JP2018131885A - プレキャストコンクリート梁部材の接合構造および接合方法 - Google Patents

プレキャストコンクリート梁部材の接合構造および接合方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 プレキャスト梁部材の現場作業における鉄筋工事と型枠工事を大幅に省略する。【解決手段】 プレキャストコンクリート製の梁部材Aと梁部材Bとを接合する際、梁部材Aの矩形断面部11の両側面から延在された側面板12と矩形断面部11の端面とで囲まれた梁上下面が開放された凹所14内の矩形断面部11から側面板12の先端部近傍まで梁主筋13を突出させ、梁主筋13を機械式継手5の全長にわたり挿通させて梁端接合部10と、梁部材Aの梁端と直線状に配列され接合される梁部材Bの矩形断面部21の両側面から延在された側面板22と矩形断面部21の端面とで囲まれた梁上下面が開放された凹所24内の矩形断面部21から機械式継手5の全長のおよそ1/2の長さの梁主筋を突出させて梁端接合部20とを相対させ、機械式継手5で梁主筋13と梁主筋23とを接合する。さらに凹所14,24(空間3)内に接合部コンクリートを打設する。【選択図】 図1

Description

本発明はプレキャストコンクリート梁部材の接合構造および接合方法に係り、建築物の躯体を構成するプレキャストコンクリート部材からなる梁の接合時に主筋を迅速かつ確実に接合でき、接合部コンクリートの型枠作業も最小限にすることができるプレキャストコンクリート梁部材の接合構造および接合方法に関する。
従来、鉄筋コンクリート柱、梁からなるラーメン架構をプレキャストコンクリート部材で構成する場合、柱梁接合部、梁同士の接合部において一体的なラーメン架構を構築するためには、鉄筋とコンクリートの両者を剛接合する必要がある。特に梁部材の接合部において、鉄筋継手を重ね継手や機械式継手にすると、コンクリート部分は、施工性を考慮して所定の継手長さ以上の範囲にわたる現場打ち作業が必要となる。この現場打ちコンクリート作業では配筋工事、型枠工事、コンクリート打設工事、及び脱型工事等の一連の工事が発生するため、プレキャストコンクリート部材を用いた施工迅速化のメリットが減じてしまうという問題がある。
特許文献1に開示された発明は、PCa(プレキャストコンクリート)製水平構造体を設置位置に吊り込んだ際に、大梁の端部の梁接合部における梁用接続鉄筋と梁用スリーブとを直接接合させて現場打ちコンクリート作業を省略することができる。しかし、施工の範囲が小さくても、配筋工事や型枠工事のような異種の工事が混在し、工期の短縮が困難であった。また、型枠工事には型枠大工、配筋工事には鉄筋工が必要であり、プレキャストコンクリート部材を利用しても省人化が果たせない。さらに、大型のクレーンを用いて吊持した資材等を水平方向に微小に移動するには熟練技術が必要であり、重量物の水平方向の移動は挟まれ事故が発生するおそれもある。このようにクレーンに吊持されたPCa製水平構造体を水平方向に移動させて直接接合させる作業は危険で特殊な作業となる。
特許文献1に開示された発明の問題点である梁部材(水平構造体)の水平移動を行わないで、鉄筋接合を行うようにした提案(特許文献2)もなされている。特許文献2に開示された発明は梁の接合端部の側面に凹部または貫通部を形成し、その内部に対峙する接合鉄筋の端部同士を露出させ、一方の鉄筋にスリーブ継手を装着しておき、梁を組み合わせた状態で対峙する接合鉄筋をスリーブ継手で接合し、その凹部に硬化材を充填して梁接合部を一体化させる構成からなる。
特開2008−31838号公報 特開2008−69591号公報
