がAISの発症リスクや進行リスクが高いと診断した場合には、装具やギプスの装着や牽引等の治療を施すことができる。また、リスクが低いと診断した場合には、患者に取って負担が大きいこれらの治療を回避することができる。
<2>本発明の側弯症検査用試薬
本発明はまた、側弯症を検査するためのプライマーやプローブなどの検査試薬を提供する。このようなプローブとしては、上記SNP部位を含み、ハイブリダイズの有無によってSNP部位の塩基の種類を判定できるプローブが挙げられる。具体的には、配列番号1〜9の
いずれかに示す塩基配列の26番目の塩基を含む配列、又はその相補配列を有する15塩基以上の長さのプローブや、当該塩基と連鎖不平衡の関係にある塩基を含む配列、又はその相補配列を有する15塩基以上の長さのプローブが挙げられる。なお、「当該塩基と連鎖不平衡の関係にある塩基」及びその前後の領域の塩基配列は、例えば、National Center for Biotechnology InformationのdbSNPデータベース(http//www.ncbi.nlm.nih.gov/projects/SNP/)から取得できる。プローブの長さは好ましくは、15〜35塩基であり、より好ましくは20〜35塩基である。
なお、26番目の塩基が欠失や数塩基の挿入である場合は、欠失や数塩基の挿入を26番目の塩基とみなす。
また、プライマーとしては、上記SNP部位を増幅するためのPCRに用いることのできるプライマー、又は上記SNP部位を配列解析(シークエンシング)するために用いることのできるプライマーが挙げられる。具体的には、配列番号1〜9のいずれかに示す塩基配列の26番目の塩基を含む領域を増幅したりシークエンシングしたりすることのできるプライマーや、当該塩基と連鎖不平衡の関係にある塩基を含む領域を増幅したりシークエンシングしたりすることのできるプライマーが挙げられる。このようなプライマーの長さは15〜50塩基が好ましく、15〜35塩基がより好ましく、20〜35塩基がさらに好ましい。
上記SNP部位をシークエンシングするためのプライマーとしては、上記塩基の5’側領域、好ましくは30〜100塩基上流の配列を有するプライマーや、上記塩基の3’側領域、好ましくは30〜100塩基下流の領域に相補的な配列を有するプライマーが例示される。PCRによる増幅の有無で多型を判定するために用いるプライマーとしては、上記塩基を含む配列を有し、上記塩基を3’側に含むプライマーや、上記塩基を含む配列の相補配列を有し、上記塩基の相補塩基を3’側に含むプライマーなどが例示される。
なお、本発明の検査用試薬はこれらのプライマーやプローブに加えて、PCR用のポリメラーゼやバッファー、ハイブリダイゼーション用試薬などを含むものであってもよい。
<3>側弯症の予防薬又は治療薬のスクリーニング方法
本発明においては、後述のとおり、rs58194408のリスクアレルが転写因子結合の減少及び転写活性の低下によりObscurin (OBSCN)発現の減少を引き起こし、OBSCN発現の減少が女性のAISの発病に影響する可能性があることが示唆された。また、rs10196262のリスクアレルが転写因子結合の増加及び転写活性の上昇によりEML4発現の増加を引き起こし、EML4発現の増加が女性のAISの発病に影響する可能性があることが示唆された。したがって、OBSCNの発現を増加させる活性またはEML4の発現を低下させる活性を指標にして薬剤をスクリーニングすることにより、側弯症の予防薬又は治療薬となりうる物質を得ることができる。
OBSCNはサルコメアのアセンブリーに関与するRho guanine nucleotide exchange factorであり(J Cell Biol 154, 123-36 (2001))、OBSCN遺伝子として、具体的には、例えば、GenBank Accession No. NM_052843.3に登録されている遺伝子が挙げられる。
EML4 (EMAP(echinoderm microtubule-associated protein)-like protein 4)は微小管形成に関与するEMAPファミリーに属するタンパク質であり(Exp Cell Res 312, 3241-51 (2006))、EML4遺伝子として、具体的には、例えば、GenBank Accession No. NM_019063.4に登録されている遺伝子が挙げられる。
