JP2016214091A - 第9染色体短腕22.2領域の一塩基多型に基づく側弯症の検査方法 - Google Patents

第9染色体短腕22.2領域の一塩基多型に基づく側弯症の検査方法 Download PDF

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Abstract

【課題】側弯症を検査する方法、および側弯症の予防又は治療薬のスクリーニング方法を提供する。
【解決手段】第9染色体短腕22.2領域(9p22.2領域)に存在する一塩基多型を分析し、該分析結果に基づいて側弯症の発症リスクおよび/または発症の有無を検査する。また、BNC2遺伝子のmRNAまたはタンパク質の発現量を測定し、該測定結果に基づいて側弯症を検査する。また、BNC2遺伝子の発現量を変化させる物質を選択することにより側弯症の予防又は治療薬のスクリーニングを行う。
【選択図】図1

Description

本発明は側弯症の発症リスクや発症の有無を判定するための検査方法及び該検査方法に用いられる試薬に関する。また、側弯症の予防薬又は治療薬をスクリーニングする方法に関する。
側弯症は、脊椎が左右方向に弯曲した病態をいう。側弯症の内、その病因が明らかでないものを特発性側弯症と呼び、側弯症の80〜90%を占める。
側弯症は、通学年代の児童に多く発症し、特に、女子に多く発症する。10歳から骨格が成熟するまでの児童において、側弯の指標であるコブ角(Cobb angle)で少なくとも10°の弯曲を示し、且つ、その病因が明らかでないものを思春期特発性側弯症(Adolescent idiopathic scoliosis;AIS)と定義する。AISの発症頻度は、通学年代の児童
の内、日本で2%、世界では2〜3%であり、日本では毎年1万人程度が発症している。
側弯症の診断は主にX線検査により行われるが、X線検査は発症前や発症初期における側弯症の診断には有効でない。また、特発性側弯症の治療は、対症療法により行われるのみで、病因が明らかでない以上、原因療法は行われていない。よって、側弯症の発症前診断(リスク診断)や早期診断を可能にし、また、原因治療を可能にするため、側弯症と関連する遺伝子や一塩基多型(SNPs)の同定が望まれている。
ゲノムワイド連鎖解析(genome-wide linkage analysis)によりAISの病因となる多くの遺伝子座が見出されており、AISは複雑な遺伝的素因に基づくと考えられている(非特許文献1、2)。また、候補遺伝子解析によりAIS感受性遺伝子が報告されているが(非特許文献3〜9)、いずれの遺伝子についても別の人種を被験者とした場合にAISとの関連の再現性が得られていない(非特許文献10、11)。
さらに、近年、伝達不平衡解析(Transmission Disequilibrium Test;TDT)法に基づくゲノムワイド関連解析(Genome-wide association study;GWAS)によって、A
ISと関連する遺伝子の候補が報告された(非特許文献12)。しかしながら、それらは、多重検定補正後のケース−コントロール関連解析においてはAISとの関連の再現性が得られていない。
一方、近年、GWASによって、第10染色体長腕24.31領域(10q24.31領域)に存在するSNPsが、日本人集団および中国人集団において、ゲノムワイド水準を満たしてAISと関連することが見出された(特許文献1、非特許文献13、14)。また、同様にGWASによって、第6染色体長腕24.1領域(6q24.1領域)に存在するSNPsが、日本人集団において、AISと関連することが示唆された(特許文献2)。
第9染色体短腕22.2領域(9p22.2領域)に存在するBNC2 (basonuclin-2)遺伝子は、C2H2ジンクフィンガープロテインのグループに属する、高度に保存されている蛋白質をコードすることが知られている。BNC2は核スペックルにおいて濃縮しており、mRNAの核プロセシングにおける機能を有することが示唆されている(非特許文献15)。しかし、BNC2遺伝子と側弯症との関連は知られていない。
特開2013−042673号公報 特開2014−132875号公報
Wise, C.A. et al., Curr. Genomics 9, 51-59 (2008). Raggio, C. L. et al., J. Orthop. Res. 27, 1366-1372 (2009). Wu, J. et al., Spine 31, 1131-1136 (2006). Zhang, H.Q. et al., Spine 34, 760-764 (2009). Chen, Z. et al., Eur. J. Hum. Genet. 17, 525-532 (2009). Qiu, X. S. et al., Spine 32, 1748-1753 (2007). Wang, H. et al., Spine 33, 2199-2203 (2008). Inoue, M. et al., Stud. Health Technol. Inform. 91, 90-96 (2002). Yeung, H.Y. et al., Stud. Health Technol. Inform. 123, 18-24 (2006). Takahashi, Y. et al., J. Orthop. Res. 29, 834-837 (2011). Takahashi, Y. et al., J. Orthop. Res. 29, 1055-1058 (2011). Sharma, S. et al., Hum Mol Genet. 20, 1456-1466 (2011). Takahashi, Y. et al., Nat. Genet. 43, 1237-1240 (2011). Fan, YH. et al., J. Hum. Genet. 57, 244-246 (2012). Nature reviews. Molecular cell biology 4, 605-612 (2003).