特許文献2に開示された発明では、梁端に凹部を形成する際、凹部の上下端部となる梁位置に主筋の一部を配筋するようになっている。このため、この部位は主筋被りを確保しさらにせん断補強筋を配筋するため、十分な厚さを確保する必要があり、プレキャストコンクリート部材の製作工程の簡略化、軽量化を図ることができない。梁接合作業においては、硬化材を施工するために凹部の側面を向く開口を塞ぐために梁せいにほぼ等しい高さの側面型枠を設置しなければならず、煩わしい型枠工事が発生する。また、梁の構造上の問題として、この発明ではそれぞれの梁の最外縁の主筋は梁端でU字形をなしており、接合部で連続しない構成になっている。このように梁接合部では最外縁の鉄筋が梁主筋として機能しないという問題がある。
そこで、本発明の目的は上述した従来の技術が有する問題点を解消し、プレキャストコンクリート梁部材の現場作業における鉄筋工事と型枠工事とを大幅に省略できるようにしたプレキャストコンクリート梁部材の接合構造および接合方法を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明は、プレキャストコンクリート製からなる一の梁部材の梁端と他の梁部材の梁端とが接合される接合構造であって、一の梁部材の矩形断面部の両側面から側面板が延在され、該側面板の内面と前記矩形断面部の端面とで囲まれ、梁上下面が開放された凹所を有し、該凹所内に前記矩形断面部から梁主筋が前記側面板の先端部近傍まで突出し、該突出した梁主筋に機械式継手が挿通支持された第1の梁端接合部と、前記一の梁部材の梁端と直線状に配列され接合される前記他の梁部材の矩形断面部の両側面から側面板が延在され、該側面板の内面と前記矩形断面部の端面とで囲まれ、梁上下面が開放された凹所を有し、該凹所内に前記矩形断面部から前記機械式継手の全長のおよそ1/2の長さの梁主筋が突出した第2の梁端接合部とを備え、前記第1の梁端接合部と前記第2の梁端接合部とが相対され、前記機械式継手で前記一の梁部材の梁主筋と前記他の梁部材の梁主筋とが接合され、前記第1の梁端接合部と前記第2の梁端接合部の凹所で構成された空間内に接合部コンクリートが打設され、前記一の部材と他の部材とが接合されるようにしたことを特徴とする。
前記第1の梁端接合部の側面板の前記矩形断面部から先端部までの長さは、前記機械式継手の全長に、該梁端接合部に配筋されるせん断補強筋の本数分の鉄筋径を加えた長さにほぼ等しいことが好ましい。
前記側面板の内面と前記矩形断面部の端面とは、表面が金網状体で覆われるようにすることが好ましい。
前記側面板は、内部に補強金網が埋設されるようにすることが好ましい。
前記側面板は、繊維補強コンクリートとすることが好ましい。
方法発明としての本発明は、プレキャストコンクリート製からなる一の梁部材の梁端と他の梁部材の梁端とを接合する接合方法であって、前記一の梁部材の矩形断面部の両側面から延在された側面板と前記矩形断面部の端面とで囲まれた梁上下面が開放された凹所内の前記矩形断面部から前記側面板の先端部近傍まで梁主筋を突出させ、該突出した梁主筋を機械式継手の全長にわたり挿通させて第1の梁端接合部とし、前記一の梁部材の梁端と直線状に配列され接合される前記他の梁部材の矩形断面部の両側面から延在された側面板と前記矩形断面部の端面とで囲まれた梁上下面が開放された凹所内の前記矩形断面部から前記機械式継手の全長のおよそ1/2の長さの梁主筋を突出させて第2の梁端接合部とし、前記第1の梁端接合部と前記第2の梁端接合部とを相対させ、前記機械式継手で前記一の梁部材の梁主筋と前記他の梁部材の梁主筋とを接合し、前記第1の梁端接合部と前記第2の梁端接合部の凹所で構成された空間内に接合部コンクリートを打設し、前記一の梁部材と他の梁部材とを接合するようにしたことを特徴とする。
前記接合方法において、前記第1の梁端接合部の側面板の前記矩形断面部から先端部までの長さは、前記機械式継手の全長に、該梁端接合部に配筋されるせん断補強筋の本数分の鉄筋径を加えた長さにほぼ等しいことが好ましい。
前記接合方法において、前記側面板の内面と前記矩形断面部の端面とは、表面が金網状体で覆うことが好ましい。
前記接合方法において、前記側面板は内部に補強金網を埋設することが好ましい。
前記接合方法において、前記側面板は繊維補強コンクリートとすることが好ましい。