すなわち、本発明のスクリーニング方法としては、OBSCNもしくはEML4遺伝子またはOBSCNもしくはEML4遺伝子のプロモーターに連結されたレポーター遺伝子を発現する細胞に医
薬候補物質を添加する工程、OBSCNもしくはEML4遺伝子またはレポーター遺伝子の発現量を測定する工程、及び前記発現量を変化させる物質を選択する工程を含む、側弯症の予防薬又は治療薬のスクリーニング方法が挙げられる。
例えば、医薬候補物質の存在下において、OBSCN遺伝子またはレポーター遺伝子の発現量が医薬候補物質非存在下と比べて増加する場合に、当該医薬候補物質を側弯症の予防薬又は治療薬の候補物質として選択することができる。
例えば、医薬候補物質の存在下において、EML4遺伝子またはレポーター遺伝子の発現量が医薬候補物質非存在下と比べて抑制される場合に、当該医薬候補物質を側弯症の予防薬又は治療薬の候補物質として選択することができる。
OBSCNもしくはEML4遺伝子を発現する細胞としては、マウスやヒトなどの哺乳動物細胞が挙げられ、例えば、卵巣、子宮、骨格筋、肝臓、皮膚、脳等の細胞を用いることができる。
OBSCNもしくはEML4遺伝子のプロモーターに連結されたレポーター遺伝子を用いる場合、OBSCNもしくはEML4遺伝子のプロモーターとしては、転写開始点の上流約2kbpを含む領域が好ましく、上流約5kbpを含む領域がより好ましい。プロモーターの配列情報はそれぞれGenBank Accession No. NC_000001.10およびNC_000002.11より入手できる。
レポーター遺伝子としては、ルシフェラーゼ遺伝子、GFP遺伝子、クロラムフェニコー
ルアセチルトランスフェラーゼ遺伝子などが例示できる。これらのレポーター遺伝子をOBSCNもしくはEML4遺伝子のプロモーターに連結し、これを哺乳類細胞に遺伝子を導入するために用いられるプラスミドに組み込み、リポフェクションなどの通常の方法にて細胞にトランスフェクションする。
上記のようなOBSCNもしくはEML4遺伝子を発現する細胞、又はレポーター遺伝子が導入された細胞に医薬候補物質を添加し、OBSCNもしくはEML4遺伝子またはレポーター遺伝子の発現量を測定する。
医薬候補物質としては特に制限はなく、例えば、低分子合成化合物であってもよいし、天然物に含まれる化合物であってもよい。また、ペプチドや核酸であってもよい。スクリーニングには個々の候補物質を用いてもよいが、これらの物質を含む化合物ライブラリーを用いてもよい。候補物質の中から、OBSCNもしくはEML4遺伝子又はレポーター遺伝子の発現量を(非添加時と比べて)変化(OBSCNの場合は増加、EML4の場合は減少)させるものを選択することにより、側弯症の予防薬又は治療薬となりうる物質を得ることができる。
OBSCNもしくはEML4遺伝子の発現量はRT-PCR、定量PCR、ノーザンブロット、ELISA、Western blotting、In situ hybridization、免疫組織染色などの方法により測定すること
ができる。レポーター遺伝子の発現量はレポーター遺伝子の種類にもよるが、蛍光強度や発光強度、放射能強度などによって測定することができる。
<4>OBSCNもしくはEML4遺伝子の発現量に基づく検査方法
本発明はまた、OBSCNもしくはEML4遺伝子のmRNAまたはタンパク質の発現量を測定する工程を含む、側弯症の検査方法(検査データを得る方法)を提供する。OBSCN遺伝子のmRNAまたはタンパク質の発現量が健常人などの対照と比べて減少している場合、側弯症に罹患している、または側弯症の危険性が高いと判定することができる。EML4遺伝子のmRNAまたはタンパク質の発現量が健常人などの対照と比べて増加している場合、側弯症に罹患し
ている、または側弯症の危険性が高いと判定することができる。