本発明は、側弯症の発症リスクや発症の有無を正確に検査する方法、及び該方法に用いられる検査試薬を提供することを課題とする。本発明はまた、側弯症の予防薬又は治療薬のスクリーニング方法を提供することを課題とする。
本発明者らは上記課題の解決のために鋭意検討した結果、第9染色体短腕22.2領域(9p22.2領域)に存在する一塩基多型(SNP)が思春期特発性側弯症(AIS)と関連することを同定した。そして、これらの多型を調べることにより側弯症の発症リスクや発症の推定を正確に実施できることを見出し、本発明を完成するに至った。さらに、BNC2遺伝子を過剰発現する胚の多くは側弯症を示すことから、BNC2遺伝子の発現を抑制する物質が側弯症の予防薬や治療薬として有用であることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の態様を含む。
[1]第9染色体短腕22.2領域のBNC2遺伝子内に存在する一塩基多型を分析し、該分析結果に基づいて側弯症を検査することを特徴とする、側弯症の発症リスクおよび/または発症の有無の判定方法。
[2]前記側弯症が、思春期特発性側弯症である、[1]に記載の方法。
[3]前記一塩基多型が、配列番号1に示す塩基配列の塩基番号101番目の塩基に相当する塩基、または該塩基と連鎖不平衡の関係にある塩基における一塩基多型である、[1]または[2]に記載の方法。
[4]前記該塩基と連鎖不平衡の関係にある塩基における一塩基多型が、配列番号14に示す塩基配列の塩基番号101番目の塩基に相当する塩基、配列番号15に示す塩基配列の塩基番号101番目の塩基に相当する塩基、または配列番号16に示す塩基配列の塩基番号101番目の塩基に相当する塩基である、[3]に記載の方法。
[5]配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号101番目の塩基を含む10塩基以
上の配列、又はその相補配列を有する側弯症検査用プローブ。
[6]配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号101番目の塩基を含む領域を増幅することのできる側弯症検査用プライマー。
[7]BNC2遺伝子またはBNC2遺伝子のプロモーターに連結されたレポーター遺伝子を発現する細胞に医薬候補物質を添加する工程、BNC2遺伝子またはレポーター遺伝子の発現量を測定する工程、及び前記発現量を低下させる物質を選択する工程を含む、側弯症の予防薬又は治療薬をスクリーニングする方法。
[8]BNC2遺伝子のmRNAまたはタンパク質の発現量を測定する工程を含む、側弯症の検査方法。
本発明によれば、これまで予測が困難であった側弯症の発症リスク(罹患リスク)を正確かつ簡便に予測することができる。また、側弯症の発症を正確かつ簡便に判定することができる。また、本発明のスクリーニング方法によれば、側弯症の治療薬または予防薬を得ることができる。したがって、本発明は側弯症の予防や早期治療に貢献するものである。
9p22上のBNC2部位の領域内関連プロットを示す図。LocusZoomソフトウェアを使用して、思春期特発性側弯症とSNPとの関連の-log10(P値)が、SNPが存在する染色体の位置(NCBI Build 37)にプロットされている。推定組み換え率は1000ゲノムプロジェクトEAS遺伝子型データに基づいている。最も高い関連を示すシグナルを有するSNPはrs3904778であり、その他のSNPはrs3904778との連鎖不平衡(r2)に従って色づけされている。最も有意な関連を示すSNPは、BNC2のイントロン3に存在する。 様々なヒト組織におけるBNC2mRNAの発現を示す図。子宮、脊髄、骨および軟骨にBNC2の高発現が見られた。 In vitroにおけるrs10738445機能のアレルによる差異の解析を示す図。(a)rs10738445構築物とpGL3プロモーターベクター(−)の転写エンハンサー活性を示すグラフ。非リスクアレルを含む構築物(N)と比較して、リスクアレルを含む構築物(R)は約1.3倍高いルシフェラーゼ活性を示した。アスタリスク:P値<0.01(t検定)。(b)電気泳動の移動度シフトアッセイの結果を示す図(写真)。未ラベルプローブがコンペティターとして使用された。抗YY1抗体の添加によりリスクアレルに特異的なバンド(矢印)とスーパーシフト(矢尻)が消失した。(c)YY1発現ベクターの有無によるrs10738445構築物の転写エンハンサー活性を示すグラフ。ルシフェラーゼ活性は、Nを含む構築物よりもRを含む構築物においてより高かった。YY1の添加はRとNの両方の場合においてルシフェラーゼ活性を増加させた。 ゼブラフィッシュ胚におけるBNC2の過剰発現の影響を示す図。(a)EGFP(コントロール)とBNC2を過剰発現している胚(受精後24時間)の写真。導入遺伝子はtol2仲介遺伝子組み換えによって安定に発現された。ユビキタスな導入遺伝子発現は、コントロールの初代(founder)胚(左)において緑色蛍光色素によって確認された。BNC2トランスジェニック胚は、顕著な脊柱変形と深刻な体節奇形を示した。スケールバーは1mmを示す。(b)EGFP(コントロール)とBNC2を過剰発現している胚の発生上の表現型を定量化したグラフを示す。「lethal」は受精後24〜28時間の間に死亡した胚の数の割合を示し、「abnormal somite」は側弯症を含む異常に変形した体節を有する胚の数の割合を示し、「normal」は体節において明らかな異常がない胚の数の割合を示す。(c)漸増する投与量でBNC2mRNAを注入されたゼブラフィッシュ胚(受精後24時間)を示す写真。4枚の写真は左から右に向かって、10、50、100および200pgのBNC2mRNAが、それぞれ注入された胚を示す。mRNAの注入は、側弯症および深刻な体節奇形を投与量依存的に引き起こした。矢尻は、最も高濃度(200pg)でmRNAが注入された胚における色素形成の遅滞を示す。スケールバーは50mmを示す。(d)BNC2mRNAを注入した胚の発生上の表現型を定量化したグラフを示す。受精後24〜28時間の間の胚が、(b)と同様に形態学的に評価された。
<1>本発明の方法