他の方法発明としての本発明は、プレキャストコンクリート製からなる梁部材の梁端を柱梁接合部の柱側面に接合する接合方法であって、前記梁部材の矩形断面部の両側面から延在された側面板と前記矩形断面部の端面とで囲まれた梁上下面が開放された凹所内の前記矩形断面部から梁主筋を所定長さ分突出させ、該梁主筋に機械式継手を挿通支持させて梁端接合部とし、該梁端接合部に相対する柱梁接合部の柱側面から前記機械式継手の全長のおよそ1/2の長さの継手筋を突出させ、前記梁端接合部内の前記機械式継手で前記梁部材の梁主筋と前記柱梁接合部の柱側面から突出した継手筋とを接合し、前記梁端接合部内の凹所で構成された空間内に接合部コンクリートを打設し、前記梁部材を前記柱側面に接合するようにしたことを特徴とする。
前記接合方法において、前記所定長さは、前記機械式継手の全長に該梁端接合部に配筋されるせん断補強筋の本数分の鉄筋径を加えた長さにほぼ等しく、前記側面板の前記矩形断面部から先端部までの長さは、前記所定長さに機械式継手の全長のおよそ1/2の長さを加えた長さにほぼ等しくすることが好ましい。
本提案によれば、従来のプレキャストコンクリート部材の現場施工手順と大きく変わるところ無く、型枠工事と鉄筋工事を大幅に省略できるため、作業員の削減および工期の短縮を図ることができるという効果を奏する。
本発明のプレキャストコンクリート梁部材の接合構造の一実施形態としての梁接合部および梁部材の吊り込み状態を部分的に示した平断面図、側面断面図。 図1に示したプレキャストコンクリート梁部材の接合構造の梁接合部の構成を示した平断面図、正面図、側面断面図。 図1に示したプレキャストコンクリート梁部材の接合構造の梁接合部の鉄筋接合状態および底型枠の設置状態を示した平断面図、側面断面図。 図1に示したプレキャストコンクリート梁部材の接合構造の梁接合部のコンクリート打設後の接合完了状態を示した平断面図、側面断面図。 本発明のプレキャストコンクリート梁部材の接合構造の他の実施形態としての柱梁接合部および梁部材の吊り込み状態を部分的に示した平断面図、側面断面図。 本発明のプレキャストコンクリート梁部材の接合方法における梁中央接合部での接合作業の施工手順、施工状態を示した状態説明図。 本発明のプレキャストコンクリート梁部材の接合方法における梁柱接合部での接合作業の施工手順、施工状態を示した状態説明図。
以下、本発明のプレキャストコンクリート梁部材の接合構造および接合方法の一連の施工手順について、添付した各図面を参照して説明する。
[接合構造の構成]
本発明のプレキャストコンクリート梁部材の接合構造は、図1(a)に示したように、梁端形状が異なる第1の梁端接合部10と、第2の梁端接合部とが相対するように接合対象の梁部材が直線状に配列され、これら第1の梁端接合部10と第2の梁端接合部20との間に形成された空間3内に接合部コンクリート50(図4参照)を打設することにより、梁部材の一体的な接合構造が形成される。これらの梁端接合部10、20の形状は、一例として図6各図に示したように、梁A、Bが連続して柱E、E間に架設され、梁スパンの中央位置で接合されることを想定している。すなわち、柱Eで支持される1本の梁A、Bの両端に第1の梁端接合部10と第2の梁端接合部20とが設けられている。
以下、第1の梁端接合部10及び第2の梁端接合部20の構成について、図1各図、図2各図を参照して説明する。
(第1の梁端接合部)
第1の梁端接合部10は、図1(a)、図2(a)に示したように、矩形断面からなる設計梁断面の端面11から所定の長さだけ梁両側面が突出するように一体的に延長された側面板12で囲まれて形成された、梁上下面が開放した平面視して略台形状の凹所14を有している。側面板12は、本実施形態では、根元部となる設計梁断面の端面11での厚みが60mm、接合部先端での厚みが40mmの薄板形状からなり、長さ(設計梁断面位置からの突出長)は390mm、高さは梁せいと等しい。なお、側面板12の長さは、本実施形態では、梁主筋13の先端に装着された機械式継手5(後述する。)の長さに、接合部を補強する目的で配筋される所定本数のせん断補強筋17の収容スペースを足した寸法よりわずかに長い寸法に設定されている。