OBSCNもしくはEML4遺伝子の発現量は、RT-PCR、ノーザンブロット、マイクロアレイ法などで調べることができる。また、OBSCNもしくはEML4遺伝子産物の発現量はELISA、ウエスタンブロットなどで調べることができる。抗体は市販の抗体を用いることもできるし、OBSCNもしくはEML4に対する抗体を用いることもできる。検査に用いる試料としては、血液、尿、髄液等の体液、子宮頸部や口腔粘膜などの細胞、毛髪等の体毛などが挙げられる。
また、本発明においては、OBSCNもしくはEML4遺伝子の発現量を、側弯症治療薬の存在下と非存在下とで比較し、側弯症治療薬の効果を判定することもできる。例えば、OBSCN遺伝子を発現する細胞などに側弯症治療薬を添加し、OBSCN遺伝子の発現誘導が側弯症治療薬非添加時と比べて増加していれば、当該治療薬の効果はあると判定でき、また、抑制率が高いほど当該治療薬の効果は高いと判定することができる。また、EML4遺伝子を過剰発現する細胞などに側弯症治療薬を添加し、EML4遺伝子の発現誘導が側弯症治療薬非添加時と比べて抑制されていれば、当該治療薬の効果はあると判定でき、また、抑制率が高いほど当該治療薬の効果は高いと判定することができる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は以下の態様には限定されない。
<女性特異的に側弯症と相関するSNPの探索>
[AISの性別階層化ゲノムワイド関連解析]
まず、GWAS対象(2104件の症例と10736件の対照)と最新の1000人ゲノムプロジェクト参照ハプロタイプを使用して全ゲノムインピュテーションを実施した。なお、対象者全員と少数の対象者の保護者からインフォームドコンセントを得た。本研究は試験実施機関と理化学研究所の倫理委員会により認可された。解析はマルチプレックスPCRベース・インベーダーアッセイ(Third Wave Technologies社)を用いて行った。
男性と女性について別々に分析し、各データセット内の名目上有意なバリアントのクラスターを特定した。
女性データセット(2007件の症例と4751件の対照)内では染色体10q24.31領域及び染色体6q24.1領域上のこれまでに特定された2か所のAIS感受性座位がゲノムワイド有意性(P<5×10-8)に達し、21か所の座位が示唆的な関連(P<1×10-5)を示した。
[女性での関連の再現解析]
前記23か所の女性関連座位から6か所のこれまでに同定または調査が行われた座位を除外した。残りの17座位の各々に関して、我々は再現解析のために最小のP値を有するSNPを選択した。それらのうち、rs144779633、rs35518445及びrs3045832をそれぞれ、各SNPと高い連鎖不平衡状態(R2>0.98)にあるrs1475712、rs10208206及びrs12537799と置き換えた。
日本人女性の対象からなる独立したセット(941件の症例と1387件の対照)を用いて各座位について代表的なSNPの遺伝型をタイプし、有意な関連(P<2.94×10-3というボンフェローニ補正P値の閾値)を有する2例のSNP(rs59404763及びrs10196262)と有望な関連(P=6.09×10-3、OR=1.19)を示す1例のSNP(rs1475712)を特定した。GWASの結果と再現解析の結果を組み合わせるとrs59404763とrs10196262がP<5×10-8というゲノムワイド有意性の閾値に達し、rs1475712が示唆的な関連を示した(表1)。これらの新規感受性バリアントは女性では有意な関連を示したが、男性では有意な関連を示さなかった(表2)。
[座位の特徴分析及び候補原因バリアントと遺伝子の特定]
前記関連座位の特徴を分析するため、rs59404763及びrs10196262の周囲にあるタイピングされ、インピュテーションにより補完されたSNPをプロットした(図1)。最も有意な関連があったSNPであるrs59404763(複合P値=2.51×10-10、OR=1.53、95%CI=1.34〜1.75)は染色体1q42.13領域上のOBSCNのイントロン内に位置し(図1a)、関連があった他方のSNPであるrs10196262(複合P値=3.16×10-9、OR=1.33、95%CI=1.21〜1.46)は染色体2p21領域にある特徴不明の遺伝子であるLOC102723824の近傍に位置した(図1b)。