本発明の方法は、ヒトの第9染色体短腕22.2領域(9p22.2領域)に存在する一塩基多型(SNP)を分析し、該分析結果に基づいて側弯症を検査することを特徴とする、側弯症の発症リスクおよび/または発症の有無の判定方法である。すなわち、本発明において、「検査」とは側弯症の発症リスクの検査及び側弯症の発症の有無の検査を含む。本発明の方法においては、SNPの分析結果を、側弯症の発症リスクおよび/または発症の有無と関連付ける。本発明の方法においては、SNPを検査する試料を検査対象者から得る工程をさらに含めても良い。
本発明における側弯症としては、特に限定されないが、例えば、従来病因が特定されていない特発性側弯症の検査に好適に用いられる。側弯症は、先天性、若年性、思春期性、成人性等、いずれの時期に発症するものであってもよいが、思春期性側弯症であるのが好ましく、思春期特発性側弯症(AIS)であるのがより好ましい。
本発明の方法は、いずれの人種の被験者に対しても用いることができる。本発明の方法は、例えば、日本人や中国人等のアジア人の被験者や白人の被験者に好適に用いることができる。また、本発明の方法は、いずれの性別の被験者に対しても用いることができるが、特に、女性被験者に対して好適に用いることができる。
9p22.2領域に存在する具体的なSNPとしては、ヒトrs3904778を挙げることができる
。ここで、rs番号は、National Center for Biotechnology InformationのdbSNPデータベース(http//www.ncbi.nlm.nih.gov/projects/SNP/)の登録番号を示す。rs3904778は、9p22.2領域のBNC2遺伝子が含まれる連鎖不平衡ブロックに位置する。よって、特に、当該
連鎖不平衡ブロックに存在するSNP、例えばBNC2遺伝子上に存在するSNPを解析することによって、側弯症を検査することができる。BNC2遺伝子としては、具体的には、GenBank Accession No. NC_000009.11の16409501〜16870786の領域が挙げられる。
rs3904778はGenBank Accession No. NC_000009.11の16681993番目の塩基におけるシト
シン(C)/グアニン(G)の多型を意味し、この塩基が表6のReverse配列においてG
である場合は側弯症の可能性または発症リスクが高い(表2及び4)。たとえば、この塩基がCである場合と比べて、この塩基がGである場合は、側弯症の可能性または発症リスクが1.15−1.27倍高い(表3)。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、GG>GC>CCの順で側弯症の可能性または発症リスクが高い。よって、この塩基がGである被験者には、側弯症の治療を行うことが考えられる。
なお、rs3904778について、SNP塩基及びその前後100bpの領域を含む合計20
1bpの長さの配列を、配列番号1に示した。配列番号1における101番目の塩基が多型を有し、この塩基がC(リスクアレル)である場合は側弯症の可能性または発症リスクが高いと判定する。
本発明においては、上記塩基に相当する塩基を解析する。「上記塩基に相当する塩基」とは、上記領域における該当塩基を意味する。すなわち、「上記塩基に相当する塩基を解析する」ことには、仮に人種の違いなどによって上記配列がSNP以外の位置で若干変化したとしても、上記領域における該当塩基を解析することが含まれる。
また、本発明において解析する塩基は上記のものに限定されず、上記の塩基と連鎖不平
衡にある塩基の多型を分析してもよい。ここで「上記の塩基と連鎖不平衡にある塩基」とは、上記の塩基とr2>0.5、好ましくはr2>0.8、さらに好ましくはr2>0.9
の関係を満たす塩基をいう。r2は連鎖不平衡係数である。また上記の塩基と連鎖不平衡
にある塩基は、例えば、HapMapデータベース(http://www.hapmap.org/index.html.ja)等
を用いて同定することができる。もしくは、複数人(通常は20〜40人程度)から採取したDNAをシークエンサーにて配列解析し、連鎖不平衡にあるSNPを探索することにより同定することもできる。上記の塩基と連鎖不平衡にある塩基は、遺伝子型を考慮して解析した場合は、リスクアレルのホモ接合体 > リスクアレルと非リスクアレルのへテロ接合体 > 非リスクアレルのホモ接合体の順で側弯症の可能性または発症リスクが高い。
rs3904778と連鎖不平衡にある塩基として、具体的には、例えば、rs3850444、rs2383002、rs10738445が挙げられる(表4)。
rs3850444はGenBank Accession No. NC_000009.11の16681762番目の塩基におけるグア
ニン(G)/シトシン(C)の多型を意味し、この塩基が表6のForward配列においてG
である場合は側弯症の可能性または発症リスクが高い(表4)。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、GG>GC>CCの順で側弯症の可能性または発症リスクが高い。よって、この塩基がGである被験者には、側弯症の治療を行うことが考えられる。
なお、rs3850444について、SNP塩基及びその前後100bpの領域を含む合計20
1bpの長さの配列を、配列番号14に示した。配列番号14における101番目の塩基が多型を有し、この塩基がC(リスクアレル)である場合は側弯症の可能性または発症リスクが高いと判定する。
rs2383002はGenBank Accession No. NC_000009.11の16687187番目の塩基におけるシト
シン(C)/チミン(T)の多型を意味し、この塩基が表6のReverse配列においてCで
ある場合は側弯症の可能性または発症リスクが高い(表4)。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、CC>CT>TTの順で側弯症の可能性または発症リスクが高い。よって、この塩基がCである被験者には、側弯症の治療を行うことが考えられる。
なお、rs2383002について、SNP塩基及びその前後100bpの領域を含む合計20
1bpの長さの配列を、配列番号15に示した。配列番号15における101番目の塩基が多型を有し、この塩基がC(リスクアレル)である場合は側弯症の可能性または発症リスクが高いと判定する。
rs10738445はGenBank Accession No. NC_000009.11の16680138番目の塩基におけるアデニン(A)/シトシン(C)の多型を意味し、この塩基が表6のReverse配列においてA