凹所14を構成する面となる梁両側面に位置する側面板12の内面12aと設計梁断面の端面11の各面は、図2(b)に示したように、ラス網15で覆われている。すなわち、このプレキャストコンクリート梁部材の製造時に、梁端接合部の凹所14の壁面の型枠として機能する金網状体としてのラス網15(ラスメタル、エキスパンドメタル)が用いられ、ラス網15の内部にコンクリートを打設することにより、ラス網15が固化したコンクリート表面を覆うように一体化して凹所14の各面が構成されている。このラス網15を介して後述する接合部コンクリート50と接合部の凹所14各面との一体化が果たされ、さらにコンクリートと一体化したラス網15の剛性により、側面板12の強度アップも図られている。金網状体としては、ラス網、ワイヤーラスの他、コンクリート打設時に型枠として機能し、コンクリート固化後に、接合部コンクリートと一体となり接合部の凹所14の各面を構成可能な材料であれば、パンチングメタル等の各種の有孔鋼板も採用することができる。なお、各図において、ラス網15が表面に現れる面は、図の簡単化のために模式的に斜め交差線のハッチングで表されている。
さらに側面板12の補強構造として、側面板12の内部の所定範囲には、図2(a)、(c)に示したように、長方形板状の溶接金網16が埋設されている。この溶接金網16は側面板12の補強筋としての役割を果たす。使用する溶接金網16の線径、目合いは側面板12に求められる構造強度に応じて適宜設定することが好ましい。
加えて、薄板状の側面板12全体の強度確保のために、側面板12部分に普通コンクリートに代えて繊維補強コンクリートを打設することも好ましい。本実施形態では繊維補強コンクリートに混入する補強繊維としてビニロン繊維を用いているが、他の補強繊維としては、側面板12に求められる構造強度に応じて鋼繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ポリオレフィン系繊維等を適宜選択して使用することが好ましい。
ここで、第1の梁端接合部10内の梁主筋13と機械式継手5について簡述する。第1の梁端接合部10内の凹所14内には、図1各図に示したように、複数本の梁主筋13の端部が、設計梁断面の端面から突出するように配筋されている。さらに各梁主筋13には梁主筋13の鉄筋径に対応した規格の機械式継手5が取り付けられている。梁主筋13の端部は、図1(a)の機械式継手5のうちの1本を切欠いて内部を示したように、側面板12の先端まで延在している。よって、機械式継手5内部は梁主筋13が全長にわたり挿入された状態にある。本実施形態の梁部材では、図1各図に示したように、梁上部に5本の上側梁主筋13Uが、梁下部に2段配筋からなる下側梁主筋13Lが10本配筋され、すべての梁主筋13U、13L(以下、上下を区別しない場合、符号13を付す。)の端部に機械式継手5が取り付けられている。各機械式継手5の端部、すなわち各梁主筋13の端部は、側面板12の先端とほぼ同じ位置かわずかに凹所14内に納まるように配筋されている。なお、機械式継手5の全長は接合対象となる鉄筋径に応じた規格で定まっているため、側面板12の長さは梁主筋13の鉄筋径に応じて適宜変更して設計される。
第1の梁端接合部10内の梁主筋13のせん断補強のために、機械式継手5の位置にもせん断補強筋17を配筋することが好ましい。そのために、本実施形態では、第1の梁端接合部10内の機械式継手5と設計梁断面の端面11との間に3本のせん断補強筋17をあらかじめ束ねて収容してある。これらのせん断補強筋17を、図3(b)に示したように、機械式継手5で梁主筋13、23を接合した後に、所定の配筋ピッチで凹所空間3内の機械式継手5と梁主筋13、23を囲むように配筋する。なお、後述するように、機械式継手5の区間せん断補強筋17を配筋させず、機械式継手5の後方位置において束ねた状態で配筋しても所定のせん断補強効果を見込むことができる。