各座位の原因SNPを特定するため、rs59404763及びrs10196262とそれぞれ強固に相関する(R2>0.8)バリアントを選択し、そしてHaploregを使用してそれらのバリアントの調節能力を評価した(表3)。
[1q42.13座位内にある原因SNPと候補感受性遺伝子の特定]
染色体1q42.13座位内では最も有意な関連があったSNPはOBSCN遺伝子の中にあった(図1a)。それらのうち、rs58194408はDNase I高感受性部位、ヒストンマーク及び幾つかの転写因子についてのモチーフの変化をはじめとした調節能力についての強固な証拠を有しているので、そのSNPを候補原因SNPとして選択した。
電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA)を実施し、核タンパク質へのリスクアレルの結合強度が非リスクアレルの結合強度と比較して低下している(図2a)という転写因子結合のアレル差異を発見した。次にrs58194408がOBSCNの発現に対してアレル特異的効果を
有しているか調査した。OBSCNプロモーターとそのSNPの周囲のゲノム分節を含有するルシフェラーゼレポーターベクターを構築し、それらのレポーターベクターの転写活性を分析した。その結果、リスクアレルは非リスクアレルよりも有意に低い転写活性を示した(図2b)。これらの結果より、リスクアレルが原因の転写因子結合の減少及び転写活性の低下に起因するOBSCN発現の減少が女性のAISの発病に影響する可能性があることが示唆された。
[2p21座位内にある原因SNPと候補感受性遺伝子の特定]
染色体2p21座位内の最も有意な関連があったSNPは遺伝子間のものであった。したがって、候補感受性遺伝子を特定するため、Hi-C相互作用ブラウザを使用してrs10196262及び有意な関連があった他のSNPに重なるトポロジカル関連ドメイン(TAD)を検索し、そしてLOC102723824、EML4及びCOX7A2Lの3つの遺伝子を含むTADを発見した(図4a)。遺伝型−組織発現(GTEx)プロジェクトに由来するそれらの遺伝子の発現量的形質座位(eQTL)データより、rs10196262はEML4の発現と有意な関連があり、リスクアレルは非リスクアレルよりも高発現を示すことが明らかになった。
EMSAを実施し、転写因子結合のアレル差異を特定した(図3a)。バリアントrs144297067はrs10196262と完全な連鎖不平衡(LD)状態にあり、それによってrs144297067にEML4の発現と有意な関連があることが示唆された。
次に、rs144297067がEML4の発現に対してアレル特異的効果を有しているか調査した。EML4プロモーターとそのバリアントの周囲のゲノム分節を含有するルシフェラーゼレポーターベクターを構築し、それらのレポーターベクターの転写活性の変化を分析した。その結果、rs144297067というリスクバリアントが非リスクバリアントよりも有意に高い転写活性を示すことがわかった(図3b)。これらの観察結果はGTExポータルのeQTLデータと一致した。
なお、レポーターアッセイとゲルシフトアッセイは以下の手順で行った。
細胞培養及びルシフェラーゼレポーターアッセイ
候補原因バリアントの各アレルについてのルシフェラーゼレポーターベクターを構築するため、両端にXhoI切断部位を含む二本鎖オリゴヌクレオチド(Invitrogen社)として各バリアントに隣接するゲノム断片を合成し、pGL3プロモーターベクター内のSV40プロモーターの上流にそれらのゲノム断片をクローン化した。我々はOBSCNプロモーター領域及びEML4プロモーター領域(それぞれ−987〜+53及び−765〜+274)をpGL4.10ベクター(Promega社)にクローン化することによりOBSCNプロモーター・ルシフェラーゼ融合ベクター及びEML4プロモーター・ルシフェラーゼ融合ベクターも構築した。次にrs58194408の周囲のゲノム断片をOBSCNプロモーター・ルシフェラーゼ融合ベクターにクローン化し、rs144297067の周囲のゲノム断片をEML4プロモーター・ルシフェラーゼ融合ベクターにクローン化した。それらのコンストラクトの全てのインサートをシーケンシングによって確認した。Transit-LT1(Mirus Bio社)を使用してHEK293細胞及びA172細胞にこれらのコンストラクトを形質移入し、製造業者の指示に従って形質移入から24時間後にルシフェラーゼ活性を測定した。これらの実験ではphRL-TKベクター又はphRL-SV40ベクター(Promega)を正規化用の内部対照として使用した。全てのアッセイを三連で少なくとも二回実施した。