である場合は側弯症の可能性または発症リスクが高い(表4)。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、AA>AC>CCの順で側弯症の可能性または発症リスクが高い。よって、この塩基がAである被験者には、側弯症の治療を行うことが考えられる。
なお、rs10738445について、SNP塩基及びその前後100bpの領域を含む合計201bpの長さの配列を、配列番号16に示した。配列番号16における101番目の塩基が多型を有し、この塩基がA(リスクアレル)である場合は側弯症の可能性または発症リスクが高いと判定する。
上記SNPの塩基の種類を調べ、得られた結果を上記のような基準に基づいて側弯症と関連付けることにより、側弯症を検査することができる。上記SNPは単独で解析されてもよいし、上記SNPの少なくとも1つを含む複数のSNPsをまとめて解析(ハプロタイプ解析)してもよい。例えば、上記SNPの複数をまとめて解析してもよいし、上記S
NPの少なくとも1つと、側弯症と関連する既知のSNPs(非特許文献13等)や当該既知のSNPsと連鎖不平衡にあるSNPsとを組み合わせて解析してもよい。たとえば、rs3904778と、rs11190870、rs625039、rs11598564(特許文献1)、およびrs6570507(特許文献2)の1つ以上とを組み合わせることが挙げられる。側弯症と関連する複数のSNPsをまとめて解析すれば、側弯症の検査の精度が向上する。なお、いずれのSNPも、二本鎖DNAのどちらの鎖を解析してもよい。例えば、BNC2遺伝子の配列はセンス鎖を解析してもよいし、アンチセンス鎖を解析してもよい。
SNPの解析に用いる試料は、染色体DNAを含む試料であれば特に制限されない。SNPの解析に用いる試料としては、例えば、血液、尿、髄液等の体液、子宮頸部や口腔粘膜などの細胞、毛髪等の体毛などが挙げられる。SNPの解析にはこれらの試料を直接使用することもできるが、これらの試料から染色体DNAを常法により単離し、これを用いて解析することが好ましい。
SNPの解析は、通常の遺伝子多型解析方法によって行うことができる。例えば、シークエンス解析、PCR、ハイブリダイゼーション、インベーダー法などが挙げられるが、これらに限定されない。
シークエンス解析は通常の方法により行うことができる。具体的には、多型を示す塩基の5’側 数十塩基の位置に設定したプライマーを使用してシークエンス反応を行い、そ
の解析結果から、該当する位置がどの種類の塩基であるかを決定することができる。なお、シークエンス反応の前に、あらかじめSNP部位を含む断片をPCRなどによって増幅しておくことが好ましい。
また、SNPの解析は、PCRによる増幅の有無を調べることによって行うことができる。例えば、多型を示す塩基を含む領域に対応する配列を有し、かつ、3’末端が各多型に対応するプライマーをそれぞれ用意する。それぞれのプライマーを使用してPCRを行い、増幅産物の有無によってどのタイプの多型であるかを決定することができる。また、LAMP法(特許第3313358号明細書)、NASBA法(Nucleic Acid Sequence-Based Amplification;特許2843586号明細書)、ICAN法(特開2002−2
33379号公報)、SmartAmp法(特許第3897805号明細書)などによって増幅の有無を調べることもできる。その他、単鎖増幅法を用いてもよい。
また、SNP部位を含むDNA断片を増幅し、増幅産物の電気泳動における移動度の違いによってどのタイプの多型であるかを決定することもできる。このような方法としては、例えば、PCR−SSCP(single-strand conformation polymorphism)法(Genomics. 1992 Jan 1; 12(1): 139-146.)が挙げられる。具体的には、まず、目的のSNPを含むDNAを増幅し、増幅したDNAを一本鎖DNAに解離させる。次いで、解離させた一本鎖DNAを非変性ゲル上で分離し、分離した一本鎖DNAのゲル上での移動度の違いによってどのタイプの多型であるかを決定することができる。
さらに、多型を示す塩基が制限酵素認識配列に含まれる場合は、制限酵素による切断の有無によって解析することもできる(RFLP法)。この場合、まず、DNA試料を制限酵素により切断する。次いで、DNA断片を分離し、検出されたDNA断片の大きさによってどのタイプの多型であるかを決定することができる。
また、ハイブリダイゼーションの有無を調べることによって多型の種類を解析することも可能である。すなわち、各塩基に対応するプローブを用意し、いずれのプローブにハイブリダイズするかを調べることによってSNPがいずれの塩基であるかを調べることもできる。
このようにしてSNPがいずれの塩基であるかを決定することで、側弯症を検査するためのデータを得ることができる。
本発明の方法により判定された結果は、必要に応じて医師等に提供される。結果を提供された医師等は、身体診察、X線検査、CT検査等の必要な検査を行った上で、発症のリス
クを診断することができる。医師等がAISの発症リスクが高いと診断した場合には、装具やギプスの装着や牽引等の治療を施すことができる。また、リスクが低いと診断した場合には、患者に取って負担が大きいこれらの治療を回避することができる。
<2>本発明の検査用試薬
本発明はまた、側弯症を検査するためのプライマーやプローブなどの検査試薬を提供する。このようなプローブとしては、上記SNP部位を含み、ハイブリダイズの有無によってSNP部位の塩基の種類を判定できるプローブが挙げられる。具体的には、配列番号1に示す塩基配列の101番目の塩基を含む配列、又はその相補配列を有する10塩基以上の長さのプローブや、当該塩基と連鎖不平衡の関係にある塩基を含む配列、又はその相補配列を有する10塩基以上の長さのプローブが挙げられる。なお、「当該塩基と連鎖不平衡の関係にある塩基」及びその前後の領域の塩基配列は、例えば、National Center for Biotechnology InformationのdbSNPデータベース(http//www.ncbi.nlm.nih.gov/projects/SNP/)から取得できる。プローブの長さは好ましくは、15〜35塩基であり、より好ましくは20〜35塩基である。