(第2の梁端接合部)
第2の梁端接合部20は、相対する第1の梁端接合部10と同様に、図1(a)、図2(a)に示したように、設計梁断面の端面21から所定の長さだけ梁両側面が突出するように一体的に延長された側面板22で囲まれて形成された、梁上下面が開放した平面視して略台形状の凹所24を有している。側面板22は、本実施形態では、根元部となる設計梁断面の端面21での厚みが50mm、接合部先端での厚みが40mmの薄板形状からなり、長さ(設計梁断面位置からの突出長)は190mmである。この長さは機械式継手5の長さの1/2よりわずかに長い寸法に設定されている。すなわち、図3(a)に示したように、機械式継手5を用いて第1の梁端接合部10と第2の梁端接合部20とを接合する場合、機械式継手5内には第1の梁端接合部10の梁主筋13と第2の梁端接合部20の梁主筋23とがほぼ同じ長さで納まるように機械式継手5の位置が決定される。このため、第2の梁端接合部20に突出する梁主筋23の長さは当初から機械式継手5の全長の1/2の長さに納まるように設定されている。
さらに凹所24の構成面となる梁両側面に位置する側面板22の内面22aと設計梁断面の端面21の各面は、第1の梁端接合部10と同様にラス網25で覆われている。また、側面板22の内部には側面板22の補強用に溶接金網26も埋設されている。第2の梁端接合部20に埋設される溶接金網26は側面板22の長さに応じて第1の梁端接合部10に使用される溶接金網16より小さく設定されている。
なお、矩形をなす設計梁断面のコンクリート内のラス網25の近傍には複数本のせん断補強筋27が束ねて配筋されている。この位置にせん断補強筋27を集中配筋することで、第2の梁端接合部20側の機械式継手5の範囲にはせん断補強筋を配筋しないで対応している。このように機械式継手等の継手部の近傍にせん断補強筋を集中配筋することで継手部のせん断補強筋の配筋を省略しても同等のせん断補強効果が得られることが既往の実験によって確認されている。
(第1の梁端接合部の変形例)
図5各図は、上述した第1の梁端接合部10の変形例として、梁部材Cと柱Eとの接合を合理的に行うために設けられた梁部材C側の梁端接合部30の構成を示している。柱E側ではすでに図示した梁部材Cと直交する梁部材Fと一体的に製作された柱梁接合部Dが柱主筋8を貫通するように柱部材上に載置されている。この柱梁接合部Dの柱Eの側面からは梁部材Cの梁端接合部30の梁主筋33に取り付けられた機械式継手5の全長の約1/2の長さの継手筋43が突出している。一方、柱E側には図5(a)に示したように、第2の梁端接合部20に設けられていたような側面板がない(図1(a)参照)。このため、梁端接合部30の側面板32の長さは、継手筋43の長さと梁部材Dの梁端接合部30と柱Eの側面とのクリアランスLを考慮した分だけ長くした形状に設定されている。これにより梁部材C側の側面板32を接合部コンクリート50の打設時の側面型枠として機能させることができる。この結果、通常の梁接合部と同様の工程で柱梁接合部の柱梁接合作業を行うことができる。
[プレキャストコンクリート梁部材の接合方法]
上述した梁端接合部が梁端に形成されたプレキャストコンクリート梁部材(以下、単に梁部材と記す。)の接合手順について、図1,3,4の各図を参照して説明する。
図1(b)は、すでに所定の据え付け位置に設置された梁部材A(図中、左側)と図示しないクレーンに吊持され、設置位置にほぼ垂直に吊り下ろされている梁部材Bのそれぞれの梁端部を示している。同図に示したように、第1の梁端接合部10を有する梁部材Aは、支保サポート6上に載置された状態にあり、この梁部材Aと約1cm程度のクリアランスLを確保して第2の梁端接合部20が形成された梁部材Bが支保サポート6上に載置されるように垂直に吊り下ろされている。このときそれぞれの梁部材A,Bの端部は側面板12、22の先端より梁鉄筋13、23や機械式継手5が突出していないので、梁部材Bの吊り下ろしはきわめて安全な作業となる。