電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA)
相補的なオリゴヌクレオチドをアニーリングして各プローブを調製し、DIGゲルシフトキット(Roche社)を使用してジゴキシゲニン(DIG)-11-ddUTPでそのプローブを標識した。核抽出物を以前に記載されたように調製した。標識されたオリゴヌクレオチドを添加する前に過剰量の非標識オリゴヌクレオチドと核抽出物を予備インキュベートすることで競合実験を実施した。反応混合物を氷上で20分間にわたって定温放置した。DNAタンパ
ク質複合体を6%TBEゲル(Invitrogen社)上で分離し、製造業者の指示に従って化学発光検出システム(Roche社)を使用してシグナルを検出した。
[示唆的な座位]
ゲノムワイドの有意な関連がある前記2か所の座位の他に我々は染色体20q13.12領域上に示唆的な座位を特定した。関連があったSNPであるrs1475712はSLC2A10とEYA2との間の遺伝子間領域に位置し、rs1475712のTADはただ1つの遺伝子であるEYA2を含んだ(図4b)。EYA2はショウジョウバエ(Drosophila)のeyes absent遺伝子のヒトホモログである。Eya2はDach2又はSix1と物理的に相互作用して筋原性の遺伝子発現を相乗的に調節する。
<進行度と関連するSNPの探索>
以前に記載された(Am J Hum Genet 97, 337-342 (2015).)2142人のAIS患者を動員した。全ての患者が脊椎側弯症専門の外科医による診察とX線診断評価を受けた。全ての患者またはそれらの患者の保護者からインフォームドコンセントを得た。本研究は理化学研究所と試験実施機関の倫理委員会により認可された。骨格の成熟度に関係なく40°以上のコブ角を有する弯曲を弯曲の進行として定義し、骨格が成熟した患者において30°以下のコブ角を有する弯曲を弯曲の非進行と定義した。この基準は、40°よりも大きなコブ角を有する弯曲は骨格の成熟後でも進行性であり,一方で30°よりも小さいコブ角を有する弯曲は非進行性であるというAISの自然な経過に基づいている。今回、我々は明確な分類を行うために前記の2つの群の間に10°というギャップを置いた。コブ法には5〜10°の観察者内誤差または観察者間誤差がある。骨格の成熟を4以上のRisserグレード(参照番号24)によって規定した。手術されなかった症例については患者の最新のX線写真を使用してコブ角を評価し、手術された症例については手術前の患者の最後の診察に由来する情報を使用してコブ角を評価した。
上記2142人のAIS患者を進行群と非進行群に分け、1105人の患者を進行群に割り当て、832人を非進行群に割り当てた。2種類のIllumina Genotyping BeadChip(Human610およびOmniExpress)を使用したAIS感受性遺伝子についての以前のGWASにおいて決定されたそれらの患者の遺伝型判定データを使用した。品質管理フィルタリングの後にHuman610における502857例のSNPとOmniExpressにおける592392例のSNPを関連について調査した。分位点−分位点(Q-Q)プロットを用いて可能な集団構造化効果をチェックし、1.03と1.05というゲノムインフレーション係数を各プラットフォームにおいて得た。これらは集団構造または集団の隠れた関連性(cryptic relatedness)に起因する偽陽性の関連の可能性が低いことを意味している。それらの2種類のジェノタイピングチップに含まれるタグSNPは異なっているので、我々は以前に記載されたように全ゲノムインピュテーションおよびメタ分析を実施した。合計で7521072例のSNPを分析した。我々は示唆的な関連の証拠がある10か所の候補座位を特定した(P<1×10-5;図5a)。