また、プライマーとしては、上記SNP部位を増幅するためのPCRに用いることのできるプライマー、又は上記SNP部位を配列解析(シークエンシング)するために用いることのできるプライマーが挙げられる。具体的には、配列番号1に示す塩基配列の101番目の塩基を含む領域を増幅したりシークエンシングしたりすることのできるプライマーや、当該塩基と連鎖不平衡の関係にある塩基を含む領域を増幅したりシークエンシングしたりすることのできるプライマーが挙げられる。このようなプライマーの長さは10〜50塩基が好ましく、15〜35塩基がより好ましく、20〜35塩基がさらに好ましい。
上記SNP部位をシークエンシングするためのプライマーとしては、上記塩基の5’側領域、好ましくは30〜100塩基上流の配列を有するプライマーや、上記塩基の3’側領域、好ましくは30〜100塩基下流の領域に相補的な配列を有するプライマーが例示される。PCRによる増幅の有無で多型を判定するために用いるプライマーとしては、上記塩基を含む配列を有し、上記塩基を3’側に含むプライマーや、上記塩基を含む配列の相補配列を有し、上記塩基の相補塩基を3’側に含むプライマーなどが例示される。
なお、本発明の検査用試薬はこれらのプライマーやプローブに加えて、PCR用のポリメラーゼやバッファー、ハイブリダイゼーション用試薬などを含むものであってもよい。
<3>側弯症の予防薬又は治療薬のスクリーニング方法
本発明においては、後述のとおり、BNC2遺伝子を過剰発現する胚の多くは側弯症を示し、いくつかは重篤な体節奇形となることが示された。したがって、BNC2の発現を低下させる活性を指標にして薬剤をスクリーニングすることにより、側弯症の予防薬又は治療薬となりうる物質を得ることができる。
すなわち、本発明のスクリーニング方法としては、BNC2遺伝子またはBNC2遺伝子のプロモーターに連結されたレポーター遺伝子を発現する細胞に医薬候補物質を添加する工程、BNC2遺伝子またはレポーター遺伝子の発現量を測定する工程、及び前記発現量を低下させる物質を選択する工程を含む、側弯症の予防薬又は治療薬のスクリーニング方法が挙げられる。
例えば、医薬候補物質の存在下において、BNC2遺伝子またはレポーター遺伝子の発現量が医薬候補物質非存在下と比べて抑制される場合に、当該医薬候補物質を側弯症の予防薬又は治療薬の候補物質として選択することができる。
BNC2遺伝子を発現する細胞としては、マウスの卵巣、子宮および脳等の細胞、ゼブラフィッシュの卵巣、知覚神経節、後脳および眼等の細胞、ヒトの子宮、脊髄および軟骨等の細胞を用いることができる。
BNC2遺伝子のプロモーターに連結されたレポーター遺伝子を用いる場合、BNC2遺伝子のプロモーターとしては、転写開始点の上流約2kbpを含む領域が好ましく、上流約5kbpを含む領域がより好ましい。プロモーターの配列情報はGenBank Accession No. NC_000009.11などより入手できる。
レポーター遺伝子としては、ルシフェラーゼ遺伝子、GFP遺伝子、クロラムフェニコー
ルアセチルトランスフェラーゼ遺伝子などが例示できる。これらのレポーター遺伝子をBNC2遺伝子のプロモーターに連結し、これを哺乳類細胞に遺伝子を導入するために用いられるプラスミドに組み込み、リポフェクションなどの通常の方法にて細胞にトランスフェクションする。
上記のようなBNC2遺伝子を発現する細胞、又はレポーター遺伝子が導入された細胞に医薬候補物質を添加し、BNC2遺伝子またはレポーター遺伝子の発現量を測定する。
医薬候補物質としては特に制限はなく、例えば、低分子合成化合物であってもよいし、天然物に含まれる化合物であってもよい。また、ペプチドや核酸であってもよい。スクリーニングには個々の候補物質を用いてもよいが、これらの物質を含む化合物ライブラリーを用いてもよい。候補物質の中から、BNC2遺伝子又はレポーター遺伝子の発現量を(非添加時と比べて)低下させるものを選択することにより、側弯症の予防薬又は治療薬となりうる物質を得ることができる。
BNC2遺伝子の発現量はRT−PCR、定量PCR、ノーザンブロット、ELISA、Western blotting、In situ hybridization、免疫組織染色などの方法により測定すること
ができる。レポーター遺伝子の発現量はレポーター遺伝子の種類にもよるが、蛍光強度や発光強度、放射能強度などによって測定することができる。
<4>BNC2遺伝子の発現量に基づく検査方法
本発明はまた、BNC2遺伝子のmRNAまたはタンパク質の発現量を測定する工程を含む、側弯症の検査方法(検査データを得る方法)を提供する。BNC2遺伝子のmRNAまたはタンパク質の発現量が健常人などの対照と比べて増加している場合、側弯症に罹患している、または側弯症の危険性が高いと判定することができる。本発明の検査方法においては、発現量を測定する試料を検査対象者から得る工程をさらに含めてもよい。
BNC2遺伝子の発現量は、RT−PCR、ノーザンブロット、マイクロアレイ法などで調べることができる。また、BNC2遺伝子産物の発現量はELISA、ウエスタンブロットなどで調べることができる。抗体は市販の抗体を用いることもできるし、BNC2蛋白質のアミノ酸配列(例えば配列番号18)の一部を抗原として作製された抗体を用いることもできる。BNC2のコード領域の塩基配列としては配列番号17が例示され、この配列等を利用して発現解析用プライマーやプローブなどを設計または取得することができる。RT−PCRのプライマーとしては、例えば、配列番号12および13のプライマーセットが例示される。
検査に用いる試料としては、血液、尿、髄液等の体液、子宮頸部や口腔粘膜などの細胞、毛髪等の体毛などが挙げられる。
また、本発明においては、BNC2遺伝子の発現量を、側弯症治療薬の存在下と非存在下とで比較し、側弯症治療薬の効果を判定することもできる。例えば、BNC2遺伝子を過剰発現する細胞などに側弯症治療薬を添加し、BNC2遺伝子の発現誘導が側弯症治療薬非添加時と比べて抑制されていれば、当該治療薬の効果はあると判定でき、また、抑制率が高いほど当該治療薬の効果は高いと判定することができる。
配列番号1は、rs3904778の前後100塩基を含む201塩基からなる配列を示す。
配列番号2、3は、rs3904778のクローニング用フラグメントを示す。
配列番号4、5は、rs3850444のクローニング用フラグメントを示す。
配列番号6、7は、rs2383002のクローニング用フラグメントを示す。
配列番号8、9は、rs10738445のクローニング用フラグメントを示す。