図3各図は、梁部材Bが支保サポート6上に載置された後、梁部材Aの第1の梁端接合部10の凹所14の各梁主筋13に取り付けられていた機械式継手5を、梁部材Bの第2の梁端接合部20の梁主筋23側にスライドし、梁部材A,Bの梁主筋13、23がほぼ均等な長さで機械式継手5内に収容された状態を示している。この段階で形成された梁部材Aの第1の梁端接合部10の凹所14と梁部材Bの第2の梁端接合部20の凹所24とを合わせてなる空間3(以下、凹所空間3)の下面には、この凹所空間3を下面から塞ぐ底型枠7が支保サポート6で支持されるように設置されている。支保サポート6は主に梁重量を支持する役割を果たしているため、支保サポート6の上端にせき板となる板材を間に挟むだけで底型枠7を固定支持でき、型枠組み立て作業等は一切不要である。引き続き各梁主筋13、23が収容された機械式継手5内に固化材(図示せず)を充填し、梁主筋13,23を機械式継手5内に固定保持させる。固化材としては所定配合のモルタルグラウト材等のセメント系固化材、エポキシ樹脂等の樹脂系固化材等を適宜使用すればよい。
図4各図は、上述した梁部材Aの凹所14と梁部材Bの凹所24を合わせてなる凹所空間3内に接合部コンクリート50が打設され、固化後に底型枠7および支保サポート6(図3(b))が撤去された状態を示している。接合部コンクリート50の打設に先立って梁部材Aと梁部材BとのクリアランスLに公知のシーリング材Sを充填しておき、この部分からのコンクリート漏れを防止することが好ましい。このようにして本発明のプレキャストコンクリート梁部材の接合構造を完成させることができる。この接合部コンクリート50の打設作業は、上階のスラブコンクリート(図示せず)の打設作業と同時に行えるので、単独作業としての工程を設定する必要がない。
[プレキャストコンクリート建物の構築方法]
上述したプレキャストコンクリート梁部材の接合構造及び接合方法を利用したプレキャストコンクリート建物の建て方の施工例について図6,図7を参照して説明する。
図6各図は、所定階のスラブ上に隣接して立設されたプレキャストコンクリート柱部材(以下、柱部材)にプレキャストコンクリート梁部材(以下、梁部材)の中央位置を載置支持させ、梁部材の梁端に設けられた梁端接合部を梁スパンの中央位置で接合するようにした接合構造の施工手順を示している。図6(a)は、梁の両端に梁端接合部10、20が形成された梁部材Bを柱部材Eの天端に設置固定する作業状態を示している。梁部材Bの中央位置には柱主筋8の位置に対応した貫通孔9が形成されており、この貫通孔9に柱主筋8を挿通させて梁部材Bを柱Eの天端に吊り込み、柱Eの天端面に梁を載置するようにして柱梁を固定させることができる。図6(b)に示した状態は、図3(b)を参照して説明した工程に相当する。すなわち、柱上に建て込みが完了した梁部材A,Bの梁主筋13、23が機械式継手5で接合された状態が示されている。この段階で梁部材Aの凹所14と梁部材Bの凹所24とを一体とした空間(以下、凹所空間3)の下面は支保サポート6で支持された底型枠7で塞がれている。図6(c)に示した状態は、図4(b)を参照して説明した工程に相当する。すなわち、梁部材A、梁部材Bの梁接合部の凹所空間3に打設された接合部コンクリート50が固化し、所定養生期間を経て底型枠7、支保サポート6(図6(b))が撤去された状態である。このようにして、柱間に架設された各梁を梁スパン中央位置で本接合方法を用いて接合することで、順次建物のラーメン架構及びスラブを一体的に完成させることができる。一連の作業は、最小限の型枠作業と、迅速で確実な鉄筋接合作業によって合理的に実施することが可能である。