再現解析
独立した日本人のAISコホート(323人の進行した患者と283人の進行しなかった患者)を使用して前記10か所の候補座位の関連の再現性を調査した。我々は染色体11q14.1上のrs1828853というSNPによって表される1か所の座位との関連の証拠を3.73×10-5のP値(5.00×10-3未満のボンフェローニ補正P値)で見出した。GWASと再現解析の結果を組み合わせると、rs1828853がP<5×10-8というゲノムワイド有意性閾値に達した(複合P値=1.98×10-9;オッズ比=1.56;95%信頼区間(CI)=1.35〜1.80;表4)。
精密マッピング
染色体11q14.1上の座位の特徴を分析するため、我々はrs1828853の周囲にあるタイプされ、インピュテーションにより補完されたSNPをプロットした。Locus Zoomを使用して局所的アソシエーションプロットを作成した。ランドマークとなるSNPであるrs1828853と強いLDにあるSNPを抽出し、プロットした(図5c)。これらのSNPはMIR4300HGという単一の遺伝子だけを含む同一のLDブロックの中に存在した。それらの最も有意に関連したSNPはMIR4300HGのイントロン1内に位置した(図5bおよび5c)。
前記座位における機能的SNPの特定
機能的SNPを検索するため、我々はHaploRegバージョン4.1を使用してrs1828853と強く相関する(r≧0.9)SNPを抽出した。rs971548、rs35333564およびrs7949305という3例のSNPがエンハンサーヒストンマーク内に位置した。したがって、そのSNPを含むゲノム領域は幾つかのエンハンサーのcis配列として作用する可能性がある。

Claims (10)

  1. rs59404763、rs10196262、rs1475712およびrs1828853からなる群より選択される一塩基多型または該一塩基多型と連鎖不平衡にある一塩基多型を分析し、該分析結果に基づいて側弯症を検査することを特徴とする、側弯症の検査方法。
  2. 前記側弯症が、思春期特発性側弯症である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記側弯症が女性における側弯症であり、一塩基多型がrs59404763、rs10196262またはrs1475712である、請求項1に記載の方法。
  4. 前記側弯症の検査が側弯症の進行度の検査であり、一塩基多型がrs1828853である、請求項1に記載の方法。
  5. 配列番号1〜9のいずれかに示す塩基配列において、塩基番号26番目の塩基を含む15塩基以上の配列、又はその相補配列を有する側弯症検査用プローブ。
  6. 配列番号1〜9のいずれかに示す塩基配列において、塩基番号26番目の塩基を含む領域を増幅することのできる側弯症検査用プライマー。
  7. Obscurin遺伝子またはObscurin遺伝子のプロモーターに連結されたレポーター遺伝子を発現する細胞に医薬候補物質を添加する工程、Obscurin遺伝子またはレポーター遺伝子の発現量を測定する工程、及び前記発現量を増加させる物質を選択する工程を含む、側弯症の予防薬又は治療薬をスクリーニングする方法。
  8. Obscurin遺伝子のmRNAまたはタンパク質の発現量を測定する工程を含む、側弯症の検査方法。
  9. EML4遺伝子またはEML4遺伝子のプロモーターに連結されたレポーター遺伝子を発現する細胞に医薬候補物質を添加する工程、EML4遺伝子またはレポーター遺伝子の発現量を測定する工程、及び前記発現量を低下させる物質を選択する工程を含む、側弯症の予防薬又は治療薬をスクリーニングする方法。
  10. EML4遺伝子のmRNAまたはタンパク質の発現量を測定する工程を含む、側弯症の検査方法。
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