配列番号10、11は、BNC2の定量的RT−PCRに用いたフォワードプライマーまたはリバースプライマーを、それぞれ示す。
配列番号12、13は、BNC2のPCRに用いたフォワードプライマーまたはリバースプラ
イマーを、それぞれ示す。
配列番号14は、rs3850444の前後100塩基を含む201塩基からなる配列を示す。
配列番号15は、rs2383002の前後100塩基を含む201塩基からなる配列を示す。
配列番号16は、rs10738445の前後100塩基を含む201塩基からなる配列を示す。
配列番号17、18は、BNC2遺伝子のcDNA配列およびBNC2蛋白質のアミノ酸配列を、それぞれ示す。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれらの実施例に限定されない。
AISの感受性遺伝子を同定するために、被験者数を5倍以上に増加し、全ゲノム補完(whole genome imputation)を行うことによりゲノムワイド関連解析(GWAS)を拡張させた。2,142人の思春期特発性側弯症(Adolescent idiopathic scoliosis;AIS)の患者(10-59才)が、以前に記載された基準(Nature genetics 45, 676-679 (2013)、Nature genetics 43, 1237-1240 (2011).、Journal of orthopaedic research : official publication of the Orthopaedic Research Society 29, 1055-1058 (2011))に従って、共同研
究する10の病院から、2009年2月〜2012年12月にわたって、GWASのために募集された。全ての患者は、側弯症専門の外科医による臨床的および放射線学的検査を受けた。GWASのために、11,144の対照群(7-96才)がバイオバンクジャパンプロジェクトおよびそれに関連するプロジェクトから、以前に記載したように集められた(Nature Genetics 46, (2014) 1012-1016、The BioBank Japan Project. Clin Adv Hematol Oncol 5, (2007) 696-697、Nature Genetics 44, (2012) 900-903)。
Illumina Human610 Genotyping BeadChip及びIllumina HumanHap550v3 Genotyping BeadChipを使用して、1,289人のAIS患者群と3,345人の対照群を遺伝子型解析し、また、Illumina Human OmniExpress Genotyping BeadChip 及びIllumina Human Exome Genotyping BeadChipを使用して、853人のAIS患者群と7,799人の対照群を遺伝子型解析した(表1)。クオリティコントロールは以前に記載された方法を使用した(Nature genetics 43, 1237-1240 (2011))。サンプルのクオリティコントロールのために、X染色体上のSNPを使用して、ジェンダー情報をチェックし、アイデンティティ・バイ・ステート法を用いて各サンプルの潜在的関連性を評価し、第2度の関連性(second-degrees relatedness)又はそれに近い関連性を示すサンプルは除外した。本研究の集団階層化をチェックするために、
基準としてのハップマップデータに由来する、ヨーロッパ人(ユタ州の白人により代表される、CEU)、アフリカ人(イバダンからのヨルバ族に代表される、YRI)、東アジア人(東京からの日本人(JPT)および北京からの中国漢族(CHB)に代表される)を含む4つの基準集団を用いる主成分分析(PCA)を行った。JPT/CHBクラスターに属さない外れ値を有する人を特定するために上位2つの関連主成分(固有ベクトル)を用いて散布図をプロットした(図示せず)。次に、集団の下位構造をさらに評価するために患者群と対照群の遺伝子型の情報のみを使用するPCA分析を実施した。
Figure 2016214091
クオリティコントロールフィルタリングの後、Illumina Human610 Genotyping BeadChip で458,596 SNP、Illumina Human OmniExpress Genotyping BeadChipで605,478SNPが関
連について調査された。起こり得る集団階層化を、予測P値(expected Pvalue)に対する
観察P値(observed P value)を使用して分位数‐分位数(Q‐Q)プロットを構築することにより検討し、各プラットフォームで1.06と0.97のゲノム拡張係数(genomic inflation factor)(λ値)を得た。このことは、集団構造に基づく偽陽性の関連である可能性や、潜在的関連性が低いことを意味している。
2つのプラットフォームに関係するタグSNPは異なるため、全ゲノム補完とメタ解析を行った。欠落する遺伝子型(missing genotype)を予測するための基準パネルとして、東アジア人集団(JPT、CHBおよびCHS (中国南部漢族))フェーズI統合(integrated)リリースバージョン2データセットの1000ゲノムを用いて全ゲノム補完を行った。クオリティコントロールの後に、遺伝子型割合が99%より低く、マイナーアレル頻度(MAF)が0.01より低く、HWEより逸脱(P≦ 1.0×10-6)しているSNPを除外したインプッ
トファイルを用意した。GWASデータセットと0.16より大きい差を有する基準パネルとの間で、アレル頻度が同等であるSNPは、除外された。関連研究には、補完クオリティスコアRsq≧0.9のSNPが使用された。
補完SNP(imputed SNP)の関連は、Minimacからのアウトプット結果を使用するmach2datソフトウェアにより提供された。逆分散法(inverse-variance method)
を使用して、発見(discovery)と確認(validation)フェーズの複合解析のためのメタ
解析が実施され、2つのフェーズ間の異質性(heterogeneity)はBreslow-Dayテストにより評価され、P<0.05であるSNPは削除された。総計、2,109人の日本人AIS患者と11,140人のAIS患者でない対照群について、4,420789SNPの関連性を解析した。3部位がP < 5 × 10-8のゲノムワイド有意レベルを上回り、そのうちの2部位は以前に同定さ