図7各図は、隣接して立設された柱部材間に架設される梁部材Cの両端の梁端接合部10、20を、すでに立設されている柱部材上に載置固定された柱梁接合部Dの柱Eの側面に接合するようにした接合構造の施工手順を示している。図7(a)は、図5(b)を参照して説明した工程に相当する。すなわち、梁両端に同一形状の梁端接合部30(第1の梁端接合部10の変形例)が形成された梁部材Cを柱梁接合部Dの柱E側面に接合するための吊り込み状態を示している。図7(b)は梁部材Cの梁端接合部30の梁主筋33と柱梁接合部Dの柱Eから突出した継手筋43とを機械式継手5で接合した状態を示している。このとき梁部材Cの梁端接合部と柱Eの側面との間の凹所空間3の底面には底型枠7が宛がわれ、底型枠7は梁端とともに支保サポート6を介して支持されている。図7(c)に示した状態は、梁部材Cの梁端接合部30の凹所空間3に打設された接合部コンクリート50が所定養生期間を経て所定強度まで固化し、底型枠7、支保サポート6(図7(b))が撤去された状態である。このように柱E、E間に架設された梁部材Cの両端を、本接合方法を用いて各柱E、Eの側面に接合することで、図6各図に示した場合と同様に、建物のラーメン架構及びスラブを一体的に完成させることができる。この一連の作業においても最小限の型枠作業と、迅速で確実な鉄筋接合作業が合理的に実施される。
試算によれば、上述した接合構造と接合方法とを超高層集合住宅に適用した場合、1階当たりの工期を約1日短縮することが可能になる。たとえば1階を5日で施工する工程の場合は1日短縮されて4日となるため、20%の工期短縮を図ることができ、40階建ての建築物の場合は工期をおよそ40日短縮することも可能である。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、各請求項に示した範囲内での種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲内で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態も、本発明の技術的範囲に含まれる。
3 凹所空間
5 機械式継手
6 支保サポート
7 底型枠
10 第1の梁端接合部
20 第2の梁端接合部
11,21 設計梁断面の端面
12,22 側面板
13,23 梁主筋
14,24 凹所
15,25 ラス網
16,26 溶接金網
17,27 せん断補強筋
30 梁端接合部
32 側面板
43 継手筋
50 接合部コンクリート
A,B,C,F 梁部材
D 柱梁接合部
E 柱(柱部材)

Claims (13)

  1. プレキャストコンクリート製からなる一の梁部材の梁端と他の梁部材の梁端とが接合される接合構造であって、
    前記一の梁部材の矩形断面部の両側面から側面板が延在され、該側面板の内面と前記矩形断面部の端面とで囲まれ、梁上下面が開放された凹所を有し、該凹所内に前記矩形断面部から梁主筋が前記側面板の先端部近傍まで突出し、該突出した梁主筋に機械式継手が挿通支持された第1の梁端接合部と、
    前記一の梁部材の梁端と直線状に配列され接合される前記他の梁部材の矩形断面部の両側面から側面板が延在され、該側面板の内面と前記矩形断面部の端面とで囲まれ、梁上下面が開放された凹所を有し、該凹所内に前記矩形断面部から前記機械式継手の全長のおよそ1/2の長さの梁主筋が突出した第2の梁端接合部と、
    を備え、
    前記第1の梁端接合部と前記第2の梁端接合部とが相対され、前記機械式継手で前記一の梁部材の梁主筋と前記他の梁部材の梁主筋とが接合され、前記第1の梁端接合部と前記第2の梁端接合部の凹所で構成された空間内に接合部コンクリートが打設され、前記一の部材と他の部材とが接合されるようにしたことを特徴とするプレキャストコンクリート梁部材の接合構造。
  2. 前記第1の梁端接合部の側面板の前記矩形断面部から先端部までの長さは、前記機械式継手の全長に、該梁端接合部に配筋されるせん断補強筋の本数分の鉄筋径を加えた長さにほぼ等しい請求項1に記載のプレキャストコンクリート梁部材の接合構造。