れた10q24.31(Nature Genetics 43, (2011) 1237-1240)と6q24.1(Nature Genetics 45, (2013) 676-679)であった(表2)。
Figure 2016214091
新規な部位の関連を確認するために、共同研究する病院から958人のAIS患者群と、3,551人の対照群とを含む独立したセットを集め(表1)、再現解析を行った。GWASにお
いてP < 1 × 10-5を上回った27SNPを選択し(表2)、以前記載されたように(Nature Genetics 45, (2013) 676-679)multiplex PCR-based Invader assay (Third Wave Technologies)を使用して、被検者を遺伝子型解析した。再現解析において、染色体9p22.2に存在するrs3904778SNPにより示される1部位についての関連の証拠を見いだした(P =
4.46 × 10-5 、ボンフェローニ補正後はP < 1.85 × 10-3;表3)。GWASと再現解析の結果を合わせると、rs3904778はP < 5 × 10-8のゲノムワイド有意性閾値に達した(複
合P = 5.08 × 10-11; OR = 1.21, 95% 信頼区間 (CI) = 1.14-1.28; 表3)。
Figure 2016214091
この関連性をさらにテストするために、南京大学医学部付属鼓楼医院で募集された中国漢族においてrs3904778を遺伝子型解析した。AIS患者は臨床的および放射線医学的検査を通して、以前に記載の基準(Nature genetics 45, 676-679 (2013))に従って診断された。対照群は、病院の脊柱専門の外科医(Y.Q.)により、アダムの前屈試験を通して、側弯症ではないことが確認されている健康なボランティアであった(表1)。ABI PRISM 7900HTシークエンス検出システム(Applied Biosystems)で読み取られるTaqMan SNP Genotyping Assayを使用して、1,268人の患者群と1,173人の対照群を遺伝子型解析した。関連性がそ
の集団において再現された。全てのメタ解析のP値は2.46× 10-13で、ORは1.21であった (表3)。
染色体9p22.2の特性を明らかにするために、rs3904778周辺の遺伝子型解析をしたSNPと補完SNPをプロットした(図1)。さらなる3つのSNPが関連性の証拠をもたらし、rs3904778と強い関連性を示した(r2 ≧ 0.9)(表4)。それらの全てのSNPは、BNC2 (basonuclin-2)遺伝子のイントロン3に位置していた(図1)。
Figure 2016214091
BNCタンパクは、C2H2zinc finger proteinのグループに属する高度に保存され
たタンパク質である。マウスBnc2タンパクはヒトBNC2タンパクとは97.0%、ゼブラフィッシュとは60.8%の同一性を有する(Biochimie 93, 127-133 (2011))。BNC2は核スペックルに集まっており、mRNAの核プロセシングにおける機能を示唆している(Nature reviews. Molecular cell biology 4, 605-612 (2003))。マウスにおいて、Bnc2発現は卵巣、子宮、脳、および頭蓋顔面骨において観察されていた(Geno
mics 83, 821-833 (2004)、PNAS 101, 3468-3473 (2004)、PNAS 106, 14432-14437 (2009))。ゼブラフィッシュにおいては、Bnc2発現は卵巣および中枢神経系、すなわち知
覚神経節、後脳および眼において観察されていた(PLoS genetics 5, e1000744 (2009))。しかし、ヒト筋骨格組織におけるBNC2発現は調査されていなかった。そこで、定量的RT−PCRを用いて、種々のヒト組織におけるBNC2mRNAの発現を調査した(
表5)。その結果、BNC2は子宮と脊髄において最も多く発現しており、骨と軟骨がそ
れに続いた(図2)。
Figure 2016214091
Genevar (GENe Expression VARiation)データベースを使用して、染色体9p22.2部位に
対して相互参照する発現の量的形質座位(eQTL)データにより、関連性を示したSNPの起こ
り得る機能的な効果を調査した(Yang, T.P., et al. Bioinformatics 26, 2474-2476 (2010))。rs10738445だけがデータベースにあり、その感受性アレルはBNC2発現レベルを顕著に増加させた(メキシコ人でP = 0.048)。また、関連を示すSNPと、ゲノムエレメントをアノテートしたDNAエレメントのエンサイクロペディア(エンコード)とのオーバーラッ
プを、UCSCゲノムブラウザを使用して評価した。rs3850444のみが、多数の組織にわたるDNase I-過敏性部位に位置した。3つのSNP(H1およびNHLF(正常ヒト肺線維芽
細胞)におけるrs3850444 とrs3904778、HSMM(ヒト骨格筋芽細胞)とNHLFにおけるrs10738445)は、エンハンサーヒストンマークを有していた。これらの発見は、SNPがBNC2
の転写活性を調節する可能性があることを示唆している。
SNPの転写活性をルシフェラーゼアッセイにより検討した。各SNP周辺のオリゴヌクレオチド(表6)をpGL3プロモーターベクター(プロメガ)の中にクローニングしてレポーターベクターを構築した。HeLa細胞に、500ngのレポーターベクターと1ngのpRL−TKベクター(プロメガ)を、FuGene6トランスフェクション試薬(Promega)を添付のプロトコールに従って使用してトランスフェクトした。48時間のインキュベーション後、リスクアレルを有するコンストラクトと非リスクアレルを有するコンストラクトのルシフェラーゼ活性を比較した。rs10738445のみがエンハンサー活性を有し、アレル間の顕著な相違を示した。リスクアレルを含むコンストラクトは、非リスクアレルを含むコンストラクトと比べて、約1.3倍高いルシフェラーゼ活性を示し (図3a)、この
結果は、rs10738445のリスクアレルはその配列が有するエンハンサー活性の増強によりAISと関連することを示唆した。他の細胞株(HEK293およびA172)を用いた試験も同様の結果
であった。
Figure 2016214091
アレル間の相違がrs10738445への転写因子の結合に影響を与えるのかどうかを評価するために、DIGゲルシフトキット第2世代(ロシュ)と二重鎖オリゴヌクレオチド(表6)
を使用して、HeLa細胞からの各抽出物を用いて電気泳動の移動度シフトアッセイ(EMSA)
を行った。その結果、リスクアレルを含むオリゴヌクレオチドに特異的なバンドが検出された(図3b)。次に、JASPARデータベースを使用して、リスクアレルに結合し得る転写因子を探したところ、rs10738445がYY1結合部位内に位置することを見出し、リスクアレル
と非リスクアレル間でその結合性が変化すると予測した。そこで、抗YY1抗体(Santa Cruz)を使用してEMSAを行ったところ、抗YY1抗体の付加によって、リスクアレル特異的なバンドはゲル上の上方へシフトした(図3b)。次に、ルシフェラーゼアッセイにより、rs10738445に対するYY1の効果を試験した。YY1発現ベクターは、そのコーディング配列をpcDNA3.1(+)にクローニングすることにより構築した。rs10738445レポーターベクターと、YY1発現ベクター又は空のpcDNA3.1(+)を、HeLa細胞にコトランスフェクションした。YY1発現ベクターは、リスクアレルおよび非リスクアレルのどちらに対しても、ルシフェラーゼ活性を有意に増加させた(図3c)。よって、YY1はrs10738445を含むエンハンサー配列に結合
し、BNC2発現を上方制御していることが確認された。
in vivoでBNC2過剰発現の効果を調査するために、ゼブラフィッシュモデルにおけるtol2仲介遺伝子組み換えシステムを使用した(Gene 240, 239-244 (1999), Developmental Dynamics 236, 3088-3099 (2007))。BNC2コード領域は、cDNAクローン(IMAGE: 100069207)から、制限酵素配列に結合する特異的プライマー(表5)を使用してPCR増幅された。Tol2遺伝子組み換え構築物を作成するために、p5E-bactin2、pME-MCS BNC2クローンおよびp3E-polyAが、ゲートウェイLRクロネースII酵素ミックス(Life Technologies)によってpDest-Tol2pA2内に組み換えられた。プラスミドDNA(10 ng/μl)を、mMESSAGE mMACHINE SP6 キット(Ambion)を使用して合成されたキャップされたTol2トランスポゼースmRNA(50 ng/
μl)と共に、RIKEN野生株(Danio Rerio、文部科学省のナショナルバイオリソースプロジ
ェクトにより供与された)の1細胞期胚(one-cell stage embryos)の中にコインジェク
ションした。βアクチンプロモーターの制御下でBNC2をゼブラフィッシュ胚において安定的に発現させ、受精後24〜72時間の間におけるトランスジェニックゼブラフィッシュ胚の初代(founder)を解析した。ゼブラフィッシュ胚におけるBNC2過剰発現は、異常な
体節形成(65%, n=150)および胚致死性(18%, n=41)を引き起こした。一方、EGFPを注入し
た対照の胚は、正常な発達を遂げた(図4a、b)。導入したBNC2遺伝子に由来する異常な胚の多くは側弯症を示し、いくつかは重篤な体節奇形を示し、一週間以内に死亡した。
さらに、BNC2 mRNAの注入による体節形成に対するBNC2の効果を確認した。BNC2コード
配列をpcDNA3.1の中にクローニングし、キャップされたmRNAを合成し、そしてそれを10〜200pgの投与量で1細胞期胚に注入した。BNC2 mRNAの投与量増加は、側弯症および重篤な体節奇形の増加と関連しており、最も投与量が多い胚では色素形成の遅滞が示された(図
4c,d)。これらの結果は、BNC2発現の増加が側弯症の原因であることを強く示唆して
いる。
以上の通り、拡大ゲノムワイド関連解析により、ゲノムワイド水準を満たしてAISと関連する領域が見出された。当該領域に存在するSNPsは側弯症の検査に有用であり、側弯症の予防および/または治療に貢献するものである。

Claims (8)

  1. 第9染色体短腕22.2領域のBNC2遺伝子内に存在する一塩基多型を分析し、該分析結果に基づいて側弯症を検査することを特徴とする、側弯症の発症リスクおよび/または発症の有無の判定方法。
  2. 前記側弯症が、思春期特発性側弯症である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記一塩基多型が、配列番号1に示す塩基配列の塩基番号101番目の塩基に相当する塩基、または該塩基と連鎖不平衡の関係にある塩基における一塩基多型である、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記該塩基と連鎖不平衡の関係にある塩基における一塩基多型が、配列番号14に示す塩基配列の塩基番号101番目の塩基に相当する塩基、配列番号15に示す塩基配列の塩基番号101番目の塩基に相当する塩基、または配列番号16に示す塩基配列の塩基番号101番目の塩基に相当する塩基である、請求項3に記載の方法。
  5. 配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号101番目の塩基を含む10塩基以上の配列、又はその相補配列を有する側弯症検査用プローブ。
  6. 配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号101番目の塩基を含む領域を増幅することのできる側弯症検査用プライマー。
  7. BNC2遺伝子またはBNC2遺伝子のプロモーターに連結されたレポーター遺伝子を発現する細胞に医薬候補物質を添加する工程、BNC2遺伝子またはレポーター遺伝子の発現量を測定する工程、及び前記発現量を低下させる物質を選択する工程を含む、側弯症の予防薬又は治療薬をスクリーニングする方法。
  8. BNC2遺伝子のmRNAまたはタンパク質の発現量を測定する工程を含む、側弯症の検査方法。
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