  3. 前記側面板の内面と前記矩形断面部の端面とは、表面が金網状体で覆われた請求項1または請求項2に記載のプレキャストコンクリート梁部材の接合構造。
  4. 前記側面板は、内部に補強金網が埋設された請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のプレキャストコンクリート梁部材の接合構造。
  5. 前記側面板は、繊維補強コンクリートからなる請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のプレキャストコンクリート梁部材の接合構造。
  6. プレキャストコンクリート製からなる一の梁部材の梁端と他の梁部材の梁端とを接合する接合方法であって、
    前記一の梁部材の矩形断面部の両側面から延在された側面板と前記矩形断面部の端面とで囲まれた梁上下面が開放された凹所内の前記矩形断面部から前記側面板の先端部近傍まで梁主筋を突出させ、該突出した梁主筋を機械式継手の全長にわたり挿通させて第1の梁端接合部とし、
    前記一の梁部材の梁端と直線状に配列され接合される前記他の梁部材の矩形断面部の両側面から延在された側面板と前記矩形断面部の端面とで囲まれた梁上下面が開放された凹所内の前記矩形断面部から前記機械式継手の全長のおよそ1/2の長さの梁主筋を突出させて第2の梁端接合部とし、
    前記第1の梁端接合部と前記第2の梁端接合部とを相対させ、前記機械式継手で前記一の梁部材の梁主筋と前記他の梁部材の梁主筋とを接合し、前記第1の梁端接合部と前記第2の梁端接合部の凹所で構成された空間内に接合部コンクリートを打設し、前記一の梁部材と他の梁部材とを接合するようにしたことを特徴とするプレキャストコンクリート梁部材の接合方法。
  7. 前記第1の梁端接合部の側面板の前記矩形断面部から先端部までの長さは、前記機械式継手の全長に、該梁端接合部に配筋されるせん断補強筋の本数分の鉄筋径を加えた長さにほぼ等しい請求項6に記載のプレキャストコンクリート梁部材の接合方法。
  8. 前記側面板の内面と前記矩形断面部の端面とは、表面が金網状体で覆われた請求項6または請求項7に記載のプレキャストコンクリート梁部材の接合方法。
  9. 前記側面板は、内部に補強金網が埋設された請求項6乃至請求項8のいずれか1項に記載のプレキャストコンクリート梁部材の接合方法。
  10. 前記側面板は、繊維補強コンクリートからなる請求項6乃至請求項8のいずれか1項に記載のプレキャストコンクリート梁部材の接合方法。
  11. プレキャストコンクリート製からなる梁部材の梁端を柱梁接合部の柱側面に接合する接合方法であって、
    前記梁部材の矩形断面部の両側面から延在された側面板と前記矩形断面部の端面とで囲まれた梁上下面が開放された凹所内の前記矩形断面部から梁主筋を所定長さ分突出させ、該梁主筋に機械式継手を挿通支持させて梁端接合部とし、
    該梁端接合部に相対する柱梁接合部の柱側面から前記機械式継手の全長のおよそ1/2の長さの継手筋を突出させ、
    前記梁端接合部内の前記機械式継手で前記梁部材の梁主筋と前記柱梁接合部の柱側面から突出した継手筋とを接合し、前記梁端接合部内の凹所で構成された空間内に接合部コンクリートを打設し、前記梁部材を前記柱側面に接合するようにしたことを特徴とするプレキャストコンクリート梁部材の接合方法。
  12. 前記所定長さは、前記機械式継手の全長に該梁端接合部に配筋されるせん断補強筋の本数分の鉄筋径を加えた長さにほぼ等しい請求項11に記載のプレキャストコンクリート梁部材の接合方法。
  13. 前記側面板の前記矩形断面部から先端部までの長さは、前記所定長さに機械式継手の全長のおよそ1/2の長さを加えた長さにほぼ等しい請求項12に記載のプレキャストコンクリート梁部材の接合方法。
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